サーガマニュアル2007秋 じ
2007年9月17日□ ジアゼパム ・・ ベンゾジアゼピン系で、セルシン・ホリゾンが代表。痙攣を抑える目的で使用。人工呼吸管理時の自発呼吸抑制目的でも使用。通常の使用では呼吸抑制に注意。
□ 時間外手当=時間外労働手当=時間外 ・・ レジデントには無縁。一般病院では時間外手当がつくところと、つかないところあり。再就職の際はチェックしておくべき。
□ ジギタリス ・・ 強心剤。つまり心臓の収縮力を強くする作用あり。徐脈傾向になるので夜間の徐脈など要注意。投与量が過量だと中毒となる。濃度が正常でも高めの場合、高齢者で中毒症状起こすことあり。病院では略して「ジギ」と称される。
□ ジギタリス中毒=ジギ中 ・・ 血液中のジギタリス濃度が上昇して、消化器症状(嘔吐・食欲不振)、黄視、精神症状、不整脈がみられた場合。不整脈では2段脈が多く、その他頻脈性の不整脈が多い。中毒には過量投与のほかに誘因がある場合もあり、多いのは低カリウム血症、腎機能障害、高齢者。なお定期的に検査する血中濃度が正常でも高めなら中毒症状に至ることもあるので高齢者では特に配慮が必要。
□ ジギラノゲンC ・・ 注射版のジギタリス製剤。心房細動・上室性頻拍に、まず最初に使用。
□ 自殺企図(じさつきと) ・・ 自殺を図ろうと薬物中毒、外傷で搬送されてくる患者。夜間だと精神科でなく一般の病院で見ざるをえない場合もある。家族は付き添うべき。
□ 事務長 ・・ 病院の外来・病棟の管理責任をもつほか、職員・患者の意見・苦情を聞き、職員採用・解雇などの人事を仕切り、病院存続を第一に奮闘する。裏では卸業者らとつるんでゴルフ・酒三昧など、けっこうおいしい面もある。
□ 事務当直 ・・ 夜間交代で当直している事務員。ボイラー管理、夜間の見回り、救急搬送電話の受付など仕事は多い。眠れるかどうかは当直医同様、救急のあるなし次第。給与は様々で1回につき5千円〜1万未満といったところ。安いせいか必然的にコネつきの中年・高齢退職者になることが多い。
□ 若干(じゃっかん) ・・ 明確な定義はない。医師がよく使う表現。
□ 重症部屋(じゅうしょうべや) ・・ 部屋にそういう名前はつかないが、たいてい詰所の間近で呼吸器などついていて意識のない患者が数人入院している部屋をそう呼ぶことあり。
□ 十二指腸潰瘍=DU ・・ 若年男性に多い。空腹時のみぞおちの痛み。ガスター10で治ればいいが効かなければ胃カメラ受けるかPPIを処方してもらおう。
■ 自己免疫性膵炎=autoimmune pancreatitis=AIP
その発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎。2002年に診断基準が出来、さらに膵臓外病変やIgG4抗体の存在など新たな知見を加え、2006年に改訂がなされた。
高齢男性(60歳代ピークで50-80歳だと8割)に多く閉塞性黄疸で発症(3割)することが多い。また腹痛も同頻度で、上腹部不快として自覚すること多く、つまり典型的な腹痛というようなものでないところが本来の膵炎と異なる。
以下の膵外病変の合併がみられることがある(主に3つ)。
・ 硬化性胆管炎 ・・ 胆管の限局性狭窄だが、ステロイドへの反応が良好という意味でPSCとは区別される。
・ 硬化性唾液腺炎 ・・ 無痛・弾性硬の顎下・耳下・涙腺の腫脹を認めるがSS-A/B抗体が陰性である点でシェーグレンと区別される。
・ 後腹膜線維症 ・・ 付近の尿管・下大静脈の圧迫による水腎症、下腿浮腫。
画像検査で腫瘍性病変が否定的で、
?膵管狭窄像(ERCPにより証明。MRCPは不向き)。典型では全膵管長の1/3以上を占める。
?膵腫大 :びまん性の腫大で、<ソーセージ様>あるいは<たらこ状>と表現される。腹部超音波では低エコー主体で内部高エコー散在。ダイナミック造影CTで(早期か遅延相)、腫大した膵周囲の低吸収域:capsule-like rimを認める。これは炎症・線維化の波及を意味する。
が証明されれば強く疑われる。
また、膵外病変の検出にはFDG-PETが有用。
採血・画像(前述のものと重複するが)では・・
・ 高ガンマグロブリン血症、高IgGなかでもIgG4:特異的ではないが135mg/dl以上はほぼ確実。
・ 自己抗体では抗核抗体(ANA)、抗ラクトフェリン抗体(ALF)、抗炭酸脱水酵素?抗体(ACA)が50%以上の陽性率。
・ HLAではDR4・DQ4が高頻度。
・ 生検(超音波内視鏡・超音波ガイド下で膵生検・・膵管周囲に細胞浸潤と線維化を認める、あるいはERPで胆汁・膵液細胞診など)した組織の結果より確定診断となる。
・ ERCPでは下部胆管狭窄にともなう閉塞性黄疸を認める率が高い(7割)。
・ 2型糖尿病をよく合併する(6割半)。
治療は経口ステロイド剤が有効。ほとんどが1-2週間で改善傾向をみる。具体的にはPSL内服 30-40mg/dayより開始、1-2週ごとに5mgずつ減量して最終的に2.5-5mg/dayへ、以後維持量(実際は維持量5-10mgがすすめられている)。維持期間はエビデンスないが6-12ヵ月が通例で再発を見極めながらの経過観察となる。離脱例もあるが再発例もあり。なお自然軽快する例もあるので1-2週間様子をみるべきという意見もある。
※ ステロイドが効かない場合は膵癌のほうをむしろ再び疑う必要が出てくる。
※ 2006年基準はネット上載ってないようだ。以下はそれに関連したものあり。
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/111_i.htm
□ 十二誘導=十二誘導心電図=心電図 ・・ 心臓を走る電気を12個の波形に分けて解釈するもの。手足首につける「四肢誘導」と胸につける「胸部誘導」に分かれる。
□ 準夜(帯) ・・ ナースの勤務帯のうち、夕方〜深夜0時あたりまでの勤務をさす。ただし0時の申し送りが終わってもそのあと記録の記載があったりで、帰宅が深夜の2−3時になることも珍しくない。
□ 女医不足 ・・ 女性医師の数が毎年10%ずつ増加しているにもかかわらず(臨床医の15%)、実際は結婚して子供が生まれるとなかなか仕事と両立できない。なので現場から離れる女医も増え続ける。女医の求人のほとんどがフルタイム(朝から晩まで平日出勤)という条件だからだそうだ。なので厚生省は今後、非常勤・パートタイムという(単発でしかも数時間勤務)条件で登録をお願いしていくそうだ。
□ 上行大動脈 ・・ 心臓から出てくる血液を全身に運ぶ、大動脈の最初の部分。やがて首付近でUターンし、「大動脈弓」と呼び名が変わる。
□ 上腕二頭筋断裂
・ 頻度は中枢側が多い。
・ 損傷は腱の慢性腱鞘炎による場合、加齢による変性などで起こる。動作では重量物を持ち上げた際に起こりやすい。
・ 視診で筋肉のふくらみが左右非対称。断裂腱が完全に退縮しているとピンポン球のように見える。
・ 筋力は近位腱の場合はほとんど低下しないが遠位腱では膝関節の屈曲力と前腕の回外力が低下する。
・ 近位腱では高齢者でADLに影響ないなら保存的治療(三角巾固定最低3週間)。遠位腱は手術優先。
□ 除菌療法 ・・ ヘリコバクター・ピロリに対する除菌療法を指す。抗生剤2種類に最強胃薬(プロトンポンプ・インヒビター)を1週間。抗生剤2種類も使用なので下痢が2・3割に起こる。除菌に失敗すればもう1度トライするが、それ以降は保険の適応外薬など現実的に手を出しにくいことが多く、一番の問題点となっている。
□ 褥創(じょくそう) ・・床ずれ。仙骨部(お尻の割れ目の直上)に好発。ベッドとの摩擦が続くことで起こる。体位変換で予防。低アルブミンはこれを悪化させる。
□ 助手 ・・ 大学病院での役職。講師より下だが研修医よりは上。つまり「その他」的な存在。しかし社会的な格はつく。
例文)「僕は大学助手だから、バイトに制限があってヤだよ」
□ 徐脈 ・・ 定義では1分間に60回以下の脈。異型肺炎では高熱の割に脈が速くないので「比較的徐脈」と呼ばれる。なお徐脈は英語で「bradycardia(ブラディカルディア)」。職場では「ブラディ」と呼ばれる。
□ 腎臓癌 ・・ このうち85%が腎癌=腎細胞癌(グラヴィッツ腫瘍)で、あと腎盂癌(15%)、ウィルムス腫瘍(小児)。喫煙と関係があり遺伝的要因の指摘あり。3主徴は?血尿(6割にみる)、?腹部腫瘤、?疼痛。血行転移をきたしやすく早期発見しなければ転移した状態で見つかる。外来でなかなか発見がしにくい癌の1つ。しかし年間1万人が発症している(50-60代で男>女)。検査では採血・検尿のほか超音波・CT、IVPやMRIにて腫瘍の存在を証明し、さらに血管造影で腫瘍のタイプを推定していく。腎細胞癌の治療は進行の度合いにより、インターフェロンα・インターロイキン2を主体とした保存療法と、手術療法を組み合わせる。通常の化学療法・放射線療法には抵抗性。
□ 腎機能=ジンキ ・・ 以下の「腎機能障害」参照。血液検査上での腎臓の能力を表す。仕事場では「ジンキ」と略される。
□ 腎機能障害 ・・ 主には血液検査での?BUN、?Crで評価される。?の比重が高いと脱水や消化管出血が疑われる。
□ 人工内耳 ・・ 内耳の蝸牛部に電極を埋め込み、受信装置(側頭部の皮下)から電気刺激を送り出して聴神経を刺激し言語理解を可能にする。ペースメーカーのような形態になるが、電力はさらに外部から供給される形なので、ペースメーカーのような再手術は必要ない。適応は聴力レベルで成人90dB以上、幼小児100dB以上。年齢は日本では2歳以上、アメリカでは12ヶ月以上。なお埋め込み後、成人は半年で聴力が安定するが、小児では2-3年要するという。
□ 腎血管性高血圧 ・・ 腎血管病変による高血圧。高血圧患者の数%の頻度。高血圧のコントロールが容易になって2次性疾患の検索がおざなりになることが増えており、見逃しの可能性も高くなってきている(特に開業医)。
具体的には腹部の血管雑音陽性、若年特に35歳以下の高血圧、腎機能障害目立つ高血圧→レニン・アルドステロン(カテコラミンも合わせて)採血とCT・腹部超音波検査→MRA・三次元CTなどで検索していく。教科書的にはカプトリル負荷試験(+レノグラム)、超音波ドプラ、静脈サンプリング、動脈造影もあるが、これは大学病院や公立病院・検査センター向けで、民間病院的にはなかなか無理。ただしオペ適応決定時には考慮が必要。
※MRA:狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。
※血管造影:腎動脈狭窄75%以上、狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。
これらの検索により、以下の分類のどれかに決まっていく。
? 粥状(じゅくじょう)硬化症 ・・ 中年以降男性に多く他にも動脈硬化病変持っていること多い。腎臓では腎動脈の起始部に限局することが多い。高齢者・糖尿病の増加により、これの増加が著しい。
? 線維筋性異形成 ・・ 50歳までの女性に多く腎動脈の遠位部2/3に多い。脳動脈瘤の合併が多い。PTRAが成功しやすく奨められる。
? 大動脈炎症候群 ・・ 若年女性に多く、大動脈炎が波及して腎動脈起始部に限局すること多い。
? 動脈瘤
? 動脈塞栓症
? 動静脈ろう
? 外傷、腫瘍などの物理的圧迫
? 解離性大動脈瘤
□ 人事(じんじ) ・・ 上層部が決める、職場間の職員異動。病院の医者の人事は通常、4月が最多。秋に少し。つまり半年サイクルが基本のところが多い。
□ 時間外手当=時間外労働手当=時間外 ・・ レジデントには無縁。一般病院では時間外手当がつくところと、つかないところあり。再就職の際はチェックしておくべき。
□ ジギタリス ・・ 強心剤。つまり心臓の収縮力を強くする作用あり。徐脈傾向になるので夜間の徐脈など要注意。投与量が過量だと中毒となる。濃度が正常でも高めの場合、高齢者で中毒症状起こすことあり。病院では略して「ジギ」と称される。
□ ジギタリス中毒=ジギ中 ・・ 血液中のジギタリス濃度が上昇して、消化器症状(嘔吐・食欲不振)、黄視、精神症状、不整脈がみられた場合。不整脈では2段脈が多く、その他頻脈性の不整脈が多い。中毒には過量投与のほかに誘因がある場合もあり、多いのは低カリウム血症、腎機能障害、高齢者。なお定期的に検査する血中濃度が正常でも高めなら中毒症状に至ることもあるので高齢者では特に配慮が必要。
□ ジギラノゲンC ・・ 注射版のジギタリス製剤。心房細動・上室性頻拍に、まず最初に使用。
□ 自殺企図(じさつきと) ・・ 自殺を図ろうと薬物中毒、外傷で搬送されてくる患者。夜間だと精神科でなく一般の病院で見ざるをえない場合もある。家族は付き添うべき。
□ 事務長 ・・ 病院の外来・病棟の管理責任をもつほか、職員・患者の意見・苦情を聞き、職員採用・解雇などの人事を仕切り、病院存続を第一に奮闘する。裏では卸業者らとつるんでゴルフ・酒三昧など、けっこうおいしい面もある。
□ 事務当直 ・・ 夜間交代で当直している事務員。ボイラー管理、夜間の見回り、救急搬送電話の受付など仕事は多い。眠れるかどうかは当直医同様、救急のあるなし次第。給与は様々で1回につき5千円〜1万未満といったところ。安いせいか必然的にコネつきの中年・高齢退職者になることが多い。
□ 若干(じゃっかん) ・・ 明確な定義はない。医師がよく使う表現。
□ 重症部屋(じゅうしょうべや) ・・ 部屋にそういう名前はつかないが、たいてい詰所の間近で呼吸器などついていて意識のない患者が数人入院している部屋をそう呼ぶことあり。
□ 十二指腸潰瘍=DU ・・ 若年男性に多い。空腹時のみぞおちの痛み。ガスター10で治ればいいが効かなければ胃カメラ受けるかPPIを処方してもらおう。
■ 自己免疫性膵炎=autoimmune pancreatitis=AIP
その発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎。2002年に診断基準が出来、さらに膵臓外病変やIgG4抗体の存在など新たな知見を加え、2006年に改訂がなされた。
高齢男性(60歳代ピークで50-80歳だと8割)に多く閉塞性黄疸で発症(3割)することが多い。また腹痛も同頻度で、上腹部不快として自覚すること多く、つまり典型的な腹痛というようなものでないところが本来の膵炎と異なる。
以下の膵外病変の合併がみられることがある(主に3つ)。
・ 硬化性胆管炎 ・・ 胆管の限局性狭窄だが、ステロイドへの反応が良好という意味でPSCとは区別される。
・ 硬化性唾液腺炎 ・・ 無痛・弾性硬の顎下・耳下・涙腺の腫脹を認めるがSS-A/B抗体が陰性である点でシェーグレンと区別される。
・ 後腹膜線維症 ・・ 付近の尿管・下大静脈の圧迫による水腎症、下腿浮腫。
画像検査で腫瘍性病変が否定的で、
?膵管狭窄像(ERCPにより証明。MRCPは不向き)。典型では全膵管長の1/3以上を占める。
?膵腫大 :びまん性の腫大で、<ソーセージ様>あるいは<たらこ状>と表現される。腹部超音波では低エコー主体で内部高エコー散在。ダイナミック造影CTで(早期か遅延相)、腫大した膵周囲の低吸収域:capsule-like rimを認める。これは炎症・線維化の波及を意味する。
が証明されれば強く疑われる。
また、膵外病変の検出にはFDG-PETが有用。
採血・画像(前述のものと重複するが)では・・
・ 高ガンマグロブリン血症、高IgGなかでもIgG4:特異的ではないが135mg/dl以上はほぼ確実。
・ 自己抗体では抗核抗体(ANA)、抗ラクトフェリン抗体(ALF)、抗炭酸脱水酵素?抗体(ACA)が50%以上の陽性率。
・ HLAではDR4・DQ4が高頻度。
・ 生検(超音波内視鏡・超音波ガイド下で膵生検・・膵管周囲に細胞浸潤と線維化を認める、あるいはERPで胆汁・膵液細胞診など)した組織の結果より確定診断となる。
・ ERCPでは下部胆管狭窄にともなう閉塞性黄疸を認める率が高い(7割)。
・ 2型糖尿病をよく合併する(6割半)。
治療は経口ステロイド剤が有効。ほとんどが1-2週間で改善傾向をみる。具体的にはPSL内服 30-40mg/dayより開始、1-2週ごとに5mgずつ減量して最終的に2.5-5mg/dayへ、以後維持量(実際は維持量5-10mgがすすめられている)。維持期間はエビデンスないが6-12ヵ月が通例で再発を見極めながらの経過観察となる。離脱例もあるが再発例もあり。なお自然軽快する例もあるので1-2週間様子をみるべきという意見もある。
※ ステロイドが効かない場合は膵癌のほうをむしろ再び疑う必要が出てくる。
※ 2006年基準はネット上載ってないようだ。以下はそれに関連したものあり。
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/111_i.htm
□ 十二誘導=十二誘導心電図=心電図 ・・ 心臓を走る電気を12個の波形に分けて解釈するもの。手足首につける「四肢誘導」と胸につける「胸部誘導」に分かれる。
□ 準夜(帯) ・・ ナースの勤務帯のうち、夕方〜深夜0時あたりまでの勤務をさす。ただし0時の申し送りが終わってもそのあと記録の記載があったりで、帰宅が深夜の2−3時になることも珍しくない。
□ 女医不足 ・・ 女性医師の数が毎年10%ずつ増加しているにもかかわらず(臨床医の15%)、実際は結婚して子供が生まれるとなかなか仕事と両立できない。なので現場から離れる女医も増え続ける。女医の求人のほとんどがフルタイム(朝から晩まで平日出勤)という条件だからだそうだ。なので厚生省は今後、非常勤・パートタイムという(単発でしかも数時間勤務)条件で登録をお願いしていくそうだ。
□ 上行大動脈 ・・ 心臓から出てくる血液を全身に運ぶ、大動脈の最初の部分。やがて首付近でUターンし、「大動脈弓」と呼び名が変わる。
□ 上腕二頭筋断裂
・ 頻度は中枢側が多い。
・ 損傷は腱の慢性腱鞘炎による場合、加齢による変性などで起こる。動作では重量物を持ち上げた際に起こりやすい。
・ 視診で筋肉のふくらみが左右非対称。断裂腱が完全に退縮しているとピンポン球のように見える。
・ 筋力は近位腱の場合はほとんど低下しないが遠位腱では膝関節の屈曲力と前腕の回外力が低下する。
・ 近位腱では高齢者でADLに影響ないなら保存的治療(三角巾固定最低3週間)。遠位腱は手術優先。
□ 除菌療法 ・・ ヘリコバクター・ピロリに対する除菌療法を指す。抗生剤2種類に最強胃薬(プロトンポンプ・インヒビター)を1週間。抗生剤2種類も使用なので下痢が2・3割に起こる。除菌に失敗すればもう1度トライするが、それ以降は保険の適応外薬など現実的に手を出しにくいことが多く、一番の問題点となっている。
□ 褥創(じょくそう) ・・床ずれ。仙骨部(お尻の割れ目の直上)に好発。ベッドとの摩擦が続くことで起こる。体位変換で予防。低アルブミンはこれを悪化させる。
□ 助手 ・・ 大学病院での役職。講師より下だが研修医よりは上。つまり「その他」的な存在。しかし社会的な格はつく。
例文)「僕は大学助手だから、バイトに制限があってヤだよ」
□ 徐脈 ・・ 定義では1分間に60回以下の脈。異型肺炎では高熱の割に脈が速くないので「比較的徐脈」と呼ばれる。なお徐脈は英語で「bradycardia(ブラディカルディア)」。職場では「ブラディ」と呼ばれる。
□ 腎臓癌 ・・ このうち85%が腎癌=腎細胞癌(グラヴィッツ腫瘍)で、あと腎盂癌(15%)、ウィルムス腫瘍(小児)。喫煙と関係があり遺伝的要因の指摘あり。3主徴は?血尿(6割にみる)、?腹部腫瘤、?疼痛。血行転移をきたしやすく早期発見しなければ転移した状態で見つかる。外来でなかなか発見がしにくい癌の1つ。しかし年間1万人が発症している(50-60代で男>女)。検査では採血・検尿のほか超音波・CT、IVPやMRIにて腫瘍の存在を証明し、さらに血管造影で腫瘍のタイプを推定していく。腎細胞癌の治療は進行の度合いにより、インターフェロンα・インターロイキン2を主体とした保存療法と、手術療法を組み合わせる。通常の化学療法・放射線療法には抵抗性。
□ 腎機能=ジンキ ・・ 以下の「腎機能障害」参照。血液検査上での腎臓の能力を表す。仕事場では「ジンキ」と略される。
□ 腎機能障害 ・・ 主には血液検査での?BUN、?Crで評価される。?の比重が高いと脱水や消化管出血が疑われる。
□ 人工内耳 ・・ 内耳の蝸牛部に電極を埋め込み、受信装置(側頭部の皮下)から電気刺激を送り出して聴神経を刺激し言語理解を可能にする。ペースメーカーのような形態になるが、電力はさらに外部から供給される形なので、ペースメーカーのような再手術は必要ない。適応は聴力レベルで成人90dB以上、幼小児100dB以上。年齢は日本では2歳以上、アメリカでは12ヶ月以上。なお埋め込み後、成人は半年で聴力が安定するが、小児では2-3年要するという。
□ 腎血管性高血圧 ・・ 腎血管病変による高血圧。高血圧患者の数%の頻度。高血圧のコントロールが容易になって2次性疾患の検索がおざなりになることが増えており、見逃しの可能性も高くなってきている(特に開業医)。
具体的には腹部の血管雑音陽性、若年特に35歳以下の高血圧、腎機能障害目立つ高血圧→レニン・アルドステロン(カテコラミンも合わせて)採血とCT・腹部超音波検査→MRA・三次元CTなどで検索していく。教科書的にはカプトリル負荷試験(+レノグラム)、超音波ドプラ、静脈サンプリング、動脈造影もあるが、これは大学病院や公立病院・検査センター向けで、民間病院的にはなかなか無理。ただしオペ適応決定時には考慮が必要。
※MRA:狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。
※血管造影:腎動脈狭窄75%以上、狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。
これらの検索により、以下の分類のどれかに決まっていく。
? 粥状(じゅくじょう)硬化症 ・・ 中年以降男性に多く他にも動脈硬化病変持っていること多い。腎臓では腎動脈の起始部に限局することが多い。高齢者・糖尿病の増加により、これの増加が著しい。
? 線維筋性異形成 ・・ 50歳までの女性に多く腎動脈の遠位部2/3に多い。脳動脈瘤の合併が多い。PTRAが成功しやすく奨められる。
? 大動脈炎症候群 ・・ 若年女性に多く、大動脈炎が波及して腎動脈起始部に限局すること多い。
? 動脈瘤
? 動脈塞栓症
? 動静脈ろう
? 外傷、腫瘍などの物理的圧迫
? 解離性大動脈瘤
□ 人事(じんじ) ・・ 上層部が決める、職場間の職員異動。病院の医者の人事は通常、4月が最多。秋に少し。つまり半年サイクルが基本のところが多い。
サーガマニュアル2007秋 す
2007年9月17日□ スーパーローテ=新医師臨床研修制度 ・・ 2004年4月より実施されている、研修医のため(国のため?)の臨床研修制度。医師法によると・・診療しようとする医師は2年以上研修を受ける義務あり、研修が修了してはじめて医籍登録として証明される・・などの内容あり。2005年現在の時点では特に外科系の成長遅延が問題となっている。2ヶ月の研修で外科の基本を学び終えるなど、到底不可能との声が多い。またこの制度のせいで研修医が都会に集中、地域医療に深刻な影響をもたらすと懸念されている。現在の教育病院の劣悪な環境を考えると、導入そのものが間違いだ。だが・・・それがこの国の<しわ寄せ>というやり方なのだ。
□ スイッチ療法 ・・ 市中肺炎(中等症まで。つまり重症を除く)入院患者での抗生剤投与を、早期に注射剤→内服へ変更する方法。欧米ではガイドラインに記載あり。2006年の報告(日本)では注射で通してする場合と効果は同じと証明され、より推奨されることになった。早期退院・コスト減が期待できる。
□ 膵炎 ・・ 急性と慢性に分けられる。急性膵炎は重篤化することあり入院加療が必要。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・ERCPの合併症としても重要。詳しくは「急性膵炎」「慢性膵炎」を参照。2001年以降診断基準が変わったりしているので、こと膵炎に関しては古い本は参照しないほうがいい。
■ 膵臓癌=膵癌=PK=浸潤性膵管癌
早期発見が難しい癌で、発見時は進行例のことが多い。健診レベルでは腹部超音波検査によるスクリーニングにたよっており、疑い例は腫瘍マーカー測定(CEA , CA19-9 , DUPAN2 , SPAN1)に造影腹部CT、さらにはMRIであるMRCPを行い、疑い強ければERCPを行う。
超音波での早期発見目標は、あくまでも直径1センチ以下の膵臓内に限局する癌(膵管上皮にとどまる、いわゆる上皮内癌)だ。2センチだとすでに転移してる例もあるという。このような小さな段階では腫瘍マーカーが異常を呈することは少ない。つまり漫然とした腫瘍マーカーの測定は、膵癌の早期発見にはつながらないということだ。血中アミラーゼ・エラスターゼ?の膵酵素上昇は膵管の閉塞を疑うもので、むしろこちらが早期発見につながる検査項目だ。
PETは有用で特に小肝転移の検出に関しても威力を発揮するが、それで膵臓癌が疑われたとしても良性か悪性かまでは診断できない。
<外科治療>
積極的に切除される傾向にある。もちろん膵頭部癌での話だが、非切除と比べて切除したほうにのみ、長期生存例がみられる。以前は膵全摘が行われていたがその後のQOL低下が著しいため最近はほとんどしていない。代わりに幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)を行う症例が増えてきた。なお標準切除か拡大切除とどちらが有効かは結論が出ていない。
1998年報告(欧米)で、切除可能な膵癌に拡大手術を行うことが予後を延ばすかどうか、の大規模試験が行われたが、結局標準切除と生存率は変わらなかった。その他の検討でも結果は同様だった。
※ 予後は非常に不良であり、切除例での5生率は10%、切除不能例の1生率は15%程度しかない。
※ 術後の化学療法は以前は5-FUだったが、のちにGEMが生存期間の有効性を証明した(FDAが膵癌で唯一認可した化学療法薬)。
※ 術前補助療法 ・・ 手術前に進行の度合いを軽くして手術に臨もうという(downstaging)治療法が検討中。術前に化学療法・放射線療法を行うというもの。まだエビデンスはなし。
<内科治療>
・ 局所進行病変に対する5-FUと放射線療法の併用は各々単独よりも有効。最近登場のGEMは放射線増感作用があるので併用の効果が期待されている。
・ 全身転移した進行癌への化学療法(GEM) ・・ 従来の5-FUより成績がよい。
・ ミニ移植(造血幹細胞移植の1つ) ・・ 言葉の意味は「ミニ移植」参照。
※ 超音波検査では特に健診では時間が限られていることもありポイントを絞って見る必要あり。主には低エコーの腫瘤像がないか、胆管の拡張はないか、膵管が拡張してないか(尾部まで追跡)など。ただガスが多いと膵臓の尾部は見えないことが多いのが難点。PETは有用であるが良悪性の鑑別までは秀でておらず、あくまでも超音波・CTを組み合わせて役に立つもので、PET単独での診断は無理だそうだ。
※ 症状は具体的には腹部または背部痛または腰痛。早期の小さな癌でも症状をきたすことあり、しかも一過性のこともあるという。また糖尿病発見・増悪がキッカケになるケースもまれではない。つまり主治医の頭の中にあるかないかで早期診断の確率が変わってくる。
□ 水分制限 ・・ 心不全・腎不全・肝不全患者の場合、こういう指示が出ることが多い。つまり水分過多によって病状悪化を予測される場合に、こういう指示が出る。なお脳梗塞予防を目的に多めの水分摂取を勧める医師もいるが、これは根拠もエビデンスもないいい加減なものである。夜間頻尿を増やすだけ。安易な指導は慎もう。
□ 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう) ・・ 高齢者でよく出くわす。特に療養病棟・訪問診療で発見が遅れがち。躯幹、四肢屈側が好発部位で掻痒を伴う。特に免疫低下例。自己免疫性水疱症の1つで、表皮ー真皮間接着が障害されることにより、ヤケドの水ぶくれのような発疹ができる。表皮下水疱(多数の好酸球含む)の周囲は発赤で、痒い。1/3に口腔内びらんを認める。血液検査での好酸球増加は病勢を反映する。ステロイド内服が第一選択。軽症なら軟膏でいけるときもある。びらんが二次感染を起こすと治癒が遷延したり、びらんが広範なら創部からの電解質などの喪失により熱傷のときのような病態にまで発展(体重減少、発熱、貧血)する場合もある。悪性腫瘍を合併するという指摘が従来からあるが実際の頻度は高くない。
□ スギヒラタケ関連脳症 ・・ 2004年秋に東北・北陸で多発した脳症。原因不明であるが、スギヒラタケ摂取により血液脳関門が障害された病態と考えられている。摂食後すぐには発症せず、2日から3-4週間の無症状期があるのが通常のキノコ中毒と異なる。初発症状は振戦、構音障害、下肢脱力などで2日〜2週間続く。その後、痙攣またはせん妄〜昏睡まで呈するようになる(主症状期といって1−2ヶ月続く)。回復しても神経後遺症を残すことがある。死亡率は40%。MRIで所見がみられるのは初発症状出現から2-10日後の話である。治療は対症療法。ステロイドパルスで一部寛解の報告あり。本病態は腎不全に好発、また死亡率の高いことより、腎不全患者あるいは80歳以上はスギヒラタケを摂食しないよう呼びかけられている。
□ スケール表=スライデンィング・スケール=スライディング ・・ 糖尿病あるいは感染などで高血糖の患者の血糖を随時測定、そのときの血糖に応じてのインスリン使用量などが指示された表。ドクター指示のもと、ナースがこれに従う。
□ スタイレット ・・ 挿管チューブに入れて、チューブにしっかりとしなりをつける針金。好きな形に曲げてチューブに入れて可。気管内にチューブが入り確信がもてた時点で抜く。
□ スタチン≒HMG-CoA還元酵素阻害薬 ・・ 高コレステロールを下げるための薬。肝臓内でのアセテート→コレステロール合成に関与する酵素である<HMG-CoA還元酵素>を阻害して、コレステロールを作らせない。なお高齢者で心血管疾患の既往ありまたはハイリスク患者の場合は、コレステロールがたとえ正常でも積極的に投与しておくべきとされている(※)。副作用は横紋筋融解。特に腎機能が悪いとき。筋肉痛・CPK上昇の有無が重要。
※ PROSPER試験で証明済み。コレステロールの高低にかかわらず、心血管イベントを有意に(15%)抑制した。
追伸)2005年3月発表のTNT試験では、アトルバスタチン10mgと80mg投与群との比較が行われ、後者のほうがCHDを抑制すること、またLDL-Cの目標値を(常識的には100mg/dl)80mg/dlまでしたほうがよりCHDを予防できるという結論に達した。
□ ステイタス=地位
□ ステる ・・ 病院内の会話で使われる用語で、「亡くなる」。語源はドイツ語のsterben(ステルベン)=死亡が由来。
□ ステロイド・パルス ・・ 重症化した患者に最後の手段として行われることの多い、3日間の限定・ステロイド大量治療。炎症を強力に一気に抑えるのが目的。半量の場合は「セミパルス」などと呼ばれる。
□ ステント ・・ 冠動脈の狭窄部位に留置する金網。単に風船で膨らませるより再狭窄は少ない。2004年8月からは、これに薬剤を塗布した<薬剤溶出ステント=DES(Drug Eluting Stent)>が保険適応となり優れた成果をあげている(従来のステントに比べて再狭窄が少ない)。血管径2.5-3.5mmの病変が適応と決まっているが、実際はあまり配慮されてないという。それと予後的な検討はまだ十分されてない(ただし2003年報告のResearch登録試験では急性冠症候群での心事故発生率(300日追跡)ではDESに有利な有意差)ので、盲目的な過剰使用は避けたい。モウケに走っている病院は特にだ。
※ 従来型のステントはBMS(Bare Metal Stent)という呼び名で区別されている。
□ ストック ・・ 主に薬剤の余り分のことをさす。伝票処理したが結局使用せず残ったもの、患者が忘れて帰ったもの、中止で残ったものなど。他の患者用に緊急的に使用する場合もあるが、<ふだん使えそうな>薬、たとえば風邪薬や胃薬などは職員たち(特にナース)がこぞって持って帰っていることが多い。
□ ストラテジー ・・ 技術の手順。
□ スパズム=スパスム=spasm=攣縮 ・・ 冠動脈などの痙攣。異型狭心症によるもの、カテーテル検査自体に伴うものなど。ただし脳外科領域でも使用する用語。
□ スピロノラクトン ・・ 利尿剤の1つでカリウム保持性。それによる高カリウム血症への心配から使用はラシックスほどされてはいなかったが、1999年のRALESスタディー(追加したほうが心不全の予後がよかったという画期的な報告)以来、ラシックスを減らしてでも併用すべきといわれるようになった。なおACEIあるいはARBの併用でカリウムはますます上がるので注意。
□ スロンブス=thrombus ・・ 血栓。血の塊。代表的なものは心臓の左心房にできる「左房内血栓」。心房細動や、大きな左心房で出来やすい。なお通常の超音波では完全には否定できない。食道エコーで確認すべき。
□ スワンガンツ(Swan-Ganz)・カテーテル ・・ 心臓の中の血行動態を測定するためのバルーン付き肺動脈カテーテル。検査用のもの。ときには点滴用ルートとしても使用できて便利。循環器では「ガンツ」などと略される。
□ スイッチ療法 ・・ 市中肺炎(中等症まで。つまり重症を除く)入院患者での抗生剤投与を、早期に注射剤→内服へ変更する方法。欧米ではガイドラインに記載あり。2006年の報告(日本)では注射で通してする場合と効果は同じと証明され、より推奨されることになった。早期退院・コスト減が期待できる。
□ 膵炎 ・・ 急性と慢性に分けられる。急性膵炎は重篤化することあり入院加療が必要。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・ERCPの合併症としても重要。詳しくは「急性膵炎」「慢性膵炎」を参照。2001年以降診断基準が変わったりしているので、こと膵炎に関しては古い本は参照しないほうがいい。
■ 膵臓癌=膵癌=PK=浸潤性膵管癌
早期発見が難しい癌で、発見時は進行例のことが多い。健診レベルでは腹部超音波検査によるスクリーニングにたよっており、疑い例は腫瘍マーカー測定(CEA , CA19-9 , DUPAN2 , SPAN1)に造影腹部CT、さらにはMRIであるMRCPを行い、疑い強ければERCPを行う。
超音波での早期発見目標は、あくまでも直径1センチ以下の膵臓内に限局する癌(膵管上皮にとどまる、いわゆる上皮内癌)だ。2センチだとすでに転移してる例もあるという。このような小さな段階では腫瘍マーカーが異常を呈することは少ない。つまり漫然とした腫瘍マーカーの測定は、膵癌の早期発見にはつながらないということだ。血中アミラーゼ・エラスターゼ?の膵酵素上昇は膵管の閉塞を疑うもので、むしろこちらが早期発見につながる検査項目だ。
PETは有用で特に小肝転移の検出に関しても威力を発揮するが、それで膵臓癌が疑われたとしても良性か悪性かまでは診断できない。
<外科治療>
積極的に切除される傾向にある。もちろん膵頭部癌での話だが、非切除と比べて切除したほうにのみ、長期生存例がみられる。以前は膵全摘が行われていたがその後のQOL低下が著しいため最近はほとんどしていない。代わりに幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)を行う症例が増えてきた。なお標準切除か拡大切除とどちらが有効かは結論が出ていない。
1998年報告(欧米)で、切除可能な膵癌に拡大手術を行うことが予後を延ばすかどうか、の大規模試験が行われたが、結局標準切除と生存率は変わらなかった。その他の検討でも結果は同様だった。
※ 予後は非常に不良であり、切除例での5生率は10%、切除不能例の1生率は15%程度しかない。
※ 術後の化学療法は以前は5-FUだったが、のちにGEMが生存期間の有効性を証明した(FDAが膵癌で唯一認可した化学療法薬)。
※ 術前補助療法 ・・ 手術前に進行の度合いを軽くして手術に臨もうという(downstaging)治療法が検討中。術前に化学療法・放射線療法を行うというもの。まだエビデンスはなし。
<内科治療>
・ 局所進行病変に対する5-FUと放射線療法の併用は各々単独よりも有効。最近登場のGEMは放射線増感作用があるので併用の効果が期待されている。
・ 全身転移した進行癌への化学療法(GEM) ・・ 従来の5-FUより成績がよい。
・ ミニ移植(造血幹細胞移植の1つ) ・・ 言葉の意味は「ミニ移植」参照。
※ 超音波検査では特に健診では時間が限られていることもありポイントを絞って見る必要あり。主には低エコーの腫瘤像がないか、胆管の拡張はないか、膵管が拡張してないか(尾部まで追跡)など。ただガスが多いと膵臓の尾部は見えないことが多いのが難点。PETは有用であるが良悪性の鑑別までは秀でておらず、あくまでも超音波・CTを組み合わせて役に立つもので、PET単独での診断は無理だそうだ。
※ 症状は具体的には腹部または背部痛または腰痛。早期の小さな癌でも症状をきたすことあり、しかも一過性のこともあるという。また糖尿病発見・増悪がキッカケになるケースもまれではない。つまり主治医の頭の中にあるかないかで早期診断の確率が変わってくる。
□ 水分制限 ・・ 心不全・腎不全・肝不全患者の場合、こういう指示が出ることが多い。つまり水分過多によって病状悪化を予測される場合に、こういう指示が出る。なお脳梗塞予防を目的に多めの水分摂取を勧める医師もいるが、これは根拠もエビデンスもないいい加減なものである。夜間頻尿を増やすだけ。安易な指導は慎もう。
□ 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう) ・・ 高齢者でよく出くわす。特に療養病棟・訪問診療で発見が遅れがち。躯幹、四肢屈側が好発部位で掻痒を伴う。特に免疫低下例。自己免疫性水疱症の1つで、表皮ー真皮間接着が障害されることにより、ヤケドの水ぶくれのような発疹ができる。表皮下水疱(多数の好酸球含む)の周囲は発赤で、痒い。1/3に口腔内びらんを認める。血液検査での好酸球増加は病勢を反映する。ステロイド内服が第一選択。軽症なら軟膏でいけるときもある。びらんが二次感染を起こすと治癒が遷延したり、びらんが広範なら創部からの電解質などの喪失により熱傷のときのような病態にまで発展(体重減少、発熱、貧血)する場合もある。悪性腫瘍を合併するという指摘が従来からあるが実際の頻度は高くない。
□ スギヒラタケ関連脳症 ・・ 2004年秋に東北・北陸で多発した脳症。原因不明であるが、スギヒラタケ摂取により血液脳関門が障害された病態と考えられている。摂食後すぐには発症せず、2日から3-4週間の無症状期があるのが通常のキノコ中毒と異なる。初発症状は振戦、構音障害、下肢脱力などで2日〜2週間続く。その後、痙攣またはせん妄〜昏睡まで呈するようになる(主症状期といって1−2ヶ月続く)。回復しても神経後遺症を残すことがある。死亡率は40%。MRIで所見がみられるのは初発症状出現から2-10日後の話である。治療は対症療法。ステロイドパルスで一部寛解の報告あり。本病態は腎不全に好発、また死亡率の高いことより、腎不全患者あるいは80歳以上はスギヒラタケを摂食しないよう呼びかけられている。
□ スケール表=スライデンィング・スケール=スライディング ・・ 糖尿病あるいは感染などで高血糖の患者の血糖を随時測定、そのときの血糖に応じてのインスリン使用量などが指示された表。ドクター指示のもと、ナースがこれに従う。
□ スタイレット ・・ 挿管チューブに入れて、チューブにしっかりとしなりをつける針金。好きな形に曲げてチューブに入れて可。気管内にチューブが入り確信がもてた時点で抜く。
□ スタチン≒HMG-CoA還元酵素阻害薬 ・・ 高コレステロールを下げるための薬。肝臓内でのアセテート→コレステロール合成に関与する酵素である<HMG-CoA還元酵素>を阻害して、コレステロールを作らせない。なお高齢者で心血管疾患の既往ありまたはハイリスク患者の場合は、コレステロールがたとえ正常でも積極的に投与しておくべきとされている(※)。副作用は横紋筋融解。特に腎機能が悪いとき。筋肉痛・CPK上昇の有無が重要。
※ PROSPER試験で証明済み。コレステロールの高低にかかわらず、心血管イベントを有意に(15%)抑制した。
追伸)2005年3月発表のTNT試験では、アトルバスタチン10mgと80mg投与群との比較が行われ、後者のほうがCHDを抑制すること、またLDL-Cの目標値を(常識的には100mg/dl)80mg/dlまでしたほうがよりCHDを予防できるという結論に達した。
□ ステイタス=地位
□ ステる ・・ 病院内の会話で使われる用語で、「亡くなる」。語源はドイツ語のsterben(ステルベン)=死亡が由来。
□ ステロイド・パルス ・・ 重症化した患者に最後の手段として行われることの多い、3日間の限定・ステロイド大量治療。炎症を強力に一気に抑えるのが目的。半量の場合は「セミパルス」などと呼ばれる。
□ ステント ・・ 冠動脈の狭窄部位に留置する金網。単に風船で膨らませるより再狭窄は少ない。2004年8月からは、これに薬剤を塗布した<薬剤溶出ステント=DES(Drug Eluting Stent)>が保険適応となり優れた成果をあげている(従来のステントに比べて再狭窄が少ない)。血管径2.5-3.5mmの病変が適応と決まっているが、実際はあまり配慮されてないという。それと予後的な検討はまだ十分されてない(ただし2003年報告のResearch登録試験では急性冠症候群での心事故発生率(300日追跡)ではDESに有利な有意差)ので、盲目的な過剰使用は避けたい。モウケに走っている病院は特にだ。
※ 従来型のステントはBMS(Bare Metal Stent)という呼び名で区別されている。
□ ストック ・・ 主に薬剤の余り分のことをさす。伝票処理したが結局使用せず残ったもの、患者が忘れて帰ったもの、中止で残ったものなど。他の患者用に緊急的に使用する場合もあるが、<ふだん使えそうな>薬、たとえば風邪薬や胃薬などは職員たち(特にナース)がこぞって持って帰っていることが多い。
□ ストラテジー ・・ 技術の手順。
□ スパズム=スパスム=spasm=攣縮 ・・ 冠動脈などの痙攣。異型狭心症によるもの、カテーテル検査自体に伴うものなど。ただし脳外科領域でも使用する用語。
□ スピロノラクトン ・・ 利尿剤の1つでカリウム保持性。それによる高カリウム血症への心配から使用はラシックスほどされてはいなかったが、1999年のRALESスタディー(追加したほうが心不全の予後がよかったという画期的な報告)以来、ラシックスを減らしてでも併用すべきといわれるようになった。なおACEIあるいはARBの併用でカリウムはますます上がるので注意。
□ スロンブス=thrombus ・・ 血栓。血の塊。代表的なものは心臓の左心房にできる「左房内血栓」。心房細動や、大きな左心房で出来やすい。なお通常の超音波では完全には否定できない。食道エコーで確認すべき。
□ スワンガンツ(Swan-Ganz)・カテーテル ・・ 心臓の中の血行動態を測定するためのバルーン付き肺動脈カテーテル。検査用のもの。ときには点滴用ルートとしても使用できて便利。循環器では「ガンツ」などと略される。
サーガマニュアル2007秋 ず せ ぜ
2007年9月17日□ 髄膜刺激症候 ・・ 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候の総称で、陽性なら髄膜炎を疑う。しかし近年(2003)、これらの診断価値は低いものと指摘されている。髄膜炎を疑った場合の積極的な髄液検査が勧められている。
□ 頭蓋内圧=intracranial pressure=ICP ・・ 頭蓋内腔(頭蓋骨内の脳が8割、あと血管・髄液腔)の圧を、髄液によって測定(つまり腰椎穿刺によって)したもの。髄膜炎。脳腫瘍などではこれが亢進し、頭蓋内圧亢進症状としての自覚症状?頭痛(早朝起床時に多い)、?嘔吐(悪心伴わず噴出)、?視力障害がみられる。他覚的所見では?(眼底検査での)うっ血乳頭、?髄液圧亢進(側臥位で200mmH2O以上)、?外転神経麻痺、?意識障害(ヘルニアによる)、?徐脈、?血圧上昇などがある。これに対する緊急治療としては患者頭部を30-45度挙上する、挿管し過呼吸にする、グリセオールを投与する。
□ 静菌的作用 ・・ 抗生剤の作用形式の表現。菌の数を減らすことはできないが、増殖を抑えることができるという意味。これに対し増殖も菌数も減らせる場合を<殺菌的作用>という。
□ 成人市中肺炎診療ガイドライン ・・ 2005年の赤いガイドライン本が最新。2000年に出たガイドラインは問題があったらしい。特に重症度判定の分類のところで、旧の分類では予後との相関が出なかったらしい。そこで作り直した重症度分類が記載されている。画像診断に関してはノータッチで今後検討していくという。
以下が新しい基準。
● 身体所見、年齢による肺炎の重症度分類
<使用する指標>
? 男性70歳以上、女性75歳以上
? BUN 21mg/dl以上または脱水あり
? SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
? 意識障害
? 血圧(収縮期)90mmHg以下
<重症度分類>
軽症:上記5つの項目のいずれも満足しないもの
中等症:上記項目の1つまたは2つを有するもの
重症:上記項目の3つを有するもの
超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの
ただしショックがあれば1項目のみでも超重症とする
<項目該当数に応じた対処>
0項目 → 外来治療
1・2項目 → 外来または入院
3項目 → 入院治療
4・5項目 → ICU入院
※ 呼吸数の測定は肺炎治療上、重要な意味をもつとして推奨されている。
□ 声門 ・・ 喉頭の入り口。その奥が気管→肺へとつながる。挿管チューブが入れば(カフ空気入れて)当然声は出ない。
□ 脊髄損傷
・ いったん傷害された脊髄は不可逆性な経過をたどることが多い。
・ 脊髄ショック=spinal shock ・・ 損傷部以下の感覚・運動機能や深部反射が完全に消失した状態。
・ 頸髄損傷 → 四肢麻痺
・ 胸髄、腰髄、仙髄ないし馬尾の損傷 → 対麻痺
・ 高エネルギー外傷(高所転落など) → 横断性損傷 ・・ 障害部以下に対称性の感覚脱失、運動麻痺、膀胱直腸障害。
・ 軽微な外傷(高齢者の転倒など) → 中心性脊髄損傷 ・・ 傷害部以下の温痛覚障害と上肢優位の運動麻痺。脊髄が慢性的な虚血(脊柱管狭窄症など)の状態にある頸髄に発生しやすい。血行の乏しい中心部ほど症状が出やすいため上肢優位の麻痺症状となる。
・ 肩外側 ・・ C5 ※(県外で仕事=肩外+C5)
・ 乳頭 ・・ Th4 ※(吸ってよ=乳+Th4)
・ 剣状突起 ・・ Th7 ※(7人の侍=Th7+剣)
・ 臍 ・・ Th10 ※(天才=10+臍)
・ そけい部 ・・ L1 ※(そけいはエロい=そけい+L1)
・ 横隔膜(呼吸筋) ・・ C4 ※(核爆弾=隔+C4爆弾)
・ 三角筋・上腕二頭筋(肩挙上・肘屈曲) ・・ C5
・ 橈側手根伸筋(手関節背屈) ・・ C6 ※久保田利伸(C+6+橈+手+伸)
・ 上腕三頭筋(肘伸展)・指伸筋腱 ・・ C7
・ 指屈筋腱 ・・ C8
・ 骨間筋(手指内外転) ・・ Th1 ※股間が痛い(骨間+Th1)
・ 腸腰筋(股関節屈曲) ・・ L1-3 ※超陽気なイーサン(腸腰+1-3)
・ 大腿四頭筋(膝伸展) ・・ L2-4 ※大したことニャイよ(大+四+2-4)
・ 前脛骨筋(足関節背屈) ・・ L4 ※前、蹴るよ(前+頸+L4)
・ 趾伸筋腱(足趾背屈) ・・ L5 ※ラッコ失神(L5+趾伸)
・ 腓腹筋(足関節底屈) ・・ S1 ※(「社長!一言!」「ピップ!」=S+1+腓+ふ)←分かるヒトにはわかる。
◇腱反射
・ 腕橈骨筋反射 ・・ C6 ※(ワンと鳴くシロ=腕橈+C6)
・ 上腕二頭筋反射 ・・ C5
・ 上腕三頭筋反射 ・・ C7
※みんなニコニコ上機嫌(三+7+二+5+上)
・ 膝蓋腱反射 ・・ L2-4
・ アキレス腱反射 ・・ S1
※ブタが妊娠呆れるわ(蓋+2-4+アキレス+1)
◇表在反射
・ 球海綿体反射 ・・ S2-4 ・・ 亀頭部(陰核)を指で急につまむと肛門括約筋が収縮。脊髄ショック後にもっとも早く回復する反射。※急所封じ!(球+2-4)
・ 肛門反射 ・・ S3-4 ・・ これの消失は脊髄ショックを疑う。 ※黄門さんよ!(肛門+3-4)
◇病的反射
・ Babinski反射
以上をふまえて画像検査を行う。
□ 咳喘息=cough variant asthma ・・ 8週間以上持続する咳で喘鳴なし+気管支拡張薬が有効。つまり喘息の典型的な所見ではないが喘息の薬が効く病態。実際、本疾患は喘息の前段階(軽症型)といわれており、実際3割が気管支喘息に移行する。喘息らしき所見がないといっても呼吸機能検査では閉塞性の障害を軽度認めることはあり、喀痰中の好酸球増加も認める。実際の治療は通常の喘息に準じるが、特に吸入ステロイドの早期使用で喘息への移行を減らせるという報告がある。あと鑑別する疾患としてアトピー咳嗽(アトピー関与で気管支拡張薬無効)、それとこれ(アトピー咳嗽)に加えて軽症喘息の要素がプラスされた非喘息性好酸球性気管支炎がある。
□ 接待 ・・ MRや卸業者による、商品販売促進のための飲食・娯楽事業。相次ぐ不祥事のため最近は控えめ。官公立は全面禁止が建前。民間はまだゆるい。開業医はムテキング。昔(バブル期まで)は医者の家族旅行、野球観戦、学会宿泊のホテルなどすべてにわたってフォローがされていた。
□ セッティング ・・ お膳立て。準備。
□ セデーション ・・ 鎮静。人工呼吸器装着時、あるいは手術時に鎮静剤の持続投与で眠らせること。
□ セフェム系抗生物質 ・・ 抗生物質の中で最もポピュラーで研修医が最も使いたがる。でも万能ではなく、結核やマイコプラズマなどの異型肺炎には効かない。ペニシリンと構造が似るので、ペニシリンアレルギー患者に使用すべきではない。
□ セルベックス ・・ 胃粘膜保護剤。PPIやH2ブロッカーほどの強力な作用はない。
□ セロトニン症候群 ・・ 抗うつ剤(セロトニン作動薬)によって起こる、自律神経症状(発汗・血圧変動・頻脈)・意識障害・振戦。発熱、精神症状(不安焦燥・錯乱)、興奮、下痢の症状も伴う。
□ 潜血反応 ・・ 便潜血と尿潜血あり。便潜血陽性は大腸癌・憩室・腸炎など、尿潜血陽性は結石、膀胱癌などの除外が必要となる。したがって便潜血陽性→注腸造影(バリウム)、尿潜血陽性→尿中細胞診・腹部超音波検査となる。ただし女性の尿潜血陽性は日常茶飯事、また鉄剤内服による便潜血陽性にも注意。
□ 穿孔(せんこう)=パーフォレーション ・・ 臓器に穴が開くこと。通常は潰瘍による穿孔などの消化管穿孔の意味で使用。腹膜炎に進展するので、手術が早急に必要となる。
□ 先天性プロテインC欠乏症 ・・ プロテインCは強い抗凝固作用と線溶促進作用をもつ。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で、20歳までは無症状なことが多く、中年過ぎても無症状のことが多い。40歳以下での静脈血栓症の6-8%が本症によるものとされる。血栓の形成は下肢深部静脈に多く75%も占める。動脈血栓としての心筋梗塞・脳梗塞も起こす。
□ 先天性プロテインS欠乏症 ・・ プロテインSは活性化プロテインCによる凝固因子(?a、?a)の失活を促進するコアファクター。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で血栓の形成は下肢深部静脈に多い。脳梗塞の頻度はC欠乏症より多く再発が多いのも特徴。
□ 専門医 ・・ 医師が取る資格で、分野により細分化されている。資格取得には経験年数、症例レポートや学会報告の記録など用意すべきものは多い。あとはマークシートのペーパー試験。医師の性格やトラブル歴(よほどの場合は別)、臨床の場での能力・評判などは考慮されていない。これらの資格は定期的な更新があり、手数料を毎度取られる。さらに皮肉っぽく言えば、学会の資金源としても非常に重要な存在でもある。
□ ゼク=病理解剖 ・・ 患者死亡後、家族の同意をもとに行われる死体解剖。
□ 前回do(ぜんかいどぅ) ・・ 投薬などの(ドクター→ナース)指示で、以前に指示した同内容でやってくれ、つまり<以下同文>の意。
□ 全身倦怠感=倦怠感 ・・ しんどい。疲れ。やる気なし。
□ 前投薬 ・・ 検査などの前にあらかじめ投薬すること。これにより検査をスムーズに行う。例えば胃カメラ前のブスコパン
(消化管の動きを止める)など。
□ 頭蓋内圧=intracranial pressure=ICP ・・ 頭蓋内腔(頭蓋骨内の脳が8割、あと血管・髄液腔)の圧を、髄液によって測定(つまり腰椎穿刺によって)したもの。髄膜炎。脳腫瘍などではこれが亢進し、頭蓋内圧亢進症状としての自覚症状?頭痛(早朝起床時に多い)、?嘔吐(悪心伴わず噴出)、?視力障害がみられる。他覚的所見では?(眼底検査での)うっ血乳頭、?髄液圧亢進(側臥位で200mmH2O以上)、?外転神経麻痺、?意識障害(ヘルニアによる)、?徐脈、?血圧上昇などがある。これに対する緊急治療としては患者頭部を30-45度挙上する、挿管し過呼吸にする、グリセオールを投与する。
□ 静菌的作用 ・・ 抗生剤の作用形式の表現。菌の数を減らすことはできないが、増殖を抑えることができるという意味。これに対し増殖も菌数も減らせる場合を<殺菌的作用>という。
□ 成人市中肺炎診療ガイドライン ・・ 2005年の赤いガイドライン本が最新。2000年に出たガイドラインは問題があったらしい。特に重症度判定の分類のところで、旧の分類では予後との相関が出なかったらしい。そこで作り直した重症度分類が記載されている。画像診断に関してはノータッチで今後検討していくという。
以下が新しい基準。
● 身体所見、年齢による肺炎の重症度分類
<使用する指標>
? 男性70歳以上、女性75歳以上
? BUN 21mg/dl以上または脱水あり
? SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
? 意識障害
? 血圧(収縮期)90mmHg以下
<重症度分類>
軽症:上記5つの項目のいずれも満足しないもの
中等症:上記項目の1つまたは2つを有するもの
重症:上記項目の3つを有するもの
超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの
ただしショックがあれば1項目のみでも超重症とする
<項目該当数に応じた対処>
0項目 → 外来治療
1・2項目 → 外来または入院
3項目 → 入院治療
4・5項目 → ICU入院
※ 呼吸数の測定は肺炎治療上、重要な意味をもつとして推奨されている。
□ 声門 ・・ 喉頭の入り口。その奥が気管→肺へとつながる。挿管チューブが入れば(カフ空気入れて)当然声は出ない。
□ 脊髄損傷
・ いったん傷害された脊髄は不可逆性な経過をたどることが多い。
・ 脊髄ショック=spinal shock ・・ 損傷部以下の感覚・運動機能や深部反射が完全に消失した状態。
・ 頸髄損傷 → 四肢麻痺
・ 胸髄、腰髄、仙髄ないし馬尾の損傷 → 対麻痺
・ 高エネルギー外傷(高所転落など) → 横断性損傷 ・・ 障害部以下に対称性の感覚脱失、運動麻痺、膀胱直腸障害。
・ 軽微な外傷(高齢者の転倒など) → 中心性脊髄損傷 ・・ 傷害部以下の温痛覚障害と上肢優位の運動麻痺。脊髄が慢性的な虚血(脊柱管狭窄症など)の状態にある頸髄に発生しやすい。血行の乏しい中心部ほど症状が出やすいため上肢優位の麻痺症状となる。
・ 肩外側 ・・ C5 ※(県外で仕事=肩外+C5)
・ 乳頭 ・・ Th4 ※(吸ってよ=乳+Th4)
・ 剣状突起 ・・ Th7 ※(7人の侍=Th7+剣)
・ 臍 ・・ Th10 ※(天才=10+臍)
・ そけい部 ・・ L1 ※(そけいはエロい=そけい+L1)
・ 横隔膜(呼吸筋) ・・ C4 ※(核爆弾=隔+C4爆弾)
・ 三角筋・上腕二頭筋(肩挙上・肘屈曲) ・・ C5
・ 橈側手根伸筋(手関節背屈) ・・ C6 ※久保田利伸(C+6+橈+手+伸)
・ 上腕三頭筋(肘伸展)・指伸筋腱 ・・ C7
・ 指屈筋腱 ・・ C8
・ 骨間筋(手指内外転) ・・ Th1 ※股間が痛い(骨間+Th1)
・ 腸腰筋(股関節屈曲) ・・ L1-3 ※超陽気なイーサン(腸腰+1-3)
・ 大腿四頭筋(膝伸展) ・・ L2-4 ※大したことニャイよ(大+四+2-4)
・ 前脛骨筋(足関節背屈) ・・ L4 ※前、蹴るよ(前+頸+L4)
・ 趾伸筋腱(足趾背屈) ・・ L5 ※ラッコ失神(L5+趾伸)
・ 腓腹筋(足関節底屈) ・・ S1 ※(「社長!一言!」「ピップ!」=S+1+腓+ふ)←分かるヒトにはわかる。
◇腱反射
・ 腕橈骨筋反射 ・・ C6 ※(ワンと鳴くシロ=腕橈+C6)
・ 上腕二頭筋反射 ・・ C5
・ 上腕三頭筋反射 ・・ C7
※みんなニコニコ上機嫌(三+7+二+5+上)
・ 膝蓋腱反射 ・・ L2-4
・ アキレス腱反射 ・・ S1
※ブタが妊娠呆れるわ(蓋+2-4+アキレス+1)
◇表在反射
・ 球海綿体反射 ・・ S2-4 ・・ 亀頭部(陰核)を指で急につまむと肛門括約筋が収縮。脊髄ショック後にもっとも早く回復する反射。※急所封じ!(球+2-4)
・ 肛門反射 ・・ S3-4 ・・ これの消失は脊髄ショックを疑う。 ※黄門さんよ!(肛門+3-4)
◇病的反射
・ Babinski反射
以上をふまえて画像検査を行う。
□ 咳喘息=cough variant asthma ・・ 8週間以上持続する咳で喘鳴なし+気管支拡張薬が有効。つまり喘息の典型的な所見ではないが喘息の薬が効く病態。実際、本疾患は喘息の前段階(軽症型)といわれており、実際3割が気管支喘息に移行する。喘息らしき所見がないといっても呼吸機能検査では閉塞性の障害を軽度認めることはあり、喀痰中の好酸球増加も認める。実際の治療は通常の喘息に準じるが、特に吸入ステロイドの早期使用で喘息への移行を減らせるという報告がある。あと鑑別する疾患としてアトピー咳嗽(アトピー関与で気管支拡張薬無効)、それとこれ(アトピー咳嗽)に加えて軽症喘息の要素がプラスされた非喘息性好酸球性気管支炎がある。
□ 接待 ・・ MRや卸業者による、商品販売促進のための飲食・娯楽事業。相次ぐ不祥事のため最近は控えめ。官公立は全面禁止が建前。民間はまだゆるい。開業医はムテキング。昔(バブル期まで)は医者の家族旅行、野球観戦、学会宿泊のホテルなどすべてにわたってフォローがされていた。
□ セッティング ・・ お膳立て。準備。
□ セデーション ・・ 鎮静。人工呼吸器装着時、あるいは手術時に鎮静剤の持続投与で眠らせること。
□ セフェム系抗生物質 ・・ 抗生物質の中で最もポピュラーで研修医が最も使いたがる。でも万能ではなく、結核やマイコプラズマなどの異型肺炎には効かない。ペニシリンと構造が似るので、ペニシリンアレルギー患者に使用すべきではない。
□ セルベックス ・・ 胃粘膜保護剤。PPIやH2ブロッカーほどの強力な作用はない。
□ セロトニン症候群 ・・ 抗うつ剤(セロトニン作動薬)によって起こる、自律神経症状(発汗・血圧変動・頻脈)・意識障害・振戦。発熱、精神症状(不安焦燥・錯乱)、興奮、下痢の症状も伴う。
□ 潜血反応 ・・ 便潜血と尿潜血あり。便潜血陽性は大腸癌・憩室・腸炎など、尿潜血陽性は結石、膀胱癌などの除外が必要となる。したがって便潜血陽性→注腸造影(バリウム)、尿潜血陽性→尿中細胞診・腹部超音波検査となる。ただし女性の尿潜血陽性は日常茶飯事、また鉄剤内服による便潜血陽性にも注意。
□ 穿孔(せんこう)=パーフォレーション ・・ 臓器に穴が開くこと。通常は潰瘍による穿孔などの消化管穿孔の意味で使用。腹膜炎に進展するので、手術が早急に必要となる。
□ 先天性プロテインC欠乏症 ・・ プロテインCは強い抗凝固作用と線溶促進作用をもつ。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で、20歳までは無症状なことが多く、中年過ぎても無症状のことが多い。40歳以下での静脈血栓症の6-8%が本症によるものとされる。血栓の形成は下肢深部静脈に多く75%も占める。動脈血栓としての心筋梗塞・脳梗塞も起こす。
□ 先天性プロテインS欠乏症 ・・ プロテインSは活性化プロテインCによる凝固因子(?a、?a)の失活を促進するコアファクター。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で血栓の形成は下肢深部静脈に多い。脳梗塞の頻度はC欠乏症より多く再発が多いのも特徴。
□ 専門医 ・・ 医師が取る資格で、分野により細分化されている。資格取得には経験年数、症例レポートや学会報告の記録など用意すべきものは多い。あとはマークシートのペーパー試験。医師の性格やトラブル歴(よほどの場合は別)、臨床の場での能力・評判などは考慮されていない。これらの資格は定期的な更新があり、手数料を毎度取られる。さらに皮肉っぽく言えば、学会の資金源としても非常に重要な存在でもある。
□ ゼク=病理解剖 ・・ 患者死亡後、家族の同意をもとに行われる死体解剖。
□ 前回do(ぜんかいどぅ) ・・ 投薬などの(ドクター→ナース)指示で、以前に指示した同内容でやってくれ、つまり<以下同文>の意。
□ 全身倦怠感=倦怠感 ・・ しんどい。疲れ。やる気なし。
□ 前投薬 ・・ 検査などの前にあらかじめ投薬すること。これにより検査をスムーズに行う。例えば胃カメラ前のブスコパン
(消化管の動きを止める)など。
サーガマニュアル2007秋 そ ぞ
2007年9月17日□ 挿管チューブ ・・ 人工呼吸器から肺へ確実に酸素を送り込むためのパイプ。体内の二酸化炭素はここから呼吸器へ。交通路はここのみなので、痰で狭くならないよう適宜、痰を吸引する必要がある。なおチューブの周囲には風船様の部分(カフ)があり、ここに空気を入れて気道にジャストフィットさせる。
□ 送気 ・・ 内視鏡のボタンを押して、胃などに空気を送ること。これにより中が拡がり、観察しやすくなる。しかし患者がゲップを繰り返すと逆のことになるので、胃カメラ中のゲップは極力我慢をさせる。
□ 早期再灌流(そうきさいかんりゅう) ・・ 冠動脈の閉塞(心筋梗塞)が血管形成術する前に解除され、流れが復活すること。この場合CPKは通常よりも早くピークに達し、かつ高値となる。
□ 早期発見(各論的に)
○ 間質性肺炎
・ KL-6 ・・ ?型肺胞上皮細胞などから分泌、血中に出る。線維化の指標。サルコイドーシス、進行性の肺結核でも上昇する。なお細菌性肺炎・健常人では上がらない。またKL-6は腫瘍マーカー的な側面もあり、肺腺癌、乳癌、膵癌での上昇が報告されている。
・ SP-D ・・ 肺胞で作られるサーファクタント蛋白由来で、?型肺胞上皮細胞・クララ細胞より分泌。KL-6と同様に線維化の指標。KL-6が上昇しない好酸球性肺炎でも上昇することあり、肺水腫・肺炎でも上昇することもありで特異性には劣る。なお高分化型腺癌で上昇の報告もあり。※ SP-Aの特異性はさらに低い。
○ 感染症
・ レジオネラ肺炎における尿中抗原検査 ・・ 菌の外膜構成成分を検出。感度90%以上、特異度100%近く(米国ではこの検査でレジオネラの7割が診断されている)。ただし、発症初期には菌量が少なく偽陰性の可能性あり。しかも検出するのはレジオネラの血清型1型のみであり、その他の血清型や亜菌種を検出できない(日本での1型の検出頻度は40%)。なのでレジオネラの臨床所見があれば検査陰性でも治療にかかる必要がある。
・ 肺炎球菌性肺炎における尿中抗原 ・・ 菌のキョウ膜多糖を検出。感度は80%、特異度97%でありレジオネラ尿中抗原と同様の検出率。小児での疑陽性が問題となっている(耳鼻科領域の肺炎球菌を検出する疑い)。
以上の2つは感染成立から数週間陽性が持続するので、必ずしも最近の発症とは限らない。
○ 急性心筋梗塞
・ ミオグロビン ・・ 超急性期に上昇するが心筋への特異性はなく、いろんな筋疾患で上昇する。運動、筋肉注射での影響も受けて上昇する。
・ H-FABP ・・ 心筋細胞に特異的な細胞質蛋白。ミオグロビン同様に超急性期に上昇するが、骨格筋にもわずかに存在するので、これもやはり運動、筋肉注射での影響も受けて上昇することがある。なお発症2日目以降の再陽性化は再梗塞を意味する。
・ トロポニンT・トロポニンI ・・ 心筋線維の一部。なので心筋細胞に極めて特異的。臨床で測定可能なのはトロポニンTのほう。血中存在期間が長いので急性期にだけ検出されるわけではない。しかし超急性期、とりわけ発症6時間以内での感度に乏しい(このときはH-FABPのほうが好ましい)。
・BNP ・・ 心不全の予期、重症度把握のために測定。40-50pg/ml以下では心不全ではない。それ以上なら心不全の疑いと考え超音波などの検査に移る。100pg/ml以上では何らかの治療が必要な心不全の存在を示唆する。
○ 脳血管疾患
・ 頸動脈エコー ・・ 頸動脈狭窄の有無(NASCETでの測定法:狭窄度60%以上で脳血管イベントのリスク年間3.2%)、IMT肥厚の有無(1.1mm以上は異常肥厚)、プラーク(1.1mm以上のIMTのこと。プラーク厚の和と数よりプラークスコア(PS)を算出する)の程度の把握。
○ 消化管
・ 血清ペプシノゲン法 ・・ 胃粘膜の炎症・萎縮を反映。ペプシノーゲン(PG)のサブタイプ?(主に胃底腺に存在)・?(他の腺にも広範に存在)のうち?の増加は胃酸分泌の増大を示唆する。正常のPG?:?比は3:1。胃癌のスクリーニングとしてはPGI 70μg/L以下かつPGI/II比3.0以下の組み合わせだと感度64%、特異度87%と良好な成績。なので早期胃癌のスクリーニング法として行われるべき検査。
PG ↓ : 萎縮性胃炎、胃腺腫、悪性貧血、胃癌、切除胃
PG ↑ : 消化性潰瘍、急性胃粘膜傷害、腎不全、PPI服用
・ ピロリ抗体(これまでの記事参考)
・ 便潜血反応 ・・ 大腸癌のスクリーニング。?化学法、?免疫法(ヒトヘモ)の2つ。?は肉類摂取・薬品による疑陽性の問題があり、3日ほど食事・生活制限が必要。?の場合はそのような制限はなく感度も?より良好なので、実際は?が主流。
・ 便中遺伝子検査 ・・ 便に混じった癌細胞のDNAを抽出。様々な遺伝子が明らかにされているが全ての大腸癌に発見されるわけではなく、陽性となった遺伝子の組み合わせで経験的に診断していく。
○ 肝胆膵
・ E型肝炎に関して ・・ 原因不明の肝炎をみた場合、測定する意義がある。HEV-RNA(発症〜発症2ヶ月弱まで)の定性検査は、HEV遺伝子型の3・4型を検出できる。※4型は重症度高い。抗体ではHEV-IgM抗体(発症時にピーク、以後3-4ヶ月陽性持続)、HEV-IgG抗体(IgMより若干ピーク遅く、長期間陽性持続)がある。
・ C型肝炎に関して ・・ C型抗体陽性であればウイルス有無を知るためにHCV-RNA定量(PCR法)を行う。
・ B型肝炎に関して ・・ HBV-DNAの新たな検出法として、最近ではDIRECT法(PCRを用いて高感度、感染性のあるもののみ測定)が有用。
・ NASH(非アルコール性脂肪肝炎) ・・ 単純性脂肪肝との鑑別として、NASHのほうにより明瞭な所見としてはHOMA-IR(インスリン抵抗性指標)、フェリチン、線維化マーカー(ヒアルロン酸・?型コラーゲン)が高値を示してくる。なおNASHの場合ALT有意のトランスアミナーゼ上昇(100以下)、線維化進行例だとむしろAST有意となりALP・γGTPのほうの上昇は軽度。
・ AIH(自己免疫性肝炎) ・・ 3分の1が急性発症する。特異的な自己抗体としてANA,ASMA,抗LKM-1抗体,SLA抗体などがある。
・ PBC(原発性胆汁性肝硬変) ・・ 無症候性が7-8割にも及ぶ。AMA、AMA-M2を測定。
以上の3つは組織診断でより確実となる。
・ HCC ・・ AFPはHCCだけでなく慢性肝炎や肝硬変などの良性疾患でも上昇する。これを鑑別するために、AFPのサブタイプL3分画を測定する(通常はAFP 20ng/ml以上の場合)。L3が10%を超えればHCCが強く疑われる。一方PIVKA-IIは良性疾患ではほとんど上昇しないがビタミンK吸収障害(長期の閉塞性黄疸、クマリン内服)、抗生剤長期投与、アルコール性肝障害で疑陽性示す。なお超音波でHCCが疑われた場合、さらにダイナミックCTにて鑑別をすすめていく。
・ 胆道癌 ・・ ほとんどが進行例での発見。マーカーではCA19-9、DUPAN-2が陽性率80%。ただし閉塞性黄疸があると癌なくても高値になる。一方CEAの陽性率は50%。CA19-9とCEAを併せれば胆道癌全体で90%に上がる(しかし早期のステージ?では20-25%しか陽性にならず、早期発見には向かない)。なおSLXやNCC-ST-439は陽性率50%しかないが特異性がCA19-9より高い。早期発見にはALP・γGTPが有用。ALP上昇があれば画像・マーカー測定。エコーで胆道拡張が疑われればMRCPを確認。これで確実ならERCPへと移る。
・ 膵癌 ・・ これもほとんどが進行例での発見。CA19-9の陽性率は膵癌全体で69%だがステージ?では5%にも満たない。CEAの陽性率は全体で33%、これもステージ?では低下する。膵管狭窄を反映する膵逸脱酵素(アミラーゼ、エラスターゼI、リパーゼ、トリプシン)の上昇もみられ、特にエラスターゼIは小膵癌の62%で上昇し、早期発見に向いている。画像では超音波でまず発見されるケースが多い(4割がこれより診断)。超音波で主膵管の拡張、小のう胞が見つかった場合はダイナミックCT、EUSでさらに検索。MRCPにより膵管の途絶を確認するが分枝までは描出が難しい。PETは腫瘍径2cm以下の場合感度が低下するという弱点あり早期発見には向かない。
○ 腎・泌尿器疾患
・ 尿検査
○ 蛋白:試験紙法では尿蛋白は30mg/dl以上で陽性。健常人では1日40-100mgは出る。蛋白がアルブミン主体→糸球体性蛋白尿であり、β2マイクログロブリン主体→尿細管性蛋白尿。
○ 血尿:結石、腫瘍など。糸球体性血尿の場合赤血球は大小不同が主体を占めるのが特徴。そうでないものは血液中と同様の均一な赤血球所見。
○ 尿沈渣:硝子円柱→ネフローゼ症候群でよくみる。赤血球円柱→血尿が糸球体性のものであることを確信。白血球円柱→ネフロンレベルの炎症(半月体形成性糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎など)を示す。顆粒円柱もネフロンレベルの炎症。細胞性半月体・炎症細胞浸潤を示す場合は急速進行性糸球体腎炎、IgA腎症、紫斑病性腎炎などを示唆する。
※ 最近60歳以上に急速進行性糸球体腎炎が増えている。ほとんどがMPO-ANCA陽性、つまりANCA関連腎炎である。早期治療がそのまま予後に響くため、早期診断のため血清クレアチニン、尿検査のほか腎エコー所見により早期発見を図る。
○ 血液疾患
△ 白血球
・増加、特に20000以上
貧血・血小板減少 → 急性白血病
血小板増加、好中球・好酸球・好塩基球増加 → CML
成熟リンパ球著増 → CLL
血小板・赤血球増加 → 真性多血症
CRP陽性 → 重症感染症
・減少、特に2000以下
他の血球も減少 → 再生不良性貧血、MDS、急性白血病、巨赤芽球性貧血など、または放射線・薬剤性
単独の減少 → 薬剤性、重症感染
△ 赤血球
・貧血 ・・ MCV、MCH、MCHCを参考に、?大球性高〜正色素性貧血、?正球性正色素性貧血、?小球性低色素性貧血に分類。
・多血症 ・・ 真性、ストレス多血症、二次性などの鑑別のために、マルクのほかビタミンB12、B12結合能、好中球アルカリホスファターゼ、エリスロポイエチンを提出
□ 相互作用 ・・ 薬物どうしの相性による影響。組み合わせによっては思わぬ副作用がみられる。点滴では混濁に注意。FOYやハンプは単独ルートが原則。
□ 総務 ・・ 病院職員の給料・予算、病名レセプトなど金銭的管理を行う。レセプトができるかどうかで給与など待遇面も違ってくる。
□ 側副血行路=コラテラル=コラテ ・・ 閉塞・高度狭窄している血管の末梢部分に向って、他の血管からさらに伸びている血管。これにより途絶えた血流は一部補充される。
□ ソルメドロール=ソルメド ・・ ステロイド剤。気管支喘息、ステロイドパルス療法のときなどに主に使用。
□ 造影欠損 ・・ 造影をしたときに血管が染まるはずが、部分的に完全に染まらないこと。血栓の存在を示唆する。
□ 造影剤 ・・ CTなどで使用される注射での造影剤使用にあたっては、アレルギーの有無と腎機能障害の有無が重要。
□ 造影剤アレルギー ・・ 造影剤投与後にショック状態、蕁麻疹などのアレルギー症状が出ること。これを避けるため以前は造影剤テストが行われていたが、意義なしということでしなくなった。
□ 続行 ・・ その内容をさらに継続・続投すること。点滴や処方内容のことを指すことが多い。
□ 送気 ・・ 内視鏡のボタンを押して、胃などに空気を送ること。これにより中が拡がり、観察しやすくなる。しかし患者がゲップを繰り返すと逆のことになるので、胃カメラ中のゲップは極力我慢をさせる。
□ 早期再灌流(そうきさいかんりゅう) ・・ 冠動脈の閉塞(心筋梗塞)が血管形成術する前に解除され、流れが復活すること。この場合CPKは通常よりも早くピークに達し、かつ高値となる。
□ 早期発見(各論的に)
○ 間質性肺炎
・ KL-6 ・・ ?型肺胞上皮細胞などから分泌、血中に出る。線維化の指標。サルコイドーシス、進行性の肺結核でも上昇する。なお細菌性肺炎・健常人では上がらない。またKL-6は腫瘍マーカー的な側面もあり、肺腺癌、乳癌、膵癌での上昇が報告されている。
・ SP-D ・・ 肺胞で作られるサーファクタント蛋白由来で、?型肺胞上皮細胞・クララ細胞より分泌。KL-6と同様に線維化の指標。KL-6が上昇しない好酸球性肺炎でも上昇することあり、肺水腫・肺炎でも上昇することもありで特異性には劣る。なお高分化型腺癌で上昇の報告もあり。※ SP-Aの特異性はさらに低い。
○ 感染症
・ レジオネラ肺炎における尿中抗原検査 ・・ 菌の外膜構成成分を検出。感度90%以上、特異度100%近く(米国ではこの検査でレジオネラの7割が診断されている)。ただし、発症初期には菌量が少なく偽陰性の可能性あり。しかも検出するのはレジオネラの血清型1型のみであり、その他の血清型や亜菌種を検出できない(日本での1型の検出頻度は40%)。なのでレジオネラの臨床所見があれば検査陰性でも治療にかかる必要がある。
・ 肺炎球菌性肺炎における尿中抗原 ・・ 菌のキョウ膜多糖を検出。感度は80%、特異度97%でありレジオネラ尿中抗原と同様の検出率。小児での疑陽性が問題となっている(耳鼻科領域の肺炎球菌を検出する疑い)。
以上の2つは感染成立から数週間陽性が持続するので、必ずしも最近の発症とは限らない。
○ 急性心筋梗塞
・ ミオグロビン ・・ 超急性期に上昇するが心筋への特異性はなく、いろんな筋疾患で上昇する。運動、筋肉注射での影響も受けて上昇する。
・ H-FABP ・・ 心筋細胞に特異的な細胞質蛋白。ミオグロビン同様に超急性期に上昇するが、骨格筋にもわずかに存在するので、これもやはり運動、筋肉注射での影響も受けて上昇することがある。なお発症2日目以降の再陽性化は再梗塞を意味する。
・ トロポニンT・トロポニンI ・・ 心筋線維の一部。なので心筋細胞に極めて特異的。臨床で測定可能なのはトロポニンTのほう。血中存在期間が長いので急性期にだけ検出されるわけではない。しかし超急性期、とりわけ発症6時間以内での感度に乏しい(このときはH-FABPのほうが好ましい)。
・BNP ・・ 心不全の予期、重症度把握のために測定。40-50pg/ml以下では心不全ではない。それ以上なら心不全の疑いと考え超音波などの検査に移る。100pg/ml以上では何らかの治療が必要な心不全の存在を示唆する。
○ 脳血管疾患
・ 頸動脈エコー ・・ 頸動脈狭窄の有無(NASCETでの測定法:狭窄度60%以上で脳血管イベントのリスク年間3.2%)、IMT肥厚の有無(1.1mm以上は異常肥厚)、プラーク(1.1mm以上のIMTのこと。プラーク厚の和と数よりプラークスコア(PS)を算出する)の程度の把握。
○ 消化管
・ 血清ペプシノゲン法 ・・ 胃粘膜の炎症・萎縮を反映。ペプシノーゲン(PG)のサブタイプ?(主に胃底腺に存在)・?(他の腺にも広範に存在)のうち?の増加は胃酸分泌の増大を示唆する。正常のPG?:?比は3:1。胃癌のスクリーニングとしてはPGI 70μg/L以下かつPGI/II比3.0以下の組み合わせだと感度64%、特異度87%と良好な成績。なので早期胃癌のスクリーニング法として行われるべき検査。
PG ↓ : 萎縮性胃炎、胃腺腫、悪性貧血、胃癌、切除胃
PG ↑ : 消化性潰瘍、急性胃粘膜傷害、腎不全、PPI服用
・ ピロリ抗体(これまでの記事参考)
・ 便潜血反応 ・・ 大腸癌のスクリーニング。?化学法、?免疫法(ヒトヘモ)の2つ。?は肉類摂取・薬品による疑陽性の問題があり、3日ほど食事・生活制限が必要。?の場合はそのような制限はなく感度も?より良好なので、実際は?が主流。
・ 便中遺伝子検査 ・・ 便に混じった癌細胞のDNAを抽出。様々な遺伝子が明らかにされているが全ての大腸癌に発見されるわけではなく、陽性となった遺伝子の組み合わせで経験的に診断していく。
○ 肝胆膵
・ E型肝炎に関して ・・ 原因不明の肝炎をみた場合、測定する意義がある。HEV-RNA(発症〜発症2ヶ月弱まで)の定性検査は、HEV遺伝子型の3・4型を検出できる。※4型は重症度高い。抗体ではHEV-IgM抗体(発症時にピーク、以後3-4ヶ月陽性持続)、HEV-IgG抗体(IgMより若干ピーク遅く、長期間陽性持続)がある。
・ C型肝炎に関して ・・ C型抗体陽性であればウイルス有無を知るためにHCV-RNA定量(PCR法)を行う。
・ B型肝炎に関して ・・ HBV-DNAの新たな検出法として、最近ではDIRECT法(PCRを用いて高感度、感染性のあるもののみ測定)が有用。
・ NASH(非アルコール性脂肪肝炎) ・・ 単純性脂肪肝との鑑別として、NASHのほうにより明瞭な所見としてはHOMA-IR(インスリン抵抗性指標)、フェリチン、線維化マーカー(ヒアルロン酸・?型コラーゲン)が高値を示してくる。なおNASHの場合ALT有意のトランスアミナーゼ上昇(100以下)、線維化進行例だとむしろAST有意となりALP・γGTPのほうの上昇は軽度。
・ AIH(自己免疫性肝炎) ・・ 3分の1が急性発症する。特異的な自己抗体としてANA,ASMA,抗LKM-1抗体,SLA抗体などがある。
・ PBC(原発性胆汁性肝硬変) ・・ 無症候性が7-8割にも及ぶ。AMA、AMA-M2を測定。
以上の3つは組織診断でより確実となる。
・ HCC ・・ AFPはHCCだけでなく慢性肝炎や肝硬変などの良性疾患でも上昇する。これを鑑別するために、AFPのサブタイプL3分画を測定する(通常はAFP 20ng/ml以上の場合)。L3が10%を超えればHCCが強く疑われる。一方PIVKA-IIは良性疾患ではほとんど上昇しないがビタミンK吸収障害(長期の閉塞性黄疸、クマリン内服)、抗生剤長期投与、アルコール性肝障害で疑陽性示す。なお超音波でHCCが疑われた場合、さらにダイナミックCTにて鑑別をすすめていく。
・ 胆道癌 ・・ ほとんどが進行例での発見。マーカーではCA19-9、DUPAN-2が陽性率80%。ただし閉塞性黄疸があると癌なくても高値になる。一方CEAの陽性率は50%。CA19-9とCEAを併せれば胆道癌全体で90%に上がる(しかし早期のステージ?では20-25%しか陽性にならず、早期発見には向かない)。なおSLXやNCC-ST-439は陽性率50%しかないが特異性がCA19-9より高い。早期発見にはALP・γGTPが有用。ALP上昇があれば画像・マーカー測定。エコーで胆道拡張が疑われればMRCPを確認。これで確実ならERCPへと移る。
・ 膵癌 ・・ これもほとんどが進行例での発見。CA19-9の陽性率は膵癌全体で69%だがステージ?では5%にも満たない。CEAの陽性率は全体で33%、これもステージ?では低下する。膵管狭窄を反映する膵逸脱酵素(アミラーゼ、エラスターゼI、リパーゼ、トリプシン)の上昇もみられ、特にエラスターゼIは小膵癌の62%で上昇し、早期発見に向いている。画像では超音波でまず発見されるケースが多い(4割がこれより診断)。超音波で主膵管の拡張、小のう胞が見つかった場合はダイナミックCT、EUSでさらに検索。MRCPにより膵管の途絶を確認するが分枝までは描出が難しい。PETは腫瘍径2cm以下の場合感度が低下するという弱点あり早期発見には向かない。
○ 腎・泌尿器疾患
・ 尿検査
○ 蛋白:試験紙法では尿蛋白は30mg/dl以上で陽性。健常人では1日40-100mgは出る。蛋白がアルブミン主体→糸球体性蛋白尿であり、β2マイクログロブリン主体→尿細管性蛋白尿。
○ 血尿:結石、腫瘍など。糸球体性血尿の場合赤血球は大小不同が主体を占めるのが特徴。そうでないものは血液中と同様の均一な赤血球所見。
○ 尿沈渣:硝子円柱→ネフローゼ症候群でよくみる。赤血球円柱→血尿が糸球体性のものであることを確信。白血球円柱→ネフロンレベルの炎症(半月体形成性糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎など)を示す。顆粒円柱もネフロンレベルの炎症。細胞性半月体・炎症細胞浸潤を示す場合は急速進行性糸球体腎炎、IgA腎症、紫斑病性腎炎などを示唆する。
※ 最近60歳以上に急速進行性糸球体腎炎が増えている。ほとんどがMPO-ANCA陽性、つまりANCA関連腎炎である。早期治療がそのまま予後に響くため、早期診断のため血清クレアチニン、尿検査のほか腎エコー所見により早期発見を図る。
○ 血液疾患
△ 白血球
・増加、特に20000以上
貧血・血小板減少 → 急性白血病
血小板増加、好中球・好酸球・好塩基球増加 → CML
成熟リンパ球著増 → CLL
血小板・赤血球増加 → 真性多血症
CRP陽性 → 重症感染症
・減少、特に2000以下
他の血球も減少 → 再生不良性貧血、MDS、急性白血病、巨赤芽球性貧血など、または放射線・薬剤性
単独の減少 → 薬剤性、重症感染
△ 赤血球
・貧血 ・・ MCV、MCH、MCHCを参考に、?大球性高〜正色素性貧血、?正球性正色素性貧血、?小球性低色素性貧血に分類。
・多血症 ・・ 真性、ストレス多血症、二次性などの鑑別のために、マルクのほかビタミンB12、B12結合能、好中球アルカリホスファターゼ、エリスロポイエチンを提出
□ 相互作用 ・・ 薬物どうしの相性による影響。組み合わせによっては思わぬ副作用がみられる。点滴では混濁に注意。FOYやハンプは単独ルートが原則。
□ 総務 ・・ 病院職員の給料・予算、病名レセプトなど金銭的管理を行う。レセプトができるかどうかで給与など待遇面も違ってくる。
□ 側副血行路=コラテラル=コラテ ・・ 閉塞・高度狭窄している血管の末梢部分に向って、他の血管からさらに伸びている血管。これにより途絶えた血流は一部補充される。
□ ソルメドロール=ソルメド ・・ ステロイド剤。気管支喘息、ステロイドパルス療法のときなどに主に使用。
□ 造影欠損 ・・ 造影をしたときに血管が染まるはずが、部分的に完全に染まらないこと。血栓の存在を示唆する。
□ 造影剤 ・・ CTなどで使用される注射での造影剤使用にあたっては、アレルギーの有無と腎機能障害の有無が重要。
□ 造影剤アレルギー ・・ 造影剤投与後にショック状態、蕁麻疹などのアレルギー症状が出ること。これを避けるため以前は造影剤テストが行われていたが、意義なしということでしなくなった。
□ 続行 ・・ その内容をさらに継続・続投すること。点滴や処方内容のことを指すことが多い。
サーガマニュアル2007秋 た だ ち
2007年9月17日□ ターゲス=デイリー・プロフィール=デイリー・プロファイル=血糖日内変動 ・・ 糖尿病患者の1日の血糖推移。通常は7回測定。各食事の前後と眠前。合わせて血中IRI(インスリン)、検尿も採取することが多い。
□ 退院サマリー=サマリー ・・ 患者が退院したときに作成する病歴要約の書類。入院時の情報、入院経過、検査結果、退院後の方針
など、書く事は山ほどある。昔は手書きだった・・・。
□ 対光反射 ・・ ペンライトで瞳孔を照らし、光の当たった縮瞳の有無を見る。これが直接対光反射。光の当たってない
もう一方の瞳孔を見るのが間接対光反射。なお、対光反射前の左右の瞳孔の大きさ・左右差も重要だ。
□ 対症療法(たいしょうりょうほう) ・・ 根本的な治療でなく、現在の症状・状態にのみ対処する治療内容。その場しのぎ、ともいえる。
□ 退職金 ・・ ドクターの場合ほとんど受け取れないところが多い。各人、勤務前に確認しておく必要が・・そんな勇気はないだろうな。公立の病院では発生することも多いが、通常は3年以上勤務しないと出ない。人事はそこもきちんと計算している。
□ 帯状ヘルペス(たいじょうへるぺす) ・・ 肋間神経に沿って起こる発疹。痛い。再発ありうる。人には移らない。
□ タミフル ・・ インフルエンザA/Bウイルスの薬で、発症48時間以内なら有効。1歳以下は慎重投与。最近、耐性の報告あり。なお昨年から出たタイプは2年間の品質期限(それまでは1年間しかもたなかった)。したがって昨年処方された分は捨てずに、今年使用しても可。意外と知られていない。
※ 鳥インフルエンザのパニックで、近いうち需要が増加する恐れがある。今のうちに個人的に備蓄することをすすめる(官僚・一部の医療従事者はおそらく独自のルートで入手するだろう)。
□ たこつぼ型心筋症=Ampulla Cardiomyopathy=たこつぼ型心筋障害
極めてまれで70歳以上のすなわち高齢者女性(男性の7倍!)に多く、症状・心電図所見(特に前壁中隔領域のST上昇)は一見AMI(急性心筋梗塞)と思いきや、カテーテル検査では冠動脈に狭窄所見が認められず、左室造影で収縮期に≪たこつぼ≫形状を呈する心室を認める。
具体的には心尖部の収縮が低下し(心尖部バルーン状拡張・無収縮)、これを代償するかのように心基部が過大な収縮をする(心基部過収縮)。
発症後数週間〜一ヶ月以内に心機能は改善するものが多く、予後良好といわれているが中には重症例もある。
原因は内因性カテコラミン増加による心筋障害説が有力。精神的・肉体的ストレスを契機に発症するらしい。中越地震の際にこの患者が増えたのもうなずける。
なお88症例を解析した論文(日本、2001年)によると、男女比1:6.3、年齢10-88歳で平均67歳、初発症状は胸痛・胸部不快が67%、心電図異常(9割がV3-4に最大のST上昇。経過とともにQT延長+巨大陰性T、やがて正常化・・・まさに前壁梗塞の経過をとる)が20%。採血ではトロポニンT陽性が72%と紛らわしい。CPK上昇は52%(壁運動低下部分の大きさのわりに、比較的上昇が少ない)。
心不全・肺水腫が22%に合併、ショックが15%に合併。心破裂、多枝スパズムによる死亡例の報告もあるという。教科書的には、<一過性良性病態>ということになってはいる。
※ 古い論文では原因・病態として「多枝攣縮による気絶心筋」として報告されていたが今はあまり支持されていない。
※ さらに特殊例として、可逆的な左室流出路の狭窄例がある。左心室だけでなく右心室にもみられる。閉塞性肥大型心筋症とは機序がまた異なるという。流出路心筋の括約筋過収縮が考えられている。
□ 多剤耐性(MDR) ・・ 通常は菌の場合に使用する言葉。抗生剤のほとんどが効かない菌(多剤耐性菌)。特に緑膿菌の場合、非常に厳しく、正直治療法がない。
□ 多剤耐性緑膿菌=MDRP ・・ 本来、緑膿菌に対して効くはずのβラクタム系、ニューキノロン系、アミノ配糖体系の抗生物質に耐性を獲得した場合。喀痰培養の抗生剤感受性結果、もしくは治療の過程からそう判断される。なかでも増加しているのはカルバペネム系を加水分解するメタロβラクタマーゼ産生菌だ。用途の広いカルバペネムの耐性化となると、事態はいっそう深刻だ(実際、有効な治療はない)。なので現在は治療というより予防のほうに重点がおかれている。ワクチンの試みもあるが、実用化にまで至ってない。
□ 立ちくらみ ・・ 立ち上がったときにクラクラする。起立性低血圧の症状。通常は立つと血圧は同じか上がるが、本症では逆に下がるのでめまいがする。自律神経失調の症状、あるいはα遮断薬(カルデナリンやハルナール)の副作用だったりもする。
□ 多発性骨髄腫=ミエローマ=MM ・・ 血液疾患。異常な骨髄細胞(腫瘍化した形質細胞)から異常で役立たずな抗体が金太郎飴状態に産生され(M蛋白)、血液がネバくなる。産生の場所のこともあり骨に病変、骨融解で高カルシウム血症も。正常な抗体は減るので感染症のリスク高い。治療はここ30年の伝統、MP間欠療法(メルファラン、プレドニゾロンを4日間併用、以後間欠的に4週間ごとに投与)。M蛋白を指標に。
□ タバコ(による中毒)
・ タバコ1本のニコチン量は7-24mg。致死量は0.5-1.0mg/kg(成人で30-60mgすなわち2本分、乳幼児で10-20mgすなわち1本分)。ただ実際はニコチンの催吐作用・吸収速度(ゆっくり)などにより実際の吸収量は少なめ。
・ 中枢神経・自律神経・運動神経に刺激・興奮的に作用しのち抑制作用を示す。アセチルコリンと異なり分解されるまでの時間が長い。
・ 大量喫煙、タバコ浸出液の摂取では刺激・興奮症状がみられないまま麻痺・虚脱→死に至ることもある。
軽症:嘔気、嘔吐(摂取後初期10-60分以内)、頭痛
重症:振戦、錯乱、虚脱、呼吸筋麻痺
※ 小児では誤飲量が少ないため、悪心・嘔吐、顔面蒼白、下痢、不安興奮程度。
※ 2時間以上たっても症状が出なければほぼ心配なし。
※ 日本小児科学会生活環境改善委員会の指針では、タバコを2cm以上誤飲したり、浸出液を誤飲した場合には胃洗浄を施行し、2cm以下の場合は経過観察するとされている。
・ タバコ摂取に気づいたらまず吐かせる。その際水を飲ませたりして出させようとしてはならない(かえって吸収を招く)。ただし浸出液の摂取の場合は水などを飲ませて直ちに吐かせる。
・ 大量服用時、症状発現時には胃洗浄を施行。
・ 重症例では下剤・活性炭を投与。
・ PAMのような拮抗薬はない。症状に応じて適宜、アトロピン、ジアゼパムなどを投与する。
□ タヒる=タキる ・・ 「tachycardia=頻脈」が語源。モニターが頻脈のときに職場でこう呼ばれる。
□ 短軸 ・・ 楕円があるとすると、その長い径が「長軸」で、それに直行する短い径が「短軸」。心臓の場合(ラグビーボールとすると)、縦切りが「長軸」で、輪切りが「短軸」。
□ 胆石=Gall Stone ・・ 持ってる人で痛みの経験があれば胆嚢ごと取るべき。今は開腹せず腹腔鏡でできる。
□ 胆嚢ポリープ ・・ 胆嚢の内部にときにみられる小さな腫瘤。経過観察とし、3〜6ヶ月ごとに再検査を勧めることが多い。のう胞もそうだが、いつまでフォローを続けるべきかけっこう悩む。
□ 蛋白尿 ・・ 正常人でも1日50-100mg程度は出ておりその場合<生理蛋白尿・・運動後や発熱時、起立時など>というが、病的な蛋白尿は1日150mg以上の場合である。試験紙で調べるのは(±)だとか(+)だとかの定性法。具体的にはこれらは濃度を表しており、
± → 5 mg/dl
1+ → 30 mg/dl
2+ → 100 mg/dl
であると、大まかに示唆するものである。健診でひっかかるのはこのうち±、1+が最も多いが、1+以上は糸球体疾患を疑って精査を勧めるべきとされている。また試験紙での検査は、異常蛋白であるベンス・ジョーンズ、β2-MGは見落としてしまうのでそこは留意しておく必要あり。
IgA腎症が実はかなり見落とされていたという報告(おいおい・・・!)があったこともあり、健診での尿蛋白はこれまで以上に気を遣いたい。
□ タンポナーデ=心タンポナーデ=心タンポ ・・ 心臓の周囲に心嚢液が溜まって、それで心臓が動きにくくなる。血圧低下・脈圧減少・頻脈となる。原因ありとなしがある。
□ 代医 ・・ 学会出張やバイト、病欠のときに立てるピンチヒッター。代わってもらった暁には、おごるかお土産しないと。
□ 大腸憩室炎 ・・ 大腸のうち上行結腸に好発する、憩室内(浅いマンホール)で起こった炎症。便秘で糞が慢性に蓄積すると起こりやすい(なので高齢者に多い)。好発部位の関係で、虫垂炎と誤診されることがある。
□ 大腸ファイバー=大腸内視鏡=コロンファイバー=大腸カメラ ・・ 肛門から入れて見るためのカメラ。下剤で便が十分出ていないと、観察が不十分となる。観察範囲は、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部あたりまで。
□ 代表者会議 ・・ 院長、婦長、検査技師など、各部署の責任者が集まり行われる井戸端会議。本音の議論がここで交わされる。めいめいが部下の意見を反映させる責任を負っているため、ときに戦争となる。
□ 脱臼・(関節面の骨折あり→)脱臼骨折
・ 骨折に伴う脱臼 ・・ Galezzi骨折(橈骨骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼)、Monteggia骨折(尺骨近位部骨折+橈骨頭脱臼)など。
・ 末梢循環不全があれば少なくとも6-8時間以内に血流再開の必要性あり。
・ コンパートメント症候群では12時間以内に筋膜切開を行う。
◇ 手関節
・ 遠位橈尺関節亜脱臼 ・・ 前腕回旋障害、脱臼部の骨性隆起。レントゲンで前腕回内外による(橈骨・尺骨の)位置関係変化あり。整復後1ヶ月間ギプス固定。
・ 月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼 ・・ 高度な手関節背屈で起こる。整復後1ヶ月間ギプス固定。正中神経圧迫による手根管症候群合併もあり。
◇ 肘関節
・ 全脱臼の2割。神経・血管(上腕動脈)損傷の危険度が高い。
・ 前方脱臼は肘関節屈曲位で前腕後方より外力加わったとき、後方脱臼は肘関節過伸展位で手をついた際。後方脱臼が多い。
・ 非観血的に整復。とくに後方脱臼では肘関節を屈曲し前腕を末梢方向に牽引して整復(Depalma法)。
◇ 肩関節
・ 大関節のなかで最も脱臼しやすい(5割)。95%が前方脱臼(肩関節の外転・伸展・外旋による)であり次いで後方脱臼。
・ 前方脱臼 ・・ 肩峰は過度に突出、前方に上腕骨頭を触知する。腋窩神経がしばしば損傷され上腕外側の知覚消失が起こる。
◇ 肩鎖関節
・ 肩峰に下向きの力がかかって生じること多い。
・ Rockwoodの分類では?〜?タイプに分類され、タイプ?:捻挫、タイプ?:亜脱臼、タイプ?:完全脱臼、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の後方転位、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の上方転位、タイプ?:鎖骨遠位端が肩峰や烏口突起下方にある(肺・腕神経叢の損傷ありうる)。
・ タイプ?・?は保存的治療。タイプ?は保存か手術かで意見分かれる。タイプ?以降は観血的整復となる。
◇ 足関節
・ 高所からの墜落が多い。内方、後方脱臼が多い。多くが脱臼骨折の形をとる。
・ 骨折を伴う場合は観血的整復。
◇ 膝関節
・ 前方脱臼 ・・ 膝の過伸展、後方脱臼 ・・ 膝関節屈曲時の回旋力によるもので、前方脱臼のほうが多い。
・ 前方脱臼では非観血的、後方脱臼は観血的に整復。
◇ 股関節
・ 後方脱臼がほとんど。高エネルギー外傷が多い。
・ 前方脱臼 ・・ 屈曲外転位に対する強い外転で起こる。屈曲・外転・外旋認める。
・ 後方脱臼 ・・ 股関節屈曲時+大腿骨長軸方向への外力で起こる。屈曲・内旋・内転認める。後方脱臼した大腿骨頭により坐骨神経が損傷されることあり。
・ 非観血的に修復可能が多いが全身麻酔が必要。
□ ダブルルーメン ・・ 太目のIVHカテーテル。2ルートある。カテコラミンやFOYなど、単独でいきたいルートが必要なときなどに使用。だがふつうのシングルカテーテルに比べて感染しやすい。
□ 致死性不整脈 ・・ 心室細動(Vf)と心室頻拍(VT)の総称。基礎となる心疾患があるかないかで以下に分類。
● 基礎心疾患あり→陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症など。
● 基礎心疾患なし→Brugada(ブルガダ)症候群、QT延長症候群
□ 中隔基部 ・・ 心室中隔(左心室と右心室の間の壁)の上方部分。心室中隔を流れる冠動脈の血流はまず基部から→下部(心尖部)へと。なので心室中隔の基部の動きの良し悪しで、ある程度冠動脈の病変部位を推定することが可能なときもある。「ベース」と呼んだりもする。
□ 注射当番 ・・ 朝・晩とある注射・点滴を、レジデントが中心となって1人ずつ回る、その当番。レジデントが少ない医局では院生や助手までが借り出される。
□ 虫垂炎 ・・ 右下腹部痛が特徴的だが、実際はみぞおちの痛みで初発する。血液検査で白血球増加を認めれば手術を視野におき抗生剤開始となる。腹部CTでは本来の虫垂部分がlowにぼやけるのが特徴。
※ 虫垂が盲腸先端まで映り、かつ直径が6?以下で炎症がなければ正常な虫垂と診断する。
□ 腸管浮腫 ・・ イレウスの際にみられる、水分が腸の中だけでなく腸の壁に貯留した状態。このため腸が重たくなり、動けなくなる。利尿剤で対処するが、循環不全対策の補液も重要。
□ 腸間膜動脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる動脈の閉塞。激烈で進行性の腹痛を呈する。腸は次第に壊死していくので早期診断が重要。心房細動など塞栓しやすいリスクの有無も重要。
□ 腸間膜静脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる静脈の閉塞。麻痺性イレウスを呈し、腸管浮腫が起こる。なので動脈閉塞とは全く病態が異なる。静脈は通常流れが遅いので、凝固傾向が背景にあることが多い。脱水・寝たきりなど。
□ 調剤薬局=院外薬局 ・・ 病院内に薬局を経営すると薬が余ったりしたとき損が大きい、ということで病院の外に建てられ契約した薬局。品数が豊富なのがメリットだが、通常中が狭いのと薬剤師が「いらんこと」言ったりトラブルが収集しにくいのが難。
□ 腸閉塞=イレウス ・・ 腸が何らかの原因で「詰まる」か「麻痺する」。これにより便が進まなくなり吐いてしまう。自力ではまず治せない。絶食と補液と鼻に入れるチューブが治療の基本。腹部の手術歴の多い人によくみられる。別名「イレウス」。
□ チラージンS ・・ 甲状腺ホルモン剤(T4)。甲状腺機能低下症に投与する。副作用に狭心症あり。
□ 退院サマリー=サマリー ・・ 患者が退院したときに作成する病歴要約の書類。入院時の情報、入院経過、検査結果、退院後の方針
など、書く事は山ほどある。昔は手書きだった・・・。
□ 対光反射 ・・ ペンライトで瞳孔を照らし、光の当たった縮瞳の有無を見る。これが直接対光反射。光の当たってない
もう一方の瞳孔を見るのが間接対光反射。なお、対光反射前の左右の瞳孔の大きさ・左右差も重要だ。
□ 対症療法(たいしょうりょうほう) ・・ 根本的な治療でなく、現在の症状・状態にのみ対処する治療内容。その場しのぎ、ともいえる。
□ 退職金 ・・ ドクターの場合ほとんど受け取れないところが多い。各人、勤務前に確認しておく必要が・・そんな勇気はないだろうな。公立の病院では発生することも多いが、通常は3年以上勤務しないと出ない。人事はそこもきちんと計算している。
□ 帯状ヘルペス(たいじょうへるぺす) ・・ 肋間神経に沿って起こる発疹。痛い。再発ありうる。人には移らない。
□ タミフル ・・ インフルエンザA/Bウイルスの薬で、発症48時間以内なら有効。1歳以下は慎重投与。最近、耐性の報告あり。なお昨年から出たタイプは2年間の品質期限(それまでは1年間しかもたなかった)。したがって昨年処方された分は捨てずに、今年使用しても可。意外と知られていない。
※ 鳥インフルエンザのパニックで、近いうち需要が増加する恐れがある。今のうちに個人的に備蓄することをすすめる(官僚・一部の医療従事者はおそらく独自のルートで入手するだろう)。
□ たこつぼ型心筋症=Ampulla Cardiomyopathy=たこつぼ型心筋障害
極めてまれで70歳以上のすなわち高齢者女性(男性の7倍!)に多く、症状・心電図所見(特に前壁中隔領域のST上昇)は一見AMI(急性心筋梗塞)と思いきや、カテーテル検査では冠動脈に狭窄所見が認められず、左室造影で収縮期に≪たこつぼ≫形状を呈する心室を認める。
具体的には心尖部の収縮が低下し(心尖部バルーン状拡張・無収縮)、これを代償するかのように心基部が過大な収縮をする(心基部過収縮)。
発症後数週間〜一ヶ月以内に心機能は改善するものが多く、予後良好といわれているが中には重症例もある。
原因は内因性カテコラミン増加による心筋障害説が有力。精神的・肉体的ストレスを契機に発症するらしい。中越地震の際にこの患者が増えたのもうなずける。
なお88症例を解析した論文(日本、2001年)によると、男女比1:6.3、年齢10-88歳で平均67歳、初発症状は胸痛・胸部不快が67%、心電図異常(9割がV3-4に最大のST上昇。経過とともにQT延長+巨大陰性T、やがて正常化・・・まさに前壁梗塞の経過をとる)が20%。採血ではトロポニンT陽性が72%と紛らわしい。CPK上昇は52%(壁運動低下部分の大きさのわりに、比較的上昇が少ない)。
心不全・肺水腫が22%に合併、ショックが15%に合併。心破裂、多枝スパズムによる死亡例の報告もあるという。教科書的には、<一過性良性病態>ということになってはいる。
※ 古い論文では原因・病態として「多枝攣縮による気絶心筋」として報告されていたが今はあまり支持されていない。
※ さらに特殊例として、可逆的な左室流出路の狭窄例がある。左心室だけでなく右心室にもみられる。閉塞性肥大型心筋症とは機序がまた異なるという。流出路心筋の括約筋過収縮が考えられている。
□ 多剤耐性(MDR) ・・ 通常は菌の場合に使用する言葉。抗生剤のほとんどが効かない菌(多剤耐性菌)。特に緑膿菌の場合、非常に厳しく、正直治療法がない。
□ 多剤耐性緑膿菌=MDRP ・・ 本来、緑膿菌に対して効くはずのβラクタム系、ニューキノロン系、アミノ配糖体系の抗生物質に耐性を獲得した場合。喀痰培養の抗生剤感受性結果、もしくは治療の過程からそう判断される。なかでも増加しているのはカルバペネム系を加水分解するメタロβラクタマーゼ産生菌だ。用途の広いカルバペネムの耐性化となると、事態はいっそう深刻だ(実際、有効な治療はない)。なので現在は治療というより予防のほうに重点がおかれている。ワクチンの試みもあるが、実用化にまで至ってない。
□ 立ちくらみ ・・ 立ち上がったときにクラクラする。起立性低血圧の症状。通常は立つと血圧は同じか上がるが、本症では逆に下がるのでめまいがする。自律神経失調の症状、あるいはα遮断薬(カルデナリンやハルナール)の副作用だったりもする。
□ 多発性骨髄腫=ミエローマ=MM ・・ 血液疾患。異常な骨髄細胞(腫瘍化した形質細胞)から異常で役立たずな抗体が金太郎飴状態に産生され(M蛋白)、血液がネバくなる。産生の場所のこともあり骨に病変、骨融解で高カルシウム血症も。正常な抗体は減るので感染症のリスク高い。治療はここ30年の伝統、MP間欠療法(メルファラン、プレドニゾロンを4日間併用、以後間欠的に4週間ごとに投与)。M蛋白を指標に。
□ タバコ(による中毒)
・ タバコ1本のニコチン量は7-24mg。致死量は0.5-1.0mg/kg(成人で30-60mgすなわち2本分、乳幼児で10-20mgすなわち1本分)。ただ実際はニコチンの催吐作用・吸収速度(ゆっくり)などにより実際の吸収量は少なめ。
・ 中枢神経・自律神経・運動神経に刺激・興奮的に作用しのち抑制作用を示す。アセチルコリンと異なり分解されるまでの時間が長い。
・ 大量喫煙、タバコ浸出液の摂取では刺激・興奮症状がみられないまま麻痺・虚脱→死に至ることもある。
軽症:嘔気、嘔吐(摂取後初期10-60分以内)、頭痛
重症:振戦、錯乱、虚脱、呼吸筋麻痺
※ 小児では誤飲量が少ないため、悪心・嘔吐、顔面蒼白、下痢、不安興奮程度。
※ 2時間以上たっても症状が出なければほぼ心配なし。
※ 日本小児科学会生活環境改善委員会の指針では、タバコを2cm以上誤飲したり、浸出液を誤飲した場合には胃洗浄を施行し、2cm以下の場合は経過観察するとされている。
・ タバコ摂取に気づいたらまず吐かせる。その際水を飲ませたりして出させようとしてはならない(かえって吸収を招く)。ただし浸出液の摂取の場合は水などを飲ませて直ちに吐かせる。
・ 大量服用時、症状発現時には胃洗浄を施行。
・ 重症例では下剤・活性炭を投与。
・ PAMのような拮抗薬はない。症状に応じて適宜、アトロピン、ジアゼパムなどを投与する。
□ タヒる=タキる ・・ 「tachycardia=頻脈」が語源。モニターが頻脈のときに職場でこう呼ばれる。
□ 短軸 ・・ 楕円があるとすると、その長い径が「長軸」で、それに直行する短い径が「短軸」。心臓の場合(ラグビーボールとすると)、縦切りが「長軸」で、輪切りが「短軸」。
□ 胆石=Gall Stone ・・ 持ってる人で痛みの経験があれば胆嚢ごと取るべき。今は開腹せず腹腔鏡でできる。
□ 胆嚢ポリープ ・・ 胆嚢の内部にときにみられる小さな腫瘤。経過観察とし、3〜6ヶ月ごとに再検査を勧めることが多い。のう胞もそうだが、いつまでフォローを続けるべきかけっこう悩む。
□ 蛋白尿 ・・ 正常人でも1日50-100mg程度は出ておりその場合<生理蛋白尿・・運動後や発熱時、起立時など>というが、病的な蛋白尿は1日150mg以上の場合である。試験紙で調べるのは(±)だとか(+)だとかの定性法。具体的にはこれらは濃度を表しており、
± → 5 mg/dl
1+ → 30 mg/dl
2+ → 100 mg/dl
であると、大まかに示唆するものである。健診でひっかかるのはこのうち±、1+が最も多いが、1+以上は糸球体疾患を疑って精査を勧めるべきとされている。また試験紙での検査は、異常蛋白であるベンス・ジョーンズ、β2-MGは見落としてしまうのでそこは留意しておく必要あり。
IgA腎症が実はかなり見落とされていたという報告(おいおい・・・!)があったこともあり、健診での尿蛋白はこれまで以上に気を遣いたい。
□ タンポナーデ=心タンポナーデ=心タンポ ・・ 心臓の周囲に心嚢液が溜まって、それで心臓が動きにくくなる。血圧低下・脈圧減少・頻脈となる。原因ありとなしがある。
□ 代医 ・・ 学会出張やバイト、病欠のときに立てるピンチヒッター。代わってもらった暁には、おごるかお土産しないと。
□ 大腸憩室炎 ・・ 大腸のうち上行結腸に好発する、憩室内(浅いマンホール)で起こった炎症。便秘で糞が慢性に蓄積すると起こりやすい(なので高齢者に多い)。好発部位の関係で、虫垂炎と誤診されることがある。
□ 大腸ファイバー=大腸内視鏡=コロンファイバー=大腸カメラ ・・ 肛門から入れて見るためのカメラ。下剤で便が十分出ていないと、観察が不十分となる。観察範囲は、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部あたりまで。
□ 代表者会議 ・・ 院長、婦長、検査技師など、各部署の責任者が集まり行われる井戸端会議。本音の議論がここで交わされる。めいめいが部下の意見を反映させる責任を負っているため、ときに戦争となる。
□ 脱臼・(関節面の骨折あり→)脱臼骨折
・ 骨折に伴う脱臼 ・・ Galezzi骨折(橈骨骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼)、Monteggia骨折(尺骨近位部骨折+橈骨頭脱臼)など。
・ 末梢循環不全があれば少なくとも6-8時間以内に血流再開の必要性あり。
・ コンパートメント症候群では12時間以内に筋膜切開を行う。
◇ 手関節
・ 遠位橈尺関節亜脱臼 ・・ 前腕回旋障害、脱臼部の骨性隆起。レントゲンで前腕回内外による(橈骨・尺骨の)位置関係変化あり。整復後1ヶ月間ギプス固定。
・ 月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼 ・・ 高度な手関節背屈で起こる。整復後1ヶ月間ギプス固定。正中神経圧迫による手根管症候群合併もあり。
◇ 肘関節
・ 全脱臼の2割。神経・血管(上腕動脈)損傷の危険度が高い。
・ 前方脱臼は肘関節屈曲位で前腕後方より外力加わったとき、後方脱臼は肘関節過伸展位で手をついた際。後方脱臼が多い。
・ 非観血的に整復。とくに後方脱臼では肘関節を屈曲し前腕を末梢方向に牽引して整復(Depalma法)。
◇ 肩関節
・ 大関節のなかで最も脱臼しやすい(5割)。95%が前方脱臼(肩関節の外転・伸展・外旋による)であり次いで後方脱臼。
・ 前方脱臼 ・・ 肩峰は過度に突出、前方に上腕骨頭を触知する。腋窩神経がしばしば損傷され上腕外側の知覚消失が起こる。
◇ 肩鎖関節
・ 肩峰に下向きの力がかかって生じること多い。
・ Rockwoodの分類では?〜?タイプに分類され、タイプ?:捻挫、タイプ?:亜脱臼、タイプ?:完全脱臼、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の後方転位、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の上方転位、タイプ?:鎖骨遠位端が肩峰や烏口突起下方にある(肺・腕神経叢の損傷ありうる)。
・ タイプ?・?は保存的治療。タイプ?は保存か手術かで意見分かれる。タイプ?以降は観血的整復となる。
◇ 足関節
・ 高所からの墜落が多い。内方、後方脱臼が多い。多くが脱臼骨折の形をとる。
・ 骨折を伴う場合は観血的整復。
◇ 膝関節
・ 前方脱臼 ・・ 膝の過伸展、後方脱臼 ・・ 膝関節屈曲時の回旋力によるもので、前方脱臼のほうが多い。
・ 前方脱臼では非観血的、後方脱臼は観血的に整復。
◇ 股関節
・ 後方脱臼がほとんど。高エネルギー外傷が多い。
・ 前方脱臼 ・・ 屈曲外転位に対する強い外転で起こる。屈曲・外転・外旋認める。
・ 後方脱臼 ・・ 股関節屈曲時+大腿骨長軸方向への外力で起こる。屈曲・内旋・内転認める。後方脱臼した大腿骨頭により坐骨神経が損傷されることあり。
・ 非観血的に修復可能が多いが全身麻酔が必要。
□ ダブルルーメン ・・ 太目のIVHカテーテル。2ルートある。カテコラミンやFOYなど、単独でいきたいルートが必要なときなどに使用。だがふつうのシングルカテーテルに比べて感染しやすい。
□ 致死性不整脈 ・・ 心室細動(Vf)と心室頻拍(VT)の総称。基礎となる心疾患があるかないかで以下に分類。
● 基礎心疾患あり→陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症など。
● 基礎心疾患なし→Brugada(ブルガダ)症候群、QT延長症候群
□ 中隔基部 ・・ 心室中隔(左心室と右心室の間の壁)の上方部分。心室中隔を流れる冠動脈の血流はまず基部から→下部(心尖部)へと。なので心室中隔の基部の動きの良し悪しで、ある程度冠動脈の病変部位を推定することが可能なときもある。「ベース」と呼んだりもする。
□ 注射当番 ・・ 朝・晩とある注射・点滴を、レジデントが中心となって1人ずつ回る、その当番。レジデントが少ない医局では院生や助手までが借り出される。
□ 虫垂炎 ・・ 右下腹部痛が特徴的だが、実際はみぞおちの痛みで初発する。血液検査で白血球増加を認めれば手術を視野におき抗生剤開始となる。腹部CTでは本来の虫垂部分がlowにぼやけるのが特徴。
※ 虫垂が盲腸先端まで映り、かつ直径が6?以下で炎症がなければ正常な虫垂と診断する。
□ 腸管浮腫 ・・ イレウスの際にみられる、水分が腸の中だけでなく腸の壁に貯留した状態。このため腸が重たくなり、動けなくなる。利尿剤で対処するが、循環不全対策の補液も重要。
□ 腸間膜動脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる動脈の閉塞。激烈で進行性の腹痛を呈する。腸は次第に壊死していくので早期診断が重要。心房細動など塞栓しやすいリスクの有無も重要。
□ 腸間膜静脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる静脈の閉塞。麻痺性イレウスを呈し、腸管浮腫が起こる。なので動脈閉塞とは全く病態が異なる。静脈は通常流れが遅いので、凝固傾向が背景にあることが多い。脱水・寝たきりなど。
□ 調剤薬局=院外薬局 ・・ 病院内に薬局を経営すると薬が余ったりしたとき損が大きい、ということで病院の外に建てられ契約した薬局。品数が豊富なのがメリットだが、通常中が狭いのと薬剤師が「いらんこと」言ったりトラブルが収集しにくいのが難。
□ 腸閉塞=イレウス ・・ 腸が何らかの原因で「詰まる」か「麻痺する」。これにより便が進まなくなり吐いてしまう。自力ではまず治せない。絶食と補液と鼻に入れるチューブが治療の基本。腹部の手術歴の多い人によくみられる。別名「イレウス」。
□ チラージンS ・・ 甲状腺ホルモン剤(T4)。甲状腺機能低下症に投与する。副作用に狭心症あり。
サーガマニュアル2007秋 つ て で
2007年9月17日□ 痛風(つうふう) ・・ 足の1指の付け根(第一中足趾節関節=MTP)が9割以上を占める。背景には高尿酸血症あり。酒飲みか利尿剤内服中が多い。発症ピークは以前の50歳代から30代へシフトしてきている。痛みの予兆時にはコルヒチンを内服、発作つまり疼痛時にはNSAIDを短期大量に、つまり集中的に内服する方法が推奨されている。NSAIDが無効または使用できなければステロイド剤の使用。強調されることだが、内服中の尿酸下降剤の中止・減量は血管内の尿酸値の変動をきたしかえって発作が増強する危険があるので、あくまでも同量のまま継続する。
□ 使い物にならん ・・ 役立たずの医者を陰で呼ぶとき、こう言われている。
□ 「つけときますんで」 ・・ 検査や治療の延長、または引継ぎ医者の不在で常勤ドクターに無理をお願いしたとき、事務側がねぎらいでかける言葉。残業手当をつけておく、という意味。
□ 詰所=ナースステーション ・・ ナースの仕事場。朝9時ごろ・夕方5時ごろは「申し送り」で人数が集中。
□ 低栄養 ・・ 見た目だけでなく、血中の蛋白(特にアルブミン)が不足した状態をさす。あまり進むと浮腫が起こり(体がむくむ)、血圧低下などの循環不全を引き起こす。
□ 低カリウム(血症) ・・ 血液検査でカリウムが低い状態。不整脈を起こしやすくなったり血液のアルカリ化を起こすことあり全身悪化の原因となる。利尿剤で尿が出すぎた場合、点滴にあまりなかった場合に多い。病棟では「低カリ」と称される。
□ 低血糖発作 ・・ 意識障害の原因の1つ。米国では意識障害のある患者には(たとえ交通事故でも)?ナロキソン(麻薬拮抗薬)、?チアミン(ビタミンB1)、?50%ブドウ糖の3つが投与されるそうだ。?→麻薬中毒を否定するため、?→アルコール依存患者に?だけ処置されるとビタミンB1不足症状が前面に出てしまう(Wernicke脳症)から、とされている。日本では??はルーチンでないが、?は積極的に行われている。でも高血糖による意識障害もあるわけだから、搬入時にデキストロメーターで随時血糖をチェックするべきだろう。
□ 低酸素血症=低酸素 ・・ 動脈中の酸素(分圧)が低下した状態。
□ 帝大 ・・ もと帝国大学。東京大学や京都大、九大・阪大など。
□ 手が放せません ・・ 処置中に呼び出しがあったときにこう伝えてもらう。
□ テストバッグ ・・ 患者に入った挿管チューブに人工呼吸器をつなぐ直前、ホントに換気の出し入れができているか確かめるための袋。握りこぶし大。
□ てんかん<成人> ・・ 脳の興奮のために生じる発作。てんかん=けいれんではなく、そのほか異常行動(→複雑部分発作)や感覚異常(→単純部分発作)、腹痛(→自律神経発作)も含む。発作の大きさで全般発作、部分発作とに分けられる。分類のためには目撃者の証言、年齢、基礎疾患、脳波、画像検査が不可欠だ。
・てんかんと診断する以前に、失神発作との鑑別が必要である。失神発作にはワゴトニー、起立性低血圧、不整脈などの心臓関連、TIAなどの一過性脳血流低下、低血糖によるものがある。
・てんかんに対して、脳波により診断・内服調整を行うが、異常があっても発作波が検出されない場合があるので、睡眠・光刺激・過呼吸発作波を誘発することがある。
●全般発作→特発性
? 大発作=強直-間代発作 ・・ 強直期(意識失い四肢硬直伸展)→間代期(全身筋肉ガタガタ震わす)→四肢ダランとなり意識消失続く。この過程が数分続く。成人までに発症。
? 小発作=欠神発作 ・・ 10秒前後の意識混濁で目がうつろ。小児期〜青春期まで。成人になると消失。
? ミオクローヌス発作 ・・ 本人の意思と関係なく手足投げ出す。
? 脱力発作 ・・ 突然失神して転倒、1,2秒で回復し立とうとする。
●部分発作→2次性。脳血管障害後遺症(late seizure)だけとは限らず、周産期障害、脳腫瘍、AVMなど。
? 単純部分発作
・ 運動発作→片側の四肢・顔面けいれん
・ 感覚発作→片側の四肢・体幹・顔面の異常感覚
・ 自律神経発作→腹痛・頭痛・めまいなど
? 複雑部分発作 ・・ 意識の混濁があり、自動症(つかむような動作、舌なめずりなど)あるいは強いデジャヴ感。
? 部分発作の二次的全般化 ・・ 部分発作→徐々に全身に拡がり→大発作型の全身けいれんへ移行。
てんかんの内服は1種類から開始。血中濃度を測定。治療域に達するまで内服を増やすのでなく、目標はあくまで症状の安定化にある。発作が3−5年抑制されておれば徐々に減量していくことが多いが、そこはケースバイケース。
内服は以下の3種類が主体。
VPA(バルプロ酸ナトリウム:デパケン)
PHT(フェニトイン:アレビアチン)
CBZ(カルバマゼピン:テグレトール)
※暗記→『健さん、アレと混ぜてくれ』
(副作用)
テグレトール:骨髄抑制
デパケン:肝障害・アンモニア上昇
□ テオフィリン ・・ 喘息に対して使用。気管支拡張作用をもつ。不整脈、痙攣に注意。投与中の患者さんは定期的に「テオフィリン血中濃度」を測定(ただし中毒域でなくても痙攣は起こしうる)。日本の「小児気管支喘息治療・ガイドライン2005」において、テオフィリン使用への注意喚起(中毒の危険性:いったん起こすと)がなされているにもかかわらず、いまだに使用頻度は高い。海外では中毒への感心が高くステロイド吸入など他の薬剤に移行しており、本剤はほとんど使用されていない。発熱時にはテオフィリンの代謝速度が低下して血中濃度が高くなり中毒域に達する危険性がある。
□ 点滴漏れ ・・ 静脈に入ったはずの点滴の針先が抜けたかズれたかで静脈を外れ、付近の皮膚内で漏れてしまった状態。皮下は腫れ神経を直接刺激、当然痛い。映画『ダイ・アナザーデイ』でボンドが点滴バッグをギュッと握り締めていたが、あれだとかなり漏れたのではないか、と余計な心配。
□ 点滴ライン=点滴ルート ・・ 点滴の通り道。
□ テンポラリー ・・ 一時的ペースメーカー。心臓内に入れるカテーテルと電池の入った機械からなる。カテーテルだけが入り、電池は外付け。あくまでも一時的な使用。1週間ぐらいが限度。
□ ディスカッション ・・ 議論を活発に討論すること。NHKで10代が罵り合いながらやってる言葉のケンカのイメージ。
□ ディスポ ・・ ディスポーザブル=使い捨て、の略。ディスポーザブル注射器を略していう場合、あと「あいつはいつでもクビにしてもOK」というウラ経営者用語として。
□ ディバイダー ・・ コンパスの形で足が両方とも針のやつ。心電図・超音波所見の計測に用いる。循環器医師は必須の道具。
□ デキスター ・・ 簡易自己血糖測定。通常は指先をカチンと針で刺し、にゅっと出てきた血の雫で血糖を測定(デキスターチェック)。痛がる人は腹部の皮膚で。
□ 「では時間のほうもさしせまって参りましたので・・」 ・・ 講演会にて、座長が<もうええかげんにせえよお前ら。わしはここまで>と会を閉じるときに使用する言葉。演者はホッとするが、最後に座長がここぞと本命爆弾(質問)を落とすこともあり最後まで気を抜けない。
□ デューティー ・・ 義務。決まりごとや、本日の業務をさす。
□ 電気泳動 ・・ 多発性骨髄腫を疑うときに提出する検査。総蛋白(TP)↑のときなど疑う。
□ 電解質 ・・ 通常は血液検査のナトリウム(Na)・カリウム(K)・クロール(Cl)を指す。現場では3つあわせて「ナトカリクロール」。
■ 電子カルテ ・・ 紙診療録からの電子化。医療のIT化に伴い導入が勧められてはいる。病院内での情報交換、地域医療ネットワークシステムなど医療機関間での連携に役立つ。ただし標準的機能の不備(ニーズが一致しない)、高価、医師への負担増、個人情報の流出、監査が困難など問題が多すぎ。今のところ、新規導入を強く勧めるのは業者とそれに加担・癒着した関係者であり、正直説得力に欠ける。
□ 伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)
※ 厳密に言うと、『とびひ』とは水疱性の場合の別名である。
表皮への細菌感染で、びまん性にできる水疱または膿疱。水疱性なら黄色ブドウ球菌、痂皮性なら化膿レンサ球菌を疑う。
前者は夏・小児、後者は季節柄・好発年齢なし、重症多い。なお特に後者では高熱も伴い、血液でASO・ASK・ADNase-Bが陽性となる。この(痂皮性)場合合併症(急性糸球体腎炎)を考慮し、抗生剤投与は長めに行う。
抗生剤は共通で、ペニシリン系が主に使用され、消毒・外用剤も併用する。というのが一般的。
しかし最近は薬剤の耐性化が進んでおり、ある検討では3割がMRSAとの報告あり。これを考慮する場合、選択薬はまずナジフロキサシンかテラマイシンなどのMRSA感受性ありの外用剤、それと内服(セフェム、ホスホマイシンなど)の併用が好ましいという意見もある。
□ 使い物にならん ・・ 役立たずの医者を陰で呼ぶとき、こう言われている。
□ 「つけときますんで」 ・・ 検査や治療の延長、または引継ぎ医者の不在で常勤ドクターに無理をお願いしたとき、事務側がねぎらいでかける言葉。残業手当をつけておく、という意味。
□ 詰所=ナースステーション ・・ ナースの仕事場。朝9時ごろ・夕方5時ごろは「申し送り」で人数が集中。
□ 低栄養 ・・ 見た目だけでなく、血中の蛋白(特にアルブミン)が不足した状態をさす。あまり進むと浮腫が起こり(体がむくむ)、血圧低下などの循環不全を引き起こす。
□ 低カリウム(血症) ・・ 血液検査でカリウムが低い状態。不整脈を起こしやすくなったり血液のアルカリ化を起こすことあり全身悪化の原因となる。利尿剤で尿が出すぎた場合、点滴にあまりなかった場合に多い。病棟では「低カリ」と称される。
□ 低血糖発作 ・・ 意識障害の原因の1つ。米国では意識障害のある患者には(たとえ交通事故でも)?ナロキソン(麻薬拮抗薬)、?チアミン(ビタミンB1)、?50%ブドウ糖の3つが投与されるそうだ。?→麻薬中毒を否定するため、?→アルコール依存患者に?だけ処置されるとビタミンB1不足症状が前面に出てしまう(Wernicke脳症)から、とされている。日本では??はルーチンでないが、?は積極的に行われている。でも高血糖による意識障害もあるわけだから、搬入時にデキストロメーターで随時血糖をチェックするべきだろう。
□ 低酸素血症=低酸素 ・・ 動脈中の酸素(分圧)が低下した状態。
□ 帝大 ・・ もと帝国大学。東京大学や京都大、九大・阪大など。
□ 手が放せません ・・ 処置中に呼び出しがあったときにこう伝えてもらう。
□ テストバッグ ・・ 患者に入った挿管チューブに人工呼吸器をつなぐ直前、ホントに換気の出し入れができているか確かめるための袋。握りこぶし大。
□ てんかん<成人> ・・ 脳の興奮のために生じる発作。てんかん=けいれんではなく、そのほか異常行動(→複雑部分発作)や感覚異常(→単純部分発作)、腹痛(→自律神経発作)も含む。発作の大きさで全般発作、部分発作とに分けられる。分類のためには目撃者の証言、年齢、基礎疾患、脳波、画像検査が不可欠だ。
・てんかんと診断する以前に、失神発作との鑑別が必要である。失神発作にはワゴトニー、起立性低血圧、不整脈などの心臓関連、TIAなどの一過性脳血流低下、低血糖によるものがある。
・てんかんに対して、脳波により診断・内服調整を行うが、異常があっても発作波が検出されない場合があるので、睡眠・光刺激・過呼吸発作波を誘発することがある。
●全般発作→特発性
? 大発作=強直-間代発作 ・・ 強直期(意識失い四肢硬直伸展)→間代期(全身筋肉ガタガタ震わす)→四肢ダランとなり意識消失続く。この過程が数分続く。成人までに発症。
? 小発作=欠神発作 ・・ 10秒前後の意識混濁で目がうつろ。小児期〜青春期まで。成人になると消失。
? ミオクローヌス発作 ・・ 本人の意思と関係なく手足投げ出す。
? 脱力発作 ・・ 突然失神して転倒、1,2秒で回復し立とうとする。
●部分発作→2次性。脳血管障害後遺症(late seizure)だけとは限らず、周産期障害、脳腫瘍、AVMなど。
? 単純部分発作
・ 運動発作→片側の四肢・顔面けいれん
・ 感覚発作→片側の四肢・体幹・顔面の異常感覚
・ 自律神経発作→腹痛・頭痛・めまいなど
? 複雑部分発作 ・・ 意識の混濁があり、自動症(つかむような動作、舌なめずりなど)あるいは強いデジャヴ感。
? 部分発作の二次的全般化 ・・ 部分発作→徐々に全身に拡がり→大発作型の全身けいれんへ移行。
てんかんの内服は1種類から開始。血中濃度を測定。治療域に達するまで内服を増やすのでなく、目標はあくまで症状の安定化にある。発作が3−5年抑制されておれば徐々に減量していくことが多いが、そこはケースバイケース。
内服は以下の3種類が主体。
VPA(バルプロ酸ナトリウム:デパケン)
PHT(フェニトイン:アレビアチン)
CBZ(カルバマゼピン:テグレトール)
※暗記→『健さん、アレと混ぜてくれ』
(副作用)
テグレトール:骨髄抑制
デパケン:肝障害・アンモニア上昇
□ テオフィリン ・・ 喘息に対して使用。気管支拡張作用をもつ。不整脈、痙攣に注意。投与中の患者さんは定期的に「テオフィリン血中濃度」を測定(ただし中毒域でなくても痙攣は起こしうる)。日本の「小児気管支喘息治療・ガイドライン2005」において、テオフィリン使用への注意喚起(中毒の危険性:いったん起こすと)がなされているにもかかわらず、いまだに使用頻度は高い。海外では中毒への感心が高くステロイド吸入など他の薬剤に移行しており、本剤はほとんど使用されていない。発熱時にはテオフィリンの代謝速度が低下して血中濃度が高くなり中毒域に達する危険性がある。
□ 点滴漏れ ・・ 静脈に入ったはずの点滴の針先が抜けたかズれたかで静脈を外れ、付近の皮膚内で漏れてしまった状態。皮下は腫れ神経を直接刺激、当然痛い。映画『ダイ・アナザーデイ』でボンドが点滴バッグをギュッと握り締めていたが、あれだとかなり漏れたのではないか、と余計な心配。
□ 点滴ライン=点滴ルート ・・ 点滴の通り道。
□ テンポラリー ・・ 一時的ペースメーカー。心臓内に入れるカテーテルと電池の入った機械からなる。カテーテルだけが入り、電池は外付け。あくまでも一時的な使用。1週間ぐらいが限度。
□ ディスカッション ・・ 議論を活発に討論すること。NHKで10代が罵り合いながらやってる言葉のケンカのイメージ。
□ ディスポ ・・ ディスポーザブル=使い捨て、の略。ディスポーザブル注射器を略していう場合、あと「あいつはいつでもクビにしてもOK」というウラ経営者用語として。
□ ディバイダー ・・ コンパスの形で足が両方とも針のやつ。心電図・超音波所見の計測に用いる。循環器医師は必須の道具。
□ デキスター ・・ 簡易自己血糖測定。通常は指先をカチンと針で刺し、にゅっと出てきた血の雫で血糖を測定(デキスターチェック)。痛がる人は腹部の皮膚で。
□ 「では時間のほうもさしせまって参りましたので・・」 ・・ 講演会にて、座長が<もうええかげんにせえよお前ら。わしはここまで>と会を閉じるときに使用する言葉。演者はホッとするが、最後に座長がここぞと本命爆弾(質問)を落とすこともあり最後まで気を抜けない。
□ デューティー ・・ 義務。決まりごとや、本日の業務をさす。
□ 電気泳動 ・・ 多発性骨髄腫を疑うときに提出する検査。総蛋白(TP)↑のときなど疑う。
□ 電解質 ・・ 通常は血液検査のナトリウム(Na)・カリウム(K)・クロール(Cl)を指す。現場では3つあわせて「ナトカリクロール」。
■ 電子カルテ ・・ 紙診療録からの電子化。医療のIT化に伴い導入が勧められてはいる。病院内での情報交換、地域医療ネットワークシステムなど医療機関間での連携に役立つ。ただし標準的機能の不備(ニーズが一致しない)、高価、医師への負担増、個人情報の流出、監査が困難など問題が多すぎ。今のところ、新規導入を強く勧めるのは業者とそれに加担・癒着した関係者であり、正直説得力に欠ける。
□ 伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)
※ 厳密に言うと、『とびひ』とは水疱性の場合の別名である。
表皮への細菌感染で、びまん性にできる水疱または膿疱。水疱性なら黄色ブドウ球菌、痂皮性なら化膿レンサ球菌を疑う。
前者は夏・小児、後者は季節柄・好発年齢なし、重症多い。なお特に後者では高熱も伴い、血液でASO・ASK・ADNase-Bが陽性となる。この(痂皮性)場合合併症(急性糸球体腎炎)を考慮し、抗生剤投与は長めに行う。
抗生剤は共通で、ペニシリン系が主に使用され、消毒・外用剤も併用する。というのが一般的。
しかし最近は薬剤の耐性化が進んでおり、ある検討では3割がMRSAとの報告あり。これを考慮する場合、選択薬はまずナジフロキサシンかテラマイシンなどのMRSA感受性ありの外用剤、それと内服(セフェム、ホスホマイシンなど)の併用が好ましいという意見もある。
サーガマニュアル2007秋 と ど
2007年9月17日□ 当直セット
当直に必要な物品。その病院の食事が食えたもんでなければ各自用意。泊まりなら朝ごはんも準備が必要。あと風呂の確認とシャンプーなどの用具。マンガ、DVDソフト、本、歯磨き道具、携帯電話充電器、パソコン、論文、宿題の準備など。
■ 糖尿病(DM) ・
・ インスリン作用不足による慢性高血糖(→口渇・多飲多尿・倦怠感などの症状)を特徴とし、長期に渡ると血管系・神経系・眼の合併症を引き起こす。
・ 合併症は3大合併症(網膜・腎・神経)+血管系(細小〜大血管まで)など。
? 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
? 75gOGTTで2時間値200mg/dl以上
? 随時血糖値200mg/dl以上
のいずれかが確認されれば糖尿病と診断。
タイプとしては?型と?型のほかに、その他の型、妊娠糖尿病の4群に分けられる。
○ ?型 ・・ おもに自己免疫を基礎にした(HLAなどの遺伝因子に何らかの因子が追加)、ランゲルハンスβ細胞(本来インスリンを合成・分泌)の破壊・消失によりインスリン作用低下。小児〜思春期多い。自己抗体GAD、IAA、ICA、IA-2の陽性率高し。治療はインスリン注射で基礎分泌(中間型あるいは持続型)と追加分泌(速攻型あるいは超速効型)を補う。
○ ?型 ・・ インスリン分泌低下+インスリン抵抗性+環境因子(食いすぎや運動不足、ストレス)+加齢による。薬物治療開始の目安はHbA1c 6.5%以上とされているがリスク因子(高血圧など)があるならそれより以下でも開始すべき。内服不十分のときインスリンに切り替えるが、それによって糖毒性が解除されると再び内服に戻せる可能性はある。
○ 妊娠糖尿病 ・・ 内服は使用しない。食事・運動療法でもってしてもFBS100以上、2時間値120以上なら強化インスリン療法で管理。
・ 食事指導の内容としては、ゆっくりよくかんで腹八分目、朝昼晩と規則正しく、種類自体は多めで食物繊維重視、脂肪は控えめ、と説明。
・ 運動療法にはインスリン抵抗性改善効果もあるが、ASOや狭心症が疑われれば制限せざるをえない。
・ 微量アルブミン尿の時期以降の進展阻止のため、ACEIやARBは有効(DMの降圧薬の第一選択でもある)。
■ 糖尿病性腎症
糖尿病の3-4割に合併する。腎機能低下、蛋白尿という形で現われてくる。前者は糸球体硬化+尿細管間質の線維化により、後者は糸球体基底膜肥厚によるバリアー破たんによる。
糖尿病発症2年までは機能的変化(GFR↑、腎サイズ↑、可逆性アルブミン尿)のみだが、2-5年たつと構造的変化(糸球体基底膜肥厚+メサンギウム拡大)をきたす。この時期から蛋白尿が顕著=顕性腎症・・ここまでくるとpoint of no return・・となる10-20年(←DM発症から)までを潜在性腎症といい、微量アルブミン尿が検出され、高血圧出現や血糖コントロール不良時期となる。
特にこの<顕性腎症>段階での治療の重要性が指摘されている。
治療は血糖・血圧コントロールに蛋白・塩分制限(場合により水分・カリウム・リン)。
□ トキシック(toxic) ・・ 毒性がある、という形容詞。名詞(毒性)は「toxicity」で、「トキスィスィティー」。はあ言いにくい。
□ 特発性間質性肺炎(IIPs)
この中には7つの疾患が含まれる。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎 14-17%
? COP ・・ 特発性器質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
注意すべきは、これらが病理学的分類(外科的生検)に基づいてなされているという点。実際臨床の場でどれもこれも生検というわけにはいかない。というかむしろ生検まで行っている症例は少ないのではないか。
※ 外科的生検 ・・ 胸腔鏡、あるいは開胸による生検を最低2箇所から行う。 リスクがある程度あるので、よほど必要に迫られた場合に限るだろう。
間質性肺炎の診断そのものは比較的容易だ。胸部のラ音・労作時息切れがあれば胸部CT(できればHRCT)と採血(KL-6)、スパイログラムで、ほぼ非・侵襲的に行われるのが現状。
※ 採血の活動性はLDH , CRP , KL-6 , SP-D , SP-Aなどで。動脈血ガスの分圧較差も参考になる。
間質性肺炎と診断して、僕らが次に知りたいのは・・
? 2次的なものではないかという疑問(リウマチなど膠原病、薬剤性)
※ 抗核抗体160倍以上は膠原病を疑う
? 活動性は高いのか
? ステロイドが効くタイプなのかどうか
医師の関心はこれらに集約される。このうちステロイドが効くかどうか・・の点が最も関心が持たれる。それを調べるために生検を行うようなものだが、実際病勢そのものが進行して生検どころではないとき、または患者が生検を拒否したりなどで病型が不明のときでは、試験的にステロイド(あるいは免疫抑制剤)を投与、ということもある。これでもしステロイドが劇的に効けばNSIPかCOPだったんだろう、という後付け解釈をしたりする。だが頻度の最も高いIPFではステロイドは効果が期待できない(緩解にまで至れるのはごくわずか)という意見が支配的だ。この<ごくわずか>とか<期待できない>とかいう講演会の表現には僕らヤキモキさせられている。というわけで、ステロイドの?副作用、と?証明されていない延命効果が、いまだにIPFにステロイドがためらわれる理由なのだ。
欧米では抗線維化薬の開発が進められ、日本ではピルフェニドンが軽症例の悪化を抑制(急性増悪を有意に減らした)することがわかってきている(臨床試験?相まできており、これをパスすれば認可が目前)。重症例にも有効な新しい薬剤の登場を期待したい。
ではもう1度関心を持ちながら、各分類について掘り下げていこう。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
予後不良で2.5-5年の予後。1-3割に肺癌合併。
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎14-17%
進行は比較的緩やかで、亜急性〜慢性の経過をとる。そのため予後もIPFに比べると比較的良好。しかし病理学的な定義があいまいで、その概念そのものに疑問が持たれている。
? COP ・・ 特発性気質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
亜急性の進行。一部は急性。ふつうの肺炎と誤診されない限り、予後はよい。が、再燃を繰り返すことがある。
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
この2つについて・・禁煙だけで軽快することありステロイド反応性で予後良好。平均50歳前後で高齢者ではない。
相違点としては
・ DIPで症状が強く、低酸素血症例が多い。
・ 胞隔炎はDIPで著明で均一であるが、RB-ILDではbronchiolocentric distributionである。
・ DIPのほうが予後が悪い。
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
ステロイド反応性で予後良好だが死亡例ありと、症例がまれなせいか、あまりよく分かってないところが多い。
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
死亡率は60%以上で多くは半年以内に死亡する。
いろんな用語が出てきて混乱するが、UIPという用語もある。これは何か。
UIP:Usual Interstitial Pneumoniaつまり通常型間質性肺炎。
IPFの典型的な組織像の名称である。
内容は、胸膜直下、小葉辺縁部より始まる線維化であり、?正常肺〜早期線維化巣〜終末像(蜂巣肺)まですべての時系列病変が含まれた、不均一で混沌としたしかし特徴的な病変である。?線維芽細胞巣の存在、?炎症細胞に乏しい、の所見も。
※ 直前暗記(IPFは知ってるものとして、あと6つ暗記)
< 立派最強ロボコップ でっぷりA級 人気なし >
・ 立派 ・・ LIP:リンパ球性間質性肺炎
・ 最強ロボ ・・ RB-ILD:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患
・ コップ ・・ COP:特発性器質化肺炎
・ でっぷり ・・ DIP:剥離性間質性肺炎
・ A級 ・・ AIP:急性間質性肺炎
・ 人気なし→ひとけなし ・・ NSIP:非特異性間質性肺炎
<特殊な疾患>
○ 家族性間質性肺炎 ・・ サーファクタント蛋白C(SP-C)遺伝子異常によるもの。
○ Hermansky-Padlak症候群(HPS) ・・ これの間質性肺炎の特徴は、30-40歳代で発症、治療抵抗性で6-7年で死亡。病理学的には基本的にUIPだが、独特な所見としては?型肺胞上皮細胞の著明な泡沫状の腫大、線維化病変内の細胞質に鉄染色陰性の黄色顆粒を持つマクロファージがみられる。
<治療>
? 従来治療:ステロイド ・・ 組織学的IPFでは20-30%で部分的あるいは一過性の有効性が示されるが、病勢維持・完全緩解までもっていけるのはごくわずか。
? 新規の治療:分子生物学的製剤
・ pirfenidone ・・ IPF由来の肺線維芽細胞の増殖やTGF-βによるコラーゲン合成、細胞外基質産生を減少させ、またTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を減少させる。日本では2000年本剤VSプラセボの治験が行われ、内服側のほうで急性増悪頻度の減少を有意に認めた。副作用は4割強に光線過敏症、3割に消化器症状をみた程度で致命的なものはなし。現在第?相試験実施中であり認可が期待されている。
※ TGF-β ・・ 線維芽細胞の遊走能や分化、コラーゲン合成能を促進。
・ TGF-β抑制薬(臨床応用未定)
・ IFN-γ ・・ 活性化Th1細胞より産生される細胞性免疫の活性化因子。線維化を抑制する。北米では効果が確認されており(死亡率低下)注目されている。
・ TNF-α拮抗薬 ・・ TNF-αは線維化を進行させるので。リウマチ・クローン病では応用中で肺線維症への有用性が期待。
・ 血管新生阻害薬 ・・ 血管新生が肺の線維化を促進させることが分かったので。
・ アンギオテンシン変換酵素阻害薬 ・・ IPF患者においてアンギオテンシノーゲンは線維化を進行させるので効果が期待。
・ N-アセチルシステイン(NAC) ・・ IPF患者では抗酸化機構が低下。このとき低下しているGSH(還元型グルタチオン)の前駆体がNAC。吸入の臨床試験中。
・ エンドセリン受容体拮抗薬 ・・ エンドセリンのうち主に肺に存在するET-1はIPF患者で増加。肺高血圧の治療に有効性が示された。
□ 吐血 ・・ 吐くと同時に血が出る。上部消化管(食道〜胃〜十二指腸)出血を疑う。最多は胃・十二指腸潰瘍。
□ 外様 ・・ 医師の間で使われる用語。よその大学出身の医局員。帝大と地方大学との関係を皮肉った表現ともいえる。
□ トランサミン ・・ 止血剤の1つ。凝固系の活性化により止血を図る。しかし凝固系そのものの活性化する病態、例えば心房細動やDICには使用してはいけない。
□ 鳥肌胃炎 ・・ 胃カメラで、胃の胃角部〜前庭部にかけてみられるブツブツ状に密集した小顆粒状隆起。生検でリンパ濾胞の増生を認める。
ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う変化(粘膜内にリンパ球が浸潤しリンパ濾胞を形成したもの)と考えられており、若年(20-30歳代で男<女)の胃癌発症のリスクとして注目されている。ピロリが見つかる前は<生理的な変化>で済まされていた。
なおピロリ陽性でも鳥肌胃炎あるとないとでは60倍以上の胃癌リスクがあるという(もちろんあるほうがリスク高い)。日本での約10年の調査(内訳は25名)では、鳥肌肺炎+胃癌と診断された人は平均年齢33.3歳、女性に多く胃癌発生は胃体部に多い、1人を除いて未分化癌(予後悪い)。鳥肌肺炎はいわば胃癌のハイリスクであり、若年で上腹部症状が2週間以上あれば、表面観察が困難なバリウムではなく胃カメラのほうが勧められ、鳥肌あれば生検を、というのが望ましい。
※ 胃炎を認めた際に、胃癌のハイリスクとして意識しておく所見
? 胃粘膜萎縮・腸上皮化生 ・・ 1992年のCorreaの仮説に基づく。これによると胃癌というのは以下のプロセスで発生する。まず正常粘膜→表層性胃炎→萎縮性胃炎(低〜無酸状態)→腸上皮化生→(ピロリによって発癌物質である二トロソ化合物を産生)→dysplasia→胃癌。これによると胃粘膜萎縮・腸上皮化生は胃癌の前段階である可能性がある。
※ なので胃粘膜萎縮が加齢によるものだとか、腸上皮化生が胃炎の終末像である、という古い考え方は慎まなければならない。
? 雛壁(すうへき)肥大型胃炎 ・・ 悪性ならば胃癌・悪性リンパ腫、非悪性では過形成の結果生じたもの。
? 鳥肌胃炎
□ トレッドミル ・・ ベルトコンベア式の機械にのって歩いてもらう検査。次第に急勾配、速くなる。前後・また運動中のST・不整脈の有無などで評価。狭心症を見つけるための「定量的」スクリーニング検査。
□ トロポニンT ・・ 急性心筋梗塞を疑った際に検査する項目。由来は心臓の筋肉である心筋。よって心筋炎でも上がるし、
多臓器不全でも上がる。心筋梗塞では発症後4時間位から上昇するので、極めて早期の心筋梗塞では上昇しない点に注意。また心筋梗塞発症後1ヶ月間は陽性が続くので、今陽性だからといって今起こした発作だとまでは言い切れない。
□ トロンビン末 ・・ 凝固剤の粉末。目的は止血。胃カメラで生検・クリッピングなど処置後に使用されたり、消化管出血の
場合に胃チューブから入れたりする。
□ トロンボテスト ・・ 血液の凝固状態を知る検査の1つ。ワーファリン(血栓溶解薬)内服中の患者は定期的に測定。現在では「プロトロンビン時間」での測定が望ましい。
□ 頓服=頓用 ・・ 症状の出現に応じて使用してもらう薬。患者の判断で、ということになる。喘息のスプレー、めまい止め、二トロペン、安定剤などもこれにあたる。
□ 動悸 ・・ 胸がドキドキする、と感じること。不整脈や低血糖発作でおなじみ。しかし血圧の上昇時もこれを感じることがある。もし動悸を感じるならせめて手首の脈を確かめて、ホントに速いのか、脈は不規則なのかを確認するのが望ましい。
□ 動物実験室 ・・ マウスなどの小動物を用いて大学院生・助手たちが実験する無菌の部屋。たまに誰かがウイルスを不意に持ち込んでしまい汚染されて、一時閉鎖に追いやられるケースもあり。
□ 動脈血ガス分析=血ガス=動血 ・・ 腕か股の拍動する動脈から採取した血液で測定する、動脈中の酸素・二酸化炭素などのデータ。これにより酸素の必要量などが決まる。
■ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版
やっと出来上がった、動脈硬化治療に関する日本独自のガイドライン。それまでは2002年の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が重宝されていたが日本の大規模研究が組みこめてなかった。
これに伴い高脂血症が<脂質異常症>と呼び名が変わり、各項目にエビデンスレベルとしての信頼度がつけられ、基準・目標の表から総コレステロールを略し、LDL-Cが取って替わるようになった。
さらにnon-HDL-C(TCからHDL-Cを引き算したもの)という指標が唱えられ、これはTGに関するリポ蛋白を表現するもの。
http://www.mikinaika.com/advace/coresterol.html
□ 動脈瘤(aneurysm) ・・ 脳血管や大血管などにできうる、動脈の部分的な拡張。拡大・破裂を防ぐには血圧管理が重要。
□ ドクター・バンク ・・ ドクターの仲介屋。ドクターからでなく、ドクター出向先の病院から一定期間利益を得る。急成長企業の1つ。
□ ドブタミン=dobutamine ・・ カテコラミン製剤の1つ。心臓の収縮力を増加→心拍出量増加→血圧上昇させる作用。肺血管拡張作用もあり肺うっ血時に最適。
□ ドレーン ・・ 体にたまった液・膿などを外にくみ出すトンネル。太いほど詰まりにくくて有利。ドレーンとはその「管」を指し、入っている状況を「ドレナージ」という。映画『追跡者』のクライマックス、ウェズリースナイプスが胸を撃たれ血胸の状態となりドレーンが入れられているが、これを悪役が抜いてしまう場面がある。あのあと入れ直しだな(苦笑)。
当直に必要な物品。その病院の食事が食えたもんでなければ各自用意。泊まりなら朝ごはんも準備が必要。あと風呂の確認とシャンプーなどの用具。マンガ、DVDソフト、本、歯磨き道具、携帯電話充電器、パソコン、論文、宿題の準備など。
■ 糖尿病(DM) ・
・ インスリン作用不足による慢性高血糖(→口渇・多飲多尿・倦怠感などの症状)を特徴とし、長期に渡ると血管系・神経系・眼の合併症を引き起こす。
・ 合併症は3大合併症(網膜・腎・神経)+血管系(細小〜大血管まで)など。
? 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
? 75gOGTTで2時間値200mg/dl以上
? 随時血糖値200mg/dl以上
のいずれかが確認されれば糖尿病と診断。
タイプとしては?型と?型のほかに、その他の型、妊娠糖尿病の4群に分けられる。
○ ?型 ・・ おもに自己免疫を基礎にした(HLAなどの遺伝因子に何らかの因子が追加)、ランゲルハンスβ細胞(本来インスリンを合成・分泌)の破壊・消失によりインスリン作用低下。小児〜思春期多い。自己抗体GAD、IAA、ICA、IA-2の陽性率高し。治療はインスリン注射で基礎分泌(中間型あるいは持続型)と追加分泌(速攻型あるいは超速効型)を補う。
○ ?型 ・・ インスリン分泌低下+インスリン抵抗性+環境因子(食いすぎや運動不足、ストレス)+加齢による。薬物治療開始の目安はHbA1c 6.5%以上とされているがリスク因子(高血圧など)があるならそれより以下でも開始すべき。内服不十分のときインスリンに切り替えるが、それによって糖毒性が解除されると再び内服に戻せる可能性はある。
○ 妊娠糖尿病 ・・ 内服は使用しない。食事・運動療法でもってしてもFBS100以上、2時間値120以上なら強化インスリン療法で管理。
・ 食事指導の内容としては、ゆっくりよくかんで腹八分目、朝昼晩と規則正しく、種類自体は多めで食物繊維重視、脂肪は控えめ、と説明。
・ 運動療法にはインスリン抵抗性改善効果もあるが、ASOや狭心症が疑われれば制限せざるをえない。
・ 微量アルブミン尿の時期以降の進展阻止のため、ACEIやARBは有効(DMの降圧薬の第一選択でもある)。
■ 糖尿病性腎症
糖尿病の3-4割に合併する。腎機能低下、蛋白尿という形で現われてくる。前者は糸球体硬化+尿細管間質の線維化により、後者は糸球体基底膜肥厚によるバリアー破たんによる。
糖尿病発症2年までは機能的変化(GFR↑、腎サイズ↑、可逆性アルブミン尿)のみだが、2-5年たつと構造的変化(糸球体基底膜肥厚+メサンギウム拡大)をきたす。この時期から蛋白尿が顕著=顕性腎症・・ここまでくるとpoint of no return・・となる10-20年(←DM発症から)までを潜在性腎症といい、微量アルブミン尿が検出され、高血圧出現や血糖コントロール不良時期となる。
特にこの<顕性腎症>段階での治療の重要性が指摘されている。
治療は血糖・血圧コントロールに蛋白・塩分制限(場合により水分・カリウム・リン)。
□ トキシック(toxic) ・・ 毒性がある、という形容詞。名詞(毒性)は「toxicity」で、「トキスィスィティー」。はあ言いにくい。
□ 特発性間質性肺炎(IIPs)
この中には7つの疾患が含まれる。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎 14-17%
? COP ・・ 特発性器質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
注意すべきは、これらが病理学的分類(外科的生検)に基づいてなされているという点。実際臨床の場でどれもこれも生検というわけにはいかない。というかむしろ生検まで行っている症例は少ないのではないか。
※ 外科的生検 ・・ 胸腔鏡、あるいは開胸による生検を最低2箇所から行う。 リスクがある程度あるので、よほど必要に迫られた場合に限るだろう。
間質性肺炎の診断そのものは比較的容易だ。胸部のラ音・労作時息切れがあれば胸部CT(できればHRCT)と採血(KL-6)、スパイログラムで、ほぼ非・侵襲的に行われるのが現状。
※ 採血の活動性はLDH , CRP , KL-6 , SP-D , SP-Aなどで。動脈血ガスの分圧較差も参考になる。
間質性肺炎と診断して、僕らが次に知りたいのは・・
? 2次的なものではないかという疑問(リウマチなど膠原病、薬剤性)
※ 抗核抗体160倍以上は膠原病を疑う
? 活動性は高いのか
? ステロイドが効くタイプなのかどうか
医師の関心はこれらに集約される。このうちステロイドが効くかどうか・・の点が最も関心が持たれる。それを調べるために生検を行うようなものだが、実際病勢そのものが進行して生検どころではないとき、または患者が生検を拒否したりなどで病型が不明のときでは、試験的にステロイド(あるいは免疫抑制剤)を投与、ということもある。これでもしステロイドが劇的に効けばNSIPかCOPだったんだろう、という後付け解釈をしたりする。だが頻度の最も高いIPFではステロイドは効果が期待できない(緩解にまで至れるのはごくわずか)という意見が支配的だ。この<ごくわずか>とか<期待できない>とかいう講演会の表現には僕らヤキモキさせられている。というわけで、ステロイドの?副作用、と?証明されていない延命効果が、いまだにIPFにステロイドがためらわれる理由なのだ。
欧米では抗線維化薬の開発が進められ、日本ではピルフェニドンが軽症例の悪化を抑制(急性増悪を有意に減らした)することがわかってきている(臨床試験?相まできており、これをパスすれば認可が目前)。重症例にも有効な新しい薬剤の登場を期待したい。
ではもう1度関心を持ちながら、各分類について掘り下げていこう。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
予後不良で2.5-5年の予後。1-3割に肺癌合併。
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎14-17%
進行は比較的緩やかで、亜急性〜慢性の経過をとる。そのため予後もIPFに比べると比較的良好。しかし病理学的な定義があいまいで、その概念そのものに疑問が持たれている。
? COP ・・ 特発性気質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
亜急性の進行。一部は急性。ふつうの肺炎と誤診されない限り、予後はよい。が、再燃を繰り返すことがある。
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
この2つについて・・禁煙だけで軽快することありステロイド反応性で予後良好。平均50歳前後で高齢者ではない。
相違点としては
・ DIPで症状が強く、低酸素血症例が多い。
・ 胞隔炎はDIPで著明で均一であるが、RB-ILDではbronchiolocentric distributionである。
・ DIPのほうが予後が悪い。
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
ステロイド反応性で予後良好だが死亡例ありと、症例がまれなせいか、あまりよく分かってないところが多い。
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
死亡率は60%以上で多くは半年以内に死亡する。
いろんな用語が出てきて混乱するが、UIPという用語もある。これは何か。
UIP:Usual Interstitial Pneumoniaつまり通常型間質性肺炎。
IPFの典型的な組織像の名称である。
内容は、胸膜直下、小葉辺縁部より始まる線維化であり、?正常肺〜早期線維化巣〜終末像(蜂巣肺)まですべての時系列病変が含まれた、不均一で混沌としたしかし特徴的な病変である。?線維芽細胞巣の存在、?炎症細胞に乏しい、の所見も。
※ 直前暗記(IPFは知ってるものとして、あと6つ暗記)
< 立派最強ロボコップ でっぷりA級 人気なし >
・ 立派 ・・ LIP:リンパ球性間質性肺炎
・ 最強ロボ ・・ RB-ILD:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患
・ コップ ・・ COP:特発性器質化肺炎
・ でっぷり ・・ DIP:剥離性間質性肺炎
・ A級 ・・ AIP:急性間質性肺炎
・ 人気なし→ひとけなし ・・ NSIP:非特異性間質性肺炎
<特殊な疾患>
○ 家族性間質性肺炎 ・・ サーファクタント蛋白C(SP-C)遺伝子異常によるもの。
○ Hermansky-Padlak症候群(HPS) ・・ これの間質性肺炎の特徴は、30-40歳代で発症、治療抵抗性で6-7年で死亡。病理学的には基本的にUIPだが、独特な所見としては?型肺胞上皮細胞の著明な泡沫状の腫大、線維化病変内の細胞質に鉄染色陰性の黄色顆粒を持つマクロファージがみられる。
<治療>
? 従来治療:ステロイド ・・ 組織学的IPFでは20-30%で部分的あるいは一過性の有効性が示されるが、病勢維持・完全緩解までもっていけるのはごくわずか。
? 新規の治療:分子生物学的製剤
・ pirfenidone ・・ IPF由来の肺線維芽細胞の増殖やTGF-βによるコラーゲン合成、細胞外基質産生を減少させ、またTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を減少させる。日本では2000年本剤VSプラセボの治験が行われ、内服側のほうで急性増悪頻度の減少を有意に認めた。副作用は4割強に光線過敏症、3割に消化器症状をみた程度で致命的なものはなし。現在第?相試験実施中であり認可が期待されている。
※ TGF-β ・・ 線維芽細胞の遊走能や分化、コラーゲン合成能を促進。
・ TGF-β抑制薬(臨床応用未定)
・ IFN-γ ・・ 活性化Th1細胞より産生される細胞性免疫の活性化因子。線維化を抑制する。北米では効果が確認されており(死亡率低下)注目されている。
・ TNF-α拮抗薬 ・・ TNF-αは線維化を進行させるので。リウマチ・クローン病では応用中で肺線維症への有用性が期待。
・ 血管新生阻害薬 ・・ 血管新生が肺の線維化を促進させることが分かったので。
・ アンギオテンシン変換酵素阻害薬 ・・ IPF患者においてアンギオテンシノーゲンは線維化を進行させるので効果が期待。
・ N-アセチルシステイン(NAC) ・・ IPF患者では抗酸化機構が低下。このとき低下しているGSH(還元型グルタチオン)の前駆体がNAC。吸入の臨床試験中。
・ エンドセリン受容体拮抗薬 ・・ エンドセリンのうち主に肺に存在するET-1はIPF患者で増加。肺高血圧の治療に有効性が示された。
□ 吐血 ・・ 吐くと同時に血が出る。上部消化管(食道〜胃〜十二指腸)出血を疑う。最多は胃・十二指腸潰瘍。
□ 外様 ・・ 医師の間で使われる用語。よその大学出身の医局員。帝大と地方大学との関係を皮肉った表現ともいえる。
□ トランサミン ・・ 止血剤の1つ。凝固系の活性化により止血を図る。しかし凝固系そのものの活性化する病態、例えば心房細動やDICには使用してはいけない。
□ 鳥肌胃炎 ・・ 胃カメラで、胃の胃角部〜前庭部にかけてみられるブツブツ状に密集した小顆粒状隆起。生検でリンパ濾胞の増生を認める。
ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う変化(粘膜内にリンパ球が浸潤しリンパ濾胞を形成したもの)と考えられており、若年(20-30歳代で男<女)の胃癌発症のリスクとして注目されている。ピロリが見つかる前は<生理的な変化>で済まされていた。
なおピロリ陽性でも鳥肌胃炎あるとないとでは60倍以上の胃癌リスクがあるという(もちろんあるほうがリスク高い)。日本での約10年の調査(内訳は25名)では、鳥肌肺炎+胃癌と診断された人は平均年齢33.3歳、女性に多く胃癌発生は胃体部に多い、1人を除いて未分化癌(予後悪い)。鳥肌肺炎はいわば胃癌のハイリスクであり、若年で上腹部症状が2週間以上あれば、表面観察が困難なバリウムではなく胃カメラのほうが勧められ、鳥肌あれば生検を、というのが望ましい。
※ 胃炎を認めた際に、胃癌のハイリスクとして意識しておく所見
? 胃粘膜萎縮・腸上皮化生 ・・ 1992年のCorreaの仮説に基づく。これによると胃癌というのは以下のプロセスで発生する。まず正常粘膜→表層性胃炎→萎縮性胃炎(低〜無酸状態)→腸上皮化生→(ピロリによって発癌物質である二トロソ化合物を産生)→dysplasia→胃癌。これによると胃粘膜萎縮・腸上皮化生は胃癌の前段階である可能性がある。
※ なので胃粘膜萎縮が加齢によるものだとか、腸上皮化生が胃炎の終末像である、という古い考え方は慎まなければならない。
? 雛壁(すうへき)肥大型胃炎 ・・ 悪性ならば胃癌・悪性リンパ腫、非悪性では過形成の結果生じたもの。
? 鳥肌胃炎
□ トレッドミル ・・ ベルトコンベア式の機械にのって歩いてもらう検査。次第に急勾配、速くなる。前後・また運動中のST・不整脈の有無などで評価。狭心症を見つけるための「定量的」スクリーニング検査。
□ トロポニンT ・・ 急性心筋梗塞を疑った際に検査する項目。由来は心臓の筋肉である心筋。よって心筋炎でも上がるし、
多臓器不全でも上がる。心筋梗塞では発症後4時間位から上昇するので、極めて早期の心筋梗塞では上昇しない点に注意。また心筋梗塞発症後1ヶ月間は陽性が続くので、今陽性だからといって今起こした発作だとまでは言い切れない。
□ トロンビン末 ・・ 凝固剤の粉末。目的は止血。胃カメラで生検・クリッピングなど処置後に使用されたり、消化管出血の
場合に胃チューブから入れたりする。
□ トロンボテスト ・・ 血液の凝固状態を知る検査の1つ。ワーファリン(血栓溶解薬)内服中の患者は定期的に測定。現在では「プロトロンビン時間」での測定が望ましい。
□ 頓服=頓用 ・・ 症状の出現に応じて使用してもらう薬。患者の判断で、ということになる。喘息のスプレー、めまい止め、二トロペン、安定剤などもこれにあたる。
□ 動悸 ・・ 胸がドキドキする、と感じること。不整脈や低血糖発作でおなじみ。しかし血圧の上昇時もこれを感じることがある。もし動悸を感じるならせめて手首の脈を確かめて、ホントに速いのか、脈は不規則なのかを確認するのが望ましい。
□ 動物実験室 ・・ マウスなどの小動物を用いて大学院生・助手たちが実験する無菌の部屋。たまに誰かがウイルスを不意に持ち込んでしまい汚染されて、一時閉鎖に追いやられるケースもあり。
□ 動脈血ガス分析=血ガス=動血 ・・ 腕か股の拍動する動脈から採取した血液で測定する、動脈中の酸素・二酸化炭素などのデータ。これにより酸素の必要量などが決まる。
■ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版
やっと出来上がった、動脈硬化治療に関する日本独自のガイドライン。それまでは2002年の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が重宝されていたが日本の大規模研究が組みこめてなかった。
これに伴い高脂血症が<脂質異常症>と呼び名が変わり、各項目にエビデンスレベルとしての信頼度がつけられ、基準・目標の表から総コレステロールを略し、LDL-Cが取って替わるようになった。
さらにnon-HDL-C(TCからHDL-Cを引き算したもの)という指標が唱えられ、これはTGに関するリポ蛋白を表現するもの。
http://www.mikinaika.com/advace/coresterol.html
□ 動脈瘤(aneurysm) ・・ 脳血管や大血管などにできうる、動脈の部分的な拡張。拡大・破裂を防ぐには血圧管理が重要。
□ ドクター・バンク ・・ ドクターの仲介屋。ドクターからでなく、ドクター出向先の病院から一定期間利益を得る。急成長企業の1つ。
□ ドブタミン=dobutamine ・・ カテコラミン製剤の1つ。心臓の収縮力を増加→心拍出量増加→血圧上昇させる作用。肺血管拡張作用もあり肺うっ血時に最適。
□ ドレーン ・・ 体にたまった液・膿などを外にくみ出すトンネル。太いほど詰まりにくくて有利。ドレーンとはその「管」を指し、入っている状況を「ドレナージ」という。映画『追跡者』のクライマックス、ウェズリースナイプスが胸を撃たれ血胸の状態となりドレーンが入れられているが、これを悪役が抜いてしまう場面がある。あのあと入れ直しだな(苦笑)。
サーガマニュアル2007秋 な に ぬ ね の
2007年9月17日□ ナート ・・ 糸で傷口を縫うこと。内科医でも簡単なのはやれるべき。
□ ナーバス ・・ 神経質。
□ 内科認定医 ・・ 日本内科学会が認定する資格。教育病院をある程度研修すれば受験資格が得られる。資格を得ても定期的な学会などに出席しないと単位不足で除名される。試験の合格率は9割。試験の前に自分が受け持った患者の病歴サマリーが必要。サマリーを記載する用紙を無くしてしまうと再発行はされず受験資格を失うので注意。認定更新(25単位必要。学会総会に出ればそれだけで15単位。セルフビデオ問題(有料)・セルフトレーニング問題(有料)を6割以上正解で各5単位というのが泣かせる企画)を怠れば、5年後には学会会場の中での拍手とともに、自動的に資格を失う。なお認定更新に5千円かかる。
□ 内頸動脈 ・・ 死亡を確認するときによく指で触れる首の動脈。職場では「ないけい」と略される。内側に「内頸静脈」がある。どっちも「ないけい」やないけい?頸部の両側に聴診器を当てて、雑音があれば内頸動脈の狭窄を疑う。
□ 内職 ・・ 病棟の夜、患者回診も終わってカルテ書き・書類記入などの雑用に追われること。皮肉っぽい意味で会話に出る。
□ 内腸骨静脈 ・・ 股の両側にある静脈。手指を当てて拍動しているのが「内腸骨動脈」。その内側にある。左右の内腸骨静脈は、骨盤からの「外腸骨静脈」と合流する。
□ 内部告発 ・・ 勤務中である職員からマスコミへの暴露。そこにまだ勤務していることが条件。常日頃から職場環境への不満がある者だろう。民間病院では生活の糧として職場を離れられないスタッフが多いせいか、比較的少ないように思う。
□ なきにしもあらず ・・ 医者がよく学会やムンテラで使用する言葉。
□ 日勤(帯) ・・ ナースの通常の業務時間。朝9−夕方5時くらいが建前だが、とてもそれでは終わらないことが多く、早朝出勤、遅帰りを強いられる。
□ ニトロペン ・・ 狭心症に対して使用する頓服薬の亜硝酸剤。狭心症なら5分以内に軽快するはず。ただし、自然軽快かもしれず。不安定狭心症だと効果が不確実になってくる。連用による血圧低下に注意。飲み込むのではなく、舌下投与でゆっくり溶かす。患者な間では「ニトロ」と略される。
□ 二ボー ・・ 腹部レントゲンで、腸閉塞を示唆する所見。拡張した腸に多量の消化液とガスが貯まった結果、重力でこう見える。
□ 乳頭 ・・ (ここでは十二指腸の場合)十二指腸下行脚の途中にあるデベソ様の部分。穴があり、胆道・膵管へとつながる。胆石を破砕したあと十二指腸に出てこない場合は、乳頭切開(電気で焼き切る)によって排出させたりする。
□ ニューモシスチス・カリニ=Pneumocystis carinii ・・ 免疫不全状態で、肺炎(カリニ肺炎)を起こす。この肺炎はPCP=Pneumocystis carinii pneumoniaと呼ばれていたが、正式にはPneumocystis jiroveci pneumonia、またはニューモシスチス肺炎と呼ばれるようになった。なおカリニは古い教科書では原虫という分類だが現在では真菌かそれに近い微生物(曖昧だなあ・・)ということになっている。確定診断は気管支鏡でBAL(気管支肺胞洗浄)かTBLB(経気管支肺生検)を行い、細胞診あるいは病理組織検査で確定診断する。病院内に病理部があればすぐに診断につながるが、そうでないと1週間くらい待たされる。キットですぐに診断できるPCR法は保険適応外だが確定診断のためにはする価値がある。喀痰・BAL液からの陽性率は高く、血漿でも半数の確率で陽性との報告がある。臨床経過はAIDSがない場合は短期間に症状(発熱・呼吸困難)・肺病変(CTで肺門中心から始まる両側性スリガラス陰影→進行→浸潤影)が出現、AIDSある場合は数週間を経て肺病変が顕在化。AIDSのあるほうが臨床像は複雑となる。白血球は通常増加し、なかでも多形白血球の増加が著明だが、白血球減少例は予後不良。半数の患者でリンパ球が減少。病状進行の指標としてKL-6、βーDグルカンは有用。
□ ニューモシスチス肺炎 ・・ (前項目参照)
□ ニューモビリア=pneumobilia=胆道気腫症 ・・ 腹部CTあるいは腹部エコー検査の際に、肝臓にときにみられるちっちゃな空気像。胆管内のガスが映ったもの。どちらかといえば左葉に多い。通常は、既往の乳頭切開術で腸管の空気が迷い込んだもの。あるいはオペ後。無害。
□ 尿蛋白 ・・ 尿に出る蛋白。通常は尿検査での項目をさす。尿検査での感度以上に蛋白が出ると陽性となる。激しい運動をしたあとにも(代謝が亢進するので)陽性になることがある。
□ 尿糖 ・・ 尿に出る糖。通常は尿検査での項目をさす。老人では血糖が正常でも尿糖だけ検出されやすくなる。
□ 尿閉 ・・ 前立腺肥大・神経因性膀胱などのために、尿で膀胱がパンパンなのに出てこない状態。夜間救急に来て、バルーンで導尿せざるをえないことがある。
□ 尿路感染(UTI) ・・ 腎臓〜膀胱にかけていずれかの炎症。細菌感染が多い。女性の膀胱炎が大半で、排尿時の痛み、頻尿がみられる。病棟では尿道カテーテル留置者。以前は膀胱洗浄
がよく行われていたが、最近では疑問視(感染が上部まで拡がるおそれ)する声が多い。
□ 尿細管壊死 ・・ 腎臓の中の微細な管の壊死。肉眼ではもちろん見えない。急激な腎不全を引き起こした病態。
■ 認知症 ・・ 脳の器質的障害により知能が不可逆的に低下した状態。大きく2つ、アルツハイマー病(原因不明の脳細胞の急速脱落→脳の委縮・変性)と脳血管性認知症(脳の動脈硬化で部分的にあちこち虚血、まだら状に障害。メタボによる背景あるのが常)に分類。
□ ネーザル=ナザール=N ・・ 経鼻酸素吸入。1リットル刻み。必要により1リットルずつ増量。酸素吸入の限界は10-15リットルだが鼻からの場合はせいぜい3-4リットルまで。それ以上はマスクに切り替える。なお二酸化炭素が貯留しやすい肺気腫などの病態では0.5リットルずつで調整しないと容易にナルコーシスを招く。
□ 寝当直(ねとうちょく) ・・ 夜間にあまり呼ばれない病院当直業務。実は夜間帯ナースの配慮によるところが大きい。ただし年末・GWの当直では期待できない。
□ 粘液栓 ・・ ネバい痰が気管支(たいていは分枝)を塞いだ状態。そこから先は空気の行き来がないので肺炎を起こしやすい。CTで直接みかけるものを特別に「mucoid impaction(ムコイド・インパクション)」という。
□ 捻挫・靭帯損傷
◇足関節
・ 通常、内がえし後の足関節痛と腫脹をきたした形で受診する。
・ ほとんどは内がえし(内側への)負荷で足関節外側部の靭帯欠損を引き起こす。ここには3つの靭帯(?前距腓靭帯<底屈位で緊張し背屈位で弛緩する。損傷をもっとも受けやすい>、?踵腓靭帯、?後距腓靭帯)が存在する。この3つを総称して外側側副靭帯という。
・ 徒手検査法としてADT(前方引き出しテスト。前距腓靭帯損傷で陽性)とTTT(内がえしテスト。前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷で陽性)を行う。
・ 外側側副靭帯損傷はグレードで3つに分けられ、グレード?:前距腓靭帯の部分断裂+踵腓靭帯は断裂なし・・・ADT(-) , TTT(-)、グレード?:前距腓靭帯の完全断裂+踵腓靭帯は断裂なし〜部分断裂・・・ADT(+) , TTT(-)、グレード?(不安定型):前距腓靭帯・踵腓靭帯ともに完全断裂・・・ADT(+) , TTT(+)。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定→松葉杖。グレード?(不安定型)では外科的修復を選ぶこともある。
◇膝関節
・ 膝関節は内側を内側側副靭帯(MCL)が支え、外側を外側側副靭帯(LCL)と外側複合体(弓状靭帯など)と関節包が支えている。前十字靭帯(ACL)は徑骨の前方移動を制御、後十字靭帯(PCL)は徑骨の後方移動を制御。
ACLとPCLは関節内靭帯であるため損傷されれば関節内血腫を認める。ただし血腫はMCL単独でもみられることがある。
・ ACL損傷の多くは膝関節の非接触外傷により起こる。一方PCL損傷の多くは膝下の下腿部を直接打撲することによる(膝下に外傷あるとき強く疑う)。MCL損傷では膝内側に圧痛あること多い。
・ 徒手検査法としては、ACL損傷:Lachmanテスト、N-testなど、PCL損傷:後方落ち込み、後方引き出しテストなど。MCL・LCL損傷は下腿内外反テストで評価する。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定。ACL・MCL損傷では膝軽度屈曲位固定、PCL損傷では膝伸展位固定。
□ 年俸制 ・・ 1年間の給与を書面で契約、これにしたがって給与が振り込まれる。大学病院では存在しない。12分割で通常支給されるが、この場合当然ボーナス名目の支給はない。ただしボーナス前に途中退職、という残念なアクシデントは避けられる。
■ 脳血管性認知症 ・・ 脳の動脈硬化による認知症。メタボが背景にあり急激な経過をとる。人格水準は保たれるがイライラ・不安・怒りっぽい特徴あり(アルツハイマーは天然ボケっぽい)。
□ 脳梗塞
脳の血管がつまった病気。血栓が徐々に出来て詰まったか、よそから血栓がきていきなり詰まったか。
確定診断にあたり、問診も必要。たとえば<発症時刻、昼か夜間か><何時間続いてるか><突然か徐々にか><TIAらしき前触れ症状があったか><不整脈を言われていたか>など。脳外科にコンサルトする前に情報を収集しておく必要がある。また脳梗塞と間違えそうな疾患(髄膜炎、脳炎、外傷、てんかん、低血糖、高血糖による非ケトン性昏睡、肝硬変、低ナトリウム、薬物中毒など)も除外しておくべき。初期のCTでは脳出血がないかどうかのため。梗塞はあとで出現する場合もある。なおCTでは脳実質ばかり見がちだが脳幹部の観察も忘れずに。前回の写真があれば取り寄せる。
大きくは?脳血栓と?脳塞栓に分けられる。
?として「TIA」という脳梗塞なりかけ状態があるが、ここでは省く。
?は動脈硬化で脳の血管が次第に塞がれる状態。
?は心臓の中か頚動脈に出来ていた血栓が脳まで飛んで、脳の血管を詰まらせた状態。
?のほうは壊死する範囲が広く、後遺症も重大。
脳梗塞の症状はいろいろだが、意識障害、麻痺、構語障害などがある。 脳梗塞の中でも心房細動による心原性脳塞栓が増えてきた。リウマチ熱の減少とともに弁膜症の頻度が減ったものの、それによらない心房細動(NVAF)が増加してきたからである。これはなにも高血圧や糖尿病のあるなしは関係なく、加齢との関係が強い。特に70歳以上で急増する。高齢化が進むので頻度も増すわけだ。前述のように後遺症が重いので、これの予防は重要な課題だ。
超急性期のt-PAの投与で3割に改善をみるというが、実際のところほとんど行われていない(出血への考慮などからだろう)。なので現在の関心ごとは予防(不整脈の治療、内服の抗凝固療法)のほうに集まってきている。
※ t-PAは保険適応が2005 10月認められた。協和発酵のアクチバシン、三菱ウェルファーマのグルドパがそれ。ただし使用をする前に、講演会(年に数回あるらしい)での講習を受けることを学会(日本脳卒中学会)から推奨されている。
※ 大阪では次回H18.9/13(水)大阪大学中之島センターで夜7時からあります。
※ 2004年報告のJ-ACT(Japan Alteplase Clinical Trial)ではt-PAの至適投与量(欧米より少なめ)による副作用などの検討がなされ、結果的には大きな問題はなかった。
□ ノーコール ・・ 当直用語で、夜中に呼び出しが一切なかったという喜びの表現。
(類)ローコール:高脂血症のくすり。
□ 脳室内穿破(のうしつないせんぱ) ・・ 脳出血が脳実質内にとどまらず、脳のさらに深層の空間である脳室(髄液が循環している)の中に吹き出した状態。重篤で手術を検討。血圧はむしろ早急に下げなければならない。
□ 膿胸 ・・ 肺のすぐ外のわずかな隙間、「胸膜腔(ふつうここは無菌)」に膿が貯留した状態。膿とはつまり菌と白血球が戦った成れの果て。これ自体行き場がなくなるので、強い炎症を起こしてくる。閉鎖された空間での炎症なので点滴や内服などの薬は届きにくく、通常は管(トロッカー)を挿入した上での持続排液(ドレナージ)を要する。もし膿を包む被膜が破れて、肺内の気管支と交通を持てば、膿が肺内に吸引されてたちまち広範な肺炎となる恐れがあり(稀なケースではあるが)、そこまでの可能性も想定しておく必要がある。
□ 脳動脈 ・・ 脳を下から見ると、ウイリス動脈輪という、いわば阪神高速の環状線のようなものがありここを動脈血がそれそれと流れている。ここから前大脳動脈2本(豊中方面)、中大脳動脈2本(港区・東大阪方面)、後大脳動脈2本(堺・八尾方面)が分枝する。中大脳動脈はさらに脳の深層で垂直に<穿通枝>を送り出す(ここで詰まったらラクナ梗塞)。前・中・後大脳動脈の行き着く先、インター出口付近が<皮質枝>。皮質枝は皮質だけでなくその内側の髄質にも血液を送る。
■ 脳腸相関 ・・ 中枢神経系と消化器の機能的関連。交感神経と副交感神経、それと脳腸ペプチドで互いの連絡経路をもつ。このメカニズムが病態の中心をなすのがIBS。内臓知覚のプロセス(消化管からのシグナル→脊髄後角ニューロン→脊髄視床路→大脳辺縁系ぼ賦活化し痛み発生。これらをセロトニンニューロンなどが抑制)も解明されており、これが腹痛に抗うつ薬が効くゆえんといわれている。
■ 脳ドック
費用は検査メニューの多さによって4-20万円ほどの差がある。MRI,MRA,超音波を通常含むが、超音波が入ってないことがある。頸動脈病変を見逃す可能性があるので不可欠と考えるべき。
以下の項目を行うことが本ドック達成を意味する(つまりしてないとドックと言うには不十分)。
http://www.snh.or.jp/jsbd/gaido.html
・ 問診・診察(神経学的所見、頸部血管雑音)
・ 一般検査(血液・尿)で背景把握
・ 心電図(心房細動の有無)
・ 頸部血管超音波検査 ・・ 頸動脈狭窄を!
・ 認知機能検査(長谷川式など)←映画「明日の記憶」でおなじみ!
・ MRI(通常のT1/T2だけでなくFLAIR画像も!)・・ 無症候性脳梗塞、脳腫瘍を発見
・ MRA ・・血管狭窄・閉塞、動脈瘤を!
□ 膿瘍 ・・ 汚らしい膿。白血球と菌が争って、その戦争が終わったあとの死骸の集まり。だがそのままだと壊死→感染のもととなり、新たな炎症のもととなる。物理的に除去するのが原則。
□ ノロウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは1-2月)に流行。全年齢で発症しうる。つまり小児だけでなく老人ホームなどでも問題になる。経口(食事では生ガキに注意)・接触感染で潜伏期24-48時間。嘔気・嘔吐・水様下痢・腹痛。軽快まで1-3日要する。診断キット(3時間かかる)があるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。<厚生省によるQ&A>http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html<東京都福祉保健局の対応マニュアル>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html
□ ナーバス ・・ 神経質。
□ 内科認定医 ・・ 日本内科学会が認定する資格。教育病院をある程度研修すれば受験資格が得られる。資格を得ても定期的な学会などに出席しないと単位不足で除名される。試験の合格率は9割。試験の前に自分が受け持った患者の病歴サマリーが必要。サマリーを記載する用紙を無くしてしまうと再発行はされず受験資格を失うので注意。認定更新(25単位必要。学会総会に出ればそれだけで15単位。セルフビデオ問題(有料)・セルフトレーニング問題(有料)を6割以上正解で各5単位というのが泣かせる企画)を怠れば、5年後には学会会場の中での拍手とともに、自動的に資格を失う。なお認定更新に5千円かかる。
□ 内頸動脈 ・・ 死亡を確認するときによく指で触れる首の動脈。職場では「ないけい」と略される。内側に「内頸静脈」がある。どっちも「ないけい」やないけい?頸部の両側に聴診器を当てて、雑音があれば内頸動脈の狭窄を疑う。
□ 内職 ・・ 病棟の夜、患者回診も終わってカルテ書き・書類記入などの雑用に追われること。皮肉っぽい意味で会話に出る。
□ 内腸骨静脈 ・・ 股の両側にある静脈。手指を当てて拍動しているのが「内腸骨動脈」。その内側にある。左右の内腸骨静脈は、骨盤からの「外腸骨静脈」と合流する。
□ 内部告発 ・・ 勤務中である職員からマスコミへの暴露。そこにまだ勤務していることが条件。常日頃から職場環境への不満がある者だろう。民間病院では生活の糧として職場を離れられないスタッフが多いせいか、比較的少ないように思う。
□ なきにしもあらず ・・ 医者がよく学会やムンテラで使用する言葉。
□ 日勤(帯) ・・ ナースの通常の業務時間。朝9−夕方5時くらいが建前だが、とてもそれでは終わらないことが多く、早朝出勤、遅帰りを強いられる。
□ ニトロペン ・・ 狭心症に対して使用する頓服薬の亜硝酸剤。狭心症なら5分以内に軽快するはず。ただし、自然軽快かもしれず。不安定狭心症だと効果が不確実になってくる。連用による血圧低下に注意。飲み込むのではなく、舌下投与でゆっくり溶かす。患者な間では「ニトロ」と略される。
□ 二ボー ・・ 腹部レントゲンで、腸閉塞を示唆する所見。拡張した腸に多量の消化液とガスが貯まった結果、重力でこう見える。
□ 乳頭 ・・ (ここでは十二指腸の場合)十二指腸下行脚の途中にあるデベソ様の部分。穴があり、胆道・膵管へとつながる。胆石を破砕したあと十二指腸に出てこない場合は、乳頭切開(電気で焼き切る)によって排出させたりする。
□ ニューモシスチス・カリニ=Pneumocystis carinii ・・ 免疫不全状態で、肺炎(カリニ肺炎)を起こす。この肺炎はPCP=Pneumocystis carinii pneumoniaと呼ばれていたが、正式にはPneumocystis jiroveci pneumonia、またはニューモシスチス肺炎と呼ばれるようになった。なおカリニは古い教科書では原虫という分類だが現在では真菌かそれに近い微生物(曖昧だなあ・・)ということになっている。確定診断は気管支鏡でBAL(気管支肺胞洗浄)かTBLB(経気管支肺生検)を行い、細胞診あるいは病理組織検査で確定診断する。病院内に病理部があればすぐに診断につながるが、そうでないと1週間くらい待たされる。キットですぐに診断できるPCR法は保険適応外だが確定診断のためにはする価値がある。喀痰・BAL液からの陽性率は高く、血漿でも半数の確率で陽性との報告がある。臨床経過はAIDSがない場合は短期間に症状(発熱・呼吸困難)・肺病変(CTで肺門中心から始まる両側性スリガラス陰影→進行→浸潤影)が出現、AIDSある場合は数週間を経て肺病変が顕在化。AIDSのあるほうが臨床像は複雑となる。白血球は通常増加し、なかでも多形白血球の増加が著明だが、白血球減少例は予後不良。半数の患者でリンパ球が減少。病状進行の指標としてKL-6、βーDグルカンは有用。
□ ニューモシスチス肺炎 ・・ (前項目参照)
□ ニューモビリア=pneumobilia=胆道気腫症 ・・ 腹部CTあるいは腹部エコー検査の際に、肝臓にときにみられるちっちゃな空気像。胆管内のガスが映ったもの。どちらかといえば左葉に多い。通常は、既往の乳頭切開術で腸管の空気が迷い込んだもの。あるいはオペ後。無害。
□ 尿蛋白 ・・ 尿に出る蛋白。通常は尿検査での項目をさす。尿検査での感度以上に蛋白が出ると陽性となる。激しい運動をしたあとにも(代謝が亢進するので)陽性になることがある。
□ 尿糖 ・・ 尿に出る糖。通常は尿検査での項目をさす。老人では血糖が正常でも尿糖だけ検出されやすくなる。
□ 尿閉 ・・ 前立腺肥大・神経因性膀胱などのために、尿で膀胱がパンパンなのに出てこない状態。夜間救急に来て、バルーンで導尿せざるをえないことがある。
□ 尿路感染(UTI) ・・ 腎臓〜膀胱にかけていずれかの炎症。細菌感染が多い。女性の膀胱炎が大半で、排尿時の痛み、頻尿がみられる。病棟では尿道カテーテル留置者。以前は膀胱洗浄
がよく行われていたが、最近では疑問視(感染が上部まで拡がるおそれ)する声が多い。
□ 尿細管壊死 ・・ 腎臓の中の微細な管の壊死。肉眼ではもちろん見えない。急激な腎不全を引き起こした病態。
■ 認知症 ・・ 脳の器質的障害により知能が不可逆的に低下した状態。大きく2つ、アルツハイマー病(原因不明の脳細胞の急速脱落→脳の委縮・変性)と脳血管性認知症(脳の動脈硬化で部分的にあちこち虚血、まだら状に障害。メタボによる背景あるのが常)に分類。
□ ネーザル=ナザール=N ・・ 経鼻酸素吸入。1リットル刻み。必要により1リットルずつ増量。酸素吸入の限界は10-15リットルだが鼻からの場合はせいぜい3-4リットルまで。それ以上はマスクに切り替える。なお二酸化炭素が貯留しやすい肺気腫などの病態では0.5リットルずつで調整しないと容易にナルコーシスを招く。
□ 寝当直(ねとうちょく) ・・ 夜間にあまり呼ばれない病院当直業務。実は夜間帯ナースの配慮によるところが大きい。ただし年末・GWの当直では期待できない。
□ 粘液栓 ・・ ネバい痰が気管支(たいていは分枝)を塞いだ状態。そこから先は空気の行き来がないので肺炎を起こしやすい。CTで直接みかけるものを特別に「mucoid impaction(ムコイド・インパクション)」という。
□ 捻挫・靭帯損傷
◇足関節
・ 通常、内がえし後の足関節痛と腫脹をきたした形で受診する。
・ ほとんどは内がえし(内側への)負荷で足関節外側部の靭帯欠損を引き起こす。ここには3つの靭帯(?前距腓靭帯<底屈位で緊張し背屈位で弛緩する。損傷をもっとも受けやすい>、?踵腓靭帯、?後距腓靭帯)が存在する。この3つを総称して外側側副靭帯という。
・ 徒手検査法としてADT(前方引き出しテスト。前距腓靭帯損傷で陽性)とTTT(内がえしテスト。前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷で陽性)を行う。
・ 外側側副靭帯損傷はグレードで3つに分けられ、グレード?:前距腓靭帯の部分断裂+踵腓靭帯は断裂なし・・・ADT(-) , TTT(-)、グレード?:前距腓靭帯の完全断裂+踵腓靭帯は断裂なし〜部分断裂・・・ADT(+) , TTT(-)、グレード?(不安定型):前距腓靭帯・踵腓靭帯ともに完全断裂・・・ADT(+) , TTT(+)。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定→松葉杖。グレード?(不安定型)では外科的修復を選ぶこともある。
◇膝関節
・ 膝関節は内側を内側側副靭帯(MCL)が支え、外側を外側側副靭帯(LCL)と外側複合体(弓状靭帯など)と関節包が支えている。前十字靭帯(ACL)は徑骨の前方移動を制御、後十字靭帯(PCL)は徑骨の後方移動を制御。
ACLとPCLは関節内靭帯であるため損傷されれば関節内血腫を認める。ただし血腫はMCL単独でもみられることがある。
・ ACL損傷の多くは膝関節の非接触外傷により起こる。一方PCL損傷の多くは膝下の下腿部を直接打撲することによる(膝下に外傷あるとき強く疑う)。MCL損傷では膝内側に圧痛あること多い。
・ 徒手検査法としては、ACL損傷:Lachmanテスト、N-testなど、PCL損傷:後方落ち込み、後方引き出しテストなど。MCL・LCL損傷は下腿内外反テストで評価する。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定。ACL・MCL損傷では膝軽度屈曲位固定、PCL損傷では膝伸展位固定。
□ 年俸制 ・・ 1年間の給与を書面で契約、これにしたがって給与が振り込まれる。大学病院では存在しない。12分割で通常支給されるが、この場合当然ボーナス名目の支給はない。ただしボーナス前に途中退職、という残念なアクシデントは避けられる。
■ 脳血管性認知症 ・・ 脳の動脈硬化による認知症。メタボが背景にあり急激な経過をとる。人格水準は保たれるがイライラ・不安・怒りっぽい特徴あり(アルツハイマーは天然ボケっぽい)。
□ 脳梗塞
脳の血管がつまった病気。血栓が徐々に出来て詰まったか、よそから血栓がきていきなり詰まったか。
確定診断にあたり、問診も必要。たとえば<発症時刻、昼か夜間か><何時間続いてるか><突然か徐々にか><TIAらしき前触れ症状があったか><不整脈を言われていたか>など。脳外科にコンサルトする前に情報を収集しておく必要がある。また脳梗塞と間違えそうな疾患(髄膜炎、脳炎、外傷、てんかん、低血糖、高血糖による非ケトン性昏睡、肝硬変、低ナトリウム、薬物中毒など)も除外しておくべき。初期のCTでは脳出血がないかどうかのため。梗塞はあとで出現する場合もある。なおCTでは脳実質ばかり見がちだが脳幹部の観察も忘れずに。前回の写真があれば取り寄せる。
大きくは?脳血栓と?脳塞栓に分けられる。
?として「TIA」という脳梗塞なりかけ状態があるが、ここでは省く。
?は動脈硬化で脳の血管が次第に塞がれる状態。
?は心臓の中か頚動脈に出来ていた血栓が脳まで飛んで、脳の血管を詰まらせた状態。
?のほうは壊死する範囲が広く、後遺症も重大。
脳梗塞の症状はいろいろだが、意識障害、麻痺、構語障害などがある。 脳梗塞の中でも心房細動による心原性脳塞栓が増えてきた。リウマチ熱の減少とともに弁膜症の頻度が減ったものの、それによらない心房細動(NVAF)が増加してきたからである。これはなにも高血圧や糖尿病のあるなしは関係なく、加齢との関係が強い。特に70歳以上で急増する。高齢化が進むので頻度も増すわけだ。前述のように後遺症が重いので、これの予防は重要な課題だ。
超急性期のt-PAの投与で3割に改善をみるというが、実際のところほとんど行われていない(出血への考慮などからだろう)。なので現在の関心ごとは予防(不整脈の治療、内服の抗凝固療法)のほうに集まってきている。
※ t-PAは保険適応が2005 10月認められた。協和発酵のアクチバシン、三菱ウェルファーマのグルドパがそれ。ただし使用をする前に、講演会(年に数回あるらしい)での講習を受けることを学会(日本脳卒中学会)から推奨されている。
※ 大阪では次回H18.9/13(水)大阪大学中之島センターで夜7時からあります。
※ 2004年報告のJ-ACT(Japan Alteplase Clinical Trial)ではt-PAの至適投与量(欧米より少なめ)による副作用などの検討がなされ、結果的には大きな問題はなかった。
□ ノーコール ・・ 当直用語で、夜中に呼び出しが一切なかったという喜びの表現。
(類)ローコール:高脂血症のくすり。
□ 脳室内穿破(のうしつないせんぱ) ・・ 脳出血が脳実質内にとどまらず、脳のさらに深層の空間である脳室(髄液が循環している)の中に吹き出した状態。重篤で手術を検討。血圧はむしろ早急に下げなければならない。
□ 膿胸 ・・ 肺のすぐ外のわずかな隙間、「胸膜腔(ふつうここは無菌)」に膿が貯留した状態。膿とはつまり菌と白血球が戦った成れの果て。これ自体行き場がなくなるので、強い炎症を起こしてくる。閉鎖された空間での炎症なので点滴や内服などの薬は届きにくく、通常は管(トロッカー)を挿入した上での持続排液(ドレナージ)を要する。もし膿を包む被膜が破れて、肺内の気管支と交通を持てば、膿が肺内に吸引されてたちまち広範な肺炎となる恐れがあり(稀なケースではあるが)、そこまでの可能性も想定しておく必要がある。
□ 脳動脈 ・・ 脳を下から見ると、ウイリス動脈輪という、いわば阪神高速の環状線のようなものがありここを動脈血がそれそれと流れている。ここから前大脳動脈2本(豊中方面)、中大脳動脈2本(港区・東大阪方面)、後大脳動脈2本(堺・八尾方面)が分枝する。中大脳動脈はさらに脳の深層で垂直に<穿通枝>を送り出す(ここで詰まったらラクナ梗塞)。前・中・後大脳動脈の行き着く先、インター出口付近が<皮質枝>。皮質枝は皮質だけでなくその内側の髄質にも血液を送る。
■ 脳腸相関 ・・ 中枢神経系と消化器の機能的関連。交感神経と副交感神経、それと脳腸ペプチドで互いの連絡経路をもつ。このメカニズムが病態の中心をなすのがIBS。内臓知覚のプロセス(消化管からのシグナル→脊髄後角ニューロン→脊髄視床路→大脳辺縁系ぼ賦活化し痛み発生。これらをセロトニンニューロンなどが抑制)も解明されており、これが腹痛に抗うつ薬が効くゆえんといわれている。
■ 脳ドック
費用は検査メニューの多さによって4-20万円ほどの差がある。MRI,MRA,超音波を通常含むが、超音波が入ってないことがある。頸動脈病変を見逃す可能性があるので不可欠と考えるべき。
以下の項目を行うことが本ドック達成を意味する(つまりしてないとドックと言うには不十分)。
http://www.snh.or.jp/jsbd/gaido.html
・ 問診・診察(神経学的所見、頸部血管雑音)
・ 一般検査(血液・尿)で背景把握
・ 心電図(心房細動の有無)
・ 頸部血管超音波検査 ・・ 頸動脈狭窄を!
・ 認知機能検査(長谷川式など)←映画「明日の記憶」でおなじみ!
・ MRI(通常のT1/T2だけでなくFLAIR画像も!)・・ 無症候性脳梗塞、脳腫瘍を発見
・ MRA ・・血管狭窄・閉塞、動脈瘤を!
□ 膿瘍 ・・ 汚らしい膿。白血球と菌が争って、その戦争が終わったあとの死骸の集まり。だがそのままだと壊死→感染のもととなり、新たな炎症のもととなる。物理的に除去するのが原則。
□ ノロウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは1-2月)に流行。全年齢で発症しうる。つまり小児だけでなく老人ホームなどでも問題になる。経口(食事では生ガキに注意)・接触感染で潜伏期24-48時間。嘔気・嘔吐・水様下痢・腹痛。軽快まで1-3日要する。診断キット(3時間かかる)があるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。<厚生省によるQ&A>http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html<東京都福祉保健局の対応マニュアル>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html
サーガマニュアル2007秋 は-1
2007年9月17日□ 肺うっ血=congestion ・・ 肺の中の血管の血液量が増えてきた状態。それだけ心臓に負担がかかっているということ。つまり心不全になりかけている状態。
□ 肺炎
○ 細菌性肺炎(主に肺炎球菌性肺炎)
・ 肺炎球菌は菌体表面の物質を介して細胞表面上のPAF=platelet activating factorレセプターに結合し、細胞内に侵入する、という機序はすでに知られている。最近これに加え、ライノウイルスで感染した(つまり先行する上気道ウイルス感染)気道上皮細胞にはPAFレセプター発現が増強し、肺炎球菌の付着が亢進する、という知見が付け加えられた。インフルエンザウイルスでも同様の結果が示された。この機序は肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌でも報告されている。つまり先行する呼吸器ウイルスは気道上皮細胞を傷害し、レセプター発現を亢進することで菌の付着を増加させ、感染のリスクを高めている。
・ 肺炎球菌尿中抗原検査:血中抗原が尿中に濃縮され尿に出る。補助的診断として使用する。小児での疑陽性が問題(鼻咽頭の肺炎球菌の定着による)。またこの抗原は数週間陽性になり続けるので測定の際には感染の既往も聴取しておくべきである。
・ 近年、海外ではβラクタム+マクロライド系の有用性が注目されている(肺炎死亡のリスクを低下)。
○ マイコプラズマ肺炎
・ 市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌についで2番目。4年周期で流行していたが現在その傾向は崩れてきている。
・ 診断自体は血液中の抗体価測定に依存している。ただこの場合ペア血清(急性期と回復時)が必要なので急性期の時点で確定するものではない。IgM抗体を10分で検出するためのイムノカード法が開発されたが陽性になるには発症10日以上経ってからなので、早期発見には向かない。
・ 症状は頑固な咳で夜間に激しい。多くが39℃台の高熱。白血球はほとんどが増えない(1万以上が15%にみられる)。一過性の肝機能障害が1/3にみられる。
・ 胸部レントゲンでは両側下肺野に陰影が出現し両側肺野に同時に多発しかつ間質性陰影を呈するのが典型的(教科書的)だが、そうでない例も多い。
・ CTでの画像は3パターンでこの分類が重宝されている。すなわち、
? 気管支壁の肥厚と肺動脈周囲間質の拡大 ・・ 気管支周囲、間質の炎症細胞の浸潤による。
? 細気管支中心性の粒状影 ・・ 細気管支および細気管支内腔の炎症細胞の浸潤を示す。
? エアブロンコグラムを伴った浸潤影 ・・ 容積減少を伴いやすい(広範な細気管支病変のため)。
・ 細胞壁を有さないためペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。効果があるのはマクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系など。
・ 発症機序としては菌による直接障害と、免疫系を介した間接障害の両者の可能性が考えられている。
・ 劇症型マイコプラズマ肺炎 ・・ 欧米での報告では、基礎疾患のない健常男性、喫煙者に多く、宿主の細胞免疫過剰反応が重症化を招くと推測されている。具体的には肺局所へのリンパ球の一過性過剰集積、過剰反応としての全身性の免疫能低下が起こる例が重篤化しやすいと考えられている。この局所の過剰免疫反応を抑制する意味で、ステロイドの併用が有効とされている。
・ マクロライド耐性株は約20%。
○ クラミジア肺炎
? C.pneumoniae(クラミジア・ニューモニエ)肺炎
・ 飛沫感染で集団発生あり、軽症が多い。潜伏期間3-4週間。高齢者にも多いのがマイコプラズマとの相違点。
・ 重複感染も多いのも特徴。
・ 咳が必発。高熱を呈する頻度はオウム病・マイコプラズマほどでない。肺炎は軽度〜中等症が多い。
・ 胸部レントゲンでは中下肺優位で、軽症では間質性陰影主体だが実質性陰影の場合も多く、特徴はない。
・ 検査は咽頭などから液を採取。抗原検出法、PCR法があるが感度はともに良好。
・ ペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。アミノ配糖体も無効。第一選択はテトラサイクリン系、ケトライド系、ニューキノロン系など。投与は10日〜2週間と長めが好ましい。
? オウム病
・ C.psittaci(クラミジア・シッタシ)による人畜共通感染症。主に感染鳥の排泄物の菌体を吸入して感染(トリの飼育歴が重要)。
・ 潜伏期は1-2週間で、咳、関節痛、筋肉痛など症状は非定型肺炎のパターン。重症では死亡例も珍しくない。
・ 検査は?痰・血液などからの病原体の検出、?遺伝子からの検出(PCR法など)、?抗体の検出。大半は?で行われ、具体的にはCF法による血清診断である。
・ テトラサイクリン系が第一選択。重症ならミノサイクリンの点滴のほか、ステロイド使用することも。
○ レジオネラ肺炎
・ 好気性グラム陰性桿菌。集団発生よりも単発例が多い。全体の2割が院内感染(外科手術後の頻度が高い)、1-2割が集団感染。病歴聴取に温泉旅行歴は欠かせない。
・ 危険因子は60歳以上、男性、喫煙、慢性肺疾患、慢性心疾患、糖尿病、細胞性免疫不全、癌など。
・ すべてが重症ではなく、重症化するのはあくまで一部。
・ 潜伏期2-10日間で、乾性咳、比較的徐脈を伴う39℃以上の発熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛、下痢など。胸膜炎様の胸痛伴うことあり時に血痰。精神症状(内容は様々)みられることもある。
・ 胸部レントゲンでは大葉性肺炎のパターンが多い。免疫不全者では1割に空洞性病変。
・ 血液では肝機能障害所見、ALP , LDH上昇、低ナトリウム。尿ではミオグロブリン陽性が多く、潜血陽性、赤血球陰性という所見も多い。
・ 診断は?病原体の検出(分離培養・・重症ほど陽性率は高い。培地はBCYEα培地)、?尿中抗原検出(重症ほど陽性率高い。ただしserogroup 1のみしか検出できず。しかも陽性になるのは発症数日してからで、初期は出ない)、?抗体価測定(実際本症で抗体価の上昇をみるのは75%にすぎない)など。
・ 治療
諸外国:ニューマクロライド、レスピラトリーキノロンの注射剤が第一選択。これはエリスロマイシンより勝る。
日本:ciprofloxacin、puzufloxacinの注射剤。第2選択のエリスロマイシンは、リファンピシンとの併用がその単独よりも優れる。
○ インフルエンザ肺炎
・ インフルエンザウイルス(RNAウイルスで、ABCの3つの型がありヒトで問題になるのはAとB)による上気道炎は通常1週間で治癒するものだが、ときに(1-5%だが高齢者では20-25%もある)肺炎を合併する。分類すると
? 原発性=純ウイルス性 ・・ まれ。感染2・3日後より急速に進行する低酸素症。死亡率は高い。
? 二次性細菌性=続発性 ・・ インフルエンザウイルス感染軽快後(軽快してさらに3日後頃)に発症した肺炎。これが大部分を占める。肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブ菌の順。死亡率は低い。
? 混合性 ・・ インフルエンザウイルスと細菌に同時感染したもの。
※ 細菌感染を合併しているのかどうかは、まず膿性痰を見つけることがポイント。
○ 肺結核症
・ 空気感染。免疫能が正常なら、感染しても(生涯での)発病するのは5-10%程度。全世界の死亡原因のトップ。日本では最近は増加中で、これは高齢者増加による。このうち大部分が既感染であり内因性の再発である。また若年者の集団発生も目立つ。
・ 主要な4薬剤への耐性(←突然変異によって起こる)は増加傾向にあり、1997年の報告でINH-4.4% , RFP 1.4% , EB 0.4% , SM 7.5%。INH/RFPの双方に耐性の場合に<多剤耐性菌>と呼ばれる。多剤での使用によって耐性を打ち消しあう効果があるので単剤投与というのはすべきでなく危険であり、初回投与では行ってはならない。最近、RFP耐性菌の97%以上にrpoB遺伝子の変異を認め、これを検出することでRFP耐性菌の早期発見がなされるようになった。
・ 咳・痰が2週間以上続く場合は特に疑う。
・ 検査法であるQFT2G(Quanti-FERON-TB第二世代)がトピックス。このQFT2Gは結核菌由来の特異蛋白抗原由来の物質(インターフェロンγ)を測定するもので、PPDのようにBCG接種の影響を考慮する必要がない。結核診断に有用であり実際に感度も高い(9割)。
・ LTBI=latent tuberculosis infection=潜在的結核症 ・・ PPDで結核感染が確認されたが発病はしていない状態。以前は予防内服が原則で日本ではINHの6ヶ月投与ということになっていたが、CDC(米疾病管理局)ではさらに9ヶ月とより長めの投与と、あるいはRFP4ヶ月治療を推奨している。
○ 非結核性抗酸菌症 ※(H15.4月より呼び名が変わった。それ以前は<非定型抗酸菌症>)
・ MAC=Mycobacterium avium complex=M. avium + M. intracellare(イントラセルラー)。これによる感染症がMAC症。近年、非結核性抗酸菌症特にMAC症の罹患率が増加(増加分のほとんどが何故か基礎疾患のない中高年女性)してきている。MCA症は非結核性抗酸菌症のうち70%強も占めており、ついでkansasii症(抗結核菌によく反応する)が約20%を占める。なおMACの7割が女性、kansasiiの9割は男性。
・ MACには肺感染症(肺・気管支の限局)と全身播種型の感染症の2タイプがあり日本ではほとんどが肺感染症のほう。米国ではHIV関連の全身型が問題になっていて、腸管粘膜からの血流感染とされている。
・ MACの病態としては以前は画像上、上肺優位の結核類似空洞パターンが多かったが1980年以降では、気管支拡張が目立ちその領域に小結節が散布するタイプ、すなわち<気道病変型>または<結節型>がみられるようになった。このタイプは中高年女性がほとんど。進行は遅く症状も乏しいがしばしば血痰を生じる。既存の病変を有さないことが多いのも特徴。
・ 治療は従来の抗結核薬+ニューマクロライド(CAMあるいはAZM)など。排菌陰性化後10-12ヶ月以上持続すれば治療終了が可能だがその後も定期フォローが必要。
○ 肺真菌症
? 肺アスペルギルス症 ・・ 原因菌としてはAspergillus fumigatus , A. niger , A.flavusなどが多い。本症は病態によって以下のように分かれる。
・ 肺アスペルギローマ ・・ 既存の空洞病変(結核・のう胞)に胞子を作り、空洞内で増殖し菌球(fungus ball)を形成。
・ 侵襲性肺アスペルギルス症 ・・ 高度の免疫抑制状態(大量ステロイド、免疫抑制剤、血液疾患など)に好発。血管内、あるいは多臓器に病変を形成する。
・ 慢性壊死性アスペルギルス症 ・・上記2つの中間に位置する病態で、何らかの基礎疾患があって数週間〜数ヶ月の経過で増悪する。
? 肺クリプトコックス症 ・・ HIVへの日和見感染として重要だが、健常者にも起こりうるという特徴がある。Cryptococcus neformans(ハトの糞便・土壌に生息)の感染(吸入による経気道感染)による。多くは無症状でレントゲン健診(孤立または多発結節影が多く、空洞みられることあり)がキッカケでの診断も多い。CTでは胸膜の近くに陰影を認めること多い。
● 肺真菌症の診断
・ 血清診断法 ・・ β-Dグルカン:真菌細胞壁の主要成分。ただしムコールなどの接合菌類およびクリプトコッカス症では上昇は認めない。
ガラクトマンナン抗原:侵襲性肺アスペルギルス症のハイリスク患者にとって早期発見・早期治療のキッカケとなる。
グルクロノキシロマンナン検出:Cryptococcus neformans由来の成分を抗原として検出。肺クリプトコックス症の診断。
・ 真菌の分離・培養 ・・ 基本的に全身状態不良のことが多く、侵襲的であり実際的ではない。
● 肺真菌症の治療
・ ポリエン系リポソーム薬剤
従来のアンホテリシンB(AMPH-B)では腎毒性の副作用が高率であり、本剤はこれに脂質担体製剤である。これにより安全性が向上し腎障害の頻度も半分になった。
・ アゾール系抗真菌剤
? ホスフルコナゾ−ル(FLCZ)
? ボリコナゾ−ル(VRCZ) ・・ アスペルギルス属・クリプトココックス属に優れた活性を示す。またFLCZやITCZ耐性の真菌にも有効な面もある。
? イトラコナゾ−ル(ITCZ) ・・ FLCZに比べてアスペルギルスなどの糸状菌にも活性を示す。
・ エキノカンジン系 ・・ カンジダ〜アスペルギルス属まで幅広い作用。β-Dグルカン合成酵素を特異的に阻害する。
■ 寄生虫肺疾患
○ 肺赤痢アメーバ症、胸腔赤痢アメーバ症
・ アメーバののう胞(シスト)を経口摂取し感染した場合、通常は大腸炎・肝膿瘍を引き起こす。肺赤痢アメーバは(大腸・肝臓経由で)肺に膿瘍を形成する。胸腔赤痢アメーバ症は(肝膿瘍経由で)胸腔に膿瘍を形成する。画像診断のほか血清抗体の測定などと組み合わせて診断する。治療はメトロニダゾ−ル。日本での多くは男性同性愛者。
○ 回虫性肺炎
・ ヒト回虫、ブタ回虫によるものが考えられている。回虫そのものによる炎症とアレルギー機序と推測されている。
? ヒト回虫 ・・ 嚥下→小腸で孵化→小腸壁に侵入→門脈→肝臓→肺→好酸球性肺炎(摂取1-2週間内)を起こしつつ肺で発育→食道・胃へ嚥下→小腸で成虫に(摂取2-3ヶ月後)。以上より駆虫剤投与のタイミングは肺炎発症2.5-3ヶ月後が好ましい。
? ブタ回虫 ・・ ヒトで成虫にまで発育するのは稀で、死滅していくので駆虫剤の使用は賛否両論。ただし好酸球性肺炎の報告はある。その際好酸球増加するとは限らない。血清ブタ回虫抗体の測定も参考に。
○ イヌ回虫性肺炎
・ 体内で成虫に発育することはなく、体内を移動し肺に達した場合に肺炎を起こす。BAL・血液中の好酸球増加、血清抗体価上昇をみる。治療の是非は見解が統一されていない。
○ ブラジル鉤虫性肺炎
・ 熱帯域に存在するブラジル鉤虫=Ancylostoma brazillenseによる肺炎。ヒトの体内では成虫になれず死滅する。成虫はイヌ・ネコに寄生し糞便経由で土壌からヒトへ経皮感染する。表皮内を移動すれば線状の爬行(はこう)疹を呈する。肺炎では浸潤影のほか末梢血の好酸球増加をみる。
○ 糞線虫症
・ 主に沖縄・奄美諸島に存在。患者の糞便から排出されたラブジチス型幼虫はフィラリア型幼虫へ移行し、これが経皮的にヒトへ感染する。血流→心臓→肺に至り肺胞・細気管支へ。そこで出血・細胞浸潤をみる。肺に浸潤影がみられ血中好酸球増加、また喀痰から幼虫が分離される。さらに幼虫は気管・咽頭を経て十二指腸粘膜内に寄生し成虫になる。肺炎の治療にはイベルメクチンが投与されるが、免疫低下患者ではさらにグラム陰性桿菌による肺炎の合併をみることがあり、その場合はさらに抗生剤(大腸菌・クレブシエラ感受性)の投与を要する。
○ 肺イヌ糸状虫症
・ 成虫はイヌの肺動脈に寄生し末血中にミクロフィラリアが出現。蚊に刺された際、これが蚊に入り他のイヌへと移っていく。その過程でヒトがたまたまその蚊に刺されると感染する。肺・皮膚で幼虫移行してくるが成虫にはなれず死滅する。肺では末梢肺動脈の塞栓を起こし腫瘤を形成する。大多数が無症状。レントゲンでは結節あるいは腫瘤状、CTで2cm以下の辺縁明瞭な腫瘤陰影。辺縁にはまばらな線状あるいは羽毛状構造あるとの報告あり。血清抗体も参考に。
○ 熱帯性肺好酸球症
・ 熱帯地域。バンクロフト糸状虫あるいはマレー糸状虫に感染しているヒト肺のミクロフィラリア、に対する免疫反応の結果起こる。レントゲンで網結節状陰影が散在性に出現。血中好酸球増加、血清抗体上昇もみる。ジエチルカルバマジンの経口投与が有効。
○ 肺吸虫症
・ 原因としてはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫がある。
・ 感染源 ・・ 肺吸虫のメタセルカリアを保有するモクズガニ・サワガニなどを経口摂取。
・ 治療はプラジカンテル経口投与。
? ウエステルマン肺吸虫 ・・ 小腸内でメタセルカリアが脱嚢→幼虫となる→小腸壁を通過し腹腔へ→腹壁の筋肉で成長→再度腹腔へ→横隔膜経由で胸腔へ→肺で成虫に。血痰・咳が主症状だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影。
? 宮崎肺吸虫 ・・ 感染経路は?に似る。主症状は咳・胸痛だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影のほか気胸・胸水が特徴。
○ 肺包虫症
・ 多包虫(多包条虫の幼虫)と単包虫(単包条虫の幼虫)がある。
・ ともに肝臓に病巣を形成すること多い。ヒトは中間宿主の立場にある。
・ 多包条虫はネズミを中間宿主、キツネを最終宿主とする。
・ 単包条虫は輸入例の報告で頻度少ない。
・ ヒトが六鉤幼虫を経口摂取して感染成立→小腸で孵化→血流経由で肝臓・肺へ→包虫に発育
・ 肺単包虫はレントゲンで境界鮮明な円形孤立陰影、肺多包虫は境界鮮明な陰影として観察される。
・ 治療は手術が基本だが手術不能例ではアルベンダゾ−ルの経口投与。
■ Q熱 ※かつては原因不明といわれていて<Query=原因不明>と呼ばれ、その名残でその名がある。
・ コクシエラ属のCoxiella burnetiiの感染による肺炎・気管支炎などの総称。多くはインフルエンザ様症状で始まり上気道炎・気管支炎、あるいは肺炎へと進展。
・ 人畜共通感染症であり、4類感染症。ヒトからヒトへの感染は稀である。
・ 風で飛散しやすく生物兵器の好条件とされている。
・ 白血球増加例は少ない。
・ 肝機能障害の合併が多い。
・ βラクタム系は無効だがテトラサイクリン(第一選択)・マクロライドが著効(非定型肺炎に似る)で、2-3週の投与が必要。
・ 急性と慢性がある。急性型は潜伏期1-3週間、呼吸器感染で発症するが一過性で予後良好(一部は重篤)。多くは1-数週間で治癒。無治療でも死亡率は1-2%。慢性型は心内膜炎が多く予後不良が多く死亡率は50%。
・ 肺炎では病理上は非定型肺炎に類似した像(マクロファージ・リンパ球主体で多核白血球少ない間質性肺炎の像、およびフィブリン・赤血球・単核球主体の肺胞滲出液)が得られる。
・ 確定診断はペア血清での4倍以上の上昇。また急性型ではコクシエラ?相菌に対するIgG・IgM抗体価の上昇がみられ、慢性型ではコクシエラ?相菌に対する抗体価の高値が持続する。
・ PCRは有力な補助診断であり、急性期で陽性ならば血清抗体価を追跡していく。
・ 海外ではワクチンを動物・ヒト(牧場関係など中心)に行われているが日本では認識低く、やってない。
□ 肺炎
○ 細菌性肺炎(主に肺炎球菌性肺炎)
・ 肺炎球菌は菌体表面の物質を介して細胞表面上のPAF=platelet activating factorレセプターに結合し、細胞内に侵入する、という機序はすでに知られている。最近これに加え、ライノウイルスで感染した(つまり先行する上気道ウイルス感染)気道上皮細胞にはPAFレセプター発現が増強し、肺炎球菌の付着が亢進する、という知見が付け加えられた。インフルエンザウイルスでも同様の結果が示された。この機序は肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌でも報告されている。つまり先行する呼吸器ウイルスは気道上皮細胞を傷害し、レセプター発現を亢進することで菌の付着を増加させ、感染のリスクを高めている。
・ 肺炎球菌尿中抗原検査:血中抗原が尿中に濃縮され尿に出る。補助的診断として使用する。小児での疑陽性が問題(鼻咽頭の肺炎球菌の定着による)。またこの抗原は数週間陽性になり続けるので測定の際には感染の既往も聴取しておくべきである。
・ 近年、海外ではβラクタム+マクロライド系の有用性が注目されている(肺炎死亡のリスクを低下)。
○ マイコプラズマ肺炎
・ 市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌についで2番目。4年周期で流行していたが現在その傾向は崩れてきている。
・ 診断自体は血液中の抗体価測定に依存している。ただこの場合ペア血清(急性期と回復時)が必要なので急性期の時点で確定するものではない。IgM抗体を10分で検出するためのイムノカード法が開発されたが陽性になるには発症10日以上経ってからなので、早期発見には向かない。
・ 症状は頑固な咳で夜間に激しい。多くが39℃台の高熱。白血球はほとんどが増えない(1万以上が15%にみられる)。一過性の肝機能障害が1/3にみられる。
・ 胸部レントゲンでは両側下肺野に陰影が出現し両側肺野に同時に多発しかつ間質性陰影を呈するのが典型的(教科書的)だが、そうでない例も多い。
・ CTでの画像は3パターンでこの分類が重宝されている。すなわち、
? 気管支壁の肥厚と肺動脈周囲間質の拡大 ・・ 気管支周囲、間質の炎症細胞の浸潤による。
? 細気管支中心性の粒状影 ・・ 細気管支および細気管支内腔の炎症細胞の浸潤を示す。
? エアブロンコグラムを伴った浸潤影 ・・ 容積減少を伴いやすい(広範な細気管支病変のため)。
・ 細胞壁を有さないためペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。効果があるのはマクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系など。
・ 発症機序としては菌による直接障害と、免疫系を介した間接障害の両者の可能性が考えられている。
・ 劇症型マイコプラズマ肺炎 ・・ 欧米での報告では、基礎疾患のない健常男性、喫煙者に多く、宿主の細胞免疫過剰反応が重症化を招くと推測されている。具体的には肺局所へのリンパ球の一過性過剰集積、過剰反応としての全身性の免疫能低下が起こる例が重篤化しやすいと考えられている。この局所の過剰免疫反応を抑制する意味で、ステロイドの併用が有効とされている。
・ マクロライド耐性株は約20%。
○ クラミジア肺炎
? C.pneumoniae(クラミジア・ニューモニエ)肺炎
・ 飛沫感染で集団発生あり、軽症が多い。潜伏期間3-4週間。高齢者にも多いのがマイコプラズマとの相違点。
・ 重複感染も多いのも特徴。
・ 咳が必発。高熱を呈する頻度はオウム病・マイコプラズマほどでない。肺炎は軽度〜中等症が多い。
・ 胸部レントゲンでは中下肺優位で、軽症では間質性陰影主体だが実質性陰影の場合も多く、特徴はない。
・ 検査は咽頭などから液を採取。抗原検出法、PCR法があるが感度はともに良好。
・ ペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。アミノ配糖体も無効。第一選択はテトラサイクリン系、ケトライド系、ニューキノロン系など。投与は10日〜2週間と長めが好ましい。
? オウム病
・ C.psittaci(クラミジア・シッタシ)による人畜共通感染症。主に感染鳥の排泄物の菌体を吸入して感染(トリの飼育歴が重要)。
・ 潜伏期は1-2週間で、咳、関節痛、筋肉痛など症状は非定型肺炎のパターン。重症では死亡例も珍しくない。
・ 検査は?痰・血液などからの病原体の検出、?遺伝子からの検出(PCR法など)、?抗体の検出。大半は?で行われ、具体的にはCF法による血清診断である。
・ テトラサイクリン系が第一選択。重症ならミノサイクリンの点滴のほか、ステロイド使用することも。
○ レジオネラ肺炎
・ 好気性グラム陰性桿菌。集団発生よりも単発例が多い。全体の2割が院内感染(外科手術後の頻度が高い)、1-2割が集団感染。病歴聴取に温泉旅行歴は欠かせない。
・ 危険因子は60歳以上、男性、喫煙、慢性肺疾患、慢性心疾患、糖尿病、細胞性免疫不全、癌など。
・ すべてが重症ではなく、重症化するのはあくまで一部。
・ 潜伏期2-10日間で、乾性咳、比較的徐脈を伴う39℃以上の発熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛、下痢など。胸膜炎様の胸痛伴うことあり時に血痰。精神症状(内容は様々)みられることもある。
・ 胸部レントゲンでは大葉性肺炎のパターンが多い。免疫不全者では1割に空洞性病変。
・ 血液では肝機能障害所見、ALP , LDH上昇、低ナトリウム。尿ではミオグロブリン陽性が多く、潜血陽性、赤血球陰性という所見も多い。
・ 診断は?病原体の検出(分離培養・・重症ほど陽性率は高い。培地はBCYEα培地)、?尿中抗原検出(重症ほど陽性率高い。ただしserogroup 1のみしか検出できず。しかも陽性になるのは発症数日してからで、初期は出ない)、?抗体価測定(実際本症で抗体価の上昇をみるのは75%にすぎない)など。
・ 治療
諸外国:ニューマクロライド、レスピラトリーキノロンの注射剤が第一選択。これはエリスロマイシンより勝る。
日本:ciprofloxacin、puzufloxacinの注射剤。第2選択のエリスロマイシンは、リファンピシンとの併用がその単独よりも優れる。
○ インフルエンザ肺炎
・ インフルエンザウイルス(RNAウイルスで、ABCの3つの型がありヒトで問題になるのはAとB)による上気道炎は通常1週間で治癒するものだが、ときに(1-5%だが高齢者では20-25%もある)肺炎を合併する。分類すると
? 原発性=純ウイルス性 ・・ まれ。感染2・3日後より急速に進行する低酸素症。死亡率は高い。
? 二次性細菌性=続発性 ・・ インフルエンザウイルス感染軽快後(軽快してさらに3日後頃)に発症した肺炎。これが大部分を占める。肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブ菌の順。死亡率は低い。
? 混合性 ・・ インフルエンザウイルスと細菌に同時感染したもの。
※ 細菌感染を合併しているのかどうかは、まず膿性痰を見つけることがポイント。
○ 肺結核症
・ 空気感染。免疫能が正常なら、感染しても(生涯での)発病するのは5-10%程度。全世界の死亡原因のトップ。日本では最近は増加中で、これは高齢者増加による。このうち大部分が既感染であり内因性の再発である。また若年者の集団発生も目立つ。
・ 主要な4薬剤への耐性(←突然変異によって起こる)は増加傾向にあり、1997年の報告でINH-4.4% , RFP 1.4% , EB 0.4% , SM 7.5%。INH/RFPの双方に耐性の場合に<多剤耐性菌>と呼ばれる。多剤での使用によって耐性を打ち消しあう効果があるので単剤投与というのはすべきでなく危険であり、初回投与では行ってはならない。最近、RFP耐性菌の97%以上にrpoB遺伝子の変異を認め、これを検出することでRFP耐性菌の早期発見がなされるようになった。
・ 咳・痰が2週間以上続く場合は特に疑う。
・ 検査法であるQFT2G(Quanti-FERON-TB第二世代)がトピックス。このQFT2Gは結核菌由来の特異蛋白抗原由来の物質(インターフェロンγ)を測定するもので、PPDのようにBCG接種の影響を考慮する必要がない。結核診断に有用であり実際に感度も高い(9割)。
・ LTBI=latent tuberculosis infection=潜在的結核症 ・・ PPDで結核感染が確認されたが発病はしていない状態。以前は予防内服が原則で日本ではINHの6ヶ月投与ということになっていたが、CDC(米疾病管理局)ではさらに9ヶ月とより長めの投与と、あるいはRFP4ヶ月治療を推奨している。
○ 非結核性抗酸菌症 ※(H15.4月より呼び名が変わった。それ以前は<非定型抗酸菌症>)
・ MAC=Mycobacterium avium complex=M. avium + M. intracellare(イントラセルラー)。これによる感染症がMAC症。近年、非結核性抗酸菌症特にMAC症の罹患率が増加(増加分のほとんどが何故か基礎疾患のない中高年女性)してきている。MCA症は非結核性抗酸菌症のうち70%強も占めており、ついでkansasii症(抗結核菌によく反応する)が約20%を占める。なおMACの7割が女性、kansasiiの9割は男性。
・ MACには肺感染症(肺・気管支の限局)と全身播種型の感染症の2タイプがあり日本ではほとんどが肺感染症のほう。米国ではHIV関連の全身型が問題になっていて、腸管粘膜からの血流感染とされている。
・ MACの病態としては以前は画像上、上肺優位の結核類似空洞パターンが多かったが1980年以降では、気管支拡張が目立ちその領域に小結節が散布するタイプ、すなわち<気道病変型>または<結節型>がみられるようになった。このタイプは中高年女性がほとんど。進行は遅く症状も乏しいがしばしば血痰を生じる。既存の病変を有さないことが多いのも特徴。
・ 治療は従来の抗結核薬+ニューマクロライド(CAMあるいはAZM)など。排菌陰性化後10-12ヶ月以上持続すれば治療終了が可能だがその後も定期フォローが必要。
○ 肺真菌症
? 肺アスペルギルス症 ・・ 原因菌としてはAspergillus fumigatus , A. niger , A.flavusなどが多い。本症は病態によって以下のように分かれる。
・ 肺アスペルギローマ ・・ 既存の空洞病変(結核・のう胞)に胞子を作り、空洞内で増殖し菌球(fungus ball)を形成。
・ 侵襲性肺アスペルギルス症 ・・ 高度の免疫抑制状態(大量ステロイド、免疫抑制剤、血液疾患など)に好発。血管内、あるいは多臓器に病変を形成する。
・ 慢性壊死性アスペルギルス症 ・・上記2つの中間に位置する病態で、何らかの基礎疾患があって数週間〜数ヶ月の経過で増悪する。
? 肺クリプトコックス症 ・・ HIVへの日和見感染として重要だが、健常者にも起こりうるという特徴がある。Cryptococcus neformans(ハトの糞便・土壌に生息)の感染(吸入による経気道感染)による。多くは無症状でレントゲン健診(孤立または多発結節影が多く、空洞みられることあり)がキッカケでの診断も多い。CTでは胸膜の近くに陰影を認めること多い。
● 肺真菌症の診断
・ 血清診断法 ・・ β-Dグルカン:真菌細胞壁の主要成分。ただしムコールなどの接合菌類およびクリプトコッカス症では上昇は認めない。
ガラクトマンナン抗原:侵襲性肺アスペルギルス症のハイリスク患者にとって早期発見・早期治療のキッカケとなる。
グルクロノキシロマンナン検出:Cryptococcus neformans由来の成分を抗原として検出。肺クリプトコックス症の診断。
・ 真菌の分離・培養 ・・ 基本的に全身状態不良のことが多く、侵襲的であり実際的ではない。
● 肺真菌症の治療
・ ポリエン系リポソーム薬剤
従来のアンホテリシンB(AMPH-B)では腎毒性の副作用が高率であり、本剤はこれに脂質担体製剤である。これにより安全性が向上し腎障害の頻度も半分になった。
・ アゾール系抗真菌剤
? ホスフルコナゾ−ル(FLCZ)
? ボリコナゾ−ル(VRCZ) ・・ アスペルギルス属・クリプトココックス属に優れた活性を示す。またFLCZやITCZ耐性の真菌にも有効な面もある。
? イトラコナゾ−ル(ITCZ) ・・ FLCZに比べてアスペルギルスなどの糸状菌にも活性を示す。
・ エキノカンジン系 ・・ カンジダ〜アスペルギルス属まで幅広い作用。β-Dグルカン合成酵素を特異的に阻害する。
■ 寄生虫肺疾患
○ 肺赤痢アメーバ症、胸腔赤痢アメーバ症
・ アメーバののう胞(シスト)を経口摂取し感染した場合、通常は大腸炎・肝膿瘍を引き起こす。肺赤痢アメーバは(大腸・肝臓経由で)肺に膿瘍を形成する。胸腔赤痢アメーバ症は(肝膿瘍経由で)胸腔に膿瘍を形成する。画像診断のほか血清抗体の測定などと組み合わせて診断する。治療はメトロニダゾ−ル。日本での多くは男性同性愛者。
○ 回虫性肺炎
・ ヒト回虫、ブタ回虫によるものが考えられている。回虫そのものによる炎症とアレルギー機序と推測されている。
? ヒト回虫 ・・ 嚥下→小腸で孵化→小腸壁に侵入→門脈→肝臓→肺→好酸球性肺炎(摂取1-2週間内)を起こしつつ肺で発育→食道・胃へ嚥下→小腸で成虫に(摂取2-3ヶ月後)。以上より駆虫剤投与のタイミングは肺炎発症2.5-3ヶ月後が好ましい。
? ブタ回虫 ・・ ヒトで成虫にまで発育するのは稀で、死滅していくので駆虫剤の使用は賛否両論。ただし好酸球性肺炎の報告はある。その際好酸球増加するとは限らない。血清ブタ回虫抗体の測定も参考に。
○ イヌ回虫性肺炎
・ 体内で成虫に発育することはなく、体内を移動し肺に達した場合に肺炎を起こす。BAL・血液中の好酸球増加、血清抗体価上昇をみる。治療の是非は見解が統一されていない。
○ ブラジル鉤虫性肺炎
・ 熱帯域に存在するブラジル鉤虫=Ancylostoma brazillenseによる肺炎。ヒトの体内では成虫になれず死滅する。成虫はイヌ・ネコに寄生し糞便経由で土壌からヒトへ経皮感染する。表皮内を移動すれば線状の爬行(はこう)疹を呈する。肺炎では浸潤影のほか末梢血の好酸球増加をみる。
○ 糞線虫症
・ 主に沖縄・奄美諸島に存在。患者の糞便から排出されたラブジチス型幼虫はフィラリア型幼虫へ移行し、これが経皮的にヒトへ感染する。血流→心臓→肺に至り肺胞・細気管支へ。そこで出血・細胞浸潤をみる。肺に浸潤影がみられ血中好酸球増加、また喀痰から幼虫が分離される。さらに幼虫は気管・咽頭を経て十二指腸粘膜内に寄生し成虫になる。肺炎の治療にはイベルメクチンが投与されるが、免疫低下患者ではさらにグラム陰性桿菌による肺炎の合併をみることがあり、その場合はさらに抗生剤(大腸菌・クレブシエラ感受性)の投与を要する。
○ 肺イヌ糸状虫症
・ 成虫はイヌの肺動脈に寄生し末血中にミクロフィラリアが出現。蚊に刺された際、これが蚊に入り他のイヌへと移っていく。その過程でヒトがたまたまその蚊に刺されると感染する。肺・皮膚で幼虫移行してくるが成虫にはなれず死滅する。肺では末梢肺動脈の塞栓を起こし腫瘤を形成する。大多数が無症状。レントゲンでは結節あるいは腫瘤状、CTで2cm以下の辺縁明瞭な腫瘤陰影。辺縁にはまばらな線状あるいは羽毛状構造あるとの報告あり。血清抗体も参考に。
○ 熱帯性肺好酸球症
・ 熱帯地域。バンクロフト糸状虫あるいはマレー糸状虫に感染しているヒト肺のミクロフィラリア、に対する免疫反応の結果起こる。レントゲンで網結節状陰影が散在性に出現。血中好酸球増加、血清抗体上昇もみる。ジエチルカルバマジンの経口投与が有効。
○ 肺吸虫症
・ 原因としてはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫がある。
・ 感染源 ・・ 肺吸虫のメタセルカリアを保有するモクズガニ・サワガニなどを経口摂取。
・ 治療はプラジカンテル経口投与。
? ウエステルマン肺吸虫 ・・ 小腸内でメタセルカリアが脱嚢→幼虫となる→小腸壁を通過し腹腔へ→腹壁の筋肉で成長→再度腹腔へ→横隔膜経由で胸腔へ→肺で成虫に。血痰・咳が主症状だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影。
? 宮崎肺吸虫 ・・ 感染経路は?に似る。主症状は咳・胸痛だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影のほか気胸・胸水が特徴。
○ 肺包虫症
・ 多包虫(多包条虫の幼虫)と単包虫(単包条虫の幼虫)がある。
・ ともに肝臓に病巣を形成すること多い。ヒトは中間宿主の立場にある。
・ 多包条虫はネズミを中間宿主、キツネを最終宿主とする。
・ 単包条虫は輸入例の報告で頻度少ない。
・ ヒトが六鉤幼虫を経口摂取して感染成立→小腸で孵化→血流経由で肝臓・肺へ→包虫に発育
・ 肺単包虫はレントゲンで境界鮮明な円形孤立陰影、肺多包虫は境界鮮明な陰影として観察される。
・ 治療は手術が基本だが手術不能例ではアルベンダゾ−ルの経口投与。
■ Q熱 ※かつては原因不明といわれていて<Query=原因不明>と呼ばれ、その名残でその名がある。
・ コクシエラ属のCoxiella burnetiiの感染による肺炎・気管支炎などの総称。多くはインフルエンザ様症状で始まり上気道炎・気管支炎、あるいは肺炎へと進展。
・ 人畜共通感染症であり、4類感染症。ヒトからヒトへの感染は稀である。
・ 風で飛散しやすく生物兵器の好条件とされている。
・ 白血球増加例は少ない。
・ 肝機能障害の合併が多い。
・ βラクタム系は無効だがテトラサイクリン(第一選択)・マクロライドが著効(非定型肺炎に似る)で、2-3週の投与が必要。
・ 急性と慢性がある。急性型は潜伏期1-3週間、呼吸器感染で発症するが一過性で予後良好(一部は重篤)。多くは1-数週間で治癒。無治療でも死亡率は1-2%。慢性型は心内膜炎が多く予後不良が多く死亡率は50%。
・ 肺炎では病理上は非定型肺炎に類似した像(マクロファージ・リンパ球主体で多核白血球少ない間質性肺炎の像、およびフィブリン・赤血球・単核球主体の肺胞滲出液)が得られる。
・ 確定診断はペア血清での4倍以上の上昇。また急性型ではコクシエラ?相菌に対するIgG・IgM抗体価の上昇がみられ、慢性型ではコクシエラ?相菌に対する抗体価の高値が持続する。
・ PCRは有力な補助診断であり、急性期で陽性ならば血清抗体価を追跡していく。
・ 海外ではワクチンを動物・ヒト(牧場関係など中心)に行われているが日本では認識低く、やってない。
サーガマニュアル2007秋 は-2
2007年9月17日□ 肺炎球菌尿中抗原検査 ・・ 血中の肺炎球菌(肺炎・髄膜炎などの際に)の抗原が尿に排出されるのを利用。測定はキットで行う。治療が効いた後でも陽性が持続することがあり、数週間という報告さえある。なのでちょっと以前の発症を検出することがありうるので、問診が重要(既往の感染)。また小児での鼻咽頭の定着による陽性化もあるので過大評価は禁物。以上のことをふまえると本検査は補助的診断の位置づけと考えるべき。
□ 肺炎球菌ワクチン ・・ 商品名ニューモバックス。値段は実費5千円と高いが効果は5年続くとされている。効果そのものには賛否両論あり。COPDの増悪の主な原因菌が肺炎球菌であることを考えると推奨されるべきではあるが、実際これがCOPD患者の予後を改善したというデータはない。
□ 肺癌(治療) ・・ 以下、NSCLC(非小細胞肺癌)とSCLC(小細胞癌)とに分けて。
● NSCLC
○ 中心型早期肺癌 のガイドライン
・ 区域気管支より中枢側に発生した肺癌。そのうち早期癌は、癌の浸潤が気管支壁を超えず、かつリンパ節転移や遠隔転移がない(CT・エコー骨シンチ等で確認)ものをいう。限局性ではあるが多発性の病変もありうる。内視鏡的には病巣の長径が2cm以下であり組織学的に扁平上皮癌であることが原則。
・ 日本では胸部レントゲン+喀痰細胞診によるスクリーニングが有効とされている。CTでのスクリーニングは発見が困難である。
・ 蛍光内視鏡(扁平上皮化生などの早期病変を発見)、気管支超音波(進達度診断に有用)はグレードC(勧めるだけの根拠が明確でない。つまりEBM不足)の段階。
・ 治療は・・
? 外科治療 ・・ 5年生存率80-100%と良好で、根治的治療といえる。
? 光線力学的治療(PDT) ・・ 5年生存率90%以上。好適応は長径1cm以内かつ進達度が粘膜下層まで。
? 気管支腔内照射 ・・ グレードC。
○ ?・?期肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ 標準術式は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術。症例によって気管支形成術(局所病変が完全切除可能な場合)、隣接臓器の合併切除(胸壁合併切除、横隔膜合併切除、Superior Sulcus Tumor切除など)を選択する。※ Superior Sulcus Tumor切除 ・・ Superior Sulcus Tumorは肺尖部より発生し胸壁に浸潤し腕神経叢、交感神経節、鎖骨下動脈、椎体などに浸潤する肺癌。通常、術前に放射線照射を組み合わせる。5生率は25-30%。
・ 術後の5生率はIA期で70-80%と良好だが、IBで60%へ落ち込み、それ以上だとさらに落ち込んでいく。
・ 術前・後化学療法、術前導入放射線治療の併用について ・・ これにより予後が改善されるという根拠は乏しい(グレードC)。
・ ?・?期でも医学的に切除不能な場合、放射線治療単独の適応がある(ただしグレードB)。
・ VATSに関しては推奨できるだけのデータが揃っておらず(手術との比較試験なし)グレードC。これまでのデータでは?期に関しては手術に比し予後は同等またはそれ以上といわれている。
○ 縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 切除可能な?A期 ・・ T3N1では第一選択。一方、T1-3N2の場合の手術意義は明確でない。
・ 特にN2と診断された例の予後は不良であり、この場合は集学的治療(術前化学・放射線療法や術後化学療法)の必要性が指摘されている。しかしいずれも予後改善のデータが出揃っていないのが現状。
○ 隣接臓器浸潤(気管分岐部、胸壁、胸壁肺尖部、横隔膜、左心房、大血管)を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 隣接臓器浸潤の場合、手術データがかなり乏しいのでEBM的な考え方はない。
・ 単純な胸壁浸潤の場合T3でありリンパ節転移しだいでIIB以上となるが、その他(上述)の臓器では無条件でIIIBと決まる。なお胸壁浸潤でリンパ節転移なしのcT3N0M0(IIB)ならば肺葉切除以上の根治術+胸壁合併切除が推奨され予後が期待できる(5生率50%弱)。N1-2になると推奨への言及はない。
・ 気管分岐部の浸潤する癌は手術のリスクが大きく、cN01症例で(N2を否定すること)病変が気管支分岐部周囲に限局する場合に推奨。
・ 横隔膜、左心房、大血管の切除に関しては根拠に乏しくグレードC。
○ 切除不能肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ ?期 ・・ 根治TRTが可能な局所NSCLCには、化学療法(グレードA)が強く勧められる。化学放射線療法(化学療法+TRT)の適応にならない場合(高齢者やPS不良例)でも根治的単独TRTを行う(グレードB)。化学放射線治療はPS1・2の全身状態良好患者に行う。TRTと化学療法は同時併用で行い、TRTは1日1回2Gyの通常分割照射(60Gy/30回/6週)が推奨されている。
※TRT:放射線療法
・ ?期 ・・ 化学療法は生存期間・QOLを改善する(グレードA。ただし高齢者ではグレードB)。対症療法(BSC)に比し生存期間中央値(MST)で6-8週、1年生存率を10%改善する。化学療法では従来よりシスプラチンを含むことが好ましいとされ、新規抗癌剤の登場もあったが併用による有効性の差はごく僅かである。プラチナ製剤が使用不可なら新規抗癌剤の単剤が推奨されている。
○ 再発NSCLCの化学療法
・ セカンドラインとしてはドセタキセルの投与を行う(グレードB)。BSCより予後良好。
● SCLC
○ LD-SCLC:限局型(ただし?期以外)
・ 初期治療として、化学療法+TRTの同時併用を行う(グレードA)。これでCRが得られればPCI(予防的全脳照射)を行う(グレードA
○ ED-SCLC:進展型
・ PS4を除き、初期治療として化学療法を行う(グレードA)。シスプラチン+エトポシドの併用が標準的治療である(グレードA)。シスプラチン+イリノテカンも有用だがグレードB。PS不良例でも単剤より多剤併用を行う。
・ 無治療SCLCではMSTが4ヶ月以内なのに対して、併用化学療法の場合のそれは10ヶ月以上を越す。
○ 再発
・ 前治療終了90日以上の再発でも化学療法への反応は期待できるが根拠という点では乏しい(グレードC)。
□ 肺気腫 ・・ ごく一部は先天性。大半は喫煙の積み重ね。機能しない肺が空胞様に拡大し、呼吸不全をきたす。高度だと在宅酸素療法が必要。手術は確実でない。また根治する薬もない。酸素は予後を改善し、喫煙は進行を遅らせる、この2点だけしかわかってない。
□ 肺血栓塞栓症(PTE)=エコノミークラス症候群 ・・ 肺塞栓症と肺血栓症を総称して呼ぶ。肺動脈が血栓で塞がれて起こる呼吸困難。原因は下肢から飛んできた血栓のことが多い。
□ 肺水腫 ・・ 肺の中が水浸しで呼吸が苦しくなる。大まかにいうと以下に分類。
? 心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいで、つまり心不全で肺水腫になる。
? 非心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいではないが、肺炎など心臓以外の内臓疾患で起こった肺水腫。
? 低アルブミン血症による肺水腫 ・・ 栄養不良による。末期癌か点滴のカロリー不足など。
? 薬物による肺水腫 ・・ 薬物により肺の中の血管の隙間が開き、水分が肺にたまる。尾崎豊の死因。
? 溺水による肺水腫
※ 特殊な例で、『高地肺水腫』あり。映画「バーティカル・リミット」を参照。ステロイド注射剤(デキサメサゾンと思われる)の取り合いとなった場面が見苦しい。専門家によるとあそこまで劇的には効かないらしい。
□ 肺性心 ・・ 肺のせいで心臓が悪くなった状態、と覚える。正確には肺高血圧のために右心不全となった状態だ。肺気腫から続発したものが多い。
□ 肺動脈(PA) ・・ 右心室から出る、肺の手前の血管。つまり血は静脈血で酸素が少ない。途中で左右の2つに分かれる。
この血管に血栓が詰まると「肺血栓塞栓症」と呼ばれる。
□ 肺胞蛋白症=pulmonary alveolar proteinosis=PAP ・・ 肺胞・呼吸細気管支内に(つまり末梢気道に)サーファクタントが貯留する疾患。先天性、基礎疾患のある二次性、特発性とがある。30-50代に多く男>女。
本邦では9割が特発性で、この原因が抗GM-CSF抗体(本症に特異的!)であることが最近発見された。
この自己抗体が肺胞内のGM-CSF活性をブロックし、最終的に肺胞内のサーファクタントが蓄積する。つまり本症は自己免疫疾患である。
症状は労作性呼吸困難、咳嗽、喀痰、軽度の発熱などで無症状も多い。画像では初期はスリガラス陰影で進行すると斑状融合影。CTでのメロンの皮状陰影(crazy paving sign)は有名。
採血ではKL-6などの線維化マーカーも上昇、気管支鏡でのBALF→乳白色で好酸性・PAS陽性の無構造物質などを認め、この物質はさらに生検(TBLB)にて証明される。
治療はGM-CSF(吸入)療法が有効。3ヶ月の無治療期間ののちに開始され、3ヶ月かけて吸入・休薬を繰り返す。コストが高いのが難。
※ GM-CSFは増殖性のサイトカインで、肺胞マクロファージを活性化させてサーファクタントの代謝(分解・再利用して一定の秩序保つ)を回転させる。本症では自己抗体により本機能が低下する。
□ ハイポ ・・ 通常は「甲状腺機能低下症」のことを指す、医者用語。心臓超音波などで動きの悪い場所をさすときにも使う表現。
□ 博士号=ティーテル=学位 ・・ 実験→論文作成→教授らの検閲→手直し→検閲→医局内で合格→提出→学内で合格してやっと与えられるもの。
□ 白衣 ・・ 医者・ナース・技師らが着る衣類。通常は病院から支給され、洗濯も随時してくれる。汚い白衣は院内感染と患者・家族の信頼失墜につながる。
□ ハチ刺傷 ・・ ハチ毒にはヒスタミン・セロトニン(痒み・痛み)、キニン類(発赤・熱感・腫脹)などからなる。毒性の強さはスズメバチ>アシナガバチ>ミツバチ>クマバチ。アレルギー反応起こすことあり2つに分けられる。?局所アレルギー:アシナガバチに多い。刺された周囲に蕁麻疹。反応が大きいと次回刺されたときにアナフィラキシー起こす恐れあり。?全身アナフィラキシー反応:スズメバチに多い。刺されて直後〜15分内に起こる。
ミツバチは針を残すので爪で弾き飛ばす。局所ならステロイド軟膏、抗ヒスタミン・抗セロトニン剤処方。
□ 白血球=ロイコ=しろ ・・ 炎症を起こすと増える。ステロイドの副作用や脱水、白血病でも上がる。心筋梗塞の初期なども。少ない場合は重症感染や白血病、薬の副作用なども疑う。
□ 派閥(はばつ) ・・ グループどうしの確執。病院同士、医局同士、医局内のグループどうしなど、スケールは大小あり。
□ 針刺し事故
・ B型肝炎の場合 ・・ ワクチン定期的接種、事故後の対応は全体的に徹底されているらしい。免疫なしで針刺し事故した場合、グロブリンを投与の上48時間以内にワクチン投与を追加する。
・ C型肝炎の場合 ・・ ある検討では実際に急性C型を発症するのは4%前後と低め。予防的にインターフェロンをいくかどうか、発症した時点でいくかどうかなどの点では統一した見解はない。予防投与によって、その後インターフェロンすることになった場合の治療効果減弱、インターフェロンそのものによるアナフィラキシーなどへの心配がある。一方、発症後の投与は有効だというデータが多い。実際、1ヶ月間は労災でみてくれる。
・ 針刺し事故時の対応 ・・ 針刺し部の血液を搾り出し、流水で洗浄10分し、消毒。終わったら採血(一般+HCV抗体)。患者側のHCV-RNA定量を測定し、ウイルス量を確認。事故後半年間は血液検査でのフォローを続ける。
□ ハルン=尿量。ハルントータル=1日尿量。
□ 半座位=セミファーラー位 ・・ 座る角度が直角でなく、45度くらいの角度。心不全・喘息で少し息苦しいときや、腰が悪くて座りにくい人へのレントゲン撮影で望まれる体位。
□ ハンプ ・・ ハンプは商品名で、物質名はカルペリチド。急性心不全のときの利尿剤として、持続投与にて使用。
□ 肺炎球菌ワクチン ・・ 商品名ニューモバックス。値段は実費5千円と高いが効果は5年続くとされている。効果そのものには賛否両論あり。COPDの増悪の主な原因菌が肺炎球菌であることを考えると推奨されるべきではあるが、実際これがCOPD患者の予後を改善したというデータはない。
□ 肺癌(治療) ・・ 以下、NSCLC(非小細胞肺癌)とSCLC(小細胞癌)とに分けて。
● NSCLC
○ 中心型早期肺癌 のガイドライン
・ 区域気管支より中枢側に発生した肺癌。そのうち早期癌は、癌の浸潤が気管支壁を超えず、かつリンパ節転移や遠隔転移がない(CT・エコー骨シンチ等で確認)ものをいう。限局性ではあるが多発性の病変もありうる。内視鏡的には病巣の長径が2cm以下であり組織学的に扁平上皮癌であることが原則。
・ 日本では胸部レントゲン+喀痰細胞診によるスクリーニングが有効とされている。CTでのスクリーニングは発見が困難である。
・ 蛍光内視鏡(扁平上皮化生などの早期病変を発見)、気管支超音波(進達度診断に有用)はグレードC(勧めるだけの根拠が明確でない。つまりEBM不足)の段階。
・ 治療は・・
? 外科治療 ・・ 5年生存率80-100%と良好で、根治的治療といえる。
? 光線力学的治療(PDT) ・・ 5年生存率90%以上。好適応は長径1cm以内かつ進達度が粘膜下層まで。
? 気管支腔内照射 ・・ グレードC。
○ ?・?期肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ 標準術式は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術。症例によって気管支形成術(局所病変が完全切除可能な場合)、隣接臓器の合併切除(胸壁合併切除、横隔膜合併切除、Superior Sulcus Tumor切除など)を選択する。※ Superior Sulcus Tumor切除 ・・ Superior Sulcus Tumorは肺尖部より発生し胸壁に浸潤し腕神経叢、交感神経節、鎖骨下動脈、椎体などに浸潤する肺癌。通常、術前に放射線照射を組み合わせる。5生率は25-30%。
・ 術後の5生率はIA期で70-80%と良好だが、IBで60%へ落ち込み、それ以上だとさらに落ち込んでいく。
・ 術前・後化学療法、術前導入放射線治療の併用について ・・ これにより予後が改善されるという根拠は乏しい(グレードC)。
・ ?・?期でも医学的に切除不能な場合、放射線治療単独の適応がある(ただしグレードB)。
・ VATSに関しては推奨できるだけのデータが揃っておらず(手術との比較試験なし)グレードC。これまでのデータでは?期に関しては手術に比し予後は同等またはそれ以上といわれている。
○ 縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 切除可能な?A期 ・・ T3N1では第一選択。一方、T1-3N2の場合の手術意義は明確でない。
・ 特にN2と診断された例の予後は不良であり、この場合は集学的治療(術前化学・放射線療法や術後化学療法)の必要性が指摘されている。しかしいずれも予後改善のデータが出揃っていないのが現状。
○ 隣接臓器浸潤(気管分岐部、胸壁、胸壁肺尖部、横隔膜、左心房、大血管)を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 隣接臓器浸潤の場合、手術データがかなり乏しいのでEBM的な考え方はない。
・ 単純な胸壁浸潤の場合T3でありリンパ節転移しだいでIIB以上となるが、その他(上述)の臓器では無条件でIIIBと決まる。なお胸壁浸潤でリンパ節転移なしのcT3N0M0(IIB)ならば肺葉切除以上の根治術+胸壁合併切除が推奨され予後が期待できる(5生率50%弱)。N1-2になると推奨への言及はない。
・ 気管分岐部の浸潤する癌は手術のリスクが大きく、cN01症例で(N2を否定すること)病変が気管支分岐部周囲に限局する場合に推奨。
・ 横隔膜、左心房、大血管の切除に関しては根拠に乏しくグレードC。
○ 切除不能肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ ?期 ・・ 根治TRTが可能な局所NSCLCには、化学療法(グレードA)が強く勧められる。化学放射線療法(化学療法+TRT)の適応にならない場合(高齢者やPS不良例)でも根治的単独TRTを行う(グレードB)。化学放射線治療はPS1・2の全身状態良好患者に行う。TRTと化学療法は同時併用で行い、TRTは1日1回2Gyの通常分割照射(60Gy/30回/6週)が推奨されている。
※TRT:放射線療法
・ ?期 ・・ 化学療法は生存期間・QOLを改善する(グレードA。ただし高齢者ではグレードB)。対症療法(BSC)に比し生存期間中央値(MST)で6-8週、1年生存率を10%改善する。化学療法では従来よりシスプラチンを含むことが好ましいとされ、新規抗癌剤の登場もあったが併用による有効性の差はごく僅かである。プラチナ製剤が使用不可なら新規抗癌剤の単剤が推奨されている。
○ 再発NSCLCの化学療法
・ セカンドラインとしてはドセタキセルの投与を行う(グレードB)。BSCより予後良好。
● SCLC
○ LD-SCLC:限局型(ただし?期以外)
・ 初期治療として、化学療法+TRTの同時併用を行う(グレードA)。これでCRが得られればPCI(予防的全脳照射)を行う(グレードA
○ ED-SCLC:進展型
・ PS4を除き、初期治療として化学療法を行う(グレードA)。シスプラチン+エトポシドの併用が標準的治療である(グレードA)。シスプラチン+イリノテカンも有用だがグレードB。PS不良例でも単剤より多剤併用を行う。
・ 無治療SCLCではMSTが4ヶ月以内なのに対して、併用化学療法の場合のそれは10ヶ月以上を越す。
○ 再発
・ 前治療終了90日以上の再発でも化学療法への反応は期待できるが根拠という点では乏しい(グレードC)。
□ 肺気腫 ・・ ごく一部は先天性。大半は喫煙の積み重ね。機能しない肺が空胞様に拡大し、呼吸不全をきたす。高度だと在宅酸素療法が必要。手術は確実でない。また根治する薬もない。酸素は予後を改善し、喫煙は進行を遅らせる、この2点だけしかわかってない。
□ 肺血栓塞栓症(PTE)=エコノミークラス症候群 ・・ 肺塞栓症と肺血栓症を総称して呼ぶ。肺動脈が血栓で塞がれて起こる呼吸困難。原因は下肢から飛んできた血栓のことが多い。
□ 肺水腫 ・・ 肺の中が水浸しで呼吸が苦しくなる。大まかにいうと以下に分類。
? 心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいで、つまり心不全で肺水腫になる。
? 非心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいではないが、肺炎など心臓以外の内臓疾患で起こった肺水腫。
? 低アルブミン血症による肺水腫 ・・ 栄養不良による。末期癌か点滴のカロリー不足など。
? 薬物による肺水腫 ・・ 薬物により肺の中の血管の隙間が開き、水分が肺にたまる。尾崎豊の死因。
? 溺水による肺水腫
※ 特殊な例で、『高地肺水腫』あり。映画「バーティカル・リミット」を参照。ステロイド注射剤(デキサメサゾンと思われる)の取り合いとなった場面が見苦しい。専門家によるとあそこまで劇的には効かないらしい。
□ 肺性心 ・・ 肺のせいで心臓が悪くなった状態、と覚える。正確には肺高血圧のために右心不全となった状態だ。肺気腫から続発したものが多い。
□ 肺動脈(PA) ・・ 右心室から出る、肺の手前の血管。つまり血は静脈血で酸素が少ない。途中で左右の2つに分かれる。
この血管に血栓が詰まると「肺血栓塞栓症」と呼ばれる。
□ 肺胞蛋白症=pulmonary alveolar proteinosis=PAP ・・ 肺胞・呼吸細気管支内に(つまり末梢気道に)サーファクタントが貯留する疾患。先天性、基礎疾患のある二次性、特発性とがある。30-50代に多く男>女。
本邦では9割が特発性で、この原因が抗GM-CSF抗体(本症に特異的!)であることが最近発見された。
この自己抗体が肺胞内のGM-CSF活性をブロックし、最終的に肺胞内のサーファクタントが蓄積する。つまり本症は自己免疫疾患である。
症状は労作性呼吸困難、咳嗽、喀痰、軽度の発熱などで無症状も多い。画像では初期はスリガラス陰影で進行すると斑状融合影。CTでのメロンの皮状陰影(crazy paving sign)は有名。
採血ではKL-6などの線維化マーカーも上昇、気管支鏡でのBALF→乳白色で好酸性・PAS陽性の無構造物質などを認め、この物質はさらに生検(TBLB)にて証明される。
治療はGM-CSF(吸入)療法が有効。3ヶ月の無治療期間ののちに開始され、3ヶ月かけて吸入・休薬を繰り返す。コストが高いのが難。
※ GM-CSFは増殖性のサイトカインで、肺胞マクロファージを活性化させてサーファクタントの代謝(分解・再利用して一定の秩序保つ)を回転させる。本症では自己抗体により本機能が低下する。
□ ハイポ ・・ 通常は「甲状腺機能低下症」のことを指す、医者用語。心臓超音波などで動きの悪い場所をさすときにも使う表現。
□ 博士号=ティーテル=学位 ・・ 実験→論文作成→教授らの検閲→手直し→検閲→医局内で合格→提出→学内で合格してやっと与えられるもの。
□ 白衣 ・・ 医者・ナース・技師らが着る衣類。通常は病院から支給され、洗濯も随時してくれる。汚い白衣は院内感染と患者・家族の信頼失墜につながる。
□ ハチ刺傷 ・・ ハチ毒にはヒスタミン・セロトニン(痒み・痛み)、キニン類(発赤・熱感・腫脹)などからなる。毒性の強さはスズメバチ>アシナガバチ>ミツバチ>クマバチ。アレルギー反応起こすことあり2つに分けられる。?局所アレルギー:アシナガバチに多い。刺された周囲に蕁麻疹。反応が大きいと次回刺されたときにアナフィラキシー起こす恐れあり。?全身アナフィラキシー反応:スズメバチに多い。刺されて直後〜15分内に起こる。
ミツバチは針を残すので爪で弾き飛ばす。局所ならステロイド軟膏、抗ヒスタミン・抗セロトニン剤処方。
□ 白血球=ロイコ=しろ ・・ 炎症を起こすと増える。ステロイドの副作用や脱水、白血病でも上がる。心筋梗塞の初期なども。少ない場合は重症感染や白血病、薬の副作用なども疑う。
□ 派閥(はばつ) ・・ グループどうしの確執。病院同士、医局同士、医局内のグループどうしなど、スケールは大小あり。
□ 針刺し事故
・ B型肝炎の場合 ・・ ワクチン定期的接種、事故後の対応は全体的に徹底されているらしい。免疫なしで針刺し事故した場合、グロブリンを投与の上48時間以内にワクチン投与を追加する。
・ C型肝炎の場合 ・・ ある検討では実際に急性C型を発症するのは4%前後と低め。予防的にインターフェロンをいくかどうか、発症した時点でいくかどうかなどの点では統一した見解はない。予防投与によって、その後インターフェロンすることになった場合の治療効果減弱、インターフェロンそのものによるアナフィラキシーなどへの心配がある。一方、発症後の投与は有効だというデータが多い。実際、1ヶ月間は労災でみてくれる。
・ 針刺し事故時の対応 ・・ 針刺し部の血液を搾り出し、流水で洗浄10分し、消毒。終わったら採血(一般+HCV抗体)。患者側のHCV-RNA定量を測定し、ウイルス量を確認。事故後半年間は血液検査でのフォローを続ける。
□ ハルン=尿量。ハルントータル=1日尿量。
□ 半座位=セミファーラー位 ・・ 座る角度が直角でなく、45度くらいの角度。心不全・喘息で少し息苦しいときや、腰が悪くて座りにくい人へのレントゲン撮影で望まれる体位。
□ ハンプ ・・ ハンプは商品名で、物質名はカルペリチド。急性心不全のときの利尿剤として、持続投与にて使用。
サーガマニュアル2007秋 ば ひ び ぴ
2007年9月17日□ バイアル ・・ 注射の薬品が入った小さなビン。
□ バイタル=バイタルサイン ・・ 患者の基本的な情報。脈・熱・血圧など。通常と違えばドクターへの報告、他のバイタルとの照らし合わせが必要。
□ (病院の)売店のおばちゃん ・・ 愛想はよくても要注意。病院一番の情報通であることが多い。患者・患者家族やスタッフとの会話が多いのだ。
□ バタフライシャドウ ・・ 胸部レントゲンで、あたかも蝶が羽を拡げるがごとく見える所見。蝶の部分は白、それ以外は黒。黒はなんとか正常な肺で、白は水・炎症で水浸しになった状態。つまり「肺水腫」の所見。
※ 白・黒が逆の「逆バタフライシャドウ」は好酸球性肺炎の特徴的所見。
□ 抜管(ばっかん) ・・ 人工呼吸器から離脱し、挿管チューブを抜いてあげること。痰を自力で出せることが大前提。結局また呼吸不全となりまたチューブを挿入するのが「再挿管」。
□ バックアップ ・・ 援助します、ってこと。カタカナにすると聞こえはいい。
□ バリックス=varix ・・ 食道静脈瘤。肝硬変患者は胃カメラで有無を確認すべき。
□ バルサルバ手技=valsalva手技 ・・ 息こらえのこと。一気に吸って、一気に止める。定義では十分な吸気のあと鼻を閉じ、10-15秒息を止める。胸腔内圧の変化を起こさせ、迷走神経から延髄へ伝わる刺激を起こさせ、その反応・変動(血圧・脈)をみる。PSVTの対処法の1つでもある。
□ バンコマイシン=バンコ=VCM ・・ MRSAに対する薬剤の1つ。最近はこれの耐性菌も話題。8時間毎投与が基本。副作用で腎障害あり。職場では「バンコ」と略される。
□ パーキンソン症候群 ・・ わが国での診断基準では?典型的な左右差のある安静時振戦がある、?歯車様固縮、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上が存在する。この??のいずれかに該当する場合である。実際は4大徴候である振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害のうち2つがあればパーキンソン症候群と診断している。?一次性パーキンソン症候群(パーキンソン病など)、?変性疾患に伴うパーキンソン症候群(Shy-Drager症候群など)、?二次性パーキンソン症候群(薬物性、中毒性など)、に分けられる。
□ パーキンソン病 ・・ アルツハイマー病に次ぐ神経変性疾患で、有病率は1000人に1人、65歳以上では100人に1人。黒質の神経細胞が8割脱落してはじめて臨床症状が出現する。症状(症候群を参照)が一側優位性であることが特徴として重要。治療は各患者の状態によって異なるので、いわゆる<テーラーメイド治療>が必要となる。
※ マイケルJが主催するサイトhttp://www.michaeljfox.org/あり。
□ パニック障害=パニック・ディスオーダー=panic disorder=PD ・・ 心の問題(ストレス・性格・環境)や生物学的な異常により動悸・呼吸困難・めまい・身震い・発汗・吐き気・しびれ感・・・のうち4つ以上が10分以内に出現(パニック発作=panic attack=PA)し繰り返す状態。ただ発作そのもののキッカケは特定できず、予期せず突然起こるのが特徴。以前は20-40歳代に多かったが最近では高齢者でも珍しくない。Gormanの仮説では、進行するとまず予期不安(また起こしたらどうしよう?)→恐怖症→回避行動(いざという時のため孤独な場所を避ける)→二次的うつへ移行する、と考えられている。発作の間隔は様々。治療は抗うつ剤(特にSSRI)、ベンゾジアゼピン系、行動療法。
□ パラコート中毒 ・・ Pq=パラコート(除草剤)という農薬を飲んだことによる(皮膚では長時間の接触で起こる。吸入での報告はごくまれ)中毒で、死亡率は70-80%以上。Pqイオンは体内で酸化還元反応を繰り返し(redox cycling)、その過程で活性酸素を生成、結果的に細胞障害を引き起こす。Pqは主に小腸から速やかに吸収され速やかに体内に分布するのが恐ろしい。特に腎臓と肺への集積が著明。ほとんどの例で嘔吐あり。服毒の量によって症状は様々。大量では数時間内にショック、代謝性アシドーシス(血液ガスでBEが低下)・呼吸困難をきたし24-48時間内に死亡する。中等量では初期に下痢・腹痛などの消化器症状、口腔粘膜びらん、舌炎がみられるが、数日すると肝・腎機能障害、低酸素状態となり1-2週以内に死亡することが多い。少量投与でも程度の差はあれ同様の症状を来たしうる。したがって、原因不明の肝腎機能障害、低酸素状態を認める場合はPq中毒を疑う必要がある。また手指・口周囲が青く(着色剤による)染まってないかどうかも診断のキッカケとなる。尿中Pq定性が確実な検査法。治療は・・皮膚などについた部分の洗浄に、胃洗浄(さらに活性炭、マグコロール(下痢目的)も使用)。呼吸管理。強制利尿もするが脱水に注意。血液浄化法を開始、一般的には連日4-5時間のDHP(血液吸着)を選択する。
□ パルス療法=ステロイド・パルス療法=パルス ・・ ステロイドの3日間限定の大量投与。ステロイドの抗炎症作用を大量・短期間に投与することで、炎症・免疫にブレーキをかける。感染症の増悪、糖尿病の悪化に注意。
□ パルスオキシメーター ・・ 動脈血中の酸素飽和度を指の表面から測定。職場では「サチュレーション」などと呼ばれる。
□ パンパン ・・ 浮腫で体がボテッと腫れていることの表現。「浮腫ってる(ふしゅってる)」と表現する人も。
□ ヒアルロン酸 ・・ 「?型コラーゲン」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。一方胸水中のヒアルロン酸は「悪性胸膜中皮腫」の診断項目。
□ 非心臓性胸痛=non-cardiac chest pain=NCCP ・・ 心臓以外による胸の痛みという文字通りの表現で、原因としてGERD(胃食道逆流症)の存在が重要で、4〜6割を占めるといわれている。なので患者が望むからといってNSAIDの投与は安易にすべきでない。心臓由来の痛みと鑑別する方法としてPPIテスト(プロトンポンプ阻害剤を2週間飲んでもらい症状がよくなるかみる)がある。GERD以外には食道運動機能異常(診断は食道内圧測定)がありこの場合PPIは無効でCa拮抗薬が処方される。
□ 一言かけておく ・・ 患者への検査・上司への依頼など、人づてや文書で済ますより、医師より直接一言かけておく姿勢・配慮・柔軟・謙虚さが大切だ。
□ ヒドロ ・・ 水腎症を略してこう呼ばれる。CTで腎臓の腫大がみられる。たいてい尿の上への逆流によるもので、尿路感染を合併することが多い。
□ 非閉塞性腸間膜梗塞症=non-occlusive mesenteric ischemia=NOMI ・・ 心血管手術後、あるいは血液透析後に起こすことのある、急性の腸間膜血行障害の1つ(10-30%)。腸間膜動脈閉塞のような太い動脈の血栓閉塞でなく、血管の攣縮による(文節状・非連続性病変)虚血が機序として考えられている。腸間膜動脈閉塞では閉塞血管以下の虚血ということなので壊死する領域は部分的で明らかだが、本症の場合は広範、部分的に虚血が生じるので開腹しても切除不可能な場合が多く、致死率が高い(70-90%)。なので内科的治療ができる段階での早期発見が重要となる。本症の初期症状は腹痛・悪心・嘔吐などで、以後徐々に腸閉塞へと進行する。疑われた場合は血管造影よりも侵襲の少ない腹部造影MDCT(MSCT)により腸間膜の血管の閉塞状態を確認し、攣縮を証明する。診断確定したらPGE1の持続静注。
□ 100パー=100%
□ ヒューマン・コミュニケーション ・・ 医師の医療トラブルの原因の1つとして患者とのコミュニケーション不足が問われ、それを解決すべく立ち上げられた授業。人間関係体験学習を、医学部入学間もない教育課程で身に着けようというものhttp://hp1.tcbnet.ne.jp/~taka255/。
□ 頻脈 ・・ 定義では1分あたり100回以上の脈。「頻拍」と同意。
□ ビタミンE ・・ 癌や心循環器疾患予防に有効と以前からいわれてきたが、2005年7月報告の長期間(10年)にわたる大規模試験(ビタミンE内服vsプラセボ)では差がなかった。
□ ビトロ=vitro ・・ 動物実験でなく、試験管などの器具内で行われる実験。
□ 微熱=サブフィーバー ・・ 37.0-37.9℃。地方により熱の範囲はいろいろ。慢性的な微熱も精査の対象になる。特に肺結核は除外すべし。
□ ビボ=vivo ・・ 動物実験。通常はビトロの検査が確立されてはじめて行われる。動物を使うだけに高価。
□ 病棟医長 ・・ 病棟患者の振り分け、主治医決めなど行う。いろいろ相談なども来るのでかなりストレス。履歴書的には全く意味がない。
□ 病歴要約=(入院)サマリー ・・ 患者が入院してから退院するまでを綴った、1つのストーリー。最後の考察をいかに書くかで悩み、またそれが提出遅れの原因となる。転勤してこれを書き忘れると、戻ってきて書かされる羽目になる。
□ 微量アルブミン尿 ・・ 糖尿病性腎症の初期マーカー。つまり糖尿病が進行して腎臓の合併症を素早く<早期発見>する検査項目。だが腎臓だけにとどまらず、心血管疾患の予測因子であることも分かっている。
□ ピークフロー ・・ 喘息の評価に使用される。これを測定するのがピークフローメーターで、それを記録していくのが喘息日誌。低下傾向なら早めに受診しよう。
□ ピシバニール=ピシバ ・・ 胸水をドレナージしたあと、胸膜癒着させるために使用する伝統ある薬剤。炎症をわざと起こさせ、接着させる。従って高熱・痛みを伴う。
□ ピッグテイル・カテーテル ・・ 先っちょがブタのシッポ様にクルクル巻きのカテーテル。通常は左心室の造影目的で使用される。
□ ピリン系 ・・ セデス・メチロンが代表例。本来は解熱鎮痛剤。これへのアレルギーがあればカルテの表紙に<ピリン禁>と赤で書いてるはずだ。
□ ピロリ=ヘリコバクター・ピロリ=HP ・・ 胃・十二指腸潰瘍の起炎菌。これが検出されて、なお潰瘍を繰り返す人は「除菌療法」の適応となる。薬剤を3種類、1週間内服。だが10人に2−3人は治療に失敗するともいわれる。
□ ピンク針(ぴんくしん) ・・ 18G(ゲージ)針。注射用の針で最も太い部類。糸の縫合にも使える。
□ バイタル=バイタルサイン ・・ 患者の基本的な情報。脈・熱・血圧など。通常と違えばドクターへの報告、他のバイタルとの照らし合わせが必要。
□ (病院の)売店のおばちゃん ・・ 愛想はよくても要注意。病院一番の情報通であることが多い。患者・患者家族やスタッフとの会話が多いのだ。
□ バタフライシャドウ ・・ 胸部レントゲンで、あたかも蝶が羽を拡げるがごとく見える所見。蝶の部分は白、それ以外は黒。黒はなんとか正常な肺で、白は水・炎症で水浸しになった状態。つまり「肺水腫」の所見。
※ 白・黒が逆の「逆バタフライシャドウ」は好酸球性肺炎の特徴的所見。
□ 抜管(ばっかん) ・・ 人工呼吸器から離脱し、挿管チューブを抜いてあげること。痰を自力で出せることが大前提。結局また呼吸不全となりまたチューブを挿入するのが「再挿管」。
□ バックアップ ・・ 援助します、ってこと。カタカナにすると聞こえはいい。
□ バリックス=varix ・・ 食道静脈瘤。肝硬変患者は胃カメラで有無を確認すべき。
□ バルサルバ手技=valsalva手技 ・・ 息こらえのこと。一気に吸って、一気に止める。定義では十分な吸気のあと鼻を閉じ、10-15秒息を止める。胸腔内圧の変化を起こさせ、迷走神経から延髄へ伝わる刺激を起こさせ、その反応・変動(血圧・脈)をみる。PSVTの対処法の1つでもある。
□ バンコマイシン=バンコ=VCM ・・ MRSAに対する薬剤の1つ。最近はこれの耐性菌も話題。8時間毎投与が基本。副作用で腎障害あり。職場では「バンコ」と略される。
□ パーキンソン症候群 ・・ わが国での診断基準では?典型的な左右差のある安静時振戦がある、?歯車様固縮、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上が存在する。この??のいずれかに該当する場合である。実際は4大徴候である振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害のうち2つがあればパーキンソン症候群と診断している。?一次性パーキンソン症候群(パーキンソン病など)、?変性疾患に伴うパーキンソン症候群(Shy-Drager症候群など)、?二次性パーキンソン症候群(薬物性、中毒性など)、に分けられる。
□ パーキンソン病 ・・ アルツハイマー病に次ぐ神経変性疾患で、有病率は1000人に1人、65歳以上では100人に1人。黒質の神経細胞が8割脱落してはじめて臨床症状が出現する。症状(症候群を参照)が一側優位性であることが特徴として重要。治療は各患者の状態によって異なるので、いわゆる<テーラーメイド治療>が必要となる。
※ マイケルJが主催するサイトhttp://www.michaeljfox.org/あり。
□ パニック障害=パニック・ディスオーダー=panic disorder=PD ・・ 心の問題(ストレス・性格・環境)や生物学的な異常により動悸・呼吸困難・めまい・身震い・発汗・吐き気・しびれ感・・・のうち4つ以上が10分以内に出現(パニック発作=panic attack=PA)し繰り返す状態。ただ発作そのもののキッカケは特定できず、予期せず突然起こるのが特徴。以前は20-40歳代に多かったが最近では高齢者でも珍しくない。Gormanの仮説では、進行するとまず予期不安(また起こしたらどうしよう?)→恐怖症→回避行動(いざという時のため孤独な場所を避ける)→二次的うつへ移行する、と考えられている。発作の間隔は様々。治療は抗うつ剤(特にSSRI)、ベンゾジアゼピン系、行動療法。
□ パラコート中毒 ・・ Pq=パラコート(除草剤)という農薬を飲んだことによる(皮膚では長時間の接触で起こる。吸入での報告はごくまれ)中毒で、死亡率は70-80%以上。Pqイオンは体内で酸化還元反応を繰り返し(redox cycling)、その過程で活性酸素を生成、結果的に細胞障害を引き起こす。Pqは主に小腸から速やかに吸収され速やかに体内に分布するのが恐ろしい。特に腎臓と肺への集積が著明。ほとんどの例で嘔吐あり。服毒の量によって症状は様々。大量では数時間内にショック、代謝性アシドーシス(血液ガスでBEが低下)・呼吸困難をきたし24-48時間内に死亡する。中等量では初期に下痢・腹痛などの消化器症状、口腔粘膜びらん、舌炎がみられるが、数日すると肝・腎機能障害、低酸素状態となり1-2週以内に死亡することが多い。少量投与でも程度の差はあれ同様の症状を来たしうる。したがって、原因不明の肝腎機能障害、低酸素状態を認める場合はPq中毒を疑う必要がある。また手指・口周囲が青く(着色剤による)染まってないかどうかも診断のキッカケとなる。尿中Pq定性が確実な検査法。治療は・・皮膚などについた部分の洗浄に、胃洗浄(さらに活性炭、マグコロール(下痢目的)も使用)。呼吸管理。強制利尿もするが脱水に注意。血液浄化法を開始、一般的には連日4-5時間のDHP(血液吸着)を選択する。
□ パルス療法=ステロイド・パルス療法=パルス ・・ ステロイドの3日間限定の大量投与。ステロイドの抗炎症作用を大量・短期間に投与することで、炎症・免疫にブレーキをかける。感染症の増悪、糖尿病の悪化に注意。
□ パルスオキシメーター ・・ 動脈血中の酸素飽和度を指の表面から測定。職場では「サチュレーション」などと呼ばれる。
□ パンパン ・・ 浮腫で体がボテッと腫れていることの表現。「浮腫ってる(ふしゅってる)」と表現する人も。
□ ヒアルロン酸 ・・ 「?型コラーゲン」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。一方胸水中のヒアルロン酸は「悪性胸膜中皮腫」の診断項目。
□ 非心臓性胸痛=non-cardiac chest pain=NCCP ・・ 心臓以外による胸の痛みという文字通りの表現で、原因としてGERD(胃食道逆流症)の存在が重要で、4〜6割を占めるといわれている。なので患者が望むからといってNSAIDの投与は安易にすべきでない。心臓由来の痛みと鑑別する方法としてPPIテスト(プロトンポンプ阻害剤を2週間飲んでもらい症状がよくなるかみる)がある。GERD以外には食道運動機能異常(診断は食道内圧測定)がありこの場合PPIは無効でCa拮抗薬が処方される。
□ 一言かけておく ・・ 患者への検査・上司への依頼など、人づてや文書で済ますより、医師より直接一言かけておく姿勢・配慮・柔軟・謙虚さが大切だ。
□ ヒドロ ・・ 水腎症を略してこう呼ばれる。CTで腎臓の腫大がみられる。たいてい尿の上への逆流によるもので、尿路感染を合併することが多い。
□ 非閉塞性腸間膜梗塞症=non-occlusive mesenteric ischemia=NOMI ・・ 心血管手術後、あるいは血液透析後に起こすことのある、急性の腸間膜血行障害の1つ(10-30%)。腸間膜動脈閉塞のような太い動脈の血栓閉塞でなく、血管の攣縮による(文節状・非連続性病変)虚血が機序として考えられている。腸間膜動脈閉塞では閉塞血管以下の虚血ということなので壊死する領域は部分的で明らかだが、本症の場合は広範、部分的に虚血が生じるので開腹しても切除不可能な場合が多く、致死率が高い(70-90%)。なので内科的治療ができる段階での早期発見が重要となる。本症の初期症状は腹痛・悪心・嘔吐などで、以後徐々に腸閉塞へと進行する。疑われた場合は血管造影よりも侵襲の少ない腹部造影MDCT(MSCT)により腸間膜の血管の閉塞状態を確認し、攣縮を証明する。診断確定したらPGE1の持続静注。
□ 100パー=100%
□ ヒューマン・コミュニケーション ・・ 医師の医療トラブルの原因の1つとして患者とのコミュニケーション不足が問われ、それを解決すべく立ち上げられた授業。人間関係体験学習を、医学部入学間もない教育課程で身に着けようというものhttp://hp1.tcbnet.ne.jp/~taka255/。
□ 頻脈 ・・ 定義では1分あたり100回以上の脈。「頻拍」と同意。
□ ビタミンE ・・ 癌や心循環器疾患予防に有効と以前からいわれてきたが、2005年7月報告の長期間(10年)にわたる大規模試験(ビタミンE内服vsプラセボ)では差がなかった。
□ ビトロ=vitro ・・ 動物実験でなく、試験管などの器具内で行われる実験。
□ 微熱=サブフィーバー ・・ 37.0-37.9℃。地方により熱の範囲はいろいろ。慢性的な微熱も精査の対象になる。特に肺結核は除外すべし。
□ ビボ=vivo ・・ 動物実験。通常はビトロの検査が確立されてはじめて行われる。動物を使うだけに高価。
□ 病棟医長 ・・ 病棟患者の振り分け、主治医決めなど行う。いろいろ相談なども来るのでかなりストレス。履歴書的には全く意味がない。
□ 病歴要約=(入院)サマリー ・・ 患者が入院してから退院するまでを綴った、1つのストーリー。最後の考察をいかに書くかで悩み、またそれが提出遅れの原因となる。転勤してこれを書き忘れると、戻ってきて書かされる羽目になる。
□ 微量アルブミン尿 ・・ 糖尿病性腎症の初期マーカー。つまり糖尿病が進行して腎臓の合併症を素早く<早期発見>する検査項目。だが腎臓だけにとどまらず、心血管疾患の予測因子であることも分かっている。
□ ピークフロー ・・ 喘息の評価に使用される。これを測定するのがピークフローメーターで、それを記録していくのが喘息日誌。低下傾向なら早めに受診しよう。
□ ピシバニール=ピシバ ・・ 胸水をドレナージしたあと、胸膜癒着させるために使用する伝統ある薬剤。炎症をわざと起こさせ、接着させる。従って高熱・痛みを伴う。
□ ピッグテイル・カテーテル ・・ 先っちょがブタのシッポ様にクルクル巻きのカテーテル。通常は左心室の造影目的で使用される。
□ ピリン系 ・・ セデス・メチロンが代表例。本来は解熱鎮痛剤。これへのアレルギーがあればカルテの表紙に<ピリン禁>と赤で書いてるはずだ。
□ ピロリ=ヘリコバクター・ピロリ=HP ・・ 胃・十二指腸潰瘍の起炎菌。これが検出されて、なお潰瘍を繰り返す人は「除菌療法」の適応となる。薬剤を3種類、1週間内服。だが10人に2−3人は治療に失敗するともいわれる。
□ ピンク針(ぴんくしん) ・・ 18G(ゲージ)針。注射用の針で最も太い部類。糸の縫合にも使える。
サーガマニュアル2007秋 ふ ぶ
2007年9月17日□ 歩(ふ) ・・ 医局員が自分達を「駒」と表現するのにこうやって皮肉る。しかし裏返るのも寝返ることも大学医局員には不可能だ。
□ 不安定狭心症=unstable AP=アンステーブルAP=アンステーブル ・・ 冠動脈の狭窄というより閉塞に近いため、亜硝酸剤の頓服では治まらない、いわゆる前・心筋梗塞状態。そのため「切迫心筋梗塞」とも呼ばれていた。今こう呼ぶ人はジジイ。
□ ファーストシン ・・ セフェム4世代の点滴。グラム陰性菌が主なターゲットだが陽性菌にもそこそこ効く。
□ ファイティング ・・ 人工呼吸器からの一方的な強制換気に対して、患者側の自発呼吸がかみあわずお互いの呼吸が管の中でぶつかった状態。患者は息がスムーズにできないので暴れる。呼吸器と患者の経路の間に障害物(痰・水)があったり、患者への鎮静剤が不十分であったりすることが多い。
□ PL顆粒=ホグス顆粒 ・・ 用途の広い、総合感冒薬。眠気が難。前立腺肥大の有無に注意しよう。
□ フェオ=Pheo=褐色細胞腫
□ フェリチン ・・ 貯蔵鉄。体に貯めている、鉄の貯金。ストック。鉄欠乏性貧血では減少。重症感染では利用障害のため高値となってしまう。
■ 腹腔内化学療法 ・・ 癌の腹膜転移、つまり腹膜播種(本来は無治療が多い)に対する化学療法。中でもタキサン系抗癌剤は腹腔内に長期とどまるので抗腫瘍効果を期待できる(これにTS-1静脈投与も併用←これも腹腔への移行良好)。今後の比較検討試験(全身投与と腹腔内投与との比較)の結果が待たれる。
□ 副腎 ・・ 腰の両側にある腎臓の上にのっかっている小さな臓器。ホルモンを産生。副腎皮質ホルモン、アルドステロン、性ホルモンを分泌。
※ 「特発性アルドステロン症」では副腎が肥大し、「原発性アルドステロン症」では腺腫という小さな腫瘍が副腎にできる。いずれも高血圧の原因となる。
□ 副直 ・・ 大学病院独特の制度。当直医に付属する、お助け目的の補助当直。たいていは研修医が勤める。だが当直帯の対応など、見習えるものは多い。ふつう給料は出ない。
□ 腹部大動脈瘤=AAA=トリプルエー ・・ 腹部大動脈の局所的な拡張。サイズ大で高血圧ほど破裂のおそれ。定期的なCTでのサイズ評価が必要。
□ 腹部超音波検査=腹部エコー=腹部US=US ・・ 肝臓から膀胱まで、つまり腹部臓器を安全に見れる検査。おしっこしてしまうと膀胱・前立腺が見えにくいので注意。食後だと胆のうが収縮して見えない。
□ 腹膜炎=パンペリ ・・ 腸など腹部の臓器が周囲に波及してしまった状態。通常、外科領域の治療となる。
□ 不潔操作 ・・ 消毒などの手技の際、消毒してないところに、つい器具があたって菌が混入した可能性のある場合。すぐに器具を片付け、やり直すのが常。
□ 不明熱 ・・ 古典的な定義では「38.3℃以上が3週間以上続き、病院での1週間以上の入院精査でも診断がつかないもの」とあるが、実際は解熱剤でとりあえず熱が下げられていたりするケースも多いので、この定義は使えそうで使えない。むしろ<不明熱>という表現は、主治医の主観的な表現であることにすぎない場合が多い。つまり、<「オレ的には」不明熱>といった感じ。
さて、不明熱に関しては2005年1月の順天堂大学の論文が新しい。これを読むと(1994-2004年間の215例の検討)・・いろいろ勉強になった。
・ 約半数が感染症で特に伝染性単核球症、感染性心内膜炎(食道エコーが活躍)、深部膿瘍(ほとんど肝膿瘍)、髄膜炎(中には髄膜刺激症状がないものも)の頻度が高かった。麻疹・風疹の成人発症が目立ったという。発症様式が小児のように典型的でないのも診断を困難にさせた。
・ 悪性腫瘍は画像診断進歩の助けもあり減少傾向。なお腫瘍熱をきたしやすいのは悪性リンパ腫と腎細胞癌とのこと。
・ 智歯周囲炎=ちししゅういえん(親知らず)が3名いたらしい。歯科への紹介も重要なのだ。抜歯後に解熱したという。
※ 20歳前後に一番奥に生えてくる第三大臼歯のことを「智歯(ちし)」といい、「親知らず」とも呼ぶ。
・ HIV関連が8名。たしかに今後はこれも考慮に入れておかないといけない。
・ 7例がなかなか診断つかず、うち2例の診断は剖検後で、2例とも悪性リンパ腫。たとえ疑いがあったとしても証拠無しで化学療法に挑むのは難しく、今後の課題。血液疾患は生検診断に頼るところが多いので、たしかにそこが難しい。
・ 多疾患にわたる知識が必要と考えられた、と締めくくってある。
そうだな、それと・・各科専門スタッフ、検査機器の充実だな。民間病院でズルズルと引っ張らず、大学病院への紹介が重要と考えた。大学病院でも帝大系の一部みたいに、科どうしの伝統的な仲たがいのあるところはパスだな・・。
□ フラッシュ ・・ 点滴ルート内で中途半端に停滞している注射薬剤を、点滴の早送りなどで後押しすること。ただしルート内に強心剤など循環動態を左右する薬剤があるときはすべきでない。
□ フラット ・・ 心停止。モニター画面の水平線を見てそのように判断。
□ フルコース ・・ 重症患者で、あらゆる処置をすべて行うという前提。特に重度緊急的な処置、例えば心臓マッサージやボスミン投与、除細動などを指す。
□ フレッシュ ・・ 新鮮な。今起こったばかりの病変。出血でよく表現される。たまに「新人」の意味で使われる。
□ プアー(poor) ・・ ?検査などで所見が読みづらい場合、?医者の能力を卑下する場合?治療が効きにくい場合 などにこう表現される。
□ プラーク ・・ 動脈の壁から(焼いて膨れるモチの様な形で)内腔に盛り上がる、血小板などの硬い塊。結果的に血管を狭窄、閉塞へと追い込む。
□ プライマリー ・・ 初期の、という意味。通常は<初期治療>の意味で使われる。
□ プラズマネートカッター=プラズマ=PPF ・・ アルブミンを含む高ナトリウム点滴。急性循環不全のとき、血圧上昇を目的に使用。
□ プリオン病(第5類感染症)
ヒト・動物における神経変性疾患のこと。感染型プリオン蛋白質が主に脳に蓄積し海綿状変化を生じる、人獣共通致死性感染症の総称。
分類すると、
? 特発性
・ 孤発性Creutzfeldt-Jakob病(sCJD) ・・ 原因不明。以下の2つに分類。
1) 古典型 ・・ 孤発性の大部分。60歳代発症。初期症状は非特異的(不安・抑うつ・倦怠感)が数ヶ月持続。MRIが早期診断に有用(特に拡散強調画像)。その後は痴呆が急にみられるようになり、錐体路、錐体外路徴候、小脳失調、不随意運動など多彩な症状を呈する。中でも特徴的なのは頻発するミオクローヌス、驚愕反応。この頃の時点で脳波所見(PSD)、髄液中14-3-3蛋白、NSE、タウ蛋白増加がみられる。さらに進行すると9割以上が無動性無言となり脳萎縮進行、脳波活動はむしろ低下(PSD消失)。
2) 視床型 ・・ 平均52歳と比較的若い発症。自律神経症状・睡眠障害の合併が特徴。PSDはみられずMRI所見も乏しい。視床・下オリーブ核に高度変性。
? 感染性
・ Kuru ・・ 進行性の小脳失調。
・ 医原性 ・・ 乾燥硬膜移植後CJD。
・ 変異型CJD=variantJD=vCJD ・・ BSE(牛海綿状脳症)由来のもの。sCJDに比べ発症は若く29歳。精神異常(抑うつ・異常行動)で発症し痛みなどの異常感覚を2/3に認めるほか失調を呈し、後期には痴呆・ミオクローヌスを呈する。脳波のPSDは陰性。MRIの拡散強調画像で両側視床枕の高信号(左右対称)を認める。
? 遺伝性
・ 家族性
・ Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群(GSS)
・ 致死性家族性不眠症=fatal familial insomnia=FFI
□ プリンペラン ・・ ナウゼリンと同じく、制吐剤。つまり吐き気止め。副作用の頻脈に注意。
□ プレゼン=プレゼンテーション ・・ 大勢の前で症例を提示、説明する。だが実際は最前列の教授・助教授・講師陣がターゲット。
□ プレドニン=プレドニゾロン ・・ 最もよく使用されるステロイド製剤。内服と注射あり。なお人間は1日プレドニン5mg相当を副腎で産生する。ステロイドの作用は抗炎症作用であり、膠原病や喘息、また免疫疾患などでその作用を発揮する。ただし肺炎など細菌感染は逆に増悪させるので注意。プレドニンで7.5mg/dayまでの少量なら副作用的にあまり問題ない量といわれている。
□ プローブ=プローべ=探触子 ・・ 超音波検査のとき、体に直接当てるヘビの頭のような部分。うっかり落とすと壊れることあり。数十万もする。
□ プロタノール ・・ 物質名はイソプロテレノ−ル。β刺激剤で、頻脈作用。従って脈が遅いときに使用する。使用をやめるとまた脈は遅くなる。したがってペースメーカーを入れるまでの「つなぎ」的な役目でしかない。
□ プロトロンビン時間 ・・ 血液の凝固系の程度を示す採血項目。実際は?ワーファリンの効き具合、?DICの有無判定、?肝硬変の重症度判定、として使用。
□ プロフェッサー=教授
□ ブスコパン=ブスコ ・・ 胃カメラ前の処置のときにお馴染み。胃・腸管の蠕動を低下させる。これによって検査をやりやすくさせる。治療薬としては胃・腸管の痙攣を和らげる。しかし動きを低下させるわけなので便秘を促進。イレウスは悪化させるので禁忌。胃カメラ前、緑内障・前立腺肥大がある場合は「グルカゴン」に変更される。副作用に頻脈あり。
□ 物品(ぶっぴん) ・・ 詰所や検査室にある器具などの1つ1つ。ストックが置いてある部屋が「中材(ちゅうざい)」。
□ ブラックリスト ・・ 病院の場合、マークされている患者を指す。つまりはトラブルメーカー(セクハラ、アル中、暴力的など)。受診をさせないか、受診時は慎重にするか究極の選択を取らされる。
□ ブルーイ=bruit ・・ 血管雑音。
□ 不安定狭心症=unstable AP=アンステーブルAP=アンステーブル ・・ 冠動脈の狭窄というより閉塞に近いため、亜硝酸剤の頓服では治まらない、いわゆる前・心筋梗塞状態。そのため「切迫心筋梗塞」とも呼ばれていた。今こう呼ぶ人はジジイ。
□ ファーストシン ・・ セフェム4世代の点滴。グラム陰性菌が主なターゲットだが陽性菌にもそこそこ効く。
□ ファイティング ・・ 人工呼吸器からの一方的な強制換気に対して、患者側の自発呼吸がかみあわずお互いの呼吸が管の中でぶつかった状態。患者は息がスムーズにできないので暴れる。呼吸器と患者の経路の間に障害物(痰・水)があったり、患者への鎮静剤が不十分であったりすることが多い。
□ PL顆粒=ホグス顆粒 ・・ 用途の広い、総合感冒薬。眠気が難。前立腺肥大の有無に注意しよう。
□ フェオ=Pheo=褐色細胞腫
□ フェリチン ・・ 貯蔵鉄。体に貯めている、鉄の貯金。ストック。鉄欠乏性貧血では減少。重症感染では利用障害のため高値となってしまう。
■ 腹腔内化学療法 ・・ 癌の腹膜転移、つまり腹膜播種(本来は無治療が多い)に対する化学療法。中でもタキサン系抗癌剤は腹腔内に長期とどまるので抗腫瘍効果を期待できる(これにTS-1静脈投与も併用←これも腹腔への移行良好)。今後の比較検討試験(全身投与と腹腔内投与との比較)の結果が待たれる。
□ 副腎 ・・ 腰の両側にある腎臓の上にのっかっている小さな臓器。ホルモンを産生。副腎皮質ホルモン、アルドステロン、性ホルモンを分泌。
※ 「特発性アルドステロン症」では副腎が肥大し、「原発性アルドステロン症」では腺腫という小さな腫瘍が副腎にできる。いずれも高血圧の原因となる。
□ 副直 ・・ 大学病院独特の制度。当直医に付属する、お助け目的の補助当直。たいていは研修医が勤める。だが当直帯の対応など、見習えるものは多い。ふつう給料は出ない。
□ 腹部大動脈瘤=AAA=トリプルエー ・・ 腹部大動脈の局所的な拡張。サイズ大で高血圧ほど破裂のおそれ。定期的なCTでのサイズ評価が必要。
□ 腹部超音波検査=腹部エコー=腹部US=US ・・ 肝臓から膀胱まで、つまり腹部臓器を安全に見れる検査。おしっこしてしまうと膀胱・前立腺が見えにくいので注意。食後だと胆のうが収縮して見えない。
□ 腹膜炎=パンペリ ・・ 腸など腹部の臓器が周囲に波及してしまった状態。通常、外科領域の治療となる。
□ 不潔操作 ・・ 消毒などの手技の際、消毒してないところに、つい器具があたって菌が混入した可能性のある場合。すぐに器具を片付け、やり直すのが常。
□ 不明熱 ・・ 古典的な定義では「38.3℃以上が3週間以上続き、病院での1週間以上の入院精査でも診断がつかないもの」とあるが、実際は解熱剤でとりあえず熱が下げられていたりするケースも多いので、この定義は使えそうで使えない。むしろ<不明熱>という表現は、主治医の主観的な表現であることにすぎない場合が多い。つまり、<「オレ的には」不明熱>といった感じ。
さて、不明熱に関しては2005年1月の順天堂大学の論文が新しい。これを読むと(1994-2004年間の215例の検討)・・いろいろ勉強になった。
・ 約半数が感染症で特に伝染性単核球症、感染性心内膜炎(食道エコーが活躍)、深部膿瘍(ほとんど肝膿瘍)、髄膜炎(中には髄膜刺激症状がないものも)の頻度が高かった。麻疹・風疹の成人発症が目立ったという。発症様式が小児のように典型的でないのも診断を困難にさせた。
・ 悪性腫瘍は画像診断進歩の助けもあり減少傾向。なお腫瘍熱をきたしやすいのは悪性リンパ腫と腎細胞癌とのこと。
・ 智歯周囲炎=ちししゅういえん(親知らず)が3名いたらしい。歯科への紹介も重要なのだ。抜歯後に解熱したという。
※ 20歳前後に一番奥に生えてくる第三大臼歯のことを「智歯(ちし)」といい、「親知らず」とも呼ぶ。
・ HIV関連が8名。たしかに今後はこれも考慮に入れておかないといけない。
・ 7例がなかなか診断つかず、うち2例の診断は剖検後で、2例とも悪性リンパ腫。たとえ疑いがあったとしても証拠無しで化学療法に挑むのは難しく、今後の課題。血液疾患は生検診断に頼るところが多いので、たしかにそこが難しい。
・ 多疾患にわたる知識が必要と考えられた、と締めくくってある。
そうだな、それと・・各科専門スタッフ、検査機器の充実だな。民間病院でズルズルと引っ張らず、大学病院への紹介が重要と考えた。大学病院でも帝大系の一部みたいに、科どうしの伝統的な仲たがいのあるところはパスだな・・。
□ フラッシュ ・・ 点滴ルート内で中途半端に停滞している注射薬剤を、点滴の早送りなどで後押しすること。ただしルート内に強心剤など循環動態を左右する薬剤があるときはすべきでない。
□ フラット ・・ 心停止。モニター画面の水平線を見てそのように判断。
□ フルコース ・・ 重症患者で、あらゆる処置をすべて行うという前提。特に重度緊急的な処置、例えば心臓マッサージやボスミン投与、除細動などを指す。
□ フレッシュ ・・ 新鮮な。今起こったばかりの病変。出血でよく表現される。たまに「新人」の意味で使われる。
□ プアー(poor) ・・ ?検査などで所見が読みづらい場合、?医者の能力を卑下する場合?治療が効きにくい場合 などにこう表現される。
□ プラーク ・・ 動脈の壁から(焼いて膨れるモチの様な形で)内腔に盛り上がる、血小板などの硬い塊。結果的に血管を狭窄、閉塞へと追い込む。
□ プライマリー ・・ 初期の、という意味。通常は<初期治療>の意味で使われる。
□ プラズマネートカッター=プラズマ=PPF ・・ アルブミンを含む高ナトリウム点滴。急性循環不全のとき、血圧上昇を目的に使用。
□ プリオン病(第5類感染症)
ヒト・動物における神経変性疾患のこと。感染型プリオン蛋白質が主に脳に蓄積し海綿状変化を生じる、人獣共通致死性感染症の総称。
分類すると、
? 特発性
・ 孤発性Creutzfeldt-Jakob病(sCJD) ・・ 原因不明。以下の2つに分類。
1) 古典型 ・・ 孤発性の大部分。60歳代発症。初期症状は非特異的(不安・抑うつ・倦怠感)が数ヶ月持続。MRIが早期診断に有用(特に拡散強調画像)。その後は痴呆が急にみられるようになり、錐体路、錐体外路徴候、小脳失調、不随意運動など多彩な症状を呈する。中でも特徴的なのは頻発するミオクローヌス、驚愕反応。この頃の時点で脳波所見(PSD)、髄液中14-3-3蛋白、NSE、タウ蛋白増加がみられる。さらに進行すると9割以上が無動性無言となり脳萎縮進行、脳波活動はむしろ低下(PSD消失)。
2) 視床型 ・・ 平均52歳と比較的若い発症。自律神経症状・睡眠障害の合併が特徴。PSDはみられずMRI所見も乏しい。視床・下オリーブ核に高度変性。
? 感染性
・ Kuru ・・ 進行性の小脳失調。
・ 医原性 ・・ 乾燥硬膜移植後CJD。
・ 変異型CJD=variantJD=vCJD ・・ BSE(牛海綿状脳症)由来のもの。sCJDに比べ発症は若く29歳。精神異常(抑うつ・異常行動)で発症し痛みなどの異常感覚を2/3に認めるほか失調を呈し、後期には痴呆・ミオクローヌスを呈する。脳波のPSDは陰性。MRIの拡散強調画像で両側視床枕の高信号(左右対称)を認める。
? 遺伝性
・ 家族性
・ Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群(GSS)
・ 致死性家族性不眠症=fatal familial insomnia=FFI
□ プリンペラン ・・ ナウゼリンと同じく、制吐剤。つまり吐き気止め。副作用の頻脈に注意。
□ プレゼン=プレゼンテーション ・・ 大勢の前で症例を提示、説明する。だが実際は最前列の教授・助教授・講師陣がターゲット。
□ プレドニン=プレドニゾロン ・・ 最もよく使用されるステロイド製剤。内服と注射あり。なお人間は1日プレドニン5mg相当を副腎で産生する。ステロイドの作用は抗炎症作用であり、膠原病や喘息、また免疫疾患などでその作用を発揮する。ただし肺炎など細菌感染は逆に増悪させるので注意。プレドニンで7.5mg/dayまでの少量なら副作用的にあまり問題ない量といわれている。
□ プローブ=プローべ=探触子 ・・ 超音波検査のとき、体に直接当てるヘビの頭のような部分。うっかり落とすと壊れることあり。数十万もする。
□ プロタノール ・・ 物質名はイソプロテレノ−ル。β刺激剤で、頻脈作用。従って脈が遅いときに使用する。使用をやめるとまた脈は遅くなる。したがってペースメーカーを入れるまでの「つなぎ」的な役目でしかない。
□ プロトロンビン時間 ・・ 血液の凝固系の程度を示す採血項目。実際は?ワーファリンの効き具合、?DICの有無判定、?肝硬変の重症度判定、として使用。
□ プロフェッサー=教授
□ ブスコパン=ブスコ ・・ 胃カメラ前の処置のときにお馴染み。胃・腸管の蠕動を低下させる。これによって検査をやりやすくさせる。治療薬としては胃・腸管の痙攣を和らげる。しかし動きを低下させるわけなので便秘を促進。イレウスは悪化させるので禁忌。胃カメラ前、緑内障・前立腺肥大がある場合は「グルカゴン」に変更される。副作用に頻脈あり。
□ 物品(ぶっぴん) ・・ 詰所や検査室にある器具などの1つ1つ。ストックが置いてある部屋が「中材(ちゅうざい)」。
□ ブラックリスト ・・ 病院の場合、マークされている患者を指す。つまりはトラブルメーカー(セクハラ、アル中、暴力的など)。受診をさせないか、受診時は慎重にするか究極の選択を取らされる。
□ ブルーイ=bruit ・・ 血管雑音。
サーガマニュアル2007秋 へ べ
2007年9月17日□ 閉塞性呼吸障害 ・・ 気道の狭窄で息が吐き出しにくく、時間がかかる状態。代表例が気管支喘息と肺気腫。
□ ヘモグロビン ・・ 酸素を運ぶ役割。赤血球数に比例する。女性のほうが低めだが最下限は11台。6を切ると輸血の対象となること多いが、そこは血行動態などの評価とともに行うべき。なお出血後の数値は必ずしも現在の数値を反映しない(実際はもっと低かったりする)。
□ ヘパリン ・・ 抗凝固剤。持続点滴として使用。血栓を溶かすまでは無理。出血の副作用に注意。また血小板減少もまれではあるが重要。なのでヘパリン投与前は、ベースラインとしての血小板数を意識しておく必要がある。なお出血副作用の少ない版として「フラグミン」あり。こちらは皮下注。
■ へパリン起因性血小板減少症=heparin-induced thrombocytopenia=HIT
治療目的で投与されたへパリンによって血小板が活性化され、血小板減少とともに新たな血栓・塞栓症を併発する病態。PF4=platelet factor 4=血小板第4因子+へパリンの複合体に対する抗体であるHIT抗体によって、血小板が活性化される。
疑うきっかけとしては、血小板数減少(10万以下かへパリン投与前に比して半数以上の減少)のほかに新たな血栓症の出現、体外循環・透析下での凝血傾向など。なので血小板数の測定はへパリン投与4日以降以下隔日と勧める意見もある。HIT抗体は有用だが特異的なものではない。
認めれればへパリン中止となるがそれだけでは38-50%で血栓症が合併する(特に中止1-4日目)状態が続くので、アルガトロバンなどの抗トロンビン薬などによる抗凝固療法を行う(低分子へパリンは禁忌)。以後ワーファリンへと重複の上切り替えていく。なおHITへの血小板輸血も禁忌。
□ へパロック ・・ 点滴の管の中の流れが停まっているとき、その中が凝固しないようにするため薄いヘパリンを入れておくこと。昨年あたりより、最初からヘパリンが注射器に入っている「へパフラッシュ」が発売http://www.terumo.co.jp/medical/heparin/hepaflush.html。
□ ヘモ=痔核=痔 ・・ 正確には<ヘモロイド(血液が流れる病気、という意味)>。以下の3つに分かれる。
? 痔核=いぼ痔・・肛門付近の静脈に血液がたまってコブのように盛り上がったもの。痛くて出血量多い。
? 裂肛=切れ痔 ・・ 肛門の上皮に傷。硬い便だと裂ける。なので排便困難となり、しかも排便したあと痛い。
? 痔ろう=あな痔・・肛門のくぼみ部分に菌が入り込んで皮下で炎症を起こし化膿、ついには皮膚を破って外へ出る。発熱・痛み・肛門周囲の腫脹。
薬物療法(内服ではヘモクロンなど。座薬では、ボラギノ−ル:ステロイド含まず、ポステリザン・ネリクロプト:ステロイド含む)にずっと依存の状態なら手術を受けるべき(単に切除とは限らない)。
ここが読みやすいhttp://daichou.com/naiji.htm。
□ 片頭痛 ・・ 若い女性に多い頭痛。頭痛はひどく、<片側で拍動性(脈に一致したズキンズキン)>と本にはあるが、絶対でなく様々。頻度的には意外と少なく、月に1-5回という訴えが多い(具体的にはひと月に女性4-6回、男性1-2回)。痛みは片側だけでなく両側に出ることもある。しかし左右差があるという特徴をもつ。なお吐き気を伴うときは特に強く疑う。またこの痛みは強い光、大きな音、不快な臭いで増強することがある。発作の数十分ないし数時間前に目の前がチカチカ光って見える、首筋が張る、生あくびが出るなどの前駆症状がみられることがある。妊娠中、特に後期以降は頭痛は軽快する。バファリンなどの通常の頭痛薬は無効なこと多い。
最近のトピックスとしてはHIT-6というアンケート調査があり、これによって片頭痛の支障度を評価できる、とある。
※ HIT=Headache Impact Test
質問項目↓
? 頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
? 頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
? 頭が痛いとき、横になりたくなることがありますか?
? この4週間に、頭痛のせいで疲れてしまって仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいでうんざりしたりいらいらしたりしたことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいで仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?
それぞれ<全くない(6点)><ほとんどない(8点)><時々ある(10点)><いばしばある(11点)><いつもそうだ(13点)>から選び、各質問ごとに点数を合計。
・ 支障あり
60点点以上:日常生活にかなりの影響があり、重症です
56-59点:日常生活にかなりの影響があります
50-55点:日常生活にある程度の影響があります
・ 支障なし・・49点以下
→ つまり50点以上は積極的な治療が必要
治療に関しては今後トリプタン製剤が急性期のファーストチョイスとの認識が標準的となりつつある。ただし最近、その内服のしすぎが却って頭痛を促進してしまう、という<薬物乱用頭痛(MOH)>が問題となっている。これにならないためには月10日以内の頻度に留めておくことが推奨されている。むしろ月10日以上の頻度になるぐらい必要なら、薬物乱用頭痛を疑うことも必要。
頭痛に興味のある方はhttp://www.jhsnet.org/へ。
□ ヘリコバクター・ピロリ=HP=ヘリコ=ヘリコバクター=ピロリ
ヘリコ=らせん状、バクター=細菌、ピロリ=胃の出口である幽門部、という意味がある。胃・十二指腸潰瘍の原因菌と考えられ、感染により活性酸素産生→胃粘膜傷害、という機序が最も考えられている。もっと詳しく言うと、感染でケモカインにより活性化された多核白血球が活性酸素を産生し、それが粘膜傷害を起こす。
※ ケモカインとは、白血球走化に対する作用(ケモタキシス)を有するサイトカインの総称。ケモカインは炎症で大量に産生され、血管内から炎症組織内への白血球の遊走をもたらす。攻撃命令みたいなもの。
※ サイトカインとは、細胞が産生する蛋白で、それに対するレセプターを持つ細胞に働き、細胞の増殖・分化・機能発現を行うもの。これによって悪いこと(炎症など)も起きれば、いいこと(治癒過程)も起きる。
※ ピロリを慢性にもってる人の数%〜10%に胃癌が発生するといわれている。
潰瘍の既往があって菌陽性ならまず除菌=除菌療法を勧められる。抗生剤2種類と増量した胃薬を1週間飲む。
菌が陽性かどうか確かめる検査としては、呼気試験や便、血液での抗体など。開業医ではあまり儲けにならず(特別に大きな点数が取れるわけでもなく、判定試験の試薬期限などの問題)、積極的にしてないところが多い。除菌治療は抗生剤2種+胃薬(PPI)を1週間。2割で軟便・下痢の副作用。逆流性食道炎の副作用もある。
2回目の除菌が失敗すると教科書的には『専門医に紹介』とあるが、現実的には経過観察とならざるを得ないことが多い(専門医への紹介の、必要性そのものへの疑問。患者の不安への配慮)。非保険適応薬(メトロニダゾール)の使用もありだがかなり高価らしい。
なお肝心の「効果」については、初回1回目の除菌治療で9割の除菌率ということになっている(学会や講演会)。除菌成功例では十二指腸潰瘍を90%以上、胃潰瘍を80%程度の確率で再発を防止できるらしい。除菌率は施設によって差があり、耐性菌の出現もあってか実際の現場では70からよくて80%、という意見が多い。施設による抗生剤の使用状況も大いに関わっていると思われる。なので受ける側としては、この施設での陰性率はいかがなものかと問うてみることも大事だ。
なおhttp://www.jshr.jp/こういう学会もある。
確かに胃潰瘍で入院するのはかなりの時間と費用を伴うので、ピロリ陽性なら除菌する価値はある(都合のいい表現だ)。もし胃潰瘍で入院すれば50代男性ならば平均入院日数19日、平均医療費23万円を要するといわれている(H14.厚生労働省)。
□ ヘルペス脳炎 ・・ 単純ヘルペス(HSV)による脳炎(つまりHSVE)。治療が遅れると死亡率が高く、神経学的な緊急事態として認識されている。ガイドラインは日本神経感染症学会http://homepage2.nifty.com/~sakura2001/hse/hse-9.htmにて公表(HPに載せるらしい)。症状は、頭痛・発熱、精神症状、意識障害、痙攣など。頭部CTにて局所的異常を5-8割に認めMRIではその所見をより早期に発見できる。脳波は発症早期からほぼ全例で異常を呈し、典型的な所見<周期性一側てんかん型放電>は3割にしかみられない。髄液ではウイルス性の所見通りに圧↑、細胞数(リンパ球優位)↑、蛋白濃度↑、糖濃度正常。しかしまれに細胞数増多なしだったり蛋白濃度正常、糖濃度低値の例もあるので注意。急性期の早期診断は髄液のPCR法によるHSV-DNA検出(しかし偽陰性に注意。再検を要することあり)。なお発症2週間以後は陰性化する。なおウイルス感染の検査で多用する血清抗体の変動に関しては本症は定まったものがない。髄液内抗体価による診断もありだが、発症から10日たたないと信用できる判定とならない。なので、実際はPCRと髄液内抗体検査を組み合わせて診断していく。ウイルス分離ができれば確定には一番いいが、実際の頻度は5%未満と極端に低い。治療の第一選択はアシクロビルで、死亡率を減少させる効果はあるものの後遺・社会復帰への効果はまだ不十分。急性期のステロイド併用に関しては研究段階。
□ ペースメーカー ・・ 脈が少なくて、それが症状・病態悪化につながるとき使用。脈の数が少ないときを感知して(センシング)、そのつど脈を出すための刺激を発する(ペーシング)。この刺激に反応して心臓は脈を出す(自己レート)。とりあえずカテーテル入れるだけの応急処置的な「一時的ペースメーカー」と、電池を胸の皮下に埋め込み自由に動ける「恒久的=永久的ペースメーカー」に分かれる。ペースメーカー入れたらMRIは受けれない。
□ ぺルジピン ・・ カルシウム拮抗薬で、主には降圧目的の持続点滴として使用されることが多い(内服もあるが)。
□ ペンタジン=ペンタ ・・ 鎮痛剤。神経に作用して痛みを止めるので、根本から治すわけではない。これによる中毒患者が開業医などを転々とすることあり。同薬剤として「ソセゴン」などあり。
□ ペンタジン中毒 ・・ ペンタジンに体が依存してしまった状態。偽の紹介状「この患者の痛み時はペンタジンを投与ください、などと記載」を持ってくる患者もいるので注意を。
□ ベイスン ・・ αグルコシダーゼ阻害剤の1つ。腸管内の二糖類を分解する酵素を阻害して、単糖類になるのを防ぎ、その結果糖は腸管に取り込まれにくくなる。変化を邪魔された二糖類は腸管に蓄積して腸内細菌のエサとなり分解されてガスを発生する。このガスのせいで腹部膨満・オナラ増加をきたす。ガスモチンの併用でガス減少。
□ 便潜血 ・・ 消化管の微量な出血を調べる。大まかに1つあり、?化学法 ・・ 安くできるが疑陽性のことあり。?ヒトヘモグロビン法=ヒトヘモ ・・ 正確だが高価。陽性なら腫瘍マーカーとともに胃・大腸の造影・カメラを。
□ 便秘 ・・ 何日出なかったら便秘、という定義はないが、病院では3日以上だとそう解釈されることが多い。通常は錠剤で眠前投与のプルセニド(人によって腹痛)か、1日3回で粉薬の重炭酸マグネシウム(腎障害の人注意)=カマグが処方される。それでも出なければラキソベロンの処方が出たりする。あるいはグリセリン浣腸(60ml あるいは120ml)、それでも出なければ高圧浣腸を選択される。大腸内視鏡検査前に飲ませるニフレックを処方する医師もいる。
□ ヘモグロビン ・・ 酸素を運ぶ役割。赤血球数に比例する。女性のほうが低めだが最下限は11台。6を切ると輸血の対象となること多いが、そこは血行動態などの評価とともに行うべき。なお出血後の数値は必ずしも現在の数値を反映しない(実際はもっと低かったりする)。
□ ヘパリン ・・ 抗凝固剤。持続点滴として使用。血栓を溶かすまでは無理。出血の副作用に注意。また血小板減少もまれではあるが重要。なのでヘパリン投与前は、ベースラインとしての血小板数を意識しておく必要がある。なお出血副作用の少ない版として「フラグミン」あり。こちらは皮下注。
■ へパリン起因性血小板減少症=heparin-induced thrombocytopenia=HIT
治療目的で投与されたへパリンによって血小板が活性化され、血小板減少とともに新たな血栓・塞栓症を併発する病態。PF4=platelet factor 4=血小板第4因子+へパリンの複合体に対する抗体であるHIT抗体によって、血小板が活性化される。
疑うきっかけとしては、血小板数減少(10万以下かへパリン投与前に比して半数以上の減少)のほかに新たな血栓症の出現、体外循環・透析下での凝血傾向など。なので血小板数の測定はへパリン投与4日以降以下隔日と勧める意見もある。HIT抗体は有用だが特異的なものではない。
認めれればへパリン中止となるがそれだけでは38-50%で血栓症が合併する(特に中止1-4日目)状態が続くので、アルガトロバンなどの抗トロンビン薬などによる抗凝固療法を行う(低分子へパリンは禁忌)。以後ワーファリンへと重複の上切り替えていく。なおHITへの血小板輸血も禁忌。
□ へパロック ・・ 点滴の管の中の流れが停まっているとき、その中が凝固しないようにするため薄いヘパリンを入れておくこと。昨年あたりより、最初からヘパリンが注射器に入っている「へパフラッシュ」が発売http://www.terumo.co.jp/medical/heparin/hepaflush.html。
□ ヘモ=痔核=痔 ・・ 正確には<ヘモロイド(血液が流れる病気、という意味)>。以下の3つに分かれる。
? 痔核=いぼ痔・・肛門付近の静脈に血液がたまってコブのように盛り上がったもの。痛くて出血量多い。
? 裂肛=切れ痔 ・・ 肛門の上皮に傷。硬い便だと裂ける。なので排便困難となり、しかも排便したあと痛い。
? 痔ろう=あな痔・・肛門のくぼみ部分に菌が入り込んで皮下で炎症を起こし化膿、ついには皮膚を破って外へ出る。発熱・痛み・肛門周囲の腫脹。
薬物療法(内服ではヘモクロンなど。座薬では、ボラギノ−ル:ステロイド含まず、ポステリザン・ネリクロプト:ステロイド含む)にずっと依存の状態なら手術を受けるべき(単に切除とは限らない)。
ここが読みやすいhttp://daichou.com/naiji.htm。
□ 片頭痛 ・・ 若い女性に多い頭痛。頭痛はひどく、<片側で拍動性(脈に一致したズキンズキン)>と本にはあるが、絶対でなく様々。頻度的には意外と少なく、月に1-5回という訴えが多い(具体的にはひと月に女性4-6回、男性1-2回)。痛みは片側だけでなく両側に出ることもある。しかし左右差があるという特徴をもつ。なお吐き気を伴うときは特に強く疑う。またこの痛みは強い光、大きな音、不快な臭いで増強することがある。発作の数十分ないし数時間前に目の前がチカチカ光って見える、首筋が張る、生あくびが出るなどの前駆症状がみられることがある。妊娠中、特に後期以降は頭痛は軽快する。バファリンなどの通常の頭痛薬は無効なこと多い。
最近のトピックスとしてはHIT-6というアンケート調査があり、これによって片頭痛の支障度を評価できる、とある。
※ HIT=Headache Impact Test
質問項目↓
? 頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
? 頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
? 頭が痛いとき、横になりたくなることがありますか?
? この4週間に、頭痛のせいで疲れてしまって仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいでうんざりしたりいらいらしたりしたことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいで仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?
それぞれ<全くない(6点)><ほとんどない(8点)><時々ある(10点)><いばしばある(11点)><いつもそうだ(13点)>から選び、各質問ごとに点数を合計。
・ 支障あり
60点点以上:日常生活にかなりの影響があり、重症です
56-59点:日常生活にかなりの影響があります
50-55点:日常生活にある程度の影響があります
・ 支障なし・・49点以下
→ つまり50点以上は積極的な治療が必要
治療に関しては今後トリプタン製剤が急性期のファーストチョイスとの認識が標準的となりつつある。ただし最近、その内服のしすぎが却って頭痛を促進してしまう、という<薬物乱用頭痛(MOH)>が問題となっている。これにならないためには月10日以内の頻度に留めておくことが推奨されている。むしろ月10日以上の頻度になるぐらい必要なら、薬物乱用頭痛を疑うことも必要。
頭痛に興味のある方はhttp://www.jhsnet.org/へ。
□ ヘリコバクター・ピロリ=HP=ヘリコ=ヘリコバクター=ピロリ
ヘリコ=らせん状、バクター=細菌、ピロリ=胃の出口である幽門部、という意味がある。胃・十二指腸潰瘍の原因菌と考えられ、感染により活性酸素産生→胃粘膜傷害、という機序が最も考えられている。もっと詳しく言うと、感染でケモカインにより活性化された多核白血球が活性酸素を産生し、それが粘膜傷害を起こす。
※ ケモカインとは、白血球走化に対する作用(ケモタキシス)を有するサイトカインの総称。ケモカインは炎症で大量に産生され、血管内から炎症組織内への白血球の遊走をもたらす。攻撃命令みたいなもの。
※ サイトカインとは、細胞が産生する蛋白で、それに対するレセプターを持つ細胞に働き、細胞の増殖・分化・機能発現を行うもの。これによって悪いこと(炎症など)も起きれば、いいこと(治癒過程)も起きる。
※ ピロリを慢性にもってる人の数%〜10%に胃癌が発生するといわれている。
潰瘍の既往があって菌陽性ならまず除菌=除菌療法を勧められる。抗生剤2種類と増量した胃薬を1週間飲む。
菌が陽性かどうか確かめる検査としては、呼気試験や便、血液での抗体など。開業医ではあまり儲けにならず(特別に大きな点数が取れるわけでもなく、判定試験の試薬期限などの問題)、積極的にしてないところが多い。除菌治療は抗生剤2種+胃薬(PPI)を1週間。2割で軟便・下痢の副作用。逆流性食道炎の副作用もある。
2回目の除菌が失敗すると教科書的には『専門医に紹介』とあるが、現実的には経過観察とならざるを得ないことが多い(専門医への紹介の、必要性そのものへの疑問。患者の不安への配慮)。非保険適応薬(メトロニダゾール)の使用もありだがかなり高価らしい。
なお肝心の「効果」については、初回1回目の除菌治療で9割の除菌率ということになっている(学会や講演会)。除菌成功例では十二指腸潰瘍を90%以上、胃潰瘍を80%程度の確率で再発を防止できるらしい。除菌率は施設によって差があり、耐性菌の出現もあってか実際の現場では70からよくて80%、という意見が多い。施設による抗生剤の使用状況も大いに関わっていると思われる。なので受ける側としては、この施設での陰性率はいかがなものかと問うてみることも大事だ。
なおhttp://www.jshr.jp/こういう学会もある。
確かに胃潰瘍で入院するのはかなりの時間と費用を伴うので、ピロリ陽性なら除菌する価値はある(都合のいい表現だ)。もし胃潰瘍で入院すれば50代男性ならば平均入院日数19日、平均医療費23万円を要するといわれている(H14.厚生労働省)。
□ ヘルペス脳炎 ・・ 単純ヘルペス(HSV)による脳炎(つまりHSVE)。治療が遅れると死亡率が高く、神経学的な緊急事態として認識されている。ガイドラインは日本神経感染症学会http://homepage2.nifty.com/~sakura2001/hse/hse-9.htmにて公表(HPに載せるらしい)。症状は、頭痛・発熱、精神症状、意識障害、痙攣など。頭部CTにて局所的異常を5-8割に認めMRIではその所見をより早期に発見できる。脳波は発症早期からほぼ全例で異常を呈し、典型的な所見<周期性一側てんかん型放電>は3割にしかみられない。髄液ではウイルス性の所見通りに圧↑、細胞数(リンパ球優位)↑、蛋白濃度↑、糖濃度正常。しかしまれに細胞数増多なしだったり蛋白濃度正常、糖濃度低値の例もあるので注意。急性期の早期診断は髄液のPCR法によるHSV-DNA検出(しかし偽陰性に注意。再検を要することあり)。なお発症2週間以後は陰性化する。なおウイルス感染の検査で多用する血清抗体の変動に関しては本症は定まったものがない。髄液内抗体価による診断もありだが、発症から10日たたないと信用できる判定とならない。なので、実際はPCRと髄液内抗体検査を組み合わせて診断していく。ウイルス分離ができれば確定には一番いいが、実際の頻度は5%未満と極端に低い。治療の第一選択はアシクロビルで、死亡率を減少させる効果はあるものの後遺・社会復帰への効果はまだ不十分。急性期のステロイド併用に関しては研究段階。
□ ペースメーカー ・・ 脈が少なくて、それが症状・病態悪化につながるとき使用。脈の数が少ないときを感知して(センシング)、そのつど脈を出すための刺激を発する(ペーシング)。この刺激に反応して心臓は脈を出す(自己レート)。とりあえずカテーテル入れるだけの応急処置的な「一時的ペースメーカー」と、電池を胸の皮下に埋め込み自由に動ける「恒久的=永久的ペースメーカー」に分かれる。ペースメーカー入れたらMRIは受けれない。
□ ぺルジピン ・・ カルシウム拮抗薬で、主には降圧目的の持続点滴として使用されることが多い(内服もあるが)。
□ ペンタジン=ペンタ ・・ 鎮痛剤。神経に作用して痛みを止めるので、根本から治すわけではない。これによる中毒患者が開業医などを転々とすることあり。同薬剤として「ソセゴン」などあり。
□ ペンタジン中毒 ・・ ペンタジンに体が依存してしまった状態。偽の紹介状「この患者の痛み時はペンタジンを投与ください、などと記載」を持ってくる患者もいるので注意を。
□ ベイスン ・・ αグルコシダーゼ阻害剤の1つ。腸管内の二糖類を分解する酵素を阻害して、単糖類になるのを防ぎ、その結果糖は腸管に取り込まれにくくなる。変化を邪魔された二糖類は腸管に蓄積して腸内細菌のエサとなり分解されてガスを発生する。このガスのせいで腹部膨満・オナラ増加をきたす。ガスモチンの併用でガス減少。
□ 便潜血 ・・ 消化管の微量な出血を調べる。大まかに1つあり、?化学法 ・・ 安くできるが疑陽性のことあり。?ヒトヘモグロビン法=ヒトヘモ ・・ 正確だが高価。陽性なら腫瘍マーカーとともに胃・大腸の造影・カメラを。
□ 便秘 ・・ 何日出なかったら便秘、という定義はないが、病院では3日以上だとそう解釈されることが多い。通常は錠剤で眠前投与のプルセニド(人によって腹痛)か、1日3回で粉薬の重炭酸マグネシウム(腎障害の人注意)=カマグが処方される。それでも出なければラキソベロンの処方が出たりする。あるいはグリセリン浣腸(60ml あるいは120ml)、それでも出なければ高圧浣腸を選択される。大腸内視鏡検査前に飲ませるニフレックを処方する医師もいる。
サーガマニュアル2007秋 ほ ぼ
2007年9月17日□ 放射線肺炎 ・・ 肺癌に対する放射線治療の際に発生した場合の肺炎。照射は通常2週間ほど行うものだが、いつの時期に起こりやすいかは様々(数週〜数ヶ月)。発熱・咳・胸部レントゲンがきっかけで発見される(しかし実際初期の所見としてのスリガラス陰影を発見するのは困難)。モニタリングに血中KL-6、SP-A、SP-Dが有用で、照射の前に比し1.5倍以上に上がれば本症を合併している可能性が高い。
□ 保険適応外 ・・ 国がお金を負担してくれない検査項目・処置。その場合、お金の負担は患者側となるので、あらかじめ了解が必要となる。
□ ホルター=ホルター心電図 ・・ ホルターという人が発明した24時間式の携帯型心電図。夜間の不整脈など、外来でとる以外の有力な心電図情報が手に入る。何らかの事情で中断する場合もあるが、8時間以上記録が録れないとコストとして算定できない。前述のように「ホルター」は人の名前。したがって「ホルダー心電図」というのは間違い。
□ 本態性血小板血症=ET=Essential thrombo-cythemia
慢性骨髄増殖性疾患(MPD)の1つ。10万人に0.1人、とごくまれ。ほとんどの医者は経験がない。
異常クローンの巨核球が血小板を過剰に産生して血小板が無意味に増加する(通常60万/μL以上で、多くは100万/μL以上)。診断時年齢の平均は60歳だが、2割は40歳以下で診断されいるので注意が必要だ。
増加した血小板は血栓症・出血傾向をきたす。治療はそれの阻止が目的で、具体的には以下の方法。実際にはリスク別に評価して適応を決める。
? 血小板減少療法
・ ハイドロキシウレア(HU) ・・ 第一選択薬。DNA抑制による骨髄抑制来たしやすいが、薬剤の一時中止で早期の(血小板数の)回復が得られる。最近では下腿潰瘍(可逆性)の副作用報告がある。
・ インターフェロンα ・・ 保険適応未。血小板減少作用による効果。巨核球増殖を直接抑えると考えられている。
・ Anagrelide ・・ 巨核球の成熟を抑制し血小板数を減少。
? 抗血小板療法←抗血栓目的
・ アスピリンが最も使用される。
http://mpdnetjapan.jugem.cc/?cid=1←最近の知見
http://www8.ocn.ne.jp/~halfboil/criteria/tab-g07.html←診断基準(since 1997〜)
■ 「ホンマにすんませんやぞ」 ・・ 「すみません」とひたすら謝りまくる研修医に、上級医らが真の意味を込めて強調する教訓の言葉。怒りがピークのとき使用されることがある。
□ ポーズ ・・ 写真撮るときの「はいポーズ!」でもお馴染み、意味は「静止」。心臓の場合は「心停止」を指す。つまり「心停止時間」のこと。3秒以上だと失神することが多いが、不思議となんともない人も。
□ ポータブルエコー ・・ 持ち運び可能な超音波検査機械。通常カラーはなく、しかも旧式だと性能は今ひとつなものが多い。職場では「ポータブル」と略される。
□ ポタコール ・・ リンゲル液。細胞外液に近く、体液の急速補充を目的に使用される。心不全の場合は悪化させる(右室梗塞は別)。略して「ポタ」と略される。
□ 房室ブロック ・・ 徐脈性の不整脈の1つ。1型は様子見で、3(完全型)はペースメーカー植え込み適応。
□ ボスミン=ノルアドレナリン ・・ アドレナリン製剤。頻脈を起こさせ血圧を急激に上げる作用。従って使用は心停止のとき、アナフィラキシーショック時などの救命時に限られる。重症喘息にも皮下注射で使われる。この場合は頻脈作用でなく気管支拡張作用に頼る。
□ ボスミン綿球 ・・ ボスミンめんきゅう、と読む。鼻出血が止まりにくいときに使用される。綿球をボスミンの注射液にひたすだけ。ノルアドレナリンの副作用にも注意しよう。
□ 保険適応外 ・・ 国がお金を負担してくれない検査項目・処置。その場合、お金の負担は患者側となるので、あらかじめ了解が必要となる。
□ ホルター=ホルター心電図 ・・ ホルターという人が発明した24時間式の携帯型心電図。夜間の不整脈など、外来でとる以外の有力な心電図情報が手に入る。何らかの事情で中断する場合もあるが、8時間以上記録が録れないとコストとして算定できない。前述のように「ホルター」は人の名前。したがって「ホルダー心電図」というのは間違い。
□ 本態性血小板血症=ET=Essential thrombo-cythemia
慢性骨髄増殖性疾患(MPD)の1つ。10万人に0.1人、とごくまれ。ほとんどの医者は経験がない。
異常クローンの巨核球が血小板を過剰に産生して血小板が無意味に増加する(通常60万/μL以上で、多くは100万/μL以上)。診断時年齢の平均は60歳だが、2割は40歳以下で診断されいるので注意が必要だ。
増加した血小板は血栓症・出血傾向をきたす。治療はそれの阻止が目的で、具体的には以下の方法。実際にはリスク別に評価して適応を決める。
? 血小板減少療法
・ ハイドロキシウレア(HU) ・・ 第一選択薬。DNA抑制による骨髄抑制来たしやすいが、薬剤の一時中止で早期の(血小板数の)回復が得られる。最近では下腿潰瘍(可逆性)の副作用報告がある。
・ インターフェロンα ・・ 保険適応未。血小板減少作用による効果。巨核球増殖を直接抑えると考えられている。
・ Anagrelide ・・ 巨核球の成熟を抑制し血小板数を減少。
? 抗血小板療法←抗血栓目的
・ アスピリンが最も使用される。
http://mpdnetjapan.jugem.cc/?cid=1←最近の知見
http://www8.ocn.ne.jp/~halfboil/criteria/tab-g07.html←診断基準(since 1997〜)
■ 「ホンマにすんませんやぞ」 ・・ 「すみません」とひたすら謝りまくる研修医に、上級医らが真の意味を込めて強調する教訓の言葉。怒りがピークのとき使用されることがある。
□ ポーズ ・・ 写真撮るときの「はいポーズ!」でもお馴染み、意味は「静止」。心臓の場合は「心停止」を指す。つまり「心停止時間」のこと。3秒以上だと失神することが多いが、不思議となんともない人も。
□ ポータブルエコー ・・ 持ち運び可能な超音波検査機械。通常カラーはなく、しかも旧式だと性能は今ひとつなものが多い。職場では「ポータブル」と略される。
□ ポタコール ・・ リンゲル液。細胞外液に近く、体液の急速補充を目的に使用される。心不全の場合は悪化させる(右室梗塞は別)。略して「ポタ」と略される。
□ 房室ブロック ・・ 徐脈性の不整脈の1つ。1型は様子見で、3(完全型)はペースメーカー植え込み適応。
□ ボスミン=ノルアドレナリン ・・ アドレナリン製剤。頻脈を起こさせ血圧を急激に上げる作用。従って使用は心停止のとき、アナフィラキシーショック時などの救命時に限られる。重症喘息にも皮下注射で使われる。この場合は頻脈作用でなく気管支拡張作用に頼る。
□ ボスミン綿球 ・・ ボスミンめんきゅう、と読む。鼻出血が止まりにくいときに使用される。綿球をボスミンの注射液にひたすだけ。ノルアドレナリンの副作用にも注意しよう。
サーガマニュアル2007秋 ま
2007年9月17日□ マーゲン ・・ ドイツ語で、「胃」。したがって、「マーゲン・チューブ」は「胃管」。
□ マイコプラズマ肺炎 ・・ マイコプラズマ・ニューモニエによる非定型肺炎=異型肺炎の1つ。小児〜若年に好発。以下の場合は可能性が高く、薬の選択を誤るといつまでたっても治らない。
○ 咳がしつこくそれも夜間、喘息ではないかと思うくらい。1週間以上も続く。高熱はいうまでもない。
○ 病院でもらった薬であるセフェム系抗生剤が全く効かない。
○ 周囲で咳のひどい人がたくさんいる。
○ 白血球が増えないことが多い。
○ 血液検査での肝機能障害を認めることあり(頻度1/3)。
○ レントゲン像は多彩だが、けっこう広い範囲で陰影を認める印象がある。
処方にあたっては、症状・所見があまりにも特徴的ならマクロライドorテトラサイクリンを処方するが、通常の細菌によるものがどうしても否定できなければセフェム系も出して2剤で処方するか、あるいはニューキノロン単独(←小児はダメですよ)の処方をするのが現実的。
□ マウスピース ・・ 気管支鏡・胃カメラなど口から入れる際、カメラを喰いちぎられないようにするため、口で噛んでもらうもの。テープでしっかり固定しないとすぐ外れる。
□ マスター・ダブル ・・ トロフィー授賞式のような2階段を登り降りしてもらう検査。メトロノームの動きに合わせる。前後で心電図をとり比較。STや不整脈を評価。狭心症の「定性的」スクリーニング検査。階段が1段しかない「マスター・シングル」は腰の悪い人向け。
□ 「また飲みにいきましょう」 ・・ と言ってくる人間に限って全く来ないものだ。
□ マッチング制度 ・・医学生が医者になってすぐに研修を希望する病院を希望順に指定し、一方研修病院のほうも採用したい学生を順番に希望し、コンピューターによって振り分けを決めていく方法。 病院が決まればさあ引越し手続き、それと医局への挨拶(みやげ1品)だ!
□ 末梢血幹細胞移植=PBSCT=Peripheral(末梢)+BSC=blodd stem cell(血液幹細胞)+transplantation(移植) ・・ 従来の骨髄移植に替わる造血幹細胞移植として定着している。以下の??に分けられる。全くの別物。なおわが国ではこの移植でのドナーは血縁者のみに限られている。
? 同種PBSCT(allo-PBSCT) ・・ 健常人ドナーにG-CSFを4-6日間皮下注射し投与4-6日目にPBSCとしてドナーから回収する。一方患者側は前もって放射線・化学療法を受けておき、PBSCが移植される。
? 自家PBSCT(auto-PBSCT) ・・ 大量の放射線・化学療法を行った上で骨髄を抑制し、前もって保存しておいた造血幹細胞を輸注し造血組織の建て直しを行い抗腫瘍効果を期待する。適応は造血器由来の悪性腫瘍が中心。
□ まな板のコイ ・・ 高齢の患者が皮肉って自分たちをこう呼ぶことが多い。
□ マルク=骨髄穿刺 ・・ 骨盤か胸骨を穿刺する。ドロッとした性状なら骨髄だろう。しかし老年ではドライ(骨髄が硬くて吸えない)なことも多い。なお採取の不出来によっては「末梢血混入」となり不良標本となることも。
□ 慢性気管支炎 ・・ 6ヶ月以上咳・痰が慢性的に続く状態。たいてい喫煙者だが、公害の影響のこともある。
□ 満床(まんしょう) ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で埋め尽くされた状態。週末に合わせうまく満床にしていくのは事務長の役どころ。
□ 慢性呼吸不全 ・・ 肺気腫などの基礎疾患があり、それによる低酸素・あるいは高炭酸ガス(二酸化炭素)血症をもつ場合を指す。しかし厳密には肺気腫・DPB・慢性気管支炎の総称=COPD。
□ 慢性腎不全 ・・ 血液中のBUN・Crが慢性的に上昇していれば、程度を問わず全部ひっくるめてこう呼ばれる。
□ マンションの電話 ・・ 医師あてに時々かかってくる業者からの電話。マンション融資を促してくる。医師の存在を確認し、医局長などの病院スタッフ名義で電話をかけてくる。医師名などの情報漏れは薬剤・医療機器関係あるいは事務関連などと、疑われる部署は数知れず。
□ 慢性関節リウマチの検査・治療についてポイントのみ
・ MTXが第一選択薬という認識が主体となってきている。難治・進行例では生物学的製剤(抗TNFα薬)が使用される。
※ 生物学的製剤の第1弾がインフリキシマブ(2003)、第2弾がエタネルセプト(2005)。
しかしこれらは関節がターゲットとはいえ炎症・症状をコントロールするものであって、関節変形や可動域制限などいわゆる関節機能障害の進行まで抑えることはできない。
・ そこでRAを早期の段階(早期RA)で発見しようという意気込み・試みはあるものの決定的に優れたガイドラインがないのが現実。
・ 活動性の指標 ・・ 古くはCRP、ESR、RF、最近ではアミロイドA(SAA)、MMP-3(RA関節の増殖滑膜で産生つまり滑膜炎のマーカー)、抗CCP抗体が早期より上昇する指標であり、血液検査以外ではMRI、関節エコーも早期の診断に有用である。なおレントゲンでは滑膜炎は検出できないので早期発見にはならない。
・ MMP-3高値例では関節破壊進行が早く、こういう場合はMTXや生物学的製剤を早急にという意見あり。
・ その他の指標
→ RF ・・ これの検出法としては色々あり、RAテスト、RAPA、RF定量、抗ガラクトース欠損IgG抗体(CARF)、IgG-RFなどがある。この中でCARFはより早期の段階で検出されるが特異度が低め。特異度はIgG-RFで高く(90%)、関節症状以外主体のRA(血管炎など)との関連がある。
→ 抗CCP抗体 ・・ 特異度95%以上と高く、RFで最も特異度の高いIgG-RFよりも優れる。感度のほうも80%とRFと同等。しかもRF陰性のRA患者の3-5割に陽性となるから驚きだ。特異度が高いので、これが陽性なら積極的にRAを疑って次の検査(MRI・関節エコー)にまわすべきである。
・ MRI所見
→ 滑膜炎、腱鞘炎、滑液包炎
→ 骨変化・・早期では滑膜炎領域の骨髄浮腫(骨髄内の水分増加であり反応性の変化)。進行すると骨浸食。
これらを認めるほど関節の破壊病変が多くなる予測が立ち早期治療の必要性が増す。
・ RAの薬
→ NSAIDs ・・ 現在では補助的役割。病状の進行には寄与しないからだ。なので使用するとすればそれは、確定診断までのつなぎ、DMARD効果が出現するまで(1−2ヶ月)のつなぎ、軽症例への使用として使用される。
→ ステロイド ・・ NSAID・DMARDによっても症状・炎症が抑制できなければ使用する価値はある。ただし使用量はPSL換算で10mg以下。可能な限り5mg以下に努力すべき。ただ関節外症状(血管炎や胸膜炎など)ではこの量では足りない。開業医でよくされている関節内注入は副作用を考慮すると3ヶ月以上間隔ですべき。
→ DMARDs=抗リウマチ薬 ・・ 関節破壊の進行を抑制。早期、できれば診断後3ヶ月以内からの導入が勧められる。問題点としてはノンレスポンダー(人によってなぜか効かない)、エスケープ現象(長期使用中に効果減弱)、腎障害など。欧米ではMTXが第一選択だが日本では他のDMARDが無効なとき使用を許される。ただし使用量が欧米に比して少ないのが問題となっている。
→ 生物学的製剤=抗サイトカイン療法 ・・ MTX無効例、骨破壊進行例に使用。厚生省の基準では、MTX6mg/weekの3ヶ月投与でもコントロール不良なら使用の適応がある。薬価の高さ、副作用(感染症・悪性腫瘍誘発など)が今後の課題。なかでも感染症は結核などの日和見感染の頻度が高く、インフリキシマブの場合開始2-3ヶ月後(効果発現最大の時期)に発見されやすい。
・ 一般医のリウマチ専門医に紹介する基準 ・・ Paul Emery(2002)
? 腫脹関節数≧3
? MTPかMCP関節の病変を伴う
? 朝のこわばり≧30分
・ MTXによる間質性肺炎
→ 頻度は1%前後だが死亡にいたることもある。治療はもちろん本剤の中止であり、中止数日で軽快傾向となることが多い。
→ 投与時期のいつでも起こりうるし、投与量とも関係がない。間質性肺炎らしき症状(発熱、乾性咳、労作時息切れ)が一過性にでも認めれば次回の投与は見合わせて、肺疾患の有無・活動性の評価にあたる。画像上、間質性肺炎の所見が認められたらニューモシスチス肺炎の除外が必要になる。喀痰細胞診、できれば気管支鏡検査を施行し気管支肺胞洗浄を行い鑑別につとめる。
□ 慢性膵炎
最近ではアルコール性の頻度が増えている(67.7%)。またアルコールだけでなく喫煙も危険因子であり、禁煙によりリスクは減る。また慢性膵炎では膵癌または他の悪性腫瘍の合併も多い。さらに喫煙が膵癌の危険因子であることもわかっている。
病態的には代償期→移行期→非代償期へと進む。代償期では急性再燃発作があり、腹痛・背部痛を繰り返し、実質的には急性膵炎を繰り返す。その他おとなしい時期は間欠期といわれる。なお非代償期に進展すると腹痛がむしろみられなくなり、それまでカバーされていた分泌機能の破綻(糖尿・消化吸収障害)がみられてくる。なのでいったん症状がおさまっているときはむしろ逆に検査の頻度を増やしたほうがいい。慢性膵炎での腹痛は急性とちと違い、心か部〜左季肋部を中心とすることが多い。しかも飲酒・高脂肪食がきっかけに起こりやすいという特徴もある。
※ 2001年にMRCP検査所見を付け加えた、新しい臨床診断基準が作成された。
□ 満床 ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で占められ、もう入院受け入れのの余地がないこと。やむを得ず、強制的に誰かが退院させられることもある。
□ マイコプラズマ肺炎 ・・ マイコプラズマ・ニューモニエによる非定型肺炎=異型肺炎の1つ。小児〜若年に好発。以下の場合は可能性が高く、薬の選択を誤るといつまでたっても治らない。
○ 咳がしつこくそれも夜間、喘息ではないかと思うくらい。1週間以上も続く。高熱はいうまでもない。
○ 病院でもらった薬であるセフェム系抗生剤が全く効かない。
○ 周囲で咳のひどい人がたくさんいる。
○ 白血球が増えないことが多い。
○ 血液検査での肝機能障害を認めることあり(頻度1/3)。
○ レントゲン像は多彩だが、けっこう広い範囲で陰影を認める印象がある。
処方にあたっては、症状・所見があまりにも特徴的ならマクロライドorテトラサイクリンを処方するが、通常の細菌によるものがどうしても否定できなければセフェム系も出して2剤で処方するか、あるいはニューキノロン単独(←小児はダメですよ)の処方をするのが現実的。
□ マウスピース ・・ 気管支鏡・胃カメラなど口から入れる際、カメラを喰いちぎられないようにするため、口で噛んでもらうもの。テープでしっかり固定しないとすぐ外れる。
□ マスター・ダブル ・・ トロフィー授賞式のような2階段を登り降りしてもらう検査。メトロノームの動きに合わせる。前後で心電図をとり比較。STや不整脈を評価。狭心症の「定性的」スクリーニング検査。階段が1段しかない「マスター・シングル」は腰の悪い人向け。
□ 「また飲みにいきましょう」 ・・ と言ってくる人間に限って全く来ないものだ。
□ マッチング制度 ・・医学生が医者になってすぐに研修を希望する病院を希望順に指定し、一方研修病院のほうも採用したい学生を順番に希望し、コンピューターによって振り分けを決めていく方法。 病院が決まればさあ引越し手続き、それと医局への挨拶(みやげ1品)だ!
□ 末梢血幹細胞移植=PBSCT=Peripheral(末梢)+BSC=blodd stem cell(血液幹細胞)+transplantation(移植) ・・ 従来の骨髄移植に替わる造血幹細胞移植として定着している。以下の??に分けられる。全くの別物。なおわが国ではこの移植でのドナーは血縁者のみに限られている。
? 同種PBSCT(allo-PBSCT) ・・ 健常人ドナーにG-CSFを4-6日間皮下注射し投与4-6日目にPBSCとしてドナーから回収する。一方患者側は前もって放射線・化学療法を受けておき、PBSCが移植される。
? 自家PBSCT(auto-PBSCT) ・・ 大量の放射線・化学療法を行った上で骨髄を抑制し、前もって保存しておいた造血幹細胞を輸注し造血組織の建て直しを行い抗腫瘍効果を期待する。適応は造血器由来の悪性腫瘍が中心。
□ まな板のコイ ・・ 高齢の患者が皮肉って自分たちをこう呼ぶことが多い。
□ マルク=骨髄穿刺 ・・ 骨盤か胸骨を穿刺する。ドロッとした性状なら骨髄だろう。しかし老年ではドライ(骨髄が硬くて吸えない)なことも多い。なお採取の不出来によっては「末梢血混入」となり不良標本となることも。
□ 慢性気管支炎 ・・ 6ヶ月以上咳・痰が慢性的に続く状態。たいてい喫煙者だが、公害の影響のこともある。
□ 満床(まんしょう) ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で埋め尽くされた状態。週末に合わせうまく満床にしていくのは事務長の役どころ。
□ 慢性呼吸不全 ・・ 肺気腫などの基礎疾患があり、それによる低酸素・あるいは高炭酸ガス(二酸化炭素)血症をもつ場合を指す。しかし厳密には肺気腫・DPB・慢性気管支炎の総称=COPD。
□ 慢性腎不全 ・・ 血液中のBUN・Crが慢性的に上昇していれば、程度を問わず全部ひっくるめてこう呼ばれる。
□ マンションの電話 ・・ 医師あてに時々かかってくる業者からの電話。マンション融資を促してくる。医師の存在を確認し、医局長などの病院スタッフ名義で電話をかけてくる。医師名などの情報漏れは薬剤・医療機器関係あるいは事務関連などと、疑われる部署は数知れず。
□ 慢性関節リウマチの検査・治療についてポイントのみ
・ MTXが第一選択薬という認識が主体となってきている。難治・進行例では生物学的製剤(抗TNFα薬)が使用される。
※ 生物学的製剤の第1弾がインフリキシマブ(2003)、第2弾がエタネルセプト(2005)。
しかしこれらは関節がターゲットとはいえ炎症・症状をコントロールするものであって、関節変形や可動域制限などいわゆる関節機能障害の進行まで抑えることはできない。
・ そこでRAを早期の段階(早期RA)で発見しようという意気込み・試みはあるものの決定的に優れたガイドラインがないのが現実。
・ 活動性の指標 ・・ 古くはCRP、ESR、RF、最近ではアミロイドA(SAA)、MMP-3(RA関節の増殖滑膜で産生つまり滑膜炎のマーカー)、抗CCP抗体が早期より上昇する指標であり、血液検査以外ではMRI、関節エコーも早期の診断に有用である。なおレントゲンでは滑膜炎は検出できないので早期発見にはならない。
・ MMP-3高値例では関節破壊進行が早く、こういう場合はMTXや生物学的製剤を早急にという意見あり。
・ その他の指標
→ RF ・・ これの検出法としては色々あり、RAテスト、RAPA、RF定量、抗ガラクトース欠損IgG抗体(CARF)、IgG-RFなどがある。この中でCARFはより早期の段階で検出されるが特異度が低め。特異度はIgG-RFで高く(90%)、関節症状以外主体のRA(血管炎など)との関連がある。
→ 抗CCP抗体 ・・ 特異度95%以上と高く、RFで最も特異度の高いIgG-RFよりも優れる。感度のほうも80%とRFと同等。しかもRF陰性のRA患者の3-5割に陽性となるから驚きだ。特異度が高いので、これが陽性なら積極的にRAを疑って次の検査(MRI・関節エコー)にまわすべきである。
・ MRI所見
→ 滑膜炎、腱鞘炎、滑液包炎
→ 骨変化・・早期では滑膜炎領域の骨髄浮腫(骨髄内の水分増加であり反応性の変化)。進行すると骨浸食。
これらを認めるほど関節の破壊病変が多くなる予測が立ち早期治療の必要性が増す。
・ RAの薬
→ NSAIDs ・・ 現在では補助的役割。病状の進行には寄与しないからだ。なので使用するとすればそれは、確定診断までのつなぎ、DMARD効果が出現するまで(1−2ヶ月)のつなぎ、軽症例への使用として使用される。
→ ステロイド ・・ NSAID・DMARDによっても症状・炎症が抑制できなければ使用する価値はある。ただし使用量はPSL換算で10mg以下。可能な限り5mg以下に努力すべき。ただ関節外症状(血管炎や胸膜炎など)ではこの量では足りない。開業医でよくされている関節内注入は副作用を考慮すると3ヶ月以上間隔ですべき。
→ DMARDs=抗リウマチ薬 ・・ 関節破壊の進行を抑制。早期、できれば診断後3ヶ月以内からの導入が勧められる。問題点としてはノンレスポンダー(人によってなぜか効かない)、エスケープ現象(長期使用中に効果減弱)、腎障害など。欧米ではMTXが第一選択だが日本では他のDMARDが無効なとき使用を許される。ただし使用量が欧米に比して少ないのが問題となっている。
→ 生物学的製剤=抗サイトカイン療法 ・・ MTX無効例、骨破壊進行例に使用。厚生省の基準では、MTX6mg/weekの3ヶ月投与でもコントロール不良なら使用の適応がある。薬価の高さ、副作用(感染症・悪性腫瘍誘発など)が今後の課題。なかでも感染症は結核などの日和見感染の頻度が高く、インフリキシマブの場合開始2-3ヶ月後(効果発現最大の時期)に発見されやすい。
・ 一般医のリウマチ専門医に紹介する基準 ・・ Paul Emery(2002)
? 腫脹関節数≧3
? MTPかMCP関節の病変を伴う
? 朝のこわばり≧30分
・ MTXによる間質性肺炎
→ 頻度は1%前後だが死亡にいたることもある。治療はもちろん本剤の中止であり、中止数日で軽快傾向となることが多い。
→ 投与時期のいつでも起こりうるし、投与量とも関係がない。間質性肺炎らしき症状(発熱、乾性咳、労作時息切れ)が一過性にでも認めれば次回の投与は見合わせて、肺疾患の有無・活動性の評価にあたる。画像上、間質性肺炎の所見が認められたらニューモシスチス肺炎の除外が必要になる。喀痰細胞診、できれば気管支鏡検査を施行し気管支肺胞洗浄を行い鑑別につとめる。
□ 慢性膵炎
最近ではアルコール性の頻度が増えている(67.7%)。またアルコールだけでなく喫煙も危険因子であり、禁煙によりリスクは減る。また慢性膵炎では膵癌または他の悪性腫瘍の合併も多い。さらに喫煙が膵癌の危険因子であることもわかっている。
病態的には代償期→移行期→非代償期へと進む。代償期では急性再燃発作があり、腹痛・背部痛を繰り返し、実質的には急性膵炎を繰り返す。その他おとなしい時期は間欠期といわれる。なお非代償期に進展すると腹痛がむしろみられなくなり、それまでカバーされていた分泌機能の破綻(糖尿・消化吸収障害)がみられてくる。なのでいったん症状がおさまっているときはむしろ逆に検査の頻度を増やしたほうがいい。慢性膵炎での腹痛は急性とちと違い、心か部〜左季肋部を中心とすることが多い。しかも飲酒・高脂肪食がきっかけに起こりやすいという特徴もある。
※ 2001年にMRCP検査所見を付け加えた、新しい臨床診断基準が作成された。
□ 満床 ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で占められ、もう入院受け入れのの余地がないこと。やむを得ず、強制的に誰かが退院させられることもある。
サーガマニュアル2007秋 み む め も
2007年9月17日□ 右側胸部誘導 ・・ 通常の心電図では記録しない、右胸の心電図記録。下壁心筋梗塞の際に記録しないと、配慮のなさを問われる。
□ ミニ医者 ・・ ナースの中で、ドクターなみの態度で物事を語る人間。陰でこう呼ばれることあり。
□ ミニ移植(RISTとも呼ばれることあり)=骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植 ・・ 骨髄移植の際に処置前の免疫抑制剤投与が行われるのは常だが、この投与量を減量して行う方法をさす。移植の前に強力な免疫抑制剤で悪性細胞を駆逐する(←移植前処置という)のは骨髄破壊的であるという指摘が出てきたこと、また悪性細胞の駆逐自体を移植前の免疫抑制剤でなくむしろ移植後の免疫反応で行おうという発想からこの方法が生まれた。なお薬剤の減量といっても使用される薬剤の免疫抑制効果そのものは強力で、具体的にはpurine誘導体が中心に使用される。しかし従来の「骨髄破壊的」な骨髄移植と比較して優れているかどうかの比較はなされていない。
□ ミノマイシン ・・ テトラサイクリン系抗生物質。点滴と内服がある。異型肺炎が好適応。副作用としては肝障害など。ときに血管痛(なので生食100でなく500などの大きい点滴に混ぜることも)、膵炎の原因となることも。現場では「ミノ」と略される。
□ ミリスロール(日本化薬) ・・ 亜硝酸剤の点滴。狭心症・心筋梗塞で投与。標準的投与方法(体重50kgとして):?急性心不全・不安定狭心症・・初期原液で1ml/hr≒0.17μg/kg/min、維持量6-12ml/hr。?血圧コントロール・・初期原液で3ml/hr≒0.5μg/kg/minで20ml/hrまで。収縮期血圧90mmHg以上はキープする。ただし数日以上の点滴は「耐性」を招く。これに対して「ニトロール」は耐性を招きにくいとのデータあり。
□ ミルリノン ・・ 商品名はミルリーラ。PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。
□ むずむず脚症候群=レストレスレッグシンドローム=restless legs syndrome=RLS ・・ 夜間に足がむずむず感じてそれで眠れなくなる原因不明の疾患。6-8割では睡眠中の周期性の四肢運動が出現。40-50歳代に好発。一般的な検査所見では異常を呈さないため、結局うつ病や不眠症と誤診されることが多い。専門家によると、以下の問診で4つとも満たすなら間違いないという。?手足を動かしたい欲求あり、?安静時に症状悪化、?動き回ると楽になる、?夕方以降に増悪。具体的な検査としてはポリソムノグラフィーが必要となる。治療としてはまず生活習慣の改善(カフェイン・アルコール摂取禁止、特に夕方以降)、下肢マッサージ・ストレッチ。内服ではパーキンソン病治療薬。
□ ムンテラ ・・ 家族への説明。ムント(口)+セラピー(療法)という言葉の組み合わせが発展して勝手にできあがった造語。「MT」とカルテに記載する輩もいるが、これも自然に派生した言葉で、いわゆる正式な医療用語ではない。
□ 名義貸し(めいぎがし) ・・ 以前は公然と行われていた、履歴書のみ他病院に勤務して給料がおりるという仕組み。特に大学院生は授業料支払いながらの大学勤務なので、モチベーションという意味で必要なものだった。名義を貸してもらう病院側はとりあえず書類上の人数確保。しかし、国の機関はこれをもともと知っていたはず。これを公な騒ぎにすることで、大学病院崩しと民営化、民間病院経営圧迫、医療費抑制などに持っていこうとした役人らの利己的な意図が垣間見える。
□ メイロン ・・ 重炭酸。つまりアルカリ化剤。高カリウムの治療、アシドーシスの補正に使われる(※以前、アドレナリンの作用が現弱されるといわれていたが最近の研究では影響ないようである:2006年日本医師会雑誌)ほか、メニエル病でもよく使用。高炭酸ガスの場合はそれを助長するので使用すべきでない。ボトルではナトリウム負荷にも注意。
□ メキシチ−ル=メキシレチン ・・ 心室性の不整脈に使用される。最近は糖尿病性の末梢神経障害の使用も。副作用としては肝障害、精神症状に注意。血中濃度の測定がときに必要。
□ メタ(meta=metastasis) ・・ 癌の転移。
□ メタボリックシンドローム=MS=metabolic syndrome=代謝異常症候群
まず基礎に生活習慣の偏りがあり、それによって内臓脂肪が蓄積、これによって脂肪細胞の機能異常、特にアディポサイトカイン分泌異常を引き起こす。で、高脂血症、高血圧、糖尿病をきたし動脈硬化を起こしていく、いわゆる複合型リスク病態。
2005年4月の最新の基準によると・・内臓脂肪の蓄積がある(巻尺でウエスト周囲径・・ベルト位置でなく、ヘソまわり・・で男性85cm以上、女性90cm以上)のが必須条件で、あと以下3つのうち2項目を満たす場合。
?高脂血症(中性脂肪150以上 かつ/または HDL=善玉コレステロール;40未満)
?高血圧(上が130以上 かつ/または 下が85以上)
?糖尿病(空腹時で110以上)。
※ ただしここでの高脂血症、糖尿病、高血圧は従来の基準のものとは異なる。
※ 日常臨床での内臓脂肪量測定(CTで内臓脂肪面積100cm2以上→内臓脂肪蓄積あり)と血中アディポネクチン濃度測定が強調されている。
ところでこの基準は議論を呼んでいる。というのは女性で腹囲90cm以上と定義したら、実際リスク集積者の半数以上を見逃してしまう、というのだ。最近では動脈硬化性疾患の合併も考慮し、具体的にはカットオフ値を男性83.7cm、女性80.0cmの目安と考える意見が有力である。これに関してはさらなる検討が進められている。
※ ところが「日本ではエビデンスに基づかない診断基準が作られている。その例の1つがMSである」、という指摘があり議論を呼んでいる。詳しくは日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/で。
メタボリックシンドローム各論↓
○ 糖尿病性大血管症
糖尿病は、それがないのと比べて冠・脳血管障害のリスクが3-4倍に上昇する。
血糖是正による心血管イベントの抑制効果は・・明らかなはずだが実はエビデンス不足。
そこでJDCS=Japan diabetes complication study:日本の2型糖尿病の合併症の発症要因を解明するための前向き研究:が行われている。
○ 高脂血症
動脈硬化疾患ハイリスク患者の場合は、たとえLDL-Cが正常でも十分な管理が必要であることは十分示された。ではどこまで下げたらいいのか、それが今のトピックス。アメリカでは「重度ハイリスク」という分類(糖尿病などリスクが多い人、ACSなど)を分類し、その場合は70mg/dl未満まで下げる必要性を提唱した。日本ではJ-LITという調査によるデータが今のところスタンダードな指標とされている。つまり一次予防でLDL-C 160mg/dl未満、二次予防で100mg/dl未満。
○ 高血圧
第一選択薬は5つ。すなわちCa拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬、β遮断薬、降圧利尿薬
α遮断薬も第一選択でもよいがエビデンスなし。
レセルピン系薬剤、ヒドララジン系は臓器保護効果は不十分なので第一選択にはならない。
目的は脳・心・腎の合併症の予防である。
<薬物におけるEBM>
・ 高血圧
RA系抑制薬(ARB・ACEI) ・・ 単なる降圧のほかに、糖尿病新規発症抑制(20%)、糖尿病患者の微量アルブミン尿↓による腎障発生抑制
α遮断薬 ・・ 脂質・糖代謝改善作用(インスリン感受性↑、LDL-C↓、HDL-C↑、TG↓)
・ 糖尿病
チアゾリジン誘導体 ・・ 脂質代謝改善作用(HDL-C↑、TG↓)、抗動脈硬化作用(PWV↓、IMT↓)、ステント挿入後の再狭窄率↓
PROactive study:2型糖尿病への投与で心血管イベントが有意に抑制。
メトホルミン ・・ 2型糖尿病の肝臓の糖新生抑制、インスリン抵抗性↓、LDL-C↓、T-Chol↓、TG↓
・ 高脂血症
スタチン ・・ メタボリックシンドローム患者の心血管イベント抑制、糖尿病新規発症抑制
フィブラート系 ・・ 脂質・糖代謝改善作用、冠動脈新患患者の2次予防効果(BIP study)
□ メディカル・コントロール=MC ・・ 医学的観点から、救急隊員が行う応急措置等の質を保証すること。具体的には救急隊員の教育指導、救急の実際の検証・症例検討、病院到着前の指示など。さらに具体的には救急隊員に勉強会などで学ばせ、意外とされてなかった救急活動の事後検証(あくまでも批判でなく)を行い検討し今後に生かし、場合によっては隊員の再教育につながる。またオンラインで救命士と連絡を取り合うドクター(メディカル・ディレクター)の充実。日本でこの体制が充実しているとは言い難く、これら実現のため行政・消防・救命センターの一層の努力が必要。
■ メトクロプラミド(プリンぺランなど)
制吐剤として使用。ドパミン拮抗薬で、その機序ゆえにパーキンソンなど不随意運動の副作用がまれにある。特に小児の投与で不随意運動所見(眼球運動異常、項部後屈、斜頸、頸部痛、後弓張、四肢の伸展・捻転)がみられたら副作用を疑う。海外ではこれを考慮した使用制限の流れがある。
□ メニエル病 ・・ 内耳の水腫により回転性めまいを起こす。若年でも起こしうる。通常はメイロンの点滴かメリスロンなどの内服。自律神経症状の一部との鑑別はほとんどされていない。
□ メプチンエアー ・・ 喘息の頓服・水色キャップのスプレー。息苦しいときに使用。通常は1日2回まで。使用しすぎは頻脈のもと。子供用に「メプチン・キッドエアー」あり。喘息の吸入薬を吸う場面は映画でもおなじみで、最近では『コール』でダコタ・ファニングが吸っていた。
□ 免疫グロブリン製剤 ・・ 原料は多数の健康人の血中免疫グロブリンであり、それらを精製・濃縮したのが本剤である(血液製剤)。おもに重症感染症の増悪時に、抗生剤と併用される。実際の投与量は地域によって保険上のしばりがあり様々。細胞外増殖菌(インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌などの一般的な感染菌)では効果が期待できるが、細胞内増殖菌(レジオネラ、結核菌など)・マイコプラズマ・クラミジア肺炎、真菌には有効性は期待できない。投与が早すぎるとショック・血圧低下につながるのでゆっくり(1-2時間で)、通常は3日間投与する。これにより腎不全を起こすと不可逆性になりやすい。
■ 免疫グロブリン静注(IVIg)療法 ・・ 小児疾患(ITP、川崎病など)や神経疾患(ギランバレー、CIDP、MMN)、重症感染症(前述)や低ガンマグロブリン血症などに用いられる治療法。400mg/kg/dayで5日連日投与だが経験的なものであり投与量に科学的な根拠があるわけではない。なお点滴開始30分後に副作用(ショック、風邪のような症状など)が出やすいので最初の速度は抑え目が望ましい。また遅発性の副作用として無菌性髄膜炎が1割(経度)、顆粒球減少(一過性)などがある。
□ モーニング・サージ ・・ 夜間→覚醒にかけて交感神経が活性化し、血圧が早朝に上昇してくること。この時間帯は脳卒中の発症が多い。このためいかに早朝の血圧を下げるかが大事だとMRは強調する。
□ モダシン ・・ 抗生剤で、セフェム3世代。緑膿菌用でよく使われていたが、最近は耐性菌も増えている。
□ モニター ・・ 詰所に置いてある、ピコピコ鳴ってる心電図。重症患者か不整脈患者についている。ときに警報音が鳴ったりして職員を驚かせる。
□ モニタリング ・・ ある指標を追いかけること。例えば白血球が今日は増えて、明日は減って・・とかの追跡。
□ 問診表 ・・ 外来受診の前に初診患者の書くもの。既往歴、現在の症状、アレルギー・妊娠の有無など。
□ 薬剤性肺障害 ・・ 薬物有害反応(ADR=adverse drug reaction)のうち呼吸器系のもので、ADRのうちの6-7%を占める。様々な病態を呈するが、最も多いのは薬剤性肺炎で、2000年以降急増している。特に有名なのが間質性肺炎で問題になった金製剤のシオゾール、小柴胡湯、イレッサ。薬剤性肺障害の発生機序はほとんど不明で、病理組織像も多彩。実際の臨床では病理像が得られることは少なく、せいぜいBAL(気管支肺胞洗浄)止まりのことが多い。病態的には肺胞病変、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球性肺疾患などが主体。なお薬剤性肺障害と鑑別すべき病態として、?マイコプラズマ肺炎・細気管支炎、?Pneumocystis jiroveci肺炎、?ウイルス性肺炎、?Coccidioides症(4類の輸入感染症で、Cccidioides immitisによる)、?寄生虫感染症、がある。治療は薬剤の中止のほか、低酸素の状況に応じての酸素投与、ステロイド投与(重症ではパルス)となる。薬剤性肺障害のBAL所見では、総細胞数の増加、細胞分画では好酸球・リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の低下が多い。
□ ミニ医者 ・・ ナースの中で、ドクターなみの態度で物事を語る人間。陰でこう呼ばれることあり。
□ ミニ移植(RISTとも呼ばれることあり)=骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植 ・・ 骨髄移植の際に処置前の免疫抑制剤投与が行われるのは常だが、この投与量を減量して行う方法をさす。移植の前に強力な免疫抑制剤で悪性細胞を駆逐する(←移植前処置という)のは骨髄破壊的であるという指摘が出てきたこと、また悪性細胞の駆逐自体を移植前の免疫抑制剤でなくむしろ移植後の免疫反応で行おうという発想からこの方法が生まれた。なお薬剤の減量といっても使用される薬剤の免疫抑制効果そのものは強力で、具体的にはpurine誘導体が中心に使用される。しかし従来の「骨髄破壊的」な骨髄移植と比較して優れているかどうかの比較はなされていない。
□ ミノマイシン ・・ テトラサイクリン系抗生物質。点滴と内服がある。異型肺炎が好適応。副作用としては肝障害など。ときに血管痛(なので生食100でなく500などの大きい点滴に混ぜることも)、膵炎の原因となることも。現場では「ミノ」と略される。
□ ミリスロール(日本化薬) ・・ 亜硝酸剤の点滴。狭心症・心筋梗塞で投与。標準的投与方法(体重50kgとして):?急性心不全・不安定狭心症・・初期原液で1ml/hr≒0.17μg/kg/min、維持量6-12ml/hr。?血圧コントロール・・初期原液で3ml/hr≒0.5μg/kg/minで20ml/hrまで。収縮期血圧90mmHg以上はキープする。ただし数日以上の点滴は「耐性」を招く。これに対して「ニトロール」は耐性を招きにくいとのデータあり。
□ ミルリノン ・・ 商品名はミルリーラ。PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。
□ むずむず脚症候群=レストレスレッグシンドローム=restless legs syndrome=RLS ・・ 夜間に足がむずむず感じてそれで眠れなくなる原因不明の疾患。6-8割では睡眠中の周期性の四肢運動が出現。40-50歳代に好発。一般的な検査所見では異常を呈さないため、結局うつ病や不眠症と誤診されることが多い。専門家によると、以下の問診で4つとも満たすなら間違いないという。?手足を動かしたい欲求あり、?安静時に症状悪化、?動き回ると楽になる、?夕方以降に増悪。具体的な検査としてはポリソムノグラフィーが必要となる。治療としてはまず生活習慣の改善(カフェイン・アルコール摂取禁止、特に夕方以降)、下肢マッサージ・ストレッチ。内服ではパーキンソン病治療薬。
□ ムンテラ ・・ 家族への説明。ムント(口)+セラピー(療法)という言葉の組み合わせが発展して勝手にできあがった造語。「MT」とカルテに記載する輩もいるが、これも自然に派生した言葉で、いわゆる正式な医療用語ではない。
□ 名義貸し(めいぎがし) ・・ 以前は公然と行われていた、履歴書のみ他病院に勤務して給料がおりるという仕組み。特に大学院生は授業料支払いながらの大学勤務なので、モチベーションという意味で必要なものだった。名義を貸してもらう病院側はとりあえず書類上の人数確保。しかし、国の機関はこれをもともと知っていたはず。これを公な騒ぎにすることで、大学病院崩しと民営化、民間病院経営圧迫、医療費抑制などに持っていこうとした役人らの利己的な意図が垣間見える。
□ メイロン ・・ 重炭酸。つまりアルカリ化剤。高カリウムの治療、アシドーシスの補正に使われる(※以前、アドレナリンの作用が現弱されるといわれていたが最近の研究では影響ないようである:2006年日本医師会雑誌)ほか、メニエル病でもよく使用。高炭酸ガスの場合はそれを助長するので使用すべきでない。ボトルではナトリウム負荷にも注意。
□ メキシチ−ル=メキシレチン ・・ 心室性の不整脈に使用される。最近は糖尿病性の末梢神経障害の使用も。副作用としては肝障害、精神症状に注意。血中濃度の測定がときに必要。
□ メタ(meta=metastasis) ・・ 癌の転移。
□ メタボリックシンドローム=MS=metabolic syndrome=代謝異常症候群
まず基礎に生活習慣の偏りがあり、それによって内臓脂肪が蓄積、これによって脂肪細胞の機能異常、特にアディポサイトカイン分泌異常を引き起こす。で、高脂血症、高血圧、糖尿病をきたし動脈硬化を起こしていく、いわゆる複合型リスク病態。
2005年4月の最新の基準によると・・内臓脂肪の蓄積がある(巻尺でウエスト周囲径・・ベルト位置でなく、ヘソまわり・・で男性85cm以上、女性90cm以上)のが必須条件で、あと以下3つのうち2項目を満たす場合。
?高脂血症(中性脂肪150以上 かつ/または HDL=善玉コレステロール;40未満)
?高血圧(上が130以上 かつ/または 下が85以上)
?糖尿病(空腹時で110以上)。
※ ただしここでの高脂血症、糖尿病、高血圧は従来の基準のものとは異なる。
※ 日常臨床での内臓脂肪量測定(CTで内臓脂肪面積100cm2以上→内臓脂肪蓄積あり)と血中アディポネクチン濃度測定が強調されている。
ところでこの基準は議論を呼んでいる。というのは女性で腹囲90cm以上と定義したら、実際リスク集積者の半数以上を見逃してしまう、というのだ。最近では動脈硬化性疾患の合併も考慮し、具体的にはカットオフ値を男性83.7cm、女性80.0cmの目安と考える意見が有力である。これに関してはさらなる検討が進められている。
※ ところが「日本ではエビデンスに基づかない診断基準が作られている。その例の1つがMSである」、という指摘があり議論を呼んでいる。詳しくは日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/で。
メタボリックシンドローム各論↓
○ 糖尿病性大血管症
糖尿病は、それがないのと比べて冠・脳血管障害のリスクが3-4倍に上昇する。
血糖是正による心血管イベントの抑制効果は・・明らかなはずだが実はエビデンス不足。
そこでJDCS=Japan diabetes complication study:日本の2型糖尿病の合併症の発症要因を解明するための前向き研究:が行われている。
○ 高脂血症
動脈硬化疾患ハイリスク患者の場合は、たとえLDL-Cが正常でも十分な管理が必要であることは十分示された。ではどこまで下げたらいいのか、それが今のトピックス。アメリカでは「重度ハイリスク」という分類(糖尿病などリスクが多い人、ACSなど)を分類し、その場合は70mg/dl未満まで下げる必要性を提唱した。日本ではJ-LITという調査によるデータが今のところスタンダードな指標とされている。つまり一次予防でLDL-C 160mg/dl未満、二次予防で100mg/dl未満。
○ 高血圧
第一選択薬は5つ。すなわちCa拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬、β遮断薬、降圧利尿薬
α遮断薬も第一選択でもよいがエビデンスなし。
レセルピン系薬剤、ヒドララジン系は臓器保護効果は不十分なので第一選択にはならない。
目的は脳・心・腎の合併症の予防である。
<薬物におけるEBM>
・ 高血圧
RA系抑制薬(ARB・ACEI) ・・ 単なる降圧のほかに、糖尿病新規発症抑制(20%)、糖尿病患者の微量アルブミン尿↓による腎障発生抑制
α遮断薬 ・・ 脂質・糖代謝改善作用(インスリン感受性↑、LDL-C↓、HDL-C↑、TG↓)
・ 糖尿病
チアゾリジン誘導体 ・・ 脂質代謝改善作用(HDL-C↑、TG↓)、抗動脈硬化作用(PWV↓、IMT↓)、ステント挿入後の再狭窄率↓
PROactive study:2型糖尿病への投与で心血管イベントが有意に抑制。
メトホルミン ・・ 2型糖尿病の肝臓の糖新生抑制、インスリン抵抗性↓、LDL-C↓、T-Chol↓、TG↓
・ 高脂血症
スタチン ・・ メタボリックシンドローム患者の心血管イベント抑制、糖尿病新規発症抑制
フィブラート系 ・・ 脂質・糖代謝改善作用、冠動脈新患患者の2次予防効果(BIP study)
□ メディカル・コントロール=MC ・・ 医学的観点から、救急隊員が行う応急措置等の質を保証すること。具体的には救急隊員の教育指導、救急の実際の検証・症例検討、病院到着前の指示など。さらに具体的には救急隊員に勉強会などで学ばせ、意外とされてなかった救急活動の事後検証(あくまでも批判でなく)を行い検討し今後に生かし、場合によっては隊員の再教育につながる。またオンラインで救命士と連絡を取り合うドクター(メディカル・ディレクター)の充実。日本でこの体制が充実しているとは言い難く、これら実現のため行政・消防・救命センターの一層の努力が必要。
■ メトクロプラミド(プリンぺランなど)
制吐剤として使用。ドパミン拮抗薬で、その機序ゆえにパーキンソンなど不随意運動の副作用がまれにある。特に小児の投与で不随意運動所見(眼球運動異常、項部後屈、斜頸、頸部痛、後弓張、四肢の伸展・捻転)がみられたら副作用を疑う。海外ではこれを考慮した使用制限の流れがある。
□ メニエル病 ・・ 内耳の水腫により回転性めまいを起こす。若年でも起こしうる。通常はメイロンの点滴かメリスロンなどの内服。自律神経症状の一部との鑑別はほとんどされていない。
□ メプチンエアー ・・ 喘息の頓服・水色キャップのスプレー。息苦しいときに使用。通常は1日2回まで。使用しすぎは頻脈のもと。子供用に「メプチン・キッドエアー」あり。喘息の吸入薬を吸う場面は映画でもおなじみで、最近では『コール』でダコタ・ファニングが吸っていた。
□ 免疫グロブリン製剤 ・・ 原料は多数の健康人の血中免疫グロブリンであり、それらを精製・濃縮したのが本剤である(血液製剤)。おもに重症感染症の増悪時に、抗生剤と併用される。実際の投与量は地域によって保険上のしばりがあり様々。細胞外増殖菌(インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌などの一般的な感染菌)では効果が期待できるが、細胞内増殖菌(レジオネラ、結核菌など)・マイコプラズマ・クラミジア肺炎、真菌には有効性は期待できない。投与が早すぎるとショック・血圧低下につながるのでゆっくり(1-2時間で)、通常は3日間投与する。これにより腎不全を起こすと不可逆性になりやすい。
■ 免疫グロブリン静注(IVIg)療法 ・・ 小児疾患(ITP、川崎病など)や神経疾患(ギランバレー、CIDP、MMN)、重症感染症(前述)や低ガンマグロブリン血症などに用いられる治療法。400mg/kg/dayで5日連日投与だが経験的なものであり投与量に科学的な根拠があるわけではない。なお点滴開始30分後に副作用(ショック、風邪のような症状など)が出やすいので最初の速度は抑え目が望ましい。また遅発性の副作用として無菌性髄膜炎が1割(経度)、顆粒球減少(一過性)などがある。
□ モーニング・サージ ・・ 夜間→覚醒にかけて交感神経が活性化し、血圧が早朝に上昇してくること。この時間帯は脳卒中の発症が多い。このためいかに早朝の血圧を下げるかが大事だとMRは強調する。
□ モダシン ・・ 抗生剤で、セフェム3世代。緑膿菌用でよく使われていたが、最近は耐性菌も増えている。
□ モニター ・・ 詰所に置いてある、ピコピコ鳴ってる心電図。重症患者か不整脈患者についている。ときに警報音が鳴ったりして職員を驚かせる。
□ モニタリング ・・ ある指標を追いかけること。例えば白血球が今日は増えて、明日は減って・・とかの追跡。
□ 問診表 ・・ 外来受診の前に初診患者の書くもの。既往歴、現在の症状、アレルギー・妊娠の有無など。
□ 薬剤性肺障害 ・・ 薬物有害反応(ADR=adverse drug reaction)のうち呼吸器系のもので、ADRのうちの6-7%を占める。様々な病態を呈するが、最も多いのは薬剤性肺炎で、2000年以降急増している。特に有名なのが間質性肺炎で問題になった金製剤のシオゾール、小柴胡湯、イレッサ。薬剤性肺障害の発生機序はほとんど不明で、病理組織像も多彩。実際の臨床では病理像が得られることは少なく、せいぜいBAL(気管支肺胞洗浄)止まりのことが多い。病態的には肺胞病変、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球性肺疾患などが主体。なお薬剤性肺障害と鑑別すべき病態として、?マイコプラズマ肺炎・細気管支炎、?Pneumocystis jiroveci肺炎、?ウイルス性肺炎、?Coccidioides症(4類の輸入感染症で、Cccidioides immitisによる)、?寄生虫感染症、がある。治療は薬剤の中止のほか、低酸素の状況に応じての酸素投与、ステロイド投与(重症ではパルス)となる。薬剤性肺障害のBAL所見では、総細胞数の増加、細胞分画では好酸球・リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の低下が多い。
サーガマニュアル2007秋 や ゆ よ ら り る
2007年9月17日□ 夜診(やしん) ・・ 夜の外来診察。16-19時と17-20時のパターンがある。関西ではけっこうされている病院が多い。
□ 「やっぱ・・人間関係かな」 ・・ 某病院の職員へのアンケート「職場で長続きするには何が一番重要?」で、これが一番多かった。
人間関係がこじれれば、職場から離れてもストレスが続くからだ。しかしこればかりは、働いてからでないと分からない。
□ 有意差 ・・ 単なる見た目の「差」ではなく、統計学上の「差」。この差が証明されると、論文上のデータとして有効、と認められる。
□ 「有意とまではいきませんが(苦笑)、若干、差がみられる傾向にある・・」 ・・ MR主催の臨床試験の結果発表で、有意差が出なくてもなんとか有効な証拠を上げようと努力するとき、こういう表現がなされる。見苦しい。
□ 優位半球 ・・ 利き手と反対側の脳。したがってたいていは左の脳をさす。脳卒中が優位半球側で起った場合、特に側頭葉で起った場合は言語障害の出現がみられる。
脳が左右対称な臓器だとしても、卒中の症状は場合によって左右で大きく異なるわけだ。右利きの人は、左の頭を大事にしよう。
□ 有機リン中毒
・ 農薬・家庭用殺虫剤に含まれる。事故・自殺での急性中毒が多い。服薬事実の確認、白濁吐物、有機溶剤臭を手がかりに。血中PchE活性(重症度と相関)を確認。50%以上の低下は本症を強く示唆する。
・ AchE阻害作用による症状を呈する。有機リンにはそれ自体AchE阻害作用をもつものと、肝臓で代謝されてAchE阻害作用をもつものがある。
・ 体内のAchを分解するのがAchEの役目だが、これが阻害されるのでAchが蓄積しそれによる症状が起こる。
・ 具体的には以下の神経を麻痺させる → 中枢神経(興奮、昏睡、痙攣)、体神経(筋攣縮、筋力低下)、交感神経(散瞳、頻脈、高血圧)、副交感神経=ムスカリン様作用(徐脈・縮瞳・気管支狭窄)。
※ 縮瞳は重症例にみられることが多いが初期は散瞳していることも多い。
・ AchEに結合した有機リンは24-48時間後には強固となりAchEの再活性化は不可能となる(aging)。治療が遅れると脂肪への取り込みが多くなり長期化を招く。また症状がぶりかえすこともある。
・ 拮抗薬のPAMを投与し、症状(徐脈・縮瞳・分泌亢進)によりアトロピン(ムスカリン作用にのみ拮抗)を投与する。ただしagingの時期になってからではPAMの効果はない。なので早期(24-36時間以内)に投与する必要がある。
・ 早期に治療が開始され低酸素がない場合は回復に10日ほどかかる。
□ 「指先に集中しなさい」 ・・ 西日本のカテの権威の言葉。感情的にならず、あくまでも冷静にせよという意味が込められている。
□ ユリノーム ・・ 尿酸を下げる薬。腎臓排泄型。劇症肝炎のニュースでときに賑わうが尿酸の薬自体にネタが少ないため、相変わらず使用を続けているのが現状。
□ 陽イオン交換樹脂 ・・ 高カリウム血症の治療の1つ。速効性には欠ける。内服と注腸(肛門経由)がある。ケイキサレート、カリメートなど。
□ 溶血 ・・ 血液のうちの赤血球が壊れること。2通りの意味があり、
・異常な抗体などで血球が破壊される病気、例えば溶血性貧血
・採血するときに吸引する圧がかかりすぎて血液が注射針内で壊されてしまう状態
をさす。実際の臨床では後者に出くわすことが多い。なお溶血してしまった検体で血液検査に回してしまうと、GOT(AST)/LDH/CPK/Kの値が異常にに上昇、ヘモグロビン(Hb)、血小板
が異常に減少してしまう。
□ 腰部脊柱管狭窄症
その中を脊髄が縦に走る、脊柱管http://www.tahara-seikei.com/764b.jpg内に変形が生じて周囲の神経障害をきたす。
きっかけは椎間板への負荷、あるいは年齢による椎間板そのものの変性で、周囲に変性が波及していく。神経障害により足のしびれや痛みを呈する。間欠性跛行もありASOと症状が似るが、下肢の動脈触知によって鑑別する。
3-4割は保存療法で改善するものの、10-15%が3-4年で悪化してしまう。治療の主体は薬物療法で、痛みにはNSAIDと中枢性筋弛緩剤、しびれにはPGE1製剤(物質名リマプロスト、商品名プロレナールは保険適応)を。必要によりブロックも追加する。保存療法を4-6週続けても症状が軽快しないとき、あるいは高度・進行性の麻痺、膀胱直腸障害(失禁や頻尿)は手術の適応となる。
※ 変性=機能しなくなる、というニュアンス。
□ 予後 ・・ その後の寿命。薬剤の比較試験などの統計でよく使用される用語。あくまでも病状に関するもので、経済的背景・患者の満足度などは考慮されていない。
□ 翼状針 ・・ 操作が手軽で短い針。短時間の点滴に最適で固定しやすく患者も楽。しかし高価なため、経営者によっては病院に置かないところもある。
□ 抑制 ・・ (不穏などで)暴れた患者を、抑制帯というベルトを使ってベッドにくくりつけること。といえば非情な言い方だが、治療の妨げにならぬよう仕方なく行う行為だ。特に夜間はスタッフが少なく家族もなしではやむを得ない。抑制帯で縛るのにはかなりのパワーが必要だ。『エイリアン』中盤の食事のシーンくらい力が要る。
□ 夜はまだこれから ・・ 居残りせざるを得なくなったレジデントが、ナース達より掛けられる言葉。準夜のナースが深夜への申し送りまでなんとかレジデントを引っ張ろうとする意図。
□ ?型コラーゲン ・・ 「ヒアルロン酸」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。慢性肝炎→肝硬変への推移を反映する。ただし肺線維症でも上昇する。
□ 楽勝 ・・ 医療の現場でもついつい使われる表現。いつもより手技がスムーズに進んだりした場合などに。
□ ラクナ梗塞 ・・ 『ラクナ』はラテン語で<小さい空洞>。脳梗塞の1/3を占める。通常、大脳の深層である大脳基底核・脳幹に数ミリ(定義では径15mm以下)の大きさで見つかる小さな脳梗塞。1/3は被殻にできる。深層なので血管(穿通枝動脈という)も細く、梗塞も小さい。高血圧・加齢のほかメタボリックシンドロームなどが背景にあることが多く、無症状が多い。
□ ラミブジン ・・ 2000年に承認された、抗ウイルス化学療法薬。B型肝炎ウイルスの増殖を抑制(長期投与ほどe抗原を陰性化)する。長期投与による変異ウイルスの出現(YMDD変異株)が問題となり臨床家を消極的にさせていたが(5年で6割が耐性化)、2004年12月発売のアデフォビル(商品名はヘプセラ錠)・・変異株に有効・・の登場によりその問題は解決の方向に向かっている(2005年10月の時点でも良好)。腎障害に注意。なおラミブジンはどれくらいの期間投与を続けるかが議論されている。理想的には短期間でHBe抗原を陰性化させて、HBV-DNAを2.6log copies/ml以下にすることだが、実際は長期投与にならざるをえないようだ。
□ ランセット ・・ 循環・呼吸器関係の海外雑誌。レベルとしては分かりやすいスタンダード版、といったところ。
□ リース ・・ 借り物。たとえばある業者から1台呼吸器を買って、ついでに1台レンタルさせてもらう。取引先であることをいいことに、購入はしないがレンタルして実質的に病院のものになる物品。どこの病院でもやってる。
□ リエゾン診療 ・・ 複数の科の医師たちが集まって1人の患者について定期的に話し合うこと。リエゾン(フランス語)=連携。
□ リカレンス(reccurence)=再発
□ リザーバーマスク=リザーバマスク=高濃度酸素マスク ・・ 鼻・口にまたがってつける普通のマスクのほかに、空気をためる袋がひっついた大きなマスク。より濃縮された酸素を送ることができる。これでも間に合わなければ人工呼吸器の準備となる。
□ リスモダン ・・ 抗不整脈薬で内服と注射あり。Ia独特の副作用の、口渇はよくみかける。
□ 利尿剤 ・・ おしっこを増やす薬。目的は高血圧の治療、心不全の治療が中心。内服はふつう日中に飲む。減量目的で使用する人も。
□ リバウンド ・・ 薬剤をいきなり中止したことで起きる、思わぬ副作用。避けるためには少しずつ減らす。特にステロイド、βブロッカーにはそれが重要。
□ リバビリン=Rib ・・ C型慢性肝炎治療薬の1つ。インターフェロンとの併用でウイルス陰性化率を向上させる。日本の難治例の報告では48週の併用でウイルス排除率は50%弱と、優秀な成績。最近では遺伝子組み換え型インターフェロン=cIFNとの併用でのよりよい効果が報告されている。副作用では?催奇形性、?溶血性貧血があり、?による治療中断が高齢者に目立つ。
□ リピーター医師 ・・ 医療ミスを繰り返す医師。手技・診断能力が未熟だとしても<それに気づいてない>パターンが陥りやすい。また技術があれこれできていても、困難に陥ったときのフォローができてない、また患者とのインフォームドコンセントが日頃から成り立っていない、また自信過剰な医者に多い傾向がある。
□ 流動食 ・・ 液体の食事。カロリーはたいてい1ccにつき1-2kcal。おおよそ900〜1200ccを朝・昼・晩に分けてチューブを通して胃に入れる。鼻からチューブを通す「経鼻栄養」と、みぞおちの穴(手術して造る)を通す「胃ろう」の方法がある。つまり既に消化した栄養分を流すわけ。通常は白湯(さゆ)で薄めるが、濃い状態だと下痢を引き起こす。
□ 療養型病棟=療養型病床群=介護型病棟 ・・ 急性期的な治療を要しない、しかし何らかの後遺症でリハビリ・管理が必要な、リハビリ主目的の病棟。
□ 履歴書 ・・ 医療従事者の場合、左半分の記入で可。右半分の余計な書き込みは、不要な情報を与えるだけ。もちろん取得資格は書くべき。
□ 臨機応変 ・・ 医局内の仕事などで、どう考えても片付かない内容に関して上層部が使う言葉。
□ 臨床 ・・ 病棟患者を見るふつうの医者の仕事。それに対して実験・論文の仕事を「基礎」と呼ぶ。
□ リンデロン ・・ 強力なステロイド剤で、塗り薬と注射がある。塗る範囲が広汎だと副作用の配慮も必要。
□ 緑膿菌=Pseudomonas aeruginosa=(あるいは単に)シュードモナス=シュード
好気性ブトウ糖非発酵グラム陰性桿菌。浸潤した場所に発生しやすく健康人には無害だが抵抗力落ちた人には宿敵となる。しかも多剤耐性緑膿菌という、抗生剤の効きにくいタイプまで現れた。
菌の表面の線毛により気道の上皮細胞に付着し菌が増殖、集落=コロニーを形成する。これにフィブリン・血清成分などが蓄積してシールド様の構造となって、マクロファージ・好中球、抗生剤からの攻撃から身を守る。これを「バイオフィルムの形成」という。
この「バイオフィルム」が出来ると気道の線毛の運動が邪魔されて痰が出にくくなる。また驚くべきことに菌どうしに情報伝達のしくみ(菌の密度を感知して、それが高くなるとホモセリンラクトンという物質により遺伝子情報を発現→毒素放出)があり、これを「クラオムセンシング機構」という。
□ ルールアウト=除外。『r/o』と略されることも。
□ 「やっぱ・・人間関係かな」 ・・ 某病院の職員へのアンケート「職場で長続きするには何が一番重要?」で、これが一番多かった。
人間関係がこじれれば、職場から離れてもストレスが続くからだ。しかしこればかりは、働いてからでないと分からない。
□ 有意差 ・・ 単なる見た目の「差」ではなく、統計学上の「差」。この差が証明されると、論文上のデータとして有効、と認められる。
□ 「有意とまではいきませんが(苦笑)、若干、差がみられる傾向にある・・」 ・・ MR主催の臨床試験の結果発表で、有意差が出なくてもなんとか有効な証拠を上げようと努力するとき、こういう表現がなされる。見苦しい。
□ 優位半球 ・・ 利き手と反対側の脳。したがってたいていは左の脳をさす。脳卒中が優位半球側で起った場合、特に側頭葉で起った場合は言語障害の出現がみられる。
脳が左右対称な臓器だとしても、卒中の症状は場合によって左右で大きく異なるわけだ。右利きの人は、左の頭を大事にしよう。
□ 有機リン中毒
・ 農薬・家庭用殺虫剤に含まれる。事故・自殺での急性中毒が多い。服薬事実の確認、白濁吐物、有機溶剤臭を手がかりに。血中PchE活性(重症度と相関)を確認。50%以上の低下は本症を強く示唆する。
・ AchE阻害作用による症状を呈する。有機リンにはそれ自体AchE阻害作用をもつものと、肝臓で代謝されてAchE阻害作用をもつものがある。
・ 体内のAchを分解するのがAchEの役目だが、これが阻害されるのでAchが蓄積しそれによる症状が起こる。
・ 具体的には以下の神経を麻痺させる → 中枢神経(興奮、昏睡、痙攣)、体神経(筋攣縮、筋力低下)、交感神経(散瞳、頻脈、高血圧)、副交感神経=ムスカリン様作用(徐脈・縮瞳・気管支狭窄)。
※ 縮瞳は重症例にみられることが多いが初期は散瞳していることも多い。
・ AchEに結合した有機リンは24-48時間後には強固となりAchEの再活性化は不可能となる(aging)。治療が遅れると脂肪への取り込みが多くなり長期化を招く。また症状がぶりかえすこともある。
・ 拮抗薬のPAMを投与し、症状(徐脈・縮瞳・分泌亢進)によりアトロピン(ムスカリン作用にのみ拮抗)を投与する。ただしagingの時期になってからではPAMの効果はない。なので早期(24-36時間以内)に投与する必要がある。
・ 早期に治療が開始され低酸素がない場合は回復に10日ほどかかる。
□ 「指先に集中しなさい」 ・・ 西日本のカテの権威の言葉。感情的にならず、あくまでも冷静にせよという意味が込められている。
□ ユリノーム ・・ 尿酸を下げる薬。腎臓排泄型。劇症肝炎のニュースでときに賑わうが尿酸の薬自体にネタが少ないため、相変わらず使用を続けているのが現状。
□ 陽イオン交換樹脂 ・・ 高カリウム血症の治療の1つ。速効性には欠ける。内服と注腸(肛門経由)がある。ケイキサレート、カリメートなど。
□ 溶血 ・・ 血液のうちの赤血球が壊れること。2通りの意味があり、
・異常な抗体などで血球が破壊される病気、例えば溶血性貧血
・採血するときに吸引する圧がかかりすぎて血液が注射針内で壊されてしまう状態
をさす。実際の臨床では後者に出くわすことが多い。なお溶血してしまった検体で血液検査に回してしまうと、GOT(AST)/LDH/CPK/Kの値が異常にに上昇、ヘモグロビン(Hb)、血小板
が異常に減少してしまう。
□ 腰部脊柱管狭窄症
その中を脊髄が縦に走る、脊柱管http://www.tahara-seikei.com/764b.jpg内に変形が生じて周囲の神経障害をきたす。
きっかけは椎間板への負荷、あるいは年齢による椎間板そのものの変性で、周囲に変性が波及していく。神経障害により足のしびれや痛みを呈する。間欠性跛行もありASOと症状が似るが、下肢の動脈触知によって鑑別する。
3-4割は保存療法で改善するものの、10-15%が3-4年で悪化してしまう。治療の主体は薬物療法で、痛みにはNSAIDと中枢性筋弛緩剤、しびれにはPGE1製剤(物質名リマプロスト、商品名プロレナールは保険適応)を。必要によりブロックも追加する。保存療法を4-6週続けても症状が軽快しないとき、あるいは高度・進行性の麻痺、膀胱直腸障害(失禁や頻尿)は手術の適応となる。
※ 変性=機能しなくなる、というニュアンス。
□ 予後 ・・ その後の寿命。薬剤の比較試験などの統計でよく使用される用語。あくまでも病状に関するもので、経済的背景・患者の満足度などは考慮されていない。
□ 翼状針 ・・ 操作が手軽で短い針。短時間の点滴に最適で固定しやすく患者も楽。しかし高価なため、経営者によっては病院に置かないところもある。
□ 抑制 ・・ (不穏などで)暴れた患者を、抑制帯というベルトを使ってベッドにくくりつけること。といえば非情な言い方だが、治療の妨げにならぬよう仕方なく行う行為だ。特に夜間はスタッフが少なく家族もなしではやむを得ない。抑制帯で縛るのにはかなりのパワーが必要だ。『エイリアン』中盤の食事のシーンくらい力が要る。
□ 夜はまだこれから ・・ 居残りせざるを得なくなったレジデントが、ナース達より掛けられる言葉。準夜のナースが深夜への申し送りまでなんとかレジデントを引っ張ろうとする意図。
□ ?型コラーゲン ・・ 「ヒアルロン酸」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。慢性肝炎→肝硬変への推移を反映する。ただし肺線維症でも上昇する。
□ 楽勝 ・・ 医療の現場でもついつい使われる表現。いつもより手技がスムーズに進んだりした場合などに。
□ ラクナ梗塞 ・・ 『ラクナ』はラテン語で<小さい空洞>。脳梗塞の1/3を占める。通常、大脳の深層である大脳基底核・脳幹に数ミリ(定義では径15mm以下)の大きさで見つかる小さな脳梗塞。1/3は被殻にできる。深層なので血管(穿通枝動脈という)も細く、梗塞も小さい。高血圧・加齢のほかメタボリックシンドロームなどが背景にあることが多く、無症状が多い。
□ ラミブジン ・・ 2000年に承認された、抗ウイルス化学療法薬。B型肝炎ウイルスの増殖を抑制(長期投与ほどe抗原を陰性化)する。長期投与による変異ウイルスの出現(YMDD変異株)が問題となり臨床家を消極的にさせていたが(5年で6割が耐性化)、2004年12月発売のアデフォビル(商品名はヘプセラ錠)・・変異株に有効・・の登場によりその問題は解決の方向に向かっている(2005年10月の時点でも良好)。腎障害に注意。なおラミブジンはどれくらいの期間投与を続けるかが議論されている。理想的には短期間でHBe抗原を陰性化させて、HBV-DNAを2.6log copies/ml以下にすることだが、実際は長期投与にならざるをえないようだ。
□ ランセット ・・ 循環・呼吸器関係の海外雑誌。レベルとしては分かりやすいスタンダード版、といったところ。
□ リース ・・ 借り物。たとえばある業者から1台呼吸器を買って、ついでに1台レンタルさせてもらう。取引先であることをいいことに、購入はしないがレンタルして実質的に病院のものになる物品。どこの病院でもやってる。
□ リエゾン診療 ・・ 複数の科の医師たちが集まって1人の患者について定期的に話し合うこと。リエゾン(フランス語)=連携。
□ リカレンス(reccurence)=再発
□ リザーバーマスク=リザーバマスク=高濃度酸素マスク ・・ 鼻・口にまたがってつける普通のマスクのほかに、空気をためる袋がひっついた大きなマスク。より濃縮された酸素を送ることができる。これでも間に合わなければ人工呼吸器の準備となる。
□ リスモダン ・・ 抗不整脈薬で内服と注射あり。Ia独特の副作用の、口渇はよくみかける。
□ 利尿剤 ・・ おしっこを増やす薬。目的は高血圧の治療、心不全の治療が中心。内服はふつう日中に飲む。減量目的で使用する人も。
□ リバウンド ・・ 薬剤をいきなり中止したことで起きる、思わぬ副作用。避けるためには少しずつ減らす。特にステロイド、βブロッカーにはそれが重要。
□ リバビリン=Rib ・・ C型慢性肝炎治療薬の1つ。インターフェロンとの併用でウイルス陰性化率を向上させる。日本の難治例の報告では48週の併用でウイルス排除率は50%弱と、優秀な成績。最近では遺伝子組み換え型インターフェロン=cIFNとの併用でのよりよい効果が報告されている。副作用では?催奇形性、?溶血性貧血があり、?による治療中断が高齢者に目立つ。
□ リピーター医師 ・・ 医療ミスを繰り返す医師。手技・診断能力が未熟だとしても<それに気づいてない>パターンが陥りやすい。また技術があれこれできていても、困難に陥ったときのフォローができてない、また患者とのインフォームドコンセントが日頃から成り立っていない、また自信過剰な医者に多い傾向がある。
□ 流動食 ・・ 液体の食事。カロリーはたいてい1ccにつき1-2kcal。おおよそ900〜1200ccを朝・昼・晩に分けてチューブを通して胃に入れる。鼻からチューブを通す「経鼻栄養」と、みぞおちの穴(手術して造る)を通す「胃ろう」の方法がある。つまり既に消化した栄養分を流すわけ。通常は白湯(さゆ)で薄めるが、濃い状態だと下痢を引き起こす。
□ 療養型病棟=療養型病床群=介護型病棟 ・・ 急性期的な治療を要しない、しかし何らかの後遺症でリハビリ・管理が必要な、リハビリ主目的の病棟。
□ 履歴書 ・・ 医療従事者の場合、左半分の記入で可。右半分の余計な書き込みは、不要な情報を与えるだけ。もちろん取得資格は書くべき。
□ 臨機応変 ・・ 医局内の仕事などで、どう考えても片付かない内容に関して上層部が使う言葉。
□ 臨床 ・・ 病棟患者を見るふつうの医者の仕事。それに対して実験・論文の仕事を「基礎」と呼ぶ。
□ リンデロン ・・ 強力なステロイド剤で、塗り薬と注射がある。塗る範囲が広汎だと副作用の配慮も必要。
□ 緑膿菌=Pseudomonas aeruginosa=(あるいは単に)シュードモナス=シュード
好気性ブトウ糖非発酵グラム陰性桿菌。浸潤した場所に発生しやすく健康人には無害だが抵抗力落ちた人には宿敵となる。しかも多剤耐性緑膿菌という、抗生剤の効きにくいタイプまで現れた。
菌の表面の線毛により気道の上皮細胞に付着し菌が増殖、集落=コロニーを形成する。これにフィブリン・血清成分などが蓄積してシールド様の構造となって、マクロファージ・好中球、抗生剤からの攻撃から身を守る。これを「バイオフィルムの形成」という。
この「バイオフィルム」が出来ると気道の線毛の運動が邪魔されて痰が出にくくなる。また驚くべきことに菌どうしに情報伝達のしくみ(菌の密度を感知して、それが高くなるとホモセリンラクトンという物質により遺伝子情報を発現→毒素放出)があり、これを「クラオムセンシング機構」という。
□ ルールアウト=除外。『r/o』と略されることも。
サーガマニュアル2007秋 れ ろ わ
2007年9月17日□ レジオネラ肺炎
Legionella pneumophilaという好気性グラム陰性桿菌によって肺炎(レジオネラ肺炎)を起こす。
温泉旅行歴が重要。老人ホームでの風呂の水まわりの不備が原因で大量発生することもある。しかしヒトからヒトへの感染はないとされている。院内肺炎として起こるならそれはオペ後の患者に多いらしい。
潜伏期2-10日間(温泉旅行から帰ったあとでも起こしうるってこと)。症状はインフルエンザ様症状(筋肉痛・高熱)、呼吸器症状のほか消化器症状(下痢・腹痛)、意識障害もありうる。本菌は食細胞に取り込まれたとしても殺菌はされない(ここが他の菌と性格が異なるところ!)。こうして細胞内移行で増殖(よって食細胞内増殖菌とも呼ばれる)するので細胞内移行が低いβラクタム系・アミノグリコシド系が全く効かない。
なので初期治療を誤ると手遅れになる可能性あり(適切な治療がないと7日以内に死亡)。
治療薬はリファンピシン、ニューキノロン、マクロライド、ケトライド系といろいろあるが覚えておいて損はない。
喀痰検査や採血では検出を期待できず、尿中抗原が保険適応未ではあるが有用だ。EIA法だと3時間、免疫クロマト法ではなんと15分で結果が出る。ただ尿中抗原は陽性が長いこと続くので、果たして今回の感染なのかどうか悩むこともある。しかも数多いレジオネラのうちL.pneumophilaSG1というタイプ以外は陽性率が低い。SG1は残念ながら欧米で頻度が高いものだ。そこでPCR法による検出が研究されている。
□ レスピ=レスピレーター=人工呼吸器
□ レスピラトリーキノロン ・・ ニューキノロン抗生剤のうち、肺炎球菌(肺炎の原因菌で最多)に有効で組織移行(内臓によく浸透)の良好なもの。4種類あって、?TFLX、?GFLX(低血糖注意)、?SPFX(光線過敏症に注意)、?LVFX。抗菌力は?>?>?>?。
※ 例 ・・ ?オゼックス、?ガチフロ、?スパラ、?クラビット
なおレスピラトリーキノロンは肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌、非定型菌のマイコプラズマ、肺炎クラミジアにも有効。しかも最近話題の耐性菌であるPRSP、BLNARにも有効とされている。これだけ優秀な薬がガイドラインの第一選択にされていない理由は、抗生剤頻用による耐性菌の増加を危惧してのことである。
□ レスポンス ・・ 反応。薬の効き具合、あるいは医者のムンテラに対する家族の反応など、意味はいろいろ。
■ レセプト=レセ ・・ 月1回の、その月の各患者の病名・処置、投薬内容一覧。それぞれに点数が掛け算され、合計点数をはじきだし診療報酬として請求することになる。高額の医療費を要した患者にはドクター直々の長文を添える(事務員は月に1週間ほど泊まり込み覚悟で頑張る)。国の機関がこれをチェック(チェックするのは高齢医師のことが多く、人によって癖あり)、不正がないか、保険適応でないか確認される。レセプト処理にあたって病院の事務員が使い物にならない場合などは、業者(ニチイ学館など)に依頼することもある。なお2011年度からはレセプト請求はオンラインが義務付けられた。古い開業医では手書きのとこも多いため、そういうところは今後レセプト専用のコンピューター(レセコン)を新規導入するか、廃業するかの選択を迫られている。実際これが理由で廃院準備を進めている老舗は多い。国の策略とも取れる(開業医いじめ)。
□ レミケード(2003年7月発売) ・・ リウマトレックスに引き続き登場した、リウマチ治療薬の画期的な新薬。物質名<インフリキシマブ>。内容は抗TNF-α抗体。つまりサイトカインそのものを抑制しようという大胆な薬剤で、その機序から生物学的製剤と呼ばれる。MTXとの併用が必須デ、RA患者の骨関節破壊の進行を抑制、ひいては骨破壊の修復さえみられる。安全性が確かめられ、2005年秋から高用量投与の臨床試験が始まる。さて実際は早期投与としてでなく、DMARD無効例の症例に使用されることが多いという。専門家は発症3年以内の早期投与を提唱している。副作用は結核が重要で、欧米の調査では投与3回、治療12週の時期が一番多かった。本薬剤の詳細はここ。http://www.h7.dion.ne.jp/~hirata/kawara_06.html
□ ロイコトリエン(LT)受容体拮抗薬 ・・ 気管支喘息に中心に使用される、抗アレルギー薬。単独でも効果があるとメーカーは言う。実際は吸入ステロイド剤のコントロールがイマイチなときの付属的意味が強い。最近の話題としてはプランルカスト(商品名オノン)において、成人喘息患者のかぜ(ウイルス感染としての)に対する予防効果がある(2005年10月)、といったもの。つまりかぜで悪化しやすい喘息発作を予防するというものだ。ウイルス感染により気道にロイコトリエンが産生される、という機序を受けてのものだ。
□ ロセフィン ・・ 抗生剤の点滴は通常1日2回のことが多いが、このセフェム系は1日1回が可能。なので外来で好んで使用される。
□ 肋間(ろっかん) ・・ 肋骨と肋骨の間の空間。
□ 肋間神経痛 ・・ 表面の痛みだが、診断する前に胸部CTなどで内臓疾患を否定しておく必要がある。NSAIDが効きにくければペインクリニックでブロックしてもらう手も。
□ ロタウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは2-3月)に流行。おもに生後6ヶ月〜2歳。経口・接触感染で潜伏期1-3日。発熱・嘔気・嘔吐(2日以内に軽快)→下痢(白色便を認めるのは半数)。肝障害みられることあり。軽快まで3-7日要する。迅速診断キットがあるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。
□ ロータブレーター ・・ PCI(冠動脈インターベンション)におけるニューデバイスのうち、粥腫(じゅくしゅ)切除術のうちの1つ。紡錘型金属チップを高速回転させて、バルーンで拡張不能な硬い石灰化病変を削る。
□ ローテ=ローテーション ・・ 院内で別々の科を順繰りに研修したりすること。
□ ワイヤー ・・ 針金。といっても柔軟性あり。これをまず血管内に通すことでカテーテルの通り道を確保する。血管だけでなく、イレウスチューブ使用のときも活躍する。
□ 若い子 ・・ 年輩のナースが新人ナース(通常は未婚の1-2年目)を指して呼ぶ言葉。
□ ワゴトニー=(ドイツ語 Vagotonie ファゴトニー) = (英語 vagotonia ワゴトニア) = 迷走神経緊張症=副交感神経緊張症。つまり副交感神経系が機能亢進の状態にある。心拍数は減少し、心臓から拍出される血液が減少、頭や全身に届く血液が減少、失神を来たしうる。これで低血圧となった状態を「ワゴトニー性低血圧」という。採血や点滴などで針を刺す際など、極度の恐怖心が原因であることが多い。硫酸アトロピン(脈↑)、エホチール(心拍出量・末梢血管抵抗↑)の注射などで対処する。
余談だが、<ワゴトニー>という呼び方自体、英語とドイツ語の呼び名が混じった曖昧なものと思われる。
□ ワソラン ・・ カルシウム拮抗薬の1つ。頻脈性の不整脈を止める目的で使用。心機能低下の副作用あり。
□ ワルファリン=ワーファリン ・・ 心疾患などの慢性期の抗凝固療法で使用。急性期でヘパリン点滴使用、その後のつなぎとして開始されていく。投与法はdaily dose法がよく選ばれる。具体的には5-7mg/dayで開始して、3日目に採血(PT-INR)で評価、その後1-2日間隔で測定し維持量を決めていく。安定した抗凝固作用が得られるまでには5日間以上は要する。なのでヘパリンとつなぎの場合は重複期間が必要。
INRの目標としては
?高リスク患者(心房細動+僧房弁狭窄、すでに塞栓既往あり心房細動) ・・ 3.0-4.5
?低リスク患者(心房細動+他の心疾患、急性前壁梗塞、拡張型心筋症) ・・ 2.0-3.0
?NVAFの高齢者 ・・ 1.5-2.1あるいは1.6-2.6
※ 最近のガイドライン(日本循環器学会)では、抜歯や体表面小手術の際でもワーファリン内服を中止しないことが提唱されている。以前は歯科処置といえば中止としていたが、休薬中の血栓塞栓症の発症が問題となったからだ。意外と知らない医者が多い。
□ ワンショット ・・ 一気に注射を打ち込むこと。通常は静脈経由。
Legionella pneumophilaという好気性グラム陰性桿菌によって肺炎(レジオネラ肺炎)を起こす。
温泉旅行歴が重要。老人ホームでの風呂の水まわりの不備が原因で大量発生することもある。しかしヒトからヒトへの感染はないとされている。院内肺炎として起こるならそれはオペ後の患者に多いらしい。
潜伏期2-10日間(温泉旅行から帰ったあとでも起こしうるってこと)。症状はインフルエンザ様症状(筋肉痛・高熱)、呼吸器症状のほか消化器症状(下痢・腹痛)、意識障害もありうる。本菌は食細胞に取り込まれたとしても殺菌はされない(ここが他の菌と性格が異なるところ!)。こうして細胞内移行で増殖(よって食細胞内増殖菌とも呼ばれる)するので細胞内移行が低いβラクタム系・アミノグリコシド系が全く効かない。
なので初期治療を誤ると手遅れになる可能性あり(適切な治療がないと7日以内に死亡)。
治療薬はリファンピシン、ニューキノロン、マクロライド、ケトライド系といろいろあるが覚えておいて損はない。
喀痰検査や採血では検出を期待できず、尿中抗原が保険適応未ではあるが有用だ。EIA法だと3時間、免疫クロマト法ではなんと15分で結果が出る。ただ尿中抗原は陽性が長いこと続くので、果たして今回の感染なのかどうか悩むこともある。しかも数多いレジオネラのうちL.pneumophilaSG1というタイプ以外は陽性率が低い。SG1は残念ながら欧米で頻度が高いものだ。そこでPCR法による検出が研究されている。
□ レスピ=レスピレーター=人工呼吸器
□ レスピラトリーキノロン ・・ ニューキノロン抗生剤のうち、肺炎球菌(肺炎の原因菌で最多)に有効で組織移行(内臓によく浸透)の良好なもの。4種類あって、?TFLX、?GFLX(低血糖注意)、?SPFX(光線過敏症に注意)、?LVFX。抗菌力は?>?>?>?。
※ 例 ・・ ?オゼックス、?ガチフロ、?スパラ、?クラビット
なおレスピラトリーキノロンは肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌、非定型菌のマイコプラズマ、肺炎クラミジアにも有効。しかも最近話題の耐性菌であるPRSP、BLNARにも有効とされている。これだけ優秀な薬がガイドラインの第一選択にされていない理由は、抗生剤頻用による耐性菌の増加を危惧してのことである。
□ レスポンス ・・ 反応。薬の効き具合、あるいは医者のムンテラに対する家族の反応など、意味はいろいろ。
■ レセプト=レセ ・・ 月1回の、その月の各患者の病名・処置、投薬内容一覧。それぞれに点数が掛け算され、合計点数をはじきだし診療報酬として請求することになる。高額の医療費を要した患者にはドクター直々の長文を添える(事務員は月に1週間ほど泊まり込み覚悟で頑張る)。国の機関がこれをチェック(チェックするのは高齢医師のことが多く、人によって癖あり)、不正がないか、保険適応でないか確認される。レセプト処理にあたって病院の事務員が使い物にならない場合などは、業者(ニチイ学館など)に依頼することもある。なお2011年度からはレセプト請求はオンラインが義務付けられた。古い開業医では手書きのとこも多いため、そういうところは今後レセプト専用のコンピューター(レセコン)を新規導入するか、廃業するかの選択を迫られている。実際これが理由で廃院準備を進めている老舗は多い。国の策略とも取れる(開業医いじめ)。
□ レミケード(2003年7月発売) ・・ リウマトレックスに引き続き登場した、リウマチ治療薬の画期的な新薬。物質名<インフリキシマブ>。内容は抗TNF-α抗体。つまりサイトカインそのものを抑制しようという大胆な薬剤で、その機序から生物学的製剤と呼ばれる。MTXとの併用が必須デ、RA患者の骨関節破壊の進行を抑制、ひいては骨破壊の修復さえみられる。安全性が確かめられ、2005年秋から高用量投与の臨床試験が始まる。さて実際は早期投与としてでなく、DMARD無効例の症例に使用されることが多いという。専門家は発症3年以内の早期投与を提唱している。副作用は結核が重要で、欧米の調査では投与3回、治療12週の時期が一番多かった。本薬剤の詳細はここ。http://www.h7.dion.ne.jp/~hirata/kawara_06.html
□ ロイコトリエン(LT)受容体拮抗薬 ・・ 気管支喘息に中心に使用される、抗アレルギー薬。単独でも効果があるとメーカーは言う。実際は吸入ステロイド剤のコントロールがイマイチなときの付属的意味が強い。最近の話題としてはプランルカスト(商品名オノン)において、成人喘息患者のかぜ(ウイルス感染としての)に対する予防効果がある(2005年10月)、といったもの。つまりかぜで悪化しやすい喘息発作を予防するというものだ。ウイルス感染により気道にロイコトリエンが産生される、という機序を受けてのものだ。
□ ロセフィン ・・ 抗生剤の点滴は通常1日2回のことが多いが、このセフェム系は1日1回が可能。なので外来で好んで使用される。
□ 肋間(ろっかん) ・・ 肋骨と肋骨の間の空間。
□ 肋間神経痛 ・・ 表面の痛みだが、診断する前に胸部CTなどで内臓疾患を否定しておく必要がある。NSAIDが効きにくければペインクリニックでブロックしてもらう手も。
□ ロタウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは2-3月)に流行。おもに生後6ヶ月〜2歳。経口・接触感染で潜伏期1-3日。発熱・嘔気・嘔吐(2日以内に軽快)→下痢(白色便を認めるのは半数)。肝障害みられることあり。軽快まで3-7日要する。迅速診断キットがあるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。
□ ロータブレーター ・・ PCI(冠動脈インターベンション)におけるニューデバイスのうち、粥腫(じゅくしゅ)切除術のうちの1つ。紡錘型金属チップを高速回転させて、バルーンで拡張不能な硬い石灰化病変を削る。
□ ローテ=ローテーション ・・ 院内で別々の科を順繰りに研修したりすること。
□ ワイヤー ・・ 針金。といっても柔軟性あり。これをまず血管内に通すことでカテーテルの通り道を確保する。血管だけでなく、イレウスチューブ使用のときも活躍する。
□ 若い子 ・・ 年輩のナースが新人ナース(通常は未婚の1-2年目)を指して呼ぶ言葉。
□ ワゴトニー=(ドイツ語 Vagotonie ファゴトニー) = (英語 vagotonia ワゴトニア) = 迷走神経緊張症=副交感神経緊張症。つまり副交感神経系が機能亢進の状態にある。心拍数は減少し、心臓から拍出される血液が減少、頭や全身に届く血液が減少、失神を来たしうる。これで低血圧となった状態を「ワゴトニー性低血圧」という。採血や点滴などで針を刺す際など、極度の恐怖心が原因であることが多い。硫酸アトロピン(脈↑)、エホチール(心拍出量・末梢血管抵抗↑)の注射などで対処する。
余談だが、<ワゴトニー>という呼び方自体、英語とドイツ語の呼び名が混じった曖昧なものと思われる。
□ ワソラン ・・ カルシウム拮抗薬の1つ。頻脈性の不整脈を止める目的で使用。心機能低下の副作用あり。
□ ワルファリン=ワーファリン ・・ 心疾患などの慢性期の抗凝固療法で使用。急性期でヘパリン点滴使用、その後のつなぎとして開始されていく。投与法はdaily dose法がよく選ばれる。具体的には5-7mg/dayで開始して、3日目に採血(PT-INR)で評価、その後1-2日間隔で測定し維持量を決めていく。安定した抗凝固作用が得られるまでには5日間以上は要する。なのでヘパリンとつなぎの場合は重複期間が必要。
INRの目標としては
?高リスク患者(心房細動+僧房弁狭窄、すでに塞栓既往あり心房細動) ・・ 3.0-4.5
?低リスク患者(心房細動+他の心疾患、急性前壁梗塞、拡張型心筋症) ・・ 2.0-3.0
?NVAFの高齢者 ・・ 1.5-2.1あるいは1.6-2.6
※ 最近のガイドライン(日本循環器学会)では、抜歯や体表面小手術の際でもワーファリン内服を中止しないことが提唱されている。以前は歯科処置といえば中止としていたが、休薬中の血栓塞栓症の発症が問題となったからだ。意外と知らない医者が多い。
□ ワンショット ・・ 一気に注射を打ち込むこと。通常は静脈経由。
サーガマニュアル2007秋 A
2007年9月17日□ Aライン ・・ 動脈ライン。動脈に入った(通常は手首)点滴ルート。これを通して血圧がリアルタイムで表示。動脈血を適宜ここから採取できる。
□ ABCDスコア ・・ TIA発症から7日以内に脳卒中を起こしやすいかどうか、スクリーニングして予想するための評価尺度。ランセットH17.7月号で提唱。評価項目は・・Age(年齢)、BP(血圧)、Clinical features(臨床的特徴)、Duration(発作持続時間)の4項目、計6点で評価する。6点満点だと3割が1週間以内に脳卒中を発症するという。
□ ABI ・・ 足関節/上腕血圧比。閉塞性動脈硬化症などのスクリーニングとして行われる。正常は0.91-1.30。
□ ABPM=24時間自由行動下血圧測定 ・・ 30分〜1時間間隔で腕がしめられ血圧が測定されるという、ちと無理がある機械。ホルターの血圧版。夜間の血圧が分かるところがミソ。朝方急に血圧が上がることがわかればモーニング・サージということになる、など日内変動パターンを知ることができる。特に高齢者では血圧の変動が大きく、これによる測定が欠かせないのだそうだ。なお未だに保険適応外。
□ ACEI=ACE阻害薬 ・・ 降圧剤の一種。最近はARBに押されぎみ。ACEの悩みの種であった副作用「乾性咳」がARBにはないからだ。慢性心不全の予後を改善するデータあり、心機能低下がある人はとりあえず飲んでおいたほうがいい薬剤。
■ ACF=aberrant crypt foci ・・ 肉眼的には正常な大腸粘膜だが、顕微鏡下メチレンブルー染色にて濃染する大きな腺管の集まり。腺腫・癌の前病変所見として重要。ACFを標的とした治療の臨床試験が進行中。
■ Activation syndrome=賦活症候群 ・・ 別名「stimulation syndrome=刺激症候群」。抗うつ薬投与(特にSSRI)により引き起こされる中枢刺激症状(不安・敵意・焦燥・衝動性・パニック発作・アカシジア・不眠・軽躁・易刺激性・躁状態)。よって自殺のリスクを高める可能性がある。脳内5-HT受容体刺激によるドパミン減少が関与。しかし実際は、その症状が原疾患によるものか副作用なのか鑑別が(専門家でさえ)困難なのが実情。そういう問題もあるが、投与の初期に特に注意が必要。
■ ACTS-GC=Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric Cancer。つまり胃がんへの抗癌剤TS-1による術後補助療法の試み。最近、D2郭清した胃がん患者にTS-1単独による術後化学療法を行うことで生存期間が有意に上昇することが確認された(最大の副作用は食欲不振程度)。これまで胃がんの術後化学療法の有効データがなかっただけに画期的な発表となった。ただ、本剤使用後に耐性となった場合の薬剤選択など(CPT-11の意見あり)、課題はある。
□ ADA ・・ 胸水の測定項目。結核性胸膜炎の場合高値を示す。
□ ADL=activity of daily life=日常生活動作・・ 運動の自立度。その人が周りの手助けなしで、どこまで運動できるか。
■ ADR=alternative dispute resolution ・・ 裁判外の紛争処理。一方的な医療訴訟に発展する前に、第三者を仲立ちとしたあくまでも冷静な話し合い・真相究明を目的とする。医師側と向き合わない本来の訴訟は、弁護士の私腹を肥やすだけになりかねない。最近では病院内ADRなるものも登場している。
□ af ・・ 心房細動
□ AGML=急性胃粘膜病変 ・・ 胃の中の粘膜が広範囲に剥がれて出血する病態。潰瘍ほど深くないが範囲が広いので、多量に出血する。教科書どおり「コーヒー残渣様」の吐血をみる。
□ AIC ・・ 自己免疫性胆管炎 ・・ PBCの一亜型。臨床的にはPBCと考えられるがAMAは陰性で、そのかわりANAは高力価を呈する疾患で、PBCの基準を満たすもの。治療もPBCに準ずる(UDCA)。無効ならフィブラート系。
□ AIDS指標神経疾患 ・・ HIV感染に伴う神経合併症。
? HIV脳症(最多) ・・ 症状は前頭ー皮質下障害型(認知障害が中心)を呈する。
? 進行性多巣性白質脳症=PML ・・ 本症の85%以上がHIV感染。ゆっくり進行(亜急性)の神経局所症状(無道無言に至る)とMRIのT2画像で高信号の非対称性病巣。髄液のJCV-PCRは特異度高く(92-100%)、診断を強く示唆。
? クリプトコッカス症 ・・ クリプトコッカス髄膜炎の9割近くがHIV患者。亜急性。診断は髄液中の菌体あるいはクリプトコッカス抗原証明、髄液培養で陽性所見のいずれかによる。
? トキソプラズマ脳炎 ・・ 進行性の局所神経症状、CT/MRIでの多発性、しばしば浮腫随伴の造影剤増強病変、抗トキソプラズマ治療に2週間以内に反応、の場合に感染を示唆。
? サイトメガロウイルス(CMV)脳炎 ・・ HIVにCMVウイルスの感染自体はほとんどしており、実際CD4陽性リンパ球数<50μLになると問題化。亜急性進行性の脳症で、CT/MRIでの脳室周囲造影効果により示唆。
? 脳原発悪性リンパ腫=PCNSL ・・ CD4陽性リンパ球数<200μLで発症。発生にEBウイルスがほぼ100%関与。トキソプラズマ脳炎との鑑別難。
□ Alzheimer病(アルツハイマー病)
認知機能障害(記銘・記憶、思考、判断力の低下など)を中心とする神経変性疾患。発症後は進行性で生存期間は平均7年。早くて40歳代の発症もある。
原因として最も考えられているのは、加齢・遺伝子変異により脳内に沈着するアミロイドβ蛋白質(Aβ)の蓄積が引き金となって脳内の「タウ」という蛋白を(高度にリン酸化して)機能不全とし、タウ沈着が神経細胞の変性そして神経細胞死を起こして、その結果痴呆となるという機序≪アミロイドカスケード仮説≫である。
http://homepage3.nifty.com/mickeym/simin/320arutu.htmlに診断基準。
※ このアミロイドβ蛋白質が、難病の加齢黄斑(おうはん)変性症を引き起こすことを東京医科歯科大大学院の研究チームが突き止めた。研究チームの森田育男教授は「アルツハイマー病との因果関係は不明だが、同病に使われる治療が応用できる」と話している(2005.9月ニュースより)。
※ アミロイドの蓄積を画像でどうやって描出させるかあちこちで研究されている。日本ではマウスでFSBという物質(アミロイドを染めるcongo redから由来)を静脈注射し、MRIでの描出例が報告された。
治療は依然として、塩酸ドネペジル(アリセプト)による予防しかない。効果は確実ではない。
<関連映画>・・「明日の記憶」「私の頭の中の消しゴム」
□ AMD=Age-related Macular Degeneration=加齢黄斑変性 ・・ 日本で急増中で75歳以上は高頻度。網膜の中心である黄斑に異常をきたす。タイプは2つで
?萎縮型 ・・ 黄斑が萎縮し、視力低下が緩徐に進行。
?滲出型 ・・ 脈絡膜に新生血管ができて網膜に浮腫・出血をきたす。視力低下は急激で失明例も。
初期症状は視野の中心がゆがんできて→暗い、欠けるなどの訴えへと進む。細かい碁盤の目のような図(アムスラーチャート)をみて歪みが発見されれば可能性が高く、確定診断は蛍光眼底造影などで行う。
治療では2004年5月〜光線力学的療法(PDT)が主流。新生血管に集積する色素(ベルテポルフィン)を静脈注射のうえレーザーを当てることで新生血管を閉塞。安全性高く20分ぐらいで終了。実施施設についてはhttp://www.pdti.jp/で。
□ ANCA関連血管炎に関してポイントのみ
・ ANA(抗核抗体)
膠原病で高率に陽性となるのは・・MCTD(100%)、SLE(98%)、SSc(85%)、シェーグレン(80%)。
健常人でも陽性はよく見かけるが、頻度的にはX40→25〜30%、X80→10〜15%、X160→5%以上といったところ。実際に膠原病を疑うレベルはX160の場合。
・ ANCA ・・ 好中球細胞質のアズ−ル顆粒中の抗原を認識する自己抗体。染色パターンにより以下の2つに分かれる。
○ C-ANCA ・・ 好中球細胞質(Cytoplasmic)がびまん性顆粒状に染まる ・・ 対応抗原はプロテイナーゼ3=PR3なのでC-ANCA=PR3-ANCA
○ P-ANCA ・・ 好中球の核周囲(Perinuclear)が染まる ・・ 対応抗原はミエロペルオキシダーゼ=MPOなのでP-ANCA=MPO-ANCA
・ PR3-ANCAの陽性率
?WG ・・ 80-90%
?MPA=顕微鏡的多発血管炎 ・・ 50%
?AGA ・・ 10%
?pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎=腎限局型のMPA ・・ 30%
?PN ・・ 10%
・ ANCAを診断基準にあてはめた疾患はMPAとWGである(1998年)。MPAの確定に生検は必ずしも必須でなく、ANCA+所見でも診断がつく。しかしWGの確定に(特に臓器所見が少ない場合)ANCAを参考とするなら生検は必須である。
□ APS=抗リン脂質抗体症候群 ・・ 抗リン脂質抗体陽性+血栓症・妊娠合併症
○ 症状・所見
・ 血栓傾向
静脈血栓では下肢深部、表層静脈が多い。しばしば肺塞栓。なお動脈にも血栓を起こすのが特徴。このため脳血管障害の頻度が高いが(本症の動脈塞栓の9割以上)虚血性心疾患が少ないのも特徴。
・ 妊娠合併症
妊娠中毒症、不育症、流産(中後期に起きやすい特徴)
・ 血小板減少(20-40%)
○ 検査・診断
・ 抗リン脂質抗体(必須)・・抗カルジオリピン抗体=aCLにより検出=正確にはβ2GPI依存性aCL
・ LA=ループスアンチコアグラント
・ APTT延長
・ またその他の凝固線溶系異常
・ 血清梅毒反応擬陽性
○ 診断の実際の流れ
Sapporo Criteria(1999)によると診断のキッカケはまず血栓症+妊娠合併症→β2GPI依存性aCLまたはLAが証明されれば
APSと診断する。
○ 治療
・ 急性発症の血栓症に対する治療・・血栓溶解剤・ヘパリンなど
・ 予防
静脈血栓:ワーファリンコントロールで目標はPT-INR 2.0前後。
動脈血栓:低用量アスピリン(81-100mg)+シロスタゾールかチクロピジン併用+血栓リスク高度ならワーファリンもときに併用
□ ARB ・・ 最近ACEIに取って代わられつつある降圧剤。薬価が高いのが難か。最近ではオルメテック、ブロプレスが臨床医に評判がいい(降圧の面で)。
□ ALI/ARDS
↓ 2005年10月発行の新ガイドラインに基づく。
その本態は、肺胞隔壁の透過性亢進・・・つまり血管や肺胞上皮の細胞間の隙間が開くことによる非心原性肺水腫である。大ざっぱではARDS(急性呼吸窮迫症候群)≒ALI(急性肺損傷)ではあるが、厳密にはこれら2つはPaO2(動脈中の酸素分圧)/FiO2(投与している酸素濃度)により区別される。
※ 呼吸器学会では、ALIの数ある和訳(肺障害、肺損傷、肺傷害)に関して『肺損傷』が表現上最も好ましいとした。
したがって
・ 急性に発症した低酸素血症
・ 胸部レントゲンで両側性の肺浸潤影
・ 肺動脈楔入圧で左心房負荷の所見がない、つまり左心不全を除外できる←右心カテーテル検査あるいは心臓超音波で確認
があればALI/ARDSであり、さらにこれらは
・ PaO2/FiO2≦300mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ALI
・ PaO2/FiO2≦200mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ARDS
※ FiO2、とあるが人工呼吸器がついている前提での計算式ではない。カニューラやマスクならそれ相応のFiO2で当てはめて算出する。
と機械的に区別される。単純にみればARDSのほうがALIに比べてより重症、ということになる。実際ALI患者の54%が、その診断3日以内にARDSに移行することが報告されている。
<基礎疾患>
大きく2つに分けられる。
● 直接損傷 ・・ 肺炎、誤嚥など
※ 特に脳血管障害急性期、全身麻酔前後にみられることのある胃内容物の誤飲はMendelson症候群と呼ばれる。
● 間接損傷 ・・ 敗血症(全原因の4割!)、外傷、高度熱傷など
<経過・病期>
3つのステップ。この一連の変化をDAD=diffuse alveolar damageという。
? 浸出期=急性期 ・・ 呼吸不全発症から3-7日以内。病理学的にはうっ血・浮腫が目立ち、肺胞入口部を主体とする硝子膜形成(血漿成分が主体)が最も特徴的所見。
? 器質化期=増殖期=亜急性期 ・・ 呼吸不全発症から7日以降-14日以内。?型肺胞上皮細胞(線維を分泌)の増殖、それによる線維化が進む。
? 線維化期=慢性期 ・・ 呼吸不全発症から14-28日以降。線維化がもはや完成した、いわば終末像の状態。肺胞壁・血管壁(中膜)はコラーゲンにより肥厚。
<臨床>
・ 症状としては、労作時呼吸困難→安静時呼吸困難へと進行。過換気傾向のため、初期は二酸化炭素は貯留しない(つまり低換気ではない)。
・ そこでレントゲンで両側の浸潤影があれば本症を疑うことになり、上記のPaO2/FiO2を計算する。注意すべきは実際の肺損傷から陰影の出現まで12-24時間のタイムラグが存在しうることだ。
よって画像が特徴的でなくても血液ガスの結果から疑ってかかる必要がある。
・ 画像の読影にあたっては、以下の除外が必要。
□ 左心不全
□ 実はもともとあった肺線維症の急性増悪 ・・ すでに出来上がったような陰影(蜂巣肺など)が混じってないか。
□ 急性の間質性肺炎 ・・ もしこれなら、原疾患にあたるものが見当たらないはず。BALFでの鑑別は有用。
□ COP(BOOPという病名は古いらしい) ・・ レントゲンでの下肺外側優位の浸潤影(エアブロンコグラムあり)、BALFで鑑別。ステロイドが有効だがそれは結果での話。
□ 急性好酸球性肺炎
□ 膠原病による肺胞出血 ・・ SLE、Goodpasture症候群、ANCA関連血管炎など。
□ 薬剤性の肺胞出血 ・・ アミオダロン、プロピルチオウラシルなど。
□ 感染症 ・・ 通常の細菌性肺炎だけでなく非定型肺炎、カリニ肺炎、そしてサイトメガロ、レジオネラも忘れがちだ。
□ 過敏性肺臓炎
□ 粟粒結核
□ 癌性リンパ管症
□ 医原性 ・・ 輸液過剰、気胸や胸水ドレナージ一気しすぎによる再膨張性肺水腫
□ その他 ・・ 神経原性肺水腫、高地肺水腫
・ 経過としてみられてくるもの
(人工呼吸器)
○ 循環不全 ← 陽圧人工呼吸(PEEPの追加でも)による胸腔内圧上昇が原因で、心拍出量が減る。
○ 人工呼吸器関連肺炎=ventilator-associated pneumonia=VAP ・・ 入院後48時間以上経過して人工呼吸管理中に起こる細菌性肺炎をこう呼ぶ。
○ エアリーク ・・ 具体的には気胸、縦隔気腫、皮下気腫など。肺の空気がよそへ漏れてしまう。これは気道内圧上昇のせいで、人工呼吸器より送られる空気が線維化で固くなった肺と押し合いして、肺に穴が開いてしまうようなもの。そのため1回換気量はできるだけ少なめとし、呼吸回数を増やしてでも気道内圧を最小限にする努力が必要である。
○ 高濃度酸素による肺損傷 ・・ 人工呼吸器から高濃度の酸素が送られると(まあ必要だから送っているわけだが)、それ自体が活性酸素を増殖させ肺組織を傷害する。なのでできれば酸素濃度設定はせめて60%以下に抑えたい。
(内臓合併症)
○ 肺高血圧 ・・ これが進行すると右心不全も加わり、<肺性心>と呼ばれる状態になる。
○ 多臓器不全 ・・ 具体的には腎不全、肝不全、消化管出血など。
○ 敗血症
○ DIC
<治療>
● 薬物療法 ・・ 臨床所見で有効性が証明されたものはない。
・ グルココルチコイド(ステロイド)
ステロイドパルス、つまりメチルプレドニゾロンを1日1グラム3日間、という方法が現実的によくみられるが、有効性の裏づけまではされていない。する価値がある治療、とでも言うべきか。というのは原疾患によってはステロイドが有効である病態がある、または潜んでいるかもしれないからだ。
※ 発症7日目以降の病態に対するステロイドの検討が大規模試験で行われており、結果待ちの状態である。
・ 好中球エラスターゼ阻害薬
シベレスタットのこと。商品名エラスポール。投与するとしたら発症して72時間以内。それ以後は効果の期待薄い。臨床試験では有効性は証明済みだが生存期間まで短縮したわけではない。
・ 抗凝固療法
AT?製剤
遺伝子組み換え型活性化プロテインC(drotrecogin α)・・(本邦はまだ未承認) ・・ 重症敗血症の治療開始後28日目の予後を有意に改善、とのデータあり。
● 呼吸管理(要点のみ)
・ PCV=pressure control ventilationでは気道内圧の上限が設定でき、これは肺への損傷を最小限に防ぐという目的をもつ。
・ 最近の報告では有効な治療法としてはまず、低容量人工換気療法・・1回換気量を6ml/kgまで落として気道内圧を30cmH20以下にし、CO2上昇 しようともO2が60Torr以上維持できるなら呼吸性アシドーシスを容認してもいい、という内容。圧による肺への損傷を回避するためだ。この病態では大目に見ても1回換気量は10ml/kg以下の設定が好ましく、決して12ml/kg以上にしてはならない。
・ FiO2の設定はまず1.0で開始し徐々に下げ、PEEPは5を出発点として3-5キザミで上げていく。
□ AS=大動脈弁狭窄症 ・・ 心臓の出口の弁が年齢とともに硬くなり、血液が出にくくなった状態。脳などへの血液供給が減って失神・脱力を起こし、送れなかった血液は心臓の中へ逆流し(つまりARが合併してASRとなる)、心不全の原因となる。治せる薬はない。手術しかないが、その時期が重要。
□ ASCOT-BPLA試験(2005年報告) ・・ 心血管危険因子のある高血圧患者に、新薬群(カルシウム拮抗剤主体)と旧薬群(β遮断薬主体)とで心血管イベントの発生を比較。結論は新薬のほうが旧薬のほうを上回り、心イベント発症の抑制効果がより高いという結論が出た。
□ ATLS=Advanced Trauma Life Support ・・ 米国外科学会の外傷委員会が開発した、外傷初期診療のための医師(外科系いかんにかかわらず)向けプログラム。プライマリケアだけでなく患者の搬送の手順、病院選びなど幅広い能力が要求される。日本では<JATEC>http://www.jatec-web.com/がこれにあたる。
□ ATRA=アトラ ・・ 活性型ビタミンAで、白血病細胞のみに存在する融合蛋白をターゲットとして作用する、分子標的治療薬。
1988年上海で24例のAPL(急性骨髄性白血病)全例が寛解、日本でも高率に寛解。以後APLの治療に使用。
ATRAによりAPL細胞は好中球へと成熟・分化させるという機序のため、白血球の増加を招きやすく、それに伴いレチノイン酸症候群=RA症候群(ARDS類似の病態でステロイドパルスに反応良)、APL分化症候群といった重篤な副作用を来たすことがある。
RA症候群の予防のため、化学療法が併用されるのが常。また長期使用による耐性も問題で、休薬によりまた有効となるが永久耐性の例もある。
多施設共同研究では未治療群でのアトラによる寛解率は約90%と優れる。しかし約20%の再発例がある。再発の場合はATRAが無効の場合が多いが2005年春、日本発売の新規レチノイン酸Am80では再発例の約60%に再寛解が得られるという。
□ atrophy(アトロフィー) ・・ 萎縮。頭部CTの脳萎縮所見などのときに使用される用語。
□ ABCDスコア ・・ TIA発症から7日以内に脳卒中を起こしやすいかどうか、スクリーニングして予想するための評価尺度。ランセットH17.7月号で提唱。評価項目は・・Age(年齢)、BP(血圧)、Clinical features(臨床的特徴)、Duration(発作持続時間)の4項目、計6点で評価する。6点満点だと3割が1週間以内に脳卒中を発症するという。
□ ABI ・・ 足関節/上腕血圧比。閉塞性動脈硬化症などのスクリーニングとして行われる。正常は0.91-1.30。
□ ABPM=24時間自由行動下血圧測定 ・・ 30分〜1時間間隔で腕がしめられ血圧が測定されるという、ちと無理がある機械。ホルターの血圧版。夜間の血圧が分かるところがミソ。朝方急に血圧が上がることがわかればモーニング・サージということになる、など日内変動パターンを知ることができる。特に高齢者では血圧の変動が大きく、これによる測定が欠かせないのだそうだ。なお未だに保険適応外。
□ ACEI=ACE阻害薬 ・・ 降圧剤の一種。最近はARBに押されぎみ。ACEの悩みの種であった副作用「乾性咳」がARBにはないからだ。慢性心不全の予後を改善するデータあり、心機能低下がある人はとりあえず飲んでおいたほうがいい薬剤。
■ ACF=aberrant crypt foci ・・ 肉眼的には正常な大腸粘膜だが、顕微鏡下メチレンブルー染色にて濃染する大きな腺管の集まり。腺腫・癌の前病変所見として重要。ACFを標的とした治療の臨床試験が進行中。
■ Activation syndrome=賦活症候群 ・・ 別名「stimulation syndrome=刺激症候群」。抗うつ薬投与(特にSSRI)により引き起こされる中枢刺激症状(不安・敵意・焦燥・衝動性・パニック発作・アカシジア・不眠・軽躁・易刺激性・躁状態)。よって自殺のリスクを高める可能性がある。脳内5-HT受容体刺激によるドパミン減少が関与。しかし実際は、その症状が原疾患によるものか副作用なのか鑑別が(専門家でさえ)困難なのが実情。そういう問題もあるが、投与の初期に特に注意が必要。
■ ACTS-GC=Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric Cancer。つまり胃がんへの抗癌剤TS-1による術後補助療法の試み。最近、D2郭清した胃がん患者にTS-1単独による術後化学療法を行うことで生存期間が有意に上昇することが確認された(最大の副作用は食欲不振程度)。これまで胃がんの術後化学療法の有効データがなかっただけに画期的な発表となった。ただ、本剤使用後に耐性となった場合の薬剤選択など(CPT-11の意見あり)、課題はある。
□ ADA ・・ 胸水の測定項目。結核性胸膜炎の場合高値を示す。
□ ADL=activity of daily life=日常生活動作・・ 運動の自立度。その人が周りの手助けなしで、どこまで運動できるか。
■ ADR=alternative dispute resolution ・・ 裁判外の紛争処理。一方的な医療訴訟に発展する前に、第三者を仲立ちとしたあくまでも冷静な話し合い・真相究明を目的とする。医師側と向き合わない本来の訴訟は、弁護士の私腹を肥やすだけになりかねない。最近では病院内ADRなるものも登場している。
□ af ・・ 心房細動
□ AGML=急性胃粘膜病変 ・・ 胃の中の粘膜が広範囲に剥がれて出血する病態。潰瘍ほど深くないが範囲が広いので、多量に出血する。教科書どおり「コーヒー残渣様」の吐血をみる。
□ AIC ・・ 自己免疫性胆管炎 ・・ PBCの一亜型。臨床的にはPBCと考えられるがAMAは陰性で、そのかわりANAは高力価を呈する疾患で、PBCの基準を満たすもの。治療もPBCに準ずる(UDCA)。無効ならフィブラート系。
□ AIDS指標神経疾患 ・・ HIV感染に伴う神経合併症。
? HIV脳症(最多) ・・ 症状は前頭ー皮質下障害型(認知障害が中心)を呈する。
? 進行性多巣性白質脳症=PML ・・ 本症の85%以上がHIV感染。ゆっくり進行(亜急性)の神経局所症状(無道無言に至る)とMRIのT2画像で高信号の非対称性病巣。髄液のJCV-PCRは特異度高く(92-100%)、診断を強く示唆。
? クリプトコッカス症 ・・ クリプトコッカス髄膜炎の9割近くがHIV患者。亜急性。診断は髄液中の菌体あるいはクリプトコッカス抗原証明、髄液培養で陽性所見のいずれかによる。
? トキソプラズマ脳炎 ・・ 進行性の局所神経症状、CT/MRIでの多発性、しばしば浮腫随伴の造影剤増強病変、抗トキソプラズマ治療に2週間以内に反応、の場合に感染を示唆。
? サイトメガロウイルス(CMV)脳炎 ・・ HIVにCMVウイルスの感染自体はほとんどしており、実際CD4陽性リンパ球数<50μLになると問題化。亜急性進行性の脳症で、CT/MRIでの脳室周囲造影効果により示唆。
? 脳原発悪性リンパ腫=PCNSL ・・ CD4陽性リンパ球数<200μLで発症。発生にEBウイルスがほぼ100%関与。トキソプラズマ脳炎との鑑別難。
□ Alzheimer病(アルツハイマー病)
認知機能障害(記銘・記憶、思考、判断力の低下など)を中心とする神経変性疾患。発症後は進行性で生存期間は平均7年。早くて40歳代の発症もある。
原因として最も考えられているのは、加齢・遺伝子変異により脳内に沈着するアミロイドβ蛋白質(Aβ)の蓄積が引き金となって脳内の「タウ」という蛋白を(高度にリン酸化して)機能不全とし、タウ沈着が神経細胞の変性そして神経細胞死を起こして、その結果痴呆となるという機序≪アミロイドカスケード仮説≫である。
http://homepage3.nifty.com/mickeym/simin/320arutu.htmlに診断基準。
※ このアミロイドβ蛋白質が、難病の加齢黄斑(おうはん)変性症を引き起こすことを東京医科歯科大大学院の研究チームが突き止めた。研究チームの森田育男教授は「アルツハイマー病との因果関係は不明だが、同病に使われる治療が応用できる」と話している(2005.9月ニュースより)。
※ アミロイドの蓄積を画像でどうやって描出させるかあちこちで研究されている。日本ではマウスでFSBという物質(アミロイドを染めるcongo redから由来)を静脈注射し、MRIでの描出例が報告された。
治療は依然として、塩酸ドネペジル(アリセプト)による予防しかない。効果は確実ではない。
<関連映画>・・「明日の記憶」「私の頭の中の消しゴム」
□ AMD=Age-related Macular Degeneration=加齢黄斑変性 ・・ 日本で急増中で75歳以上は高頻度。網膜の中心である黄斑に異常をきたす。タイプは2つで
?萎縮型 ・・ 黄斑が萎縮し、視力低下が緩徐に進行。
?滲出型 ・・ 脈絡膜に新生血管ができて網膜に浮腫・出血をきたす。視力低下は急激で失明例も。
初期症状は視野の中心がゆがんできて→暗い、欠けるなどの訴えへと進む。細かい碁盤の目のような図(アムスラーチャート)をみて歪みが発見されれば可能性が高く、確定診断は蛍光眼底造影などで行う。
治療では2004年5月〜光線力学的療法(PDT)が主流。新生血管に集積する色素(ベルテポルフィン)を静脈注射のうえレーザーを当てることで新生血管を閉塞。安全性高く20分ぐらいで終了。実施施設についてはhttp://www.pdti.jp/で。
□ ANCA関連血管炎に関してポイントのみ
・ ANA(抗核抗体)
膠原病で高率に陽性となるのは・・MCTD(100%)、SLE(98%)、SSc(85%)、シェーグレン(80%)。
健常人でも陽性はよく見かけるが、頻度的にはX40→25〜30%、X80→10〜15%、X160→5%以上といったところ。実際に膠原病を疑うレベルはX160の場合。
・ ANCA ・・ 好中球細胞質のアズ−ル顆粒中の抗原を認識する自己抗体。染色パターンにより以下の2つに分かれる。
○ C-ANCA ・・ 好中球細胞質(Cytoplasmic)がびまん性顆粒状に染まる ・・ 対応抗原はプロテイナーゼ3=PR3なのでC-ANCA=PR3-ANCA
○ P-ANCA ・・ 好中球の核周囲(Perinuclear)が染まる ・・ 対応抗原はミエロペルオキシダーゼ=MPOなのでP-ANCA=MPO-ANCA
・ PR3-ANCAの陽性率
?WG ・・ 80-90%
?MPA=顕微鏡的多発血管炎 ・・ 50%
?AGA ・・ 10%
?pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎=腎限局型のMPA ・・ 30%
?PN ・・ 10%
・ ANCAを診断基準にあてはめた疾患はMPAとWGである(1998年)。MPAの確定に生検は必ずしも必須でなく、ANCA+所見でも診断がつく。しかしWGの確定に(特に臓器所見が少ない場合)ANCAを参考とするなら生検は必須である。
□ APS=抗リン脂質抗体症候群 ・・ 抗リン脂質抗体陽性+血栓症・妊娠合併症
○ 症状・所見
・ 血栓傾向
静脈血栓では下肢深部、表層静脈が多い。しばしば肺塞栓。なお動脈にも血栓を起こすのが特徴。このため脳血管障害の頻度が高いが(本症の動脈塞栓の9割以上)虚血性心疾患が少ないのも特徴。
・ 妊娠合併症
妊娠中毒症、不育症、流産(中後期に起きやすい特徴)
・ 血小板減少(20-40%)
○ 検査・診断
・ 抗リン脂質抗体(必須)・・抗カルジオリピン抗体=aCLにより検出=正確にはβ2GPI依存性aCL
・ LA=ループスアンチコアグラント
・ APTT延長
・ またその他の凝固線溶系異常
・ 血清梅毒反応擬陽性
○ 診断の実際の流れ
Sapporo Criteria(1999)によると診断のキッカケはまず血栓症+妊娠合併症→β2GPI依存性aCLまたはLAが証明されれば
APSと診断する。
○ 治療
・ 急性発症の血栓症に対する治療・・血栓溶解剤・ヘパリンなど
・ 予防
静脈血栓:ワーファリンコントロールで目標はPT-INR 2.0前後。
動脈血栓:低用量アスピリン(81-100mg)+シロスタゾールかチクロピジン併用+血栓リスク高度ならワーファリンもときに併用
□ ARB ・・ 最近ACEIに取って代わられつつある降圧剤。薬価が高いのが難か。最近ではオルメテック、ブロプレスが臨床医に評判がいい(降圧の面で)。
□ ALI/ARDS
↓ 2005年10月発行の新ガイドラインに基づく。
その本態は、肺胞隔壁の透過性亢進・・・つまり血管や肺胞上皮の細胞間の隙間が開くことによる非心原性肺水腫である。大ざっぱではARDS(急性呼吸窮迫症候群)≒ALI(急性肺損傷)ではあるが、厳密にはこれら2つはPaO2(動脈中の酸素分圧)/FiO2(投与している酸素濃度)により区別される。
※ 呼吸器学会では、ALIの数ある和訳(肺障害、肺損傷、肺傷害)に関して『肺損傷』が表現上最も好ましいとした。
したがって
・ 急性に発症した低酸素血症
・ 胸部レントゲンで両側性の肺浸潤影
・ 肺動脈楔入圧で左心房負荷の所見がない、つまり左心不全を除外できる←右心カテーテル検査あるいは心臓超音波で確認
があればALI/ARDSであり、さらにこれらは
・ PaO2/FiO2≦300mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ALI
・ PaO2/FiO2≦200mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ARDS
※ FiO2、とあるが人工呼吸器がついている前提での計算式ではない。カニューラやマスクならそれ相応のFiO2で当てはめて算出する。
と機械的に区別される。単純にみればARDSのほうがALIに比べてより重症、ということになる。実際ALI患者の54%が、その診断3日以内にARDSに移行することが報告されている。
<基礎疾患>
大きく2つに分けられる。
● 直接損傷 ・・ 肺炎、誤嚥など
※ 特に脳血管障害急性期、全身麻酔前後にみられることのある胃内容物の誤飲はMendelson症候群と呼ばれる。
● 間接損傷 ・・ 敗血症(全原因の4割!)、外傷、高度熱傷など
<経過・病期>
3つのステップ。この一連の変化をDAD=diffuse alveolar damageという。
? 浸出期=急性期 ・・ 呼吸不全発症から3-7日以内。病理学的にはうっ血・浮腫が目立ち、肺胞入口部を主体とする硝子膜形成(血漿成分が主体)が最も特徴的所見。
? 器質化期=増殖期=亜急性期 ・・ 呼吸不全発症から7日以降-14日以内。?型肺胞上皮細胞(線維を分泌)の増殖、それによる線維化が進む。
? 線維化期=慢性期 ・・ 呼吸不全発症から14-28日以降。線維化がもはや完成した、いわば終末像の状態。肺胞壁・血管壁(中膜)はコラーゲンにより肥厚。
<臨床>
・ 症状としては、労作時呼吸困難→安静時呼吸困難へと進行。過換気傾向のため、初期は二酸化炭素は貯留しない(つまり低換気ではない)。
・ そこでレントゲンで両側の浸潤影があれば本症を疑うことになり、上記のPaO2/FiO2を計算する。注意すべきは実際の肺損傷から陰影の出現まで12-24時間のタイムラグが存在しうることだ。
よって画像が特徴的でなくても血液ガスの結果から疑ってかかる必要がある。
・ 画像の読影にあたっては、以下の除外が必要。
□ 左心不全
□ 実はもともとあった肺線維症の急性増悪 ・・ すでに出来上がったような陰影(蜂巣肺など)が混じってないか。
□ 急性の間質性肺炎 ・・ もしこれなら、原疾患にあたるものが見当たらないはず。BALFでの鑑別は有用。
□ COP(BOOPという病名は古いらしい) ・・ レントゲンでの下肺外側優位の浸潤影(エアブロンコグラムあり)、BALFで鑑別。ステロイドが有効だがそれは結果での話。
□ 急性好酸球性肺炎
□ 膠原病による肺胞出血 ・・ SLE、Goodpasture症候群、ANCA関連血管炎など。
□ 薬剤性の肺胞出血 ・・ アミオダロン、プロピルチオウラシルなど。
□ 感染症 ・・ 通常の細菌性肺炎だけでなく非定型肺炎、カリニ肺炎、そしてサイトメガロ、レジオネラも忘れがちだ。
□ 過敏性肺臓炎
□ 粟粒結核
□ 癌性リンパ管症
□ 医原性 ・・ 輸液過剰、気胸や胸水ドレナージ一気しすぎによる再膨張性肺水腫
□ その他 ・・ 神経原性肺水腫、高地肺水腫
・ 経過としてみられてくるもの
(人工呼吸器)
○ 循環不全 ← 陽圧人工呼吸(PEEPの追加でも)による胸腔内圧上昇が原因で、心拍出量が減る。
○ 人工呼吸器関連肺炎=ventilator-associated pneumonia=VAP ・・ 入院後48時間以上経過して人工呼吸管理中に起こる細菌性肺炎をこう呼ぶ。
○ エアリーク ・・ 具体的には気胸、縦隔気腫、皮下気腫など。肺の空気がよそへ漏れてしまう。これは気道内圧上昇のせいで、人工呼吸器より送られる空気が線維化で固くなった肺と押し合いして、肺に穴が開いてしまうようなもの。そのため1回換気量はできるだけ少なめとし、呼吸回数を増やしてでも気道内圧を最小限にする努力が必要である。
○ 高濃度酸素による肺損傷 ・・ 人工呼吸器から高濃度の酸素が送られると(まあ必要だから送っているわけだが)、それ自体が活性酸素を増殖させ肺組織を傷害する。なのでできれば酸素濃度設定はせめて60%以下に抑えたい。
(内臓合併症)
○ 肺高血圧 ・・ これが進行すると右心不全も加わり、<肺性心>と呼ばれる状態になる。
○ 多臓器不全 ・・ 具体的には腎不全、肝不全、消化管出血など。
○ 敗血症
○ DIC
<治療>
● 薬物療法 ・・ 臨床所見で有効性が証明されたものはない。
・ グルココルチコイド(ステロイド)
ステロイドパルス、つまりメチルプレドニゾロンを1日1グラム3日間、という方法が現実的によくみられるが、有効性の裏づけまではされていない。する価値がある治療、とでも言うべきか。というのは原疾患によってはステロイドが有効である病態がある、または潜んでいるかもしれないからだ。
※ 発症7日目以降の病態に対するステロイドの検討が大規模試験で行われており、結果待ちの状態である。
・ 好中球エラスターゼ阻害薬
シベレスタットのこと。商品名エラスポール。投与するとしたら発症して72時間以内。それ以後は効果の期待薄い。臨床試験では有効性は証明済みだが生存期間まで短縮したわけではない。
・ 抗凝固療法
AT?製剤
遺伝子組み換え型活性化プロテインC(drotrecogin α)・・(本邦はまだ未承認) ・・ 重症敗血症の治療開始後28日目の予後を有意に改善、とのデータあり。
● 呼吸管理(要点のみ)
・ PCV=pressure control ventilationでは気道内圧の上限が設定でき、これは肺への損傷を最小限に防ぐという目的をもつ。
・ 最近の報告では有効な治療法としてはまず、低容量人工換気療法・・1回換気量を6ml/kgまで落として気道内圧を30cmH20以下にし、CO2上昇 しようともO2が60Torr以上維持できるなら呼吸性アシドーシスを容認してもいい、という内容。圧による肺への損傷を回避するためだ。この病態では大目に見ても1回換気量は10ml/kg以下の設定が好ましく、決して12ml/kg以上にしてはならない。
・ FiO2の設定はまず1.0で開始し徐々に下げ、PEEPは5を出発点として3-5キザミで上げていく。
□ AS=大動脈弁狭窄症 ・・ 心臓の出口の弁が年齢とともに硬くなり、血液が出にくくなった状態。脳などへの血液供給が減って失神・脱力を起こし、送れなかった血液は心臓の中へ逆流し(つまりARが合併してASRとなる)、心不全の原因となる。治せる薬はない。手術しかないが、その時期が重要。
□ ASCOT-BPLA試験(2005年報告) ・・ 心血管危険因子のある高血圧患者に、新薬群(カルシウム拮抗剤主体)と旧薬群(β遮断薬主体)とで心血管イベントの発生を比較。結論は新薬のほうが旧薬のほうを上回り、心イベント発症の抑制効果がより高いという結論が出た。
□ ATLS=Advanced Trauma Life Support ・・ 米国外科学会の外傷委員会が開発した、外傷初期診療のための医師(外科系いかんにかかわらず)向けプログラム。プライマリケアだけでなく患者の搬送の手順、病院選びなど幅広い能力が要求される。日本では<JATEC>http://www.jatec-web.com/がこれにあたる。
□ ATRA=アトラ ・・ 活性型ビタミンAで、白血病細胞のみに存在する融合蛋白をターゲットとして作用する、分子標的治療薬。
1988年上海で24例のAPL(急性骨髄性白血病)全例が寛解、日本でも高率に寛解。以後APLの治療に使用。
ATRAによりAPL細胞は好中球へと成熟・分化させるという機序のため、白血球の増加を招きやすく、それに伴いレチノイン酸症候群=RA症候群(ARDS類似の病態でステロイドパルスに反応良)、APL分化症候群といった重篤な副作用を来たすことがある。
RA症候群の予防のため、化学療法が併用されるのが常。また長期使用による耐性も問題で、休薬によりまた有効となるが永久耐性の例もある。
多施設共同研究では未治療群でのアトラによる寛解率は約90%と優れる。しかし約20%の再発例がある。再発の場合はATRAが無効の場合が多いが2005年春、日本発売の新規レチノイン酸Am80では再発例の約60%に再寛解が得られるという。
□ atrophy(アトロフィー) ・・ 萎縮。頭部CTの脳萎縮所見などのときに使用される用語。
サーガマニュアル2007秋 B
2007年9月17日□ βブロッカー(ベータ−ブロッカー)=β遮断薬
β受容体を遮断する薬剤。目的としては降圧が多い。ACE阻害薬と同様、慢性心不全の予後を改善すると最近見直されてきた薬。
なので本来の降圧薬としてでなく循環器領域で使用する頻度が増えている。
ただしこの中にも種類があって、症状、血行動態(エコー所見など)によって慎重な選択が望まれる。できれば循環器系のドクターに調節してもらったほうがいい薬剤。糖尿病、徐脈など副作用は多い。だが欧米に比しわが国での使用頻度はまだまだ少ない。
□ β-D-グルカン ・・ カンジダ抗原より正確な、真菌検出・抗真菌剤効果判定のための血液検査。結果判定まで数日を要するのと、月1回の測定までしか許されないことが多いのが難。カンジダ抗原と同一日に測定できないので、実際は最初にカンジダ抗原を測定、即日の結果が陽性なら抗真菌剤を開始。翌日にβ-D-グルカンを測定、数日後の判定でもし陰性なら抗真菌剤は中止、という具合。なお測定法が2つあるのだがそれぞれ長所・短所があり、どちらをどう使い分けるべきかなどの評価検討が進められている。
□ B型肝炎=B型慢性肝炎=CHB
肝硬変への移行を防ぐための治療のタイミングがポイント。無治療でも治るケースがあるため若年では高ウイルス量でもすぐに治療をするべきかどうかは悩むところ。35歳までは様子見で、越えてHBe抗原が陽性なら早期の治療を進めるという考えが強い。
また、HBV-DNA量が1X10の4乗以上であればHBe抗原・ALTの値にかかわらず肝硬変進展の独立因子である、という台湾の研究結果に基づき、そこを基準に治療に踏み込むべきという意見もある。
治療は大きく分けて
?免疫機序でウイルス排除:IFNによる期間限定的治療
?ウイルス増殖抑制:核酸アナログによる長期治療
がある。
?はウイルス多い例には有効性低く、ウイルスの種類(ジェノタイプ)にも左右されるという問題
?には耐性の問題
がある。こういう問題もあるので、治療適応はあくまでも各人で異なったものとなる(実際ガイドラインも国によって様々)。
□ B.I.=ブリンクマン・インデックス ・・ 喫煙年数 X 1日のタバコ本数。これが400を越えるなら肺癌のリスクあり。
例文)「ブリンクマン・インデックスは2000と、かなりのヘビースモーカーです」
□ BAD=branch atheromatous disease ・・脳の深部に入り込む動脈を穿通枝というが、このうち比較的太い部位(厳密には穿通枝入口部から本管側)のアテローム閉塞による脳梗塞。脳梗塞の大きさはアテローム梗塞とラクナ梗塞との中間に位置する。
□ BAL=bronchoalveolar lavage=管支肺胞洗浄 ・・ 気管支鏡によって気管支の末梢に生食を流し、回収したもの(回収した液がBALF=BAL fluid)。気道にある炎症細胞などを拾って分析。
□ Bartter症候群 ・・ 遺伝性の尿細管疾患、の1つ。症状は乳幼児期からで、脱水・低カリウム症状が主体。代謝性アルカローシスを呈するほか、レニン上昇、一方アルドステロンは正常〜高値と幅広い。尿中にはClの排泄が増加する。利尿剤フロセミドによっての強制利尿が得られないのも特徴で、これより本剤の作用部位であるヘンレの太い上行脚の機能異常が指摘され、現在原因遺伝子特定(複数)にまで至っている。
□ Batista手術 ・・ 左心室の自由壁を部分的に切除・縫縮することで左心室の大きさを縮小する。僧房弁置換術も行う。DCMに行われること多いが、ごく一部の適応を除き否定的な意見(術後はいいが再悪化してくる)が多いらしい。
□ BRS=Baroreflex Sensitivity=圧受容体反射 ・・ 副交感神経機能の評価法の1つ。カテコラミン製剤であるフェニレフリン(商品名ネオシネジン)を静脈注射して、動脈圧と心電図モニターの動きをみる。通常は血圧が上昇するに従い脈は遅くなる。動脈圧が上昇すれば通常、受容体(大動脈弓、頸動脈洞にある)による反射で副交感神経が刺激され徐脈になるという現象を利用。心筋梗塞を起こした患者のこの反射は低下しており、徐脈になるまでの時間が遅延する。遅延するほど予後が悪い。
□ Brugada(ブルガダ)症候群
特定疾患。以前の「ぱっくり病」の主たるもの。提唱が1992年と新しい。若年〜中年男性の睡眠時突然死(心室細動による)の原因として注目。30歳代後半〜40歳代の男性に多く(75-94%)有病率0.15%。症状のある群とない群があり、後者のほうが一部を除き予後良好。
発作は安静時(つまり副交感神経亢進時)に多く、具体的には大仕事・運動直後に起こりやすい。
失神歴と安静時心電図所見(不完全右脚ブロック+右側胸部誘導(V1-3)のST上昇)より診断<心電図所見のみの場合は「Brugada様心電図」と区別することがある>。?群抗不整脈剤でその特徴的な心電図波形が増強するが、同時に心室細動が誘発されることがある。なお心電図波形は運動・イソプロテレノ−ル負荷では逆に正常化する特徴もある。発熱時にはST上昇が増強するため入院管理が望ましいとされている。
電気生理学検査(EPS)では2-3連発の心室早期期外刺激で50-80%の例にVFやVTが誘発される(無症候性<有症候性)。
なお最近では完全右脚ブロックを呈する例は少なく、むしろ正常QRS幅が1/3も占めるといい、右脚ブロックを本疾患の必須条件とする必要はないと考えられている。
突然死は家族性・若年性。つまり遺伝病。原因遺伝子として<SCN5A>が特定され(15-25%に認める)、(ナトリウム)イオンチャネル病と考えられている。
突然死の家族歴、電気生理検査でのVT/VF誘発があれば日本の適応(ICD植え込み)でいうとクラス?a(絶対適応ではないが適応のエビデンスあり)に該当する。ただ無症状で心電図所見のみの患者はどうしたらいいのか、結論は出ていない。
□ bruit(ブルーイ) ・・ 拍動に合わせて聞こえる雑音。腹部や頸部、そけい部などで聴取される場合をいう。血管の狭窄を反映する。
□ BS ・・ 血糖。いつの時点でのものかは不明瞭。
□ BSA=body surface area=体表面積 ・・ 単位は(m2=へーベー)
□ BSE=牛海綿状脳症 ・・ なぜか大半が20代の若年者(平均29歳)。初発症状は精神症状(元気なし、性格変化、ルーズ、意欲なし)と感覚異常(しびれ、痛み)。進行するとふらつき、体の震え。これらの症状は特異的なものではないので鑑別・除外診断が重要になる。平均罹病期間は14ヶ月。診断にはMRI、脳波(異常はまれ)、脳脊髄液検査も要する。日本では献血の問診で英国などBSE発生国に通算6ヶ月以上滞在したかどうかチェックする仕組みになっている。日本では検査体制、特定部位(SRM)除去などのリスク管理が非常に徹底されている(世界トップレベルらしい)。感染している牛の頭数が多い英国では年10-20人が発症、日本ではかなり少ないはず。
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/vcjd/厚生省。
http://www.nanbyou.or.jp/pdf/105_s.pdf難病情報センターも参考に。
□ BT(Body Tempreture)=KT ・・ 熱。
□ BTLS=Basic Trauma Life Support ・・ 米国救急医学会と救急医協会が開発した、外傷初期診療のためのパラメディカル(救急救命士含む)向けプログラム。患者の病院搬送までの救護処置に重点。日本ではBTLS JAPAN →http://www.btls-japan.jp/index.html←がこれにあたる。
□ BZD=ベンゾジアゼピン系抗不安薬 ・・ 抗不安・睡眠導入のために使用。即効性(1-2時間)で作用。このうち短時間作用型で高力価のものが不眠症に使用される。欧米では1980年代から長期服用の問題(依存性・認知機能低下・うつのマスキング)が指摘されSSRIに移行してきているが、日本ではいまだBZDの処方が多い。前述の副作用のため、最近では1ヶ月以上の継続は避けるべきとされている。急な中止は6割以上が離脱症状を訴えるのであくまでも漸減という形で。なお、うつの症例が目立つならSSRIへの切り替え(オーバーラップしながら)が好ましい。
※ 認知機能低下 ・・ 特に自動車事故、転倒。
※ うつのマスキング ・・ BZDは、うつには無効。身体症状の改善に満足して、うつがほったらかしのケースが多い。
β受容体を遮断する薬剤。目的としては降圧が多い。ACE阻害薬と同様、慢性心不全の予後を改善すると最近見直されてきた薬。
なので本来の降圧薬としてでなく循環器領域で使用する頻度が増えている。
ただしこの中にも種類があって、症状、血行動態(エコー所見など)によって慎重な選択が望まれる。できれば循環器系のドクターに調節してもらったほうがいい薬剤。糖尿病、徐脈など副作用は多い。だが欧米に比しわが国での使用頻度はまだまだ少ない。
□ β-D-グルカン ・・ カンジダ抗原より正確な、真菌検出・抗真菌剤効果判定のための血液検査。結果判定まで数日を要するのと、月1回の測定までしか許されないことが多いのが難。カンジダ抗原と同一日に測定できないので、実際は最初にカンジダ抗原を測定、即日の結果が陽性なら抗真菌剤を開始。翌日にβ-D-グルカンを測定、数日後の判定でもし陰性なら抗真菌剤は中止、という具合。なお測定法が2つあるのだがそれぞれ長所・短所があり、どちらをどう使い分けるべきかなどの評価検討が進められている。
□ B型肝炎=B型慢性肝炎=CHB
肝硬変への移行を防ぐための治療のタイミングがポイント。無治療でも治るケースがあるため若年では高ウイルス量でもすぐに治療をするべきかどうかは悩むところ。35歳までは様子見で、越えてHBe抗原が陽性なら早期の治療を進めるという考えが強い。
また、HBV-DNA量が1X10の4乗以上であればHBe抗原・ALTの値にかかわらず肝硬変進展の独立因子である、という台湾の研究結果に基づき、そこを基準に治療に踏み込むべきという意見もある。
治療は大きく分けて
?免疫機序でウイルス排除:IFNによる期間限定的治療
?ウイルス増殖抑制:核酸アナログによる長期治療
がある。
?はウイルス多い例には有効性低く、ウイルスの種類(ジェノタイプ)にも左右されるという問題
?には耐性の問題
がある。こういう問題もあるので、治療適応はあくまでも各人で異なったものとなる(実際ガイドラインも国によって様々)。
□ B.I.=ブリンクマン・インデックス ・・ 喫煙年数 X 1日のタバコ本数。これが400を越えるなら肺癌のリスクあり。
例文)「ブリンクマン・インデックスは2000と、かなりのヘビースモーカーです」
□ BAD=branch atheromatous disease ・・脳の深部に入り込む動脈を穿通枝というが、このうち比較的太い部位(厳密には穿通枝入口部から本管側)のアテローム閉塞による脳梗塞。脳梗塞の大きさはアテローム梗塞とラクナ梗塞との中間に位置する。
□ BAL=bronchoalveolar lavage=管支肺胞洗浄 ・・ 気管支鏡によって気管支の末梢に生食を流し、回収したもの(回収した液がBALF=BAL fluid)。気道にある炎症細胞などを拾って分析。
□ Bartter症候群 ・・ 遺伝性の尿細管疾患、の1つ。症状は乳幼児期からで、脱水・低カリウム症状が主体。代謝性アルカローシスを呈するほか、レニン上昇、一方アルドステロンは正常〜高値と幅広い。尿中にはClの排泄が増加する。利尿剤フロセミドによっての強制利尿が得られないのも特徴で、これより本剤の作用部位であるヘンレの太い上行脚の機能異常が指摘され、現在原因遺伝子特定(複数)にまで至っている。
□ Batista手術 ・・ 左心室の自由壁を部分的に切除・縫縮することで左心室の大きさを縮小する。僧房弁置換術も行う。DCMに行われること多いが、ごく一部の適応を除き否定的な意見(術後はいいが再悪化してくる)が多いらしい。
□ BRS=Baroreflex Sensitivity=圧受容体反射 ・・ 副交感神経機能の評価法の1つ。カテコラミン製剤であるフェニレフリン(商品名ネオシネジン)を静脈注射して、動脈圧と心電図モニターの動きをみる。通常は血圧が上昇するに従い脈は遅くなる。動脈圧が上昇すれば通常、受容体(大動脈弓、頸動脈洞にある)による反射で副交感神経が刺激され徐脈になるという現象を利用。心筋梗塞を起こした患者のこの反射は低下しており、徐脈になるまでの時間が遅延する。遅延するほど予後が悪い。
□ Brugada(ブルガダ)症候群
特定疾患。以前の「ぱっくり病」の主たるもの。提唱が1992年と新しい。若年〜中年男性の睡眠時突然死(心室細動による)の原因として注目。30歳代後半〜40歳代の男性に多く(75-94%)有病率0.15%。症状のある群とない群があり、後者のほうが一部を除き予後良好。
発作は安静時(つまり副交感神経亢進時)に多く、具体的には大仕事・運動直後に起こりやすい。
失神歴と安静時心電図所見(不完全右脚ブロック+右側胸部誘導(V1-3)のST上昇)より診断<心電図所見のみの場合は「Brugada様心電図」と区別することがある>。?群抗不整脈剤でその特徴的な心電図波形が増強するが、同時に心室細動が誘発されることがある。なお心電図波形は運動・イソプロテレノ−ル負荷では逆に正常化する特徴もある。発熱時にはST上昇が増強するため入院管理が望ましいとされている。
電気生理学検査(EPS)では2-3連発の心室早期期外刺激で50-80%の例にVFやVTが誘発される(無症候性<有症候性)。
なお最近では完全右脚ブロックを呈する例は少なく、むしろ正常QRS幅が1/3も占めるといい、右脚ブロックを本疾患の必須条件とする必要はないと考えられている。
突然死は家族性・若年性。つまり遺伝病。原因遺伝子として<SCN5A>が特定され(15-25%に認める)、(ナトリウム)イオンチャネル病と考えられている。
突然死の家族歴、電気生理検査でのVT/VF誘発があれば日本の適応(ICD植え込み)でいうとクラス?a(絶対適応ではないが適応のエビデンスあり)に該当する。ただ無症状で心電図所見のみの患者はどうしたらいいのか、結論は出ていない。
□ bruit(ブルーイ) ・・ 拍動に合わせて聞こえる雑音。腹部や頸部、そけい部などで聴取される場合をいう。血管の狭窄を反映する。
□ BS ・・ 血糖。いつの時点でのものかは不明瞭。
□ BSA=body surface area=体表面積 ・・ 単位は(m2=へーベー)
□ BSE=牛海綿状脳症 ・・ なぜか大半が20代の若年者(平均29歳)。初発症状は精神症状(元気なし、性格変化、ルーズ、意欲なし)と感覚異常(しびれ、痛み)。進行するとふらつき、体の震え。これらの症状は特異的なものではないので鑑別・除外診断が重要になる。平均罹病期間は14ヶ月。診断にはMRI、脳波(異常はまれ)、脳脊髄液検査も要する。日本では献血の問診で英国などBSE発生国に通算6ヶ月以上滞在したかどうかチェックする仕組みになっている。日本では検査体制、特定部位(SRM)除去などのリスク管理が非常に徹底されている(世界トップレベルらしい)。感染している牛の頭数が多い英国では年10-20人が発症、日本ではかなり少ないはず。
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/vcjd/厚生省。
http://www.nanbyou.or.jp/pdf/105_s.pdf難病情報センターも参考に。
□ BT(Body Tempreture)=KT ・・ 熱。
□ BTLS=Basic Trauma Life Support ・・ 米国救急医学会と救急医協会が開発した、外傷初期診療のためのパラメディカル(救急救命士含む)向けプログラム。患者の病院搬送までの救護処置に重点。日本ではBTLS JAPAN →http://www.btls-japan.jp/index.html←がこれにあたる。
□ BZD=ベンゾジアゼピン系抗不安薬 ・・ 抗不安・睡眠導入のために使用。即効性(1-2時間)で作用。このうち短時間作用型で高力価のものが不眠症に使用される。欧米では1980年代から長期服用の問題(依存性・認知機能低下・うつのマスキング)が指摘されSSRIに移行してきているが、日本ではいまだBZDの処方が多い。前述の副作用のため、最近では1ヶ月以上の継続は避けるべきとされている。急な中止は6割以上が離脱症状を訴えるのであくまでも漸減という形で。なお、うつの症例が目立つならSSRIへの切り替え(オーバーラップしながら)が好ましい。
※ 認知機能低下 ・・ 特に自動車事故、転倒。
※ うつのマスキング ・・ BZDは、うつには無効。身体症状の改善に満足して、うつがほったらかしのケースが多い。