いろいろあって、大型連休とはいかなかった。連れと行ったのが淡路島。南岸の孤独な景色がベスト(ただし険しい山道あり)。海と太陽、そして崖(笑)。大阪に住んでたらまずお目にかかれない。

 沖縄でレンタカー借りたときも、雑誌に載ってるロードよりも自分でふらりと寄った裏街道(これも南岸)が素晴らしかった。

 (景色が単調で)助手席は眠ってるし、おかげで自分を見つめなおすことができた。

「俺って、何やってんだろ・・・?以上!」

 とにかく人やバイクや自転車がいないのが、いい。それと警察も(いや、でも分からんぞ最近は!)。

 病棟から電話。

『先生、お休みのときにすみません』
「はいはい。どうぞ?」
『○○さんですが・・あれ?あ、この人先生の患者さんじゃなかった・・・ガガガ』
「あ?おい!もしもーし!」(林道)

『ガガガ・・・あれ?あ!もしもーし!どうもすみませんでした!』
「う、うん。ま、ええわ・・・」
『先生、今どちらにおられるんですか?』
「う、うう・・・うみぞい!」

 淡路島の北端で、行ってもない四国各地のおみやげを買い・・・詰所・医局・事務で配った。旅費より高くついた。なんとか金時、団子、うどんが好評だった。

 ※お願いだから、すぐさま駐車場の車の中に持って行くのはやめてほしい(仕事中に)。

「(ナースら)先生、一体どこへ行かれてたんですか?」

シュワルツェネッガー吹き替え風に・・・

「あててみろ!」

 結局、袋に混じっていたレシート(サービスエリアの)でバれた。
 ・・なのですが、とりあえず昨年分をここにコピーしていって、随時変更を加えつつ形にしていきたいと思います。なので、アップしたからといってそれらが完成形ではありません。

 紛らわしいので、

 ■ ・・ 完成形

 □ ・・ 未完成形

 とします。
□ アカウンタビリティー=説明責任 ・・ 処置・治療などをするにあたって、患者側が納得のいく十分な説明をしておかねばならない、という内容。

□ アキレス腱断裂

・ 走行・跳躍中に足関節後方に突然打たれたような疼痛を自覚。歩行は可能だが跛行である。
・ 腹臥位で診察。視診・触診でアキレス腱に陥凹。Thompson test:膝を直角にして腓腹筋部を握ると足関節が屈曲しない(正常では屈曲する)。このテストは健側でも行うこと。これで不明ならエコー・MRIで診断。
・ 保存治療はギプス(8週間)・シーネ固定。
・ 若年・運動選手は手術を。

□ 悪液質 ・・ 通常は末期がん患者の状態を指す。低栄養、つまり低アルブミンが進行して、血管から漏れた水分が内臓の外に貯まった状態。腹水がその一例。

□ 悪性症候群=Syndrome malin=サンドローム・マラン<実はフランス語!英語では(neuroleptic) malignant syndrome>

 死亡率が高いことから<悪性>の呼び名がある。向精神病薬の過量投与によるほか、抗うつ薬、パーキンソン病薬のいきなりの内服中断でも起こりうる。

 またそれを来たしやすい背景というものも存在し、身体の疲弊、脱水、錐体外路症状が多いなどの患者側要因というのもありうる。こういう背景があれば特にこれの発症に注意する必要がある。

 発症に関連した薬剤を統計的にみると、ハロペリドール、レボメプロマジン、クロールプロマジンが上位を占める。投与開始後2週間での発症が最多だがいつでも発症しうる。

 錐体外路症状=EPS<筋固縮、無動、振戦、嚥下困難>、自律神経症状<高熱(38℃以上。初期は37℃台)、発汗、頻脈、尿失禁・尿閉>、ひいては意識障害(80%以上の頻度)まできたしうる。合併症は横紋筋融解、筋固縮からの呼吸不全、嚥下困難からの誤嚥性肺炎が重要。

 血液でCPK上昇(大半が1000以上)も診断の手がかり。放置されれば命にかかわる。高熱による組織の高度障害によりアシドーシスをきたし高度の脱水も起こすことある。鑑別すべきは脳炎・髄膜炎(髄液検査で除外)。

 まずは原因薬剤の中止となるが、中止後も症状は5-10日持続することを知っておく。

 高熱に対しては全身冷却とともに、十分な輸液を行う必要がある。横紋筋融解→高ミオグロビン血症→腎不全が出現した例では血液透析を行うことになる。なのでミオグロビン尿の確認が必要。

 なお悪性症候群に効果が確認されている薬剤はダントロレン(商品名ダントリウム)とブロモクリプチン(商品名パーロデル)。

 こう(悪性症候群)ならなぬよう、投与前に臓器障害などがないか評価しておく必要がある。しかし実際は患者自身の服薬量そのものに問題がある場合も多い。

 早期の発見が重要で、向精神薬を内服している患者で重度の錐体外路症状を認めたなら検温してみるというのも大事だ。

 あとこれは落とし穴だが、悪性症候群が軽快しても、内服の早期再開でまた再発する恐れがあるということだ。では再投与はどれくらいの期間をおくべきかだが、全身状態回復から2週間以上は期間をおくことが原則。また再開する薬剤は低力価のほうが再発が低いことがわかっている。がどうしても同じ薬剤でないといけないなら、投与開始は少量から慎重に行うべきだ。

※ 悪性症候群でない場合でも、向精神病薬によりCPKは上がりうる。それどころか精神病患者の半数以上がこの薬なしでもCPK上昇を認めるという報告もある。

※ CPK 1000以上の場合は横紋筋融解症も念頭において治療にあたる。

□ アグレッシブ ・・ 攻撃的、反抗的。

□ アサイティス=ascites=腹水 ・・ 肝硬変などで、低アルブミン(蛋白の一部)血症のため腹部臓器周囲に貯留する水。当然、お腹が腫れ体重も増加する。増加してくるかどうかは腹囲を毎日測定したりして評価する。

□ アシスト ・・ 補助として手伝いに回ること。人であったり機械の場合もある。

□ アシドーシス ・・ 血液が酸性ということ。つまりペーハー(pH)が低い。肺炎や心不全など、全身に悪影響をもたらす病気が進行した場合起こしやすい。中枢機能(大動脈など)を生かすため、末梢組織の血管が収縮してしまう。つまり末梢組織の虚血、あるいは循環不全を意味する。なので体は冷たい。重炭酸(メイロン)で補正することが多いが、二酸化炭素分圧上昇時はするべきでない。
             
□ アシナジー=asynergy ・・ 心臓超音波で通常使用される用語。左心室の周囲の壁の動きの異常をさす。『アシナジーはないです=ノーアシナジー』→『動きの悪いところはありません』→『心臓収縮力は正常です』
            
□ 亜硝酸剤(あしょうさんざい) ・・ 冠動脈の血管を拡げるための薬剤。点滴と飲むのと貼るのがある。飲む分の中には速効性のための舌下錠(ニトロペン)かスプレー(ミオコールスプレー)がある。点滴の長期使用は、次第に効きにくくなるといういわゆる「耐性」を生じる点に注意。頭痛の副作用にも配慮を。

□ アジ化ナトリウム ・・ 20世紀末に混入事件があり以後毒物指定に。自動車エアバッグ、パラシュートなどの起爆剤のほか生体試料の防腐剤などで使用。吸入・経口だけでなく経皮でも吸収される。高濃度だと1-2時間内に死亡する。摂取直後に低血圧症状が出現。重症では不整脈・心不全・循環不全。消化器症状もあり。毒物摂取後、急に低血圧・循環不全が出現した場合は強く疑う。証明は胃内容・血液・尿を採取。治療としての解毒剤はない。中毒に対しては一般的処置となる。胃洗浄、活性炭、下剤投与など。ただし催吐は痙攣や循環虚脱を誘発するので絶対に行ってはならない。血液浄化法の適応ではない。経口摂取例ではスタッフへの感染(特に眼と皮膚)に注意。  

□ アスピリン喘息 ・・ なにもアスピリンだけに限らず、すべての酸性NSAIDsで誘発されうる喘息。成人(男<女)>小児(まれ)。成人喘息の1割。非アトピー型>アトピー型。9割以上に鼻関係の疾患(鼻茸、副鼻腔炎など)の既往。鼻症状は嗅覚低下>鼻閉>鼻汁。典型例では酸性NSAIDs内服後1時間以内に鼻閉・鼻汁が出現し、続いて喘息発作が出現する。発作時の治療ではステロイドを使用することになるが、本症はコハク酸エステル(サクシゾン・ソルコーテフ・ソルメドロール・水溶性プレドニン)に過敏であるため使用せず、リン酸エステル(ハイドロコートン・リンデロン・デカドロン)のほうを点滴で投与する。ビソルボンは悪化の可能性あり使用しない。本症の合併症として?好酸球性(鼻茸)副鼻腔炎(鼻茸の重症度と喘息の重症度は相関。易再発性・多発性。通常の副鼻腔炎と違いマクロライド無効)、?好酸球性胃腸炎(まれ。消化器症状に特徴なく胃カメラ生検で確定)、?好酸球性肺炎がある。
         
□ アセチルコリン負荷試験 ・・ 冠動脈内にアセチルコリン(Ach)を注射、低濃度より注入していく。検出感度は80-90%。注入後もしばらく効果が持続することがあるので検査中の閉塞・不整脈などに配慮を。9割以上の狭小化があれば冠痙縮性狭心症(冠動脈の痙攣による狭心症)と診断される。カルシウム拮抗薬が必須となる。
 
■ アスベスト肺 

 2005年夏に一気に社会問題になった健康被害。検査・治療の手順を筋道立てるガイドラインの作成が急がれている(アスベストの専門医は日本に20人ほどしかいないという)。

 アスベストは髪の毛5000分の1ほどの細い繊維状天然鉱物。成分の9割以上がクリソタイルという石成分。

 吸入されたアスベストは気道表面において活性酸素を産生し、それに反応した貪食細胞が集合しそれらから化学物質(サイトカインなど)が放出され炎症が起きる。特にNF-κB(NFカッパB)によるものではTNF-αが増加し線維芽細胞が増殖、肺の線維化が進行する。また肺胞マクロファージの活性化によっても線維化を促進する。

※ 細気管支周囲での線維化が中心になるのがアスベストの特徴で、珪肺はリンパ行性に病変が進展する違いがある。
 

 アスベスト関連の病気は以下の4つ。

?石綿肺=アスベスト肺・・塵肺(じんぱい)の一種
?胸膜刺激による良性アスベスト胸水
?びまん性胸膜肥厚
?肺癌や胸膜中皮腫の合併

 潜伏期間は曝露量が多いと5-20年、少ないと30-40年。症状なしで検診レントゲンで指摘されるケースはこれからも増えるだろう。

 初期だと呼吸機能検査で異常がないのでそこも盲点だ。また、暴露環境から離れたとしても進行は引き続き継続する。

 なおアスベスト吸引歴のある人の肺癌にかかる率は、そうでない人の5倍。さらにアスベスト吸引歴に加えて喫煙歴のある場合は50倍にまで膨れ上がるという事実がある。

 症状としてはまず労作性呼吸困難が出現することが多く、乾性咳も特徴で、やがて安静時呼吸困難へと進む。進行に伴い背部のラ音(fine crackle)は下肺→上肺へと拡がっていく。喀痰中のアスベスト小体の確認で確定診断となる。

 レントゲンでは暴露後早くて2-3年、多くは10年以上して両側下肺野中心の不整形陰影を認めるようになる。前述の細気管支病変を反映しての線状・網状影が目立って粗大になっていく。また著明な破壊の所見である輪状の蜂巣肺(IPFより網目は小さめ)を呈することも。胸膜は肥厚・プラーク・石灰化があれば特徴的。これら胸膜病変、前述の末梢病変の早期発見にHRCTが有用。呼吸機能検査では拘束性障害が中心で(%肺活量が60%以下なら労災認定対象)、特に全肺気量、努力性肺活量が低下する。

 以下の除外診断が必要。慢性間質性肺炎、他の職業性の塵肺、細気管支レベルの間質性肺炎(RB-ILDやDIP)、NSIP、膠原病肺、サルコイドーシス。

 治療は対症療法が主体。内服と在宅酸素など。死因は呼吸不全のほかに肺癌がある(死因の20-40%)。

□ アーチスト(←<カルベジロール>の商品名) ・・ 慢性心不全の治療薬の1つ。DCM(拡張型心筋症)やICM(虚血性心筋症)など、心臓収縮力がかなり低下している心臓の収縮力増強を図る。βブロッカーなので増量は心機能をみながらゆっくりで。外来なら最初は毎週通院させたほうがいいが、くれぐれもそれで心不全にさせないように。最近この薬剤で微量アルブミン尿の改善とインスリン抵抗性の改善(←骨格筋の血流増加によるらしい)が報告された。これにより心血管イベント発生の減少を期待できるといわれている。

□ アタP=アタラックスP ・・ 鎮静剤。不穏が強い場合や胃カメラ前によく使用される。

□ アダムス・ストークス発作 ・・ 徐脈による失神発作。

□ アダラート・カプセル ・・ 急な降圧目的に使用されることのある速効性の降圧剤。以前はよく使用されていたが、急な降圧そのものが臓器に悪影響をもたらすということで使用されない方向にある。だが夜間救急など、どうしてもその場をしのぐためやむを得ず使用されているのが現状。その場合舌下投与30分後に血圧を再検。

□ アテレク=アテレクターシス=無気肺 ・・ 肺炎、気道の閉塞や、片側の肺からの圧迫などで片方・または一部の肺が<密封された>状態。菌が閉じ込められているので必然的に肺炎を起こしやすい。肺炎が治ったが肺の真ん中で縮んで押しつぶされ、板状に固まる板状無気肺、肺の外側に銀河系のように部分的に認める円形無気肺などもある。後者は肺腺癌と間違えやすい。巻き込み像のあるなし等で鑑別する。
□ アテレクトミー=atherectomy=粥腫(じゅくしゅ)切除術 ・・ 冠動脈硬化により血管の中に飛び出して塞ぐ可能性のある塊、つまり粥腫をカッター(←この場合はDCA)などで切除する術式。

□ アディポサイトカイン=脂肪組織由来内分泌因子 

 脂肪組織(脂肪細胞)から分泌される多彩な生理活性物質で、代謝・動脈壁のバランス維持のために陰ながらつとめている。

 肥満ではこのバランスが破綻し糖尿病や高血圧、動脈硬化の進展につながることがわかった(2002年)。つまりバランス破綻は今話題の <メタボリックシンドローム>の引き金となる。種類がたくさんあるが、代表例を挙げると・・

?PAI-1=plasminogen activator inhibitor-1(パイワン):線溶系のプラスミノゲンアクチベーター抑制、血栓傾向をきたす。肥満では増加する。

?TNF(Tumor Necrosis Factor)-α:筋肉、脂肪組織、肝臓でのインスリン抵抗性を増加させる。つまり糖尿病に関係。肥満で増加。

?レプチン:視床下部食欲中枢に作用して食欲抑制、エネルギー消費増強作用により体重を減らす。肥満では増加するも、体内では拒絶される<抵抗性>の病態で、結局レプチンは体にとっては<欠乏>し、慢性的な高インスリン血症をきたす。なお混乱するが、そうして増加したレプチンは高血圧を促進する。つまり糖尿病・高血圧に関与する。

?アディポネクチン:血管内皮で起こる動脈硬化の過程を抑制する、抗動脈硬化ホルモン。血中濃度と内臓脂肪蓄積は逆相関し(ただしBMIとの逆相関はない)、障害血管に蓄積されやすいという特徴がある。また本濃度はインスリン感受性と正相関する。つまり高濃度ほど糖尿病の発症が少なく、つ低下するほどインスリン感受性(体の組織がインスリンを受け取り、血液中の糖を処理しやすい)が悪くなり糖尿病の傾向になる。この低アディポネクチン血症はまた乳がん・子宮がんの発症に関与することも示されている。最近(2003)の報告では、4μg/ml未満の低アディポネクチン血症は冠動脈疾患の独立した危険因子であることがわかっている。逆に高濃度であれば、(新規)心筋梗塞の発症が有意に低いこともわかっている(2004)。

※ ?〜?のうち?が<メタボリックシンドローム>の原因の根幹といわれており、研究がお熱い分野の1つである。 

□ アデホス ・・ PSVTにときに使用される。急速静注が原則。吐き気の副作用あり。まれに心停止があるので注射直後は注意。なお心房細動には無効。保険病名には工夫が必要。

□ アトロピン=硫酸アトロピン=硫アト ・・ 首の両側にある「迷走神経=副交感神経:脈にとってブレーキのようなもの。刺激すると脈が減る」の経路を一時的に遮断する。したがって頻脈になる。効果はあくまで一時的。 

□ アドナ ・・ 止血剤の1つ。血管壁の修復により止血する。日常では鼻血のときよく処方される。

□ アネミア=anemia=アネミー=貧血

□ あのですね ・・ (一部の)詰所が家族に電話で会話したりする前に、思わず出てしまう言葉。北九州・山口県方面だけとは限らない。

□ アプネア=無呼吸

□ アブレーション=カテーテル・アブレーション ・・ 不整脈に対する根本的治療。頻脈性不整脈の発生しやすい伝導路を、高周波通電によりカテーテル経由で焼灼する。成功率が特に高いのはWPW症候群、房室結節回帰頻拍、特発性心室頻拍。合併症はまれではあるがカテーテル操作からの損傷による心タンポナーデ。

□ アベレーション ・・ 変行伝導。QRSの幅が広いのでVPCと思いきや、よく見ると前にP波があって、実は上室性だったというオチ。治療は上室性期外収縮に準じる。

□ アポる ・・ 病院での会話で使われる用語で、「脳卒中」になること。多くは脳梗塞・脳出血を指している。語源は脳卒中=apoprexy(アポプレキシー)から由来。

□ アマメシバ関連閉塞性細気管支炎 ・・ 健康食品「アマメシバ」によって発症した閉塞性細気管支炎。2003年報告。日本でこれまで8例が報告され、販売禁止以後は被害報告はない。「アマメシバ」は東南アジア原産の低木植物。ダイエット目的で94年〜台湾で販売、多くの被害者が出た。日本での販売は96年以降。原因は不明だが接種容量依存性のものとしか説明されていない。なおこれ以外の健康食品でもまれに肺障害の報告はある。

□ アミノグリコシド ・・ 主にグラム陰性桿菌に使用される抗生物質。筋注することも多い。

□ アミラーゼ ・・ 急性膵炎、流行性耳下腺炎、イレウスなどで上がる。アイソザイムも追求すべき。腹痛のときは必ず確認。

□ アミロイド−シス ・・ 異常蛋白である<アミロイド細線維>が全身臓器に沈着して臓器障害を起こし予後が悪い、難治性の疾患。主な病型は2つあり、

?AL(免疫グロブリン性)アミロイド−シス:骨髄腫によるあるいは原因不明半数が腎症を引き起こす。このタイプではL鎖由来のALとH鎖由来のAHとがあるがAHは極めてまれ。

?AA(反応性)アミロイド−シス:旧分類では<続発性アミロイド−シス>といわれていた。慢性疾患(大半が関節リウマチ。あと結核、気管支拡張症など)に続発。ほぼ全例が腎症を引き起こす。

実はさらにあと2つ
?遺伝性のもの
?β2マイクログロブリンによるもの

・・・の、正確には4タイプある。

□ アムリノン ・・ 商品名カルトニック。心筋の筋力を増強させるいわゆる強心剤で、PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。

□ アリスミ−=アリスミア=arrhythmia=不整脈

□ アルカローシス ・・ 動脈血液内がアルカリ性であることを示す。過換気や低カリウムによることが多い。度を越すと自発呼吸が止まったり循環不全に陥ることもある。呼吸管理時の過換気に注意。

□ アルコール離脱症候群 ・・ 身体依存の形成されたアルコール依存症者が断酒することにより数時間〜数日で種々の精神・身体症状が出現。発症時期によって?早期型(断酒後12-48時間後)=小離脱症候群、?後期型(48-96時間後)=大離脱症候群に分かれる。

?→まず4-8時間で不眠・睡眠障害・自律神経症状→12-48時間で振戦・筋攣縮・痙攣などの神経症状が出現。このほか錯覚・幻視・幻聴も出現してくる。

?→全身の粗大な振戦を伴うことが多く多彩な神経症状(見当た識障害、人物誤認、幻覚、妄想など)がみられ、<振戦せん妄>と一括され離脱症候群の中で最も重症のものである。しかし予後はほとんど一過性で1週間以内に消失。

 ビタミン含む輸液管理となることもあり、内服では予防のためベンゾジアゼピンが投与されることもある。

※ 他のアルコール性神経障害の除外も重要・・肝性脳症、脳・頭部外傷のほか、Wernicke失語(眼球運動障害、運動失調、ビタミンB1で改善)、Korsakoff精神病(作話、記憶障害)、アルコール性痴呆(CTで脳萎縮著明)、ペラグラ(日光過敏・下痢)など。低ナトリウムの際は橋中心髄鞘崩壊症(MRIで橋底中央部に異常信号)も疑う。

□ アルバイト=バイト ・・ 別病院への出張。時間給1万が相場。当直だと5万、日当直24時間だと7-8万ってところ。ここから税金が引かれたのが手取り。

□ アルブミン ・・ 血液中の蛋白のなかの主な成分。肝臓で合成される。なので肝硬変では不足する。またネフローゼ症候群では腎臓で取りこぼされるので結果的に血中に不足する。そのほか栄養状態が悪いとき(食欲不振や悪性腫瘍)に材料不足となり合成が不十分となる。これらによって「低アルブミン血症」となり、血液中の水分が血管外に逃げる。水分は胸腔や腹腔などのいわゆる「サードスペース」に貯留する。

□ アンギオ ・・ angiography=血管造影を略してこう呼ばれている。造影剤を目的の血管の入り口から注射して造影する。
※ MRアンギオ=MRA ・・ MRIの血管バージョン。

□ 安定剤  ・・ 患者が睡眠導入剤を欲しいとき、こう表現する。COPDの患者には投与すべきでなく、「ハルシオン」は癖になりやすく注意。

□ アンビュー=アンビューバッグ=手動式人工呼吸器=バッグマスク ・・ マクラの半分くらいの伸び縮みする袋。両手で押すことで酸素を送る。または片手をしっかり顎に固定、もう一方でわしずかみで押し縮みする。人工呼吸器をつけるまでの「つなぎ」的な意味で使用することが多い。
■ 言うたもん勝ち ・・ 医者の世界でよくあること。カンファレンスなどの場でも、押しの強い人間がものをいう。見習うべき態度とはいえないが、積極性という意味では参考にしてもいいかもしれない。循環器系ドクターはこの気質が多い。例)「その症例、僕が持ちます!」「そのDOAの診断は心筋梗塞!」「(独断で)投与しました治療は奏功!」「次の教授は俺や!」

■ イエスマン ・・ 医者同士でもよく使われる用語。上司に言いなりの人間。大学での出世には不可欠。ところが全スタッフでは民間病院に多い(すがりついてる職員が多いからだ。悪い意味ではない)。特に民間では毎日の出来事を院長に逐一報告するツワモノも多い(見極めて注意すべき)。

■ イエローカード ・・ 薬に重大な副作用が出たときに、即病院へ配られる黄色い「医薬品等安全性情報」の用紙。しかし全ての病院に配られているわけではなさそうだ。主治医の主観で「因果関係あり」となるので、この情報(特に単発の症例)をそのまま鵜呑みにするのは問題がある。

□ 胃潰瘍 ・・ 胃角(胃の形をL型とすればその曲がるとこ)に出来やすい。深いキズなので出血するおそれあり。粘膜までの浅い傷は「びらん」と呼ばれ区別され、この場合「胃炎」などと表現される。
 
□ 医局長 ・・ 医局の雑用係。大学ではふつう講師クラスがつとめる。(大学医局長→)バイト人数の調節、人事の聞きまわり、スタッフ病気時の世話、悩み事相談。決定権がなくすべて教授に筒抜けなので要注意。別名<イエスマンの総合商社>といえば言い過ぎか。

□ 医局費 ・・ 医局の雑費などのために徴収される税金のようなもの。月千円ー1万円などと医局によって幅がある。早く支払わないと上層部に密告される。

□ 医局秘書 ・・ 医局の雑務を一手に引き受ける、縁の下の力持ち。大学医局では英語ができて、頭の回転が速いのが好ましい。医局費をきちんと払うこと。

■ 胃癌

 
● 疫学

□悪性腫瘍による死亡では従来トップだったが1999年以降は肺癌に抜かれて2位。性別では男性で?肺癌、?胃癌、女性では?胃癌(ただし直腸癌+結腸癌=大腸癌とするとこれが?、胃癌は?)。罹患率では男性では?位が胃癌、女性では?位。

□ 死亡にしても罹患率にしても減少の傾向にある。ただし罹患数は横ばいと、見方によっていろいろ。

□ 平均死亡年齢は上昇傾向で、男性71歳、女性74歳。

□ 日本では遠位部に発生しやすい傾向。ピロリはこの部位(非噴門部)の癌と大いに関連がある。

□ ピロリへの胃癌の合併率は国によって様々で、日本・韓国は高率だがインド・タイ・バングラデシュでは低率。
  なので環境要因も関わっていることが予想されている。

● ピロリと胃癌

 トピックスはピロリの主要蛋白であるCagA蛋白の研究である。

・ ピロリ感染から胃癌までの流れ
 幼少時の感染 → 持続感染 → 胃粘膜における炎症で活性酸素が発生しDNA障害、細胞回転↑ → それによる粘膜の脱落・修復 → さらに遺伝・環境要因が加わり → 胃粘膜萎縮(小彎から進展) → 腸上皮化生 → 異型性 → 癌
 ※ 胃粘膜の萎縮は小彎から進展・・する事実がありながら、実際ピロリ菌のための胃生検が行われているのは大彎側である(今後の課題)。
 ※ 上記の流れのうち、胃粘膜萎縮 → 腸上皮化生 → 異型性までの流れが前癌状態といわれる。これの以前の段階で除菌すれば胃癌発症が抑制されるという報告もある。

・ CagA蛋白 ・・ ヘリコバクター・ピロリを構成する主要蛋白。これが胃の上皮細胞に入ると、シグナル伝達系分子SHP-2に結合し、結果的に?細胞の異常増殖、?細胞運動性の亢進を引き起こし、胃癌の発生へとつながるとされ注目されている。なお胃癌の頻度が高い東アジアでのタイプは他の地域のと比べてSHP-2結合活性能や形態変化誘導能が高いので、このために東アジアでの胃癌発生が多いのではないかといわれている。

● 病理

 ○ 胃癌の組織型分類

 以下に関する評価が重要となる。
・ 組織型(大半が腺癌=一般型胃癌、そうでないのは特殊型)

 一般型は?乳頭腺癌、?管状腺癌、?低分化腺癌、?印環細胞癌、?粘液癌
 特殊型は?腺扁平上皮癌、?扁平上皮癌、?カルチノイド腫瘍、?その他の癌
   に分類される。

・ 進達度
・ 癌間質量の過多
・ 浸潤増殖様式
・ 脈管侵襲の程度

 ○ 胃癌の異型度分類

 分化型腺癌を、異型度によって?低異型度癌 と ?高異型度癌 とに分ける。?は腫瘍径が小さい場合で進展も緩やかで転移少ない、?は進行胃癌でみられる。p53蛋白過剰発現率が?でより高度なのも鑑別の方法の1つ。

 ○ 胃癌の粘液形質分類

 胃・腸粘膜に関する数々の粘液形質マーカーによって、胃癌を胃型、胃腸混合型、小腸型に分類する。

 マーカーは以下の通り。
? 胃腺窩上皮型マーカー ・・ MUC5AC、HGM
? 胃幽門腺型マーカー ・・ M-GGMC-1、MUC6
? 腸型形質 ・・ MUC2
? 小腸型形質 ・・ CD10

● EBウイルス関連胃癌

 EBウイルス(2本鎖DNAウイルス)に感染した上皮細胞が増殖した腫瘍で、胃癌の1割弱を占める。男性に多いが年齢差はない。好発部位は噴門〜胃体上部。転移の頻度は低い。早期癌と進行癌とも頻度に有意差はない。

・ 組織像 : 低〜中分化型腺癌の像、リンパ球浸潤(CD8陽性主体)
・ 内視鏡所見 : 表面陥凹、境界不明瞭で分厚い病変が多い
・ 腫瘍細胞はEBER陽性シグナルがみられ、これを標的にしたISH法によってウイルスを検出する。

● 胃癌検診

・ ペプシンノゲン法
 血清ペプシノゲン(PG)は胃粘膜の萎縮性変化を反映し、萎縮がひどいほど低下する。萎縮性胃炎の進展が胃癌につながることは明らか。なので胃癌の早期発見のマーカー(または無症状患者の胃癌スクリーニング)として使用できる。実際にこれより発見される胃癌は早期の分化型腺癌で、内視鏡的切除可能なものが多く、救命率も高い。ただし胃癌を直接診断する方法ではなく、実際ペプシノゲン陰性の進行癌を見落とす可能性が出る。しかし健診に利用するにはあまりにも陽性率が高くなってしまい現実的ではないなど課題が多い。

・ ピロリ抗体
 大規模な統計より、ピロリ抗体陰性患者からの胃癌発生は皆無という事実がある。なので抗体陽性者から胃癌が発生するわけだが、日本では40歳以上においてすでに7割がピロリ抗体を所有している。なので健診でわざわざ測定する意義は少ない。

※ ピロリ除菌による胃癌抑制効果は証明されていない。なので抗体陽性だからといって除菌して胃癌が予防できる、ということにはならない。

※ ピロリ除菌が成功すれば、およそ半年でピロリ抗体は陰性化し、ペプシノゲンは正常化する。失敗しても双方ともある程度低下がみられる。

以上の2つの方法をいつ、どのような間隔で測定したら有意義かについて、現在検討中の段階。

・ CEA
 胃癌での陽性率は高くない。他のマーカーもスクリーニングとして利用できるほどの価値はない。

● 手術

・ 早期胃癌と進行胃癌という大まかな分類でいうと、早期胃癌の治療成績はほぼ100%である。進行胃癌では拡大切除などの試みはあるものの治療成績改善とまではいっていない。

・ 手術適応を詳しい指標(深達度や転移の程度)で分類したのが2001年ガイドライン ・・ 広く支持されており、これが手術の術式決定のゴールド・スタンダードとされている。しかし基本とするあまり手術の適応そのものを制限してしまう医師も多い。

・ 術後QOLに着目して行われる腹腔鏡下胃切除は、あくまでも限られた施設にとどまる。

・ 早期胃癌では機能温存を図る術式が標準化しつつあり、特に中部早期胃癌に関してはPPG=Pylorus Pre-surving Gastrectomy(幽門保存胃切除術)が行われることが多い。通常は幽門輪から1.5-3cm離して切離する。その際病巣の広さの判定のため、病巣の前後で生検を行うのが必須。幽門を温存することによって、?ダンピング症状の頻度↓、?胆汁逆流による残胃胃炎↓、?残胃癌発生↓が期待されている。

・ 手術の規模順に、(小さいものから)EMR → 縮小手術 → 定型手術 → 拡大手術。

・ 胃切除に際し、最近では合併切除の臓器をなるべく温存する動きもある。例えば膵温存術式(膵臓への直接浸潤や脾動脈周囲リンパ節の明らかな転移は別)。

・ また胃全摘後の再建ルートとしては、最近では術後障害を考慮した?Roux-en Y(ルーワイ)法、?ダブルトラクト法、?空腸間置法が中心。

 ○ EMR=内視鏡的粘膜切除術 ・・ 胃癌の中でも表層に限局してリンパ節転移がないものを対象とした、胃カメラ下での一括切除術。大きさ的には2センチ以下だが場合により3センチ以下も適応。

 ※ ESD=endoscopic submucosal dissection=内視鏡的粘膜下層剥離術 ・・ 最近さかんな(H15あたりから)、EMRよりも適応の拡大した内視鏡下での早期胃癌治療法。まず癌の下の粘膜下層に生食などを局注して、病変部位を下から隆起させる。この病変の周囲を切開後、直接粘膜下層を剥離して腫瘍を一括切除する。従来法(EMR)に比べて穿孔・出血のリスクは高い。最近その合併頻度は減ってきている。

 ○ 縮小手術 ・・ 定型手術よりも切除が部分的に少ない。
 ○ 定型手術 ・・ 従来の手術法で、胃2/3以上切除+D2リンパ節郭清。
 ○ 拡大手術 ・・ 定型手術を超える範囲、つまり他臓器合併切除あるいはD2+αまたはD3リンパ節郭清など。

必要に応じ、手術の前後に化学療法や放射線療法が追加される。


□ 異型肺炎 

?マイコプラズマ肺炎
?オウム病クラミジア肺炎
?クラミジア・ニューモニエ肺炎。

 をさす。

 通常の細菌性肺炎では白血球が増加するが異型肺炎では通常正常で、そのほかスリガラス状陰影、咳がしつこいなどの特徴が多い。

 各抗体を測定することで診断もできるが、。出てくる結果が遅いので当てにはできない。当然ながら発症早期にIgMが上昇する。これの検出(診断)に関しては?では迅速診断キット(イムノカード)が保険適応化された。これを使えば(発症から8日目以降の測定で)96%以上の確率で診断できる。でも8日目以降じゃなあ・・。

 一般的には血清診断に頼るのが現実で、CF(補体結合反応)と、IHA(間接的赤血球凝集反応)とがある。ペア血清では4倍以上の上昇、単一血清ではCFで64倍以上、IHAで320倍以上なら陽性だ。
 ただし抗体上昇のピーク自体が発症2-3週間なので、これらはあくまで決着がついたあとでの意味づけであり、補助的診断という意味合いになる。

 3者とも治療はテトラサイクリン系でほとんど治癒するが、診断が遅いと重篤化する。

□ 医師会 ・・ 病院連合ともいうべき、各地区の病院連携体。情報のやり取り、健康診断、予防接種などその地域に密接した事業などにも関わる。つまり事業内容はあまり大したことはない。入会には各病院数百万の用意が必要で年会費も徴収される。医師会館の職員の給与はこれらにも頼っている。

□ 医者不在=ドクター不在 ・・ 当直バイトの先生が明けに早めに帰ってしまい、常勤のドクターの出勤してくる時間に空白ができてしまうこと。あるいはバイトの先生は時間通りに帰ったが、常勤ドクターが遅刻してしまったタイムラグ、のこともある。

□ 畏縮(いしゅく) ・・ かしこまりすぎて固まってしまうこと。

□ イスケミア=イスケミー=ischemia=虚血 ・・ 血管の狭窄・閉塞、あるいは血液の供給不足によって組織の血液の流れが悪くなること。虚血が進むと組織は壊死に陥り、機能しなくなる。

■ 胃切除術後骨障害 ・・ 部分切除<全摘後に起こり易く女性に多く、閉経以降ならなおさら多い。明らかな骨塩量の減少が起こる。本態はオペによる食事量減少と胃酸分泌低下によるカルシウム不足で二次性PTH↑となり骨カルシウムが遊離。つまり骨軟化症の病態であり治療もこれに準じる。なので術後は骨塩定量・骨代謝マーカーを測定していく。

■ 胃切除術後胆石症 ・・ 胃切除術後によるCCK(コレシストキニン)の急な分泌増加→急な減少によって食後早期の胆のう再拡張がみられ、空腹時の本来の周期的収縮がなくなる→胆汁うっ滞時間増加→濃縮胆汁、それと胃酸分泌↓による胆道感染も加わって(特にビリルビンカルシウム)胆石が発生。ダンピング症候群対策の食事内容(少量頻回と十分咀嚼)が予防となる。

□ イソジンガーグル=ISG ・・ うがい薬。http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1463496/detailこれでうがいしないといけない理由はなく、むしろ緑茶のほうが殺菌作用があるといわれている。バゼドゥがあればイソジンガーグルは処方してはいけない。

■ 一生独身 ・・ その医師に常識がない、嫌われ者、年増などの理由で、陰で言われる言葉。

□ 一般内科 ・・ 定義はないが、一応「一通り内科のどの科も診れる科」。

□ 一本釣り ・・ 大学医局を完全に離れて、単身で病院と契約・勤務する医師。事務側がこう呼んでいる。

□ イノバン ・・ カテコラミン製剤の1つで、dopamine=ドーパミン。脈拍増加により血圧を上げる。少量は腎血管を拡張し利尿効果あり。多量だと頻脈になるだけ。中止後10分で作用消失。

・ 1-3γ(ガンマ) →腎血流増加、腸間膜血流増加

・ 3-10γ → 心収縮力増加、末梢血管拡張

・ 10γ以上 → 末梢血管収縮 ・・ 末梢血管を閉じてでも循環動態を守るという作用。ここまでくる場合は通常ドプトレックスも併用するのが常である。なお狭心症がある患者でこの量は冠スパズムの危険がある。

□ イヤーノート ・・ 国家試験対策本として不動の地位を保つ。働いてからも使える。

□ いやがらせ ・・ ナース間、事務間、ドクター間、またはそれら立場同士などでパターンが異なる。悲しいが、たいてい上が下に対して行うものが大半。

例? ナース間:大勢の前でコバカにする、靴を隠す、ものを取る、休みを取らせない、師長やスタッフに悪口を吹聴する、足を踏む、病棟間の患者引継ぎで、申し送りになかなか行かない、それとなく不快を顔に出す

例? ドクター間:重症患者ばかり同一医者に押し付ける、講演会で味方側に質問、飲み会で説教・脱がす、車をけなす、相手の当直日を直前にいじくる、カンファ中止の雰囲気で<あれ?今日のカンファは?>と投げかける、質問されても無視する

□ 医療事務 ・・ 受付とその裏方で働く。カルテ・書類の整理など外来業務が中心で、レセプトの処理が月に1回ある(数日〜1週間で特にこの時期は忙しい)。レセプトができる、できないで能力・評価に差が出る。

■ 医療崩壊(私見) ・・ 深刻な(絶対数的・相対的)医師不足と医療費抑制、マスコミによる糾弾などによってもたらされた社会的現象。もっと集約すると医師の士気低下と経営側の無能さ(しかも互いにねじれの関係)が本態。大学病院人事の崩壊による自由選択が、さらに拍車をかける。ネット社会も加わって、評判のいいとこはより良く、悪いとこはとことん悪くなっている。なお大阪でも病院の倒産が相次いでいるが、実は大半が赤字。しかし銀行は金を喜んで貸すので増築はオッケーなど矛盾した世界が拡がる。自治体の天下り先病院は潰れないようにできている。などなど。気分悪くなってきた。

□ イレウスチューブ ・・ その名の通り、イレウスに入れるチューブ。十二指腸の途中まで入れる。透視室を使用して入れるので時間はちとかかる。

□ 因子(いんし)=ファクター=原因

□ インシデンタローマ=副腎偶発腫 ・・ 偶然検査(超音波やCT,MRIなどの画像検査)で発見された副腎腫瘍。三分の1は無症状で健康診断でそれこそ偶然見つかったもの。腫瘍の内訳では、半数が非機能性の腺腫。残りはいずれも10%以下の頻度で褐色細胞腫、コルチゾール産生腺腫、過形成と続くが、ひょっとしたら悪性腫瘍転移、副腎癌のこともあるので鑑別・除外診断が必要。
 画像濃度などによる性状診断もなされる。大きさ的にはNIHの報告によると「径4cm以下はほぼ良性、6cm以上は悪性疑い手術」とあり、日本では良性・悪性の境界値は4.8cmとされている(平成13年度の研究報告)。

□ インスリン ・・通常、膵臓のランゲルハンス島β細胞で生成・分泌され、門脈→肝臓→全身へ。それら肝臓・筋肉・脂肪組織のインスリン受容体に結合してブドウ糖の細胞内取り込みを行う。なおβ細胞からのインスリン分泌には空腹時の基礎分泌と食物摂取に伴う追加分泌がある。?型糖尿病では両者とも低下、?型では後者の分泌遅延・低下が特徴。

■ インスリン抵抗性 ・・ 血中のインスリン濃度の割にその作用が十分得られてない状態。原因はいろいろで、拮抗物質の存在、インスリン受容体減少など。HOMA=IRI X 空腹時血糖÷405・・正常値1.6以下、2.5以上はインスリン抵抗性あり・・・という指標が存在するが、空腹時血糖140mg/dlを超える場合は信頼性落ちる。実際の現場では、肥満の有無(BMI>30なら確実)と空腹時IRI(15μU/ml以上なら明らか)を参考にすることが多い。抵抗性ありと確認したのち、インスリン抵抗性改善薬を追加することになる。

□ インジェクター ・・ 「インジェクション」は注射のこと。つまりこれは注射する機械。自動で大量に流せる。従ってDSAなどの特殊な造影検査での、造影剤の注射目的で使用される。

□ インターベンション=冠動脈形成術=PCI ・・ 冠動脈の狭窄・閉塞に対して行われる血管拡張処置の総称。
 

□ 院=大学院 ・・ 通常は入局後、1年以上たってから進む。いちおう入学試験があるがほとんど落ちない。だが卒業するためには論文をパスさせるのが必須。4年間だが、留年であと数年は延長可能。

□ インクレチン ・・ 食物が小腸で消化吸収される際に分泌される消化管ホルモン。食物を摂取しましたという情報が膵臓のβ細胞へと伝達されインスリン分泌を刺激し、食後の高血糖を抑制して血糖を一定に保つ役割がある。インクレチンの種類は上部小腸K細胞由来のGIPと下部小腸L細胞由来のGLP-1が知られている。

□ インタビュー ・・ 人事の決定のため、医局長が関連病院に出向いて各医局員を訪問する、一種の家庭訪問。もちろん<親>の意向も伺う。これらを総括して教授に報告、人事が決まっていく。

□ 院内紹介状 ・・ 同じ病院の他の科に紹介するとき記載するもの。電話でいちいち話すより、こちらのほうが簡単。しかし直接電話も入れておくとモチベーションは上がる。
 
□ インフォームド・コンセント=IC ・・ 医師・患者間の<説明と同意>の両立。

□ インフルエンザ桿菌 ・・ 緑膿菌と同様、慢性呼吸不全に感染しやすいグラム陰性桿菌の1つ。インフルエンザウイルスとは全く関係なし。

□ インフルエンザワクチン ・・ 毎年12月上旬までには受けておく必要がある。ただし流行は早いと11月からのこともある。特に65歳以上、基礎疾患(特に呼吸器疾患)がある人は強く勧めるべき。なお本ワクチンはCOPD急性増悪による死亡率を50%減らすことが報告されており、COPD患者には積極的に接種する必要がある。流行予測などの情報はhttp://idsc.nih.go.jp/index-j.htmlを参考に。
 値段は各病院の院長・事務側で勝手に決定する。現実的には2千円以下がリーズナブルで善良的。3千円もまあ人道的範囲。それ以上は見苦しい。大阪の堺では1万円するところもある
□ ウイニング=weaning ・・ 人工呼吸からの離脱を始めること。つまり呼吸器からの強制換気の回数を減らし、徐々に患者の自発呼吸を主体にしていく。
 
□ 右脚ブロック ・・ 心臓の刺激伝導系のうちの伝導障害であるが、電気が通るのに少し時間がかかるのみで、通常害はない。
 
□ 右室梗塞 ・・ 心筋梗塞の、下壁梗塞の三分の一に合併する病態。なので?・?・aVFのST上昇時には必ず右側胸部誘導を記録しなくてはならない。
 通常は心筋梗塞で被害を受けるのは左心室だけだが、この場合は右心室をも巻き込む。これがあるとないとでは点滴の内容など治療の内容が変わってくる。
 
□ 右心カテーテル ・・ スワンガンツ・カテーテルで下大静脈圧→右心房圧→右心室圧→肺動脈圧→肺動脈楔入圧を順次測定。5分もかからない。これによって心臓・血管の圧データを記録し心機能を確認。

□ 右心不全 ・・ 心不全といえば通常は左心室の場合、つまり「左心不全」を指すが、右心室に起こすとこう呼ばれる。左心不全から引き続きおこるタイプと(そうなれば両心不全という)、肺の疾患(COPDなど)から続発してなる純粋なタイプがある。
 
□ ウロ=泌尿器科

□ 運動後急性腎不全=ALPE 

 <運動誘発急性腎不全>のうち、ミオグロビン尿が検出されないもの。
 検出されるものは、ミオグロビン尿性急性腎不全といって、マラソン・登山などの有酸素運動による横紋筋融解が本態。CPK高値を示す。

 主として200m走などの無酸素運動で起こる。

 痛みは運動後3-12時間後。昼間に大会(そのためか秋に多い)に出て夜間に激しい背腰痛を伴うことが多い。一見、尿路結石と判断されやすい。

 痛みの持続は平均5日間。非乏尿性(乏尿の訴えは2割)で腎機能障害は軽度(ある検討では2割が要透析)。造影24-48時間後の単純CT(delayed CTでは、朝顔の開いたような、造影剤がくさび形に残存するという特徴がある。残存は血清クレアチニンが高いほど面積が大きい。この現象は腎血管の攣縮によるものではないかと考えられている。

 血液中にミオグロビン・CPKの筋酵素があまり出てこない(正常かけ軽度の上昇にとどまる)理由は、無酸素運動で酷使される筋は白筋線維であり、この線維はミオグロビン含量が少ないことなど。

 治療は補液など水分コントロールで対処。痛みに関してはNSAID使用しないよう注意。

□ エアリーク ・・ エアは「空気」、リークは「漏れ」。パンクした自転車のタイヤをバケツに入れるとボコボコ空気が出てくる。つまり気胸で入っているドレーンから、ポコ、ポコと出てくる空気のこと。

□ エクタジア ・・ 「拡張」のこと。呼吸器領域では「気管支拡張症」をこう略すことが多い。

□ 壊死 ・・ 英語では「ネクローシス」。血液が途絶して組織・細胞が死んで機能しなくなる。死んだ細胞は通常復活しない。従って壊死した組織は通常、切除の対象となる。

□ エダラボン ・・ フリーラジカルスカベンジャー。フリーラジカルは脳虚血時に産生されて脳細胞を障害するもので、それを除去するので<脳保護剤>と称される。重度の脳虚血を引き起こしている中心部でなく(ここは手遅れ的)、その周囲のまだ大丈夫だけど虚血が進んできてる領域である<ペナンブラ>を救う。商品名はラジカットで登場はH13.6月と新しい。脳梗塞急性期治療に使用される。腎障害のイエローカードが出され、以後腎機能への配慮が強く呼びかけられている。具体的には血清クレアチニン値で1.3mg/dl以上は慎重投与。病院によって投与基準を設けているところもある。

□ エッセン ・・ ドイツ語で「食事」。めっきり使われなくなった。しかし老年医師、民間ナースにはまだ根強い。

□ エデーマ(edema) ・・ 浮腫。腫れ。むくみ。原因としては心・肝・腎疾患のほか、貧血・甲状腺機能低下や低アルブミン血症など。原因が特定されなければ「特発性浮腫」と診断される。
 
□ エホチ−ル ・・ 昇圧剤で注射剤。作用は長くは続かない。急に血圧を上げたいときに使う。
 
□ エンゲージ ・・ カテーテル時の用語で、血管の入り口にカテーテルの先が入ること。

□ 炎症 ・・ 体の組織に外敵(たまに自己抗体だったりもする)が攻撃することにより起こる化学反応。通常は、炎症→発熱→白血球増加として現れ、1日後にCRP上昇、1週間後に血沈上昇という形で現れる。このため炎症が治まる場合、解熱→CRP低下の順となる。

□ エンドポイント ・・ 終了点。検査の負荷時間などで表現される。

□ エンブレル ・・ 関節リウマチの画期的な薬<レミケード>発売後、遅れて発売された新薬(2005年3月)。評価は五分五分。TNF受容体結合蛋白。MTXとの併用はしなくてもいいが、併用のほうが効果高い(しかし肝・腎障害でMTX使用できない人には朗報だ)。またレミケードが静脈注射で病院で行うのに対し、こちらは皮下注射だから自己注射が可能だ。ただ自己負担額がレミケードに比べてかなりかかるのが難らしい。

□ オーベン ・・ 指導医。1・2年目にはオマケとして強制的に付けられる。

□ 「オーベンとよく相談して」 ・・ 医局長ら上層部の人間がコベンにかける、ナンセンスな言葉。たいていこの後用事があって、逃げのためにかける言葉だ。

□ 嘔吐 ・・ オエッ、と吐くこと。女性では妊娠も念頭に。反射的に納盆を準備するべし!便のような匂いの場合は腸閉塞も疑う。

□ オウム病 ・・ オウムに限らず鳥類(インコが6割)から由来で菌(C.psittaci=クラミジア・シッタシ)を吸入し感染し肺炎を起こす。マイコプラズマと同じく異型肺炎の1つ。異型肺炎の中でも重篤な経過をとることがあり、初期治療を誤ると致死的な経過をとることもある。肺炎における問診での、トリの飼育歴は重要なのだ。疑わしければ入院の上ミノサイクリンの点滴を即開始することになる。

□ オプソニン化 ・・ 好中球が菌を貪食するその過程において、菌に対する補体・抗体が結合すること。これにより好中球が菌を認識することが可能になる。免疫グロブリン製剤にもこの増強作用がある(特異抗体が菌に結合)。

□ 「オレに謝るな!患者に謝れ!」 ・・ 研修医がよく上級医より浴びせられる言葉。謝っても(こっちの気が)済まないよ、という意味。

□ 卸(おろし) ・・ 薬や物品を病院へ運びこんでくる運送業者。病院と薬品・医療機器などの業者を絶えず行き来するため情報屋として暗躍している者も多い。合コンなどのイベントの開催などもよく受け持つ。

□ お山の大将 ・・ 開業医を皮肉った言葉。スタッフの少ない小さい開業医でも、内部は絶対王政であり、たとえ彼が非常識でも<ドン>なのだ。

□ オンコール ・・ 当直ではないが、呼ばれたらいつでも来れるよう義務付けられる当番。通常は30分以内に駆けつける必要あり。
□ 介護意見書 ・・ 医療サービスを受けるにあたって必要な介護認定のため、医者が患者のために作成する書類。重症度が高いほど、サービスが受けられローコストで済む。どの級にあたるかは書類提出後1ヶ月要する。患者が判定に意義があれば、書き直しの依頼OK。

□ 介護マンション ・・ 賃貸契約のマンションの個室に住むと同時に医療的なサービスが居ながらにして受けられるサービス。家賃・食費は自己負担。定期の診察は医師の往診という形で行われる。プライベートな個室のため、病院や老健のような突然の干渉が立ち入ることはない。現在あちこちで建設が行われているが患者の争奪戦がすさまじい。

□ 開放骨折

・ 骨折部と外界が交通するもので感染の危険がある。感染防止・デブリドマンが重要。
・ デブリドマンが終了した時点でGustilo分類(タイプ? 創1センチ以内でキレイ、タイプ? 創1センチ以上だが軟部組織損傷軽度、タイプ?は広範囲の軟部組織損傷でA/B/Cがあり、Aは広範囲だが軟部組織でなんとか覆える、Bは骨膜剥離や骨の露出まで伴うもので汚染創伴う、Cは修復要の動脈損傷を伴う)を行う。
・ タイプ?では一次的に縫合を行わず創を開放し数日後(1週間前後が多い)に縫合閉鎖するか、皮膚移植などを行う。
・ まずは創の圧迫止血、被覆、固定。受傷後6-8時間までは新鮮創として治療しうるgolden hourとされ、これまでに徹底的なデブリドマンを行うのが理想。
・ 抗生剤はタイプ?・?ではセフェム系、?ではさらにアミノグリコシドを併用。場合により破傷風トキソイド・抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与。
・ 創の消毒液洗浄、生食洗浄。汚染組織の切除。
・ 保存的固定(ギプスなど)は創が観察しにくく固定性不十分でほぼ適応なし。創外固定法が一般的。軟部組織が治癒すれば本格的内固定へ。ただし高度の損傷(タイプ?B/C)には創外固定を行う。

□ 潰瘍性大腸炎=UC ・・ 大腸の慢性炎症性疾患。血の混じったネバい便・下痢を繰り返す。診断は大腸内視鏡。薬物で治療できる例も多いが、重症だと外科切除になることも。癌の合併に注意。

□ 過活動膀胱(OAB) ・・ 尿意切迫感(いきなりの急な尿意)、それと同時または直後の切迫性尿失禁、日中・夜間頻尿などの症状を包括したもの。つまり特徴ある自覚症状を集めた病名で、新しく発見された病気ではない。神経疾患(脳卒中関係・脊髄関係)でないことの問診確認、尿検査による腎疾患の除外の上で残尿量の測定(ただし残尿50ml以上なら専門医紹介)を行い、確実な診断にたどりつく。治療の主体は抗コリン薬(排尿筋の収縮抑制)。2006年6月より新薬の抗コリン薬が発売されており、副作用(口渇・便秘)がより少ないといわれている。男性では前立腺肥大の合併が多いので投与は要注意。

□ 風邪=感冒=感冒症候群=かぜ症候群=急性上気道炎 ・・ 9割がウイルスで治療いまだになし。咳や痰への対症療法でしのぐ。通常は1週間かかって自然軽快する。ただし残り1割の細菌感染では抗生物質が必要。この場合、薬が効けば治るのはむしろ早いことあり。
 なお高熱(39℃以上)・鼻汁・痰が黄色・緑色、咳がひどすぎ・・・の場合は市販の薬では不十分かもしれないので、病院または知り合いの医者へ。なお、風邪が胃腸に悪さして下痢などを起こすと「感冒性胃腸炎」と呼ばれる。食中毒もひっくるめれば「感染性腸炎」と一括される。

□ 過換気発作=ハイパーベンチレーション=ハイパーベンチ ・・ ヒステリーなどがきっかけで起こる頻呼吸。手足のしびれも伴う。二酸化炭素が激減するので紙袋呼吸でほどよく増やす。

□ 下垂体機能低下症

● 総論

○ 原因(頻度順)

? 下垂体腺腫(3割弱)
? 頭蓋咽頭腫(1割強)
? 胚芽腫
? 髄膜腫

○ ホルモン別(頻度順)

? ACTH分泌低下症 ・・ 血中コルチゾール、尿中遊離コルチゾールも測定。負荷試験ではCRH試験、インスリン試験。
? TSH分泌低下症 ・・ f-T3 , f-T4も測定。負荷試験ではTRH試験。
? ゴナドトロピン分泌低下症 ・・ 男性ではテストステロン、女性ではエストラジオールを測定。負荷試験はLH-RH試験。
? GH分泌低下症 ・・ 血中IGF-Iも測定。負荷試験はGRH試験、インスリン低血糖試験、アルギニン試験、L-dopa試験、クロニジン試験。

・ 下垂体腺腫ではACTH分泌低下症、TSH分泌低下症、ゴナドトロピン分泌低下症が多く、頭蓋咽頭腫・胚芽腫では視床下部・下垂体茎が障害されることもありADH分泌障害→尿崩症の合併が多い。

● 各論

○ ACTH分泌低下症
・ 症状 ・・ コルチゾール低下による倦怠感、易疲労性、食欲不振、低血糖、低ナトリウム血症
・ 検査 ・・ 血中コルチゾール低値、尿中遊離コルチゾール排泄低下、血中ACTH高値示さず
※ 視床下部性の場合はCRHの1回または連続投与でACTH反応正常のことあり。
※ 迅速ACTH負荷試験において、原発性副腎不全 ・・ 血中コルチゾール無反応
                    ACTH分泌低下症 ・・ 血中コルチゾール低反応

 ・ ACTH単独欠損症 ・・ ACTH分泌低下症の1割程度。50歳代最多。原発性甲状腺機能低下、1型糖尿病、原発性性腺機能低下症が合併することあり。
                 検査では低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下、貧血もみられる。抗甲状腺抗体、抗下垂体抗体が3割の頻度。

○ 自己免疫性視床下部下垂体炎 ・・ 下垂体にリンパ球・形質細胞が浸潤して生じる慢性の炎症性疾患。以下の2つに分かれる。

  ?リンパ球性下垂体前葉炎 ・・ 炎症が前葉に限局。
  ?リンパ球性漏斗下垂体後葉炎 ・・ 炎症が視床下部漏斗部〜下垂体後葉にあり。

?リンパ球性下垂体前葉炎
・ 女性に多く妊娠末期・分娩後の発生が多い。
・ 症状
 ? 腫瘤による圧迫 ・・ 頭痛、視野障害
 ? ACTH・TSH分泌障害による症状
 ? ゴナドトロピン・TSH分泌障害による症状 ・・ 無月経、乳汁分泌不全 、性欲減退
・ 中でもホルモン別頻度ではACTH分泌低下が最多。
・ 画像では8-9割に下垂体の腫大がみられる。
・ MRIでは下垂体腫瘤はT1画像でやや低信号、ガドリニウムにより早期で均一な造影効果あり。

?リンパ球性漏斗下垂体後葉炎
・ 症状 ・・ ADH分泌不全による中枢性尿崩症。下垂体前葉ホルモンはほぼ正常。
・ MRIでは下垂体茎や後葉の腫大を認めるが自然消退することが多い。
・ 従来、<特発性尿崩症>といわれていたのが本疾患であると指摘された。

?・?ともにすべての所見に加え、下垂体生検をもって確実例とする。
生検がなければ疑い例として扱う。なのでほとんどは疑い例としてフォローされるのが現状。

治療 ・・ 下垂体腫大が著明で圧迫症状があればプレドニゾロン換算1mg/kg/dayを投与し、症状改善とともに漸減する。

○ (成人)GH分泌不全症
症状 ・・ 身体組成変化(筋力低下、骨密度減少)、心血管危険因子増大(LDL-C↑、TG↑、HDL-C↓)、運動・活動能力低下、精神障害
検査 ・・ GH分泌刺激試験でGH<5ng/ml(重症例では<3ng/ml)でありGH含め複数の下垂体ホルモン分泌低下をみる。
治療 ・・ GHとそれ以外のホルモンも補充要。

□ 下顎呼吸 ・・ あたかも水面に顔を出そうとするように、顎を上げながらする浅い呼吸。この場合胸の筋力を使った呼吸はできておらず、むしろ呼吸自体が「抑制」された状態であることが多い。したがって挿管→人工呼吸器管理の適応となる。

□ 隔日投与(かくじつとうよ) ・・ (ステロイドに多いが)内服を1日おきに飲むこと。副作用を避ける名目だが、連日(毎日)投与に比べて副作用が実際少ないとするデータはない。

□ 喀痰細胞診 ・・ 痰の中に癌細胞がないか見る。肺の中の腫瘍の部位によっては必ずしも痰には出てこない。クラス?から?の5段階。?・?は陰生、?は悪性。

□ 喀痰培養 ・・ 痰の中の菌を調べる。結核菌を入れる場合と入れない場合あり。結核菌なしなら結果まで1週間。結核含むなら2ヶ月間待つ必要がある。

□ 下行大動脈 ・・ 心臓から出た血液が上行大動脈(上向き)→大動脈弓(首付近でUターン)へと進み、腹部大動脈へと進んでいく大動脈の部分。背中の脊椎に沿う。

□ 拡張機能不全 

 慢性心不全患者の4割が、心臓収縮能が正常なのに拡張能が落ちている、いわゆる拡張不全の病態だと指摘されている。

 心臓の拡張不全のメカニズムはまだ詳細が確立されていない。

 超音波ドプラーで「推定」するのは可能。心筋コンプライアンス低下→肺静脈圧上昇→肺うっ血へと進む。うっ血を取るため利尿剤が第一選択。

 拡張不全の治療方針のガイドラインはまだない。なので扱いはマニア的。大規模試験で検討中の段階。

□ 可視範囲 ・・ 自分にとって見えた範囲では。「見えなかったところは知らない」、という意味にも取れる。

□ 下大静脈 ・・ 首・右腕からの上大静脈と合流して心臓へ流れていく静脈。超音波検査で計測される最大径は1.5cm以下が正常。

□ 喀血 ・・ 咳とともに血が出る。まず肺結核の除外が必要。外来職員はマスク・手袋で対処。
 
□ 家庭血圧計 ・・ ホームセンター・電気店で売っている血圧計。心臓に近い場所での計測が好ましいので、手首用より肘用のほうが正確。測定は起床30分後と寝る前が望ましい。ただこの器械、1年くらいで故障してしまうのが難点。

□ カテ熱=中心静脈カテーテル感染 ・・ 中心静脈栄養カテーテル経由で菌が侵入、血中に混入し高熱を来たした状態。血液培養かカテーテル先端培養で証明できることもある。抗生剤投与以前にカテーテルの抜去が好ましいが、そこは主治医の考えとそのときの事情による。入院患者のカンジダ血症の最も多い原因が、この中心静脈カテーテル感染である。

□ カテラン(針) ・・ 細くて長い針。麻酔用に使用する。「パルプフィクション」みたいに蘇生で使用することもある。誤穿刺=針刺し事故に注意を。

□ 稼働率(かどうりつ) ・・ ベッドの回転率。患者1人あたりの入院日数(在院日数)を反映する。病院としては回転率が高いほど収益が上がる。院長・婦長の能力そのものが反映される。官公立の病院では彼らの能力の1つとして評価される。

■ 過敏性腸症候群=IBS=irritable bowel syndrome ・・ 1960年代にそう呼ばれるまでは、大腸炎→刺激結腸と呼ばれていた。各国につき15%いると考えられている。

 ストレスを背景とした慢性便通異常+腹痛があり排便で改善、かつ検査(採血・注腸や内視鏡画像)で異常がない病態。

 つまり症状は視床下部CRH由来の腸管運動亢進による<便通異常>と、腸壁緊張亢進+腸管炎症に起因する内臓知覚過敏による<腹部症状>の2本立て。これらがストレス負荷で出現し、排便で改善する。

 最近(2006年)、専門グループ<ローマ委員会>によりこの診断基準<Rome II>が<Rome III>へと改訂された。下痢の定義がこれまで回数重視だったのが、便の形状という概念が新しく加わったのが特徴。

<Rome III診断基準>

 過去3か月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感(具体的には週に2日以上)が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上がある。
1.排便によって症状が軽減する
2.発症時に排便頻度の変化がある
3.発症時に便形状(外観)の変化がある

 ・・とあるが、実際はこれに無理矢理あてはめる必要はない。

 ストレスが背景にあると考えられ、実際腸にはグレリン(摂食ホルモン)・セロトニンなどの脳内物質(つまり脳に影響)が多く分布する。最近の治療ではセロトニン4受容体のアゴニストがトピックスで、腸管への刺激の閾値を上げる機序が考えられている(日本は未認可)。

 一般的な治療は食事・生活習慣改善、内服薬(高分子ポリマー・消化管運動調整薬・乳酸菌製剤・抗コリン薬・緩下剤)。心療内科で心理評価を加えるのが望ましい。

 なお精神心理症状(不安・抑うつ)の合併も多く見受けられる。

□ カフ ・・ 気管内チューブと気管をスムーズに密着・固定させるための風船部分。空気を入れて膨らませる。
□ カプセル内視鏡 

 欧米で実際に臨床応用されている、飲み込み式の内視鏡検査。通常は胃・大腸カメラで原因不明の消化管出血、またはクローン病やポリポーシスの診断などに使用される。

 具体的には検査前12時間は絶食で、腹部にレコーダー(記録装置)を装着。内視鏡カプセルを水とともに飲む。MRIを避け激しい運動しなければあとは自由。8時間後に検査終了。

 カプセルは消化管の蠕動にまかせて進み、ウンコとともに出る(小腸狭窄病変などが原因でカプセルが滞留するケースがまれにあり)が使い捨てなので別にかまわない。この間、カプセル内視鏡からはなんと55000枚もの画像が記録され、すべてデコーダーへ送信される。これはさらに<ワークステーション>という場所へ転送され、そこで動画への処理が行われる。

 画像は19万画素で小腸の絨毛もバッチリ。日本でも2004年末から臨床試験が始まっている。

□ 仮面高血圧=masked hypertension=逆白衣高血圧=白衣正常血圧 ・・ 病院での血圧は正常(140/90mmHg以下)なのに、家庭では血圧が高い。なんでもなさそうだが実は心血管病の発症の危険性が高い(持続性の高血圧に匹敵する)とされている。では家庭でどれくらい高ければそうなのか、ということについては結論が出ていない。
 原因としては外来だけでの血圧測定そのものが考えられている。たしかに日内変動、内服のタイミング、リラックス=安心面(個人差があると思うが)も考慮すると、月1・2回の同じ時間帯での血圧の評価自体に無理があるだろう。
 
  家庭血圧計で本症が疑われることになる。

※なお2002年の調査では、糖尿病2型の患者で外来血圧140mmHgと一見正常のうちの半分以上が仮面高血圧だったという結果は驚きだ。

□ 仮面様顔貌(かめんようがんぼう) ・・ 無表情。パーキンソンの症状の1つ。

□ カリウム=カリ ・・ ミネラルの1つ。果物に多い。血液中はふつう一定量だが、低すぎても高すぎても命にかかわる。尿といっしょに動くので、腎臓の機能が大きく作用する。

□ カルチコール ・・ 注射カルシウム製剤。高カリウムを最も速攻で改善させる。作用は一時的。

□ カルバペネム ・・ 抗生剤で、大方広い範囲での菌に有効。どちらかというと陰性菌寄り。グラム陽性菌も疑うならペニシリン系を、異型肺炎の疑いがあればテトラサイクリンを追加する。肝・腎障害に注意せよ。代表薬剤「チエナム」。

□ 肝炎ウイルス ・・ ABCDEの5つのウイルス。大きく2つに分けると

 ? 主に血行感染で持続感染するタイプ・・HBV,HCV,HDV 
 ? 主に経口感染で一過性に感染するタイプ・・HAV , HEV

□ 肝機能=カンキ ・・ 以下の「肝機能障害」参照。血液検査上の肝臓の機能を表す。

□ 肝機能障害 ・・ 血液検査の、大まかには?T-Bil(総ビリルビン)、?AST=GOT、?ALT=GPT、?ALP、?γ-GTPのいずれかに異常がみられる場合。これだけで実際に肝臓が「障害」されているかどうかは不明。特に多いのは脂肪肝だったりする。このためこれでひっかかった人は「腹部超音波」か「CT」を受けるのが望ましく、手っ取り早い。

□ 間欠(性)跛行(かんけつ(せい)はこう)=intermittent claudication=IC ・・ 主に大腿部・膝下の痛み・しびれにより歩行が一時不能となるが休息をとるとまた歩けるようになる症状。神経性と血管性とに区別されねばならない。
 神経性は多くは腰部脊柱管狭窄症で、血管性の多くは慢性動脈閉塞症(ASOやTAO)である。
 問診で疑いありの場合→触診(大腿動脈・膝か動脈・足背動脈・後脛骨動脈)で触れるかどうか。注意すべきは走行の違いのために正常者でも片方が触れにくい場合があるのと、深部の血管が細い場合は正常に触れてしまうこと。なお拍動が強いと感じたなら動脈瘤を疑うべきである。触診だけでなく聴診で雑音も確かめる(特に大腿動脈は分かりやすいのでやるべき)。
 実際に最もよくみられる動脈病変は浅大腿動脈閉塞である。この場合、大腿動脈と末梢側動脈の脈拍は欠如する。欠如してる割にまあまあ歩けている場合は、コラテ(側副血行路)というバイパスの存在を疑わなければならない。
 また、膝の裏にある膝か動脈の触知が良好で末梢の触れが悪い場合は、膝下の病変が示唆される。このケースは糖尿病に多い。

 間欠性跛行の患者にはABPI=上肢・下肢血圧比が行われるが、この検査は動脈硬化のスクリーニングとして実施されている。絶対的に正確な検査ではないが、異常と説明されたなら、主治医に動脈硬化病変(頭部MRI、頸動脈エコー、心臓超音波など)のルールアウトをしてもらう権利がある。なお測定する機械はあまり高くないが、記録に手間がかかるのと点数が低いことから、開業医ではあまりやっていない。

□ 肝硬変=LC=リバチロ=チローゼ ・・ いきなりなるのではなく、肝臓の炎症、つまり肝炎が進行して修復過程、これらを繰り返すうちに線維化が進んでこれに至る。原因によって、「アルコール性肝硬変」「C型肝硬変」などと呼ばれる。
 内訳ではC型肝炎65%、B型肝炎12%、アルコール性13%。血液検査での血小板数減少がきかっけで見つかることも多い。進行例では高アンモニア、肝癌、食道静脈瘤に注意。

□ 看護記録 ・・ カルテ巻末のナースによる病状記録。カルテから独立してる病院もある。通常ドクターは朝、これを読んでから各患者の回診に回る。目的とする点がなく漫然と書かれた記録は、そのナースの単細胞さを露呈さす。

□ 肝細胞癌 

 原因のほとんどがC型肝炎ウイルスの持続感染。じゃあなぜ(肝細胞のDNAに遺伝子変異を起こさないはずの)C型肝炎ウイルスをもった人に肝細胞癌が多く発生するのか?これは意外とまだ分かってない。

 しかし発生が多いのは事実。なのでHCVウイルスの定量で高めの結果が出た人は、たとえ他の検査に異常がなくても(腫瘍マーカー含めた)採血を可能なら毎月、腹部超音波検査を4ヶ月に1回は受けるべき。金や時間の問題ではない。

 それと造影CTもしくはリゾビストMRIをできれば年に1〜2回は受けるべきとされている。なお肝細胞癌でも実際はAFP 20ng/ml以下の例が37.5%、PIVKA?40mAU/ml以下の例が41.5%にみられるという。なのでマーカー診断に過剰に頼ってはいけない。特に開業医。

治療の現状は・・
・ 肝切除 ・・ 肝予備能が良好で単発が好適応。術後3年で6割が再発。
・ PEIT(エタノール注入)・PMCT(マイクロ波凝固)・RFA(ラジオ波凝固) ・・ 腫瘍径3センチ以下で3個までが好適応。
中でもラジオ波は最近の治療で評価が高い。
・ TAE ・・ カテーテル経由でスポンゼルで栄養血管を塞栓。兵糧攻めにする。

 進行癌はそのまま経過をみることもあるが、動注化学療法(動脈経由で抗癌剤を病巣へ直接投与)を試みることもある。奏功率は4-5割と良好。

 治療など最新の知見などについてはhttp://www.gakkai.net/kangan/で。

□ 間質性肺炎=肺線維症=ファイブローシス ・・ 肺の間質(肺胞以外の、血管などの埋まってる組織部分)の炎症により線維化を起こし、肺が固くなる。原因はあるのとないのがある。治療が難しい。
 活動性はLDH、BALの好中球、KL−6、ガリウムシンチなどで評価してステロイドの適応を決める。

□ 間質性膀胱炎 ・・ 膀胱の間質が慢性的に炎症を起こし、膀胱が徐々に萎縮。症状は頻尿、下腹部のだるさなど通常の細菌性膀胱炎のようだが、尿検査では感染所見がなく抗生剤も効かない。となると神経因性膀胱か過活動膀胱か・・と誤診される可能性あり。患者の約7割にアレルギー素因(喘息・アトピー・鼻炎)あり、9割の患者は女性で中高年が多いという疫学的特徴はある。治療は水圧療法(生食を膀胱内注入し内圧を上げて症状緩和)や抗うつ薬、抗不安薬などあるが満足させるものとはいえず、泌尿器科で専門的に診たほうがよさそうだ。

□ 官舎 ・・ 職員用の宿舎。家族が住む前提なので通常は広い。バブル時期にできたものが多く老朽化が目立つところが多い。病院に近いのが何よりのメリット。女を連れ込んだりとかは、近くの部屋の主婦たちにすぐバれる。

□ カンジダ ・・ 皮膚や血液中などに見つかることのある「真菌」の1つ。

□ カンジダ抗原 ・・ 肺真菌症のときなどの活動性を調べるため検査する。結果はすぐ出るが疑陽性も多い。βーDグルカンがより正確だが結果が出るのが遅い。

■ 乾性咳=dry cough(ドライコフ) ・・ 空咳。痰がない咳。これが中心の風邪症状ならマイコプラズマなどを考慮。ACEIの副作用、逆流性食道炎、後鼻漏(こうびろう)、副鼻腔炎かもしれない。心因性のもある。

※ 痰を伴う咳が「湿性咳」。

※ 2週間以上続く場合の1/4に百日咳感染が疑われることが最近明らかに。なので異型肺炎関連の抗体価だけでなく、百日咳抗体価の測定も意識したほうがよさそうだ。

□ 感染性心内膜炎=IE=Infective Endocarditis 

 弁膜症のある患者に起こりやすい。弁の付近にできた疣(いぼ)=疣贅(ゆうぜい)=vegetation(べジテーション)=ベジが心内膜・弁膜およびその周辺にできて、高度な炎症を起こす。

 高齢者での増加がみられており、特にMRSAによるものが目立つ。本によるが、半数は疣が検出されないと聞いている。

 高熱があんまり持続すると脳に塞栓することもある。

 治療は、MIC(最小発育阻止濃度)の5-10倍に匹敵する大量の抗生剤を、中心静脈経由で4-6週投与。

 気炎菌が不明だとか緊急などの事情でとりあえず抗生剤を投与したいときは、弁が自己弁の炎症(NVE)か人工弁の炎症(PVE)かによって選択する。具体的にはNVEではStreptococcus viridansをターゲット(PCGなど)、PVEではStaphylococcus aureusをターゲットにする(AMPCなど)。

 しかし抗生剤でも反応がない場合や塞栓症状繰り返し例、疣贅が1センチ以上と巨大なら外科治療の対象になる。

※ 診断基準として2000年以降、Duke基準が推奨されている。
※ http://www.fukumi.co.jp/mm/add/mp_endocarditis.htm(循環器病学会)に詳細な解説あり。

■ 感染性腸炎 ・・ ウイルスまたは細菌による腸の感染により高熱・下痢・脱水をきたす。食中毒は細菌性の1つで夏に集中。最近では小型球状ウイルス(ノロなど)によるものが増加しており冬に多い。またアメーバ性大腸炎が増加しておりここ6年で2.5倍。多そうな海外渡航は3割程度で残りは国内。同性愛者・HIVのケースに多い。

□ 「患者さんがかわいそう」 ・・ 上司がよく下の医者・ナースを説教するときによく使う言葉。手技の未熟さで患者に迷惑をかけた状況などに対して。
 
□ 感受性=センスィティビティー(sensitivity) ・・ 薬剤・物質などに対する、生体にとっての取り込まれやすさ。つまり「センスィティビティーが良好」なのはその物質・薬剤が生体に取り込まれやすい・効きやすいことをあらわす。

□ 冠注(i.c.) ・・ カテーテル検査下で、薬剤・造影剤を冠動脈内に注入すること。

□ 冠動脈=コロナリー ・・ 心臓の周囲を流れる細い動脈。狭いと心臓の動きがそれだけ悪くなる。狭いのが狭心症、詰まるのが心筋梗塞。冠動脈の入り口にカテーテルを入れて造影するのが「心臓カテーテル検査」。

□ 管理開設者 ・・ その病院の責任者。独断で振舞えるが、責任者としてのリスクも背負う、覚悟のいる立場。

□ 冠攣縮性狭心症=異型狭心症=VSA=VAP ・・ 冠動脈の痙攣によって生じる狭窄によって起こる狭心症。予防薬がカルシウム拮抗薬。

□ 関連病院=ジッツ ・・ 大学病院の先輩方が占領している植民地。だがよその大学の支配病院の中のポストのことがあり、その場合「外様」と呼ばれる。関連病院の多さを自慢する医局ほど、実はすでに飽和状態(入る余地なし)の病院だらけだったりすることもある。事前にチェックせよ!

□ 勧誘 ・・ 甘い言葉で巧みに誘う事。病院転職の勧誘は特に気をつけよう。たいていは、間で誰かが得するシステムになっている。マンションなど融資の電話もしつこくかかってくる。
□ 外注(がいちゅう) ・・ 採血検査の検体などを病院内で測定せず、あえて外部業者に委託すること。院内で測定するのに比べ、結果判明まで数日要する。このほうがコストは抑制できる。異常値が出ればファックスしてくれるはずだが、それなりの業者だとそれも無理。

□ ガイドライン ・・ 検査・治療計画を統一するため国が関与して編み出したプログラム。注意すべきは医療費抑制も考慮に入れられている(本ではよく<・・で十分である>とかの表現が目立つだろう?これは意図的な表現だ)ので、現場でそのまま当てはめるのには無理がある。教科書でなく、参考書的に参照すべきだ。そのまま鵜呑みにしないように。

□ 学会出張 ・・ 発表以外にも、学会の単位を取るための出張、あるいはコンペなど娯楽中心の目的も多い。だがそれによる経済効果はあまりにも甚大だ。

□ 癌性胸膜炎 ・・ 肺癌の浸潤か、癌の胸膜転移によって引き起こされた胸膜の炎症。炎症性の胸水が貯留する。自然軽快はなく、ドレナージによる排液がまず必要。

□ ガス ・・ 通常は腹部のガス=空気を指す。ガスが溜まりすぎる人がよく飲むのが「ガスコン」。ベイスンの副作用でオナラ↑あり。

□ ガスター ・・ H2ブロッカーで胃薬。胃酸の分泌を抑制する。PPI(タケプロンやオメプラ−ル)より作用は劣る。PPIと併用で効果増強するが保険適応ではない。内服と注射あり、まれに副作用で白血球減少。

□ ガス抜き ・・ おならが出ず腹部が張っている場合に、肛門から管を入れて溜まったガスを出すこと。

□ ガリウムシンチ=ガリウムシンチグラフィー ・・ 核医学(RI)検査の1つ。放射性同位元素のガリウムを静脈注射、炎症の部位に集積したガリウムは撮影した写真に映る。悪性リンパ腫・間質性肺炎などの病変部位の拡がりの把握に役立つ。

□ ガンマ=γ ・・ 循環器用製剤の、点滴を投与するにあたっての単位。1ガンマは1μg/kg/分。http://muchy.com/review/dosespeed.html

□ ガンマグロブリン製剤 ・・ 重症肺炎などの重症感染症の状態に使用される薬剤。特にグラム陰性桿菌による感染症に威力を発揮する。溶解で泡立ちがないよう注意が必要。副作用では投与直後のアナフィラキシーショックが重要。投与時間は余裕をもって1バイアルあたり1.5-2時間で。保険的には関西は1日2バイアル3日間いけるが、使用可能量には地域差がある。また肝腎障害の副作用も重要で、半減期が3週間近くあるので、中止してもなかなか体からは消えない。よって使用前の全身状態評価が重要。

□ ガンマGTP=γ-GTP=ガンマ ・・ 肝臓の検査の1つ。肝炎・胆のう炎で他の項目とともに上昇。単独の上昇では酒の飲みすぎ・食べすぎを疑う。

□ キーパーソン ・・ 患者への説明をするにあたって、説明を第一にすべき人物。長男・兄弟であることが多い。鬼嫁の台頭に注意。

□ 既往歴 ・・ 患者の以前の病気、外傷歴。
 
□ 期外収縮 ・・ ?上室性 ?心室性 に分けられる。単発ではあまり問題にはならないが連発だったり動悸が強いと治療の対象となる。

□ 気管カニューレ ・・ 首の正面真ん中に空いてる穴(気管切開口)に入っているチューブ。ここを通して呼吸。痰の日常的な吸引と、2週間に1回の交換が必要。脱水気味だったり痰がネバいと詰まりかける可能性あり。
 
□ 気管支鏡=ブロンコ=ブロンコファイバー=BF ・・ 胃カメラよりも細い内視鏡で、声門から進入して気管分岐部→上肺→下へと観察。必要により気管支肺胞洗浄(BAL)、気管支肺生検(TBLB)を行う。息をするところの検査なので、検査中は息が少々苦しいのは当たり前。

□ 気管支喘息=アズマ ・・ 気道平滑筋の傷害に起因する炎症により繰り返し起こされる気道攣縮。喘息発作は「アズマ・アタック」。急性にはステロイド。よほどのときはボスミン。

この病態は
慢性のアレルギー性気道炎症による?可逆的な気流制限、?気道過敏性の亢進に集約される。

小児では90%以上がアトピー性、成人でも40-50%にアトピー素因。

・ 症状 ・・ 一過性の喘鳴を伴う呼吸困難、胸部不快感、咳など。季節の変わり目、夜間〜明け方に好発。
        誘発物質の関与、家族歴、他アレルギー疾患の存在にも配慮する。
・ 身体所見 ・・ 気道閉塞による、呼気終末の高調性連続性ラ音=笛様音=wheeze。強制呼出により、より明瞭に。

・ 肺機能の検査

 ○ ピークフロー
 持ち運び可能な長い筒。この<ピークフローメーター>によってピークフロー値(PEF値)を測定。これはスパイロメトリーでの1秒量とよく相関する。これを1-2週間測定して日内変動や日々の変動が20%以上あれば喘息の診断が可能。気管支拡張薬の吸入やステロイド薬の試験的投与によってPEFが少なくとも15%以上改善すれば喘息と診断していいとされている。

 ○ スパイロメトリー
 ふつう病院で行われる<呼吸機能検査>のこと。正常な状態では努力呼出におけるFEV1/FVC比は大人では80%以上となり、小児ではおおよそ90%以上。これ以下であれば気流制限あり。さらに気流制限ありの場合で短時間作動性β2刺激薬の吸入15-30分でFEV1が200mlまたは12%以上改善すれば気道可逆性ありとして喘息と診断してもよい。また短時間β2吸入での効果が少なくても、経口・吸入ステロイドにより1-2週間でFEV1が12%以上改善すればこれもまた喘息と診断してよい。

 ○ 気道過敏性試験
 上記の呼吸機能検査が正常でも、気道過敏性が証明されて喘息診断のきっかけになることがある。本試験では気管支平滑筋を収縮させる薬物(アセチルコリン、メサコリン、ヒスタミンなど)の濃度を段階的に上げていき、それに対する気道反応を解析する。ただし健常者でも陽性を示すことがあり、本検査陽性=喘息と診断するまではいかない。

・ 気道炎症

 ○ 喀痰検査
 喀痰中の好酸球を確認。痰が出にくければ高調食塩水を吸入させて採取する場合も。喘息では好酸球のほか、好酸球顆粒に含まれる<顆粒蛋白>MBP、ECP、EDNなどが検出され、これらはすべて好酸球性炎症の程度を反映する。

 ○ BALF=気管支肺胞洗浄液
 末梢気道から採取するものであり、したがって中枢気道の炎症は反映しにくい。なので喘息の評価には向いていない。

 ○ 呼気中一酸化窒素(NO)濃度
 アレルギー性気道炎症を反映する指標。しかし施設は限定的。

2006年5月に発表された新ガイドライン(JGL2006)では、成人喘息のステップ2(軽症持続型:発作が週1度以上)の長期管理において吸入ステロイドが唯一の第一選択となった(それまではいろんな薬剤が第一選択として挙げられていた)。さらに、これのみでコントロール不十分ならテオフィリン製剤かロイコトリエン拮抗薬、長期作動型β2刺激薬のいずれかを追加することになった。

□ 気管分岐部 ・・ 気道が左右の肺に分かれる、その分かれ道。ユニオンスクエアの角みたいなもの。超音波下で直下リンパ節の生検を試みることもある。

□ 気胸 ・・ 若いノッポの男性に多い自然気胸は繰り返すことあり。現在はしょっぱなから胸腔鏡を用いてブラ切除して1回で根治させるのが好ましい。

□ 既婚ドクター ・・ 大学では特にそうだが、独身者に比べ優遇される。子供の学校のこと、家のことなど事情を抱えているから当然だ。収入面も安定性が保証されることが多い。

□ 起座呼吸(きざこきゅう) ・・ 寝てるより垂直に座ってるほうが息がしやすく、この姿勢をとる状態。ほとんどは喘息・心不全。

□ キシロカイン ・・ 循環器では抗不整脈薬。心室性期外収縮〜心室頻拍など。注射用と点滴用あったがミス予防のため点滴用として「オリベスK http://www.takata-seiyaku.co.jp/product/031/index_031.htm」が新発売。なお麻酔で使うキシロカインとも区別。いずれも職場では「キシロ」と略される。

□ 気腫性変化 ・・ 肺気腫の様な変化が肺のところどころに、局所的に見られる場合。つまり肺胞と肺胞との間の壁が徐々に壊され拡がってきている場合。
 
□ 基礎疾患 ・・ その患者の、すでに診断のついて今も病名。

□ 気道内圧 ・・ 気道〜肺そのものにかかる圧。人工呼吸器がついているとき画面に表示される。これがあまり高いと肺を傷害したり、気胸を起こしたりする。

□ 筋性防御=デファンス ・・ 力を入れてるわけでもないのに腹部の表面が板のように固いこと。腹膜炎の兆候。

□ 救急カート ・・ 通常は真っ赤で机のような形の台車。引き出しに点滴や注射器、薬剤などあり。急変に対処するためのもの。運動負荷心電図の際にも持ってきておく必要がある。

□ 救急隊 ・・ 患者を自宅から救急車で病院まで搬送してくれる人たち。どこに搬送するかは彼らの判断。地区によってかなり癖があったりもする。当直医があまり断り続けると、しまいには患者が運ばれなくなることが多い。勤勉・多忙でもあり出会いが少ない。搬送完了後に病院の休憩室でナースらとの合コン企画が立ち上がるのも珍しくない(それはいいこと)。医師スタッフとの交流勉強会の機会が少ないのが残念だという意見が多い。搬送翌日「あの患者さんどうなったのかな・・?」とかなり気になることも多いらしい。

■ 急性冠症候群=acute coronary syndrome=ACS ・・ 不安定狭心症・急性心筋梗塞の原因の多くである、冠動脈内プラーク破たん→血栓形成→血管閉塞をきたす病態。プラークはソフトなもの(コレステロールエステルに富む)が破れ易い。こういった評価はIVUS=血管内エコーが適する。スタチンはこのプラーク安定化作用がある。プラークの発生過程には酸化LDLが関与しており、この病態に注目したLDL-C低下療法に注目が集まっている。ACS発症後の治療効果を上げるためにはLDL-C
□ 急性膵炎 

 血液・尿中の膵酵素が上昇する膵臓の炎症で、発熱・腹痛があれば真っ先に疑う。上腹部痛が初発症状である頻度は95%(圧痛92%)と、ほぼ必発。

 画像診断は必須で、単にアミラーゼが高いだけで診断・治療してしまわないよう注意。程度は様々で、軽いのから重症まで(浮腫性と壊死性に分かれ、前者は85%で後者は15%。当然、後者は予後が悪く多臓器不全のリスクもつ)。

 2大要因は長期アルコールと胆石。しかし本疾患の3割はそれら以外が原因→薬剤副作用や代謝障害、感染症なども検索を。

 治療は重症度によるが、まず絶食・IVH管理を基本としてプロテアーゼインヒビター大量投与(FOY持続点滴→軽快したらフオイパン内服へ変更)、H2ブロッカー(ガスターなど)が基本で、必要に応じてインスリン、FFPなどが投与される。低血圧だからといって単純にカテコラミンの指示をするのでなく、むしろ補液量でフォローすべき。

 本疾患の致死率は平均7%。高齢者ではもっと高い。

 死因は?MOF(多臓器不全)、?心循環不全、?敗血症。予後的には1/3-1/2が何らかの分泌機能不全を後遺症的に残す。

※ 初期病態は種々の引き金→トリプシノーゲンの活性化から始まる。これが血中でTAP(トリプシノーゲン活性化ペプチド)として検出される例では膵臓以外にも炎症が拡がっていく段階で、中等症〜重症の膵炎をきたすことがわかっている。この変化は発症早期にみられており、いかにこの段階になる前に(具体的には48時間以内に)治療を行うかが予後への分かれ目となる。

 しつこいようだがトリプシンによる膵臓の自己消化は発症48時間で起こるのだ。

※ 2002年発表の「急性膵炎の発生要因に関する症例研究」では、?アルコール過剰摂取、?栄養摂取の不足が本疾患のリスクを上昇させることを明らかにした。

※ 「H13年度研究報告書」によると、予後不良を規定する因子は・・
?2つ以上の併存疾患
?(特に膵頭部を含む領域の)膵壊死
?感染
?stage2以上
?入院後1週間での重症度スコアの増加、の5つ。

※ 2005年7月にガイドラインhttp://www.nanbyou.or.jp/pdf/048_i_guide.pdfが完成した。国内外の論文を5段階評価して、治療を推奨するものからしないものまでA-E評価したもの。これによると・・
・ 古典的な皮膚所見(Grey-Turner、Cullen、Fox)は頻度が実際は低く出現も遅く非特異的である。
・ A(推奨される)と評価されたものは、血中アミラーゼ測定、その欠点(他の疾患でも上がる。慢性膵炎増悪例では上昇しないことあり)を補うリパーゼ測定。しかもリパーゼはアミラーゼより高値が持続するので見落としも助ける。ただ注意すべきは教科書にもある通り、これら2つは重症度の評価にはならない。重症膵炎というのは、重症臓器の機能不全がみられた場合にそう呼び、重症度評価はCRPが「A」の推奨度。ただしこの上昇は病態変化に少し遅れるらしく、発症48時間以内はあまり信用できないという指摘がある。他Aとされたのは胸・腹部レントゲン(胸まで撮るのは基礎疾患、心不全・胸水有無などの評価の意味あり)、超音波(膵腫大・膵周囲の炎症性変化)。CTは「B」らしいが、他疾患の除外をするため、客観的証拠を残すためには必須だろう。壊死(これは感染につながる!)の診断のためには造影が必要となるが膵炎の悪化が懸念されるとどうしても躊躇してしまう。イギリスのガイドラインでは造影CTは入院3-10日を勧めている。これには発症早期では膵壊死がなかなか映らないという理由も含む。壊死がある場合、画像では7日目あたりで明瞭に描写されてくる。

※ 重症型における特殊治療

・ 腹膜灌流・腹腔洗浄=peritoneal lavage ・・ 主には膵壊死部分の除去術(デブリドマン)後の持続的洗浄の意味として施行。
・ 選択的消化管除菌=selective digestive decontamination=SDD ・・ norfloxacin・colistin・amphotericinの3剤を経口・軟膏・注腸。エビデンス乏しく死亡率を下げるまでには至らず。
・ 蛋白分解酵素阻害薬の大量持続点滴 ・・ gabexate mesilate=メシル酸ガベキサート=FOYは、欧米では無効とされているが日本では推奨。具体的には2400mg/day。
・ 持続動注療法(蛋白分解酵素阻害剤・抗菌剤) ・・ エビデンス少ない。発症から72時間以内を推奨。
・ 血液浄化法 ・・ 主にCHDF。メディエイター(サイトカインなど)の除去が目的で、サードスペースの水分を血管に戻すためでもある。これも早期が望ましい。

□ 急性胆嚢炎 ・・ たいてい胆石がきっかけで起こる炎症。胆石だと右上腹部の痛みだけだったりするが、高熱まであるとこれの合併を疑う。絶食・点滴による入院加療が必要。

□ 急性虫垂炎=アッペ ・・ 小腸・大腸のほぼ間にある虫垂という、しぼんだ風船のようなものの中が閉塞(若年ではリンパ組織発達、高齢では糞石あるいは悪性腫瘍によるものが多い)して細菌性の炎症が起こって発症する。痛みは通常みぞおちから始まり、徐々に右下腹部へと移動。筋性防御(指で優しく押すと板のように硬い)・ブルンベルグ(指で押してパッと離したら、離したほうが痛い)があれば腹膜刺激症状ありと判断、炎症が虫垂の周囲に波及していると考えられる。なお熱は高熱とは限らない。しかし重症ほど高熱を呈し、?38.5℃以上、?白血球15000以上、?腹膜刺激症状のいずれか1つでも陽性なら手術適応と考えられる。

□ 急変 ・・ 急に状態が悪化すること。これを予測できるかどうかもドクターの力量に関係することが多い。

□ 給与明細 ・・ 給料の振込みと同時に配られる明細。たまに間違いがあるので、自分が当直した回数、残業時間など細かく確認しておく必要がある。

まず<基本給>があって<手当て>が追加され、<控除>で引かれて残りが手取り。

<健康保険料><厚生年金保険><所得税><住民税>←これでかなりの損失を食らう。場合によってはこれに→<食事代><医局費><保育代(託児所利用の場合)><駐車場使用料>までが引かれる。

 プラスになる<手当>としては<当直手当><超過勤務手当><残業手当><役職手当(医長とか医局長など)><住宅手当(医者の場合民間では半分は出すのが常識)><通勤手当(車出勤だとしても、交通の便がいいとこでは地下鉄・JR料金で計算されてしまうことが多い)>。

 余談だが、<退職金>を出せるかどうかが、そこの病院の経営状態を反映する・・というのは意外と知られていない事実。病院選びのポイントの1つである(んなこと、聞けんって!)。

□ 胸腔穿刺 ・・ 胸水を取るために、針で胸の外から刺して、注射液に取る。液は検査に出す。性状をすぐさま確認(混濁がないか)、細胞数、細胞分画、比重、pH、LDH、蛋白、Cl、ADA、糖、Hb(Hct)、CEA、ヒアルロン酸、補体などのほか、培養、細胞診も提出。リバルタ反応は過去の検査。

□ 強制換気 ・・ 通常は人工呼吸器のモードの1つ。患者の呼吸と関係なく、一定間隔で強制的に呼吸器から空気を送る。患者の呼吸が鎮静剤で鎮められていないと呼吸同士がぶつかる(ファイティング)ことがある。

□ 胸部X線写真=胸写=胸部単純=胸部X-P=Chest X-P=胸部レ線=ブルスト ・・ 胸のレントゲン。正面像と側面像がある。正面像だけだと見落とすこともある。

□ 胸膜 ・・ 肺をつつむ膜。肺炎が波及したり肺癌が浸潤すると胸膜炎を起こす。前者が細菌性胸膜炎、後者が癌性胸膜炎。胸膜生検は肺結核や中皮腫等の診断のため行う。

□ 胸膜炎 ・・ 肺の外、レントゲン、CT写真では通常写らない「胸膜腔」というスキマに炎症性の胸水が貯留した状態。原因は様々で、それによって「細菌性・・」「結核性・・」などと名づけられる。

□ 胸膜中皮腫 

 肺を包む胸膜にできる癌(厳密には胸膜中皮由来)。

 診断は胸水の分析と胸膜生検などによる。石綿曝露と関係の深い職業歴を有するものに多い(病原の8割がアスベスト)。石綿以外にも他の金属、有機物が関与することもある。

 喫煙で発症のリスクが高くなる。必然的に男性に多い。

 2つタイプがあり、
?限局性 ・・ 線維腫で良性
?びまん性 ・・ 悪性。

 通常『中皮腫』といえば?を指す。

組織別にみると、
?上皮型、?肉腫型、?混合型の3タイプがあり、?はヒアルロン酸を産生するので胸水でこれも調べる必要あり。

 血小板増加の例がしばしばあり、進行例では8割に認める。

 スクリーニングのための試薬<Human N-ERC/Mesothelin Assay Kit-IBL>が発売されている。中皮腫由来の蛋白<ERC=メソテリン>を検出。全身麻酔下で生検となるので実際の実用は困難(非保険適応)。

 治療は対症療法、つまり各症状に対する治療。現時点では胸膜・肺全摘術が最善の選択となるが、特に中皮腫は診断後の生存期間が平均9〜13ヶ月と進行が速く、治癒は難しい。

 治療の最近のトピックスとしては、現在臨床試験中の薬剤pemetrexed disodiumがある。シスプラチンとの併用とシスプラチン単剤を比較した試験では、前者が後者より生存期間が3ヶ月長かった。副作用が強いが今後期待されている薬剤だ。

□ 胸骨 ・・ 胸の中央にある長い骨。骨髄穿刺する場所の1つ。これのうしろに胸腺がある。なお骨折はレントゲン側面像で評価。

□ 共診=共同診療 ・・ 他の科にも協力してもらい、複数の科が患者を担当すること。1つの科に戻ると『共診解除』。

□ 胸水 ・・ 肺の外に溜まった水。胸膜の炎症か、それとも単にそこへ漏れた水か鑑別する必要あり。

□ 強ミノ=強力ミノファーゲンシー ・・ 以前からよく使用される「肝庇護剤(かんひござい)」。

□ 凝固異常 ・・ 先天的な凝固傾向による血栓傾向。脳梗塞などのリスクとなる。スクリーニングとして以下の項目があげられる→プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン?、β2-GP?依存性抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ヘモグロビン電気泳動、ホモシステイン、リポプロテイン、など

□ 虚血性心疾患(IHD)=急性冠症候群(ACS) ・・ 狭心症+心筋梗塞。

□ 給与明細 ・・ 給料日当日に手渡される明細。まず基本給が記載、それに超過勤務手当、当直手当、場合により通勤手当、住宅手当が足され、そこから所得税や健康保険料、厚生年金保険、住民税が引かれ、たいてい明細右下の「現金支給額」が手取りとなり振り込まれる。

□ 給料日・ボーナス日 ・・ 詰所は明るい雰囲気で包まれている。

□ キリップ分類 ・・ 急性心筋梗塞時の心不全の程度を表す分類。外来の時点で理学所見(心音・呼吸音)より判断する。それに対して入院の上スワンガンツ・カテーテルを鎖骨下あるいは頸部より挿入してその血行動態データから心不全の病態を分類して治療に生かすのがフォレスター分類。したがって区別して覚えておく必要がある。

□ 菌血症 ・・ 血液に菌が拡がった状態。臨床的には「敗血症」を起こす。

□ 禁忌 ・・ 決してしてはいけないこと。

□ 筋緊張型頭痛 ・・ 頭痛の半分を占める。頭・首周囲の筋肉の緊張から起こる痛み(頭重感)で、それには精神的な緊張が大きく関与する。痛みは慢性的にあり、特に昼から夕方までが最悪。薬があるとすれば抗うつ薬、筋弛緩薬だが、これだけではあまり効果はないと聞く。やはり日常生活でのリラックス・・フロで肩を揉んだり、パソコンを休んだり体操したり。こういった気分転換が重要のようだ。

□ 勤務表 ・・ 婦長が悪戦苦闘して毎月作り上げる、全ナースの出勤予定表。月末に出来上がる。デートの予定もこれに大きく左右される。

□ 勤務評定 ・・ 病院を回るごとに退職時に記載される、医師の通知簿(文章)。これらを参考に次の行き先が決まる。原則的に本人は見れない。
□ ぎっくり腰=急性腰痛症 ・・ 突然の腰痛が生じることの総称だが、誘引(物を持ち上げたりとか)がある場合とない場合がある。原因を特定できるのはわずか2割。ほとんどが画像で追求しにくい病態(関節の微妙な偏位、椎間板の変性、筋肉内の傷害など)であることを意味する。治療は安静とNSAID内服が基本。

□ 逆リモデリング ・・ 通常、<左心室の逆リモデリング>のこと。リモデリングは心室の心筋障害による圧・容量負荷によって、異常部が薄く正常部分が代償性に肥大したりして心肥大・心拡大をもたらす変化をいうが、逆リモデリングは治療によってそれが逆の方向に改善されること。
 これをもたらす治療はβ遮断薬とCRT(心臓再同期療法)だけ。ACEIは単に<リモデリング抑制>だけで、逆にするまでの力はない。

□ 逆流性食道炎 ・・ 胃の酸が食道に逆流して炎症を起こす。このため胸焼けなど不快な症状をもたらす。職場では「逆食(ぎゃくしょく)」と略される。

□ 空洞病変(胸部画像上の) ・・ 実はこれという定義がない。見た目で診断。周囲の壁が厚い場合、こう表現される。

・壁が厚さ。厚い場合→急性肺膿瘍、肺癌(原発・転移)、Wegener肉芽腫症など。
・単発か多発性か。
 単発性→原発性肺癌、急性肺膿瘍など。
 多発性→転移性肺腫瘍、Wegener肉芽腫症など。

□ 薬の説明会 ・・ MRが弁当を持参して行われる説明会。薬の新規採用が目的。説明会のあとホントに使用されるのかどうか上層部が決める。最近は効能効果よりも仕入値段がポイント。弁当はやたら高級チックなものが選ばれるので、家族に持って帰るドクターもいる。

□ 薬のみ ・・ 外来のドクターが外来に降りて来れなかったり、また患者が診察を希望せず処方のみ欲しいときに「薬のみ」扱いになる。病院によっては診察なしでも「受診扱い」となり結局診察料も取られる。細かい人は確認しておく必要がある。

□ クモ状血管腫 ・・ 顔面、頸・胸部にみられる中央隆起の発赤+周囲のクモ手様の血管拡張。なので押すとそのときだけ消える。性ホルモンのバランスの関与と考えられ、妊娠、肝硬変
のほか甲状腺機能亢進の場合もあるらしい。

□ クラビット ・・ 抗生剤でグラム陰性菌寄り。小児への投与禁忌。4錠分2で濃度の立ち上げを図りよりよい効果。最近ゾロ品が発売され、本家の第一製薬は焦っている。

□ クリアランス ・・ 洗い出しのこと。腎臓では血液が尿になる。その変換過程のスムーズさ、というニュアンスも。

□ クラリス、クラリシッド ・・ マクロライド系抗生物質の内服。通常はマイコプラズマなどのほか、慢性気管支炎の去痰目的に使用されることが多い。そのため使用も慢性になることが多く、耐性菌の出現が心配される。なおこの薬は小児科領域でも使用が頻繁で、耐性(効きが落ちてくること)はかなり深刻だ。
                 
□ クランケ ・・ ドイツ語で、「患者」。今はほとんど言わない。笑われる。老年医師、民間ナースではまだ根強い。

クリオグロブリン血症=Cryo血症

□ クリオグロブリン血症

クリオグロブリン=Cryoglobulin=Cryo ・・ 37℃(体温)より低い温度で沈殿し、37℃に加温で再溶解する免疫グロブリン。これが生成される機序は不明。健常人でも軽微ながら検出される。

○ Cryoの分類
 ?型(5-25%) ・・ 単クローン性のIgGまたはIgM ・・ 多発性骨髄腫、悪性リンパ腫
 ?型(40-60%) ・・ 多クローン性の免疫グロブリン、リウマチ因子活性をもつ単クローン性免疫グロブリン ・・ 本態性のものと2次性(B細胞性リンパ増殖性疾患、シェーグレンなど)
 ?型(40-50%) ・・ 多クローン性で、実際はIgG、リウマチ因子活性をもつIgMなど ・・ 自己免疫疾患、感染症
※ ?・?型は多クローン性なので<混合型>とも呼ばれる。

○ Cryo血症の分類
? 本態性 ・・ 原因不明 
   ※ 最近HCV感染との関連に注目が集まっている。?型Cryo血症はHCV陽性例の60-80%に検出される。さらにその35-60%に腎炎を合併する(?型膜性増殖性腎炎が主体)。
      臨床経過としてはHCV陽性の肝炎〜肝硬変の経過中に尿所見異常、低補体血症を認めCryoを検出されることにより診断されていく。
? 二次性 ・・ 骨髄腫、リンパ腫瘍性疾患、膠原病

以下、?型本態性について。

・ 腎外症状 ・・ 下腿好発の紫斑・潰瘍・関節痛、全身性血管炎、リンパ節腫脹、肝脾腫大、多発性神経炎。
・ 検査所見 ・・ HCV陽性。CH50↓(高度〜低度)、C3↓、C4↓(C3>C4)、リウマチ因子陽性。
・ クリオグロブリン検出 → 免疫電気泳動でモノクローナルかポリクローナルかを判別。
・ 腎生検 ・・ ?型膜性増殖性腎炎(8割)、膜性腎炎(1割)
  <光学顕微鏡>ループ内腔に管腔内血栓とよばれるエオジン好性塊状沈殿物。免疫染色ではIgM主体でIgG軽度。
  <電子顕微鏡>糸球体基底膜の内皮下に特徴的な繊維構造物。

○ Cryo血症の治療

温度への関連により、まず寒冷への曝露を避ける。

? Cryoの産生抑制
 ステロイド、免疫抑制剤、HCVに関してはIFN
? Cryoの除去
 クリオインフィルトレーション ・・ 分離した血漿を冷却、Cryoを析出し除去、血漿は温めて戻す。
 血漿交換
? 脾臓摘出
? 腎症そのものへの治療
? 二次性のものは原疾患の治療も

機序がそもそも分かっていないので、根本的な治療は未開発。

□ クリティカルパス=CP=クリニカルパス=ケアマップ ・・ 医療の標準化・効率化を図るための工程管理表。横軸が入院日数で、縦軸に検査・治療計画、安静度などを一括にして見取り図にしたもの。

□ クリンダマイシン=CLDM ・・ 嫌気性菌に対して使用される。誤嚥性肺炎、膿瘍などの独特な病態での使用に限られる。

□ クレーム ・・ 苦情。多くは患者から職員への苦情を指す。

■ クローン病 ・・ 原因不明(現在最も有力なのは、遺伝素因+腸管細菌由来抗原に対する粘膜免疫反応)。腸管の全層性炎症で口〜肛門すべてに病変起こりうるが病変はとびとび(区域的分布)。

 全層性炎症は線維化・狭窄・穿孔・膿瘍・ろう孔を形成し腹痛・下痢・下血など多彩な症状を引き起こす。慢性・再発性で10-20代に多く増加傾向。30年経過患者の9割が手術経験者で、再手術率は1年で5%。なお長期ほど癌の発症頻度は高くなる。

 小腸の検査技術が発達しており、カプセル内視鏡とダブルバルーン小腸鏡がトピックス。

 治療は内科治療(成分栄養剤など)が中心。インフリキシマブは既存治療に抵抗性のクローン病に81%もの有効性を証明。また2006年にはアザチオプリン(イムラン)が保険適応に。ただそれらの互いの位置づけが曖昧で混沌とした感がある。

 内科治療に不応性、または狭窄病変の場合、手術対象となる。


□ 偶発性低体温症 

 深部体温(直腸・膀胱・食道・鼓膜など)が35℃以下になった(なっていた)病態、というのが定義。

 泥酔者、ホームレスであることが多い。そもそもアルコールは体温調節機能を障害しやすい。一般的処置のほかに、できるだけ速やかに深部体温が34℃となるまで復温をはかる。

 この復温法には2つある。

? 保温法 ・・ 毛布・暖房であくまでも本人の体温調節機能による復温をめざす。

? 能動的加温法 ・・ 温熱器具(電気毛布、赤外線ヒーターなど)を用いた体外式と、42-46℃の100%酸素吸入・42-44℃の生食点滴(中心静脈経由)による体外式がある。体外式は深部体温30℃以下の重篤な場合に行う。

□ グラム陰性桿菌 ・・ 敗血症の原因となる恐ろしい菌。緑膿菌だと最悪だ。なんかの拍子に集団でエンドトキシンという毒を発する。これによる循環不全が「エンドトキシン・ショック」あるいは「敗血症性ショック」というやつだ。「デイ・アフター・トゥモロー」http://page.freett.com/aorekare/200411.htmという映画にも出てきた。

□ グラム染色 ・・ 痰の中の菌をある程度推定するために行われる染色法。ヘタだと時間がかかり手が紫になる。肺炎球菌に関してはこれだけで診断が確定することがある。コストがかかる検査なので病院経営には目障りな検査。

□ グル音 ・・ 腹部に聴診器を当てたら聴こえる、腸の動く音。聴こえなくて腹部が膨れていれば腸閉塞や急性腸炎を疑い、腹痛とキンキンという金属音があれば機械性の腸閉塞を疑う。

□ グレリン ・・ これまでは<成長ホルモン分泌を促進する胃由来(脳からも出ますが)のペプチドホルモン>という意義しかなかったが、最近の発見により、胃から迷走神経を介して中枢(延髄→視床下部が終着駅)へ空腹情報を伝達し、摂食亢進を促がす物質であることが証明された(2002年)。これに基づきカへキシア(6ヶ月以内に7.5%以上の体重減少)治療に関する研究が行われている。このグレリンは脂肪組織から分泌されるレプチンに拮抗する形で作動している。
■ 頸動脈狭窄症 

・ 頸動脈エコーで50%以上の狭窄があると脳卒中の発症率が上昇し、臨床的に問題となる(高齢者の3-8%)。狭窄の程度と脳卒中のリスクは相関する。また狭窄がある場合、同様に心筋梗塞のリスクが高くなり、ひいては心血管死のリスクが高くなる。CHS=Cardiovascular Health Studyによれば頸動脈の最大IMTが大きいほど心筋梗塞と脳卒中の発症率が高くなる。

・ また狭窄度のほかに輝度も重要で、これが低いと豊富な脂質それに不安定プラーク(破れ易い血栓)の存在を示唆する。実際、低輝度ほど脳卒中リスクが高い。

・ 診断されれば、生活指導(禁煙・節酒)、危険因子の加療を開始するとともに、高度狭窄ではバファリンなどの抗血小板薬やスタチン(プラーク退縮目的)を開始、適用によりCEA(頸動脈内膜剥離術)あるいはCAS(ステント留置術)を薦めることになる。

■ 血液検査伝票(以下、項目別)

≪ CBC=末梢血(まっしょうけつ)=末血(まっけつ)=血算(けっさん) ≫

□ WBC(白血球=ワイセ=白) 

 ↑・・9000以上は増加とみる。感染症で増加すること多い。あと脱水でも。それと急性心筋梗塞の急性期でも。増加していたら血液像も確認して、特にどれが増えているか見る。激しい感染症では左方移動(stabが増加)(ただし重症肺炎、ウイルス感染などでむしろ白血球減少する例あり)。ステロイドの副作用で増加する場合は好中球が増加し、好酸球は減る。好酸球はステロイドが効いたかどうかの指標に。

 ↓・・4000-5000を切ると減少とみる。パナルジン・ガスターなど薬剤の副作用を除外。特にパナルジンでは好中球が減少。極度の減少は感染を招くので入院、適宜G-CSF投与を行う(好中球数1500以下が適応)。

□ RBC(赤血球=赤) 

 ↑・・多血症を疑うが、果たして病的なものかどうか本を開いて鑑別。

 ↓・・貧血。再検するとしてタイプは?反射的にヘモグロビン、ヘマトクリット値に目をうつす。

□ Hb=ヘモグロビン=ヘモ=ハーベー

 ↑・・多血症か脱水の反映か。はたまた溶血か。溶血なら採取時のものか、病気のほうか。

 ↓・・貧血。MCVをみて小球性か正球性かなどの鑑別を(この2つの頻度が圧倒的)。前者は鉄欠乏貧血、後者は出血や腎性貧血、リウマチに注意。貧血の詳しい検査としてFe、UIBC(またはTIBC)、フェリチンを電話で追加。

□ Hct=ヘマトクリット=ヘマト 

 ↑・・脱水の反映か。
 ↓・・貧血。透析患者ではEPO製剤投与の指標としてよく使用される。胸水の検体で、血性かどうかの鑑別で測定することあり。

□ Plt(血小板=プレート) 

 ↑・・出血→貧血(Hb低下)に伴う反応性のものか。80万以上ならET(血小板増多症)か。

 ↓・・採取時の検体ほったらかしでの凝固によるものか。DICによるのか肝硬変か。劇症肝炎ではないだろか。いずれにしても再検。できれば動脈血で。DICらしければPT、APTT、AT?、Fbg(フィブリノゲン)、FDP、D-dimerを新たに至急採血。ITPを疑う場合もあるがPA-IgGは保険適応外なので配慮を。

≪ 生化学=生化学検査=生化 ≫

□ TP(トータルプロテイン=総蛋白) 
 ↑・・異常な増加は多発性骨髄腫の除外が必要→IgG、尿中M蛋白などを。
 ↓・・低アルブミンの反映か。

□ Alb(アルブミン) 
 ↓・・3.0を切ると低蛋白で、水分が血管から逃げやすくなり、胸水・腹水・浮腫ができる。じょくそうが治りにくい。ネフローゼではない?尿蛋白陽性なら1日尿蛋白を3日間。

□ T-Bil (総ビリルビン) ・・ 3.0を越えると黄疸→患者の顔・体黄色いはず。間接・直接ビリルビン鑑別。

□ AST=GOT ・・ ↑ ・・ 溶血か、肝障害か心筋梗塞急性期などで。肝硬変ではむしろ正常化に注意。

□ ALT=GPT ・・ ↑ ・・ 肝障害などで。インターフェロン治療開始・効果判定の指標になる。肝硬変ではむしろ正常化に注意。
※ この2つがトランスアミナーゼ=トランス。IVH管理では
200IU/Lまでは上昇することがあり、許容範囲とすることも。

□ ALP=アルカリフォスファターゼ=アルフォス 
 ↑・・高ければアイソザイム提出。肝障害か骨由来か胆道系炎症か。持続的上昇は肝細胞癌に注意。小児では骨の発達でむしろ高いのが普通。

□ r-GTP=ガンマ 
 ↑ ・・ 肝機能でこれだけ高いのなら酒の飲みすぎか食べすぎであること多い。肝障害、胆道系炎症でも上昇。

□ LDH 
 ↑ ・・ これ1つの上昇では何も診断できない。幅広い疾患で上昇、アイソザイムを提出。溶血、血液疾患、心筋梗塞急性期などで。悪性腫瘍、肺線維症などの活動性を反映。

□ CPK 
 ↑・・筋肉の炎症・破壊が由来。主に骨格筋由来か心筋由来かの鑑別のために、アイソザイムを提出。前者なら筋肉注射後、激しい運動後、筋炎、筋の障害、スタチン副作用、横紋筋融解、後者なら心筋梗塞、心筋炎、心マッサージ後など。

□ AMY=アミラーゼ=アミ 
 ↑・・膵臓あるいは唾液腺由来。高ければアイソザイムで鑑別。膵臓タイプは膵炎・膵癌・合流異常などで上昇、唾液腺タイプは流行性耳下腺炎などで上昇。ただしその場合は合併症の膵炎でアミラーゼ上昇かもしれず。膵炎では血中から早期に消えてしまうのでリパーゼも調べる。膵炎の重症度を反映しない。

□ ChE(コリンエステラーゼ)
 ↑・・栄養過多であること多い。太りすぎか?
 ↓・・栄養不良を示す。この場合Alb、T-Cholも下がってないか確認を。

□ T-Chol=TC (総コレステロール=総コレ)
 ↑・・過食やネフローゼ、甲状腺機能低下で。たまに家族性。正常は220mg/dl以下だが施設ごとの基準値を参照。
 ↓・・肝硬変や重症長期病変で栄養状態が悪化。薬の効きすぎ。

□ TG (中性脂肪=トリグリセライド=トリグリ) 
 ↑・・つまり高中性脂肪。酒の飲みすぎか食べすぎか。たまに家族性。
 ↓・・栄養不良か薬の効きすぎか。

□ LDL-C(悪玉コレステロール) 
 ↑・・動脈硬化の危険因子あり、とみなす。高脂血症の項目で一番重要。高ければ内服で下げる必要あり。

□ HDL-C(善玉コレステロール)
 ↓・・動脈硬化の危険因子あり。

□ BUN=バン 
 ↑・・腎機能悪化。脱水、出血、(高カロリー輸液の)アミノ酸減らす必要あり。

□ Cr 
 ↑・・腎機能悪化。薬剤性(ARB、ACEI、ガンマグロブリン製剤、抗生剤特にカルバペネム、バンコマイシン・ハベカシンなど)ではないか。ほか医原性のものではないか。あるいは貧血・心不全などから起因する循環不全→腎前性腎不全ではないか、というところから疑っていく。

□ UA(尿酸) 
 ↑・・8以上は積極的治療の適応。上昇は痛風と尿酸結石を促す。酒・肉が多すぎ、腎不全に伴うもの、悪性腫瘍によるものなど。

□ Na/K/Cl ・・ ナトリウム+カリウム+クロール=ナトカリクロール。つまり電解質。

・ ナトリウム 
 ↑・・脱水
 ↓・・SIADH、心不全、ナトリウム不足→鑑別のために心不全の除外のための検査、血清浸透圧・尿中浸透圧、尿中電解質を提出。ADHはSIADHでも正常のことありあまり意味無し。ナトリウム110まで下がれば急変の可能性が出てくる。意識障害・痙攣・呼吸停止の可能性を説明。

・ カリウム=カリ 
 ↑・・単に検体の溶血か。腎不全か。脈は減ってないか確認。ACE、ARB、アルダクトン投与によるものかも。
 ↓・・利尿しすぎ。点滴にカリウム不足。インスリンで血糖下げすぎた反映。ジギタリス中毒起こしやすい。

□ BS(血糖) 
 ↑ ・・ まさか点滴側からの採血とか?を除外。ホントに高い→内服またはインスリンで下げる必要あり(IVH管理ならスライディングスケールの指示)。持続点滴見直し変更。不摂生、内服コンプライアンス悪い、膵臓病変、炎症性疾患による耐糖能障害の現われとか。

□ カンジダ抗原 
 ↑ ・・ 真菌感染症のため。疑陽性例あり。高ければ翌日β-Dグルカン測定。

□ CRP(炎症反応) 
 ↑ ・・ 炎症。しかし炎症を敏感に反映するのは熱>白血球>CRP>>ESR。大まかには1日遅れて上昇、ESRは1週間遅れる。

≪ 外注検査 ≫
 病院内でやるには手間(機器のコスト)がかかるので、外部委託して測定してもらう。結果が戻るのは遅くなる。

□ AT-?=アンチトロンビン? ・・ 凝固制御因子の1つ。トロンビンに結合し中和し凝固・血栓を抑制。DICでは当然活性は低下する。肝臓で産生されるので肝不全などでも影響を受ける。なお中和して出来たもの(TAT=thrombin-AT?complex=タット)はDICや血栓傾向の反映といえる。DICでAT?の活性が低下している場合はAT-?製剤の適応となる(その際へパリン投与下が条件)。

□ β-Dグルカン ・・ 真菌感染症のより確実な検査。月2回を越えると保険上キツイ。

□ BNP ・・ 慢性心不全の病態把握のため行う。高ければ画像検査で前回と比較する。スクリーニング目的で多数に行うと、まとめて削られる可能性あり。肺炎など心疾患以外でも頻脈の影響で上がってしまうので、そういうときの測定は無意味。なおアクトス投与による上昇例あり。

□ HbA1c=エーワンシー ・・ 糖尿病のここ1−2ヶ月推移を表す、いわば通知表。ふつうは毎月1回測定。10%を越えると網膜病変の合併頻度が増す。貧血で低下してるかも?

□ KL-6 ・・ 肺線維症の活動性を表す。SP-D、SP-Aも表すが保険上はどれか1つ。

□ EPO=エポ ・・ 造血因子で腎臓から出る。腎性貧血では増加するが、正常の例もある。

□ FDP ・・ 血管内で産生されたフィブリン産物を反映。つまり凝固系をほぼ反映(フィブリノゲンの分解産物つまり副産物までも測定するので)。このうち安定化フィブリンに線溶系が作用して分解されたプラスミンの反映がD-dimerで、こちらのほうが凝固をいっそう反映することになる。注意すべきはこれら2つはDICの重症度を反映しない。しかもDICの存在を必ずしも示すものでもない(むしろ血栓症などの経時的変化で役立つ)。

□ RAST ・・ アレルギーの具体的な抗原検査。抗原が13-15項目セットになっているが、別にランダムに数個選んでもかまわない。抗原(食べ物や花粉など)はすべてで150種類もある。絶対的な検査ではない。料金が高すぎ。

□ RIST=IgE定量 ・・ アレルギーで増加。

□ IRI ・・ インスリン濃度。肥満で空腹時のこれが高ければ、インスリン抵抗性ありと印象づけられ内服選択の参考になる。

□ AFP=アルフェト ・・ 肝細胞癌で上昇。肝障害があれば1回は測るのは人情。
 
□ CEA ・・ 腺癌腫瘍マーカー。喫煙でも上昇。

□ CA19-9 ・・ これも腺癌腫瘍マーカー。

□ PSA ・・ 前立腺癌マーカー。前立腺肥大でも上昇。上昇があれば、その後の運びは責任をもって。

□ シフラ ・・ 肺扁平上皮癌で増加。少しの上昇でも異常。

□ PRO-GRP ・・ 肺小細胞癌で増加。

□ PT ・・ DIC疑い・評価のとき(かなり重症のDICを意味する。つまりDICで異常示すならかなり重症。軽症DICでは増加しないので注意)、肝硬変、劇症肝炎で測定。ワーファリンの指標として測定(トロンボテストでも可だが、本来なら指標の基準があるPT-INRを優先すべき)。

※ 肺癌のスクリーニングは最近ではCEA+シフラ+PRO-GRPで行う傾向。
※ 膵臓癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌のスクリーニングはCEA+CA19-9でまず行われること多い。
※ 疑っての測定しすぎ、はせいぜい指導を受けるだけだが、心の片隅で疑ったのをまあいいかと放置、で済ますのはもってのほか。 

目の移し方の1例。

・ まず白血球→CRP→上がっていれば血液像を確認。

・ ヘモグロビン→低ければ→検体の溶血を疑い→AST、LDH、Kを確認→高ければ再検査。なおヘモグロビン低下(バイタルは無事か?)時に血小板増加→反応性と考え便潜血などで消化管精査、血小板減少→血液像確認。薬剤副作用疑う、マルク検討。

・ TP異常に高ければミエローマ疑いホントに疑わしければ電気泳動など、教科書見て提出。

・ Albみて<3なら、栄養不足かこちらが足してないだけか。ネフローゼないか。じょくそう治りにくい。レントゲンで胸水ないか。ついでにやはりT-Chol、TG、ChEも下がっているのか。

・ AST・ALTをセット、ALP・r-GTPをセットで見る。以前と比べてどうか。前2者対後2者、どっちの上昇が顕著か。後者優勢なら胆道系炎症か。なお胆道系炎症がおさまるときは後2者が遅れて下がってくること多い。

・ AMY上昇→膵炎の証拠がほかにあるか。炎症所見なしでこれだけ高いならやはり気になるので腹部エコー・CTを。合流異常かもしれないが。リパーゼ・腫瘍マーカー(1月につき3項目までで、同一項目は3ヶ月に1回間隔なら許されるとされている)追加は主治医しだい。

・ BUN/Cr、上昇ならどっちが優勢か。BUN上昇顕著なら脱水・出血か、IVHならメニュー見直し→ヘモグロビン見直し。両方同様な上がりなら腎臓か→尿出ているか。最近造影剤使ったかところでカリウム上がってないか→再検でやはり高ければモニター装着。

・ もう一度、伝票を素直に、順番にみていく。

※ 数項目を連動させて見て、自分なりの流れを作る。

□ 血管径 ・・ 血管の断面で、一番長いところ(長径)と、それに直行する径(短径)。

□ 血管抵抗=末梢血管抵抗 ・・ 心臓から血液を受け取る多くの血管の弾力の総合。(動脈硬化などで弾力が弱ると)血管の壁の抵抗が高くなり、そこに当たる血液の圧力は高い、つまり(収縮期)血圧は高くなる。よって末梢血管抵抗は心拍出量とともに、血圧を決定する因子の1つである。

□ 結果待ち ・・ 検査結果(採血・画像)などの。
 

□ 血球貪食症候群=hemophagocytic syndrome=HPS ・・ まれな疾患で、小児に報告例が多い。感染・腫瘍・膠原病(とくにSLE・成人Still病)などにより活性化されたマクロファージが血球・血小板などの血液構成成分を貪食、サイトカインと相互作用してあちこちの臓器障害をきたす。

http://www.f-teisinhp.japanpost.jp/HOMEPAGE/profile/profile/ProfileNo.30.pdf診断基準など。

※ 原発性のものもあり乳児発症で家族性(劣性遺伝)。
※ 成人では半数が悪性リンパ腫によるもので、特別にLAHS=lymphoma-associated hemophagocytic syndromeとよばれる。また1/3がウイルスによるもので、これも特別にVAHS=virus-associated hemophagocytic syndromeとよばれている(小児ではEB、成人ではEB、CMVが最多)。

 実際の診断は骨髄標本の採取から開始して、リンパ球の単クローン性増殖を証明して、組織型に応じた治療を検討。

 治療の基本は
・ ステロイド・免疫抑制剤→高サイトカイン血症に対して
・ 輸血・造血剤→各種血球減少に対して
・ 抗生剤→感染に対して
・ VP-16→症状悪化の場合(安易な使用は二次性白血病を招く)
                    
□ 血胸 ・・ 外傷などで肺の外の「胸腔」に血液がたまって肺が圧迫された状態。空気もいっしょにたまると「血気胸」。

□ 血小板 ・・ 血を止める働き。正常値は各検査法で異なるが、大まかには15-30万/μL。1-2万を切ると出血傾向は必発で、40万を越えると血小板増加症とよばれる。なお血小板の増加は出血によるヘモグロビン低下への反応性の変化かもしれない。

□ (多発性)結節影 ・・ <結節>とはふつう8ミリ以上のサイズをさす。これが2個以上あれば<多発性結節影>と呼ぶ。引き続き空洞化・石灰化の有無をみる。なお<結節影>より小さいのは<粒状影>。
 多発性結節影を呈する疾患
・ 転移性肺腫瘍(最多)・・両側が多い。
   粟粒パターン→甲状腺癌・肺癌など 
   大結節→腎癌・睾丸腫瘍・肉腫など
   石灰化もあり→卵巣癌・乳癌・睾丸腫瘍・骨肉腫・軟骨肉腫
・ 肺胞上皮癌 ・・ 多すぎる痰の細胞診で確定。
・ 悪性リンパ腫 ・・ 肺門・縦隔リンパ節腫脹もあるはず。
・ ハマルトーマ ・・ 単発でなく多発性のこともあり。
・ 肺結核 ・・ S1,2,6に好発。
・ 非定型抗酸菌 ・・ 中葉・舌区に好発。
・ 細菌性肺炎 ・・ ブ菌の血行性肺炎による場合。
・ アスペルギルス ・・ 空洞を伴う。
・ 肺動静脈ろう ・・ 球状で分葉、辺縁明瞭で内部均一。
・ 塵肺
・ アミロイド−シス
・ 日和見感染 ・・ 免疫抑制患者の場合、あらゆる細菌・真菌で多発結節影を呈する可能性がある。

□ 血栓溶解剤 ・・ 心筋梗塞などに使用される、血栓を溶かして血管の閉塞を解除するための薬。あくまでもそこまでの作用で、動脈硬化による狭窄には当然作用しない。

□ 研修医=ノイヘイレン=ノイヘ ・・ 大学病院・教育病院では最下層の人種。しゃあない。しかし医者は誰もが経験する。ただし厚生省とか官僚?になる奴は別。

□ 献血車のバイト ・・ 血圧測定のポチッとな!のみがドクターの仕事。割安(1-2万)で拘束時間も長く(朝〜昼食自前〜夕方遅く)、当然研修医に回ってくる。

□ 研修日=バイト日 ・・ ドクターの場合、どっかへ研修に行くという意味ではなく、臨時バイト日など名目の週1回平日休み。もちろんバイトをしようが休もうが個人の自由。民間病院では当たり前にある。常勤先の院長にとってはデキモノでしかない。

□ 『検討しておきます』 ・・ 学会での逃げ言葉。質問を一蹴。「あとでまたお送りします。先生はどこの・・?」とか律儀で容量の良い輩もいる。

□ 検尿 ・・ 外来初診時に儀式的に行われる、基本的な検査。健診では糖・蛋白の有無が特に問題となる。 
□ 劇症肝炎 

 定義では「初発症状出現から8週以内にプロトロンビン時間が40%以下に低下し、昏睡?度以上の肝性脳症を生じる肝炎」。

 さらに?急性型(上記期間が10日以内)、?亜急性型(上記期間が11日以上)に分けられる。

 慢性肝炎の急性増悪との鑑別を要する。

 なお劇症肝炎でプロトロンビン時間が40%以下→昏睡に至るまでの期間は6割が4日以内なので、早期の決断(専門機関への紹介)が必要だ。
 もっと具体的にはプロトロンビン時間が60%以下に下がる以前にコンサルトすべきとされている。

 なお劇症肝炎の定義までいかない状態・・肝性昏睡?度の場合は「急性肝炎重症型」とよばれる。この場合も3割は?度の昏睡に進むので、劇症肝炎の予備軍的存在である。また、劇症肝炎の定義よりも発症が遅れたケース、特に症状出現が8-24週の場合は遅発性肝不全(LOHF ; late onset hepatic failure)と呼ばれ予後不良。

 これら予後不良である劇症肝炎、LOHFの診断がついた場合はIVH管理とし(アミノ酸は投与してはいけない)、全身管理のほかに人工肝補助療法<血漿交換+血液濾過透析(循環動態不安定なら持続的透析のCHDFで開始し、それでも不十分なら高流量で短期型ののHDFへ)>を開始し、同時に死亡が予測された場合の生体肝移植についても考慮(http://www.asahi-net.or.jp/~uz5m-ysb/geki11.htmlにガイドラインあり)すべきとされている。

□ ゲイン ・・ 超音波検査で、画面調整のうちの「明るさ」調整。上げると明るく、下げると暗くなる。調整して検査開始!

■ 外科くずれ ・・ 外科から内科に<自称>転向した医師。小さなオペができる消化器内科医のケースが多い。そのためか大阪では(他も?)消化器内科医が多い。あまりいい言葉でないため、陰で言われるか本人が自己防衛的に使う。

□ 下血 ・・ 肛門からの出血。チョコレートのような黒っぽいのはタール便で胃・十二指腸の可能性。真っ赤な出血は大腸あるいは肛門かも。

□ 下痢 ・・ 便秘の反対。単なる下痢ならロペミンなど止痢剤を処方。高熱があれば腸炎のこともある。特に細菌性腸炎が疑われる場合は止痢剤は使わない。菌を封じ込めてしまうので。

□ ゲンタシン=ゲンタ ・・ 抗生剤の塗り薬。

□ 原発性アルドステロン症 ・・ 2次性高血圧の数%を占める。現状のスクリーニングではまず 安静臥位30分後に採血(レニン=PRA・アルドステロン=PAC)、それぞれ上昇あれば(しかもPAC/PRAが20以上なら本症が疑わしい)フロセミド2時間立位負荷試験を行い、レニン低値例では入院後精密検査を行う、といったもの。

 分類では、

? 片側副腎病変

・ アルドステロン産生腺腫=aldosterone producing adenoma=APA ・・ 腫瘍のサイズとPACとの相関はない。
・ 片側過形成=unilateral adrenal hyperplasia=UAH
・ 片側副腎多発結節性
・ アルドステロン産生副腎癌=aldosterone producing carcinoma=APC

? 両側副腎病変

・ 特発性(両側副腎過形成)=idiopathic hyperaldosteronism=IHA
・ 原発性副腎過形成
・ 糖質コルチコイド奏効性・・遺伝子異常( 常染色体優性遺伝)による。

? その他
・ 家族性
・ アルドステロン産生副腎外腫瘍

これらを総合して、主なものだけ分類すると
?アルドステロン産生腫瘍(腺腫または癌腫)
?特発性アルドステロン症(片側か両側)
?糖質コルチコイド奏効性アルドステロン症
?アルドステロン産生副腎外腫瘍

・ 超音波・CTで過形成・腫瘍の鑑別を行う。副腎シンチはなるべく前投薬(デキサメタゾンによりACTH抑制)の上施行する。腫瘍・過形成の疑い濃厚で、確定までいかない場合(※)は左右の副腎静脈血中のアルドステロンを測定する(選択的副腎静脈採血法=副腎静脈サンプリング)(♯)。病側では健側の10倍以上を示し、両側過形成では双方とも高値である。
※ CTによる副腎病変検出可能な大きさは7ミリ以上。6ミリ以下は不可能。
♯ 最近ではACTH負荷前後の副腎静脈採血が最も有用だという意見もある。

・ 腺腫・癌腫と確定すれば内視鏡下で摘出。手術しないならまず抗アルドステロン剤の内服。血管障害進行例ではオペ後も高血圧は持続する。

・ 過形成例は、まず抗アルドステロン剤から降圧剤を選択・追加。

糖質コルチコイド奏効性アルドステロン症の場合はデキサメタゾンを継続投与。

※  初期にはカリウム異常がみられない場合が多いので注意。 

□ ゲフィチニブ 

 商品名<イレッサ>が有名。EGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害剤。

 肺癌のうち非小細胞癌の一部(女性、腺癌、非喫煙者で特に)に劇的な効果。

 ところが非小細胞肺癌に無差別投与した場合、生存期間の延長が得られなかったというデータが出てしまい、一時期この薬剤の存在意義そのものに疑問が持たれた(ISEL試験)。http://www.npojip.org/sokuho/050118.htmlここまで批判している人も。

 だが学会関係者は前もっての有効性の検討を行うことで有用性を証明できる、と考えている。いわゆる「個別化医療」の実現だ。

 最近のトピックス↓

 著効例の8割に特徴的な遺伝子異常が見つかった。特定されたのはEGFRチロシンキナーゼドメインで、中でもEGFRシグナル伝達系を増強するという部位。これのあるなしで感受性の予測をする期待もあるが、この変異がない例でも薬剤の有効症例があり、絶対的なマーカーとは言い難い(なので表現上は特異的でなく、特徴的)。そこで最近では遺伝子発現解析(ゲノム上にある20000以上の遺伝子の中から!)を用いた感受性予測の試みがなされている。

※ EGFR=上皮成長因子受容体。ゲフィチニブの標的となる分子。
※ EGFRチロシンキナーゼ:EGFRシグナル伝達系(癌増殖命令の伝言ゲームのようなもの)の初回の段階に位置する。
※ EGFRシグナル伝達系:EGFがEGFRに結合するとEGFRが二量体に変化して細胞増殖へ向けた伝言ゲームが開始される。

 抗癌剤投与では初回治療(ファーストライン)と既治療(セカンドライン、サードライン・・)に分けられるが、ファーストラインで有効だったとの証拠はない。だがセカンドラインでの単独投与の有効性が証明されている。
□ 高圧的 ・・ 有無を言わさない、生意気で圧倒的な態度。よくあるのは目上が目下に取る、極端な態度。攻撃的な意味でも使用。

□ 抗HIV薬 

 種類は大きく2つ。

?逆転写酵素阻害剤(さらに核酸系<DNA合成時に巻き込まれ阻害>=NRTIと非核酸系<逆転写酵素にひっつき阻害>=NNRTIとに分かれる)

?プロテアーゼ阻害剤<HIV蛋白質を切り取る役目のプロテアーゼを阻害>=PI。

?の2つと?を加えた合計3つは3本柱といわれている。

※ 逆転写酵素:HIVが細胞に侵入したあと自己の遺伝情報をRNA→DNA変換する際に必要なもの。

 1997年より、これらを複数組み合わせた多剤併用療法(HAART=Highly Active AntiRetrovial Therapy)   :   現実的には3-4種類で、基本的にはNRTIから2つ、NNRTIかPIから1つ以上選ぶのがスタンダード  :   が始まってからは、死亡者数が激減、社会復帰例も増えているという。この3-4種類という多さには、単剤だと変異をきたしやすいウイルスのその確率を減らして、耐性を防ぐという意味がある。

 さらに第4の柱として期待されているのが、現在第?b臨床試験まで進んでいる「AK602」だ。細胞表面でウイルスが本来結合する、ヒト側受容体CCR5という蛋白部位をこの薬剤で先に結合させ、ウイルスを侵入口でシャットアウトするというもの。上記3種類とは全く違う内容の薬だ。

□ 講演会 ・・ 通常はMRがスポンサーとなり、教授ら上層部の人間による説明・講演が行われる。スポンサーがいるため、内容はそれを考慮した上でのものになりがち。従って、安易に鵜呑みにすべきでない。

□ 抗核抗体 ・・ 膠原病のときなどに上昇する、自己抗体。陽性でも意義が不明のときもある。

□ 高カリウム血症 ・・ カリウム(K)が血液中に増加した状態。極度に高いと徐脈・心停止すらきたす。Kを含む高カロリー輸液は中止し、具体的にはKN1AなどのKフリー輸液+アミノ酸+50%TZなどの組み合わせにする必要に迫られる。職場では「高カリ」と略される。心電図異常を認めるような例では早急に下げる必要がある。グルコン酸カルシウム(=カルチコール)静注、G-I(グルコース・インスリン)療法・・10%TZ 500mlに対してレギュラーインスリン(速効性。名称に「R」がついてるもの、たとえばノボリンRやヒューマリンRなど)10単位を混注して2-3時間投与、重炭酸のほか陽イオン交換樹脂など。

□ 高カルシウム血症 ・・ カルシウムが高いかどうか評価する前に、できればアルブミン値で補正すべき(簡易法:血清カルシウム値+4−アルブミン値)。14mg/dlを超える場合は急死の可能性あり、急いで治療する。高カルシウムといえばQT延長が有名だが、16mg/dlくらいにまでならないと出現しないそうなので、こればっかりアテにしてもいけない。治療は?脱水の補正、と?カルシウムの排泄促進の2本柱。よって生食の大量投与(200-400cc/hr)と利尿剤投与が原則治療だ。一般にカルシウム13mg/dl以下は生食大量のみ、それ以上は利尿剤を追加すべき。

□ 高カロリー輸液=IVH=TPN ・・ 栄養状態の悪い人、特に低アルブミン血症の冠患者さんに使用される。手・足のオモテの浅い血管からする「末梢輸液」とは区別される。高カロリーの
場合は?頸部、?鎖骨上または下部、?そけい部 のいずれかから投与。深い静脈からいくので。末期的な状態での投与は逆に一般状態の悪化を招くとされている。
 

■ 高血圧(HT)=ハイパーテンション=ハイパテ 

 血圧が高い人をさすが、病院でだけ血圧が高い「白衣高血圧」に注意。自宅には1台血圧測定器が必要。噂では1年で壊れるらしいが。手首で測定する器械は心臓から遠いのでやめとこう。

 高血圧の9割は本態性高血圧といって、これといった原因がないもの。残り1割が何らかの原因がある二次性高血圧と呼ばれるもの。

 二次性のうち最も多いのが原発性アルドステロン症で、クッシング、褐色細胞腫が続き、いずれも副腎病変で外科治療による治癒が可能。見逃さないため、高血圧患者ではレニン・アルドステロン・コルチゾールを測定すべき(なるべく午前中で安静臥位30分後以降)。

※ 日本高血圧学会による「高血圧ガイドライン2004」における降圧目標
? 高齢者:140/90mmHg未満
? 若年・中年者:130/85mmHg未満
? 糖尿病・腎障害患者:130/80mmHg未満

※ 脳梗塞急性期に関して ・・ 生体のストレス反応として血圧は上昇、1-2週間で正常に戻ってくるパターンが多い。

※ ガイドラインは年々変遷がみられており、最新ではJSH2004をhttp://www.cardiovascular.jp/jsh.html参考に。

※ 最近では欧州高血圧学会(ESH)のガイドライン2007年版がトピックス。合併症に新たにメタボが追加、また腎疾患も追加。治療ではα遮断薬が第一選択から外され、β遮断薬は心血管イベント抑制効果が弱いと評価が落ちたもののかろうじて(第一選択に)残った。

□ 高血圧緊急症

 JSH2004という最新の基準では、病気別に使用が推奨される薬剤が決められた。いずれも持続静注。
・ 大動脈解離→ニトログリセリン、二トロプルシド、ニカルジピン(以上の3つはβ遮断薬も併用)、ジルチアゼム。
・ 急性心筋梗塞→ニトログリセリン、ジルチアゼム
・ 急性左心不全→二トロプルシド

※ 

● ニトログリセリン:ミリスロール、ニトロール

● ニカルジピン:ぺルジピン
    以下のときは禁忌! → 頭蓋内出血で止血完了してない場合の出血助長、脳卒中急性期の頭蓋内圧亢進がある場合
 
● ジルチアゼム:ヘルベッサー

□ 脳梗塞急性期における抗血栓療法 

? 血栓溶解療法

・ 経静脈法 ・・ 発症3時間以内の超急性期t-PA投与で予後改善、つまり有効というデータが海外で出たわけだが出血合併症が多く、投与量や投与基準などが明確でない。

・ 経動脈法 ・・ 一部の施設でt-PAの選択的投与(つまりカテーテル経由で病変部のみを狙った)の優れた有効性が報告されているにとどまる。

? 抗凝固療法

・ ヘパリン ・・ 様々な研究の結果、無効であることがわかっている。ただし凝固異常疾患があるとか心疾患があって、血栓予防が必要なケースは別。

・ 低分子ヘパリン ・・ ヘパリンより出血の副作用は少ない。が、有効性は証明されているわけではない。

・ アルガトロバン ・・ 選択的抗トロンビン薬。ヘパリンとは違って血栓成分を狙って作用するので出血性の合併症が少ない。発症48時間以内の脳血栓(特に皮質梗塞)に有効。7日間投与。

※ 保険適応ではないがt-PAを使用した場合、24時間以内は抗凝固療法は控えるべきとされている(脳卒中ガイドライン2004)。

? 抗血小板療法

・ オザグレルナトリウム・・ 選択的トロンボキサンA2合成酵素阻害薬。トロンボキサンA2は血小板凝集作用と血管収縮作用をもつ。これを阻害することで抗血小板作用、血流増加作用をもたらす。発症後の運動麻痺の改善が証明されている。

・ アスピリン ・・ 160-300mg/dayを発症後48時間以内投与に開始すれば再発↓、予後↑という結論。出血の合併症も少ない。

・ 抗GP?b/?a抗体 ・・ 血小板膜蛋白の抗体。まだ認可されていない。 

□ 抗コリン薬 

 吸入薬の1つ。従来のものは1日3〜4回と面倒くさく効果もあまり期待されてなかったが、2005年発売のチオトロピウム、つまりTiotropium bromide(スピリーバ)はかなりの効果だ。機序的にはムスカリン受容体であるM3を阻害する。吸入30分後に気管支拡張、しかも1回の吸入で24時間効果が持続、3ヵ月後での長期連用でも効果に衰えがない。副作用もこれといってなく、呼吸器科医が久しぶりに褒めたたえた薬。

※ 抗コリン薬はCOPDの治療に特に期待できる。というのは気道収縮に関与するのは喘息では炎症由来の化学物質である一方、COPDでは迷走神経由来のアセチルコリンのほうだからだ。

※ ムスカリン受容体にはM1,M2,M3の3つがありM3阻害により気管支平滑筋の拡張がおこる。従来の抗コリン(アトロベント、テルシガン)は選択性がなく、新薬はM3のみを選択阻害する。

□ 高山病 ・・ 以下の3つに分けられる。進行すると?→?→?へと進んでいく。登山開始12-24時間前からアセタゾラミド(ダイアモックス)を1日1-2回内服させるのも予防の1つ。

? 山酔い ・・ 頭痛と、以下の症状から1つあればそう→嘔気、食欲不振、倦怠感、脱力、めまい、立ちくらみ、睡眠障害。
? 高地肺水腫 ・・ 息切れや呼吸困難が出現。
? 高地脳浮腫 ・・ 意識障害やヨッパライ歩行まで加わった場合。

□ 抗CCP抗体=抗環状シトルリン化ペプチド抗体 ・・ 関節リウマチに特異的な抗体で早期診断に有用。RF(リウマトイド因子)のリウマチへの特異度は75%と満足すべきものではなかったが、本検査では95%以上とかなり高い(感度は80%これはRFと同様)。特にRF陰性段階でのリウマチも本抗体陽性例があり(30-50%)、早期発見に向く。実際これが陽性であれば骨・軟骨破壊が進行することが分かっている。ここ1年され始めた検査。リウマチ疑いだがRF陰性例の患者は測定してみる価値が大いにあり・・と思ったらまだ保険適応になってないので注意。

※ 関節リウマチに関連する遺伝子由来のPADI酵素には、アルギニン→シトルリン変換をする働きがある。このシトルリン化蛋白を認識する抗体が本抗体であると分かった。

□ 構語障害=構音障害 ・・ 口がもごもごして何を言っているのかシドロモドロの状態。脳卒中による後遺症の場合こう表現。言語リハビリ医師がいるかどうかがポイント。あまりいないが。

□ 好酸球(こうさんきゅう) ・・ 白血球の一部。アレルギー・喘息で増えることが多いが、寄生虫疾患など他にも原因は多い。

□ 高脂血症 ・・ 高コレステロール血症、高脂肪症の総称。正常値はコレステロールの場合220mg/dl、中性脂肪では150mg/dl。

□ 好中球 ・・ 白血球の中の1つ。細菌感染から身を守る。少ないと細菌感染にかかりやすい。減少するのは重症の肺炎、
抗癌剤の副作用などで。またチクロピジンの副作用で減少することも。好中球を増やすための注射がG-CSF。

□ 抗生剤=抗生物質=AB剤=抗菌剤 ・・ 菌を殺す目的の内服または注射剤。薬局では売ってない。肺炎や尿路感染などで使用。ペニシリンアレルギーに注意。使いすぎで最近出てきた手ごわい菌が「耐性菌」。
□ 拘束型心筋症=RCM=restrictive cardiomyopathy ・・ 文字通り、心臓の血液を送り出す部分である心室(硬い心室:stiff ventricleと表現される)の拡張制限が生じる。不思議と収縮力は正常のことが多い。まれな疾患で受け持ったことがない医師が大半。
 原因不明のものもあれば、2次性(熱帯では心内膜心筋線維症、それ以外の地域ではアミロイド−シスが最多)のものもある。
 拡張不全が病態のため収縮力を上げるための強心剤などは無意味で、利尿剤による治療が主体となる。塞栓症頻度が高いので予防投与が必要。

□ 喉頭鏡 ・・ 人工呼吸器をつける前の段階で、挿管チューブの入り口である声門を観察するための道具。ライトの点灯(電池切れのあるなし)は日頃から気をつけておくべき。

□ 高熱=ハイ・フィーバー ・・ 通常は38.0℃以上をさす。39℃もの高度な高熱の場合は、腎盂腎炎、インフルエンザ、膿瘍、病棟ではMRSAもさらに念頭に置く。

□ 後鼻漏(こうびろう) ・・ 鼻水が鼻から出ず、ノドの方に流れてきて咳き込みの原因となる。なので痰による咳だと間違えやすい。原因として副鼻腔炎が最重要。寝ている間に気管に分泌物が貯留し、起床時または昼間時に咳がしつこく出だす。夜間は咳反射が低下しているため割と平気。逆流性食道炎とならんで原因不明の咳の1原因として有名。

□ 項部硬直 ・・ 髄膜刺激徴候を調べる診察法の1つ。患者に横になってもらい、こちらの手を後頭部に置いてそのまま前屈させる。痛くて前屈できないなら陽性、髄膜炎・クモ膜下出血が疑われる。
※ 左右に回転できない場合はパーキンソン病、頚椎疾患を疑う。

□ 高齢者(病態別ポイント)

○ 高血圧

・ 65歳以上の2/3は高血圧(上140以上または下90以上の場合)。
・ 加齢とともに収縮期圧は上昇し、拡張期血圧は低下する→脈圧の開大。高齢者での「収縮期血圧↑」「脈圧の開大」は心血管病リスクとして重要。
・ 調圧因子(とくに圧受容器)の反射機能低下により起立性低血圧(←独立した心血管病死亡の危険因子)、血圧変動(non-dipper型が増加:予後不良)を引き起こす。
  ※ 起立後の血圧低下は、起立直後3分以内の測定が重要。
・ non-dipper , extreme-dipper型、早朝高血圧ではラクナを伴うことが多い。
・ 増加中の早朝血圧上昇=モーニング・サージは交感神経系・RA系の亢進によるもので、心血管事故と関連する。
・ 白衣高血圧も増加中で、この場合積極的な治療は不要。家庭血圧計を診断の手がかりに。JNC VI(米国高血圧診療指針)では家庭血圧の高血圧とは135/85mmHg以上とされている。
・ 欧米ガイドラインでは降圧目標は140/90mmHg未満としているがそれが妥当かどうかのエビデンスはない。
・ 降圧のスピードには配慮が必要で、降圧は緩徐に行い、一般的に初期量は最小常用量の半量から開始し、めまい・立ちくらみに注意しながら4週間間隔以上で増量し、3-6ヶ月以上かけて目標値までもっていく。
・ 合併症のない場合はCa拮抗薬(脳血管障害抑制)、ARBまたはACEI(心・腎保護作用)、少量の利尿薬が第一選択(β遮断薬は有用でなく禁忌多い、α遮断薬は心不全起こすこと多い)。

○ 虚血性心疾患

・ 女性の場合に重症例が多く、生命予後も不良。
・ アスピリン(心血管イベント抑制)は禁忌がない限り使用。
・ β遮断薬は使用しにくいが少量ででも使用する価値はある。目標としては安静時心拍数を55-60/分に下げる。
・ 亜硝酸剤は狭心症には有効だが、(残存虚血なしでの)長期使用についての効果は不明。
・ Ca拮抗薬は短時間作用型<長時間作用型を推奨。
・ 1枝病変の場合、薬物治療での予後も良好。なので血行再建に関しては慎重に検討すべきだが、左主幹部病変や左前下行枝を含む多枝病変で左室機能低下(LVEF 50%未満)例では積極的にすべきである。
・ 急性心筋梗塞において、無症状が25%にみられるという事実がある。
・ 心筋梗塞の急性期治療が発展してはいるものの、高齢者の院内死亡率は20%前後と高い。

○ 脳血管障害

・ くも膜下出血において、女性の頻度は男性の2倍。しかも発症年齢は男性では加齢とともに減少するものの女性ではむしろ加齢で増加し70歳代でピーク。
・ 心房細動(特にNVAF)の増加により心原性脳塞栓が増加中。
・ 痴呆に関してはアルツハイマーでなく脳血管性痴呆のほうを来たしやすい。

○ 肺炎

・ 無熱で呼吸器症状が乏しい例が多い。平素との行動の変化に注意。痰の色も重要。
・ 白血球数は重篤例の早期には減少して左方移動を伴うことがある。
・ 炎症の評価において、他の感染(尿路・じょく創)の合併に注意。

○ 糖尿病

・ 耐糖能は低下する。理由はインスリン抵抗性↑(体組成の変化)、インスリン初期分泌の遅延・低下(膵β細胞の疲弊)。
・ 最近、インスリン抵抗性がミトコンドリア活性の低下と関連するという報告が注目されている。筋肉だけでなくβ細胞にもミトコンドリアの機能低下が生じるというもので、運動で機能回復が望めるという。
・ 多くは成人期に発症しており罹病期間が長い。一方、老年期での発症は軽症で罹病期間も短いことが多い。
・ 高齢者糖尿病治療ガイドラインによると、以下の場合に厳格なコントロールが必要とある。
 ? 空腹時血糖が140mg/dl以上
 ? 糖負荷後血糖値が250mg/dl以上
 ? HbA1cが7.0%以上
 ? 糖尿病性網膜症あるいは微量アルブミン尿を認める場合

□ 行路=こうろ=ホームレス
           
□ 呼吸機能検査=スパイロ=スパイログラム ・・ おもに肺活量と1秒量を測定。肺拡散能は一部の施設で可能。肺活量↓は拘束性障害(肺線維症など)、1秒量↓は閉塞性障害(肺気腫など)を示唆する。開業医で呼吸機能検査やってるとこは、ほとんどない。症例となる人数も少なく人手も要り、あまり儲けにならないからだ。

(現場)いずれも鼻に栓をして、口に紙パイプをくわえてもらう。
・ 肺活量の測定:数回ふつうの息をしてもらい、大きく吸って〜どんどん吸うどんどん吸う→はい吐いて吐いて吐いてず〜っと吐いて!→はい、もうふつうで。お疲れさん。
・ 1秒量の測定:はい、思いっきり息を吸ってぇ・・・はい!そこでビュウッ!と一気に吐き出す!お疲れさん。

□ 呼吸生理 ・・ 基礎医学レベルでの呼吸に関する学問。酸素・二酸化炭素分圧の計算、組織学が加わったりと臨床から離れる。しかし呼吸器科の人間には必須の学問。動脈血ガスデータの解釈には欠かせない。

□ 呼吸抑制 ・・ 血液中の二酸化炭素(分圧)の上昇などによって、呼吸の運動そのものが<自発的に>されなくなってくる場合。二酸化炭素の上昇は肺気腫など肺病変の関与が多いが、神経疾患(ALS、重症筋無力症、多発性硬化症など)の存在も忘れてはならない。

□ 骨シンチ=骨シンチグラフィー=骨シンチグラム ・・ 癌の骨への転移を調べる目的などで撮影する、骨の全体像写真。

□ 骨髄移植=BMT=bone marrow(骨髄)+transplantation(移植) ・・ 移植するための造血幹細胞を、かつてはHLA同一同胞骨髄から得る、という方法しか取れていなかった。厳密にはこのときの方法を「骨髄移植」と呼ぶ。その後HLA一部不一致、非血縁者など適応が拡大し、用いられる細胞・手段も多種多様となり、現在では改めて「造血幹細胞移植」と呼ばれるようになっている。

□ 骨髄抑制=ミエロサプレッション ・・ 血液を造る骨髄の機能が抑制された状態。抗癌剤の副作用などで起こりうる。白血球の減少は感染を、赤血球の減少は貧血を、血小板の減少は出血を招く。化学療法を始めて1〜2週間が骨髄抑制の強い時期。

□ 呼吸抑制 ・・ 呼吸が苦しいと通常呼吸の回数は増えるが、血液中の二酸化炭素が多い病態(肺気腫など)では逆にそれ自体が呼吸の回数を遅くさせ、最悪の場合は呼吸停止となる。肺気腫の患者に睡眠薬・抗不安薬を出せば呼吸抑制となる恐れあり。

□ コスト ・・ 病院の器具の値段を指していう場合と、あと医療従事者の給料・年俸などを意味する場合がある。

□ コベン ・・ 「オーベン」はドイツ語だがこっちは造語。結局はオーベン支配下の研修医を指す。

□ コラーゲン ・・ 臨床での場合は「膠原病(Collagen Disease)」の意で使われる。

□ コンサルト ・・ 目上、オーベンや他科への相談のこと。
 
□ コンタミ ・・ 不純物が検体に入ってしまうこと。取り直し・やり直しに迫られる。なので風邪のときは実験しないほうがいい。

□ コンプライアンス ・・ 病気の分野では「弾性」、つまり伸びやすさの意味で使われる。または、患者が内服をきちんと守れているかの状態。

□ 誤嚥性肺炎=嚥下性肺炎=誤飲性肺炎 ・・ 食べて食道に入るはずが、脳梗塞の後遺症のせいなどで誤って気管に入り、その下の肺で炎症を起こしたもの。窒息に至らず幸いではある。治療薬は通常の肺炎の治療とはチト違い、クリンダマイシンなどで嫌気性菌をターゲットにおくのが通常。食事介助がせっかちだとそれを助長する可能性もある。

□ 「ご指摘のように」 ・・ 学会会場などで質問を受けたときに返答に際して用いる言葉。こう言われると少し気分はいい。

□ ゴーストライター ・・ 多くは教授の論文、刊行本を陰で作成している医者。清書を教授が見て修正、ゴーサイン。書かされている医者が自分を皮肉ってこう呼ぶ。だが引き受けた人間が悪い。

□ ゴルフコンペ ・・ 大学病院に限らずどの病院でも行われるゴルフイベント。順位別に商品が用意され、終了後はフロにつかって雑談が定番。このとき様々な情報が病院どうしで交換される。
□ サーフロー=留置針(りゅうちしん) ・・ 24時間点滴など長時間の点滴を要する場合に、これで血管を確保する。けっこう高価。

□ 細菌性胸膜炎 ・・ 細菌感染によって、気道から入った菌が肺炎を起こし、やがて肺とその外の胸膜との間である「胸膜腔」に炎症を起こして胸水がたまった状態。これが膿だと「膿胸」。なお胸水から菌が検出されることはむしろ少ない。

□ 細菌性髄膜炎 ・・ 髄液が流れる髄液腔に浸潤した細菌による炎症。症状・合併症はむしろこれによる免疫応答によるところが大きい(なので抗生剤で菌が消えても所見続くことあり)。健康人成人発症では肺炎球菌が最多(重症になりやすい)、たまにB型連鎖球菌、リステリア(髄膜炎菌、インフルエンザ菌はまれ)。古典的3主徴(発熱・頭痛・項部硬直)は9割に認める。ひどいと痙攣、頭蓋内圧亢進による意識障害。疑われた場合は血液培養はもちろん抗菌治療を早期に開始する(救急室到着後60分以内!)。肺炎球菌がターゲットだが細菌はペニシリン・セフェム耐性菌が増えたため、小児・成人ともに3代セフェムとVCMの併用を考慮する。ABPCに関しては3ヶ月以下、55歳以上または免疫低下患者の場合に投与。脳膿瘍・硬膜下血腫が疑われる場合はMRIで確認。髄膜炎ではGd造影で広範な髄膜増強効果をみるが特異的所見ではない。髄液所見で糖19mg/dl以下、蛋白220mg/dl以上、細胞数2000/mm3以上あるいは多核白血球1180/mm3以上はこれを強く示唆する所見であるとの報告あり。

□ 再狭窄=re-stenosis=リステ ・・ 冠動脈への形成術(バルーンやステントなど)のあと、しばらくして造影してみたらまた細くなっていた状態。

□ サイクリング療法 ・・ 抗生剤頻用による耐性菌増加を抑制するため、数種の抗生剤を一定期間ごとにローテーションしていく方法。まだ確立された方法ではなくエビデンス待ち。

□ 再生不良性貧血=アプラ ・・ 骨髄の全系統(赤血球・白血球・血小板)の産生が抑制された状態。

□ 臍帯血幹細胞移植=CBSCT=cord + BSC(血液幹細胞)+transplantation(移植) ・・ HSCT=造血幹細胞移植で最も好ましい?HLA一致同胞、また次の手段?非血縁者間骨髄・・これらは骨髄バンクで努力がみられるが依然として症例が足りない。そこで第3世代のHSCTとして期待されているのがこれ。出産後に回収される臍帯血は量こそ少ないが未分化(T細胞少なく拒絶少ない)・大きな増殖能をもち、移植1年後の増殖能力が強い。このため幅広い効果が期待されているが、現状では急性白血病で良い成績を上げているものの、それ以外の疾患、特にMDSや再生不良性貧血では成功例がまだ少なくこれからの成績が待たれるところだ。
 
□ サイナス=サイナスリズム=OSR=NSR=正常洞調律 ・・ 心電図の所見で、つまり不整脈がないことを指す。

□ 左心耳(さしんじ) ・・ 左心房の中の盲点的部分。袋小路。通常の心臓超音波では見えにくい隙間部分。血液の流れが遅いので淀みやすく、特に心房細動や拡大した左心房ではここに血栓が出来やすい。確認は経食道エコーで。

□ サスペクト=サスプ=s/o=疑い

□ 左方移動 ・・ 激しい炎症・あるいはある種の白血病が原因で、成熟途中の若い細胞が、未熟な役目の状態で血液中に放り出され多数みられること。結果的に検査項目の『血液像』で<stab>の増加がみられる。

□ サルコイドーシス=サ症=サル ・・ 肉芽腫形成を特徴とするびまん性肺疾患。病変部位から皮膚の常在菌であるPropionibacterium.acnesつまりアクネ菌が分離されたのは有名な話。これが原因とまでは確定してないが、サ症のリンパ節にはアクネ菌またはその系統のDNAが存在しているのは確かだ。そこでアクネ菌に対して何らかの遅延型アレルギーを有する人だけに、ストレスなどの環境要因によってアクネ菌増殖が起こって肉芽腫が形成されてサ症を発症するという仮説がある。

□ ?音 ・・ 心音のうち、?音の直後聴かれることのある音。心不全のとき聴かれるが、健康成人でも聴かれることあり。

□ 散瞳 ・・ 瞳孔が拡大している状態。ペンライトで反応しない場合、死亡確認の根拠の1つとして表現される。

□ 三方活栓=三活 ・・ 点滴のコードの途中にある、たいてい緑か青か透明の「T」字型のちっちゃい器具。向きを変えることで点滴を流したり止めたりする。血液がこびりつくと外しにくくなる。

□ 三割負担 ・・ サラリーマンなど仕事している人間・その家族が、かかった医療費に対してまかなう割合。この引き上げによりサラリーマンの受診率は激減している。会計で大声でもめている患者がいれば・・そうかもしれない。

□ 在宅酸素療法==在宅酸素=HOT(ホット) ・・ その字の通りで、自宅で酸素ボンベを備え付けて鼻カニューラで酸素を吸う。持ち運びもオプションで。肺気腫への適用が多い。

なお適応としては
? PaO2 55Torr以下
? PaO2 60Torr以下でも睡眠時または運動時に著しい低酸素を来たし、医師が必要と判断した場合

 最近は心不全でもOKが出たが、半端な治療下での不適当な使用が目立つ。
 身体障害者(呼吸障害)の書類作成にあたっては、呼吸器学会の認定医の資格がいる。

■ 残胃癌(ざんいがん) ・・ (胃癌で)初回手術後に再発したタイプと、その手術とは関係なく新規にできたタイプに分けられる。なお日本では初回手術後の再発率は0.6%と低い。依然残っていた発癌刺激によるもの、また胃内部環境の変化(胆汁逆流しやすいBillroth II法やピロリ)が誘因と考えられている。なので幽門の温存はダンピング予防だけでなく残胃癌の予防にもなる。
□ シャーカステン ・・ レントゲンなどのフィルムを掛けるところ。

□ 主治医制 ・・ 「その患者のことは全てその主治医にコールして聞けばよい」制度。 病院によっては「当直制」。当直制だと夜間呼ばれるのは当直医だが、主治医制だと主治医が呼ばれるので大変。医療ミスの根源の1つ。大まかにいうと、大学病院では主治医制、民間病院ではオンコール制が多い。

□ シグマート ・・ 「ミリスロール」とはまた別系統の亜硝酸剤。物質名「ニコランジル」。内服・点滴あり。

□ 試験開腹 ・・ 腹痛の患者などで病名が確かでなく、診断のほか治療も兼ねる目的で行われるものをいう。もちろん家族の十分な了解が要る。

□ 指示(しじ) ・・ カルテ用紙の右側にドクターが記載する、ナース側への命令内容。点滴・内服・検査など。官公立などの病院では指示出しを早くに迫る傾向にある(昼1〜2時を要求)。民間では夕方の申し送り直前までが多い。

□ システミック ・・ systemic=系統的な。臨床では「全身の」の意味。膠原病や免疫疾患などをさしている。

□ 指標=メルクマール ・・ 病気を治療していく上での効果の判定のもととなるもの。これをフォローしながらカルテの記載がされているか、それでその医師の能力が分かる。

□ 社会的入院 ・・ リハビリなど、病気の長期療養目的で、ほぼ自立の状態で数ヶ月間(主に療養病棟)に入院すること。しかし実際は病院にとってのベッド埋めの名目のことが多く、悪しき慣習となっている。2011年の療養病棟閉鎖により、この立場の人々は行き場を失うことになる。

□ 主幹部(しゅかんぶ)=trunks(トランクス) ・・ 心臓の場合は冠動脈の、左冠動脈主幹部のことをさす。冠動脈は右1本、左2本だが、左の2本の根元数センチはは1本である。この部位をさす。したがってここが詰まると左は全滅。心臓の三分の二の動きを失う。

□ 腫瘍マーカー=マーカー ・・ 血液検査の項目で、癌を疑ったときに測定。ただし異常なくても癌を完全に否定するものではない。よく調べるのはCEA , CA19-9など。大腸癌は腫瘍マーカー・便潜血の組み合わせでも見落としが3-4割あるという。今後の課題だ。

□ 腫瘤(しゅりゅう)=tumor(トゥモール)=mass(マス) ・・ 塊。中身が何かには触れてない表現。診察・画像所見の表現法の1つ。

■ シェーグレン症候群=SS 

 慢性唾液腺炎+乾燥性角結膜炎を呈する自己免疫疾患。唾液腺・涙腺の病理組織でリンパ球浸潤。障害部位はこれに限らず全身の外分泌腺にわたる。臓器非特異的抗原としてSS-A52kD蛋白、TCR、熱ショック蛋白、唾液腺特異的抗原としてαアミラーゼ、M3R(ムスカリン作動性アセチルコリン受容体)がある。

 唾液腺障害の機序としては、細菌・ウイルス感染で一部唾液腺破壊→自己抗原流出→(抗原特異的)T細胞活性化→細胞障害性T細胞誘導→唾液腺上皮細胞アポトーシス→唾液腺炎・破壊。これらの気序のうち抗原特異的T細胞に注目した分子標的治療などが練られている。

□ シェロングテスト=Schellong試験=起立血圧試験 ・・ 自律神経機能検査の1つ。臥位から立位変換による血圧の変動をみる。十分安静臥位→血圧測定数回→5秒以内にすばやく起立→以後血圧測定。立位直後、1分、2分・・・10分後まで。血圧測定位置が心臓位置と同ラインの基本は守ろう。正常人では変動はあまりない。起立性低血圧の定義そのものが確立されてないが、一般的に30(収縮期)/15(拡張期)mmHg以上下がればそう診断する文献が多い。

□ 資金繰り(しきんぐり) ・・ 経営困難に瀕した民間病院が職員給与の調達のために、あちこち企業からお金を借り入れること。

■ 社会的入院 ・・ 生活保護下で入院管理まで要さないが、あえて入院させているケース。病院側にとって「精査・リハビリ入院」という言い分を持つ。実際検査はするが、大半は儲け目的であって、期限(報酬が下がってくる)2〜3か月が過ぎればまた他院へと送り、以下繰り返し。全国の生活保護者の入院14.5万人のうち3.4万人が社会的入院といわれている。

□ 消化管出血

・ 全体のうち、上部消化管出血が2/3以上を占める。

・ 上部消化管出血 → 吐血・タール便(黒色便) ・・ Treiz靭帯より口側の出血
・ 下部消化管出血 → 下血(比較的赤い便) ・・ Treiz靭帯より肛門側の出血

・ 緊急消化管出血のうち頻度が特に高いのは消化性潰瘍、静脈瘤である。その他の原因として上部では胃癌・マロリーワイズ、下部では大腸癌・憩室炎など。
※ 下部消化管出血では最近NSAIDによるものが増加してきている。

※ コーヒー残渣様 ・・ 出血から嘔吐までの時間が長いことをあらわす。

・ まず臥位とし、顔面横に向けて誤飲・窒息を予防しバイタルを確認。
・ 脈拍数/収縮期血圧は循環血液量の不足を反映するので出血量の推定に役立つ。
・ 乳酸・酢酸リンゲル液で開始、軽症10ml/kg/hr〜重症では40-50ml/kg/hr。中等症以上では代用血漿、アルブミン製剤、加熱ヒト血漿蛋白も使用。
・ 以上で循環動態が安定するならば輸血はすぐには不要だが、ショックが持続するなら濃厚赤血球や新鮮凍結血漿による急速輸血(400ml-1000ml)が必要。
・ バイタル安定化の目安としては収縮期血圧100mmHg以上、脈拍60-120/minを目標に。
・ 上部消化管出血の場合、内視鏡前に胃洗浄(37℃程度ぬるま湯1500-4000ml)を行っておく(ただし止血効果は期待できない)場合もあるため必須でない。
 ※ 十二指腸潰瘍、特に球後潰瘍の出血では胃洗浄で血液を認めないこともある。
・ 下部消化管出血では直腸診・直腸鏡によって肛門部病変、直腸病変の判別につとめる。その次に内視鏡へ。
・ 血管造影は上・下部内視鏡においても出血源が特定できず、かつ動脈性の出血が持続するのであれば考慮される。
・ 消化性潰瘍では露出血管の有無が重要で、再出血の確率高く内視鏡治療の絶対適応。
・ 静脈瘤では下血が先行する例もあり注意。

○ 薬物治療

・ 上部消化管出血の場合(内視鏡的止血の有無にかかわわず)、胃内pHのコントロール(6以上)が効率的な止血効果や再出血予防に重要な役割を果たす。PPI注射剤によってpHコントロールが容易となった。
・ 静脈瘤出血 ・・ 門脈圧亢進によるものなので、出血予防にはβ遮断薬、硝酸塩を投与。出血予防に関して、内視鏡下治療と薬物治療の比較が行われているが長期観察では薬物療法の安全性・効果が明らかになってきている。
・ 消化性潰瘍 ・・ PPIの静脈投与は再出血の予防に有効である。またNSAID投与中であった場合はCOX2阻害剤に変更する。ピロリは出血予防までの明確なデータはない。
・ Mallory-Weiss症候群 ・・ 止血後はH2ブロッカーなど投与。再発がほとんどないため薬物療法の意義は少ない。
・ 下部消化管出血の場合は薬物療法の効果は少なく、絶食による腸管安静が原則。

○ 食道静脈瘤出血のリスクファクター

? 臨床所見
・ 肝障害の程度(Child分類) ・・ 高度なほどリスク高い。
・ 細菌感染によるエンドトキシン血症 ・・ エンドセリン1の増加により門脈圧が亢進、またトキシンで産生のNOで血小板凝集抑制。
・ 腹水 ・・ 静脈瘤血流を増加。
・ 門脈塞栓 ・・ A-P shuntがあるとリスクはさらに増す。
・ 飲酒
・ NSAIDが誘因になることもある。

? 内視鏡所見
・ red color sign(出血率60%弱)とF2以上の青色静脈瘤(Cb)(出血率80%弱)所見。なお硬化療法後のF0症例での非定型的なRC signの出現は出血の危険性が高く、たとえF0でも硬化療法などの追加治療が必要。

? 門脈圧血行動態
・ 門脈圧12mmHg以上で静脈瘤出血がみられる。しかし静脈瘤の程度を表すのは門脈圧でなくあくまでも静脈瘤圧(内圧)のほうであり、そのほか静脈瘤径・壁厚がリスクファクターに関与する。
・ 側副血行路の有無 ・・ あったほうが門脈圧は当然低下する。中でも非再発率に関与する経路は胃ー腎シャントであると報告されている。

○ 食道静脈瘤の治療

・ S-Bチューブ・ショック治療優先。
・ 引き続き内視鏡による止血治療へ。これでも不十分な場合はIVRや外科手術が施行される。
・ 内視鏡治療は従来はEISだったがEVLが増えてきている(併用もあり)。これまでの試験などデータではEVLが静脈瘤出血のもっとも優秀な治療法である。EISに比し副作用も少ない。
・ EVLでは出血点を正面視し十分吸引して出血点の静脈瘤を結紮する。これで止血困難ならEISが有効。また出血点がEC junction直下にある場合、出血点そのものが不明瞭な場合にもEISが有効である。

○ Mallory-Weiss症候群

・ 嘔吐・咳・排便・吃逆(きつぎゃく)・くしゃみなどによる腹圧上昇、または腹部外傷、体外心マッサージ後などによる。胃カメラ時、食道エコー時にも起こりうる。
・ 粘膜損傷は食道胃接合部〜胃噴門部粘膜。
・ 上部消化管出血の5-15%で30-50歳代男性。
・ 通常は粘膜下層にとどまるが筋層に達するものもある。
・ 噴門部限局が7割。小彎側が多い。
・ 露出血管、持続出血の場合は内視鏡的に止血する。
・ 特発性食道破裂=Boerhaave症候群ではこれよりも重症度が高い・・・胸痛のほか、縦隔気腫、皮下気腫、胸水の合併多い。

○ 胃の出血性病変

・ 内視鏡的止血法 ・・ 出血・血管の状態によって以下から選択(組み合わせも)。

? 機械的止血法 ・・ クリッピングが最も確実。その他バルーン圧迫など
? 局注法 ・・ エタノールなど。広範なoozing(湧出性出血)に対しては近年APC=Argon Plasma Coagulationの有用性が指摘されている。
? 熱凝固法 ・・ 高周波、レーザーなど
? 薬剤散布法 ・・ トロンビンなど。出血点が単一でない場合などに。

・ 以上の処置でも止血が不可能な場合は、IVRか緊急外科手術を選択する。

○ Dieulafoy潰瘍 

・ 激烈な出血をきたす小潰瘍・・・という印象からつけられた病名。これという明確な定義はない。

○ 炎症性腸疾患

? 潰瘍性大腸炎

・ びまん性の粘膜炎症。出血も粘膜からのびまん性のものなので、内視鏡止血を要することは基本的にはない。
・ 大腸内視鏡検査を契機に悪化する例もあり、中でも中毒性巨大結腸症を疑う場合は禁忌である。
・ S状結腸までの挿入で重症度評価が行えることが多いので無理に奥まで入れない。
・ 大量下血の場合は出血のため観察が困難なため、血管造影を選択すべき。これにより塞栓術(壊死の合併が危険)、ステロイドの動注にもっていけることがある。

? クローン病

・ 全層性の炎症で深い潰瘍→深いため露出血管を伴うこと多い。出血はびまん性でなくピンポイントが多く、内視鏡的な局所止血が可能なことがある。
・ しかし出血部位としては小腸が多く、内視鏡での同定・処置は困難。その場合出血部位の特定には血管造影・出血シンチで検索。これにより塞栓することあり。

?・?いずれも出血が持続するなら手術による腸管切除となる。

○ 虚血性大腸炎

・ 80-85%が非壊疽性であるが15-20%が壊疽性であり、その場合病変は大腸壁全層に及ぶ。非壊疽性のほとんどは一過性・可逆性だが一部は区域的な狭窄を残す。
(以下、一般的な非壊疽性について)
・ 原因はほとんどが特発性。
・ 細動脈レベルでの虚血なので、血管造影しても異常は認めない。
・ 好発部位は左側結腸で、区域性に分布。
・ 脾彎曲部 ・・ 中結腸動脈(上腸間膜動脈由来)と左結腸動脈(下腸間膜動脈由来)の両者の血流が比較的乏しい領域。欧米では好発部位。
・ わが国では60-70%が下行結腸肛側〜S状結腸口側にかけて広範囲に認める。
・ 動脈硬化が背景に多い。男<女。大腸癌、経口避妊薬、内視鏡前処置の下剤、長距離走が原因になることも。腹部大動脈バイバス手術後の合併症としてもありうる。
・ 症状は突然腹痛→水様性下痢→鮮血便(下痢で薄められ真っ赤でないことが多い)。 ※ 鮮血便の85%は大腸・肛門からの下部消化管出血。
・ 症状・内視鏡所見では感染性腸炎、抗生物質起因性大腸炎との鑑別を要する(海外渡航・食事内容・内服)。
・ 大量下血の場合は本症と大腸憩室の場合が多い。前者では内視鏡での観察がしやすく(下痢が先行して)、後者はしにくい(いきなり血便発症なので血で見えにくい)。
・ CTで腸管の全周性肥厚を認めるが細菌性腸炎でもみられ特異的でない。
・ 内視鏡所見は通常1-2週間で消失する。
・ 全身状態不良(脱水・ショック)例ではむしろ腸間膜動脈閉塞を疑い造影CT・血管造影・MRAを施行すべき。
・ 内視鏡所見
  発症直後 ・・ 黒褐色の壊死粘膜が付着した粘膜像。
  発症6-48時間 ・・ 全周性びまん性浮腫、斑状・地図状発赤(融合しており、びらん・潰瘍が結腸紐沿いに局在、さらに白色の壊死物質付着)。正常粘膜との境界が明瞭。
・ 典型例(つまり一過性・非壊疽性)では禁食期間は1-3日で十分。

□ 消化管穿孔=パーフォレーション ・・ 潰瘍などの消化管の傷害が原因で、消化管の壁が破れたもの。自然治癒は無理なので、通常は開腹して穴を塞ぐ。時間がたつと腹膜炎に進展してしまう。

□ 抄読会(しょうどくかい) ・・ 医局員どうしで行われる読書会。当番制で、海外の論文を和訳して発表する。新しいもののほうが好かれる。

□ 小児用バファリン ・・ 別に小児限定のバファリンという意味でなく、低容量の(量が少なめの)バファリン。だが最近ではもう少し容量多目の「バイアスピリン」のほうを使用することが多い。特に脳外科領域。歯科処置・胃カメラの1週間前は中止しておく必要がある。

□ 職員食堂 ・・ 職員の昼ごはんのための食堂。コストを切り詰めた病院はマズい。逆もいえる。しかしマズいとこが大半だ。食事は早朝のうちに完成型でどっかから運ばれ、また加熱して数時間後に出すところが多いためだ。それでも安いのは魅力。

■ 食道癌 ・・ 消化器癌の中で最も予後不良(切除可能病変+広範囲リンパ節郭清でも5生率50%未満)。術前の化学療法・放射線療法の有効なエビデンスはなく、術後化学療法での予後改善データも不十分。放射線+化学療法が放射線単独に比して有意に汚改善することは示されている。

□ 所見 ・・ 患者の局所的な状態、画像検査などをドクターがフムフムと確認して、その状態を医学的な言葉・立場で記入したもの。

□ 尻拭い ・・ 主治医が転勤で、代わりの医者が重症を引き継いだときなどに、皮肉として言われる陰口。

□ シリンジポンプ ・・ 大型の注射器の中の薬剤を時間あたり数ccという微妙な量で送り込むもの。インスリン、強心剤など。同じルートから静脈注射すると一気に濃度が上がるので注意。中身が枯渇すると息継ぎのない警報音がしてうるさい。

□ 心アミロイド−シス 

 「アミロイド−シス」をまず参照。この4つのタイプいずれもが本症をきたしうる。血行動態的には拘束型心筋症と似る。

 心症状は3つに大別される。

? 心不全
? 刺激伝導障害
? 冠不全

検査所見としては・・

<心電図>半数に特徴的所見→低電位(最多)、V1-3のQS波形(心筋梗塞と誤診される可能性あり)、房室ブロック。

<心エコー>左室壁肥厚、左室横径は拡大せずむしろ正常〜縮小、拡張不全の病態に→これを受けて左心房が拡大。

<心筋生検>これにより診断が確定する。Congo red染色で陽性、さらに偏向顕微鏡で緑色の複屈折を示す。電顕ではアミロイドfibrilを認める。侵襲などの問題で心筋生検が施行できない場合は、直腸・骨髄生検、腹壁の脂肪吸引生検のほうから進めていく必要がある。

<治療>対症療法。ただしALアミロイド−シスで血液幹細胞移植するという治療が検討され、海外ではさらに心移植を組み合わせた報告がある。

<予後>組織診断1年未満の死亡が多い。
    死因は心不全>腎不全>感染。

と出てしまい要再検となる。
□ 心拡大 ・・ 胸部レントゲン写真で心臓の横径が比較的大きいこと。ただし深い吸気ができてなかったり、肥満のせいだったりすることもあり、これだけで心臓がどうとかの説明にはならない。

□ 心カテ=心臓カテーテル検査 ・・ カテーテルという細い管を局所麻酔で手や股から入れて、心臓の血管の入り口まで持っていって造影剤を流し、撮影する。冠動脈が細いかどうかを突き止める。細ければ治療へと延長戦となる。

□ 心基部(しんきぶ) ・・ 心臓の主要なポンプ部分である左心室をそうだな・・。風船の右端を握って。それが左心室なら、握った根元の上部分が心基部=base。握ってない丸い先っぽが心尖部(しんせんぶ=apex)といったところかな?すると残りの上縁が心室中隔で、下縁が左室後壁、ということになる。

□ 真菌 ・・ カビ。肺の場合では肺真菌症という肺炎であったり、食道にできれば「食道カンジダ」と呼ばれる。足によくできる場合は足白癬と呼ばれる。重症肺炎では真菌の合併も念頭に置く。

□ 心筋炎 ・・ 主にウイルスを原因(8割。コクサッキーBが最多)とした心筋の炎症→心不全・不整脈を呈する疾患。半数は風邪症状が前駆症状としてあり。ショック・致死的不整脈を呈するのは特別に<劇症型>といわれ、IABP、PCPSなどの体外補助循環まで要することがある(救命率50%)。通常の心筋炎に対するステロイドパルスの効果は否定的。

□ 心筋酵素=逸脱酵素=心筋逸脱酵素 ・・ 心筋梗塞・心筋炎の際に心筋が傷害されたのに伴い血液に流出する物質。

□ 心筋シンチ=心筋シンチグラム=心筋シンチグラフィー ・・ 放射性核医学検査の1つ。放射性物質(同位元素)を注射し、心筋を「プレデター」的に画像描写し血流分布を評価する。血液の量が多いか少ないか絶対量を表すのではなくでなく、あくまでも相対的な意味で使う。

□ 心筋症 ・・ 心臓の筋肉そのものの異常により心不全を起こす難治性疾患。
 ?拡張型心筋症 ・・ 筋肉が薄くてペラペラで心臓がほとんど動かない。重度では心移植を要する。
 ?肥大型心筋症 ・・ 筋肉が肥大して心臓が動きにくくなる。心臓の出口が狭いか狭くないかで
  ?)閉塞型 ?)非閉塞型 に分けられる。
 ?拘束型心筋症 ・・ あまりみかけない。拡張不全が主体。つまり心臓はふつうにしぼむが膨らみにくい。

□ 心筋生検 ・・ 心臓カテーテル検査下で通常行われる検査。心臓の壁である心筋を、心臓の中から経由で採取する。
深く取り過ぎると「タンポナーデ」をきたす。病変のありそうなところに当たらないと、正常所見と出てしまい要再検となる。

□ 心原性脳塞栓 

 NINDSの定義:?心臓内(特に左心房内)の血栓または?シャント(静脈系の血栓が左心房ー右心房間の卵円孔開存などを介して)を介した血栓により脳動脈が閉塞されて起こる脳梗塞(脳梗塞全体の2-3割)。

 通常の動脈硬化(アテローム血栓性)による場合は動脈の狭窄・血栓が徐々に進行するため、別の通り道である側副血行路が発達するものだが、本症では突発的に血管が閉塞されるためそのバイパスが発達する間もなく、結果的に脳梗塞は広範囲となる。

 このため脳塞栓の場合、梗塞巣の完成が短時間でできあがってしまい、結果的に後遺症も大いに残ることが多い。診断が遅れが予後に悪い影響を及ぼす。

 塞栓の原因で最も多い(5割以上との報告あり)のがNVAF=非弁膜症性心房細動。心房細動自体が加齢とともに増えてくるものであるから、脳梗塞予防以前にこういう病態を早期に発見することが望まれる。NVAFがあるかないかで、脳梗塞のリスクが5倍も違うのである。

 閉塞の好発部位は、?内頸動脈遠位端、?中大脳動脈主幹部遠位端、?脳底動脈遠位端が多い。梗塞巣は皮質領域を広範に侵すのが特徴で、皮質症状としての意識障害、失語、半側視空間無視、半盲などを呈する。塞栓のあと続発的に起こりやすいものとしては、?脳浮腫、?自然再開通(24時間内の場合は、うち1割が劇的症状改善みるという報告あり=apectacular shrinking deficit)、?出血性梗塞(?の際、または血栓溶解療法を行った場合に、再び血液が流れ出した脳組織の脆い血管から血液が溢れ、脳出血を合併する。発症後数日と2-4週後の二峰性)、?別領域での再発(特に発症2週間以内に注意。血栓の残存・脱水が引き金に)。

 血栓溶解療法のうちt-PAの静脈投与に関しては、超急性期(3時間以内)の使用で、CTで早期虚血所見がないか軽微、それ相応の経験ある施設などの基準がOKなら使用が許されている。なので患者側としては、脳梗塞発症時に搬送してもらう際に前もって情報があったほうがいいかもしれない。

□ 心係数=cardiac index=CI ・・ CO(心拍出量:1分あたりの左心室からの血液量)をBSA(体表面積)で割り算したものである。単位は(L/min/m2)。

□ 心室頻拍(VT) ・・ 心臓のカラ打ち状態。早急に胸部叩打・電気ショック・心臓マッサージが必要。ただし30秒以下のNSVTは積極的に治療しないという意見もある。

□ 心室リモデリング ・・ ストレスに対する心室自体の変化の過程をいい、心不全の予後を悪化させる因子として重要なもの。具体的には心筋梗塞や心筋症などにより圧・容量負荷が起こって、異常部分が薄くなったり正常部分が代償性に肥大したりする。形態的には心室全体が球状に拡大し、心肥大・心拡大となる。なおこの際、僧房弁が引っ張られておこるMRを合併しやすい。これはさらに左室容量負荷を増加させ、リモデリングが進行する。

□ 浸潤影(しんじゅんえい)= コンソリデーション=consolidation=コンソリ ・・ 胸部のレントゲンで、肺のある部分が(通常は黒く映るが)うっすら白いと、こう表現される。胸水、肺炎であることが多いが、古いものであることも。前回との比較が必要。

□ 心臓MRI 

 心筋症の心機能・壁厚評価に優れた客観的効果をもつ。

 心電図同期により心臓の動きを時相別に分割(収縮→拡張の過程を時間ごとに区切って)して見れる<シネMRI>という方法もある。

 また最近では造影剤使用により心筋のバイアビリティ(生き生き度)を評価することもできるようになった。これは<遅延造影MRI>という方法で、心筋梗塞の壊死部位を病理学的なレベルにまで掘り下げて判定できる。なので当然RIより優れる。しかもこれまで画像診断が曖昧だった心内膜下梗塞、右室梗塞を正確に描出することができるようになった。

 それと<冠動脈MRA>は3D画像による冠動脈形態把握のための検査。冠動脈奇形、川崎病での冠動脈瘤(りゅう)に威力を発揮する。もちろん冠動脈の狭窄も描出し重症病変のスクリーニングには適する。

 最近ではその撮影を簡略化させた<Whole heart coronary MRA>がトピックスで、冠動脈病変のスクリーニングのより優れた方法として期待されている(http://www.schering.co.jp/medical/woln/rsna2004/t_04/に画像あり)。

□ 浸透圧 ・・ 分かりやすくいえば、濃度。浸透圧が高ければ、濃度が高い。つまり周囲から水をひきこむ力が強い。糖尿病では高血糖のため血液の浸透圧が高くなり、腎臓から水ごと押し出される(浸透圧利尿)。で、喉が渇く。低アルブミンなどで浸透圧が低いと水が血管から皮下、胸腔、腹腔などへ逃げる。この逃げ場所が「サードスペース」。

□ 心臓神経症 ・・ 古い病名。心臓が悪いという思い込みから動悸・息切れなどの症状が出て実際は検査で異常なし、別名心臓ノイローゼ。それに対してNCA=神経循環無力症(これも古い病名)というのは期外収縮や低血圧などのちょっとした所見が認められる場合。これらは1980年代よりパニック障害とGAD=全般性不安障害という分類に大きく分けられることになった。

□ 心臓喘息 ・・ 心不全の間接的な作用で、気道の粘膜に浮腫・痙攣が起こり、あたかも喘息様の症状を起こす。心疾患がもともとないかの既往歴、心不全兆候(むくみなど)が気管支喘息との鑑別の決め手。
 
□ 心臓破裂=心破裂=ラプチャー ・・ 心筋梗塞の急性期合併症。高い血圧、薄い心筋はリスク。あっという間に起こるため、起こった瞬間に出会うのがあまりない。治療も対処のしようがない。トイレで力んだりさせない。なので下剤をあらかじめ処方することが多い。

□ 心電図=ECG(英語:イーシージー)=EKG(ドイツ語:エーカーゲー) ・・ あくまでも安静時の心臓の脈解析。ジジババ職員ほど後者で表現することが多い。

□ 心嚢穿刺 ・・ 心臓の周囲に水分が多量に貯留した「タンポナーデ」などに行われる手技。みぞおちから斜め右上に向って穿刺、カテーテルを留置して排液する。急な排液は不整脈や血圧変動を招くので注意。へパロックを忘れると詰まってしまうことあり。
□ 心不全 

 心臓はポンプ。通常、この力が弱くなり→出てくる血液が不足した場合を指す。メインである左心室が弱った「左心不全」のことを指すことが多いが、これが進行すると右心室まで巻き込み、「左心不全」+「右心不全」=「両心不全」と呼ばれる。左心不全の所見としては、胸部レントゲンでの心拡大+両側胸水貯留の2所見が典型的。

※ 世界的な権威である米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)のガイドラインが2005年8月に4年ぶりに改訂された。特に変更・強調された点としては・・

・ 心不全のステージングを4段階に分類(A/B/C/D)。

・ Aの段階の者:つまり危険因子のある者に関しては早期発見・コントロールにつとめれば心不全を減らせる。

・ <うっ血性心不全>という病名のうち、<うっ血性>という言葉を不適切と判断、除外した。これは、うっ血による症状がないのに心臓に障害がすでに出ているケースが多いからだという。なので<うっ血性・・>と診断したところで、それは遅すぎた診断なのだ。早期発見の重要性を意識した意見だ。

・ ICD(植え込み型除細動器)適応の拡大を推奨。

・ 循環器医師は終末期心不全患者(Dの段階)へのホスピスケア(患者・家族との相談の上での)を勧めることにも関心を寄せるべき。 

心不全=収縮不全+拡張不全

○ 拡張不全の特徴 ← トピックス

・ 収縮不全に比べて高齢者(有病率は75歳以上で最多)、女性に多い。
・ うっ血性心不全のうち、実際1/3以上が正常の駆出率である(正常駆出率=正常EFは50%以上)。
・ 収縮不全が出現しているときには拡張不全がすでに合併していることが多い。
・ 高血圧が基礎疾患であることが多い。一方で収縮不全は虚血性心疾患の占める割合が高い。
・ 死亡率に関しては(拡張不全と収縮不全との比較)見解は統一されていない。
・ 拡張能を規定する因子は?左室弛緩能(収縮期に発生した張力を低下させる過程で、拡張早期に起こる)、?左室スティフネス(左室の受動的硬さ)
  ?→?の順に起こってくるといわれている。

  ?の障害が起こると左室圧下降速度の低下→左房・左室圧較差が低下→急速流入期における左室流入障害をきたす。
  ?の障害が起こると左室に血液が流入した際の左室圧の上昇が大きくなる。

  いずれにしても左房から左室への流入障害が起こる → 心拍出量の低下 → 左室への流入量維持のため、左房圧が上昇 → 肺うっ血 → 胸水・両心不全へ

 なので拡張障害単独によっても肺うっ血をきたしうる(つまり肺うっ血は収縮障害だけによるものではない)。

・ 実際の臨床の場では超音波ドプラ法から推定していく。なお心不全がなくてこの(ドプラ法)所見が<早期発見>された65歳以上のうち、11-15%が5年以内に心不全を発症したという報告がある。

○ 心不全そのものの診断

・ 症状 ・・ 呼吸困難、咳(以上2つは運動・臥位で増強)、倦怠感(心拍出量↓のため)、浮腫。
・ 聴診所見 ・・ ?・?音、ラ音。
・ 胸部レントゲン ・・ 心拡大、うっ血、胸水。
・ ANP/BNP ・・ ともに心不全の重症度に伴い上昇する。健常人のBNP濃度はANP濃度の約1/6。BNPは?左室駆出率、?左室拡張末期圧、?血中ノルエピネフリン、?エンドセリン-1(この??は心筋細胞障害因子)と相関する。ANPは?との相関はあまりない。BNPは200pg/mlを越えると運動耐容能が急激に低下する。
・ 心電図、心臓超音波検査

これらで心不全の診断と重症度把握、基礎疾患の大まかな検索を行う。

必要によりけりだが、同様に非侵襲的に以下の検査が追加される。

・ 心筋シンチ=RI ・・ 心筋の血流量をみるが、あくまでも相対的なもの。血流が特に低下してそうな部分を検出する。絶対量を示すものではないので異常所見=血流低下とは限らない。核種としては123I-BMIPP(心筋のエネルギーの6割以上が脂肪酸のβ酸化に依存することを利用し、心筋障害を反映させる)、MIBG(交感神経機能を反映。交感神経の亢進は心筋酸素消費量を増加させ心機能を低下させるほか、不整脈を増やす)
・ PET ・・ 相対的なシンチに対し、PETでは絶対的な血流量を測定できる。核種は18F-FDG(糖代謝を反映)。
※ 心筋のエネルギー源は遊離脂肪酸とブドウ糖。正常心筋では6割以上を脂肪酸のβ酸化に頼るが、虚血心筋では解糖系へと代謝経路が切り替わり、ブドウ糖利用増加が虚血の程度を反映することになる。これを利用したのがさきほどの18F-FDG PETである。

 心不全の治療について

○ β遮断薬

・ 投与はあくまでも<start low and go slow(低用量で開始し3-6ヶ月で維持量へ)>。
・ ある程度の低血圧・徐脈は副作用としてでなく、主作用による理にかなった生体反応として受け止める考え方が必要だという。しかしめまい・倦怠感の症状まで起こしてくるなら減量・中止は止むを得ない。
・ 耐糖能・糖尿病悪化という副作用はβ2受容体遮断による副作用であり(骨格筋での糖利用減少)、β1選択性のものを選べばその点は解決できるという。
  カルベジロールはインスリン抵抗性の改善作用があり、ACEIやARBには耐糖能改善作用があるため併用も勧められる。
・ 心不全で本剤の適応が見直されたといっても、実際BNPが500-600pg/mlを超えた場合、β遮断薬の導入が困難な場合が多い。

○ ACEIとARB

△ ACEI
・ アンジオテンシン?→?への産生を阻害しアルドステロン↓・Na利尿によって降圧するほか、ブラジキニン分解阻害によりNO産生を刺激。
 ※アンジオテンシン?の増加は心血管リモデリングを増強させる。
・ 多くは腎排泄性なので腎不全には慎重に投与すべきだが中には胆汁排泄性のもの(トランドプリル)がありこちらは腎不全でも使いやすい。
・ 副作用は空咳が多い。妊婦には催奇性あり禁忌。

△ ARB
・ AT1受容体レベルでRA系を阻害。咳の頻度が少ない。

○ 抗アルドステロン薬

・ 歴史が古い薬ではあるが、1999年のRALES試験、2003年のEPHESUS試験にて、本剤がACEIやβ遮断薬に併用することで心不全に有効性があることが確認され、その地位が向上。※ ただし重症例での検討。

○ サイトカイン療法、エンドセリン拮抗薬

△ サイトカイン療法
・ 抗TNF−α療法(エタナセプト、インフリキシマブ) ※ 心不全ではTNF−αが増加することが分かっており、心筋炎・心筋症でこれらサイトカインが高値を示すことが多い。
・ 抗炎症性サイトカインによる治療法(特にIL-10)
・ サイトカイン遺伝子治療

△ エンドセリン(ET)拮抗薬
・ 急性心筋梗塞による心不全、あるいは慢性心不全においてエンドセリン(ET)、特にET-1の血中濃度上昇が報告されており、それが高い心不全ほど予後が不良。ET受容体拮抗薬であるボセンタンはET系に特異的に作用し、血管拡張作用、心筋リモデリング抑制作用により心不全に有効。

○ 重症心不全におけるペーシング療法

CRT=cardiac resynchronization therapy=心臓再動期療法 

?心臓の両心室を同時にペーシング+?至適AV間隔の設定、によって、収縮の同期性を高める。

重症心不全の治療の選択肢の1つで、2003年5月より薬事承認。ガイドライン適応は、NYHA ?/?度、QRS幅>130ms、左室駆出率35%以下の重症心不全となっているが、心室のdys-synchrony(右心室と左心室の動きのズレ)の程度を評価して適応を決めようという試みがされている。

刺激の出るリードは当然2本必要で、1本は右心室心尖部でもう1本は冠状静脈洞に留置(冠静脈穿孔が0.5-数%)。これにより中隔側と左室自由壁から左心室を挟み込む形で、同時にペーシングを行う。

血行動態が安定化し、なかでも血圧の上昇が顕著だという。

■ 心房細動=AF

 上室性の不規則な脈。サイナスから突然頻脈の心房細動になるのが「発作性心房細動=パフ」。この場合はサイナスに戻す治療を積極的に行うが、長期化した心房細動は脈拍数の調節を優先する。拡大した左心房は血栓形成→脳梗塞のリスクあり。

 心房細動発症→慢性化のメカニズムとしては、

? 肺静脈起源(PV myocardial sleeve:左心房から肺静脈に一部連続する心筋組織)の異所性興奮
 ※ AFの自発興奮となる場所はPV開口部に集中する。pafへのアブレーション治療の標的となる。

? 心房(一部肺静脈)のリエントリー

? 電気的・構造的リモデリング
 構造変化で伝導が悪化、頻拍でさらに著明となりAF begets AF(AFがAFを生む)の状態となる。
 
 ・・の3極構造として考えられており、これらは互いを助長する。

 治療は↓

 サイナスに戻す<リズム治療>とレートコントロール=レート治療のどちらかを目指すことになる。

 ※1年以上持続、あるいは左心房径5センチ以上は後者の治療を目指すようになる。

 この2つの治療の比較を行った臨床試験が2002年のAFFIRM試験で、結果的にはレート治療に優位性が示された。ただ、リズム治療の群では抗不整脈薬投与でむしろ死亡リスク増加する問題が指摘され(効果不十分なら速やかに中止すべき)、抗凝固療法の必要性も強調された。この米国・カナダの報告は日本のガイドラインと考え方が矛盾するため(アミオダロンの使用多すぎ)、その後日本独自の臨床試験である多施設共同の無作為試験<J-RHYTHM試験>・・不整脈関連ではわが国初の大規模前向き臨床試験・・が2003-2005年実施され2007年3月に発表された。

 中身としてはまず発作性(発症48時間未満で治癒見込あり)と持続性(それ以上持続し1年未満)に分け、さらに各々をリズム治療とレート治療の群にランダムに振り分けた(いずれも抗凝固療法を併用)。

 で、結果的には発作性・持続性の両群でリズム治療のほうが洞調律維持率が高く、推奨された。持続性ではレート治療も有効だが抗不整脈薬の選択が適切なら2年は(半数の例で)洞調律維持効果もあったと判明した。本試験によって従来の日本のガイドラインのQOLへの有効性が裏付けられた。

□ 深夜(帯) ・・ ナースの勤務帯で、通常は深夜0時から早朝、日勤が出勤してくる9時くらいまでをさす。早朝は化粧が取れてしまっていて、見てはいけなかったものを見てしまうことあり。

1 2 3

 

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索