ES-MEN 69
2007年9月1日 ハカセは会場を出て、ブオンブオンと乱暴運転。途中連絡が入り、喫茶店に寄った。
店は寂れていて客もいない。やる気のないおばさんが無言で注文を取りにくる。
「自分はホットでいい」
「あたしも」私服のジェニーは周囲を警戒し、ゆっくり坐り直した。
「・・・なるほど。あの病院の構造は分かった」
「でね。でね。次は彼らの人物関係を教えたげる」
「乗っ取りは、スミらに任してるんだ。僕は実験とビジネスの関係で」
「聞いて聞いて。彼らね、人数少ないのにうまくやってるでしょ?」
「そこは事務長が優秀なんだろう?しかし、なぜ使いこなしが上手いんだ?」
「事務長がね。クリニカル・パスのスタッフ版というのを作ってて。患者の病室空き情報のほかに、ドクターらの予定・動向まで把握してるの。完全休養日まで作ったり。勤務が単調にならないように作ってんの。天才よ!」
「脳幹網様体を常に刺激し、大脳皮質を絶えず活性化というわけか。あの事務長は、もともと真珠会で働いてた人間だ。スカウト人事部で。ところで、ジェニー・・・」
コーヒーが運ばれたタイミングを、ハカセは恨んだ。
「ジェニー。僕はまさか君が来てくれるなんて思わなかった。僕は・・・僕は実は君のことは封印してて」
ハカセの感情が爆発した。気があるかもしれないことぐらいジェニーには分かっている。東京でもう何度も学んだ。地獄も見た。
「やあね。あたし、最初から戻ってくる予定だったのよ」
「そそ!それなのにどうして!君が戻ったのはどこだ!なんで真田に行った?あんなリベラルな空気を君は望んだのか?リベラルは貧困の特権なんだよ?」
「だ、だって。ぜひ来てくれって言うから・・・」
「内心、傷ついていたんだよ・・・」
「あ。知ってるでしょ?あたしが救急病院で起こした不祥事。新聞にも載って」
「でもジェニーの名前は発表されなかった。まして関西の奴らは知らないさ」
「世間知らずねハカセ。今はネットがあってすぐ広まるの」
ハカセはもちろん知っていた。しかしそれ以上に・・・
「僕だって、君以上にプレッシャーを受けてきたよ。弱い人間でないことを望んだ。すると楽になった」
「ハカセ・・・」
「それで分かったんだ。強い人間に思い知らせるためには、その上に立てばいい。君だってやればいいんだ」
「あたしでも、やれる・・・?」
ジェニーの瞳がうるんだ。
「そりゃそうさ!僕についてくれば!」
「つらかった!つらかったのよ!」ジェニーは感情失禁した。
「ジェニー・・」
「せっかく疲れた翼を癒すために、僻地で心を洗濯しようと思ったのに・・・こんな瑞々しい田舎なのに・・・人の心は表面だけ。体裁だけ取り繕って」
「ジェニー。都会も田舎も変わらないよ」
「なら、スタッフが彼ら町民を根本から啓蒙すりゃいいじゃない?」
「あ、ああ」
「でもそうしないのよ!ナースらにゴマすって小児科作ります!往診して地域に根差します!って・・・バカよ。それじゃ田舎の腐った心は変わらないわ」
「そうか。根本から、変える、か・・・」
忙しい中、彼らにとって唯一ゆったりできた時間だった。
ハカセはジェニーにを送り届け、花屋へ寄った。
「投票日に合わせて、医師豪舎に送ってほしい」
「へい」老婆は何度もうなずいた。金の威力だ。
「部屋一面を埋め尽くすくらい・・・」
「へい」
「彼女の心を、僕は何年もさぐってきた。今もそれは謎だ」
「へい」ばあさんは耳が遠くて聞こえない。
「しょせん、人の心は2つ以上ある限り、互いに盲目のままなんでしょうね」
「へへ、もうけもうけ」
「もうけん?そうですよ、ばあさん。そうだ。<愛のダブルブラインド(二重盲検試験)より>、とカードに書いてと・・・これでよろしく」
スーツにバラを1本刺し、ハカセは外車にまた乗り込んだ。
店は寂れていて客もいない。やる気のないおばさんが無言で注文を取りにくる。
「自分はホットでいい」
「あたしも」私服のジェニーは周囲を警戒し、ゆっくり坐り直した。
「・・・なるほど。あの病院の構造は分かった」
「でね。でね。次は彼らの人物関係を教えたげる」
「乗っ取りは、スミらに任してるんだ。僕は実験とビジネスの関係で」
「聞いて聞いて。彼らね、人数少ないのにうまくやってるでしょ?」
「そこは事務長が優秀なんだろう?しかし、なぜ使いこなしが上手いんだ?」
「事務長がね。クリニカル・パスのスタッフ版というのを作ってて。患者の病室空き情報のほかに、ドクターらの予定・動向まで把握してるの。完全休養日まで作ったり。勤務が単調にならないように作ってんの。天才よ!」
「脳幹網様体を常に刺激し、大脳皮質を絶えず活性化というわけか。あの事務長は、もともと真珠会で働いてた人間だ。スカウト人事部で。ところで、ジェニー・・・」
コーヒーが運ばれたタイミングを、ハカセは恨んだ。
「ジェニー。僕はまさか君が来てくれるなんて思わなかった。僕は・・・僕は実は君のことは封印してて」
ハカセの感情が爆発した。気があるかもしれないことぐらいジェニーには分かっている。東京でもう何度も学んだ。地獄も見た。
「やあね。あたし、最初から戻ってくる予定だったのよ」
「そそ!それなのにどうして!君が戻ったのはどこだ!なんで真田に行った?あんなリベラルな空気を君は望んだのか?リベラルは貧困の特権なんだよ?」
「だ、だって。ぜひ来てくれって言うから・・・」
「内心、傷ついていたんだよ・・・」
「あ。知ってるでしょ?あたしが救急病院で起こした不祥事。新聞にも載って」
「でもジェニーの名前は発表されなかった。まして関西の奴らは知らないさ」
「世間知らずねハカセ。今はネットがあってすぐ広まるの」
ハカセはもちろん知っていた。しかしそれ以上に・・・
「僕だって、君以上にプレッシャーを受けてきたよ。弱い人間でないことを望んだ。すると楽になった」
「ハカセ・・・」
「それで分かったんだ。強い人間に思い知らせるためには、その上に立てばいい。君だってやればいいんだ」
「あたしでも、やれる・・・?」
ジェニーの瞳がうるんだ。
「そりゃそうさ!僕についてくれば!」
「つらかった!つらかったのよ!」ジェニーは感情失禁した。
「ジェニー・・」
「せっかく疲れた翼を癒すために、僻地で心を洗濯しようと思ったのに・・・こんな瑞々しい田舎なのに・・・人の心は表面だけ。体裁だけ取り繕って」
「ジェニー。都会も田舎も変わらないよ」
「なら、スタッフが彼ら町民を根本から啓蒙すりゃいいじゃない?」
「あ、ああ」
「でもそうしないのよ!ナースらにゴマすって小児科作ります!往診して地域に根差します!って・・・バカよ。それじゃ田舎の腐った心は変わらないわ」
「そうか。根本から、変える、か・・・」
忙しい中、彼らにとって唯一ゆったりできた時間だった。
ハカセはジェニーにを送り届け、花屋へ寄った。
「投票日に合わせて、医師豪舎に送ってほしい」
「へい」老婆は何度もうなずいた。金の威力だ。
「部屋一面を埋め尽くすくらい・・・」
「へい」
「彼女の心を、僕は何年もさぐってきた。今もそれは謎だ」
「へい」ばあさんは耳が遠くて聞こえない。
「しょせん、人の心は2つ以上ある限り、互いに盲目のままなんでしょうね」
「へへ、もうけもうけ」
「もうけん?そうですよ、ばあさん。そうだ。<愛のダブルブラインド(二重盲検試験)より>、とカードに書いてと・・・これでよろしく」
スーツにバラを1本刺し、ハカセは外車にまた乗り込んだ。
ES-MEN 70
2007年9月1日「ぼかあね。去年の続きで日本を1周してるんす!」
ユースホステルの食堂で、ライダースーツの男は夢を語っていた。
「そうですか・・・」
食べ終わって立ち上がりたい一心の僕は、何度も椅子に腰かけた。
小児科医がバイクも好きなのを思い出した。
「そういや、知り合いがバイク好きで」
「えっ?そうなの?」
「おい!」
近くで献立を眺めていた小児科医が振り向いた。
「どうした?」彼は寄ってきた。
「こいつです。一言多いんですが。バイクをちょうど止めてるんです。外に」
「えっ?みんな、見に行こう!」
ライダーが立ち上がったとたん、周囲の数十人のライダースーツが立ち上がった。
小児科医は眼を閉じた。
僕は病院へ向かった。途中、携帯が鳴る。
『ハカセです。おい!何を考えてんだ!』
「はっ?お前かよ?」
それまで敬語で接していたハカセが・・人が変わったように。一応、僕のほうが年上なんだが。
『お前のとこの事務長が、会場にまぎれてやってきた!あれはお前の差し金だろ!えっそうだろ!』
「ハカセ?なにを言ってるのか・・・」
『とぼけんな!こっちは商店街がついてるんだ!計算では200票こっちが有利なんだ!せいぜい余命を楽しめ!その代わり・・・最後に一泡吹かせてやるからな!』
「酔ってんのか?」
『あ。もう着くな・・切るよ!』
ハカセは車から降りて、院内へ入っていった。
患者からの苦情が絶えず、受付けは混乱中。
キタノが近付く。
「薬剤がやはり補給不可能だって!」
「どうしたそれが!しつこいぞ!」怒り心頭で無視。
「さっ!もう出発に入りますか?」
「時期を見てやってよ?」
「大丈夫だよ。商店街の支持は絶大だよ。票はいけると思う」
「くそ〜!あのユウキの奴!」
ハカセはジェニーにジェントルな分、怒りのストレスにブレーキがきかなくなっていた。
キタノは愉快だった。
「そいつはね。そいつはスミがあとで片付けるんだって。スーパーマンのカタキらしいよ。個人的な復讐!」
「キタノ。当院の残りの患者も、全部送れ」
キタノの口から、楊枝が落ちた。
「ぜ・・全部?」
「そうだ全部だ。この病院を空にしてでも、患者を集中して送る」
「ぜ、全部向こうが受け取ったら・・・」
「いいんだよ。どうせ投票で勝つから。でも、やるならとことん・・・」
キタノは、あっそうかと笑った。
「奴ら、今度こそ過労で・・・!」
ハカセは身を翻し、院長室へと入っていった。
キタノはガッツポーズ。
「運転は、オレが・・・!へへへ!」
病棟は次々と患者がいなくなり、ジェニーは詰所で暇そうにしていた。
「何・・・お祭りでもあるの?」
ここ最近、派手な生活をしていた。爪にはアートを塗った。架空の会社の経費で好きなものを予約しまくった。でも、心までがなかなか埋まらない。
耳などあちこちに金ピカのアクセサリーが輝く。
PHSが鳴った。
「はい」
『ジェニー。昇格させてやるから、ひとつ仕事を頼む!』
「よろこんでハカセ!」
ジェニーは立ち上がった。
ガオンガオン、とコンテナ7両編成のトラックが噴煙を上げる。
ジェニーは勢い余って、軽くコケた。
「うわ〜これって。なが〜・・・」
「早く乗れこの大バカ者があ!」スミが助手席から手招き。運転はキタノ。
「コンテナの患者の管理?」
「貴様は医者だろうが中での管理を指導せよ指導を!」
真っ赤なトレーラーが屈曲しながら、轟音とともに出発した。
ハカセは院長室から見下げた。
「大丈夫だよ。あそこは、もううちのものになる。それは分かってる。でもあそこは重大な間違いを犯した!」
「さようで・・・」側近らが心配そうにうつむいた。
「僕のプライドを傷つけた・・・!恥をかかせた!お前らは・・・前から嫌いだった!」
ハカセは椅子に腰かけた。
「あれが出たら、僕らは町内投票のアピールに出かけるぞ!」
プアーーーン!とトレーラーの汽笛が響いた。
ユースホステルの食堂で、ライダースーツの男は夢を語っていた。
「そうですか・・・」
食べ終わって立ち上がりたい一心の僕は、何度も椅子に腰かけた。
小児科医がバイクも好きなのを思い出した。
「そういや、知り合いがバイク好きで」
「えっ?そうなの?」
「おい!」
近くで献立を眺めていた小児科医が振り向いた。
「どうした?」彼は寄ってきた。
「こいつです。一言多いんですが。バイクをちょうど止めてるんです。外に」
「えっ?みんな、見に行こう!」
ライダーが立ち上がったとたん、周囲の数十人のライダースーツが立ち上がった。
小児科医は眼を閉じた。
僕は病院へ向かった。途中、携帯が鳴る。
『ハカセです。おい!何を考えてんだ!』
「はっ?お前かよ?」
それまで敬語で接していたハカセが・・人が変わったように。一応、僕のほうが年上なんだが。
『お前のとこの事務長が、会場にまぎれてやってきた!あれはお前の差し金だろ!えっそうだろ!』
「ハカセ?なにを言ってるのか・・・」
『とぼけんな!こっちは商店街がついてるんだ!計算では200票こっちが有利なんだ!せいぜい余命を楽しめ!その代わり・・・最後に一泡吹かせてやるからな!』
「酔ってんのか?」
『あ。もう着くな・・切るよ!』
ハカセは車から降りて、院内へ入っていった。
患者からの苦情が絶えず、受付けは混乱中。
キタノが近付く。
「薬剤がやはり補給不可能だって!」
「どうしたそれが!しつこいぞ!」怒り心頭で無視。
「さっ!もう出発に入りますか?」
「時期を見てやってよ?」
「大丈夫だよ。商店街の支持は絶大だよ。票はいけると思う」
「くそ〜!あのユウキの奴!」
ハカセはジェニーにジェントルな分、怒りのストレスにブレーキがきかなくなっていた。
キタノは愉快だった。
「そいつはね。そいつはスミがあとで片付けるんだって。スーパーマンのカタキらしいよ。個人的な復讐!」
「キタノ。当院の残りの患者も、全部送れ」
キタノの口から、楊枝が落ちた。
「ぜ・・全部?」
「そうだ全部だ。この病院を空にしてでも、患者を集中して送る」
「ぜ、全部向こうが受け取ったら・・・」
「いいんだよ。どうせ投票で勝つから。でも、やるならとことん・・・」
キタノは、あっそうかと笑った。
「奴ら、今度こそ過労で・・・!」
ハカセは身を翻し、院長室へと入っていった。
キタノはガッツポーズ。
「運転は、オレが・・・!へへへ!」
病棟は次々と患者がいなくなり、ジェニーは詰所で暇そうにしていた。
「何・・・お祭りでもあるの?」
ここ最近、派手な生活をしていた。爪にはアートを塗った。架空の会社の経費で好きなものを予約しまくった。でも、心までがなかなか埋まらない。
耳などあちこちに金ピカのアクセサリーが輝く。
PHSが鳴った。
「はい」
『ジェニー。昇格させてやるから、ひとつ仕事を頼む!』
「よろこんでハカセ!」
ジェニーは立ち上がった。
ガオンガオン、とコンテナ7両編成のトラックが噴煙を上げる。
ジェニーは勢い余って、軽くコケた。
「うわ〜これって。なが〜・・・」
「早く乗れこの大バカ者があ!」スミが助手席から手招き。運転はキタノ。
「コンテナの患者の管理?」
「貴様は医者だろうが中での管理を指導せよ指導を!」
真っ赤なトレーラーが屈曲しながら、轟音とともに出発した。
ハカセは院長室から見下げた。
「大丈夫だよ。あそこは、もううちのものになる。それは分かってる。でもあそこは重大な間違いを犯した!」
「さようで・・・」側近らが心配そうにうつむいた。
「僕のプライドを傷つけた・・・!恥をかかせた!お前らは・・・前から嫌いだった!」
ハカセは椅子に腰かけた。
「あれが出たら、僕らは町内投票のアピールに出かけるぞ!」
プアーーーン!とトレーラーの汽笛が響いた。
ES-MEN 71
2007年9月1日 昼間の真田第二では、久々の警告音が鳴り響いた。
『スタッフは全員、事務室へ集合して事務長の支持を待て!』
田中くんらは、駐車場で乗用車に歩行可能な患者を1人ずつ運んでいた。病棟をなるべく空けておくため軽症は往診扱いとしたのだ。
僕は医局から走った。
「チキショー!院長代理の権限はないのかよー!」
途中、慎吾と合流。怪我はほぼ治ってる。
「慎吾!頼むぞ!」
「記憶が少し飛んだかも・・・」
「どある!外傷のせいにすんな!」
ドカドカ、とみな事務室に集まった。
事務長が立っている。まるで出撃前だ。
「放ったスパイ犬らの映像によると、たった今真珠会第二から例のトレーラーが出撃したようです!」
事務長の前に大勢の職員。厨房の人たちさえいる。田中君は遅れて到着した。事務長はリストを受け取り、続けた。
「困ったのは、町民投票が今日の夕方ってことです。このまま忙しくなれば、我々は投票に行けません」
「だが、病院存続のためなら手段を考えないといけない」
田中くんが堂々と答えた。
「そういや。町議が投票をするってメッセージを?」僕は疑問がった。
「ええ」と田中。
「偽造じゃないか?」
「でも確かめようがないです。役所ではもう準備が」
「町議に確認してみる!」
ダッシュした。今はトレーラーの来る気配はない。
慣れない横綱は、ビビって参考書を何度も読んでいた。
僕は手帳を渡した。
「おっ。なんでっかこれ?」
「ここ7年くらいの蓄積が書いてある」
「すんげえ!要点だらけだ!<ナトカリ・クオール・フォルテシモン・・・>おお今覚えましたってよ!」
「すごいだろ!」
「くれます?」
「あかん。あとで返せ!」
PHSが鳴る。
『病棟です!先生!重症患者さんがみんな一斉の高熱で・・・!』
「わかった!行く!横綱!頼む!」
シャー!とカーテンを開ける。
「えええ?」
町議が・・・真っ青な顔でで震えている。
「コールドショックだ・・・!」
グアアアアアア・・・と濡れた路面を走っていくトレーラー。
ジェニーはコンテナ中央を通り、両側の2段ベッドを順々に観察。
「呼吸・循環管理もできてる。すごい・・・ハカセは現代のレオナルド・ダビンチね」
各所、レジデントらが記録。しかし1人がペンで頭をかいてる。
「う〜ん・・・」
「何か!報告を!」
「あっ。銭亀先生!これは失礼しました!実はコンプレッサーの調子が・・・でしょうか?患者の酸素飽和度が下がってるんです」
「人工呼吸器の患者?」
「ええ」
ジェニーは呼吸器回路のチェックも行ったが・・・
「酸素が・・酸素濃度が足りないのよ」
「酸素供給タンクは、車底にあるんですが・・そういやメンテナンスで水が入ってるかもと」
「ど!どうして上に報告しなかったの!」
「上には伝わりました!しかし現状のままで出発せよとスミ医官が!」
ジェニーは青ざめた。確かにこの地域の人間は嫌いだが・・命に不利なことがあってはならない。それは医者の本能だ。
「ううう・・・どうなるんですか。私はどうなるんですか」
一方で、酸素マスク吸入中の患者が呻いた。ジェニーは目線を合わせた。
「て。転院です・・・」
「てんいん・・・」
「病院を代わるだけです。私たちはそれのつなぎです。だから・・・だから」
ジェニーは、カンカンカン、と運転席へ走った。
キタノとスミが大笑いしている。
「酸素が不調よ!急ぐか引き返して!」
2人はくるっと振り返り、ギラッとした表情で睨み返した。
「う・・今さら邪魔するなってこと?」
背後のレジデントらがくくくと笑った。
コンテナに戻ったジェニーは揺れに抵抗し、片手をベッド横にかけた。
「(そうよ・・・!あたしは補助してるだけ。あたしは悪いことはしてない・・・!よりよい自分を創り出すための・・それに今は繋ぎの時期にすぎないんだから!)」
『本番前の演習うう!』スミのアナウンス。
ジェニーは各患者のモニターや線、カテーテルなどを外線→ベッド中心に切り替え始めた。
「はっ!はっ!それと・・・これ!」
「最後尾!サイドバイク用意!」
コンテナ最後尾で、バイクのエンジン。暴走しそうな音。
ジェニーはレジデントに聞いた。
「サイドバイク?」
「ベッドが出されたら接続して、運転するマシンのことです!」
「凄いわね。わざわざ運んでくれるの?」
「まだ知らないんですか?あれで患者を高速度でリリースするんです。なるべく玄関前で」
ちょっと信じられないと思ったジェニーだが、すぐに楽天的に解釈した。
「ふふふ・・・あっはは!結構楽しいじゃないの!」
運転席よりアナウンス。
『医療は?』
「(一同)戦争!」
『我々は?』
「(一同)戦士!」
『手段は?』
「(一同)選ぶな!」
『患者は?』
「(一同)選べ!」
『治すは?』
「(一同)われ医者!」
『情けは?』
「(一同)無用!」
『有意差?』
「(一同)あり!」
「いつまでやってんの・・・?」
ジェニーはペンライトを左右計6本バシュバシュ光らせチェックした。
『守るは?』
「(一同)我々!」
『イーエス!』
「(一同)メーン!うおおおおおおお!」
高らかな拳がいくつも挙げられた。
『スタッフは全員、事務室へ集合して事務長の支持を待て!』
田中くんらは、駐車場で乗用車に歩行可能な患者を1人ずつ運んでいた。病棟をなるべく空けておくため軽症は往診扱いとしたのだ。
僕は医局から走った。
「チキショー!院長代理の権限はないのかよー!」
途中、慎吾と合流。怪我はほぼ治ってる。
「慎吾!頼むぞ!」
「記憶が少し飛んだかも・・・」
「どある!外傷のせいにすんな!」
ドカドカ、とみな事務室に集まった。
事務長が立っている。まるで出撃前だ。
「放ったスパイ犬らの映像によると、たった今真珠会第二から例のトレーラーが出撃したようです!」
事務長の前に大勢の職員。厨房の人たちさえいる。田中君は遅れて到着した。事務長はリストを受け取り、続けた。
「困ったのは、町民投票が今日の夕方ってことです。このまま忙しくなれば、我々は投票に行けません」
「だが、病院存続のためなら手段を考えないといけない」
田中くんが堂々と答えた。
「そういや。町議が投票をするってメッセージを?」僕は疑問がった。
「ええ」と田中。
「偽造じゃないか?」
「でも確かめようがないです。役所ではもう準備が」
「町議に確認してみる!」
ダッシュした。今はトレーラーの来る気配はない。
慣れない横綱は、ビビって参考書を何度も読んでいた。
僕は手帳を渡した。
「おっ。なんでっかこれ?」
「ここ7年くらいの蓄積が書いてある」
「すんげえ!要点だらけだ!<ナトカリ・クオール・フォルテシモン・・・>おお今覚えましたってよ!」
「すごいだろ!」
「くれます?」
「あかん。あとで返せ!」
PHSが鳴る。
『病棟です!先生!重症患者さんがみんな一斉の高熱で・・・!』
「わかった!行く!横綱!頼む!」
シャー!とカーテンを開ける。
「えええ?」
町議が・・・真っ青な顔でで震えている。
「コールドショックだ・・・!」
グアアアアアア・・・と濡れた路面を走っていくトレーラー。
ジェニーはコンテナ中央を通り、両側の2段ベッドを順々に観察。
「呼吸・循環管理もできてる。すごい・・・ハカセは現代のレオナルド・ダビンチね」
各所、レジデントらが記録。しかし1人がペンで頭をかいてる。
「う〜ん・・・」
「何か!報告を!」
「あっ。銭亀先生!これは失礼しました!実はコンプレッサーの調子が・・・でしょうか?患者の酸素飽和度が下がってるんです」
「人工呼吸器の患者?」
「ええ」
ジェニーは呼吸器回路のチェックも行ったが・・・
「酸素が・・酸素濃度が足りないのよ」
「酸素供給タンクは、車底にあるんですが・・そういやメンテナンスで水が入ってるかもと」
「ど!どうして上に報告しなかったの!」
「上には伝わりました!しかし現状のままで出発せよとスミ医官が!」
ジェニーは青ざめた。確かにこの地域の人間は嫌いだが・・命に不利なことがあってはならない。それは医者の本能だ。
「ううう・・・どうなるんですか。私はどうなるんですか」
一方で、酸素マスク吸入中の患者が呻いた。ジェニーは目線を合わせた。
「て。転院です・・・」
「てんいん・・・」
「病院を代わるだけです。私たちはそれのつなぎです。だから・・・だから」
ジェニーは、カンカンカン、と運転席へ走った。
キタノとスミが大笑いしている。
「酸素が不調よ!急ぐか引き返して!」
2人はくるっと振り返り、ギラッとした表情で睨み返した。
「う・・今さら邪魔するなってこと?」
背後のレジデントらがくくくと笑った。
コンテナに戻ったジェニーは揺れに抵抗し、片手をベッド横にかけた。
「(そうよ・・・!あたしは補助してるだけ。あたしは悪いことはしてない・・・!よりよい自分を創り出すための・・それに今は繋ぎの時期にすぎないんだから!)」
『本番前の演習うう!』スミのアナウンス。
ジェニーは各患者のモニターや線、カテーテルなどを外線→ベッド中心に切り替え始めた。
「はっ!はっ!それと・・・これ!」
「最後尾!サイドバイク用意!」
コンテナ最後尾で、バイクのエンジン。暴走しそうな音。
ジェニーはレジデントに聞いた。
「サイドバイク?」
「ベッドが出されたら接続して、運転するマシンのことです!」
「凄いわね。わざわざ運んでくれるの?」
「まだ知らないんですか?あれで患者を高速度でリリースするんです。なるべく玄関前で」
ちょっと信じられないと思ったジェニーだが、すぐに楽天的に解釈した。
「ふふふ・・・あっはは!結構楽しいじゃないの!」
運転席よりアナウンス。
『医療は?』
「(一同)戦争!」
『我々は?』
「(一同)戦士!」
『手段は?』
「(一同)選ぶな!」
『患者は?』
「(一同)選べ!」
『治すは?』
「(一同)われ医者!」
『情けは?』
「(一同)無用!」
『有意差?』
「(一同)あり!」
「いつまでやってんの・・・?」
ジェニーはペンライトを左右計6本バシュバシュ光らせチェックした。
『守るは?』
「(一同)我々!」
『イーエス!』
「(一同)メーン!うおおおおおおお!」
高らかな拳がいくつも挙げられた。
ES-MEN 72
2007年9月1日 真田第二。サイレンが鳴り響く。
事務員の1人がいきなり走り出し、玄関手前の緊急赤ボタンを押した。ゲートの開閉ボタン。
「きっ!きっ!」頑なに押さえたままで、ゲートは完全に開いた。
「何するんだ!」事務長が抑えたが遅かった。
「ふう!ふう!」高齢の事務員はギラギラ目を光らせた。
「あなたは・・買収されたんですね!」
事務長は轟音に気づいた。
「し!しまった!」
トレーラーはゲートをくぐりぬけ、ドカーンと現れた。遠くで横付けになる。7台のコンテナが圧巻だ。
「ドクターは?ドクターは何やってんです!」
田中君ら事務員5人、横綱もすでに駐車場へ走っていた。
横綱は相変わらず鈍足だった。
「ほい!ほい!ほい!ここで待つわ。はあ・・・」
横綱目がけ、ベッドが1台サイドバイクとともに走ってきた。
「うお!どう!」
田中君が拳を握った。
「横綱先生!気をつけてください!」
横綱はいきなりバイク正面からぶつかり、靴底のふんばりでそのまま背後にズルズルと引きずられた。
「わしを押すなど・・・」
「ひ・・」
横綱はベッドも止め、バイクの接続部を外して・・・バイクだけを投げ飛ばした。
「ひゃあああ!」
「100年早いタイ!」
「うわあああ!」また1人投げられた。
横綱はベッドの端をガシッと握った。
「大丈夫ですかあ!」
「ああなんとかな!」60代じいさんが力なく答えた。
「もう1台か?ふん!」
もう片腕でもう1台が止められ、背後がまた1台転倒した。
「ま、待て!」
近寄ってきた小児科医を、あやうく平手打ちする寸前だった。
「藤堂ちゃん!何をしとるんで?」
「事務長や皆に伝えてくれ!入院させた小児の数名を、これ以上ここでは診ることはできん!」
「見捨てるのか!わしらを!」
「しょうがないだろ!ここは危険だ!知り合いの病院へ運ぶ!それに俺は処置の自信がない!」
「人にあんだけガミガミ言うといて!」
うしろむきの小児科医はピタッと立ちどまった。
「す!すまん!」
「今、言うたことは聞いてなか。もういっぺん考えるとよか!」
小児科医は子供・親らを乗せたドクターカーに乗り込み、ギューンと出発した。
事務長は状況を確認、捕獲した犬どもの監視カメラで把握した。
「しまった!切り離された2台がもうこっちに向かってる!」
事務長は滑り台を降り、砂地へモロに着地した。
「うぶぶ・・・まだ間に合う!」
事務員の1人がいきなり走り出し、玄関手前の緊急赤ボタンを押した。ゲートの開閉ボタン。
「きっ!きっ!」頑なに押さえたままで、ゲートは完全に開いた。
「何するんだ!」事務長が抑えたが遅かった。
「ふう!ふう!」高齢の事務員はギラギラ目を光らせた。
「あなたは・・買収されたんですね!」
事務長は轟音に気づいた。
「し!しまった!」
トレーラーはゲートをくぐりぬけ、ドカーンと現れた。遠くで横付けになる。7台のコンテナが圧巻だ。
「ドクターは?ドクターは何やってんです!」
田中君ら事務員5人、横綱もすでに駐車場へ走っていた。
横綱は相変わらず鈍足だった。
「ほい!ほい!ほい!ここで待つわ。はあ・・・」
横綱目がけ、ベッドが1台サイドバイクとともに走ってきた。
「うお!どう!」
田中君が拳を握った。
「横綱先生!気をつけてください!」
横綱はいきなりバイク正面からぶつかり、靴底のふんばりでそのまま背後にズルズルと引きずられた。
「わしを押すなど・・・」
「ひ・・」
横綱はベッドも止め、バイクの接続部を外して・・・バイクだけを投げ飛ばした。
「ひゃあああ!」
「100年早いタイ!」
「うわあああ!」また1人投げられた。
横綱はベッドの端をガシッと握った。
「大丈夫ですかあ!」
「ああなんとかな!」60代じいさんが力なく答えた。
「もう1台か?ふん!」
もう片腕でもう1台が止められ、背後がまた1台転倒した。
「ま、待て!」
近寄ってきた小児科医を、あやうく平手打ちする寸前だった。
「藤堂ちゃん!何をしとるんで?」
「事務長や皆に伝えてくれ!入院させた小児の数名を、これ以上ここでは診ることはできん!」
「見捨てるのか!わしらを!」
「しょうがないだろ!ここは危険だ!知り合いの病院へ運ぶ!それに俺は処置の自信がない!」
「人にあんだけガミガミ言うといて!」
うしろむきの小児科医はピタッと立ちどまった。
「す!すまん!」
「今、言うたことは聞いてなか。もういっぺん考えるとよか!」
小児科医は子供・親らを乗せたドクターカーに乗り込み、ギューンと出発した。
事務長は状況を確認、捕獲した犬どもの監視カメラで把握した。
「しまった!切り離された2台がもうこっちに向かってる!」
事務長は滑り台を降り、砂地へモロに着地した。
「うぶぶ・・・まだ間に合う!」
ES-MEN 73
2007年9月1日 事務長が玄関へ出ると、2台はもう目前にあった。
まず左へ飛び込み制止、右の分はしかしそのまま玄関口の段差へと向かった。
「しまったやっぱダメだ!」
ベッドは段差を乗り越え、患者の体も浮いた。しかし影が走り、なんとか受け止めた形でその場に転倒した。
「いてて・・・!」若い事務員だ。
「ありがとう!」
バイク単体が2台、そのまま向かっていた。そのうち1台が横綱をかすめようとした。
「おんまえら!患者さんを殺す気か!」
「(2人)キー!」
「ショッカー?ふん!」横綱の巨体に車体が一瞬ぶつかった。
「(2人)ぐわあ!」
横綱はそのまま・・・・うつぶせに倒れた。
次々とベッドが放出されるが、真田側は体当たりで受け止めていった。
トレーラー運転席、キタノは驚愕した顔で食い入った。
「うちの、うちの患者がどんどん減ってくんですけど〜・・・」
ジェニーが背後から現れた。
「ねえ!あいつら全然疲れてないじゃないの!」
「し、知らねえよ。俺たちは言われたことだけしてれば・・・いいんじゃねえの?」
ジェニーは空いてる助手席の横のドアを開けて、外へ飛び出した。キタノは身を乗り出した。
「ジェニー!ここで頑張らなくてもいいんだジェニー!どうせ投票で勝てる!」
「よくないわ!こんな病院、今すぐ閉めさせる!」
「し、知らないぞ!は、ハカセには報告するからな!」
「あいつらよくも。あたしをバカにして・・・!虫がおさまらない!」
病棟では、次々と急変が続いていた。
「慎吾!挿管こっちは終わった!そっちは?」
「ん〜!」
「変わる!うまくいかないときは!手を変えて!」
「だったな!」
4人部屋の重症4人がすべて高熱、急変。院内感染だろうが、あまりにも強烈だ。
4人とも挿管、IVH挿入・・・一通りの処置が全てに行われた。
「み、みんな四肢が冷たい・・・急すぎる敗血症性・・みなショック状態だ!」
「モニターそれVT!」
「DCそれ!」
電気ショックを取り出し、めがける。
「慎吾お前はカテコラミン用意!ナースらは家族への連絡も!」
「おおっと」太いナースがベッドにぶつかり、反動で僕の背中を押した。
「おい!俺にDC当たるだろ!どけ!」
「ブヒイ!」
パン!と患者が浮いた。慎吾は呼吸器の調整。ナースが数人、吸痰にあたる。
「なんだこれ・・・抗生剤はホントにいってたのか?ナース!」
「いってますがなブヒブヒ!」
「グロブリンもいっただろうな!」
「すべて!」
「なんでこんな、ノーレスポンスなんだ・・・」
状態が加速度的に悪化していく。いきなり悪魔がこの病室に取りついたように・・・。
隣部屋の町議は、今や風前のともしびだ。
老師長が入ってきた。
「駐車場では大変なことになってますよ!」
「入院患者だろ?横綱らがなんとかやってくれる!」
「横綱先生は、倒れたそうです」
「何?」
「ベッドがたくさん来ますよ!」
「こっちは手が離せないんだよ!お前らナースも手伝いに行けっ!」
「申し送りが・・それに医療行為はできないし」
「バカヤロー!せんかったら見殺しだろが!」
ミチルの影が僕の横に映った。
一瞬、静かになった。
「いい加減にせいよ、お前ら・・・子孫の将来が、どうなってもええんか?」
師長はひきつり、廊下のナース数名を率いて出た。
僕は1人、町議のマッサージを開始した。
「死ぬな・・死ぬなよ!」
しかし、この悪化の速度は何なんだ・・・!
まず左へ飛び込み制止、右の分はしかしそのまま玄関口の段差へと向かった。
「しまったやっぱダメだ!」
ベッドは段差を乗り越え、患者の体も浮いた。しかし影が走り、なんとか受け止めた形でその場に転倒した。
「いてて・・・!」若い事務員だ。
「ありがとう!」
バイク単体が2台、そのまま向かっていた。そのうち1台が横綱をかすめようとした。
「おんまえら!患者さんを殺す気か!」
「(2人)キー!」
「ショッカー?ふん!」横綱の巨体に車体が一瞬ぶつかった。
「(2人)ぐわあ!」
横綱はそのまま・・・・うつぶせに倒れた。
次々とベッドが放出されるが、真田側は体当たりで受け止めていった。
トレーラー運転席、キタノは驚愕した顔で食い入った。
「うちの、うちの患者がどんどん減ってくんですけど〜・・・」
ジェニーが背後から現れた。
「ねえ!あいつら全然疲れてないじゃないの!」
「し、知らねえよ。俺たちは言われたことだけしてれば・・・いいんじゃねえの?」
ジェニーは空いてる助手席の横のドアを開けて、外へ飛び出した。キタノは身を乗り出した。
「ジェニー!ここで頑張らなくてもいいんだジェニー!どうせ投票で勝てる!」
「よくないわ!こんな病院、今すぐ閉めさせる!」
「し、知らないぞ!は、ハカセには報告するからな!」
「あいつらよくも。あたしをバカにして・・・!虫がおさまらない!」
病棟では、次々と急変が続いていた。
「慎吾!挿管こっちは終わった!そっちは?」
「ん〜!」
「変わる!うまくいかないときは!手を変えて!」
「だったな!」
4人部屋の重症4人がすべて高熱、急変。院内感染だろうが、あまりにも強烈だ。
4人とも挿管、IVH挿入・・・一通りの処置が全てに行われた。
「み、みんな四肢が冷たい・・・急すぎる敗血症性・・みなショック状態だ!」
「モニターそれVT!」
「DCそれ!」
電気ショックを取り出し、めがける。
「慎吾お前はカテコラミン用意!ナースらは家族への連絡も!」
「おおっと」太いナースがベッドにぶつかり、反動で僕の背中を押した。
「おい!俺にDC当たるだろ!どけ!」
「ブヒイ!」
パン!と患者が浮いた。慎吾は呼吸器の調整。ナースが数人、吸痰にあたる。
「なんだこれ・・・抗生剤はホントにいってたのか?ナース!」
「いってますがなブヒブヒ!」
「グロブリンもいっただろうな!」
「すべて!」
「なんでこんな、ノーレスポンスなんだ・・・」
状態が加速度的に悪化していく。いきなり悪魔がこの病室に取りついたように・・・。
隣部屋の町議は、今や風前のともしびだ。
老師長が入ってきた。
「駐車場では大変なことになってますよ!」
「入院患者だろ?横綱らがなんとかやってくれる!」
「横綱先生は、倒れたそうです」
「何?」
「ベッドがたくさん来ますよ!」
「こっちは手が離せないんだよ!お前らナースも手伝いに行けっ!」
「申し送りが・・それに医療行為はできないし」
「バカヤロー!せんかったら見殺しだろが!」
ミチルの影が僕の横に映った。
一瞬、静かになった。
「いい加減にせいよ、お前ら・・・子孫の将来が、どうなってもええんか?」
師長はひきつり、廊下のナース数名を率いて出た。
僕は1人、町議のマッサージを開始した。
「死ぬな・・死ぬなよ!」
しかし、この悪化の速度は何なんだ・・・!
ES-MEN 74
2007年9月1日 事務長は次々とベッドを救急室に集め、置き場所を指導した。
「そこ!置いていい!それは関係ないから大丈夫!よけて!」
田中君が、横綱を背負ってきた。
「ひい!ひい!重いよこの医者!いったい何食ってるんだろ!」
「ちゃんこじゃないか・・」
事務長は、遠方のトレーラーを睨んだ。
外線を受け取ると、ちょうど運転手席のキタノからだ。
<どうだ品川!俺たちを怒らせたから、こうなるんだ!>
「くそ・・・もう患者はないか!」
<ゼロだ!ご苦労さん!投票まではよろしくな!俺たちはもう引き揚げる!バイビー!>
近くで師長が悲鳴を上げた。
「酸素飽和度が足りない人が多いわね!ドクターが来るまで、動脈血の測定を!」
師長が仕切り始めて、頼りがいのある雰囲気が出てきた。
トレーラーは再び轟音を上げ、ゆっくり駐車場を周遊した。
他にもナースらが降りてきて、バイタルやライン確保を行う。
やがて慎吾が降りて、呼ばれた重傷を確認中。
「この人は呼吸ない・・・そこ、バイタルは!ああ・・・」
あっちこっちでシューパー、ピロピロ、現場は混乱を極めた。
慎吾はちこちからコールされ、聖徳太子状態になった。
「マテ!待ってくれ!・・・そうだY字だ!Y字に集中してくれ!」
田中君らの迅速な手さばきで、円陣が組まれた。慎吾・処置台などが円の中心に。放射状にベッドが並べられた。
「よし!バイタルのメモをベッド頭側に貼ってくれ!検査値も全部!」
田中くんが声をあげた。
「イーハー!これぞ中央集権治療だ〜!」
気管支鏡を台に取り付け画面確認、まず1人を挿管。画面見ながらもう1人の重傷を指導。
「ナース!マッサージ弱いぞ!何習ってた!」
「これ動脈血ガス・・・」ナースが1人、横の機械の画面を見せた。
「その人ナルコーシスだよ!酸素しぼって!なるべく!」
近くでナースが指示をとり、またベッドに貼り付け。
「はがれんようにな!たあ!」
吐血患者のSBチューブをナースが用意。
「先生!暇ないですよね!しますよ!ひゃ!」
溢れ出す血を両前腕に受けながら、ナースはチューブを進めた。
「見ててくださいよ!」
ナースの上着がはだけ、慎吾は思わず照れた。
「・・その。あたしじゃなくて!」
ベッドの横綱は起き上がって指さした。
「うおおお!徐脈だろがその人!」
「きゃあ!」周囲のナースが驚いた。
「硫アト用意せい!ペースメーカーあるんだろな!入れて・・・その。もらえ」
復活した横綱は、またその場に倒れた。
僕は4人部屋を2つ回り、再び町議のいる部屋へ。
「この人も、いっこうによくならないな!」
「痰で詰まってる!」とナース。
「チューブが?なれば!」
背中からバシュー!と挿管チューブを取り出した。ドレーンなどがこぼれた。
「町議!すみませんが再び!」
ジェニーのごとく、2つのライトでバシュバシュ瞳孔確認。
「未だ反応いまいち!呼吸もだ!」
意識を失っている町議の口を喉頭鏡で観察・・・チューブ挿入。
「ナース!アンビュー押してろ!」
人工呼吸器設定、装着し今度は止まりかけた脈へのボスミン用意。
「くそっ!くそっ!くそっ!プラズマ足したのかよ!」
検査技師が入ってきた。
「院長代理!菌の結果が!それが・・・」
「マッサージ開始!そこボスミン行かんか!なんだ!」
「イノシシからVREを検出!」
「イノシシの培養結果なんか聞きたくな・・・なにVRE?」
「慎吾先生が、基礎医学的に興味があったので培養に出してたんです・・・」
「で、この患者さんらのグラム染色でも同じ印象が?」
「大いにあると思います!」
「ではそこから来たっていうのか?」
「先生。なんでイノシシから・・・」
「ハカセらのことだ。どっかで<培養>されてたんだろ!手、放す!」
両手を宙に浮かすと・・・心拍はまだ徐脈ぎみだが戻った。
「戻ったが。でもこれはまた止まりそうだ!」
指示を書き、ナースへ。
「服を全部着替えて、1階慎吾の応援に行く。頼むぞ!」
廊下へ走り、動悸を感じつつ滑り台のところへ。
すると足元をすくわれた。
「わあ!」
転がり、かろうじて落下は免れた。
そこに・・・ミリタリー服が立っている。
「そこ!置いていい!それは関係ないから大丈夫!よけて!」
田中君が、横綱を背負ってきた。
「ひい!ひい!重いよこの医者!いったい何食ってるんだろ!」
「ちゃんこじゃないか・・」
事務長は、遠方のトレーラーを睨んだ。
外線を受け取ると、ちょうど運転手席のキタノからだ。
<どうだ品川!俺たちを怒らせたから、こうなるんだ!>
「くそ・・・もう患者はないか!」
<ゼロだ!ご苦労さん!投票まではよろしくな!俺たちはもう引き揚げる!バイビー!>
近くで師長が悲鳴を上げた。
「酸素飽和度が足りない人が多いわね!ドクターが来るまで、動脈血の測定を!」
師長が仕切り始めて、頼りがいのある雰囲気が出てきた。
トレーラーは再び轟音を上げ、ゆっくり駐車場を周遊した。
他にもナースらが降りてきて、バイタルやライン確保を行う。
やがて慎吾が降りて、呼ばれた重傷を確認中。
「この人は呼吸ない・・・そこ、バイタルは!ああ・・・」
あっちこっちでシューパー、ピロピロ、現場は混乱を極めた。
慎吾はちこちからコールされ、聖徳太子状態になった。
「マテ!待ってくれ!・・・そうだY字だ!Y字に集中してくれ!」
田中君らの迅速な手さばきで、円陣が組まれた。慎吾・処置台などが円の中心に。放射状にベッドが並べられた。
「よし!バイタルのメモをベッド頭側に貼ってくれ!検査値も全部!」
田中くんが声をあげた。
「イーハー!これぞ中央集権治療だ〜!」
気管支鏡を台に取り付け画面確認、まず1人を挿管。画面見ながらもう1人の重傷を指導。
「ナース!マッサージ弱いぞ!何習ってた!」
「これ動脈血ガス・・・」ナースが1人、横の機械の画面を見せた。
「その人ナルコーシスだよ!酸素しぼって!なるべく!」
近くでナースが指示をとり、またベッドに貼り付け。
「はがれんようにな!たあ!」
吐血患者のSBチューブをナースが用意。
「先生!暇ないですよね!しますよ!ひゃ!」
溢れ出す血を両前腕に受けながら、ナースはチューブを進めた。
「見ててくださいよ!」
ナースの上着がはだけ、慎吾は思わず照れた。
「・・その。あたしじゃなくて!」
ベッドの横綱は起き上がって指さした。
「うおおお!徐脈だろがその人!」
「きゃあ!」周囲のナースが驚いた。
「硫アト用意せい!ペースメーカーあるんだろな!入れて・・・その。もらえ」
復活した横綱は、またその場に倒れた。
僕は4人部屋を2つ回り、再び町議のいる部屋へ。
「この人も、いっこうによくならないな!」
「痰で詰まってる!」とナース。
「チューブが?なれば!」
背中からバシュー!と挿管チューブを取り出した。ドレーンなどがこぼれた。
「町議!すみませんが再び!」
ジェニーのごとく、2つのライトでバシュバシュ瞳孔確認。
「未だ反応いまいち!呼吸もだ!」
意識を失っている町議の口を喉頭鏡で観察・・・チューブ挿入。
「ナース!アンビュー押してろ!」
人工呼吸器設定、装着し今度は止まりかけた脈へのボスミン用意。
「くそっ!くそっ!くそっ!プラズマ足したのかよ!」
検査技師が入ってきた。
「院長代理!菌の結果が!それが・・・」
「マッサージ開始!そこボスミン行かんか!なんだ!」
「イノシシからVREを検出!」
「イノシシの培養結果なんか聞きたくな・・・なにVRE?」
「慎吾先生が、基礎医学的に興味があったので培養に出してたんです・・・」
「で、この患者さんらのグラム染色でも同じ印象が?」
「大いにあると思います!」
「ではそこから来たっていうのか?」
「先生。なんでイノシシから・・・」
「ハカセらのことだ。どっかで<培養>されてたんだろ!手、放す!」
両手を宙に浮かすと・・・心拍はまだ徐脈ぎみだが戻った。
「戻ったが。でもこれはまた止まりそうだ!」
指示を書き、ナースへ。
「服を全部着替えて、1階慎吾の応援に行く。頼むぞ!」
廊下へ走り、動悸を感じつつ滑り台のところへ。
すると足元をすくわれた。
「わあ!」
転がり、かろうじて落下は免れた。
そこに・・・ミリタリー服が立っている。
ES-MEN 75
2007年9月1日「スミ!」
「おお前らはいかに無駄な浪費をしているってことが分らんのか我々の第一歩を踏みにじるつもりか負けると分かってても!」
スミは、ポケットからアンプルを数本取り出した。
「それは・・・?」
「これを賞品にしてやろう」
「なんて書いてあるんだ・・・?」
「最近、開発された坑VRE薬」
「リネゾリド・・・!」
僕は手を伸ばした。当時は一部の大学病院にしかなく、民間では入手困難だったのだ。
「欲しいだろ〜それ欲しいか!」
「ぐぐ!」
スミは、目に見えないほどの鋭い突きを胸に見舞った。
思わず両手で守ったがそれごと突かれた。
「いてっ!ちょっと!ちょお!」
「どうした暴力は違法か?暴力なしでテロがさばけるか?」
「くっそ〜!」
スミの拳の間から、アンプルがカランカランとこぼれていく。
「我々は弱体化したこの国をテロから守るため立ち上がる!お前らのような者にこの日本は守らせん!たあ!」
「いてえ!ホントにいてえ!」
「む!わが同志が引き揚げているではないか?」
グルグルと、駐車場のバイクや車を蹴散らしていくトレーラー。
ハッチが全て開いたままなのが分かる。
「患者は全部、送っただとお?」
「医者が少なくてもな!やればやれるんだ!」
スミは立ち尽くした。
「な、何が?私は夢を見てるんだそうだ違いない革命は起こるのだでは何のために!」
「スミ!診療に行かせろ!それと!」
落ちたアンプルをかき集め、ズボンへ。
「そうはいかんお前らにはやらん!私に勝ってもないのに!」
「このやろう!」
「それではそろそろ!仕上げにかかるか!」
パンチがいきなり何十発と飛んできた。手当たりしだい、とにかく猫パンチ応戦。何発かは当たっても、その数倍やり返してくる。いずれ胸に当たるだろう・・・
この攻撃は・・あのトレッドミルのときの・・そうだ。田中くんが背負い投げされたときの。パンチが交わせず、スミに胸ポッケをつかまれた。
「つ!つかませるかよ!」
「やあああああああああ!」
スミの歯を食いしばった一撃が届き、それはムンズと胸ポケットをつかんだ。もう一方が肩に。
「しまった!滑り台に投げられる!」
「そおおだ!でや!ぐ・・・?ぐおおおお!」
スミは悶え、ポッケ掴んだ拳を反対の手で握り締めた。
血が小さくしたたる。拳の指の間から針が見えて・・・ディバイダーが隠れてた。
母親は逆さまに入れてたのか。
「強烈な痛みがああああ!」
「こんな軍人じゃ。日本は守れんな」
「自分の血は初めてだああ!」
「あ!」
白目を向いたスミはのけぞり、そのまま滑り台へ逆さまに落ち込んだ。彼はそのまま逆さまのままで・・・ツルーッと台を落ちて行った。
「おお前らはいかに無駄な浪費をしているってことが分らんのか我々の第一歩を踏みにじるつもりか負けると分かってても!」
スミは、ポケットからアンプルを数本取り出した。
「それは・・・?」
「これを賞品にしてやろう」
「なんて書いてあるんだ・・・?」
「最近、開発された坑VRE薬」
「リネゾリド・・・!」
僕は手を伸ばした。当時は一部の大学病院にしかなく、民間では入手困難だったのだ。
「欲しいだろ〜それ欲しいか!」
「ぐぐ!」
スミは、目に見えないほどの鋭い突きを胸に見舞った。
思わず両手で守ったがそれごと突かれた。
「いてっ!ちょっと!ちょお!」
「どうした暴力は違法か?暴力なしでテロがさばけるか?」
「くっそ〜!」
スミの拳の間から、アンプルがカランカランとこぼれていく。
「我々は弱体化したこの国をテロから守るため立ち上がる!お前らのような者にこの日本は守らせん!たあ!」
「いてえ!ホントにいてえ!」
「む!わが同志が引き揚げているではないか?」
グルグルと、駐車場のバイクや車を蹴散らしていくトレーラー。
ハッチが全て開いたままなのが分かる。
「患者は全部、送っただとお?」
「医者が少なくてもな!やればやれるんだ!」
スミは立ち尽くした。
「な、何が?私は夢を見てるんだそうだ違いない革命は起こるのだでは何のために!」
「スミ!診療に行かせろ!それと!」
落ちたアンプルをかき集め、ズボンへ。
「そうはいかんお前らにはやらん!私に勝ってもないのに!」
「このやろう!」
「それではそろそろ!仕上げにかかるか!」
パンチがいきなり何十発と飛んできた。手当たりしだい、とにかく猫パンチ応戦。何発かは当たっても、その数倍やり返してくる。いずれ胸に当たるだろう・・・
この攻撃は・・あのトレッドミルのときの・・そうだ。田中くんが背負い投げされたときの。パンチが交わせず、スミに胸ポッケをつかまれた。
「つ!つかませるかよ!」
「やあああああああああ!」
スミの歯を食いしばった一撃が届き、それはムンズと胸ポケットをつかんだ。もう一方が肩に。
「しまった!滑り台に投げられる!」
「そおおだ!でや!ぐ・・・?ぐおおおお!」
スミは悶え、ポッケ掴んだ拳を反対の手で握り締めた。
血が小さくしたたる。拳の指の間から針が見えて・・・ディバイダーが隠れてた。
母親は逆さまに入れてたのか。
「強烈な痛みがああああ!」
「こんな軍人じゃ。日本は守れんな」
「自分の血は初めてだああ!」
「あ!」
白目を向いたスミはのけぞり、そのまま滑り台へ逆さまに落ち込んだ。彼はそのまま逆さまのままで・・・ツルーッと台を落ちて行った。
ES-MEN 76
2007年9月1日 スミは、そのまま真っ逆さまに砂場へと落ちていった。
僕はアンプルの入ったポケットをまさぐりながら、病棟へ補給に向かった。
それに続いて玄関前では砂嵐が吹き荒れ、近くの事務長は力なく倒れた。過労だ。頭から血も流れている。
「まだだ。まだ全部収容は・・できてないはず、だ・・・」
また復活した横綱は興奮しながら、ツマミを調節した。
「透析回す!ウラア!」
「アラームが鳴れば呼びます」ナースが気を利かせた。
「さんくす!慎吾ちゃん!シンゴチャーン!」
円の中心、慎吾はペースメーカーを経皮で入れていた。
「これくらいなら。俺だって!」
「よくやった慎吾!気胸はない!」聴診器を外し、降りてきた僕も加わった。
「UAPだがAMIっぽかったんでt-PAを・・」
「・・・・もういったのか。そこまではせんでもよかったかな」
色々相談しながら、CT写真などを確認。二重チェック。
とたん、天井が暗くなった。大停電だ。
「うわ、なんだ?」
詰所でも混乱が起きていた。
「(ナースら)きゃあああああ!」
反射的に、僕と慎吾はダッシュした。だが疲れで加速がない。
「呼吸器の患者は、みな病棟だな!」
「ああ!」
「バッテリー内臓してないのが重症部屋に4台ある!」
事務長は早速手配した。
「ぎょ、業者呼びます!田中!急いで電源を確認しろ!誰かが供給をストップさせてる!」
「急ぎます!あーあしんどいよーもう!」
事務長は壁をつたって立ち上がった。
グダグダ言いながらも、田中くんは地下室へと向かった。
僕と慎吾は重症部屋に入り、アンビューをキャッチした。
「うわこれ。呼吸器が完全にストップしてる。慎吾!あまり押すなよ肺が裂ける!」
「わかってる!」
自発呼吸のない患者から、バッグ送気。しかし4人の患者がそれを要する。バッグはその2つしかなく、交代でローテーションするしかなかった。周囲のナースは呆然。
「そこで突っ立ってないで!モニターなけりゃ酸素飽和度ので測れ!」
ワンテンポ遅れ、ナースらはバイタル確認に向かった。
「雷も落ちてないだろうに・・・?」
ナースらは検温を外した。
「抗生剤の効果でしょうか!町議の熱がどんどん下がっていきます!」
僕の額に汗が何条も流れた。
「町議だけなのかよ・・・!」
実際、効果はそうだった。なんて皮肉だ。
僕はアンプルの入ったポケットをまさぐりながら、病棟へ補給に向かった。
それに続いて玄関前では砂嵐が吹き荒れ、近くの事務長は力なく倒れた。過労だ。頭から血も流れている。
「まだだ。まだ全部収容は・・できてないはず、だ・・・」
また復活した横綱は興奮しながら、ツマミを調節した。
「透析回す!ウラア!」
「アラームが鳴れば呼びます」ナースが気を利かせた。
「さんくす!慎吾ちゃん!シンゴチャーン!」
円の中心、慎吾はペースメーカーを経皮で入れていた。
「これくらいなら。俺だって!」
「よくやった慎吾!気胸はない!」聴診器を外し、降りてきた僕も加わった。
「UAPだがAMIっぽかったんでt-PAを・・」
「・・・・もういったのか。そこまではせんでもよかったかな」
色々相談しながら、CT写真などを確認。二重チェック。
とたん、天井が暗くなった。大停電だ。
「うわ、なんだ?」
詰所でも混乱が起きていた。
「(ナースら)きゃあああああ!」
反射的に、僕と慎吾はダッシュした。だが疲れで加速がない。
「呼吸器の患者は、みな病棟だな!」
「ああ!」
「バッテリー内臓してないのが重症部屋に4台ある!」
事務長は早速手配した。
「ぎょ、業者呼びます!田中!急いで電源を確認しろ!誰かが供給をストップさせてる!」
「急ぎます!あーあしんどいよーもう!」
事務長は壁をつたって立ち上がった。
グダグダ言いながらも、田中くんは地下室へと向かった。
僕と慎吾は重症部屋に入り、アンビューをキャッチした。
「うわこれ。呼吸器が完全にストップしてる。慎吾!あまり押すなよ肺が裂ける!」
「わかってる!」
自発呼吸のない患者から、バッグ送気。しかし4人の患者がそれを要する。バッグはその2つしかなく、交代でローテーションするしかなかった。周囲のナースは呆然。
「そこで突っ立ってないで!モニターなけりゃ酸素飽和度ので測れ!」
ワンテンポ遅れ、ナースらはバイタル確認に向かった。
「雷も落ちてないだろうに・・・?」
ナースらは検温を外した。
「抗生剤の効果でしょうか!町議の熱がどんどん下がっていきます!」
僕の額に汗が何条も流れた。
「町議だけなのかよ・・・!」
実際、効果はそうだった。なんて皮肉だ。
ES-MEN 77
2007年9月1日 暗闇の地下室。
懐中電灯で照らし、田中くんはおそるおそる主電源へと近づいた。
「スイッチ、切られてるよ・・・」
ヒソヒソ声にしたほうがいいと思い、彼は声のトーンを変えた。
「これより、電源を再び入れます。誰がやったのでしょうか・・・」
横からヌッと手が現れ、チョップで懐中電灯が落ちた。踏みつけられ、電池が2つ飛び出し真っ暗に。
「うわ!こわ!こわあ!」
「これで病院の機能は完全に消えた邪魔をするなどもっての他だ!」
「その声はスミ?先生!私はただの一介の事務員です!」
「我々に協力するしか道はないさあ時間がないぞ青二才!」
「わかった!な、なんでもします!命だけはお願いします!事務長には内緒でお願いいたします!」
お互い位置が分らないまま、スミは相手の声を手がかりに近づいた。
地下室入口、他の事務員が入ろうとしたら誰かがいる。
「おい!何入ろうとしてる!」
事務員が促すと、振り向いたのは・・・
「ああっ!事務長さんでしたか!」
事務長はタオルを鉢巻のようにして目隠ししていた。
「な、何かのプレイ?」
「シーッ。ではそろそろ・・・」
「?」
「(小声)ショータイム!」
ゆっくり、カチャンと開けられた。
スミは、ほとんど田中君に近付いていた。
「思えば多くの仲間を失ったそれもこれも貴様らのせいだとんだ突然変異が我々の生存を脅かした」
「に、ニューヨークで戦争なんだぞっ!おお!お前もさっさと国防に走れ国防に!」
スミは、突きのポーズをとった。眼が少し慣れて、田中君の姿が確認できた。
「いいまの言葉は、禁忌選択肢だよまたは?〜?のいずれでもない!」
「ひいっ!」
すると、近くで何か長い棒のようなものが浮き上った。スミは一瞬、気を取られた。
そして・・・
「ぐあ!」火花が散り、田中君は倒れた。
「なに!」気づいたスミに、さらに倍の力が振り下ろされた。
2人とも、地面に平行に倒れた。
ポッ!とライターの火がつき、事務長が現れた。長いバットを持ってる。
「ごめん田中くん・・・間違えちゃった」
速攻、電源を立ち上げた。
「いやね。地下室入る前・・暗いと知ってたからしばらく目かくししてたんだ」
「策士というかノンキというかトホホ・・・!」
田中くんは泣いてるふりをした。
ポン!ポン!ポン!と各部署に明かりが戻っていった。
詰所のモニター、呼吸器すべてが再起動し、高らかな産声が鳴り響いた。
「(一同)やったあああああ!」
懐中電灯で照らし、田中くんはおそるおそる主電源へと近づいた。
「スイッチ、切られてるよ・・・」
ヒソヒソ声にしたほうがいいと思い、彼は声のトーンを変えた。
「これより、電源を再び入れます。誰がやったのでしょうか・・・」
横からヌッと手が現れ、チョップで懐中電灯が落ちた。踏みつけられ、電池が2つ飛び出し真っ暗に。
「うわ!こわ!こわあ!」
「これで病院の機能は完全に消えた邪魔をするなどもっての他だ!」
「その声はスミ?先生!私はただの一介の事務員です!」
「我々に協力するしか道はないさあ時間がないぞ青二才!」
「わかった!な、なんでもします!命だけはお願いします!事務長には内緒でお願いいたします!」
お互い位置が分らないまま、スミは相手の声を手がかりに近づいた。
地下室入口、他の事務員が入ろうとしたら誰かがいる。
「おい!何入ろうとしてる!」
事務員が促すと、振り向いたのは・・・
「ああっ!事務長さんでしたか!」
事務長はタオルを鉢巻のようにして目隠ししていた。
「な、何かのプレイ?」
「シーッ。ではそろそろ・・・」
「?」
「(小声)ショータイム!」
ゆっくり、カチャンと開けられた。
スミは、ほとんど田中君に近付いていた。
「思えば多くの仲間を失ったそれもこれも貴様らのせいだとんだ突然変異が我々の生存を脅かした」
「に、ニューヨークで戦争なんだぞっ!おお!お前もさっさと国防に走れ国防に!」
スミは、突きのポーズをとった。眼が少し慣れて、田中君の姿が確認できた。
「いいまの言葉は、禁忌選択肢だよまたは?〜?のいずれでもない!」
「ひいっ!」
すると、近くで何か長い棒のようなものが浮き上った。スミは一瞬、気を取られた。
そして・・・
「ぐあ!」火花が散り、田中君は倒れた。
「なに!」気づいたスミに、さらに倍の力が振り下ろされた。
2人とも、地面に平行に倒れた。
ポッ!とライターの火がつき、事務長が現れた。長いバットを持ってる。
「ごめん田中くん・・・間違えちゃった」
速攻、電源を立ち上げた。
「いやね。地下室入る前・・暗いと知ってたからしばらく目かくししてたんだ」
「策士というかノンキというかトホホ・・・!」
田中くんは泣いてるふりをした。
ポン!ポン!ポン!と各部署に明かりが戻っていった。
詰所のモニター、呼吸器すべてが再起動し、高らかな産声が鳴り響いた。
「(一同)やったあああああ!」
ES-MEN 78
2007年9月1日 駐車場に立ち、ゴーグルで確認するジェニー。彼ら何人かは置き去りにされた。
「命令が来ない・・・あたしの出番は」
トレーラーには、まだ数台のベッドが残されている。
キタノは狂ったようにあちこち走り回り、近くの公園や散歩道、銅像などあらゆるものを破壊していった。
「キエヘヘヘヘ!」
バイクが1台ずつ走ってくる。
「おいジェニー!引き上げだ!スミがくたばった!自衛隊に突き出される!トレーラーに戻ろう!」
「あんたら降参すんの?あたしはいやよ!」
「僕らは終わりだ。投票したって先は見えてる。今後は地道な民間病院の道もある!」
「ならあんたは居る価値ないわ!またどっかで利用されたらいいわよ!」
ジェニーはPHSで連絡。
「キタノ・・・」
<あいよ!>
「残りの患者、いるでしょ」
<ちょっとくらいキープしとこうぜ?>
「こっちにきなさい!」
ジェニーは負けを覚悟した。こうなれば・・・患者を全て託す必要がある。
トレーラーはジェニーらのほうにやってきた。キタノはボタンを押し、残り全ての8ハッチを開いた。
バイクは次々とベッドと合体させられ、はるばる玄関へ向かって飛び出した。
事務所。
事務員が状況を報告。事務長と田中くんは戻ってない。
「ベッド8台、新たに接近中です!」外の横綱に報告。
「事務の司令塔がいないとは、どういうこつか!」
4名ほどの事務員も、連絡がつながらない。
電源が戻ったものの、僕らは1階の重症患者の急変対応に追われていた。
「できるかいな!俺たちは診療だけで手一杯だ!慎吾!喉頭鏡パス!」
「あいよ!」尻を向け合った背後から、手渡し。僕らは常に円陣の中心だった。
放射線技師がポータブルで入ってくる。
「ここで撮るんですね?」
「ああ!いいって!」他の職員が僕らに防護服。
「いきますよ!」
トン!とレントゲンが1枚ずつ撮影。
慎吾はスワンガンツのモニターデータを確認しつつ、鎖骨下よりゆっくり挿入。
「右心系がやや負荷だな。何だと思う?」
「見えないから、分らん!」
「肥大閉塞型の心筋症なんだが・・・さっきの超音波ではここまでだったか?よほど心不全が進行して」
「ブツブツ言うな!集中できん!」
バイクで最前列のジェニーが独りつぶやく。
「ここで接続外して。彼らが対応に追われるうちに、帰りましょう!」
一斉に接続が外され、ベッドが8隻そのまま玄関へ直進した。
「キタノ!いつまで遊んでんの!」
フラフラの横綱が、玄関前に立った。8台まとめて向かってくる。
「うわ!うわ!これは複視でっか?どど、どれをどうしたらええんだあ?」
「命令が来ない・・・あたしの出番は」
トレーラーには、まだ数台のベッドが残されている。
キタノは狂ったようにあちこち走り回り、近くの公園や散歩道、銅像などあらゆるものを破壊していった。
「キエヘヘヘヘ!」
バイクが1台ずつ走ってくる。
「おいジェニー!引き上げだ!スミがくたばった!自衛隊に突き出される!トレーラーに戻ろう!」
「あんたら降参すんの?あたしはいやよ!」
「僕らは終わりだ。投票したって先は見えてる。今後は地道な民間病院の道もある!」
「ならあんたは居る価値ないわ!またどっかで利用されたらいいわよ!」
ジェニーはPHSで連絡。
「キタノ・・・」
<あいよ!>
「残りの患者、いるでしょ」
<ちょっとくらいキープしとこうぜ?>
「こっちにきなさい!」
ジェニーは負けを覚悟した。こうなれば・・・患者を全て託す必要がある。
トレーラーはジェニーらのほうにやってきた。キタノはボタンを押し、残り全ての8ハッチを開いた。
バイクは次々とベッドと合体させられ、はるばる玄関へ向かって飛び出した。
事務所。
事務員が状況を報告。事務長と田中くんは戻ってない。
「ベッド8台、新たに接近中です!」外の横綱に報告。
「事務の司令塔がいないとは、どういうこつか!」
4名ほどの事務員も、連絡がつながらない。
電源が戻ったものの、僕らは1階の重症患者の急変対応に追われていた。
「できるかいな!俺たちは診療だけで手一杯だ!慎吾!喉頭鏡パス!」
「あいよ!」尻を向け合った背後から、手渡し。僕らは常に円陣の中心だった。
放射線技師がポータブルで入ってくる。
「ここで撮るんですね?」
「ああ!いいって!」他の職員が僕らに防護服。
「いきますよ!」
トン!とレントゲンが1枚ずつ撮影。
慎吾はスワンガンツのモニターデータを確認しつつ、鎖骨下よりゆっくり挿入。
「右心系がやや負荷だな。何だと思う?」
「見えないから、分らん!」
「肥大閉塞型の心筋症なんだが・・・さっきの超音波ではここまでだったか?よほど心不全が進行して」
「ブツブツ言うな!集中できん!」
バイクで最前列のジェニーが独りつぶやく。
「ここで接続外して。彼らが対応に追われるうちに、帰りましょう!」
一斉に接続が外され、ベッドが8隻そのまま玄関へ直進した。
「キタノ!いつまで遊んでんの!」
フラフラの横綱が、玄関前に立った。8台まとめて向かってくる。
「うわ!うわ!これは複視でっか?どど、どれをどうしたらええんだあ?」
ES-MEN 79
2007年9月1日 よく見ると、ちょっと目の前に網のようなものが敷いてある。
両側に、人。
「事務員ら!おまんら電話も出ずに何やってて!」
事務員の1人は振り向きニヤリと笑い、掛け声出した。
「そら今だ!バーを立てい!」
2本の長いバーが立ち、地面の網も持ち上がった。即席のテニスコートだ。
他の事務員2人が、網の下端をしっかり持つ。
横綱はヘナヘナ座り込んだ。
「そ、そうか。そうやって衝撃を・・・」
ベッドが次々やってきたが、ネットが微妙に左右に動き、軽い振動で引き戻された。1台また1台と、ネットが優しく弾き返していく。
横綱は止まりかけのベッドの端をつかまえた。
「よしゃ!まずここで診る!」横綱が重傷から取りかかった。
詰所でも戦争は続いていた。師長がツバ吐きながら指示。
「軽症はもういないわね!6人部屋は8人部屋!亡くなった部屋も早めの消毒して!」
『し!師長!2階の病室は開けたままにせよと院長が!』事務が外から。
「でも・・・患者さんの居場所が!」
『高度の耐性菌が出たそうです!医師宅を利用しましょう!医師宅のすべてを開放するそうです!子供らは別室へ!』
処置済みのベッドが、次々隣の医師官舎へと運ばれていく。
患者の1人が病室から観戦。
「こ、ここまでせんと、いかんのですか・・・」
ジェニーはトレーラー助手席へ戻った。
「戻るわよ!ドアロックして!」
「スミは本当にくたばったのかよお?」キタノが戸惑った。
「ロックしろっての!」強引にボタンが押された。
ブウ〜、とトレーラーがゲートへと戻っていく。
キタノは青ざめていた。
「お、おれこの病院やめるわ!」
「何言ってんの行くとこあんの?」
「もも!もういいどっかの僻地でひっそり!ひいい!」
病院1階から、引き上げていくトレーラーが右から左へ進んでいく。
ヨレヨレの事務長は立ち上がり、玄関近くの赤いボタンに手を伸ばした。
「人間をモノのように扱う君らに・・・」
指をボタンの上に乗せた。
「ここに根ざす権利はない!」
緊急ボタンを押すと、即座にゲートが横からグイーン、と閉まりにかかった。キタノの真横に肉迫した。
キタノは、思わずハンドルから伏せた。
「ひ!ひやあああ!」
「(乗員ら)わあああああ!」
ゲートの板がトレーラー運転席にめり込み、鋭く鈍い音がバキンドカン、とさく裂した。
トレーラーは挟まれたまま停車して・・・模型のようにおとなしくなっている。
事務長は玄関前の、その場に倒れた。
「お、終わった・・・」
両側に、人。
「事務員ら!おまんら電話も出ずに何やってて!」
事務員の1人は振り向きニヤリと笑い、掛け声出した。
「そら今だ!バーを立てい!」
2本の長いバーが立ち、地面の網も持ち上がった。即席のテニスコートだ。
他の事務員2人が、網の下端をしっかり持つ。
横綱はヘナヘナ座り込んだ。
「そ、そうか。そうやって衝撃を・・・」
ベッドが次々やってきたが、ネットが微妙に左右に動き、軽い振動で引き戻された。1台また1台と、ネットが優しく弾き返していく。
横綱は止まりかけのベッドの端をつかまえた。
「よしゃ!まずここで診る!」横綱が重傷から取りかかった。
詰所でも戦争は続いていた。師長がツバ吐きながら指示。
「軽症はもういないわね!6人部屋は8人部屋!亡くなった部屋も早めの消毒して!」
『し!師長!2階の病室は開けたままにせよと院長が!』事務が外から。
「でも・・・患者さんの居場所が!」
『高度の耐性菌が出たそうです!医師宅を利用しましょう!医師宅のすべてを開放するそうです!子供らは別室へ!』
処置済みのベッドが、次々隣の医師官舎へと運ばれていく。
患者の1人が病室から観戦。
「こ、ここまでせんと、いかんのですか・・・」
ジェニーはトレーラー助手席へ戻った。
「戻るわよ!ドアロックして!」
「スミは本当にくたばったのかよお?」キタノが戸惑った。
「ロックしろっての!」強引にボタンが押された。
ブウ〜、とトレーラーがゲートへと戻っていく。
キタノは青ざめていた。
「お、おれこの病院やめるわ!」
「何言ってんの行くとこあんの?」
「もも!もういいどっかの僻地でひっそり!ひいい!」
病院1階から、引き上げていくトレーラーが右から左へ進んでいく。
ヨレヨレの事務長は立ち上がり、玄関近くの赤いボタンに手を伸ばした。
「人間をモノのように扱う君らに・・・」
指をボタンの上に乗せた。
「ここに根ざす権利はない!」
緊急ボタンを押すと、即座にゲートが横からグイーン、と閉まりにかかった。キタノの真横に肉迫した。
キタノは、思わずハンドルから伏せた。
「ひ!ひやあああ!」
「(乗員ら)わあああああ!」
ゲートの板がトレーラー運転席にめり込み、鋭く鈍い音がバキンドカン、とさく裂した。
トレーラーは挟まれたまま停車して・・・模型のようにおとなしくなっている。
事務長は玄関前の、その場に倒れた。
「お、終わった・・・」
ES-MEN 80
2007年9月1日 そして・・・1夜明けた。
ジャリ、ジャリと細かなガラス片を踏みながら、僕は滑り台横の階段を登る。
「はあ、はあ、はあ・・・」
見下ろす救急室は血やガーゼ、布や物品が散乱していた。
事務所にドサッと座ると、事務員らが口を開け、死体のように座っている。
何も音はしない。
駐車場に目をやると、ゲートに挟まれたトレーラーが1台。近くで多くの水色白衣が横たわっている。外に出られず、開くのを待ってる。
「全部の・・・全部の患者を入れたのか。うちってすごいな」
横でドタッと倒れる音。横綱も疲れ果てていた。
「ふーひーふーひー。も、これ以上は無理ですたい」
「ど、どこへ行ってたんだ・・・?」
「医師官舎も、もう満床で。あちこち汚れて大変ですたい・・・」
「引っ越ししてて、よかったな・・・小児科医は?」
「じゅ、重症の子供を隣県まで送るって出たとこですたい・・・」
「戻ってきてないのか?」
「そんな感じじゃないねえ・・・」
ゲートが開き、役人の車が入ってきた。
「この惨状は、何ですか・・・?」
鉄クズやゴミを蹴散らし避けながら、選挙カーのような車は停車した。
助手席から出てきたのは・・・ハカセだった。僕は玄関からはみ出た。
「ハカセ・・・それでも開票するってか?」
「やあ先生!くれぐれも忘れないように。これで存続が決まるんですよ。お忘れか?僕は現場にタッチはしてないから」
役人らは実に機械的に、大きな投票箱をひっくり返した。大きな机の上にばら撒かれる。
「町民って、こんなにいたんだねえ」
ハカセは役人を制した。
「院長代理先生!投票は終わりましたので、これよりここで開票します!」
「きたねえ!うちのスタッフら忙し過ぎで、投票どころじゃなかったぞ!」僕は叫んだ。
ナースらも総動員、僕らも含めてそんなのに出向く余裕などなかった・・・。
ホワイトボードが用意され、どこかの教師らがマジックで書く用意。
役人が1枚ずつ、読み上げる。
「真珠会、真珠会、真珠会、真珠会・・・」
「あわわ・・・」僕は観念したが、事務長はクールだ。
こいつ、何安心してんだ・・・。
「真珠会、お?真田会」
「おっしゃあ!あ。ども」田中くんが礼する。
「真珠会!真珠会!」
圧倒的に差がつけられていく。
ハカセは僕に近づいた。
「忘れもしませんでした。もう何年前だったか」
「言いたいことがまだ、あったのか?」
「実を言うと、僕はあなたが憎かった」
「そうなん?」
「僕らは毎日アカデミックな日々を送っていた。医者としてのテンションを保ち続けていた」
「俺が・・非常勤でやってたとき?」
「ええ。なのにあなたがやってきて・・・何かが変わった。上司は僕らを大事にせず、しょせんは非常勤であるあなたを評価し始めた」
「俺、そんな能力あったのか?」
「なかったです。でも何かが変わった。上司の僕らへの思い入れが、あれから変わったのです・・・笑顔が増えて、厳格なヒエラルキーが霞んだ。この国と同じことに」
「雰囲気が良くなったら、いけないのか」
開票は少し風向きが変わった。
「真田!真田!だよね。真珠!さなだ!さなだ!」
ハカセは臆することなく続けた。
「そして当院は緊張感を失い、みな変に自立に目覚めるようになった。リベラルな思想を持つようになった。それならそれで、あなたが皆を引っ張ってくれると思ってた」
「お、おれは当時。大学の人事で動いてたんだから。仕方ないだろ」
「そして僕らが窮地に立たされて、あなたは僕らを見捨てました」
「だから人事だってのに!」
「悔しかった。あれは本当に悔しかった」
ゲートの彼方から、大型バスが走ってきた。2台、いや3台・・・
ハカセは眼を丸くした。
開票は中盤を過ぎている。
「サナダ!サナダ!真珠!サナダ!」
ハカセは僕の目を見た。
僕はどうしていいかわからず、ニッコリほほ笑んだ。
「はは・・・これってどうなってんの?商店街の票が・・寝返ったのか?」
「そんなことは、まずない!」
ハカセの目が血走った。
ジャリ、ジャリと細かなガラス片を踏みながら、僕は滑り台横の階段を登る。
「はあ、はあ、はあ・・・」
見下ろす救急室は血やガーゼ、布や物品が散乱していた。
事務所にドサッと座ると、事務員らが口を開け、死体のように座っている。
何も音はしない。
駐車場に目をやると、ゲートに挟まれたトレーラーが1台。近くで多くの水色白衣が横たわっている。外に出られず、開くのを待ってる。
「全部の・・・全部の患者を入れたのか。うちってすごいな」
横でドタッと倒れる音。横綱も疲れ果てていた。
「ふーひーふーひー。も、これ以上は無理ですたい」
「ど、どこへ行ってたんだ・・・?」
「医師官舎も、もう満床で。あちこち汚れて大変ですたい・・・」
「引っ越ししてて、よかったな・・・小児科医は?」
「じゅ、重症の子供を隣県まで送るって出たとこですたい・・・」
「戻ってきてないのか?」
「そんな感じじゃないねえ・・・」
ゲートが開き、役人の車が入ってきた。
「この惨状は、何ですか・・・?」
鉄クズやゴミを蹴散らし避けながら、選挙カーのような車は停車した。
助手席から出てきたのは・・・ハカセだった。僕は玄関からはみ出た。
「ハカセ・・・それでも開票するってか?」
「やあ先生!くれぐれも忘れないように。これで存続が決まるんですよ。お忘れか?僕は現場にタッチはしてないから」
役人らは実に機械的に、大きな投票箱をひっくり返した。大きな机の上にばら撒かれる。
「町民って、こんなにいたんだねえ」
ハカセは役人を制した。
「院長代理先生!投票は終わりましたので、これよりここで開票します!」
「きたねえ!うちのスタッフら忙し過ぎで、投票どころじゃなかったぞ!」僕は叫んだ。
ナースらも総動員、僕らも含めてそんなのに出向く余裕などなかった・・・。
ホワイトボードが用意され、どこかの教師らがマジックで書く用意。
役人が1枚ずつ、読み上げる。
「真珠会、真珠会、真珠会、真珠会・・・」
「あわわ・・・」僕は観念したが、事務長はクールだ。
こいつ、何安心してんだ・・・。
「真珠会、お?真田会」
「おっしゃあ!あ。ども」田中くんが礼する。
「真珠会!真珠会!」
圧倒的に差がつけられていく。
ハカセは僕に近づいた。
「忘れもしませんでした。もう何年前だったか」
「言いたいことがまだ、あったのか?」
「実を言うと、僕はあなたが憎かった」
「そうなん?」
「僕らは毎日アカデミックな日々を送っていた。医者としてのテンションを保ち続けていた」
「俺が・・非常勤でやってたとき?」
「ええ。なのにあなたがやってきて・・・何かが変わった。上司は僕らを大事にせず、しょせんは非常勤であるあなたを評価し始めた」
「俺、そんな能力あったのか?」
「なかったです。でも何かが変わった。上司の僕らへの思い入れが、あれから変わったのです・・・笑顔が増えて、厳格なヒエラルキーが霞んだ。この国と同じことに」
「雰囲気が良くなったら、いけないのか」
開票は少し風向きが変わった。
「真田!真田!だよね。真珠!さなだ!さなだ!」
ハカセは臆することなく続けた。
「そして当院は緊張感を失い、みな変に自立に目覚めるようになった。リベラルな思想を持つようになった。それならそれで、あなたが皆を引っ張ってくれると思ってた」
「お、おれは当時。大学の人事で動いてたんだから。仕方ないだろ」
「そして僕らが窮地に立たされて、あなたは僕らを見捨てました」
「だから人事だってのに!」
「悔しかった。あれは本当に悔しかった」
ゲートの彼方から、大型バスが走ってきた。2台、いや3台・・・
ハカセは眼を丸くした。
開票は中盤を過ぎている。
「サナダ!サナダ!真珠!サナダ!」
ハカセは僕の目を見た。
僕はどうしていいかわからず、ニッコリほほ笑んだ。
「はは・・・これってどうなってんの?商店街の票が・・寝返ったのか?」
「そんなことは、まずない!」
ハカセの目が血走った。
ES-MEN 81
2007年9月1日 小児科医の藤堂を先頭に、子供を引き連れた親らが次々とバスから降りてくる。
僕は手を振った。
「おかえり!」
「大変だったようだな!」
横綱は泣きながら走った。
「やったあ!もどったあ!」
抱きつき、藤堂とともに吹っ飛んだ。
僕は藤堂だけ引き上げた。
「でも遅かったな。何をしてたんだ?小児の転院だけじゃ、ないだろ?」
「人を集めてきた。開票前に紹介しようと思ったが・・・」
「人?」
バスが、また1台。もう4台目にもなる。降りてきたメンツは、子供複数にその両親、はたまたその両親・・・。いくつかは見た顔だ。
「藤堂。彼らは・・・」
「この僕に、これから一生ついてきてくれる人間だ」
「なに?じゃあ隣町の・・・」
そうか。この男が診療していた町の人間か。
みな、大きな荷物を持っている。
事務長は一歩踏み出した。
「とにかく、すごい人数です。集合住宅からの移住はそのうち、ということだったんですが・・・財力で何とか都合をつけました」
「住居の手配を?」
「ええ」
僕は呆れ、座り込んだ。
「強引に、住民にしたとは・・・何考えてんだお前」
「いやいや」
「また八百長か?」
「いえ。これは・・・先生の主義に従ったままです」
「は?おれはこんな・・・」
「<正義のためなら、何をしたっていい>」
「う・・・」
事務長はさっそうと、その場から離れて開票に耳を傾けた。
投票は、ひょっとしたら・・・。
でも俺は。いずれにしても、大阪に戻る必要がある。残存艦隊を駆逐する必要があるからだ。
小児科医はバンと胸をはった。
「もうここの住人だ!」
ドドーン、と壮観な眺めだった。小児科医の両側に拡がる群衆。核家族、大家族・・・。
ざっと五百人はいるはずだ。
僕は開票のほうを振り向いた。
「そう。それで・・・」
開票は終わりにさしかかる。
「サナダ!サナダ!サナダ!真珠!サナダ!・・また真田!」
ハカセの頬を、一筋の涙がつたった。
「陰謀だ・・こんなの陰謀だ。なんで僻地の人間は、分からないんだ。見抜けないんだ」
開票が終わっても、役人らは押し黙っていた。
事務長は、ホワイトボードの数を計算機で叩いた。
「・・・・真珠会368。真田会・・・・440!真田会の勝ち!」
「(一同)いやったああああああ!」
小児科医がたくましく見える。慎吾も、横綱も成長した。
僕は手を振った。
「おかえり!」
「大変だったようだな!」
横綱は泣きながら走った。
「やったあ!もどったあ!」
抱きつき、藤堂とともに吹っ飛んだ。
僕は藤堂だけ引き上げた。
「でも遅かったな。何をしてたんだ?小児の転院だけじゃ、ないだろ?」
「人を集めてきた。開票前に紹介しようと思ったが・・・」
「人?」
バスが、また1台。もう4台目にもなる。降りてきたメンツは、子供複数にその両親、はたまたその両親・・・。いくつかは見た顔だ。
「藤堂。彼らは・・・」
「この僕に、これから一生ついてきてくれる人間だ」
「なに?じゃあ隣町の・・・」
そうか。この男が診療していた町の人間か。
みな、大きな荷物を持っている。
事務長は一歩踏み出した。
「とにかく、すごい人数です。集合住宅からの移住はそのうち、ということだったんですが・・・財力で何とか都合をつけました」
「住居の手配を?」
「ええ」
僕は呆れ、座り込んだ。
「強引に、住民にしたとは・・・何考えてんだお前」
「いやいや」
「また八百長か?」
「いえ。これは・・・先生の主義に従ったままです」
「は?おれはこんな・・・」
「<正義のためなら、何をしたっていい>」
「う・・・」
事務長はさっそうと、その場から離れて開票に耳を傾けた。
投票は、ひょっとしたら・・・。
でも俺は。いずれにしても、大阪に戻る必要がある。残存艦隊を駆逐する必要があるからだ。
小児科医はバンと胸をはった。
「もうここの住人だ!」
ドドーン、と壮観な眺めだった。小児科医の両側に拡がる群衆。核家族、大家族・・・。
ざっと五百人はいるはずだ。
僕は開票のほうを振り向いた。
「そう。それで・・・」
開票は終わりにさしかかる。
「サナダ!サナダ!サナダ!真珠!サナダ!・・また真田!」
ハカセの頬を、一筋の涙がつたった。
「陰謀だ・・こんなの陰謀だ。なんで僻地の人間は、分からないんだ。見抜けないんだ」
開票が終わっても、役人らは押し黙っていた。
事務長は、ホワイトボードの数を計算機で叩いた。
「・・・・真珠会368。真田会・・・・440!真田会の勝ち!」
「(一同)いやったああああああ!」
小児科医がたくましく見える。慎吾も、横綱も成長した。
ES-MEN 82
2007年9月1日 数日後。
トレーラーの調整が終わった。ハカセが手放し、僕らが安価で買い取った。助かった町議はじめ、重症・中等症の患者は真田本院までひとまず転院の方針に。
トレーラーのハッチに1人ずつ。中は2段ベッドが延々と並ぶ。
「ユースホステルより、いいわな・・・」
事務長は書類にハンコを押した。
事務長はケンケンで、やっとトレーラーの前に辿り着いた。僕は修理の様子を見ていた。
「院長代理。いちおう、契約解除のハンコを押してきました・・・はあはあ」
「契約解除?お前、初めから・・」
「いえいえ。更新するかどうかは、経営者の判断で」
「横綱は車イスで、重症だぞ」
「先生が院長を続けなさるなら、意見しときますが・・・」
「えっ?おれ・・・」
正直、田舎はもうたくさんだった。それに、まだいろいろやり残したことがあるような気がする。
「・・・・・いや、俺は」
「でしょ。小児科医の先生は残ってくれるそうで。内科常勤がある程度いたらの話ですが」
「横綱1人か。話は難航するだろな・・・」
僕らは次々乗り込み、慎吾は乗りこむ前にチラッと一瞥した。
玄関前に多数のナース、患者、子供たちが無言で立つ。
事務長はハンドルを握った。
「ゲート!開けてくれ!」PHSで連絡。
僕は横の人影に気づいた。
「・・・事務長!止めてくれ!」
車輪がズズズ・・と止まった。
みな見守る中、僕はコンテナ後部ハッチから外へ降りた。
外には、スッピンで棒立ちのジェニー・・とその仲間。ボロのような私服。
ワゴン車で、こちらへ駆けつけたもよう。挨拶か。
「あは・・・見てこのザマ。この服ジャスコで買ったの」
「・・・・・」
「真珠会が、こんな危険な奴らだって分かってたら私・・・私。だって先生だって、先生だって何もあたしに教えてくれなかったし」
「・・・・・」
沈黙で通したが、それが全てを語っていた。
「行くとこないんだもう・・・どうしよう」
「だろな」
「医者は、医者でしか生きていけない。ね、どっか先生の力で・・・ねえねえコネあるんでしょ?クリニックの先生とか知ってるって!」
「う、うう・・・」
そうか。それでこいつら来たのか。
ワゴンに1人、ハカセのような影がこっちをうかがっている。
恥ずかしくて出てこれないんだろう。
でも少しずつ許し始める自分がいた。
「残念ながら、期待にはそえられない!」事務長が知らない間に立っていた。
「事務長さん。そうだ事務長さんなら!」ジェニーはすがるように飛びついた。
「ねえ助けて!ハカセもたぶん、イエスマンでやってくれると思う!」
事務長は首を大きく横に振った。
「うちはボランティアでやってるんじゃない。まして敵だった人間を雇うことは、人道上、到底考えられない」
「なんでも!なんでもします!」
「たとえ1つでも、困る。あなたがよくても、皆が迷惑する」
「ひ・・・」
「あの日。安全神話は崩れて人間の何かが失われた。これからは私たちも、開拓より身の安全を考えたい」
砂埃が舞った。遠くの皆(スタッフや家族ら)は、まだ見ている。手を振るタイミングも考慮してるんだろう。
近くではキタノが両目を眼帯し顎で上を見たまま、せせら笑っている。
「へへ・・へへへ!ひ〜・・・ひょ〜ほほ」
僕は、何か言い残すべきだった。
「ジェニー。君ら。多くは言わない。頭を冷やせ」
「ねえどこか!どこでもいいから!」唇の血が痛々しい。
「君らのせいで、もう何人もが死んだ。君らの勝手な都合で。正直、テロと同等かそれ以上に始末が悪い」
「で。何が言いたいの要するに?」
「医者には向いてない・・・!」
向こうから、大きなダンプが走ってきた。
中から1人、研修医ぐらいの白衣が出た。
「ジェニー先生。先輩たち。行きましょう!研修医総勢、ついていきます!」
「・・・・・」
研修医は、僕のほうにおじぎした。
「先輩方がご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした・・・僕は本院で待ってたクチですが。行き先を探しててやっと」
「・・・これからどうすんの?」
「上層部はみな、散らばりましたが・・・僕ら研修医の提案で、先輩たちをこの地から脱出させます」
「本州ではもうキツイかもな・・・・・海外か?」
「沖縄で、日本一の研修病院を立ち上げようかと」
「そっか・・・!」
「打倒、舞鶴で頑張ります!さ、ジェニー先生!」
ジェニーは妙に割り切った表情になった。砂埃を払う。
「いいじゃないですか!また違うところで教えてください!」
研修医の言葉で、ジェニーら先輩チームは泣き出した。
研修医らのダンプは後ろを確認しながら、ゆっくり発進した。
ジェニーやハカセを乗せたワゴンは、エンストしかかりながらなんとか発車。ダンプについていく。
僕らはそっと傷つきながら、余裕ない心をかばった。
「事務長。人間関係っていうのは元が濃いほど・・」
「ええ・・・あとあと面倒ですよね」
「ジェニーは。清い思い出で最後にしたかったな」
田中君が、壊れかけのピアノ模型を指で同じ鍵盤をトントントン、と叩いた。
「♪どおしてどおして、ぼ、く、た、ち、は、であってしまあったのだろお・・・」
トレーラーが再び煙を上げ、ゆっくり走りだした。
何か雰囲気的に・・すごく寂しいものを感じた。
トレーラーの調整が終わった。ハカセが手放し、僕らが安価で買い取った。助かった町議はじめ、重症・中等症の患者は真田本院までひとまず転院の方針に。
トレーラーのハッチに1人ずつ。中は2段ベッドが延々と並ぶ。
「ユースホステルより、いいわな・・・」
事務長は書類にハンコを押した。
事務長はケンケンで、やっとトレーラーの前に辿り着いた。僕は修理の様子を見ていた。
「院長代理。いちおう、契約解除のハンコを押してきました・・・はあはあ」
「契約解除?お前、初めから・・」
「いえいえ。更新するかどうかは、経営者の判断で」
「横綱は車イスで、重症だぞ」
「先生が院長を続けなさるなら、意見しときますが・・・」
「えっ?おれ・・・」
正直、田舎はもうたくさんだった。それに、まだいろいろやり残したことがあるような気がする。
「・・・・・いや、俺は」
「でしょ。小児科医の先生は残ってくれるそうで。内科常勤がある程度いたらの話ですが」
「横綱1人か。話は難航するだろな・・・」
僕らは次々乗り込み、慎吾は乗りこむ前にチラッと一瞥した。
玄関前に多数のナース、患者、子供たちが無言で立つ。
事務長はハンドルを握った。
「ゲート!開けてくれ!」PHSで連絡。
僕は横の人影に気づいた。
「・・・事務長!止めてくれ!」
車輪がズズズ・・と止まった。
みな見守る中、僕はコンテナ後部ハッチから外へ降りた。
外には、スッピンで棒立ちのジェニー・・とその仲間。ボロのような私服。
ワゴン車で、こちらへ駆けつけたもよう。挨拶か。
「あは・・・見てこのザマ。この服ジャスコで買ったの」
「・・・・・」
「真珠会が、こんな危険な奴らだって分かってたら私・・・私。だって先生だって、先生だって何もあたしに教えてくれなかったし」
「・・・・・」
沈黙で通したが、それが全てを語っていた。
「行くとこないんだもう・・・どうしよう」
「だろな」
「医者は、医者でしか生きていけない。ね、どっか先生の力で・・・ねえねえコネあるんでしょ?クリニックの先生とか知ってるって!」
「う、うう・・・」
そうか。それでこいつら来たのか。
ワゴンに1人、ハカセのような影がこっちをうかがっている。
恥ずかしくて出てこれないんだろう。
でも少しずつ許し始める自分がいた。
「残念ながら、期待にはそえられない!」事務長が知らない間に立っていた。
「事務長さん。そうだ事務長さんなら!」ジェニーはすがるように飛びついた。
「ねえ助けて!ハカセもたぶん、イエスマンでやってくれると思う!」
事務長は首を大きく横に振った。
「うちはボランティアでやってるんじゃない。まして敵だった人間を雇うことは、人道上、到底考えられない」
「なんでも!なんでもします!」
「たとえ1つでも、困る。あなたがよくても、皆が迷惑する」
「ひ・・・」
「あの日。安全神話は崩れて人間の何かが失われた。これからは私たちも、開拓より身の安全を考えたい」
砂埃が舞った。遠くの皆(スタッフや家族ら)は、まだ見ている。手を振るタイミングも考慮してるんだろう。
近くではキタノが両目を眼帯し顎で上を見たまま、せせら笑っている。
「へへ・・へへへ!ひ〜・・・ひょ〜ほほ」
僕は、何か言い残すべきだった。
「ジェニー。君ら。多くは言わない。頭を冷やせ」
「ねえどこか!どこでもいいから!」唇の血が痛々しい。
「君らのせいで、もう何人もが死んだ。君らの勝手な都合で。正直、テロと同等かそれ以上に始末が悪い」
「で。何が言いたいの要するに?」
「医者には向いてない・・・!」
向こうから、大きなダンプが走ってきた。
中から1人、研修医ぐらいの白衣が出た。
「ジェニー先生。先輩たち。行きましょう!研修医総勢、ついていきます!」
「・・・・・」
研修医は、僕のほうにおじぎした。
「先輩方がご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした・・・僕は本院で待ってたクチですが。行き先を探しててやっと」
「・・・これからどうすんの?」
「上層部はみな、散らばりましたが・・・僕ら研修医の提案で、先輩たちをこの地から脱出させます」
「本州ではもうキツイかもな・・・・・海外か?」
「沖縄で、日本一の研修病院を立ち上げようかと」
「そっか・・・!」
「打倒、舞鶴で頑張ります!さ、ジェニー先生!」
ジェニーは妙に割り切った表情になった。砂埃を払う。
「いいじゃないですか!また違うところで教えてください!」
研修医の言葉で、ジェニーら先輩チームは泣き出した。
研修医らのダンプは後ろを確認しながら、ゆっくり発進した。
ジェニーやハカセを乗せたワゴンは、エンストしかかりながらなんとか発車。ダンプについていく。
僕らはそっと傷つきながら、余裕ない心をかばった。
「事務長。人間関係っていうのは元が濃いほど・・」
「ええ・・・あとあと面倒ですよね」
「ジェニーは。清い思い出で最後にしたかったな」
田中君が、壊れかけのピアノ模型を指で同じ鍵盤をトントントン、と叩いた。
「♪どおしてどおして、ぼ、く、た、ち、は、であってしまあったのだろお・・・」
トレーラーが再び煙を上げ、ゆっくり走りだした。
何か雰囲気的に・・すごく寂しいものを感じた。
ES-MEN 83
2007年9月1日 慎吾は最後尾のドアで、思いをはせていた。
義理の父親の言葉が脳裏をよぎっていた。
<男は、家族により尽くしてこそ、よりいい仕事ができるのだ!>
「・・・・・家族か」
どんどん小さくなる、病院前の見送りたち。
よりよく見るため、彼はバンとドアを開けた。
「俺の家族は・・・・」
みな疲れたまま、あちこちに座り込んでいた。
田中君はメモを僕に渡した。
「あ?えっ?」
<俺は残ることにした。もう失うものはない>
「これはだれの・・・慎吾か!」
見渡してもいない。しかし予感はした。コンテナの中央廊下を走り、最後尾のガラス窓から見ると、向こうへ駆けてる人間がいる。
「慎吾!あいつ、残るのか!」
車内のみんなは、別段驚く様子もなかった。
僕は大きな揺れを感じながら、あの病院の行く末を占った。
「そっか。頑張れよ・・・!」
残りの文章。
<逆だ。男は、よき仕事に出会ってこそ・・よき家族を作れるものなんだ>
手紙を握りしめた。
そして、僕にもやり残したことがあった。
「事務長。ちょっと寄ってほしいとこがある。スパイ犬のビデオパネル、これで見れるか?」
義理の父親の言葉が脳裏をよぎっていた。
<男は、家族により尽くしてこそ、よりいい仕事ができるのだ!>
「・・・・・家族か」
どんどん小さくなる、病院前の見送りたち。
よりよく見るため、彼はバンとドアを開けた。
「俺の家族は・・・・」
みな疲れたまま、あちこちに座り込んでいた。
田中君はメモを僕に渡した。
「あ?えっ?」
<俺は残ることにした。もう失うものはない>
「これはだれの・・・慎吾か!」
見渡してもいない。しかし予感はした。コンテナの中央廊下を走り、最後尾のガラス窓から見ると、向こうへ駆けてる人間がいる。
「慎吾!あいつ、残るのか!」
車内のみんなは、別段驚く様子もなかった。
僕は大きな揺れを感じながら、あの病院の行く末を占った。
「そっか。頑張れよ・・・!」
残りの文章。
<逆だ。男は、よき仕事に出会ってこそ・・よき家族を作れるものなんだ>
手紙を握りしめた。
そして、僕にもやり残したことがあった。
「事務長。ちょっと寄ってほしいとこがある。スパイ犬のビデオパネル、これで見れるか?」
ES-MEN 84
2007年9月1日 往診を中断していた山奥の相原氏の家。
彼はベッドで苦しんでいた。
「はあ!はあ!胸が!胸が!」
見上げると、点滴の落ちが悪い。遺産目当てらしい親族が、周囲をグルグル回る。
「て、点滴はもうないか!せ、先生が置いてったろう!」
「・・・・・・」みな、知らんふりで見下ろしている。
「点滴が終わりかけると、やっぱり苦しい!なあ苦しい!」
じいは弱気で当然だ。胸痛が襲ってくる。
近くで、中年息子の1人の声が聞こえた。
「わざわざ実家に戻ったのに、これじゃまだまだかと思ってたけど・・・」
「ぐぎ!ぐぎ!」
「な、そろそろかな・・・あれ?あの犬」
外から入ってきて、時々様子をうかがっている。
「また入ってきたよ。あのバカ犬」
別の兄弟が呟く。
「この前、医者が来ただろ。あのあとからいるんだよ」
娘の1人が、じいを覗き込んだ。
「ねえ。もう同じことやし。うちら、近くにおるから」
「あの点滴・・・」
「ここにおるって。言うたやない?」
「てんてき・・・」
犬の首輪、小さなカメラがある。中年男性が驚いた。
「おおっ!これカメラついてるやん!はやりのバイヨみたいやな!」
誰もバイオと突っこまなかった。
じいが腕を伸ばすが、何度も布団の中にしまわれる。
じいはうなされながら、三途の川を泳いでいた。
<岸は、岸は・・>
いくら泳いでも、岸は見えてこない。
「あ、なんかトラックが来た!」
グアアアアン!と停車した音とともに、ウイーンという音がした。
兄弟の1人が着替えた。
「宅急便だ!金だったりして!」
他の兄弟連中にはタダゴトではなかった。
次々に靴が履きかえられ、ついにはドカドカと突進していった。
「ちょっと!」
「(兄弟ら)うわ!」
僕と田中くんは、タンカを引っ張ってじいの部屋へと向かった。
点滴が・・・もう落ちてない。
「うわっと!まだ詰まってないかな!」
点滴をつなぎかえ・・良かった・滴下する。
ニトロ剤が再び補充されたじいは、みるみるうちに生気を取り戻した。
「はあはあ!はあ!先生!先生!どうも〜ありがとう!」
「じいさん!やっぱ行こうよ!」
「今さらいいんですか?」
「生きてくれ!」
兄弟らをかきわけ、有無を言わさずタンカが乗せられた。
ハッチが閉じ、じいは慌てるように中へと吸い込まれた。
僕は運転手に指示した。
「地球に向けて!出発!」
彼はベッドで苦しんでいた。
「はあ!はあ!胸が!胸が!」
見上げると、点滴の落ちが悪い。遺産目当てらしい親族が、周囲をグルグル回る。
「て、点滴はもうないか!せ、先生が置いてったろう!」
「・・・・・・」みな、知らんふりで見下ろしている。
「点滴が終わりかけると、やっぱり苦しい!なあ苦しい!」
じいは弱気で当然だ。胸痛が襲ってくる。
近くで、中年息子の1人の声が聞こえた。
「わざわざ実家に戻ったのに、これじゃまだまだかと思ってたけど・・・」
「ぐぎ!ぐぎ!」
「な、そろそろかな・・・あれ?あの犬」
外から入ってきて、時々様子をうかがっている。
「また入ってきたよ。あのバカ犬」
別の兄弟が呟く。
「この前、医者が来ただろ。あのあとからいるんだよ」
娘の1人が、じいを覗き込んだ。
「ねえ。もう同じことやし。うちら、近くにおるから」
「あの点滴・・・」
「ここにおるって。言うたやない?」
「てんてき・・・」
犬の首輪、小さなカメラがある。中年男性が驚いた。
「おおっ!これカメラついてるやん!はやりのバイヨみたいやな!」
誰もバイオと突っこまなかった。
じいが腕を伸ばすが、何度も布団の中にしまわれる。
じいはうなされながら、三途の川を泳いでいた。
<岸は、岸は・・>
いくら泳いでも、岸は見えてこない。
「あ、なんかトラックが来た!」
グアアアアン!と停車した音とともに、ウイーンという音がした。
兄弟の1人が着替えた。
「宅急便だ!金だったりして!」
他の兄弟連中にはタダゴトではなかった。
次々に靴が履きかえられ、ついにはドカドカと突進していった。
「ちょっと!」
「(兄弟ら)うわ!」
僕と田中くんは、タンカを引っ張ってじいの部屋へと向かった。
点滴が・・・もう落ちてない。
「うわっと!まだ詰まってないかな!」
点滴をつなぎかえ・・良かった・滴下する。
ニトロ剤が再び補充されたじいは、みるみるうちに生気を取り戻した。
「はあはあ!はあ!先生!先生!どうも〜ありがとう!」
「じいさん!やっぱ行こうよ!」
「今さらいいんですか?」
「生きてくれ!」
兄弟らをかきわけ、有無を言わさずタンカが乗せられた。
ハッチが閉じ、じいは慌てるように中へと吸い込まれた。
僕は運転手に指示した。
「地球に向けて!出発!」
ES-MEN 85
2007年9月2日 山林をなぎ倒しながら、トレーラーは進んだ。
「相原さん。じいさん・・・」
「だいぶ。だいぶ楽になりました」
じいは、2段ベッドの下にいた。あちこち計器が光る。
ナースが数人、手厚く看護。
事務長が挨拶した。
「しばらく、大阪で療養しましょう」
「で、でも。な、治らんかったら・・・」
「何言ってるんです!治るために、あなたは行くんです!」
ガガガガガ・・・とタイヤは音を立てていた。
じいがそっと開けるカーテンの向こうに、秋の景色。
「年を取ったら、壊れることばっかりで・・・」
じいは独り言のように呟いた。すると、上から
「(かすれ声)いや・・・」
「はっ?誰かいたのですか?」
「(かすれ声)こうしてわしら人間が出会うこと、その人間にこうして生かしてもらってることに・・・何か新しい命、絆というものを感じる」
「・・・・・・・」
抜管したばっかりの、町議の声だった。しかし鎮静剤から完全に覚めてないせい、かもしれなかった。
僕らはドッと力が抜け、適当に空いてるベッドに寝ころんだ。
みな、めいめいの事を思う。
寂しさか、嬉しさか・・あちこちから鼻をすする声が漏れた。みな涙が止まらなかった。
しかし、僕にはいろいろ後悔がこみ上げた。でもいい経験だった。いや・・・堂々めぐりで時間は過ぎていく。
田中君は、相変わらず小さい鍵盤を叩いていた。
行き過ぎるトレーラーを、ダンプとワゴンが側道から見送った。ハカセらも、また耐えきれず泣いていた。
何を想ったのだろうか。
タタタタタタタ・・・・
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろうタタタタ・・・
こわれる〜ほど抱きしめた〜
最後ダダン!春に見た夕陽ダン!
うろこ雲照〜らしながら〜タタタタ・・・
ボンネットに〜消え〜てった〜
ひき返してみる〜わみる〜わひとつ前のカ〜まで〜
いつか海に降りたおり〜た〜
あの駐車場にあ〜なたがい〜たようで〜バン!バン!
どうして どうして私達
離れてしまったのだろう〜バン!ババン!
あんなに愛してたのに〜
岬の灯冴えはじめる
同じ場所に立つけれど〜バン!ババン!
潮風 肩を抱くだけ〜
< 2007年 11月 真田本院は平和を取り戻した >
すりきれたカセットを久しぶりにかけてみる
昔気づかなかった
リフレインが悲しげに叫んでる
どうして どうしてできるだけ
やさしくしなかったのだろう
二度と会えなくなるなら
人は忘れられぬ景色を
いくどかさまよううちに
後悔しなくなれるの?
夕映えをあきらめて
走る時刻
シュッ・・パーン!
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろう
こわれるほど抱きしめた
どうして どうして私達
離れてしまったのだろう
あんなに愛してたのに
どうして どうしてできるだけ
やさしくしなかったのだろう
二度と会えなくなるなら
どうしてどうしてわたした・・・(フェードアウト)
<終>
「相原さん。じいさん・・・」
「だいぶ。だいぶ楽になりました」
じいは、2段ベッドの下にいた。あちこち計器が光る。
ナースが数人、手厚く看護。
事務長が挨拶した。
「しばらく、大阪で療養しましょう」
「で、でも。な、治らんかったら・・・」
「何言ってるんです!治るために、あなたは行くんです!」
ガガガガガ・・・とタイヤは音を立てていた。
じいがそっと開けるカーテンの向こうに、秋の景色。
「年を取ったら、壊れることばっかりで・・・」
じいは独り言のように呟いた。すると、上から
「(かすれ声)いや・・・」
「はっ?誰かいたのですか?」
「(かすれ声)こうしてわしら人間が出会うこと、その人間にこうして生かしてもらってることに・・・何か新しい命、絆というものを感じる」
「・・・・・・・」
抜管したばっかりの、町議の声だった。しかし鎮静剤から完全に覚めてないせい、かもしれなかった。
僕らはドッと力が抜け、適当に空いてるベッドに寝ころんだ。
みな、めいめいの事を思う。
寂しさか、嬉しさか・・あちこちから鼻をすする声が漏れた。みな涙が止まらなかった。
しかし、僕にはいろいろ後悔がこみ上げた。でもいい経験だった。いや・・・堂々めぐりで時間は過ぎていく。
田中君は、相変わらず小さい鍵盤を叩いていた。
行き過ぎるトレーラーを、ダンプとワゴンが側道から見送った。ハカセらも、また耐えきれず泣いていた。
何を想ったのだろうか。
タタタタタタタ・・・・
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろうタタタタ・・・
こわれる〜ほど抱きしめた〜
最後ダダン!春に見た夕陽ダン!
うろこ雲照〜らしながら〜タタタタ・・・
ボンネットに〜消え〜てった〜
ひき返してみる〜わみる〜わひとつ前のカ〜まで〜
いつか海に降りたおり〜た〜
あの駐車場にあ〜なたがい〜たようで〜バン!バン!
どうして どうして私達
離れてしまったのだろう〜バン!ババン!
あんなに愛してたのに〜
岬の灯冴えはじめる
同じ場所に立つけれど〜バン!ババン!
潮風 肩を抱くだけ〜
< 2007年 11月 真田本院は平和を取り戻した >
すりきれたカセットを久しぶりにかけてみる
昔気づかなかった
リフレインが悲しげに叫んでる
どうして どうしてできるだけ
やさしくしなかったのだろう
二度と会えなくなるなら
人は忘れられぬ景色を
いくどかさまよううちに
後悔しなくなれるの?
夕映えをあきらめて
走る時刻
シュッ・・パーン!
どうして どうして僕たちは
出逢ってしまったのだろう
こわれるほど抱きしめた
どうして どうして私達
離れてしまったのだろう
あんなに愛してたのに
どうして どうしてできるだけ
やさしくしなかったのだろう
二度と会えなくなるなら
どうしてどうしてわたした・・・(フェードアウト)
<終>
リフレインが叫んでる・・・
2007年9月2日 音楽
「リフレイン」とは<繰り返し>。
どうして僕たちは出会ってしまったのだろう・・・?
なぜ、あのとき優しくしなかったのか。
あんなに愛しあったのに。
あんなに仲が良かったのに。
あんなにおいしかった(ラーメン)のに。
あんなにカネあったのに(パチスロ前)。
年を取るほど重みを増していく歌。これがバブル期に唄われたのだから驚く。
どことなく以前の仲間が以前に戻りそうな気がして、そしてみんなが傷ついた。
今回の話は以上。
どうして僕たちは出会ってしまったのだろう・・・?
なぜ、あのとき優しくしなかったのか。
あんなに愛しあったのに。
あんなに仲が良かったのに。
あんなにおいしかった(ラーメン)のに。
あんなにカネあったのに(パチスロ前)。
年を取るほど重みを増していく歌。これがバブル期に唄われたのだから驚く。
どことなく以前の仲間が以前に戻りそうな気がして、そしてみんなが傷ついた。
今回の話は以上。
先日の公開作で、病院がいきなり停電する場面がある。
通常の停電はたいてい雷がキッカケであり一過性のことが多いが、病院が停電した場合に気がかりなのが(代表的には)人工呼吸器である。
大規模病院ではバックアップ機構がしっかり働くが、中規模以下、特に歴史の古い病院ではそれすら手動化(わざわざ人手で本電源を入れ直す)を要するところがある。
また、人工呼吸器も(通常は再起動するのだが)古い形式では内臓バッテリーすらないものもあるので注意が必要だ。
ともかく、病院にいてとりあえず停電が短時間でも起こったら、スタッフはまず人工呼吸器などの医療器械を<反射的に>走って見に行く必要がある。
余談だが、万が一の停電の際に、携帯電話が明かりの代わりになるのは有り難く思う。
参考)関西電力
http://www.kepco.co.jp/office/index.html
通常の停電はたいてい雷がキッカケであり一過性のことが多いが、病院が停電した場合に気がかりなのが(代表的には)人工呼吸器である。
大規模病院ではバックアップ機構がしっかり働くが、中規模以下、特に歴史の古い病院ではそれすら手動化(わざわざ人手で本電源を入れ直す)を要するところがある。
また、人工呼吸器も(通常は再起動するのだが)古い形式では内臓バッテリーすらないものもあるので注意が必要だ。
ともかく、病院にいてとりあえず停電が短時間でも起こったら、スタッフはまず人工呼吸器などの医療器械を<反射的に>走って見に行く必要がある。
余談だが、万が一の停電の際に、携帯電話が明かりの代わりになるのは有り難く思う。
参考)関西電力
http://www.kepco.co.jp/office/index.html
NHKの特番に感動した!
E=mc2。物理で習ったはずだが、生活で使わないので忘れていた。物質は質量が減ると、それ相応のエネルギーに変わるという法則。じっとしている物体には、それ相応の潜在エネルギーがあるということだ。
今暮らしている惑星は、もとエネルギーだったのが質量に置き換わったものである。
さて、この公式。これは気持ち的なものには当てはまらないか?
<診察前>「よし、今日も頑張って診療だ!」
<診察中>「な、何でこんなに(患者が)いるんだ?」
<診察後>「だるう・・・」
かなり生気を失った。
「でも先生!全部さばけましたよ!」←ナース
「おっしゃエネルギーに変わったあ!」
もっと几帳面な医者の場合。
<診察前>「今日も頑張って診療します!」
<診察中>「休む暇なし!全てみっちり!濃い濃い診療!」
<診察後>「こんな忙しいなんて。もう・・・ここ辞めます」
「でも先生!莫大な売り上げが!」
このエネルギーの生産は・・・核融合並みじゃないか!
(結語)
几帳面すぎる人ほど、核爆弾並の潜在能力を持つ。
昔の教授の言葉を思い出すなあ・・・。
「医者ならじっとするな。アクション起こせ!アクションを!」
(教訓)
意志のある医師は、石(頭)ではない。
※ 別症例
医師「説明しますよ!いいですか?・・・です。はあはあ」
患者「こら!全然納得できんわ!」
医師「すみません・・・」
患者側のエネルギーに変わった!
医師「ほんとは今日は用事があるんですが・・診ましょう!」
患者「おありがとうございます。おかげで治った!」
医師「ああ・・でもデートできんかった」
↑これは好ましい例。
医師「よっしゃ今日は俺のおごりだ!」
財布からビッグバン。いろんな料理に姿を変える。それらはやがてスタッフらの体重となる。
では、揉めてる年金問題・・・m(質量)にあたるものは国民の金で、追いつかんほど物凄い速度(c)で利用されてE(エネルギー)・・・これは国民の怒り、ビッグバンか?
宇宙と逆だ・・・。
(怒り)=(ストレス)Xc2
E=mc2。物理で習ったはずだが、生活で使わないので忘れていた。物質は質量が減ると、それ相応のエネルギーに変わるという法則。じっとしている物体には、それ相応の潜在エネルギーがあるということだ。
今暮らしている惑星は、もとエネルギーだったのが質量に置き換わったものである。
さて、この公式。これは気持ち的なものには当てはまらないか?
<診察前>「よし、今日も頑張って診療だ!」
<診察中>「な、何でこんなに(患者が)いるんだ?」
<診察後>「だるう・・・」
かなり生気を失った。
「でも先生!全部さばけましたよ!」←ナース
「おっしゃエネルギーに変わったあ!」
もっと几帳面な医者の場合。
<診察前>「今日も頑張って診療します!」
<診察中>「休む暇なし!全てみっちり!濃い濃い診療!」
<診察後>「こんな忙しいなんて。もう・・・ここ辞めます」
「でも先生!莫大な売り上げが!」
このエネルギーの生産は・・・核融合並みじゃないか!
(結語)
几帳面すぎる人ほど、核爆弾並の潜在能力を持つ。
昔の教授の言葉を思い出すなあ・・・。
「医者ならじっとするな。アクション起こせ!アクションを!」
(教訓)
意志のある医師は、石(頭)ではない。
※ 別症例
医師「説明しますよ!いいですか?・・・です。はあはあ」
患者「こら!全然納得できんわ!」
医師「すみません・・・」
患者側のエネルギーに変わった!
医師「ほんとは今日は用事があるんですが・・診ましょう!」
患者「おありがとうございます。おかげで治った!」
医師「ああ・・でもデートできんかった」
↑これは好ましい例。
医師「よっしゃ今日は俺のおごりだ!」
財布からビッグバン。いろんな料理に姿を変える。それらはやがてスタッフらの体重となる。
では、揉めてる年金問題・・・m(質量)にあたるものは国民の金で、追いつかんほど物凄い速度(c)で利用されてE(エネルギー)・・・これは国民の怒り、ビッグバンか?
宇宙と逆だ・・・。
(怒り)=(ストレス)Xc2