□ 急性膵炎 

 血液・尿中の膵酵素が上昇する膵臓の炎症で、発熱・腹痛があれば真っ先に疑う。上腹部痛が初発症状である頻度は95%(圧痛92%)と、ほぼ必発。

 画像診断は必須で、単にアミラーゼが高いだけで診断・治療してしまわないよう注意。程度は様々で、軽いのから重症まで(浮腫性と壊死性に分かれ、前者は85%で後者は15%。当然、後者は予後が悪く多臓器不全のリスクもつ)。

 2大要因は長期アルコールと胆石。しかし本疾患の3割はそれら以外が原因→薬剤副作用や代謝障害、感染症なども検索を。

 治療は重症度によるが、まず絶食・IVH管理を基本としてプロテアーゼインヒビター大量投与(FOY持続点滴→軽快したらフオイパン内服へ変更)、H2ブロッカー(ガスターなど)が基本で、必要に応じてインスリン、FFPなどが投与される。低血圧だからといって単純にカテコラミンの指示をするのでなく、むしろ補液量でフォローすべき。

 本疾患の致死率は平均7%。高齢者ではもっと高い。

 死因は?MOF(多臓器不全)、?心循環不全、?敗血症。予後的には1/3-1/2が何らかの分泌機能不全を後遺症的に残す。

※ 初期病態は種々の引き金→トリプシノーゲンの活性化から始まる。これが血中でTAP(トリプシノーゲン活性化ペプチド)として検出される例では膵臓以外にも炎症が拡がっていく段階で、中等症〜重症の膵炎をきたすことがわかっている。この変化は発症早期にみられており、いかにこの段階になる前に(具体的には48時間以内に)治療を行うかが予後への分かれ目となる。

 しつこいようだがトリプシンによる膵臓の自己消化は発症48時間で起こるのだ。

※ 2002年発表の「急性膵炎の発生要因に関する症例研究」では、?アルコール過剰摂取、?栄養摂取の不足が本疾患のリスクを上昇させることを明らかにした。

※ 「H13年度研究報告書」によると、予後不良を規定する因子は・・
?2つ以上の併存疾患
?(特に膵頭部を含む領域の)膵壊死
?感染
?stage2以上
?入院後1週間での重症度スコアの増加、の5つ。

※ 2005年7月にガイドラインhttp://www.nanbyou.or.jp/pdf/048_i_guide.pdfが完成した。国内外の論文を5段階評価して、治療を推奨するものからしないものまでA-E評価したもの。これによると・・
・ 古典的な皮膚所見(Grey-Turner、Cullen、Fox)は頻度が実際は低く出現も遅く非特異的である。
・ A(推奨される)と評価されたものは、血中アミラーゼ測定、その欠点(他の疾患でも上がる。慢性膵炎増悪例では上昇しないことあり)を補うリパーゼ測定。しかもリパーゼはアミラーゼより高値が持続するので見落としも助ける。ただ注意すべきは教科書にもある通り、これら2つは重症度の評価にはならない。重症膵炎というのは、重症臓器の機能不全がみられた場合にそう呼び、重症度評価はCRPが「A」の推奨度。ただしこの上昇は病態変化に少し遅れるらしく、発症48時間以内はあまり信用できないという指摘がある。他Aとされたのは胸・腹部レントゲン(胸まで撮るのは基礎疾患、心不全・胸水有無などの評価の意味あり)、超音波(膵腫大・膵周囲の炎症性変化)。CTは「B」らしいが、他疾患の除外をするため、客観的証拠を残すためには必須だろう。壊死(これは感染につながる!)の診断のためには造影が必要となるが膵炎の悪化が懸念されるとどうしても躊躇してしまう。イギリスのガイドラインでは造影CTは入院3-10日を勧めている。これには発症早期では膵壊死がなかなか映らないという理由も含む。壊死がある場合、画像では7日目あたりで明瞭に描写されてくる。

※ 重症型における特殊治療

・ 腹膜灌流・腹腔洗浄=peritoneal lavage ・・ 主には膵壊死部分の除去術(デブリドマン)後の持続的洗浄の意味として施行。
・ 選択的消化管除菌=selective digestive decontamination=SDD ・・ norfloxacin・colistin・amphotericinの3剤を経口・軟膏・注腸。エビデンス乏しく死亡率を下げるまでには至らず。
・ 蛋白分解酵素阻害薬の大量持続点滴 ・・ gabexate mesilate=メシル酸ガベキサート=FOYは、欧米では無効とされているが日本では推奨。具体的には2400mg/day。
・ 持続動注療法(蛋白分解酵素阻害剤・抗菌剤) ・・ エビデンス少ない。発症から72時間以内を推奨。
・ 血液浄化法 ・・ 主にCHDF。メディエイター(サイトカインなど)の除去が目的で、サードスペースの水分を血管に戻すためでもある。これも早期が望ましい。

□ 急性胆嚢炎 ・・ たいてい胆石がきっかけで起こる炎症。胆石だと右上腹部の痛みだけだったりするが、高熱まであるとこれの合併を疑う。絶食・点滴による入院加療が必要。

□ 急性虫垂炎=アッペ ・・ 小腸・大腸のほぼ間にある虫垂という、しぼんだ風船のようなものの中が閉塞(若年ではリンパ組織発達、高齢では糞石あるいは悪性腫瘍によるものが多い)して細菌性の炎症が起こって発症する。痛みは通常みぞおちから始まり、徐々に右下腹部へと移動。筋性防御(指で優しく押すと板のように硬い)・ブルンベルグ(指で押してパッと離したら、離したほうが痛い)があれば腹膜刺激症状ありと判断、炎症が虫垂の周囲に波及していると考えられる。なお熱は高熱とは限らない。しかし重症ほど高熱を呈し、?38.5℃以上、?白血球15000以上、?腹膜刺激症状のいずれか1つでも陽性なら手術適応と考えられる。

□ 急変 ・・ 急に状態が悪化すること。これを予測できるかどうかもドクターの力量に関係することが多い。

□ 給与明細 ・・ 給料の振込みと同時に配られる明細。たまに間違いがあるので、自分が当直した回数、残業時間など細かく確認しておく必要がある。

まず<基本給>があって<手当て>が追加され、<控除>で引かれて残りが手取り。

<健康保険料><厚生年金保険><所得税><住民税>←これでかなりの損失を食らう。場合によってはこれに→<食事代><医局費><保育代(託児所利用の場合)><駐車場使用料>までが引かれる。

 プラスになる<手当>としては<当直手当><超過勤務手当><残業手当><役職手当(医長とか医局長など)><住宅手当(医者の場合民間では半分は出すのが常識)><通勤手当(車出勤だとしても、交通の便がいいとこでは地下鉄・JR料金で計算されてしまうことが多い)>。

 余談だが、<退職金>を出せるかどうかが、そこの病院の経営状態を反映する・・というのは意外と知られていない事実。病院選びのポイントの1つである(んなこと、聞けんって!)。

□ 胸腔穿刺 ・・ 胸水を取るために、針で胸の外から刺して、注射液に取る。液は検査に出す。性状をすぐさま確認(混濁がないか)、細胞数、細胞分画、比重、pH、LDH、蛋白、Cl、ADA、糖、Hb(Hct)、CEA、ヒアルロン酸、補体などのほか、培養、細胞診も提出。リバルタ反応は過去の検査。

□ 強制換気 ・・ 通常は人工呼吸器のモードの1つ。患者の呼吸と関係なく、一定間隔で強制的に呼吸器から空気を送る。患者の呼吸が鎮静剤で鎮められていないと呼吸同士がぶつかる(ファイティング)ことがある。

□ 胸部X線写真=胸写=胸部単純=胸部X-P=Chest X-P=胸部レ線=ブルスト ・・ 胸のレントゲン。正面像と側面像がある。正面像だけだと見落とすこともある。

□ 胸膜 ・・ 肺をつつむ膜。肺炎が波及したり肺癌が浸潤すると胸膜炎を起こす。前者が細菌性胸膜炎、後者が癌性胸膜炎。胸膜生検は肺結核や中皮腫等の診断のため行う。

□ 胸膜炎 ・・ 肺の外、レントゲン、CT写真では通常写らない「胸膜腔」というスキマに炎症性の胸水が貯留した状態。原因は様々で、それによって「細菌性・・」「結核性・・」などと名づけられる。

□ 胸膜中皮腫 

 肺を包む胸膜にできる癌(厳密には胸膜中皮由来)。

 診断は胸水の分析と胸膜生検などによる。石綿曝露と関係の深い職業歴を有するものに多い(病原の8割がアスベスト)。石綿以外にも他の金属、有機物が関与することもある。

 喫煙で発症のリスクが高くなる。必然的に男性に多い。

 2つタイプがあり、
?限局性 ・・ 線維腫で良性
?びまん性 ・・ 悪性。

 通常『中皮腫』といえば?を指す。

組織別にみると、
?上皮型、?肉腫型、?混合型の3タイプがあり、?はヒアルロン酸を産生するので胸水でこれも調べる必要あり。

 血小板増加の例がしばしばあり、進行例では8割に認める。

 スクリーニングのための試薬<Human N-ERC/Mesothelin Assay Kit-IBL>が発売されている。中皮腫由来の蛋白<ERC=メソテリン>を検出。全身麻酔下で生検となるので実際の実用は困難(非保険適応)。

 治療は対症療法、つまり各症状に対する治療。現時点では胸膜・肺全摘術が最善の選択となるが、特に中皮腫は診断後の生存期間が平均9〜13ヶ月と進行が速く、治癒は難しい。

 治療の最近のトピックスとしては、現在臨床試験中の薬剤pemetrexed disodiumがある。シスプラチンとの併用とシスプラチン単剤を比較した試験では、前者が後者より生存期間が3ヶ月長かった。副作用が強いが今後期待されている薬剤だ。

□ 胸骨 ・・ 胸の中央にある長い骨。骨髄穿刺する場所の1つ。これのうしろに胸腺がある。なお骨折はレントゲン側面像で評価。

□ 共診=共同診療 ・・ 他の科にも協力してもらい、複数の科が患者を担当すること。1つの科に戻ると『共診解除』。

□ 胸水 ・・ 肺の外に溜まった水。胸膜の炎症か、それとも単にそこへ漏れた水か鑑別する必要あり。

□ 強ミノ=強力ミノファーゲンシー ・・ 以前からよく使用される「肝庇護剤(かんひござい)」。

□ 凝固異常 ・・ 先天的な凝固傾向による血栓傾向。脳梗塞などのリスクとなる。スクリーニングとして以下の項目があげられる→プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン?、β2-GP?依存性抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ヘモグロビン電気泳動、ホモシステイン、リポプロテイン、など

□ 虚血性心疾患(IHD)=急性冠症候群(ACS) ・・ 狭心症+心筋梗塞。

□ 給与明細 ・・ 給料日当日に手渡される明細。まず基本給が記載、それに超過勤務手当、当直手当、場合により通勤手当、住宅手当が足され、そこから所得税や健康保険料、厚生年金保険、住民税が引かれ、たいてい明細右下の「現金支給額」が手取りとなり振り込まれる。

□ 給料日・ボーナス日 ・・ 詰所は明るい雰囲気で包まれている。

□ キリップ分類 ・・ 急性心筋梗塞時の心不全の程度を表す分類。外来の時点で理学所見(心音・呼吸音)より判断する。それに対して入院の上スワンガンツ・カテーテルを鎖骨下あるいは頸部より挿入してその血行動態データから心不全の病態を分類して治療に生かすのがフォレスター分類。したがって区別して覚えておく必要がある。

□ 菌血症 ・・ 血液に菌が拡がった状態。臨床的には「敗血症」を起こす。

□ 禁忌 ・・ 決してしてはいけないこと。

□ 筋緊張型頭痛 ・・ 頭痛の半分を占める。頭・首周囲の筋肉の緊張から起こる痛み(頭重感)で、それには精神的な緊張が大きく関与する。痛みは慢性的にあり、特に昼から夕方までが最悪。薬があるとすれば抗うつ薬、筋弛緩薬だが、これだけではあまり効果はないと聞く。やはり日常生活でのリラックス・・フロで肩を揉んだり、パソコンを休んだり体操したり。こういった気分転換が重要のようだ。

□ 勤務表 ・・ 婦長が悪戦苦闘して毎月作り上げる、全ナースの出勤予定表。月末に出来上がる。デートの予定もこれに大きく左右される。

□ 勤務評定 ・・ 病院を回るごとに退職時に記載される、医師の通知簿(文章)。これらを参考に次の行き先が決まる。原則的に本人は見れない。
□ ぎっくり腰=急性腰痛症 ・・ 突然の腰痛が生じることの総称だが、誘引(物を持ち上げたりとか)がある場合とない場合がある。原因を特定できるのはわずか2割。ほとんどが画像で追求しにくい病態(関節の微妙な偏位、椎間板の変性、筋肉内の傷害など)であることを意味する。治療は安静とNSAID内服が基本。

□ 逆リモデリング ・・ 通常、<左心室の逆リモデリング>のこと。リモデリングは心室の心筋障害による圧・容量負荷によって、異常部が薄く正常部分が代償性に肥大したりして心肥大・心拡大をもたらす変化をいうが、逆リモデリングは治療によってそれが逆の方向に改善されること。
 これをもたらす治療はβ遮断薬とCRT(心臓再同期療法)だけ。ACEIは単に<リモデリング抑制>だけで、逆にするまでの力はない。

□ 逆流性食道炎 ・・ 胃の酸が食道に逆流して炎症を起こす。このため胸焼けなど不快な症状をもたらす。職場では「逆食(ぎゃくしょく)」と略される。

□ 空洞病変(胸部画像上の) ・・ 実はこれという定義がない。見た目で診断。周囲の壁が厚い場合、こう表現される。

・壁が厚さ。厚い場合→急性肺膿瘍、肺癌(原発・転移)、Wegener肉芽腫症など。
・単発か多発性か。
 単発性→原発性肺癌、急性肺膿瘍など。
 多発性→転移性肺腫瘍、Wegener肉芽腫症など。

□ 薬の説明会 ・・ MRが弁当を持参して行われる説明会。薬の新規採用が目的。説明会のあとホントに使用されるのかどうか上層部が決める。最近は効能効果よりも仕入値段がポイント。弁当はやたら高級チックなものが選ばれるので、家族に持って帰るドクターもいる。

□ 薬のみ ・・ 外来のドクターが外来に降りて来れなかったり、また患者が診察を希望せず処方のみ欲しいときに「薬のみ」扱いになる。病院によっては診察なしでも「受診扱い」となり結局診察料も取られる。細かい人は確認しておく必要がある。

□ クモ状血管腫 ・・ 顔面、頸・胸部にみられる中央隆起の発赤+周囲のクモ手様の血管拡張。なので押すとそのときだけ消える。性ホルモンのバランスの関与と考えられ、妊娠、肝硬変
のほか甲状腺機能亢進の場合もあるらしい。

□ クラビット ・・ 抗生剤でグラム陰性菌寄り。小児への投与禁忌。4錠分2で濃度の立ち上げを図りよりよい効果。最近ゾロ品が発売され、本家の第一製薬は焦っている。

□ クリアランス ・・ 洗い出しのこと。腎臓では血液が尿になる。その変換過程のスムーズさ、というニュアンスも。

□ クラリス、クラリシッド ・・ マクロライド系抗生物質の内服。通常はマイコプラズマなどのほか、慢性気管支炎の去痰目的に使用されることが多い。そのため使用も慢性になることが多く、耐性菌の出現が心配される。なおこの薬は小児科領域でも使用が頻繁で、耐性(効きが落ちてくること)はかなり深刻だ。
                 
□ クランケ ・・ ドイツ語で、「患者」。今はほとんど言わない。笑われる。老年医師、民間ナースではまだ根強い。

クリオグロブリン血症=Cryo血症

□ クリオグロブリン血症

クリオグロブリン=Cryoglobulin=Cryo ・・ 37℃(体温)より低い温度で沈殿し、37℃に加温で再溶解する免疫グロブリン。これが生成される機序は不明。健常人でも軽微ながら検出される。

○ Cryoの分類
 ?型(5-25%) ・・ 単クローン性のIgGまたはIgM ・・ 多発性骨髄腫、悪性リンパ腫
 ?型(40-60%) ・・ 多クローン性の免疫グロブリン、リウマチ因子活性をもつ単クローン性免疫グロブリン ・・ 本態性のものと2次性(B細胞性リンパ増殖性疾患、シェーグレンなど)
 ?型(40-50%) ・・ 多クローン性で、実際はIgG、リウマチ因子活性をもつIgMなど ・・ 自己免疫疾患、感染症
※ ?・?型は多クローン性なので<混合型>とも呼ばれる。

○ Cryo血症の分類
? 本態性 ・・ 原因不明 
   ※ 最近HCV感染との関連に注目が集まっている。?型Cryo血症はHCV陽性例の60-80%に検出される。さらにその35-60%に腎炎を合併する(?型膜性増殖性腎炎が主体)。
      臨床経過としてはHCV陽性の肝炎〜肝硬変の経過中に尿所見異常、低補体血症を認めCryoを検出されることにより診断されていく。
? 二次性 ・・ 骨髄腫、リンパ腫瘍性疾患、膠原病

以下、?型本態性について。

・ 腎外症状 ・・ 下腿好発の紫斑・潰瘍・関節痛、全身性血管炎、リンパ節腫脹、肝脾腫大、多発性神経炎。
・ 検査所見 ・・ HCV陽性。CH50↓(高度〜低度)、C3↓、C4↓(C3>C4)、リウマチ因子陽性。
・ クリオグロブリン検出 → 免疫電気泳動でモノクローナルかポリクローナルかを判別。
・ 腎生検 ・・ ?型膜性増殖性腎炎(8割)、膜性腎炎(1割)
  <光学顕微鏡>ループ内腔に管腔内血栓とよばれるエオジン好性塊状沈殿物。免疫染色ではIgM主体でIgG軽度。
  <電子顕微鏡>糸球体基底膜の内皮下に特徴的な繊維構造物。

○ Cryo血症の治療

温度への関連により、まず寒冷への曝露を避ける。

? Cryoの産生抑制
 ステロイド、免疫抑制剤、HCVに関してはIFN
? Cryoの除去
 クリオインフィルトレーション ・・ 分離した血漿を冷却、Cryoを析出し除去、血漿は温めて戻す。
 血漿交換
? 脾臓摘出
? 腎症そのものへの治療
? 二次性のものは原疾患の治療も

機序がそもそも分かっていないので、根本的な治療は未開発。

□ クリティカルパス=CP=クリニカルパス=ケアマップ ・・ 医療の標準化・効率化を図るための工程管理表。横軸が入院日数で、縦軸に検査・治療計画、安静度などを一括にして見取り図にしたもの。

□ クリンダマイシン=CLDM ・・ 嫌気性菌に対して使用される。誤嚥性肺炎、膿瘍などの独特な病態での使用に限られる。

□ クレーム ・・ 苦情。多くは患者から職員への苦情を指す。

■ クローン病 ・・ 原因不明(現在最も有力なのは、遺伝素因+腸管細菌由来抗原に対する粘膜免疫反応)。腸管の全層性炎症で口〜肛門すべてに病変起こりうるが病変はとびとび(区域的分布)。

 全層性炎症は線維化・狭窄・穿孔・膿瘍・ろう孔を形成し腹痛・下痢・下血など多彩な症状を引き起こす。慢性・再発性で10-20代に多く増加傾向。30年経過患者の9割が手術経験者で、再手術率は1年で5%。なお長期ほど癌の発症頻度は高くなる。

 小腸の検査技術が発達しており、カプセル内視鏡とダブルバルーン小腸鏡がトピックス。

 治療は内科治療(成分栄養剤など)が中心。インフリキシマブは既存治療に抵抗性のクローン病に81%もの有効性を証明。また2006年にはアザチオプリン(イムラン)が保険適応に。ただそれらの互いの位置づけが曖昧で混沌とした感がある。

 内科治療に不応性、または狭窄病変の場合、手術対象となる。


□ 偶発性低体温症 

 深部体温(直腸・膀胱・食道・鼓膜など)が35℃以下になった(なっていた)病態、というのが定義。

 泥酔者、ホームレスであることが多い。そもそもアルコールは体温調節機能を障害しやすい。一般的処置のほかに、できるだけ速やかに深部体温が34℃となるまで復温をはかる。

 この復温法には2つある。

? 保温法 ・・ 毛布・暖房であくまでも本人の体温調節機能による復温をめざす。

? 能動的加温法 ・・ 温熱器具(電気毛布、赤外線ヒーターなど)を用いた体外式と、42-46℃の100%酸素吸入・42-44℃の生食点滴(中心静脈経由)による体外式がある。体外式は深部体温30℃以下の重篤な場合に行う。

□ グラム陰性桿菌 ・・ 敗血症の原因となる恐ろしい菌。緑膿菌だと最悪だ。なんかの拍子に集団でエンドトキシンという毒を発する。これによる循環不全が「エンドトキシン・ショック」あるいは「敗血症性ショック」というやつだ。「デイ・アフター・トゥモロー」http://page.freett.com/aorekare/200411.htmという映画にも出てきた。

□ グラム染色 ・・ 痰の中の菌をある程度推定するために行われる染色法。ヘタだと時間がかかり手が紫になる。肺炎球菌に関してはこれだけで診断が確定することがある。コストがかかる検査なので病院経営には目障りな検査。

□ グル音 ・・ 腹部に聴診器を当てたら聴こえる、腸の動く音。聴こえなくて腹部が膨れていれば腸閉塞や急性腸炎を疑い、腹痛とキンキンという金属音があれば機械性の腸閉塞を疑う。

□ グレリン ・・ これまでは<成長ホルモン分泌を促進する胃由来(脳からも出ますが)のペプチドホルモン>という意義しかなかったが、最近の発見により、胃から迷走神経を介して中枢(延髄→視床下部が終着駅)へ空腹情報を伝達し、摂食亢進を促がす物質であることが証明された(2002年)。これに基づきカへキシア(6ヶ月以内に7.5%以上の体重減少)治療に関する研究が行われている。このグレリンは脂肪組織から分泌されるレプチンに拮抗する形で作動している。
■ 頸動脈狭窄症 

・ 頸動脈エコーで50%以上の狭窄があると脳卒中の発症率が上昇し、臨床的に問題となる(高齢者の3-8%)。狭窄の程度と脳卒中のリスクは相関する。また狭窄がある場合、同様に心筋梗塞のリスクが高くなり、ひいては心血管死のリスクが高くなる。CHS=Cardiovascular Health Studyによれば頸動脈の最大IMTが大きいほど心筋梗塞と脳卒中の発症率が高くなる。

・ また狭窄度のほかに輝度も重要で、これが低いと豊富な脂質それに不安定プラーク(破れ易い血栓)の存在を示唆する。実際、低輝度ほど脳卒中リスクが高い。

・ 診断されれば、生活指導(禁煙・節酒)、危険因子の加療を開始するとともに、高度狭窄ではバファリンなどの抗血小板薬やスタチン(プラーク退縮目的)を開始、適用によりCEA(頸動脈内膜剥離術)あるいはCAS(ステント留置術)を薦めることになる。

■ 血液検査伝票(以下、項目別)

≪ CBC=末梢血(まっしょうけつ)=末血(まっけつ)=血算(けっさん) ≫

□ WBC(白血球=ワイセ=白) 

 ↑・・9000以上は増加とみる。感染症で増加すること多い。あと脱水でも。それと急性心筋梗塞の急性期でも。増加していたら血液像も確認して、特にどれが増えているか見る。激しい感染症では左方移動(stabが増加)(ただし重症肺炎、ウイルス感染などでむしろ白血球減少する例あり)。ステロイドの副作用で増加する場合は好中球が増加し、好酸球は減る。好酸球はステロイドが効いたかどうかの指標に。

 ↓・・4000-5000を切ると減少とみる。パナルジン・ガスターなど薬剤の副作用を除外。特にパナルジンでは好中球が減少。極度の減少は感染を招くので入院、適宜G-CSF投与を行う(好中球数1500以下が適応)。

□ RBC(赤血球=赤) 

 ↑・・多血症を疑うが、果たして病的なものかどうか本を開いて鑑別。

 ↓・・貧血。再検するとしてタイプは?反射的にヘモグロビン、ヘマトクリット値に目をうつす。

□ Hb=ヘモグロビン=ヘモ=ハーベー

 ↑・・多血症か脱水の反映か。はたまた溶血か。溶血なら採取時のものか、病気のほうか。

 ↓・・貧血。MCVをみて小球性か正球性かなどの鑑別を(この2つの頻度が圧倒的)。前者は鉄欠乏貧血、後者は出血や腎性貧血、リウマチに注意。貧血の詳しい検査としてFe、UIBC(またはTIBC)、フェリチンを電話で追加。

□ Hct=ヘマトクリット=ヘマト 

 ↑・・脱水の反映か。
 ↓・・貧血。透析患者ではEPO製剤投与の指標としてよく使用される。胸水の検体で、血性かどうかの鑑別で測定することあり。

□ Plt(血小板=プレート) 

 ↑・・出血→貧血(Hb低下)に伴う反応性のものか。80万以上ならET(血小板増多症)か。

 ↓・・採取時の検体ほったらかしでの凝固によるものか。DICによるのか肝硬変か。劇症肝炎ではないだろか。いずれにしても再検。できれば動脈血で。DICらしければPT、APTT、AT?、Fbg(フィブリノゲン)、FDP、D-dimerを新たに至急採血。ITPを疑う場合もあるがPA-IgGは保険適応外なので配慮を。

≪ 生化学=生化学検査=生化 ≫

□ TP(トータルプロテイン=総蛋白) 
 ↑・・異常な増加は多発性骨髄腫の除外が必要→IgG、尿中M蛋白などを。
 ↓・・低アルブミンの反映か。

□ Alb(アルブミン) 
 ↓・・3.0を切ると低蛋白で、水分が血管から逃げやすくなり、胸水・腹水・浮腫ができる。じょくそうが治りにくい。ネフローゼではない?尿蛋白陽性なら1日尿蛋白を3日間。

□ T-Bil (総ビリルビン) ・・ 3.0を越えると黄疸→患者の顔・体黄色いはず。間接・直接ビリルビン鑑別。

□ AST=GOT ・・ ↑ ・・ 溶血か、肝障害か心筋梗塞急性期などで。肝硬変ではむしろ正常化に注意。

□ ALT=GPT ・・ ↑ ・・ 肝障害などで。インターフェロン治療開始・効果判定の指標になる。肝硬変ではむしろ正常化に注意。
※ この2つがトランスアミナーゼ=トランス。IVH管理では
200IU/Lまでは上昇することがあり、許容範囲とすることも。

□ ALP=アルカリフォスファターゼ=アルフォス 
 ↑・・高ければアイソザイム提出。肝障害か骨由来か胆道系炎症か。持続的上昇は肝細胞癌に注意。小児では骨の発達でむしろ高いのが普通。

□ r-GTP=ガンマ 
 ↑ ・・ 肝機能でこれだけ高いのなら酒の飲みすぎか食べすぎであること多い。肝障害、胆道系炎症でも上昇。

□ LDH 
 ↑ ・・ これ1つの上昇では何も診断できない。幅広い疾患で上昇、アイソザイムを提出。溶血、血液疾患、心筋梗塞急性期などで。悪性腫瘍、肺線維症などの活動性を反映。

□ CPK 
 ↑・・筋肉の炎症・破壊が由来。主に骨格筋由来か心筋由来かの鑑別のために、アイソザイムを提出。前者なら筋肉注射後、激しい運動後、筋炎、筋の障害、スタチン副作用、横紋筋融解、後者なら心筋梗塞、心筋炎、心マッサージ後など。

□ AMY=アミラーゼ=アミ 
 ↑・・膵臓あるいは唾液腺由来。高ければアイソザイムで鑑別。膵臓タイプは膵炎・膵癌・合流異常などで上昇、唾液腺タイプは流行性耳下腺炎などで上昇。ただしその場合は合併症の膵炎でアミラーゼ上昇かもしれず。膵炎では血中から早期に消えてしまうのでリパーゼも調べる。膵炎の重症度を反映しない。

□ ChE(コリンエステラーゼ)
 ↑・・栄養過多であること多い。太りすぎか?
 ↓・・栄養不良を示す。この場合Alb、T-Cholも下がってないか確認を。

□ T-Chol=TC (総コレステロール=総コレ)
 ↑・・過食やネフローゼ、甲状腺機能低下で。たまに家族性。正常は220mg/dl以下だが施設ごとの基準値を参照。
 ↓・・肝硬変や重症長期病変で栄養状態が悪化。薬の効きすぎ。

□ TG (中性脂肪=トリグリセライド=トリグリ) 
 ↑・・つまり高中性脂肪。酒の飲みすぎか食べすぎか。たまに家族性。
 ↓・・栄養不良か薬の効きすぎか。

□ LDL-C(悪玉コレステロール) 
 ↑・・動脈硬化の危険因子あり、とみなす。高脂血症の項目で一番重要。高ければ内服で下げる必要あり。

□ HDL-C(善玉コレステロール)
 ↓・・動脈硬化の危険因子あり。

□ BUN=バン 
 ↑・・腎機能悪化。脱水、出血、(高カロリー輸液の)アミノ酸減らす必要あり。

□ Cr 
 ↑・・腎機能悪化。薬剤性(ARB、ACEI、ガンマグロブリン製剤、抗生剤特にカルバペネム、バンコマイシン・ハベカシンなど)ではないか。ほか医原性のものではないか。あるいは貧血・心不全などから起因する循環不全→腎前性腎不全ではないか、というところから疑っていく。

□ UA(尿酸) 
 ↑・・8以上は積極的治療の適応。上昇は痛風と尿酸結石を促す。酒・肉が多すぎ、腎不全に伴うもの、悪性腫瘍によるものなど。

□ Na/K/Cl ・・ ナトリウム+カリウム+クロール=ナトカリクロール。つまり電解質。

・ ナトリウム 
 ↑・・脱水
 ↓・・SIADH、心不全、ナトリウム不足→鑑別のために心不全の除外のための検査、血清浸透圧・尿中浸透圧、尿中電解質を提出。ADHはSIADHでも正常のことありあまり意味無し。ナトリウム110まで下がれば急変の可能性が出てくる。意識障害・痙攣・呼吸停止の可能性を説明。

・ カリウム=カリ 
 ↑・・単に検体の溶血か。腎不全か。脈は減ってないか確認。ACE、ARB、アルダクトン投与によるものかも。
 ↓・・利尿しすぎ。点滴にカリウム不足。インスリンで血糖下げすぎた反映。ジギタリス中毒起こしやすい。

□ BS(血糖) 
 ↑ ・・ まさか点滴側からの採血とか?を除外。ホントに高い→内服またはインスリンで下げる必要あり(IVH管理ならスライディングスケールの指示)。持続点滴見直し変更。不摂生、内服コンプライアンス悪い、膵臓病変、炎症性疾患による耐糖能障害の現われとか。

□ カンジダ抗原 
 ↑ ・・ 真菌感染症のため。疑陽性例あり。高ければ翌日β-Dグルカン測定。

□ CRP(炎症反応) 
 ↑ ・・ 炎症。しかし炎症を敏感に反映するのは熱>白血球>CRP>>ESR。大まかには1日遅れて上昇、ESRは1週間遅れる。

≪ 外注検査 ≫
 病院内でやるには手間(機器のコスト)がかかるので、外部委託して測定してもらう。結果が戻るのは遅くなる。

□ AT-?=アンチトロンビン? ・・ 凝固制御因子の1つ。トロンビンに結合し中和し凝固・血栓を抑制。DICでは当然活性は低下する。肝臓で産生されるので肝不全などでも影響を受ける。なお中和して出来たもの(TAT=thrombin-AT?complex=タット)はDICや血栓傾向の反映といえる。DICでAT?の活性が低下している場合はAT-?製剤の適応となる(その際へパリン投与下が条件)。

□ β-Dグルカン ・・ 真菌感染症のより確実な検査。月2回を越えると保険上キツイ。

□ BNP ・・ 慢性心不全の病態把握のため行う。高ければ画像検査で前回と比較する。スクリーニング目的で多数に行うと、まとめて削られる可能性あり。肺炎など心疾患以外でも頻脈の影響で上がってしまうので、そういうときの測定は無意味。なおアクトス投与による上昇例あり。

□ HbA1c=エーワンシー ・・ 糖尿病のここ1−2ヶ月推移を表す、いわば通知表。ふつうは毎月1回測定。10%を越えると網膜病変の合併頻度が増す。貧血で低下してるかも?

□ KL-6 ・・ 肺線維症の活動性を表す。SP-D、SP-Aも表すが保険上はどれか1つ。

□ EPO=エポ ・・ 造血因子で腎臓から出る。腎性貧血では増加するが、正常の例もある。

□ FDP ・・ 血管内で産生されたフィブリン産物を反映。つまり凝固系をほぼ反映(フィブリノゲンの分解産物つまり副産物までも測定するので)。このうち安定化フィブリンに線溶系が作用して分解されたプラスミンの反映がD-dimerで、こちらのほうが凝固をいっそう反映することになる。注意すべきはこれら2つはDICの重症度を反映しない。しかもDICの存在を必ずしも示すものでもない(むしろ血栓症などの経時的変化で役立つ)。

□ RAST ・・ アレルギーの具体的な抗原検査。抗原が13-15項目セットになっているが、別にランダムに数個選んでもかまわない。抗原(食べ物や花粉など)はすべてで150種類もある。絶対的な検査ではない。料金が高すぎ。

□ RIST=IgE定量 ・・ アレルギーで増加。

□ IRI ・・ インスリン濃度。肥満で空腹時のこれが高ければ、インスリン抵抗性ありと印象づけられ内服選択の参考になる。

□ AFP=アルフェト ・・ 肝細胞癌で上昇。肝障害があれば1回は測るのは人情。
 
□ CEA ・・ 腺癌腫瘍マーカー。喫煙でも上昇。

□ CA19-9 ・・ これも腺癌腫瘍マーカー。

□ PSA ・・ 前立腺癌マーカー。前立腺肥大でも上昇。上昇があれば、その後の運びは責任をもって。

□ シフラ ・・ 肺扁平上皮癌で増加。少しの上昇でも異常。

□ PRO-GRP ・・ 肺小細胞癌で増加。

□ PT ・・ DIC疑い・評価のとき(かなり重症のDICを意味する。つまりDICで異常示すならかなり重症。軽症DICでは増加しないので注意)、肝硬変、劇症肝炎で測定。ワーファリンの指標として測定(トロンボテストでも可だが、本来なら指標の基準があるPT-INRを優先すべき)。

※ 肺癌のスクリーニングは最近ではCEA+シフラ+PRO-GRPで行う傾向。
※ 膵臓癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌のスクリーニングはCEA+CA19-9でまず行われること多い。
※ 疑っての測定しすぎ、はせいぜい指導を受けるだけだが、心の片隅で疑ったのをまあいいかと放置、で済ますのはもってのほか。 

目の移し方の1例。

・ まず白血球→CRP→上がっていれば血液像を確認。

・ ヘモグロビン→低ければ→検体の溶血を疑い→AST、LDH、Kを確認→高ければ再検査。なおヘモグロビン低下(バイタルは無事か?)時に血小板増加→反応性と考え便潜血などで消化管精査、血小板減少→血液像確認。薬剤副作用疑う、マルク検討。

・ TP異常に高ければミエローマ疑いホントに疑わしければ電気泳動など、教科書見て提出。

・ Albみて<3なら、栄養不足かこちらが足してないだけか。ネフローゼないか。じょくそう治りにくい。レントゲンで胸水ないか。ついでにやはりT-Chol、TG、ChEも下がっているのか。

・ AST・ALTをセット、ALP・r-GTPをセットで見る。以前と比べてどうか。前2者対後2者、どっちの上昇が顕著か。後者優勢なら胆道系炎症か。なお胆道系炎症がおさまるときは後2者が遅れて下がってくること多い。

・ AMY上昇→膵炎の証拠がほかにあるか。炎症所見なしでこれだけ高いならやはり気になるので腹部エコー・CTを。合流異常かもしれないが。リパーゼ・腫瘍マーカー(1月につき3項目までで、同一項目は3ヶ月に1回間隔なら許されるとされている)追加は主治医しだい。

・ BUN/Cr、上昇ならどっちが優勢か。BUN上昇顕著なら脱水・出血か、IVHならメニュー見直し→ヘモグロビン見直し。両方同様な上がりなら腎臓か→尿出ているか。最近造影剤使ったかところでカリウム上がってないか→再検でやはり高ければモニター装着。

・ もう一度、伝票を素直に、順番にみていく。

※ 数項目を連動させて見て、自分なりの流れを作る。

□ 血管径 ・・ 血管の断面で、一番長いところ(長径)と、それに直行する径(短径)。

□ 血管抵抗=末梢血管抵抗 ・・ 心臓から血液を受け取る多くの血管の弾力の総合。(動脈硬化などで弾力が弱ると)血管の壁の抵抗が高くなり、そこに当たる血液の圧力は高い、つまり(収縮期)血圧は高くなる。よって末梢血管抵抗は心拍出量とともに、血圧を決定する因子の1つである。

□ 結果待ち ・・ 検査結果(採血・画像)などの。
 

□ 血球貪食症候群=hemophagocytic syndrome=HPS ・・ まれな疾患で、小児に報告例が多い。感染・腫瘍・膠原病(とくにSLE・成人Still病)などにより活性化されたマクロファージが血球・血小板などの血液構成成分を貪食、サイトカインと相互作用してあちこちの臓器障害をきたす。

http://www.f-teisinhp.japanpost.jp/HOMEPAGE/profile/profile/ProfileNo.30.pdf診断基準など。

※ 原発性のものもあり乳児発症で家族性(劣性遺伝)。
※ 成人では半数が悪性リンパ腫によるもので、特別にLAHS=lymphoma-associated hemophagocytic syndromeとよばれる。また1/3がウイルスによるもので、これも特別にVAHS=virus-associated hemophagocytic syndromeとよばれている(小児ではEB、成人ではEB、CMVが最多)。

 実際の診断は骨髄標本の採取から開始して、リンパ球の単クローン性増殖を証明して、組織型に応じた治療を検討。

 治療の基本は
・ ステロイド・免疫抑制剤→高サイトカイン血症に対して
・ 輸血・造血剤→各種血球減少に対して
・ 抗生剤→感染に対して
・ VP-16→症状悪化の場合(安易な使用は二次性白血病を招く)
                    
□ 血胸 ・・ 外傷などで肺の外の「胸腔」に血液がたまって肺が圧迫された状態。空気もいっしょにたまると「血気胸」。

□ 血小板 ・・ 血を止める働き。正常値は各検査法で異なるが、大まかには15-30万/μL。1-2万を切ると出血傾向は必発で、40万を越えると血小板増加症とよばれる。なお血小板の増加は出血によるヘモグロビン低下への反応性の変化かもしれない。

□ (多発性)結節影 ・・ <結節>とはふつう8ミリ以上のサイズをさす。これが2個以上あれば<多発性結節影>と呼ぶ。引き続き空洞化・石灰化の有無をみる。なお<結節影>より小さいのは<粒状影>。
 多発性結節影を呈する疾患
・ 転移性肺腫瘍(最多)・・両側が多い。
   粟粒パターン→甲状腺癌・肺癌など 
   大結節→腎癌・睾丸腫瘍・肉腫など
   石灰化もあり→卵巣癌・乳癌・睾丸腫瘍・骨肉腫・軟骨肉腫
・ 肺胞上皮癌 ・・ 多すぎる痰の細胞診で確定。
・ 悪性リンパ腫 ・・ 肺門・縦隔リンパ節腫脹もあるはず。
・ ハマルトーマ ・・ 単発でなく多発性のこともあり。
・ 肺結核 ・・ S1,2,6に好発。
・ 非定型抗酸菌 ・・ 中葉・舌区に好発。
・ 細菌性肺炎 ・・ ブ菌の血行性肺炎による場合。
・ アスペルギルス ・・ 空洞を伴う。
・ 肺動静脈ろう ・・ 球状で分葉、辺縁明瞭で内部均一。
・ 塵肺
・ アミロイド−シス
・ 日和見感染 ・・ 免疫抑制患者の場合、あらゆる細菌・真菌で多発結節影を呈する可能性がある。

□ 血栓溶解剤 ・・ 心筋梗塞などに使用される、血栓を溶かして血管の閉塞を解除するための薬。あくまでもそこまでの作用で、動脈硬化による狭窄には当然作用しない。

□ 研修医=ノイヘイレン=ノイヘ ・・ 大学病院・教育病院では最下層の人種。しゃあない。しかし医者は誰もが経験する。ただし厚生省とか官僚?になる奴は別。

□ 献血車のバイト ・・ 血圧測定のポチッとな!のみがドクターの仕事。割安(1-2万)で拘束時間も長く(朝〜昼食自前〜夕方遅く)、当然研修医に回ってくる。

□ 研修日=バイト日 ・・ ドクターの場合、どっかへ研修に行くという意味ではなく、臨時バイト日など名目の週1回平日休み。もちろんバイトをしようが休もうが個人の自由。民間病院では当たり前にある。常勤先の院長にとってはデキモノでしかない。

□ 『検討しておきます』 ・・ 学会での逃げ言葉。質問を一蹴。「あとでまたお送りします。先生はどこの・・?」とか律儀で容量の良い輩もいる。

□ 検尿 ・・ 外来初診時に儀式的に行われる、基本的な検査。健診では糖・蛋白の有無が特に問題となる。 
□ 劇症肝炎 

 定義では「初発症状出現から8週以内にプロトロンビン時間が40%以下に低下し、昏睡?度以上の肝性脳症を生じる肝炎」。

 さらに?急性型(上記期間が10日以内)、?亜急性型(上記期間が11日以上)に分けられる。

 慢性肝炎の急性増悪との鑑別を要する。

 なお劇症肝炎でプロトロンビン時間が40%以下→昏睡に至るまでの期間は6割が4日以内なので、早期の決断(専門機関への紹介)が必要だ。
 もっと具体的にはプロトロンビン時間が60%以下に下がる以前にコンサルトすべきとされている。

 なお劇症肝炎の定義までいかない状態・・肝性昏睡?度の場合は「急性肝炎重症型」とよばれる。この場合も3割は?度の昏睡に進むので、劇症肝炎の予備軍的存在である。また、劇症肝炎の定義よりも発症が遅れたケース、特に症状出現が8-24週の場合は遅発性肝不全(LOHF ; late onset hepatic failure)と呼ばれ予後不良。

 これら予後不良である劇症肝炎、LOHFの診断がついた場合はIVH管理とし(アミノ酸は投与してはいけない)、全身管理のほかに人工肝補助療法<血漿交換+血液濾過透析(循環動態不安定なら持続的透析のCHDFで開始し、それでも不十分なら高流量で短期型ののHDFへ)>を開始し、同時に死亡が予測された場合の生体肝移植についても考慮(http://www.asahi-net.or.jp/~uz5m-ysb/geki11.htmlにガイドラインあり)すべきとされている。

□ ゲイン ・・ 超音波検査で、画面調整のうちの「明るさ」調整。上げると明るく、下げると暗くなる。調整して検査開始!

■ 外科くずれ ・・ 外科から内科に<自称>転向した医師。小さなオペができる消化器内科医のケースが多い。そのためか大阪では(他も?)消化器内科医が多い。あまりいい言葉でないため、陰で言われるか本人が自己防衛的に使う。

□ 下血 ・・ 肛門からの出血。チョコレートのような黒っぽいのはタール便で胃・十二指腸の可能性。真っ赤な出血は大腸あるいは肛門かも。

□ 下痢 ・・ 便秘の反対。単なる下痢ならロペミンなど止痢剤を処方。高熱があれば腸炎のこともある。特に細菌性腸炎が疑われる場合は止痢剤は使わない。菌を封じ込めてしまうので。

□ ゲンタシン=ゲンタ ・・ 抗生剤の塗り薬。

□ 原発性アルドステロン症 ・・ 2次性高血圧の数%を占める。現状のスクリーニングではまず 安静臥位30分後に採血(レニン=PRA・アルドステロン=PAC)、それぞれ上昇あれば(しかもPAC/PRAが20以上なら本症が疑わしい)フロセミド2時間立位負荷試験を行い、レニン低値例では入院後精密検査を行う、といったもの。

 分類では、

? 片側副腎病変

・ アルドステロン産生腺腫=aldosterone producing adenoma=APA ・・ 腫瘍のサイズとPACとの相関はない。
・ 片側過形成=unilateral adrenal hyperplasia=UAH
・ 片側副腎多発結節性
・ アルドステロン産生副腎癌=aldosterone producing carcinoma=APC

? 両側副腎病変

・ 特発性(両側副腎過形成)=idiopathic hyperaldosteronism=IHA
・ 原発性副腎過形成
・ 糖質コルチコイド奏効性・・遺伝子異常( 常染色体優性遺伝)による。

? その他
・ 家族性
・ アルドステロン産生副腎外腫瘍

これらを総合して、主なものだけ分類すると
?アルドステロン産生腫瘍(腺腫または癌腫)
?特発性アルドステロン症(片側か両側)
?糖質コルチコイド奏効性アルドステロン症
?アルドステロン産生副腎外腫瘍

・ 超音波・CTで過形成・腫瘍の鑑別を行う。副腎シンチはなるべく前投薬(デキサメタゾンによりACTH抑制)の上施行する。腫瘍・過形成の疑い濃厚で、確定までいかない場合(※)は左右の副腎静脈血中のアルドステロンを測定する(選択的副腎静脈採血法=副腎静脈サンプリング)(♯)。病側では健側の10倍以上を示し、両側過形成では双方とも高値である。
※ CTによる副腎病変検出可能な大きさは7ミリ以上。6ミリ以下は不可能。
♯ 最近ではACTH負荷前後の副腎静脈採血が最も有用だという意見もある。

・ 腺腫・癌腫と確定すれば内視鏡下で摘出。手術しないならまず抗アルドステロン剤の内服。血管障害進行例ではオペ後も高血圧は持続する。

・ 過形成例は、まず抗アルドステロン剤から降圧剤を選択・追加。

糖質コルチコイド奏効性アルドステロン症の場合はデキサメタゾンを継続投与。

※  初期にはカリウム異常がみられない場合が多いので注意。 

□ ゲフィチニブ 

 商品名<イレッサ>が有名。EGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害剤。

 肺癌のうち非小細胞癌の一部(女性、腺癌、非喫煙者で特に)に劇的な効果。

 ところが非小細胞肺癌に無差別投与した場合、生存期間の延長が得られなかったというデータが出てしまい、一時期この薬剤の存在意義そのものに疑問が持たれた(ISEL試験)。http://www.npojip.org/sokuho/050118.htmlここまで批判している人も。

 だが学会関係者は前もっての有効性の検討を行うことで有用性を証明できる、と考えている。いわゆる「個別化医療」の実現だ。

 最近のトピックス↓

 著効例の8割に特徴的な遺伝子異常が見つかった。特定されたのはEGFRチロシンキナーゼドメインで、中でもEGFRシグナル伝達系を増強するという部位。これのあるなしで感受性の予測をする期待もあるが、この変異がない例でも薬剤の有効症例があり、絶対的なマーカーとは言い難い(なので表現上は特異的でなく、特徴的)。そこで最近では遺伝子発現解析(ゲノム上にある20000以上の遺伝子の中から!)を用いた感受性予測の試みがなされている。

※ EGFR=上皮成長因子受容体。ゲフィチニブの標的となる分子。
※ EGFRチロシンキナーゼ:EGFRシグナル伝達系(癌増殖命令の伝言ゲームのようなもの)の初回の段階に位置する。
※ EGFRシグナル伝達系:EGFがEGFRに結合するとEGFRが二量体に変化して細胞増殖へ向けた伝言ゲームが開始される。

 抗癌剤投与では初回治療(ファーストライン)と既治療(セカンドライン、サードライン・・)に分けられるが、ファーストラインで有効だったとの証拠はない。だがセカンドラインでの単独投与の有効性が証明されている。
□ 高圧的 ・・ 有無を言わさない、生意気で圧倒的な態度。よくあるのは目上が目下に取る、極端な態度。攻撃的な意味でも使用。

□ 抗HIV薬 

 種類は大きく2つ。

?逆転写酵素阻害剤(さらに核酸系<DNA合成時に巻き込まれ阻害>=NRTIと非核酸系<逆転写酵素にひっつき阻害>=NNRTIとに分かれる)

?プロテアーゼ阻害剤<HIV蛋白質を切り取る役目のプロテアーゼを阻害>=PI。

?の2つと?を加えた合計3つは3本柱といわれている。

※ 逆転写酵素:HIVが細胞に侵入したあと自己の遺伝情報をRNA→DNA変換する際に必要なもの。

 1997年より、これらを複数組み合わせた多剤併用療法(HAART=Highly Active AntiRetrovial Therapy)   :   現実的には3-4種類で、基本的にはNRTIから2つ、NNRTIかPIから1つ以上選ぶのがスタンダード  :   が始まってからは、死亡者数が激減、社会復帰例も増えているという。この3-4種類という多さには、単剤だと変異をきたしやすいウイルスのその確率を減らして、耐性を防ぐという意味がある。

 さらに第4の柱として期待されているのが、現在第?b臨床試験まで進んでいる「AK602」だ。細胞表面でウイルスが本来結合する、ヒト側受容体CCR5という蛋白部位をこの薬剤で先に結合させ、ウイルスを侵入口でシャットアウトするというもの。上記3種類とは全く違う内容の薬だ。

□ 講演会 ・・ 通常はMRがスポンサーとなり、教授ら上層部の人間による説明・講演が行われる。スポンサーがいるため、内容はそれを考慮した上でのものになりがち。従って、安易に鵜呑みにすべきでない。

□ 抗核抗体 ・・ 膠原病のときなどに上昇する、自己抗体。陽性でも意義が不明のときもある。

□ 高カリウム血症 ・・ カリウム(K)が血液中に増加した状態。極度に高いと徐脈・心停止すらきたす。Kを含む高カロリー輸液は中止し、具体的にはKN1AなどのKフリー輸液+アミノ酸+50%TZなどの組み合わせにする必要に迫られる。職場では「高カリ」と略される。心電図異常を認めるような例では早急に下げる必要がある。グルコン酸カルシウム(=カルチコール)静注、G-I(グルコース・インスリン)療法・・10%TZ 500mlに対してレギュラーインスリン(速効性。名称に「R」がついてるもの、たとえばノボリンRやヒューマリンRなど)10単位を混注して2-3時間投与、重炭酸のほか陽イオン交換樹脂など。

□ 高カルシウム血症 ・・ カルシウムが高いかどうか評価する前に、できればアルブミン値で補正すべき(簡易法:血清カルシウム値+4−アルブミン値)。14mg/dlを超える場合は急死の可能性あり、急いで治療する。高カルシウムといえばQT延長が有名だが、16mg/dlくらいにまでならないと出現しないそうなので、こればっかりアテにしてもいけない。治療は?脱水の補正、と?カルシウムの排泄促進の2本柱。よって生食の大量投与(200-400cc/hr)と利尿剤投与が原則治療だ。一般にカルシウム13mg/dl以下は生食大量のみ、それ以上は利尿剤を追加すべき。

□ 高カロリー輸液=IVH=TPN ・・ 栄養状態の悪い人、特に低アルブミン血症の冠患者さんに使用される。手・足のオモテの浅い血管からする「末梢輸液」とは区別される。高カロリーの
場合は?頸部、?鎖骨上または下部、?そけい部 のいずれかから投与。深い静脈からいくので。末期的な状態での投与は逆に一般状態の悪化を招くとされている。
 

■ 高血圧(HT)=ハイパーテンション=ハイパテ 

 血圧が高い人をさすが、病院でだけ血圧が高い「白衣高血圧」に注意。自宅には1台血圧測定器が必要。噂では1年で壊れるらしいが。手首で測定する器械は心臓から遠いのでやめとこう。

 高血圧の9割は本態性高血圧といって、これといった原因がないもの。残り1割が何らかの原因がある二次性高血圧と呼ばれるもの。

 二次性のうち最も多いのが原発性アルドステロン症で、クッシング、褐色細胞腫が続き、いずれも副腎病変で外科治療による治癒が可能。見逃さないため、高血圧患者ではレニン・アルドステロン・コルチゾールを測定すべき(なるべく午前中で安静臥位30分後以降)。

※ 日本高血圧学会による「高血圧ガイドライン2004」における降圧目標
? 高齢者:140/90mmHg未満
? 若年・中年者:130/85mmHg未満
? 糖尿病・腎障害患者:130/80mmHg未満

※ 脳梗塞急性期に関して ・・ 生体のストレス反応として血圧は上昇、1-2週間で正常に戻ってくるパターンが多い。

※ ガイドラインは年々変遷がみられており、最新ではJSH2004をhttp://www.cardiovascular.jp/jsh.html参考に。

※ 最近では欧州高血圧学会(ESH)のガイドライン2007年版がトピックス。合併症に新たにメタボが追加、また腎疾患も追加。治療ではα遮断薬が第一選択から外され、β遮断薬は心血管イベント抑制効果が弱いと評価が落ちたもののかろうじて(第一選択に)残った。

□ 高血圧緊急症

 JSH2004という最新の基準では、病気別に使用が推奨される薬剤が決められた。いずれも持続静注。
・ 大動脈解離→ニトログリセリン、二トロプルシド、ニカルジピン(以上の3つはβ遮断薬も併用)、ジルチアゼム。
・ 急性心筋梗塞→ニトログリセリン、ジルチアゼム
・ 急性左心不全→二トロプルシド

※ 

● ニトログリセリン:ミリスロール、ニトロール

● ニカルジピン:ぺルジピン
    以下のときは禁忌! → 頭蓋内出血で止血完了してない場合の出血助長、脳卒中急性期の頭蓋内圧亢進がある場合
 
● ジルチアゼム:ヘルベッサー

□ 脳梗塞急性期における抗血栓療法 

? 血栓溶解療法

・ 経静脈法 ・・ 発症3時間以内の超急性期t-PA投与で予後改善、つまり有効というデータが海外で出たわけだが出血合併症が多く、投与量や投与基準などが明確でない。

・ 経動脈法 ・・ 一部の施設でt-PAの選択的投与(つまりカテーテル経由で病変部のみを狙った)の優れた有効性が報告されているにとどまる。

? 抗凝固療法

・ ヘパリン ・・ 様々な研究の結果、無効であることがわかっている。ただし凝固異常疾患があるとか心疾患があって、血栓予防が必要なケースは別。

・ 低分子ヘパリン ・・ ヘパリンより出血の副作用は少ない。が、有効性は証明されているわけではない。

・ アルガトロバン ・・ 選択的抗トロンビン薬。ヘパリンとは違って血栓成分を狙って作用するので出血性の合併症が少ない。発症48時間以内の脳血栓(特に皮質梗塞)に有効。7日間投与。

※ 保険適応ではないがt-PAを使用した場合、24時間以内は抗凝固療法は控えるべきとされている(脳卒中ガイドライン2004)。

? 抗血小板療法

・ オザグレルナトリウム・・ 選択的トロンボキサンA2合成酵素阻害薬。トロンボキサンA2は血小板凝集作用と血管収縮作用をもつ。これを阻害することで抗血小板作用、血流増加作用をもたらす。発症後の運動麻痺の改善が証明されている。

・ アスピリン ・・ 160-300mg/dayを発症後48時間以内投与に開始すれば再発↓、予後↑という結論。出血の合併症も少ない。

・ 抗GP?b/?a抗体 ・・ 血小板膜蛋白の抗体。まだ認可されていない。 

□ 抗コリン薬 

 吸入薬の1つ。従来のものは1日3〜4回と面倒くさく効果もあまり期待されてなかったが、2005年発売のチオトロピウム、つまりTiotropium bromide(スピリーバ)はかなりの効果だ。機序的にはムスカリン受容体であるM3を阻害する。吸入30分後に気管支拡張、しかも1回の吸入で24時間効果が持続、3ヵ月後での長期連用でも効果に衰えがない。副作用もこれといってなく、呼吸器科医が久しぶりに褒めたたえた薬。

※ 抗コリン薬はCOPDの治療に特に期待できる。というのは気道収縮に関与するのは喘息では炎症由来の化学物質である一方、COPDでは迷走神経由来のアセチルコリンのほうだからだ。

※ ムスカリン受容体にはM1,M2,M3の3つがありM3阻害により気管支平滑筋の拡張がおこる。従来の抗コリン(アトロベント、テルシガン)は選択性がなく、新薬はM3のみを選択阻害する。

□ 高山病 ・・ 以下の3つに分けられる。進行すると?→?→?へと進んでいく。登山開始12-24時間前からアセタゾラミド(ダイアモックス)を1日1-2回内服させるのも予防の1つ。

? 山酔い ・・ 頭痛と、以下の症状から1つあればそう→嘔気、食欲不振、倦怠感、脱力、めまい、立ちくらみ、睡眠障害。
? 高地肺水腫 ・・ 息切れや呼吸困難が出現。
? 高地脳浮腫 ・・ 意識障害やヨッパライ歩行まで加わった場合。

□ 抗CCP抗体=抗環状シトルリン化ペプチド抗体 ・・ 関節リウマチに特異的な抗体で早期診断に有用。RF(リウマトイド因子)のリウマチへの特異度は75%と満足すべきものではなかったが、本検査では95%以上とかなり高い(感度は80%これはRFと同様)。特にRF陰性段階でのリウマチも本抗体陽性例があり(30-50%)、早期発見に向く。実際これが陽性であれば骨・軟骨破壊が進行することが分かっている。ここ1年され始めた検査。リウマチ疑いだがRF陰性例の患者は測定してみる価値が大いにあり・・と思ったらまだ保険適応になってないので注意。

※ 関節リウマチに関連する遺伝子由来のPADI酵素には、アルギニン→シトルリン変換をする働きがある。このシトルリン化蛋白を認識する抗体が本抗体であると分かった。

□ 構語障害=構音障害 ・・ 口がもごもごして何を言っているのかシドロモドロの状態。脳卒中による後遺症の場合こう表現。言語リハビリ医師がいるかどうかがポイント。あまりいないが。

□ 好酸球(こうさんきゅう) ・・ 白血球の一部。アレルギー・喘息で増えることが多いが、寄生虫疾患など他にも原因は多い。

□ 高脂血症 ・・ 高コレステロール血症、高脂肪症の総称。正常値はコレステロールの場合220mg/dl、中性脂肪では150mg/dl。

□ 好中球 ・・ 白血球の中の1つ。細菌感染から身を守る。少ないと細菌感染にかかりやすい。減少するのは重症の肺炎、
抗癌剤の副作用などで。またチクロピジンの副作用で減少することも。好中球を増やすための注射がG-CSF。

□ 抗生剤=抗生物質=AB剤=抗菌剤 ・・ 菌を殺す目的の内服または注射剤。薬局では売ってない。肺炎や尿路感染などで使用。ペニシリンアレルギーに注意。使いすぎで最近出てきた手ごわい菌が「耐性菌」。
□ 拘束型心筋症=RCM=restrictive cardiomyopathy ・・ 文字通り、心臓の血液を送り出す部分である心室(硬い心室:stiff ventricleと表現される)の拡張制限が生じる。不思議と収縮力は正常のことが多い。まれな疾患で受け持ったことがない医師が大半。
 原因不明のものもあれば、2次性(熱帯では心内膜心筋線維症、それ以外の地域ではアミロイド−シスが最多)のものもある。
 拡張不全が病態のため収縮力を上げるための強心剤などは無意味で、利尿剤による治療が主体となる。塞栓症頻度が高いので予防投与が必要。

□ 喉頭鏡 ・・ 人工呼吸器をつける前の段階で、挿管チューブの入り口である声門を観察するための道具。ライトの点灯(電池切れのあるなし)は日頃から気をつけておくべき。

□ 高熱=ハイ・フィーバー ・・ 通常は38.0℃以上をさす。39℃もの高度な高熱の場合は、腎盂腎炎、インフルエンザ、膿瘍、病棟ではMRSAもさらに念頭に置く。

□ 後鼻漏(こうびろう) ・・ 鼻水が鼻から出ず、ノドの方に流れてきて咳き込みの原因となる。なので痰による咳だと間違えやすい。原因として副鼻腔炎が最重要。寝ている間に気管に分泌物が貯留し、起床時または昼間時に咳がしつこく出だす。夜間は咳反射が低下しているため割と平気。逆流性食道炎とならんで原因不明の咳の1原因として有名。

□ 項部硬直 ・・ 髄膜刺激徴候を調べる診察法の1つ。患者に横になってもらい、こちらの手を後頭部に置いてそのまま前屈させる。痛くて前屈できないなら陽性、髄膜炎・クモ膜下出血が疑われる。
※ 左右に回転できない場合はパーキンソン病、頚椎疾患を疑う。

□ 高齢者(病態別ポイント)

○ 高血圧

・ 65歳以上の2/3は高血圧(上140以上または下90以上の場合)。
・ 加齢とともに収縮期圧は上昇し、拡張期血圧は低下する→脈圧の開大。高齢者での「収縮期血圧↑」「脈圧の開大」は心血管病リスクとして重要。
・ 調圧因子(とくに圧受容器)の反射機能低下により起立性低血圧(←独立した心血管病死亡の危険因子)、血圧変動(non-dipper型が増加:予後不良)を引き起こす。
  ※ 起立後の血圧低下は、起立直後3分以内の測定が重要。
・ non-dipper , extreme-dipper型、早朝高血圧ではラクナを伴うことが多い。
・ 増加中の早朝血圧上昇=モーニング・サージは交感神経系・RA系の亢進によるもので、心血管事故と関連する。
・ 白衣高血圧も増加中で、この場合積極的な治療は不要。家庭血圧計を診断の手がかりに。JNC VI(米国高血圧診療指針)では家庭血圧の高血圧とは135/85mmHg以上とされている。
・ 欧米ガイドラインでは降圧目標は140/90mmHg未満としているがそれが妥当かどうかのエビデンスはない。
・ 降圧のスピードには配慮が必要で、降圧は緩徐に行い、一般的に初期量は最小常用量の半量から開始し、めまい・立ちくらみに注意しながら4週間間隔以上で増量し、3-6ヶ月以上かけて目標値までもっていく。
・ 合併症のない場合はCa拮抗薬(脳血管障害抑制)、ARBまたはACEI(心・腎保護作用)、少量の利尿薬が第一選択(β遮断薬は有用でなく禁忌多い、α遮断薬は心不全起こすこと多い)。

○ 虚血性心疾患

・ 女性の場合に重症例が多く、生命予後も不良。
・ アスピリン(心血管イベント抑制)は禁忌がない限り使用。
・ β遮断薬は使用しにくいが少量ででも使用する価値はある。目標としては安静時心拍数を55-60/分に下げる。
・ 亜硝酸剤は狭心症には有効だが、(残存虚血なしでの)長期使用についての効果は不明。
・ Ca拮抗薬は短時間作用型<長時間作用型を推奨。
・ 1枝病変の場合、薬物治療での予後も良好。なので血行再建に関しては慎重に検討すべきだが、左主幹部病変や左前下行枝を含む多枝病変で左室機能低下(LVEF 50%未満)例では積極的にすべきである。
・ 急性心筋梗塞において、無症状が25%にみられるという事実がある。
・ 心筋梗塞の急性期治療が発展してはいるものの、高齢者の院内死亡率は20%前後と高い。

○ 脳血管障害

・ くも膜下出血において、女性の頻度は男性の2倍。しかも発症年齢は男性では加齢とともに減少するものの女性ではむしろ加齢で増加し70歳代でピーク。
・ 心房細動(特にNVAF)の増加により心原性脳塞栓が増加中。
・ 痴呆に関してはアルツハイマーでなく脳血管性痴呆のほうを来たしやすい。

○ 肺炎

・ 無熱で呼吸器症状が乏しい例が多い。平素との行動の変化に注意。痰の色も重要。
・ 白血球数は重篤例の早期には減少して左方移動を伴うことがある。
・ 炎症の評価において、他の感染(尿路・じょく創)の合併に注意。

○ 糖尿病

・ 耐糖能は低下する。理由はインスリン抵抗性↑(体組成の変化)、インスリン初期分泌の遅延・低下(膵β細胞の疲弊)。
・ 最近、インスリン抵抗性がミトコンドリア活性の低下と関連するという報告が注目されている。筋肉だけでなくβ細胞にもミトコンドリアの機能低下が生じるというもので、運動で機能回復が望めるという。
・ 多くは成人期に発症しており罹病期間が長い。一方、老年期での発症は軽症で罹病期間も短いことが多い。
・ 高齢者糖尿病治療ガイドラインによると、以下の場合に厳格なコントロールが必要とある。
 ? 空腹時血糖が140mg/dl以上
 ? 糖負荷後血糖値が250mg/dl以上
 ? HbA1cが7.0%以上
 ? 糖尿病性網膜症あるいは微量アルブミン尿を認める場合

□ 行路=こうろ=ホームレス
           
□ 呼吸機能検査=スパイロ=スパイログラム ・・ おもに肺活量と1秒量を測定。肺拡散能は一部の施設で可能。肺活量↓は拘束性障害(肺線維症など)、1秒量↓は閉塞性障害(肺気腫など)を示唆する。開業医で呼吸機能検査やってるとこは、ほとんどない。症例となる人数も少なく人手も要り、あまり儲けにならないからだ。

(現場)いずれも鼻に栓をして、口に紙パイプをくわえてもらう。
・ 肺活量の測定:数回ふつうの息をしてもらい、大きく吸って〜どんどん吸うどんどん吸う→はい吐いて吐いて吐いてず〜っと吐いて!→はい、もうふつうで。お疲れさん。
・ 1秒量の測定:はい、思いっきり息を吸ってぇ・・・はい!そこでビュウッ!と一気に吐き出す!お疲れさん。

□ 呼吸生理 ・・ 基礎医学レベルでの呼吸に関する学問。酸素・二酸化炭素分圧の計算、組織学が加わったりと臨床から離れる。しかし呼吸器科の人間には必須の学問。動脈血ガスデータの解釈には欠かせない。

□ 呼吸抑制 ・・ 血液中の二酸化炭素(分圧)の上昇などによって、呼吸の運動そのものが<自発的に>されなくなってくる場合。二酸化炭素の上昇は肺気腫など肺病変の関与が多いが、神経疾患(ALS、重症筋無力症、多発性硬化症など)の存在も忘れてはならない。

□ 骨シンチ=骨シンチグラフィー=骨シンチグラム ・・ 癌の骨への転移を調べる目的などで撮影する、骨の全体像写真。

□ 骨髄移植=BMT=bone marrow(骨髄)+transplantation(移植) ・・ 移植するための造血幹細胞を、かつてはHLA同一同胞骨髄から得る、という方法しか取れていなかった。厳密にはこのときの方法を「骨髄移植」と呼ぶ。その後HLA一部不一致、非血縁者など適応が拡大し、用いられる細胞・手段も多種多様となり、現在では改めて「造血幹細胞移植」と呼ばれるようになっている。

□ 骨髄抑制=ミエロサプレッション ・・ 血液を造る骨髄の機能が抑制された状態。抗癌剤の副作用などで起こりうる。白血球の減少は感染を、赤血球の減少は貧血を、血小板の減少は出血を招く。化学療法を始めて1〜2週間が骨髄抑制の強い時期。

□ 呼吸抑制 ・・ 呼吸が苦しいと通常呼吸の回数は増えるが、血液中の二酸化炭素が多い病態(肺気腫など)では逆にそれ自体が呼吸の回数を遅くさせ、最悪の場合は呼吸停止となる。肺気腫の患者に睡眠薬・抗不安薬を出せば呼吸抑制となる恐れあり。

□ コスト ・・ 病院の器具の値段を指していう場合と、あと医療従事者の給料・年俸などを意味する場合がある。

□ コベン ・・ 「オーベン」はドイツ語だがこっちは造語。結局はオーベン支配下の研修医を指す。

□ コラーゲン ・・ 臨床での場合は「膠原病(Collagen Disease)」の意で使われる。

□ コンサルト ・・ 目上、オーベンや他科への相談のこと。
 
□ コンタミ ・・ 不純物が検体に入ってしまうこと。取り直し・やり直しに迫られる。なので風邪のときは実験しないほうがいい。

□ コンプライアンス ・・ 病気の分野では「弾性」、つまり伸びやすさの意味で使われる。または、患者が内服をきちんと守れているかの状態。

□ 誤嚥性肺炎=嚥下性肺炎=誤飲性肺炎 ・・ 食べて食道に入るはずが、脳梗塞の後遺症のせいなどで誤って気管に入り、その下の肺で炎症を起こしたもの。窒息に至らず幸いではある。治療薬は通常の肺炎の治療とはチト違い、クリンダマイシンなどで嫌気性菌をターゲットにおくのが通常。食事介助がせっかちだとそれを助長する可能性もある。

□ 「ご指摘のように」 ・・ 学会会場などで質問を受けたときに返答に際して用いる言葉。こう言われると少し気分はいい。

□ ゴーストライター ・・ 多くは教授の論文、刊行本を陰で作成している医者。清書を教授が見て修正、ゴーサイン。書かされている医者が自分を皮肉ってこう呼ぶ。だが引き受けた人間が悪い。

□ ゴルフコンペ ・・ 大学病院に限らずどの病院でも行われるゴルフイベント。順位別に商品が用意され、終了後はフロにつかって雑談が定番。このとき様々な情報が病院どうしで交換される。
□ サーフロー=留置針(りゅうちしん) ・・ 24時間点滴など長時間の点滴を要する場合に、これで血管を確保する。けっこう高価。

□ 細菌性胸膜炎 ・・ 細菌感染によって、気道から入った菌が肺炎を起こし、やがて肺とその外の胸膜との間である「胸膜腔」に炎症を起こして胸水がたまった状態。これが膿だと「膿胸」。なお胸水から菌が検出されることはむしろ少ない。

□ 細菌性髄膜炎 ・・ 髄液が流れる髄液腔に浸潤した細菌による炎症。症状・合併症はむしろこれによる免疫応答によるところが大きい(なので抗生剤で菌が消えても所見続くことあり)。健康人成人発症では肺炎球菌が最多(重症になりやすい)、たまにB型連鎖球菌、リステリア(髄膜炎菌、インフルエンザ菌はまれ)。古典的3主徴(発熱・頭痛・項部硬直)は9割に認める。ひどいと痙攣、頭蓋内圧亢進による意識障害。疑われた場合は血液培養はもちろん抗菌治療を早期に開始する(救急室到着後60分以内!)。肺炎球菌がターゲットだが細菌はペニシリン・セフェム耐性菌が増えたため、小児・成人ともに3代セフェムとVCMの併用を考慮する。ABPCに関しては3ヶ月以下、55歳以上または免疫低下患者の場合に投与。脳膿瘍・硬膜下血腫が疑われる場合はMRIで確認。髄膜炎ではGd造影で広範な髄膜増強効果をみるが特異的所見ではない。髄液所見で糖19mg/dl以下、蛋白220mg/dl以上、細胞数2000/mm3以上あるいは多核白血球1180/mm3以上はこれを強く示唆する所見であるとの報告あり。

□ 再狭窄=re-stenosis=リステ ・・ 冠動脈への形成術(バルーンやステントなど)のあと、しばらくして造影してみたらまた細くなっていた状態。

□ サイクリング療法 ・・ 抗生剤頻用による耐性菌増加を抑制するため、数種の抗生剤を一定期間ごとにローテーションしていく方法。まだ確立された方法ではなくエビデンス待ち。

□ 再生不良性貧血=アプラ ・・ 骨髄の全系統(赤血球・白血球・血小板)の産生が抑制された状態。

□ 臍帯血幹細胞移植=CBSCT=cord + BSC(血液幹細胞)+transplantation(移植) ・・ HSCT=造血幹細胞移植で最も好ましい?HLA一致同胞、また次の手段?非血縁者間骨髄・・これらは骨髄バンクで努力がみられるが依然として症例が足りない。そこで第3世代のHSCTとして期待されているのがこれ。出産後に回収される臍帯血は量こそ少ないが未分化(T細胞少なく拒絶少ない)・大きな増殖能をもち、移植1年後の増殖能力が強い。このため幅広い効果が期待されているが、現状では急性白血病で良い成績を上げているものの、それ以外の疾患、特にMDSや再生不良性貧血では成功例がまだ少なくこれからの成績が待たれるところだ。
 
□ サイナス=サイナスリズム=OSR=NSR=正常洞調律 ・・ 心電図の所見で、つまり不整脈がないことを指す。

□ 左心耳(さしんじ) ・・ 左心房の中の盲点的部分。袋小路。通常の心臓超音波では見えにくい隙間部分。血液の流れが遅いので淀みやすく、特に心房細動や拡大した左心房ではここに血栓が出来やすい。確認は経食道エコーで。

□ サスペクト=サスプ=s/o=疑い

□ 左方移動 ・・ 激しい炎症・あるいはある種の白血病が原因で、成熟途中の若い細胞が、未熟な役目の状態で血液中に放り出され多数みられること。結果的に検査項目の『血液像』で<stab>の増加がみられる。

□ サルコイドーシス=サ症=サル ・・ 肉芽腫形成を特徴とするびまん性肺疾患。病変部位から皮膚の常在菌であるPropionibacterium.acnesつまりアクネ菌が分離されたのは有名な話。これが原因とまでは確定してないが、サ症のリンパ節にはアクネ菌またはその系統のDNAが存在しているのは確かだ。そこでアクネ菌に対して何らかの遅延型アレルギーを有する人だけに、ストレスなどの環境要因によってアクネ菌増殖が起こって肉芽腫が形成されてサ症を発症するという仮説がある。

□ ?音 ・・ 心音のうち、?音の直後聴かれることのある音。心不全のとき聴かれるが、健康成人でも聴かれることあり。

□ 散瞳 ・・ 瞳孔が拡大している状態。ペンライトで反応しない場合、死亡確認の根拠の1つとして表現される。

□ 三方活栓=三活 ・・ 点滴のコードの途中にある、たいてい緑か青か透明の「T」字型のちっちゃい器具。向きを変えることで点滴を流したり止めたりする。血液がこびりつくと外しにくくなる。

□ 三割負担 ・・ サラリーマンなど仕事している人間・その家族が、かかった医療費に対してまかなう割合。この引き上げによりサラリーマンの受診率は激減している。会計で大声でもめている患者がいれば・・そうかもしれない。

□ 在宅酸素療法==在宅酸素=HOT(ホット) ・・ その字の通りで、自宅で酸素ボンベを備え付けて鼻カニューラで酸素を吸う。持ち運びもオプションで。肺気腫への適用が多い。

なお適応としては
? PaO2 55Torr以下
? PaO2 60Torr以下でも睡眠時または運動時に著しい低酸素を来たし、医師が必要と判断した場合

 最近は心不全でもOKが出たが、半端な治療下での不適当な使用が目立つ。
 身体障害者(呼吸障害)の書類作成にあたっては、呼吸器学会の認定医の資格がいる。

■ 残胃癌(ざんいがん) ・・ (胃癌で)初回手術後に再発したタイプと、その手術とは関係なく新規にできたタイプに分けられる。なお日本では初回手術後の再発率は0.6%と低い。依然残っていた発癌刺激によるもの、また胃内部環境の変化(胆汁逆流しやすいBillroth II法やピロリ)が誘因と考えられている。なので幽門の温存はダンピング予防だけでなく残胃癌の予防にもなる。
□ シャーカステン ・・ レントゲンなどのフィルムを掛けるところ。

□ 主治医制 ・・ 「その患者のことは全てその主治医にコールして聞けばよい」制度。 病院によっては「当直制」。当直制だと夜間呼ばれるのは当直医だが、主治医制だと主治医が呼ばれるので大変。医療ミスの根源の1つ。大まかにいうと、大学病院では主治医制、民間病院ではオンコール制が多い。

□ シグマート ・・ 「ミリスロール」とはまた別系統の亜硝酸剤。物質名「ニコランジル」。内服・点滴あり。

□ 試験開腹 ・・ 腹痛の患者などで病名が確かでなく、診断のほか治療も兼ねる目的で行われるものをいう。もちろん家族の十分な了解が要る。

□ 指示(しじ) ・・ カルテ用紙の右側にドクターが記載する、ナース側への命令内容。点滴・内服・検査など。官公立などの病院では指示出しを早くに迫る傾向にある(昼1〜2時を要求)。民間では夕方の申し送り直前までが多い。

□ システミック ・・ systemic=系統的な。臨床では「全身の」の意味。膠原病や免疫疾患などをさしている。

□ 指標=メルクマール ・・ 病気を治療していく上での効果の判定のもととなるもの。これをフォローしながらカルテの記載がされているか、それでその医師の能力が分かる。

□ 社会的入院 ・・ リハビリなど、病気の長期療養目的で、ほぼ自立の状態で数ヶ月間(主に療養病棟)に入院すること。しかし実際は病院にとってのベッド埋めの名目のことが多く、悪しき慣習となっている。2011年の療養病棟閉鎖により、この立場の人々は行き場を失うことになる。

□ 主幹部(しゅかんぶ)=trunks(トランクス) ・・ 心臓の場合は冠動脈の、左冠動脈主幹部のことをさす。冠動脈は右1本、左2本だが、左の2本の根元数センチはは1本である。この部位をさす。したがってここが詰まると左は全滅。心臓の三分の二の動きを失う。

□ 腫瘍マーカー=マーカー ・・ 血液検査の項目で、癌を疑ったときに測定。ただし異常なくても癌を完全に否定するものではない。よく調べるのはCEA , CA19-9など。大腸癌は腫瘍マーカー・便潜血の組み合わせでも見落としが3-4割あるという。今後の課題だ。

□ 腫瘤(しゅりゅう)=tumor(トゥモール)=mass(マス) ・・ 塊。中身が何かには触れてない表現。診察・画像所見の表現法の1つ。

■ シェーグレン症候群=SS 

 慢性唾液腺炎+乾燥性角結膜炎を呈する自己免疫疾患。唾液腺・涙腺の病理組織でリンパ球浸潤。障害部位はこれに限らず全身の外分泌腺にわたる。臓器非特異的抗原としてSS-A52kD蛋白、TCR、熱ショック蛋白、唾液腺特異的抗原としてαアミラーゼ、M3R(ムスカリン作動性アセチルコリン受容体)がある。

 唾液腺障害の機序としては、細菌・ウイルス感染で一部唾液腺破壊→自己抗原流出→(抗原特異的)T細胞活性化→細胞障害性T細胞誘導→唾液腺上皮細胞アポトーシス→唾液腺炎・破壊。これらの気序のうち抗原特異的T細胞に注目した分子標的治療などが練られている。

□ シェロングテスト=Schellong試験=起立血圧試験 ・・ 自律神経機能検査の1つ。臥位から立位変換による血圧の変動をみる。十分安静臥位→血圧測定数回→5秒以内にすばやく起立→以後血圧測定。立位直後、1分、2分・・・10分後まで。血圧測定位置が心臓位置と同ラインの基本は守ろう。正常人では変動はあまりない。起立性低血圧の定義そのものが確立されてないが、一般的に30(収縮期)/15(拡張期)mmHg以上下がればそう診断する文献が多い。

□ 資金繰り(しきんぐり) ・・ 経営困難に瀕した民間病院が職員給与の調達のために、あちこち企業からお金を借り入れること。

■ 社会的入院 ・・ 生活保護下で入院管理まで要さないが、あえて入院させているケース。病院側にとって「精査・リハビリ入院」という言い分を持つ。実際検査はするが、大半は儲け目的であって、期限(報酬が下がってくる)2〜3か月が過ぎればまた他院へと送り、以下繰り返し。全国の生活保護者の入院14.5万人のうち3.4万人が社会的入院といわれている。

□ 消化管出血

・ 全体のうち、上部消化管出血が2/3以上を占める。

・ 上部消化管出血 → 吐血・タール便(黒色便) ・・ Treiz靭帯より口側の出血
・ 下部消化管出血 → 下血(比較的赤い便) ・・ Treiz靭帯より肛門側の出血

・ 緊急消化管出血のうち頻度が特に高いのは消化性潰瘍、静脈瘤である。その他の原因として上部では胃癌・マロリーワイズ、下部では大腸癌・憩室炎など。
※ 下部消化管出血では最近NSAIDによるものが増加してきている。

※ コーヒー残渣様 ・・ 出血から嘔吐までの時間が長いことをあらわす。

・ まず臥位とし、顔面横に向けて誤飲・窒息を予防しバイタルを確認。
・ 脈拍数/収縮期血圧は循環血液量の不足を反映するので出血量の推定に役立つ。
・ 乳酸・酢酸リンゲル液で開始、軽症10ml/kg/hr〜重症では40-50ml/kg/hr。中等症以上では代用血漿、アルブミン製剤、加熱ヒト血漿蛋白も使用。
・ 以上で循環動態が安定するならば輸血はすぐには不要だが、ショックが持続するなら濃厚赤血球や新鮮凍結血漿による急速輸血(400ml-1000ml)が必要。
・ バイタル安定化の目安としては収縮期血圧100mmHg以上、脈拍60-120/minを目標に。
・ 上部消化管出血の場合、内視鏡前に胃洗浄(37℃程度ぬるま湯1500-4000ml)を行っておく(ただし止血効果は期待できない)場合もあるため必須でない。
 ※ 十二指腸潰瘍、特に球後潰瘍の出血では胃洗浄で血液を認めないこともある。
・ 下部消化管出血では直腸診・直腸鏡によって肛門部病変、直腸病変の判別につとめる。その次に内視鏡へ。
・ 血管造影は上・下部内視鏡においても出血源が特定できず、かつ動脈性の出血が持続するのであれば考慮される。
・ 消化性潰瘍では露出血管の有無が重要で、再出血の確率高く内視鏡治療の絶対適応。
・ 静脈瘤では下血が先行する例もあり注意。

○ 薬物治療

・ 上部消化管出血の場合(内視鏡的止血の有無にかかわわず)、胃内pHのコントロール(6以上)が効率的な止血効果や再出血予防に重要な役割を果たす。PPI注射剤によってpHコントロールが容易となった。
・ 静脈瘤出血 ・・ 門脈圧亢進によるものなので、出血予防にはβ遮断薬、硝酸塩を投与。出血予防に関して、内視鏡下治療と薬物治療の比較が行われているが長期観察では薬物療法の安全性・効果が明らかになってきている。
・ 消化性潰瘍 ・・ PPIの静脈投与は再出血の予防に有効である。またNSAID投与中であった場合はCOX2阻害剤に変更する。ピロリは出血予防までの明確なデータはない。
・ Mallory-Weiss症候群 ・・ 止血後はH2ブロッカーなど投与。再発がほとんどないため薬物療法の意義は少ない。
・ 下部消化管出血の場合は薬物療法の効果は少なく、絶食による腸管安静が原則。

○ 食道静脈瘤出血のリスクファクター

? 臨床所見
・ 肝障害の程度(Child分類) ・・ 高度なほどリスク高い。
・ 細菌感染によるエンドトキシン血症 ・・ エンドセリン1の増加により門脈圧が亢進、またトキシンで産生のNOで血小板凝集抑制。
・ 腹水 ・・ 静脈瘤血流を増加。
・ 門脈塞栓 ・・ A-P shuntがあるとリスクはさらに増す。
・ 飲酒
・ NSAIDが誘因になることもある。

? 内視鏡所見
・ red color sign(出血率60%弱)とF2以上の青色静脈瘤(Cb)(出血率80%弱)所見。なお硬化療法後のF0症例での非定型的なRC signの出現は出血の危険性が高く、たとえF0でも硬化療法などの追加治療が必要。

? 門脈圧血行動態
・ 門脈圧12mmHg以上で静脈瘤出血がみられる。しかし静脈瘤の程度を表すのは門脈圧でなくあくまでも静脈瘤圧(内圧)のほうであり、そのほか静脈瘤径・壁厚がリスクファクターに関与する。
・ 側副血行路の有無 ・・ あったほうが門脈圧は当然低下する。中でも非再発率に関与する経路は胃ー腎シャントであると報告されている。

○ 食道静脈瘤の治療

・ S-Bチューブ・ショック治療優先。
・ 引き続き内視鏡による止血治療へ。これでも不十分な場合はIVRや外科手術が施行される。
・ 内視鏡治療は従来はEISだったがEVLが増えてきている(併用もあり)。これまでの試験などデータではEVLが静脈瘤出血のもっとも優秀な治療法である。EISに比し副作用も少ない。
・ EVLでは出血点を正面視し十分吸引して出血点の静脈瘤を結紮する。これで止血困難ならEISが有効。また出血点がEC junction直下にある場合、出血点そのものが不明瞭な場合にもEISが有効である。

○ Mallory-Weiss症候群

・ 嘔吐・咳・排便・吃逆(きつぎゃく)・くしゃみなどによる腹圧上昇、または腹部外傷、体外心マッサージ後などによる。胃カメラ時、食道エコー時にも起こりうる。
・ 粘膜損傷は食道胃接合部〜胃噴門部粘膜。
・ 上部消化管出血の5-15%で30-50歳代男性。
・ 通常は粘膜下層にとどまるが筋層に達するものもある。
・ 噴門部限局が7割。小彎側が多い。
・ 露出血管、持続出血の場合は内視鏡的に止血する。
・ 特発性食道破裂=Boerhaave症候群ではこれよりも重症度が高い・・・胸痛のほか、縦隔気腫、皮下気腫、胸水の合併多い。

○ 胃の出血性病変

・ 内視鏡的止血法 ・・ 出血・血管の状態によって以下から選択(組み合わせも)。

? 機械的止血法 ・・ クリッピングが最も確実。その他バルーン圧迫など
? 局注法 ・・ エタノールなど。広範なoozing(湧出性出血)に対しては近年APC=Argon Plasma Coagulationの有用性が指摘されている。
? 熱凝固法 ・・ 高周波、レーザーなど
? 薬剤散布法 ・・ トロンビンなど。出血点が単一でない場合などに。

・ 以上の処置でも止血が不可能な場合は、IVRか緊急外科手術を選択する。

○ Dieulafoy潰瘍 

・ 激烈な出血をきたす小潰瘍・・・という印象からつけられた病名。これという明確な定義はない。

○ 炎症性腸疾患

? 潰瘍性大腸炎

・ びまん性の粘膜炎症。出血も粘膜からのびまん性のものなので、内視鏡止血を要することは基本的にはない。
・ 大腸内視鏡検査を契機に悪化する例もあり、中でも中毒性巨大結腸症を疑う場合は禁忌である。
・ S状結腸までの挿入で重症度評価が行えることが多いので無理に奥まで入れない。
・ 大量下血の場合は出血のため観察が困難なため、血管造影を選択すべき。これにより塞栓術(壊死の合併が危険)、ステロイドの動注にもっていけることがある。

? クローン病

・ 全層性の炎症で深い潰瘍→深いため露出血管を伴うこと多い。出血はびまん性でなくピンポイントが多く、内視鏡的な局所止血が可能なことがある。
・ しかし出血部位としては小腸が多く、内視鏡での同定・処置は困難。その場合出血部位の特定には血管造影・出血シンチで検索。これにより塞栓することあり。

?・?いずれも出血が持続するなら手術による腸管切除となる。

○ 虚血性大腸炎

・ 80-85%が非壊疽性であるが15-20%が壊疽性であり、その場合病変は大腸壁全層に及ぶ。非壊疽性のほとんどは一過性・可逆性だが一部は区域的な狭窄を残す。
(以下、一般的な非壊疽性について)
・ 原因はほとんどが特発性。
・ 細動脈レベルでの虚血なので、血管造影しても異常は認めない。
・ 好発部位は左側結腸で、区域性に分布。
・ 脾彎曲部 ・・ 中結腸動脈(上腸間膜動脈由来)と左結腸動脈(下腸間膜動脈由来)の両者の血流が比較的乏しい領域。欧米では好発部位。
・ わが国では60-70%が下行結腸肛側〜S状結腸口側にかけて広範囲に認める。
・ 動脈硬化が背景に多い。男<女。大腸癌、経口避妊薬、内視鏡前処置の下剤、長距離走が原因になることも。腹部大動脈バイバス手術後の合併症としてもありうる。
・ 症状は突然腹痛→水様性下痢→鮮血便(下痢で薄められ真っ赤でないことが多い)。 ※ 鮮血便の85%は大腸・肛門からの下部消化管出血。
・ 症状・内視鏡所見では感染性腸炎、抗生物質起因性大腸炎との鑑別を要する(海外渡航・食事内容・内服)。
・ 大量下血の場合は本症と大腸憩室の場合が多い。前者では内視鏡での観察がしやすく(下痢が先行して)、後者はしにくい(いきなり血便発症なので血で見えにくい)。
・ CTで腸管の全周性肥厚を認めるが細菌性腸炎でもみられ特異的でない。
・ 内視鏡所見は通常1-2週間で消失する。
・ 全身状態不良(脱水・ショック)例ではむしろ腸間膜動脈閉塞を疑い造影CT・血管造影・MRAを施行すべき。
・ 内視鏡所見
  発症直後 ・・ 黒褐色の壊死粘膜が付着した粘膜像。
  発症6-48時間 ・・ 全周性びまん性浮腫、斑状・地図状発赤(融合しており、びらん・潰瘍が結腸紐沿いに局在、さらに白色の壊死物質付着)。正常粘膜との境界が明瞭。
・ 典型例(つまり一過性・非壊疽性)では禁食期間は1-3日で十分。

□ 消化管穿孔=パーフォレーション ・・ 潰瘍などの消化管の傷害が原因で、消化管の壁が破れたもの。自然治癒は無理なので、通常は開腹して穴を塞ぐ。時間がたつと腹膜炎に進展してしまう。

□ 抄読会(しょうどくかい) ・・ 医局員どうしで行われる読書会。当番制で、海外の論文を和訳して発表する。新しいもののほうが好かれる。

□ 小児用バファリン ・・ 別に小児限定のバファリンという意味でなく、低容量の(量が少なめの)バファリン。だが最近ではもう少し容量多目の「バイアスピリン」のほうを使用することが多い。特に脳外科領域。歯科処置・胃カメラの1週間前は中止しておく必要がある。

□ 職員食堂 ・・ 職員の昼ごはんのための食堂。コストを切り詰めた病院はマズい。逆もいえる。しかしマズいとこが大半だ。食事は早朝のうちに完成型でどっかから運ばれ、また加熱して数時間後に出すところが多いためだ。それでも安いのは魅力。

■ 食道癌 ・・ 消化器癌の中で最も予後不良(切除可能病変+広範囲リンパ節郭清でも5生率50%未満)。術前の化学療法・放射線療法の有効なエビデンスはなく、術後化学療法での予後改善データも不十分。放射線+化学療法が放射線単独に比して有意に汚改善することは示されている。

□ 所見 ・・ 患者の局所的な状態、画像検査などをドクターがフムフムと確認して、その状態を医学的な言葉・立場で記入したもの。

□ 尻拭い ・・ 主治医が転勤で、代わりの医者が重症を引き継いだときなどに、皮肉として言われる陰口。

□ シリンジポンプ ・・ 大型の注射器の中の薬剤を時間あたり数ccという微妙な量で送り込むもの。インスリン、強心剤など。同じルートから静脈注射すると一気に濃度が上がるので注意。中身が枯渇すると息継ぎのない警報音がしてうるさい。

□ 心アミロイド−シス 

 「アミロイド−シス」をまず参照。この4つのタイプいずれもが本症をきたしうる。血行動態的には拘束型心筋症と似る。

 心症状は3つに大別される。

? 心不全
? 刺激伝導障害
? 冠不全

検査所見としては・・

<心電図>半数に特徴的所見→低電位(最多)、V1-3のQS波形(心筋梗塞と誤診される可能性あり)、房室ブロック。

<心エコー>左室壁肥厚、左室横径は拡大せずむしろ正常〜縮小、拡張不全の病態に→これを受けて左心房が拡大。

<心筋生検>これにより診断が確定する。Congo red染色で陽性、さらに偏向顕微鏡で緑色の複屈折を示す。電顕ではアミロイドfibrilを認める。侵襲などの問題で心筋生検が施行できない場合は、直腸・骨髄生検、腹壁の脂肪吸引生検のほうから進めていく必要がある。

<治療>対症療法。ただしALアミロイド−シスで血液幹細胞移植するという治療が検討され、海外ではさらに心移植を組み合わせた報告がある。

<予後>組織診断1年未満の死亡が多い。
    死因は心不全>腎不全>感染。

と出てしまい要再検となる。
□ 心拡大 ・・ 胸部レントゲン写真で心臓の横径が比較的大きいこと。ただし深い吸気ができてなかったり、肥満のせいだったりすることもあり、これだけで心臓がどうとかの説明にはならない。

□ 心カテ=心臓カテーテル検査 ・・ カテーテルという細い管を局所麻酔で手や股から入れて、心臓の血管の入り口まで持っていって造影剤を流し、撮影する。冠動脈が細いかどうかを突き止める。細ければ治療へと延長戦となる。

□ 心基部(しんきぶ) ・・ 心臓の主要なポンプ部分である左心室をそうだな・・。風船の右端を握って。それが左心室なら、握った根元の上部分が心基部=base。握ってない丸い先っぽが心尖部(しんせんぶ=apex)といったところかな?すると残りの上縁が心室中隔で、下縁が左室後壁、ということになる。

□ 真菌 ・・ カビ。肺の場合では肺真菌症という肺炎であったり、食道にできれば「食道カンジダ」と呼ばれる。足によくできる場合は足白癬と呼ばれる。重症肺炎では真菌の合併も念頭に置く。

□ 心筋炎 ・・ 主にウイルスを原因(8割。コクサッキーBが最多)とした心筋の炎症→心不全・不整脈を呈する疾患。半数は風邪症状が前駆症状としてあり。ショック・致死的不整脈を呈するのは特別に<劇症型>といわれ、IABP、PCPSなどの体外補助循環まで要することがある(救命率50%)。通常の心筋炎に対するステロイドパルスの効果は否定的。

□ 心筋酵素=逸脱酵素=心筋逸脱酵素 ・・ 心筋梗塞・心筋炎の際に心筋が傷害されたのに伴い血液に流出する物質。

□ 心筋シンチ=心筋シンチグラム=心筋シンチグラフィー ・・ 放射性核医学検査の1つ。放射性物質(同位元素)を注射し、心筋を「プレデター」的に画像描写し血流分布を評価する。血液の量が多いか少ないか絶対量を表すのではなくでなく、あくまでも相対的な意味で使う。

□ 心筋症 ・・ 心臓の筋肉そのものの異常により心不全を起こす難治性疾患。
 ?拡張型心筋症 ・・ 筋肉が薄くてペラペラで心臓がほとんど動かない。重度では心移植を要する。
 ?肥大型心筋症 ・・ 筋肉が肥大して心臓が動きにくくなる。心臓の出口が狭いか狭くないかで
  ?)閉塞型 ?)非閉塞型 に分けられる。
 ?拘束型心筋症 ・・ あまりみかけない。拡張不全が主体。つまり心臓はふつうにしぼむが膨らみにくい。

□ 心筋生検 ・・ 心臓カテーテル検査下で通常行われる検査。心臓の壁である心筋を、心臓の中から経由で採取する。
深く取り過ぎると「タンポナーデ」をきたす。病変のありそうなところに当たらないと、正常所見と出てしまい要再検となる。

□ 心原性脳塞栓 

 NINDSの定義:?心臓内(特に左心房内)の血栓または?シャント(静脈系の血栓が左心房ー右心房間の卵円孔開存などを介して)を介した血栓により脳動脈が閉塞されて起こる脳梗塞(脳梗塞全体の2-3割)。

 通常の動脈硬化(アテローム血栓性)による場合は動脈の狭窄・血栓が徐々に進行するため、別の通り道である側副血行路が発達するものだが、本症では突発的に血管が閉塞されるためそのバイパスが発達する間もなく、結果的に脳梗塞は広範囲となる。

 このため脳塞栓の場合、梗塞巣の完成が短時間でできあがってしまい、結果的に後遺症も大いに残ることが多い。診断が遅れが予後に悪い影響を及ぼす。

 塞栓の原因で最も多い(5割以上との報告あり)のがNVAF=非弁膜症性心房細動。心房細動自体が加齢とともに増えてくるものであるから、脳梗塞予防以前にこういう病態を早期に発見することが望まれる。NVAFがあるかないかで、脳梗塞のリスクが5倍も違うのである。

 閉塞の好発部位は、?内頸動脈遠位端、?中大脳動脈主幹部遠位端、?脳底動脈遠位端が多い。梗塞巣は皮質領域を広範に侵すのが特徴で、皮質症状としての意識障害、失語、半側視空間無視、半盲などを呈する。塞栓のあと続発的に起こりやすいものとしては、?脳浮腫、?自然再開通(24時間内の場合は、うち1割が劇的症状改善みるという報告あり=apectacular shrinking deficit)、?出血性梗塞(?の際、または血栓溶解療法を行った場合に、再び血液が流れ出した脳組織の脆い血管から血液が溢れ、脳出血を合併する。発症後数日と2-4週後の二峰性)、?別領域での再発(特に発症2週間以内に注意。血栓の残存・脱水が引き金に)。

 血栓溶解療法のうちt-PAの静脈投与に関しては、超急性期(3時間以内)の使用で、CTで早期虚血所見がないか軽微、それ相応の経験ある施設などの基準がOKなら使用が許されている。なので患者側としては、脳梗塞発症時に搬送してもらう際に前もって情報があったほうがいいかもしれない。

□ 心係数=cardiac index=CI ・・ CO(心拍出量:1分あたりの左心室からの血液量)をBSA(体表面積)で割り算したものである。単位は(L/min/m2)。

□ 心室頻拍(VT) ・・ 心臓のカラ打ち状態。早急に胸部叩打・電気ショック・心臓マッサージが必要。ただし30秒以下のNSVTは積極的に治療しないという意見もある。

□ 心室リモデリング ・・ ストレスに対する心室自体の変化の過程をいい、心不全の予後を悪化させる因子として重要なもの。具体的には心筋梗塞や心筋症などにより圧・容量負荷が起こって、異常部分が薄くなったり正常部分が代償性に肥大したりする。形態的には心室全体が球状に拡大し、心肥大・心拡大となる。なおこの際、僧房弁が引っ張られておこるMRを合併しやすい。これはさらに左室容量負荷を増加させ、リモデリングが進行する。

□ 浸潤影(しんじゅんえい)= コンソリデーション=consolidation=コンソリ ・・ 胸部のレントゲンで、肺のある部分が(通常は黒く映るが)うっすら白いと、こう表現される。胸水、肺炎であることが多いが、古いものであることも。前回との比較が必要。

□ 心臓MRI 

 心筋症の心機能・壁厚評価に優れた客観的効果をもつ。

 心電図同期により心臓の動きを時相別に分割(収縮→拡張の過程を時間ごとに区切って)して見れる<シネMRI>という方法もある。

 また最近では造影剤使用により心筋のバイアビリティ(生き生き度)を評価することもできるようになった。これは<遅延造影MRI>という方法で、心筋梗塞の壊死部位を病理学的なレベルにまで掘り下げて判定できる。なので当然RIより優れる。しかもこれまで画像診断が曖昧だった心内膜下梗塞、右室梗塞を正確に描出することができるようになった。

 それと<冠動脈MRA>は3D画像による冠動脈形態把握のための検査。冠動脈奇形、川崎病での冠動脈瘤(りゅう)に威力を発揮する。もちろん冠動脈の狭窄も描出し重症病変のスクリーニングには適する。

 最近ではその撮影を簡略化させた<Whole heart coronary MRA>がトピックスで、冠動脈病変のスクリーニングのより優れた方法として期待されている(http://www.schering.co.jp/medical/woln/rsna2004/t_04/に画像あり)。

□ 浸透圧 ・・ 分かりやすくいえば、濃度。浸透圧が高ければ、濃度が高い。つまり周囲から水をひきこむ力が強い。糖尿病では高血糖のため血液の浸透圧が高くなり、腎臓から水ごと押し出される(浸透圧利尿)。で、喉が渇く。低アルブミンなどで浸透圧が低いと水が血管から皮下、胸腔、腹腔などへ逃げる。この逃げ場所が「サードスペース」。

□ 心臓神経症 ・・ 古い病名。心臓が悪いという思い込みから動悸・息切れなどの症状が出て実際は検査で異常なし、別名心臓ノイローゼ。それに対してNCA=神経循環無力症(これも古い病名)というのは期外収縮や低血圧などのちょっとした所見が認められる場合。これらは1980年代よりパニック障害とGAD=全般性不安障害という分類に大きく分けられることになった。

□ 心臓喘息 ・・ 心不全の間接的な作用で、気道の粘膜に浮腫・痙攣が起こり、あたかも喘息様の症状を起こす。心疾患がもともとないかの既往歴、心不全兆候(むくみなど)が気管支喘息との鑑別の決め手。
 
□ 心臓破裂=心破裂=ラプチャー ・・ 心筋梗塞の急性期合併症。高い血圧、薄い心筋はリスク。あっという間に起こるため、起こった瞬間に出会うのがあまりない。治療も対処のしようがない。トイレで力んだりさせない。なので下剤をあらかじめ処方することが多い。

□ 心電図=ECG(英語:イーシージー)=EKG(ドイツ語:エーカーゲー) ・・ あくまでも安静時の心臓の脈解析。ジジババ職員ほど後者で表現することが多い。

□ 心嚢穿刺 ・・ 心臓の周囲に水分が多量に貯留した「タンポナーデ」などに行われる手技。みぞおちから斜め右上に向って穿刺、カテーテルを留置して排液する。急な排液は不整脈や血圧変動を招くので注意。へパロックを忘れると詰まってしまうことあり。
□ 心不全 

 心臓はポンプ。通常、この力が弱くなり→出てくる血液が不足した場合を指す。メインである左心室が弱った「左心不全」のことを指すことが多いが、これが進行すると右心室まで巻き込み、「左心不全」+「右心不全」=「両心不全」と呼ばれる。左心不全の所見としては、胸部レントゲンでの心拡大+両側胸水貯留の2所見が典型的。

※ 世界的な権威である米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)のガイドラインが2005年8月に4年ぶりに改訂された。特に変更・強調された点としては・・

・ 心不全のステージングを4段階に分類(A/B/C/D)。

・ Aの段階の者:つまり危険因子のある者に関しては早期発見・コントロールにつとめれば心不全を減らせる。

・ <うっ血性心不全>という病名のうち、<うっ血性>という言葉を不適切と判断、除外した。これは、うっ血による症状がないのに心臓に障害がすでに出ているケースが多いからだという。なので<うっ血性・・>と診断したところで、それは遅すぎた診断なのだ。早期発見の重要性を意識した意見だ。

・ ICD(植え込み型除細動器)適応の拡大を推奨。

・ 循環器医師は終末期心不全患者(Dの段階)へのホスピスケア(患者・家族との相談の上での)を勧めることにも関心を寄せるべき。 

心不全=収縮不全+拡張不全

○ 拡張不全の特徴 ← トピックス

・ 収縮不全に比べて高齢者(有病率は75歳以上で最多)、女性に多い。
・ うっ血性心不全のうち、実際1/3以上が正常の駆出率である(正常駆出率=正常EFは50%以上)。
・ 収縮不全が出現しているときには拡張不全がすでに合併していることが多い。
・ 高血圧が基礎疾患であることが多い。一方で収縮不全は虚血性心疾患の占める割合が高い。
・ 死亡率に関しては(拡張不全と収縮不全との比較)見解は統一されていない。
・ 拡張能を規定する因子は?左室弛緩能(収縮期に発生した張力を低下させる過程で、拡張早期に起こる)、?左室スティフネス(左室の受動的硬さ)
  ?→?の順に起こってくるといわれている。

  ?の障害が起こると左室圧下降速度の低下→左房・左室圧較差が低下→急速流入期における左室流入障害をきたす。
  ?の障害が起こると左室に血液が流入した際の左室圧の上昇が大きくなる。

  いずれにしても左房から左室への流入障害が起こる → 心拍出量の低下 → 左室への流入量維持のため、左房圧が上昇 → 肺うっ血 → 胸水・両心不全へ

 なので拡張障害単独によっても肺うっ血をきたしうる(つまり肺うっ血は収縮障害だけによるものではない)。

・ 実際の臨床の場では超音波ドプラ法から推定していく。なお心不全がなくてこの(ドプラ法)所見が<早期発見>された65歳以上のうち、11-15%が5年以内に心不全を発症したという報告がある。

○ 心不全そのものの診断

・ 症状 ・・ 呼吸困難、咳(以上2つは運動・臥位で増強)、倦怠感(心拍出量↓のため)、浮腫。
・ 聴診所見 ・・ ?・?音、ラ音。
・ 胸部レントゲン ・・ 心拡大、うっ血、胸水。
・ ANP/BNP ・・ ともに心不全の重症度に伴い上昇する。健常人のBNP濃度はANP濃度の約1/6。BNPは?左室駆出率、?左室拡張末期圧、?血中ノルエピネフリン、?エンドセリン-1(この??は心筋細胞障害因子)と相関する。ANPは?との相関はあまりない。BNPは200pg/mlを越えると運動耐容能が急激に低下する。
・ 心電図、心臓超音波検査

これらで心不全の診断と重症度把握、基礎疾患の大まかな検索を行う。

必要によりけりだが、同様に非侵襲的に以下の検査が追加される。

・ 心筋シンチ=RI ・・ 心筋の血流量をみるが、あくまでも相対的なもの。血流が特に低下してそうな部分を検出する。絶対量を示すものではないので異常所見=血流低下とは限らない。核種としては123I-BMIPP(心筋のエネルギーの6割以上が脂肪酸のβ酸化に依存することを利用し、心筋障害を反映させる)、MIBG(交感神経機能を反映。交感神経の亢進は心筋酸素消費量を増加させ心機能を低下させるほか、不整脈を増やす)
・ PET ・・ 相対的なシンチに対し、PETでは絶対的な血流量を測定できる。核種は18F-FDG(糖代謝を反映)。
※ 心筋のエネルギー源は遊離脂肪酸とブドウ糖。正常心筋では6割以上を脂肪酸のβ酸化に頼るが、虚血心筋では解糖系へと代謝経路が切り替わり、ブドウ糖利用増加が虚血の程度を反映することになる。これを利用したのがさきほどの18F-FDG PETである。

 心不全の治療について

○ β遮断薬

・ 投与はあくまでも<start low and go slow(低用量で開始し3-6ヶ月で維持量へ)>。
・ ある程度の低血圧・徐脈は副作用としてでなく、主作用による理にかなった生体反応として受け止める考え方が必要だという。しかしめまい・倦怠感の症状まで起こしてくるなら減量・中止は止むを得ない。
・ 耐糖能・糖尿病悪化という副作用はβ2受容体遮断による副作用であり(骨格筋での糖利用減少)、β1選択性のものを選べばその点は解決できるという。
  カルベジロールはインスリン抵抗性の改善作用があり、ACEIやARBには耐糖能改善作用があるため併用も勧められる。
・ 心不全で本剤の適応が見直されたといっても、実際BNPが500-600pg/mlを超えた場合、β遮断薬の導入が困難な場合が多い。

○ ACEIとARB

△ ACEI
・ アンジオテンシン?→?への産生を阻害しアルドステロン↓・Na利尿によって降圧するほか、ブラジキニン分解阻害によりNO産生を刺激。
 ※アンジオテンシン?の増加は心血管リモデリングを増強させる。
・ 多くは腎排泄性なので腎不全には慎重に投与すべきだが中には胆汁排泄性のもの(トランドプリル)がありこちらは腎不全でも使いやすい。
・ 副作用は空咳が多い。妊婦には催奇性あり禁忌。

△ ARB
・ AT1受容体レベルでRA系を阻害。咳の頻度が少ない。

○ 抗アルドステロン薬

・ 歴史が古い薬ではあるが、1999年のRALES試験、2003年のEPHESUS試験にて、本剤がACEIやβ遮断薬に併用することで心不全に有効性があることが確認され、その地位が向上。※ ただし重症例での検討。

○ サイトカイン療法、エンドセリン拮抗薬

△ サイトカイン療法
・ 抗TNF−α療法(エタナセプト、インフリキシマブ) ※ 心不全ではTNF−αが増加することが分かっており、心筋炎・心筋症でこれらサイトカインが高値を示すことが多い。
・ 抗炎症性サイトカインによる治療法(特にIL-10)
・ サイトカイン遺伝子治療

△ エンドセリン(ET)拮抗薬
・ 急性心筋梗塞による心不全、あるいは慢性心不全においてエンドセリン(ET)、特にET-1の血中濃度上昇が報告されており、それが高い心不全ほど予後が不良。ET受容体拮抗薬であるボセンタンはET系に特異的に作用し、血管拡張作用、心筋リモデリング抑制作用により心不全に有効。

○ 重症心不全におけるペーシング療法

CRT=cardiac resynchronization therapy=心臓再動期療法 

?心臓の両心室を同時にペーシング+?至適AV間隔の設定、によって、収縮の同期性を高める。

重症心不全の治療の選択肢の1つで、2003年5月より薬事承認。ガイドライン適応は、NYHA ?/?度、QRS幅>130ms、左室駆出率35%以下の重症心不全となっているが、心室のdys-synchrony(右心室と左心室の動きのズレ)の程度を評価して適応を決めようという試みがされている。

刺激の出るリードは当然2本必要で、1本は右心室心尖部でもう1本は冠状静脈洞に留置(冠静脈穿孔が0.5-数%)。これにより中隔側と左室自由壁から左心室を挟み込む形で、同時にペーシングを行う。

血行動態が安定化し、なかでも血圧の上昇が顕著だという。

■ 心房細動=AF

 上室性の不規則な脈。サイナスから突然頻脈の心房細動になるのが「発作性心房細動=パフ」。この場合はサイナスに戻す治療を積極的に行うが、長期化した心房細動は脈拍数の調節を優先する。拡大した左心房は血栓形成→脳梗塞のリスクあり。

 心房細動発症→慢性化のメカニズムとしては、

? 肺静脈起源(PV myocardial sleeve:左心房から肺静脈に一部連続する心筋組織)の異所性興奮
 ※ AFの自発興奮となる場所はPV開口部に集中する。pafへのアブレーション治療の標的となる。

? 心房(一部肺静脈)のリエントリー

? 電気的・構造的リモデリング
 構造変化で伝導が悪化、頻拍でさらに著明となりAF begets AF(AFがAFを生む)の状態となる。
 
 ・・の3極構造として考えられており、これらは互いを助長する。

 治療は↓

 サイナスに戻す<リズム治療>とレートコントロール=レート治療のどちらかを目指すことになる。

 ※1年以上持続、あるいは左心房径5センチ以上は後者の治療を目指すようになる。

 この2つの治療の比較を行った臨床試験が2002年のAFFIRM試験で、結果的にはレート治療に優位性が示された。ただ、リズム治療の群では抗不整脈薬投与でむしろ死亡リスク増加する問題が指摘され(効果不十分なら速やかに中止すべき)、抗凝固療法の必要性も強調された。この米国・カナダの報告は日本のガイドラインと考え方が矛盾するため(アミオダロンの使用多すぎ)、その後日本独自の臨床試験である多施設共同の無作為試験<J-RHYTHM試験>・・不整脈関連ではわが国初の大規模前向き臨床試験・・が2003-2005年実施され2007年3月に発表された。

 中身としてはまず発作性(発症48時間未満で治癒見込あり)と持続性(それ以上持続し1年未満)に分け、さらに各々をリズム治療とレート治療の群にランダムに振り分けた(いずれも抗凝固療法を併用)。

 で、結果的には発作性・持続性の両群でリズム治療のほうが洞調律維持率が高く、推奨された。持続性ではレート治療も有効だが抗不整脈薬の選択が適切なら2年は(半数の例で)洞調律維持効果もあったと判明した。本試験によって従来の日本のガイドラインのQOLへの有効性が裏付けられた。

□ 深夜(帯) ・・ ナースの勤務帯で、通常は深夜0時から早朝、日勤が出勤してくる9時くらいまでをさす。早朝は化粧が取れてしまっていて、見てはいけなかったものを見てしまうことあり。
□ ジアゼパム ・・ ベンゾジアゼピン系で、セルシン・ホリゾンが代表。痙攣を抑える目的で使用。人工呼吸管理時の自発呼吸抑制目的でも使用。通常の使用では呼吸抑制に注意。

□ 時間外手当=時間外労働手当=時間外 ・・ レジデントには無縁。一般病院では時間外手当がつくところと、つかないところあり。再就職の際はチェックしておくべき。

□ ジギタリス ・・ 強心剤。つまり心臓の収縮力を強くする作用あり。徐脈傾向になるので夜間の徐脈など要注意。投与量が過量だと中毒となる。濃度が正常でも高めの場合、高齢者で中毒症状起こすことあり。病院では略して「ジギ」と称される。

□ ジギタリス中毒=ジギ中 ・・ 血液中のジギタリス濃度が上昇して、消化器症状(嘔吐・食欲不振)、黄視、精神症状、不整脈がみられた場合。不整脈では2段脈が多く、その他頻脈性の不整脈が多い。中毒には過量投与のほかに誘因がある場合もあり、多いのは低カリウム血症、腎機能障害、高齢者。なお定期的に検査する血中濃度が正常でも高めなら中毒症状に至ることもあるので高齢者では特に配慮が必要。

□ ジギラノゲンC ・・ 注射版のジギタリス製剤。心房細動・上室性頻拍に、まず最初に使用。

□ 自殺企図(じさつきと) ・・ 自殺を図ろうと薬物中毒、外傷で搬送されてくる患者。夜間だと精神科でなく一般の病院で見ざるをえない場合もある。家族は付き添うべき。

□ 事務長 ・・ 病院の外来・病棟の管理責任をもつほか、職員・患者の意見・苦情を聞き、職員採用・解雇などの人事を仕切り、病院存続を第一に奮闘する。裏では卸業者らとつるんでゴルフ・酒三昧など、けっこうおいしい面もある。

□ 事務当直 ・・ 夜間交代で当直している事務員。ボイラー管理、夜間の見回り、救急搬送電話の受付など仕事は多い。眠れるかどうかは当直医同様、救急のあるなし次第。給与は様々で1回につき5千円〜1万未満といったところ。安いせいか必然的にコネつきの中年・高齢退職者になることが多い。

□ 若干(じゃっかん) ・・ 明確な定義はない。医師がよく使う表現。

□ 重症部屋(じゅうしょうべや) ・・ 部屋にそういう名前はつかないが、たいてい詰所の間近で呼吸器などついていて意識のない患者が数人入院している部屋をそう呼ぶことあり。

□ 十二指腸潰瘍=DU ・・ 若年男性に多い。空腹時のみぞおちの痛み。ガスター10で治ればいいが効かなければ胃カメラ受けるかPPIを処方してもらおう。

■ 自己免疫性膵炎=autoimmune pancreatitis=AIP 

 その発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎。2002年に診断基準が出来、さらに膵臓外病変やIgG4抗体の存在など新たな知見を加え、2006年に改訂がなされた。

 高齢男性(60歳代ピークで50-80歳だと8割)に多く閉塞性黄疸で発症(3割)することが多い。また腹痛も同頻度で、上腹部不快として自覚すること多く、つまり典型的な腹痛というようなものでないところが本来の膵炎と異なる。

 以下の膵外病変の合併がみられることがある(主に3つ)。

・ 硬化性胆管炎 ・・ 胆管の限局性狭窄だが、ステロイドへの反応が良好という意味でPSCとは区別される。

・ 硬化性唾液腺炎 ・・ 無痛・弾性硬の顎下・耳下・涙腺の腫脹を認めるがSS-A/B抗体が陰性である点でシェーグレンと区別される。

・ 後腹膜線維症 ・・ 付近の尿管・下大静脈の圧迫による水腎症、下腿浮腫。

 画像検査で腫瘍性病変が否定的で、

?膵管狭窄像(ERCPにより証明。MRCPは不向き)。典型では全膵管長の1/3以上を占める。

?膵腫大 :びまん性の腫大で、<ソーセージ様>あるいは<たらこ状>と表現される。腹部超音波では低エコー主体で内部高エコー散在。ダイナミック造影CTで(早期か遅延相)、腫大した膵周囲の低吸収域:capsule-like rimを認める。これは炎症・線維化の波及を意味する。

 が証明されれば強く疑われる。

 また、膵外病変の検出にはFDG-PETが有用。

 採血・画像(前述のものと重複するが)では・・

 ・ 高ガンマグロブリン血症、高IgGなかでもIgG4:特異的ではないが135mg/dl以上はほぼ確実。
・ 自己抗体では抗核抗体(ANA)、抗ラクトフェリン抗体(ALF)、抗炭酸脱水酵素?抗体(ACA)が50%以上の陽性率。
・ HLAではDR4・DQ4が高頻度。
・ 生検(超音波内視鏡・超音波ガイド下で膵生検・・膵管周囲に細胞浸潤と線維化を認める、あるいはERPで胆汁・膵液細胞診など)した組織の結果より確定診断となる。
・ ERCPでは下部胆管狭窄にともなう閉塞性黄疸を認める率が高い(7割)。
・ 2型糖尿病をよく合併する(6割半)。

 治療は経口ステロイド剤が有効。ほとんどが1-2週間で改善傾向をみる。具体的にはPSL内服 30-40mg/dayより開始、1-2週ごとに5mgずつ減量して最終的に2.5-5mg/dayへ、以後維持量(実際は維持量5-10mgがすすめられている)。維持期間はエビデンスないが6-12ヵ月が通例で再発を見極めながらの経過観察となる。離脱例もあるが再発例もあり。なお自然軽快する例もあるので1-2週間様子をみるべきという意見もある。 

※ ステロイドが効かない場合は膵癌のほうをむしろ再び疑う必要が出てくる。

※ 2006年基準はネット上載ってないようだ。以下はそれに関連したものあり。

http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/111_i.htm

□ 十二誘導=十二誘導心電図=心電図 ・・ 心臓を走る電気を12個の波形に分けて解釈するもの。手足首につける「四肢誘導」と胸につける「胸部誘導」に分かれる。

□ 準夜(帯) ・・ ナースの勤務帯のうち、夕方〜深夜0時あたりまでの勤務をさす。ただし0時の申し送りが終わってもそのあと記録の記載があったりで、帰宅が深夜の2−3時になることも珍しくない。

□ 女医不足 ・・ 女性医師の数が毎年10%ずつ増加しているにもかかわらず(臨床医の15%)、実際は結婚して子供が生まれるとなかなか仕事と両立できない。なので現場から離れる女医も増え続ける。女医の求人のほとんどがフルタイム(朝から晩まで平日出勤)という条件だからだそうだ。なので厚生省は今後、非常勤・パートタイムという(単発でしかも数時間勤務)条件で登録をお願いしていくそうだ。

□ 上行大動脈 ・・ 心臓から出てくる血液を全身に運ぶ、大動脈の最初の部分。やがて首付近でUターンし、「大動脈弓」と呼び名が変わる。

□ 上腕二頭筋断裂
・ 頻度は中枢側が多い。
・ 損傷は腱の慢性腱鞘炎による場合、加齢による変性などで起こる。動作では重量物を持ち上げた際に起こりやすい。
・ 視診で筋肉のふくらみが左右非対称。断裂腱が完全に退縮しているとピンポン球のように見える。
・ 筋力は近位腱の場合はほとんど低下しないが遠位腱では膝関節の屈曲力と前腕の回外力が低下する。
・ 近位腱では高齢者でADLに影響ないなら保存的治療(三角巾固定最低3週間)。遠位腱は手術優先。

□ 除菌療法 ・・ ヘリコバクター・ピロリに対する除菌療法を指す。抗生剤2種類に最強胃薬(プロトンポンプ・インヒビター)を1週間。抗生剤2種類も使用なので下痢が2・3割に起こる。除菌に失敗すればもう1度トライするが、それ以降は保険の適応外薬など現実的に手を出しにくいことが多く、一番の問題点となっている。

□ 褥創(じょくそう) ・・床ずれ。仙骨部(お尻の割れ目の直上)に好発。ベッドとの摩擦が続くことで起こる。体位変換で予防。低アルブミンはこれを悪化させる。

□ 助手 ・・ 大学病院での役職。講師より下だが研修医よりは上。つまり「その他」的な存在。しかし社会的な格はつく。
 例文)「僕は大学助手だから、バイトに制限があってヤだよ」

□ 徐脈 ・・ 定義では1分間に60回以下の脈。異型肺炎では高熱の割に脈が速くないので「比較的徐脈」と呼ばれる。なお徐脈は英語で「bradycardia(ブラディカルディア)」。職場では「ブラディ」と呼ばれる。

□ 腎臓癌 ・・ このうち85%が腎癌=腎細胞癌(グラヴィッツ腫瘍)で、あと腎盂癌(15%)、ウィルムス腫瘍(小児)。喫煙と関係があり遺伝的要因の指摘あり。3主徴は?血尿(6割にみる)、?腹部腫瘤、?疼痛。血行転移をきたしやすく早期発見しなければ転移した状態で見つかる。外来でなかなか発見がしにくい癌の1つ。しかし年間1万人が発症している(50-60代で男>女)。検査では採血・検尿のほか超音波・CT、IVPやMRIにて腫瘍の存在を証明し、さらに血管造影で腫瘍のタイプを推定していく。腎細胞癌の治療は進行の度合いにより、インターフェロンα・インターロイキン2を主体とした保存療法と、手術療法を組み合わせる。通常の化学療法・放射線療法には抵抗性。

□ 腎機能=ジンキ ・・ 以下の「腎機能障害」参照。血液検査上での腎臓の能力を表す。仕事場では「ジンキ」と略される。

□ 腎機能障害 ・・ 主には血液検査での?BUN、?Crで評価される。?の比重が高いと脱水や消化管出血が疑われる。

□ 人工内耳 ・・ 内耳の蝸牛部に電極を埋め込み、受信装置(側頭部の皮下)から電気刺激を送り出して聴神経を刺激し言語理解を可能にする。ペースメーカーのような形態になるが、電力はさらに外部から供給される形なので、ペースメーカーのような再手術は必要ない。適応は聴力レベルで成人90dB以上、幼小児100dB以上。年齢は日本では2歳以上、アメリカでは12ヶ月以上。なお埋め込み後、成人は半年で聴力が安定するが、小児では2-3年要するという。

□ 腎血管性高血圧 ・・ 腎血管病変による高血圧。高血圧患者の数%の頻度。高血圧のコントロールが容易になって2次性疾患の検索がおざなりになることが増えており、見逃しの可能性も高くなってきている(特に開業医)。
 具体的には腹部の血管雑音陽性、若年特に35歳以下の高血圧、腎機能障害目立つ高血圧→レニン・アルドステロン(カテコラミンも合わせて)採血とCT・腹部超音波検査→MRA・三次元CTなどで検索していく。教科書的にはカプトリル負荷試験(+レノグラム)、超音波ドプラ、静脈サンプリング、動脈造影もあるが、これは大学病院や公立病院・検査センター向けで、民間病院的にはなかなか無理。ただしオペ適応決定時には考慮が必要。

※MRA:狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。
※血管造影:腎動脈狭窄75%以上、狭窄後拡張、側副血行路を認めれば本症を強く疑う。

これらの検索により、以下の分類のどれかに決まっていく。

? 粥状(じゅくじょう)硬化症 ・・ 中年以降男性に多く他にも動脈硬化病変持っていること多い。腎臓では腎動脈の起始部に限局することが多い。高齢者・糖尿病の増加により、これの増加が著しい。
? 線維筋性異形成 ・・ 50歳までの女性に多く腎動脈の遠位部2/3に多い。脳動脈瘤の合併が多い。PTRAが成功しやすく奨められる。
? 大動脈炎症候群 ・・ 若年女性に多く、大動脈炎が波及して腎動脈起始部に限局すること多い。
? 動脈瘤
? 動脈塞栓症
? 動静脈ろう
? 外傷、腫瘍などの物理的圧迫
? 解離性大動脈瘤

□ 人事(じんじ) ・・ 上層部が決める、職場間の職員異動。病院の医者の人事は通常、4月が最多。秋に少し。つまり半年サイクルが基本のところが多い。
□ スーパーローテ=新医師臨床研修制度 ・・ 2004年4月より実施されている、研修医のため(国のため?)の臨床研修制度。医師法によると・・診療しようとする医師は2年以上研修を受ける義務あり、研修が修了してはじめて医籍登録として証明される・・などの内容あり。2005年現在の時点では特に外科系の成長遅延が問題となっている。2ヶ月の研修で外科の基本を学び終えるなど、到底不可能との声が多い。またこの制度のせいで研修医が都会に集中、地域医療に深刻な影響をもたらすと懸念されている。現在の教育病院の劣悪な環境を考えると、導入そのものが間違いだ。だが・・・それがこの国の<しわ寄せ>というやり方なのだ。

□ スイッチ療法 ・・ 市中肺炎(中等症まで。つまり重症を除く)入院患者での抗生剤投与を、早期に注射剤→内服へ変更する方法。欧米ではガイドラインに記載あり。2006年の報告(日本)では注射で通してする場合と効果は同じと証明され、より推奨されることになった。早期退院・コスト減が期待できる。

□ 膵炎 ・・ 急性と慢性に分けられる。急性膵炎は重篤化することあり入院加療が必要。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・ERCPの合併症としても重要。詳しくは「急性膵炎」「慢性膵炎」を参照。2001年以降診断基準が変わったりしているので、こと膵炎に関しては古い本は参照しないほうがいい。

■ 膵臓癌=膵癌=PK=浸潤性膵管癌 

 早期発見が難しい癌で、発見時は進行例のことが多い。健診レベルでは腹部超音波検査によるスクリーニングにたよっており、疑い例は腫瘍マーカー測定(CEA , CA19-9 , DUPAN2 , SPAN1)に造影腹部CT、さらにはMRIであるMRCPを行い、疑い強ければERCPを行う。

 超音波での早期発見目標は、あくまでも直径1センチ以下の膵臓内に限局する癌(膵管上皮にとどまる、いわゆる上皮内癌)だ。2センチだとすでに転移してる例もあるという。このような小さな段階では腫瘍マーカーが異常を呈することは少ない。つまり漫然とした腫瘍マーカーの測定は、膵癌の早期発見にはつながらないということだ。血中アミラーゼ・エラスターゼ?の膵酵素上昇は膵管の閉塞を疑うもので、むしろこちらが早期発見につながる検査項目だ。

 PETは有用で特に小肝転移の検出に関しても威力を発揮するが、それで膵臓癌が疑われたとしても良性か悪性かまでは診断できない。

<外科治療>

 積極的に切除される傾向にある。もちろん膵頭部癌での話だが、非切除と比べて切除したほうにのみ、長期生存例がみられる。以前は膵全摘が行われていたがその後のQOL低下が著しいため最近はほとんどしていない。代わりに幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)を行う症例が増えてきた。なお標準切除か拡大切除とどちらが有効かは結論が出ていない。

 1998年報告(欧米)で、切除可能な膵癌に拡大手術を行うことが予後を延ばすかどうか、の大規模試験が行われたが、結局標準切除と生存率は変わらなかった。その他の検討でも結果は同様だった。

※ 予後は非常に不良であり、切除例での5生率は10%、切除不能例の1生率は15%程度しかない。

※ 術後の化学療法は以前は5-FUだったが、のちにGEMが生存期間の有効性を証明した(FDAが膵癌で唯一認可した化学療法薬)。

※ 術前補助療法 ・・ 手術前に進行の度合いを軽くして手術に臨もうという(downstaging)治療法が検討中。術前に化学療法・放射線療法を行うというもの。まだエビデンスはなし。

<内科治療>

・ 局所進行病変に対する5-FUと放射線療法の併用は各々単独よりも有効。最近登場のGEMは放射線増感作用があるので併用の効果が期待されている。
・ 全身転移した進行癌への化学療法(GEM) ・・ 従来の5-FUより成績がよい。
・ ミニ移植(造血幹細胞移植の1つ) ・・ 言葉の意味は「ミニ移植」参照。

※ 超音波検査では特に健診では時間が限られていることもありポイントを絞って見る必要あり。主には低エコーの腫瘤像がないか、胆管の拡張はないか、膵管が拡張してないか(尾部まで追跡)など。ただガスが多いと膵臓の尾部は見えないことが多いのが難点。PETは有用であるが良悪性の鑑別までは秀でておらず、あくまでも超音波・CTを組み合わせて役に立つもので、PET単独での診断は無理だそうだ。

※ 症状は具体的には腹部または背部痛または腰痛。早期の小さな癌でも症状をきたすことあり、しかも一過性のこともあるという。また糖尿病発見・増悪がキッカケになるケースもまれではない。つまり主治医の頭の中にあるかないかで早期診断の確率が変わってくる。

□ 水分制限 ・・ 心不全・腎不全・肝不全患者の場合、こういう指示が出ることが多い。つまり水分過多によって病状悪化を予測される場合に、こういう指示が出る。なお脳梗塞予防を目的に多めの水分摂取を勧める医師もいるが、これは根拠もエビデンスもないいい加減なものである。夜間頻尿を増やすだけ。安易な指導は慎もう。

□ 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう) ・・ 高齢者でよく出くわす。特に療養病棟・訪問診療で発見が遅れがち。躯幹、四肢屈側が好発部位で掻痒を伴う。特に免疫低下例。自己免疫性水疱症の1つで、表皮ー真皮間接着が障害されることにより、ヤケドの水ぶくれのような発疹ができる。表皮下水疱(多数の好酸球含む)の周囲は発赤で、痒い。1/3に口腔内びらんを認める。血液検査での好酸球増加は病勢を反映する。ステロイド内服が第一選択。軽症なら軟膏でいけるときもある。びらんが二次感染を起こすと治癒が遷延したり、びらんが広範なら創部からの電解質などの喪失により熱傷のときのような病態にまで発展(体重減少、発熱、貧血)する場合もある。悪性腫瘍を合併するという指摘が従来からあるが実際の頻度は高くない。

□ スギヒラタケ関連脳症 ・・ 2004年秋に東北・北陸で多発した脳症。原因不明であるが、スギヒラタケ摂取により血液脳関門が障害された病態と考えられている。摂食後すぐには発症せず、2日から3-4週間の無症状期があるのが通常のキノコ中毒と異なる。初発症状は振戦、構音障害、下肢脱力などで2日〜2週間続く。その後、痙攣またはせん妄〜昏睡まで呈するようになる(主症状期といって1−2ヶ月続く)。回復しても神経後遺症を残すことがある。死亡率は40%。MRIで所見がみられるのは初発症状出現から2-10日後の話である。治療は対症療法。ステロイドパルスで一部寛解の報告あり。本病態は腎不全に好発、また死亡率の高いことより、腎不全患者あるいは80歳以上はスギヒラタケを摂食しないよう呼びかけられている。

□ スケール表=スライデンィング・スケール=スライディング ・・ 糖尿病あるいは感染などで高血糖の患者の血糖を随時測定、そのときの血糖に応じてのインスリン使用量などが指示された表。ドクター指示のもと、ナースがこれに従う。

□ スタイレット ・・ 挿管チューブに入れて、チューブにしっかりとしなりをつける針金。好きな形に曲げてチューブに入れて可。気管内にチューブが入り確信がもてた時点で抜く。
 
□ スタチン≒HMG-CoA還元酵素阻害薬 ・・ 高コレステロールを下げるための薬。肝臓内でのアセテート→コレステロール合成に関与する酵素である<HMG-CoA還元酵素>を阻害して、コレステロールを作らせない。なお高齢者で心血管疾患の既往ありまたはハイリスク患者の場合は、コレステロールがたとえ正常でも積極的に投与しておくべきとされている(※)。副作用は横紋筋融解。特に腎機能が悪いとき。筋肉痛・CPK上昇の有無が重要。

※ PROSPER試験で証明済み。コレステロールの高低にかかわらず、心血管イベントを有意に(15%)抑制した。

追伸)2005年3月発表のTNT試験では、アトルバスタチン10mgと80mg投与群との比較が行われ、後者のほうがCHDを抑制すること、またLDL-Cの目標値を(常識的には100mg/dl)80mg/dlまでしたほうがよりCHDを予防できるという結論に達した。

□ ステイタス=地位

□ ステる ・・ 病院内の会話で使われる用語で、「亡くなる」。語源はドイツ語のsterben(ステルベン)=死亡が由来。

□ ステロイド・パルス ・・ 重症化した患者に最後の手段として行われることの多い、3日間の限定・ステロイド大量治療。炎症を強力に一気に抑えるのが目的。半量の場合は「セミパルス」などと呼ばれる。

□ ステント ・・ 冠動脈の狭窄部位に留置する金網。単に風船で膨らませるより再狭窄は少ない。2004年8月からは、これに薬剤を塗布した<薬剤溶出ステント=DES(Drug Eluting Stent)>が保険適応となり優れた成果をあげている(従来のステントに比べて再狭窄が少ない)。血管径2.5-3.5mmの病変が適応と決まっているが、実際はあまり配慮されてないという。それと予後的な検討はまだ十分されてない(ただし2003年報告のResearch登録試験では急性冠症候群での心事故発生率(300日追跡)ではDESに有利な有意差)ので、盲目的な過剰使用は避けたい。モウケに走っている病院は特にだ。
 ※ 従来型のステントはBMS(Bare Metal Stent)という呼び名で区別されている。

□ ストック ・・ 主に薬剤の余り分のことをさす。伝票処理したが結局使用せず残ったもの、患者が忘れて帰ったもの、中止で残ったものなど。他の患者用に緊急的に使用する場合もあるが、<ふだん使えそうな>薬、たとえば風邪薬や胃薬などは職員たち(特にナース)がこぞって持って帰っていることが多い。

□ ストラテジー ・・ 技術の手順。

□ スパズム=スパスム=spasm=攣縮 ・・ 冠動脈などの痙攣。異型狭心症によるもの、カテーテル検査自体に伴うものなど。ただし脳外科領域でも使用する用語。

□ スピロノラクトン ・・ 利尿剤の1つでカリウム保持性。それによる高カリウム血症への心配から使用はラシックスほどされてはいなかったが、1999年のRALESスタディー(追加したほうが心不全の予後がよかったという画期的な報告)以来、ラシックスを減らしてでも併用すべきといわれるようになった。なおACEIあるいはARBの併用でカリウムはますます上がるので注意。

□ スロンブス=thrombus ・・ 血栓。血の塊。代表的なものは心臓の左心房にできる「左房内血栓」。心房細動や、大きな左心房で出来やすい。なお通常の超音波では完全には否定できない。食道エコーで確認すべき。

□ スワンガンツ(Swan-Ganz)・カテーテル ・・ 心臓の中の血行動態を測定するためのバルーン付き肺動脈カテーテル。検査用のもの。ときには点滴用ルートとしても使用できて便利。循環器では「ガンツ」などと略される。
□ 髄膜刺激症候 ・・ 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候の総称で、陽性なら髄膜炎を疑う。しかし近年(2003)、これらの診断価値は低いものと指摘されている。髄膜炎を疑った場合の積極的な髄液検査が勧められている。

□ 頭蓋内圧=intracranial pressure=ICP ・・ 頭蓋内腔(頭蓋骨内の脳が8割、あと血管・髄液腔)の圧を、髄液によって測定(つまり腰椎穿刺によって)したもの。髄膜炎。脳腫瘍などではこれが亢進し、頭蓋内圧亢進症状としての自覚症状?頭痛(早朝起床時に多い)、?嘔吐(悪心伴わず噴出)、?視力障害がみられる。他覚的所見では?(眼底検査での)うっ血乳頭、?髄液圧亢進(側臥位で200mmH2O以上)、?外転神経麻痺、?意識障害(ヘルニアによる)、?徐脈、?血圧上昇などがある。これに対する緊急治療としては患者頭部を30-45度挙上する、挿管し過呼吸にする、グリセオールを投与する。

□ 静菌的作用 ・・ 抗生剤の作用形式の表現。菌の数を減らすことはできないが、増殖を抑えることができるという意味。これに対し増殖も菌数も減らせる場合を<殺菌的作用>という。

□ 成人市中肺炎診療ガイドライン ・・ 2005年の赤いガイドライン本が最新。2000年に出たガイドラインは問題があったらしい。特に重症度判定の分類のところで、旧の分類では予後との相関が出なかったらしい。そこで作り直した重症度分類が記載されている。画像診断に関してはノータッチで今後検討していくという。

以下が新しい基準。

● 身体所見、年齢による肺炎の重症度分類

<使用する指標>
? 男性70歳以上、女性75歳以上
? BUN 21mg/dl以上または脱水あり
? SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
? 意識障害
? 血圧(収縮期)90mmHg以下

<重症度分類>
軽症:上記5つの項目のいずれも満足しないもの
中等症:上記項目の1つまたは2つを有するもの
重症:上記項目の3つを有するもの
超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの
    ただしショックがあれば1項目のみでも超重症とする

<項目該当数に応じた対処>

  0項目 → 外来治療
1・2項目 → 外来または入院
  3項目 → 入院治療
4・5項目 → ICU入院

※ 呼吸数の測定は肺炎治療上、重要な意味をもつとして推奨されている。

□ 声門 ・・ 喉頭の入り口。その奥が気管→肺へとつながる。挿管チューブが入れば(カフ空気入れて)当然声は出ない。

□ 脊髄損傷

・ いったん傷害された脊髄は不可逆性な経過をたどることが多い。
・ 脊髄ショック=spinal shock ・・ 損傷部以下の感覚・運動機能や深部反射が完全に消失した状態。

・ 頸髄損傷 → 四肢麻痺
・ 胸髄、腰髄、仙髄ないし馬尾の損傷 → 対麻痺

・ 高エネルギー外傷(高所転落など) → 横断性損傷 ・・ 障害部以下に対称性の感覚脱失、運動麻痺、膀胱直腸障害。
・ 軽微な外傷(高齢者の転倒など) → 中心性脊髄損傷 ・・ 傷害部以下の温痛覚障害と上肢優位の運動麻痺。脊髄が慢性的な虚血(脊柱管狭窄症など)の状態にある頸髄に発生しやすい。血行の乏しい中心部ほど症状が出やすいため上肢優位の麻痺症状となる。

・ 肩外側 ・・ C5 ※(県外で仕事=肩外+C5)
・ 乳頭 ・・ Th4 ※(吸ってよ=乳+Th4)
・ 剣状突起 ・・ Th7 ※(7人の侍=Th7+剣)
・ 臍 ・・ Th10 ※(天才=10+臍)
・ そけい部 ・・ L1 ※(そけいはエロい=そけい+L1)
・ 横隔膜(呼吸筋) ・・ C4 ※(核爆弾=隔+C4爆弾)
・ 三角筋・上腕二頭筋(肩挙上・肘屈曲) ・・ C5
・ 橈側手根伸筋(手関節背屈) ・・ C6 ※久保田利伸(C+6+橈+手+伸)
・ 上腕三頭筋(肘伸展)・指伸筋腱 ・・ C7
・ 指屈筋腱 ・・ C8
・ 骨間筋(手指内外転) ・・ Th1 ※股間が痛い(骨間+Th1)
・ 腸腰筋(股関節屈曲) ・・ L1-3 ※超陽気なイーサン(腸腰+1-3)
・ 大腿四頭筋(膝伸展) ・・ L2-4 ※大したことニャイよ(大+四+2-4)
・ 前脛骨筋(足関節背屈) ・・ L4 ※前、蹴るよ(前+頸+L4)
・ 趾伸筋腱(足趾背屈) ・・ L5 ※ラッコ失神(L5+趾伸)
・ 腓腹筋(足関節底屈) ・・ S1 ※(「社長!一言!」「ピップ!」=S+1+腓+ふ)←分かるヒトにはわかる。

◇腱反射
・ 腕橈骨筋反射 ・・ C6 ※(ワンと鳴くシロ=腕橈+C6)

・ 上腕二頭筋反射 ・・ C5
・ 上腕三頭筋反射 ・・ C7 
    ※みんなニコニコ上機嫌(三+7+二+5+上)
・ 膝蓋腱反射 ・・ L2-4
・ アキレス腱反射 ・・ S1
    ※ブタが妊娠呆れるわ(蓋+2-4+アキレス+1)

◇表在反射
・ 球海綿体反射 ・・ S2-4 ・・ 亀頭部(陰核)を指で急につまむと肛門括約筋が収縮。脊髄ショック後にもっとも早く回復する反射。※急所封じ!(球+2-4)
・ 肛門反射 ・・ S3-4 ・・ これの消失は脊髄ショックを疑う。 ※黄門さんよ!(肛門+3-4)

◇病的反射
・ Babinski反射

以上をふまえて画像検査を行う。

□ 咳喘息=cough variant asthma ・・ 8週間以上持続する咳で喘鳴なし+気管支拡張薬が有効。つまり喘息の典型的な所見ではないが喘息の薬が効く病態。実際、本疾患は喘息の前段階(軽症型)といわれており、実際3割が気管支喘息に移行する。喘息らしき所見がないといっても呼吸機能検査では閉塞性の障害を軽度認めることはあり、喀痰中の好酸球増加も認める。実際の治療は通常の喘息に準じるが、特に吸入ステロイドの早期使用で喘息への移行を減らせるという報告がある。あと鑑別する疾患としてアトピー咳嗽(アトピー関与で気管支拡張薬無効)、それとこれ(アトピー咳嗽)に加えて軽症喘息の要素がプラスされた非喘息性好酸球性気管支炎がある。

□ 接待 ・・ MRや卸業者による、商品販売促進のための飲食・娯楽事業。相次ぐ不祥事のため最近は控えめ。官公立は全面禁止が建前。民間はまだゆるい。開業医はムテキング。昔(バブル期まで)は医者の家族旅行、野球観戦、学会宿泊のホテルなどすべてにわたってフォローがされていた。

□ セッティング ・・ お膳立て。準備。

□ セデーション ・・ 鎮静。人工呼吸器装着時、あるいは手術時に鎮静剤の持続投与で眠らせること。

□ セフェム系抗生物質 ・・ 抗生物質の中で最もポピュラーで研修医が最も使いたがる。でも万能ではなく、結核やマイコプラズマなどの異型肺炎には効かない。ペニシリンと構造が似るので、ペニシリンアレルギー患者に使用すべきではない。

□ セルベックス ・・ 胃粘膜保護剤。PPIやH2ブロッカーほどの強力な作用はない。

□ セロトニン症候群 ・・ 抗うつ剤(セロトニン作動薬)によって起こる、自律神経症状(発汗・血圧変動・頻脈)・意識障害・振戦。発熱、精神症状(不安焦燥・錯乱)、興奮、下痢の症状も伴う。

□ 潜血反応 ・・ 便潜血と尿潜血あり。便潜血陽性は大腸癌・憩室・腸炎など、尿潜血陽性は結石、膀胱癌などの除外が必要となる。したがって便潜血陽性→注腸造影(バリウム)、尿潜血陽性→尿中細胞診・腹部超音波検査となる。ただし女性の尿潜血陽性は日常茶飯事、また鉄剤内服による便潜血陽性にも注意。

□ 穿孔(せんこう)=パーフォレーション ・・ 臓器に穴が開くこと。通常は潰瘍による穿孔などの消化管穿孔の意味で使用。腹膜炎に進展するので、手術が早急に必要となる。

□ 先天性プロテインC欠乏症 ・・ プロテインCは強い抗凝固作用と線溶促進作用をもつ。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で、20歳までは無症状なことが多く、中年過ぎても無症状のことが多い。40歳以下での静脈血栓症の6-8%が本症によるものとされる。血栓の形成は下肢深部静脈に多く75%も占める。動脈血栓としての心筋梗塞・脳梗塞も起こす。

□ 先天性プロテインS欠乏症 ・・ プロテインSは活性化プロテインCによる凝固因子(?a、?a)の失活を促進するコアファクター。先天性欠乏は常染色体優性遺伝で血栓の形成は下肢深部静脈に多い。脳梗塞の頻度はC欠乏症より多く再発が多いのも特徴。

□ 専門医 ・・ 医師が取る資格で、分野により細分化されている。資格取得には経験年数、症例レポートや学会報告の記録など用意すべきものは多い。あとはマークシートのペーパー試験。医師の性格やトラブル歴(よほどの場合は別)、臨床の場での能力・評判などは考慮されていない。これらの資格は定期的な更新があり、手数料を毎度取られる。さらに皮肉っぽく言えば、学会の資金源としても非常に重要な存在でもある。

□ ゼク=病理解剖 ・・ 患者死亡後、家族の同意をもとに行われる死体解剖。

□ 前回do(ぜんかいどぅ) ・・ 投薬などの(ドクター→ナース)指示で、以前に指示した同内容でやってくれ、つまり<以下同文>の意。

□ 全身倦怠感=倦怠感 ・・ しんどい。疲れ。やる気なし。

□ 前投薬 ・・ 検査などの前にあらかじめ投薬すること。これにより検査をスムーズに行う。例えば胃カメラ前のブスコパン
(消化管の動きを止める)など。
□ 挿管チューブ ・・ 人工呼吸器から肺へ確実に酸素を送り込むためのパイプ。体内の二酸化炭素はここから呼吸器へ。交通路はここのみなので、痰で狭くならないよう適宜、痰を吸引する必要がある。なおチューブの周囲には風船様の部分(カフ)があり、ここに空気を入れて気道にジャストフィットさせる。

□ 送気 ・・ 内視鏡のボタンを押して、胃などに空気を送ること。これにより中が拡がり、観察しやすくなる。しかし患者がゲップを繰り返すと逆のことになるので、胃カメラ中のゲップは極力我慢をさせる。
 
□ 早期再灌流(そうきさいかんりゅう) ・・ 冠動脈の閉塞(心筋梗塞)が血管形成術する前に解除され、流れが復活すること。この場合CPKは通常よりも早くピークに達し、かつ高値となる。

□ 早期発見(各論的に)

○ 間質性肺炎
・ KL-6 ・・ ?型肺胞上皮細胞などから分泌、血中に出る。線維化の指標。サルコイドーシス、進行性の肺結核でも上昇する。なお細菌性肺炎・健常人では上がらない。またKL-6は腫瘍マーカー的な側面もあり、肺腺癌、乳癌、膵癌での上昇が報告されている。
・ SP-D ・・ 肺胞で作られるサーファクタント蛋白由来で、?型肺胞上皮細胞・クララ細胞より分泌。KL-6と同様に線維化の指標。KL-6が上昇しない好酸球性肺炎でも上昇することあり、肺水腫・肺炎でも上昇することもありで特異性には劣る。なお高分化型腺癌で上昇の報告もあり。※ SP-Aの特異性はさらに低い。

○ 感染症

・ レジオネラ肺炎における尿中抗原検査 ・・ 菌の外膜構成成分を検出。感度90%以上、特異度100%近く(米国ではこの検査でレジオネラの7割が診断されている)。ただし、発症初期には菌量が少なく偽陰性の可能性あり。しかも検出するのはレジオネラの血清型1型のみであり、その他の血清型や亜菌種を検出できない(日本での1型の検出頻度は40%)。なのでレジオネラの臨床所見があれば検査陰性でも治療にかかる必要がある。
・ 肺炎球菌性肺炎における尿中抗原 ・・ 菌のキョウ膜多糖を検出。感度は80%、特異度97%でありレジオネラ尿中抗原と同様の検出率。小児での疑陽性が問題となっている(耳鼻科領域の肺炎球菌を検出する疑い)。

 以上の2つは感染成立から数週間陽性が持続するので、必ずしも最近の発症とは限らない。

○ 急性心筋梗塞
・ ミオグロビン ・・ 超急性期に上昇するが心筋への特異性はなく、いろんな筋疾患で上昇する。運動、筋肉注射での影響も受けて上昇する。
・ H-FABP ・・ 心筋細胞に特異的な細胞質蛋白。ミオグロビン同様に超急性期に上昇するが、骨格筋にもわずかに存在するので、これもやはり運動、筋肉注射での影響も受けて上昇することがある。なお発症2日目以降の再陽性化は再梗塞を意味する。
・ トロポニンT・トロポニンI ・・ 心筋線維の一部。なので心筋細胞に極めて特異的。臨床で測定可能なのはトロポニンTのほう。血中存在期間が長いので急性期にだけ検出されるわけではない。しかし超急性期、とりわけ発症6時間以内での感度に乏しい(このときはH-FABPのほうが好ましい)。
・BNP ・・ 心不全の予期、重症度把握のために測定。40-50pg/ml以下では心不全ではない。それ以上なら心不全の疑いと考え超音波などの検査に移る。100pg/ml以上では何らかの治療が必要な心不全の存在を示唆する。

○ 脳血管疾患
・ 頸動脈エコー ・・ 頸動脈狭窄の有無(NASCETでの測定法:狭窄度60%以上で脳血管イベントのリスク年間3.2%)、IMT肥厚の有無(1.1mm以上は異常肥厚)、プラーク(1.1mm以上のIMTのこと。プラーク厚の和と数よりプラークスコア(PS)を算出する)の程度の把握。

○ 消化管
・ 血清ペプシノゲン法 ・・ 胃粘膜の炎症・萎縮を反映。ペプシノーゲン(PG)のサブタイプ?(主に胃底腺に存在)・?(他の腺にも広範に存在)のうち?の増加は胃酸分泌の増大を示唆する。正常のPG?:?比は3:1。胃癌のスクリーニングとしてはPGI 70μg/L以下かつPGI/II比3.0以下の組み合わせだと感度64%、特異度87%と良好な成績。なので早期胃癌のスクリーニング法として行われるべき検査。
  PG ↓ : 萎縮性胃炎、胃腺腫、悪性貧血、胃癌、切除胃
  PG ↑ : 消化性潰瘍、急性胃粘膜傷害、腎不全、PPI服用
・ ピロリ抗体(これまでの記事参考)
・ 便潜血反応 ・・ 大腸癌のスクリーニング。?化学法、?免疫法(ヒトヘモ)の2つ。?は肉類摂取・薬品による疑陽性の問題があり、3日ほど食事・生活制限が必要。?の場合はそのような制限はなく感度も?より良好なので、実際は?が主流。
・ 便中遺伝子検査 ・・ 便に混じった癌細胞のDNAを抽出。様々な遺伝子が明らかにされているが全ての大腸癌に発見されるわけではなく、陽性となった遺伝子の組み合わせで経験的に診断していく。

○ 肝胆膵

・ E型肝炎に関して ・・ 原因不明の肝炎をみた場合、測定する意義がある。HEV-RNA(発症〜発症2ヶ月弱まで)の定性検査は、HEV遺伝子型の3・4型を検出できる。※4型は重症度高い。抗体ではHEV-IgM抗体(発症時にピーク、以後3-4ヶ月陽性持続)、HEV-IgG抗体(IgMより若干ピーク遅く、長期間陽性持続)がある。
・ C型肝炎に関して ・・ C型抗体陽性であればウイルス有無を知るためにHCV-RNA定量(PCR法)を行う。
・ B型肝炎に関して ・・ HBV-DNAの新たな検出法として、最近ではDIRECT法(PCRを用いて高感度、感染性のあるもののみ測定)が有用。

・ NASH(非アルコール性脂肪肝炎) ・・ 単純性脂肪肝との鑑別として、NASHのほうにより明瞭な所見としてはHOMA-IR(インスリン抵抗性指標)、フェリチン、線維化マーカー(ヒアルロン酸・?型コラーゲン)が高値を示してくる。なおNASHの場合ALT有意のトランスアミナーゼ上昇(100以下)、線維化進行例だとむしろAST有意となりALP・γGTPのほうの上昇は軽度。
・ AIH(自己免疫性肝炎) ・・ 3分の1が急性発症する。特異的な自己抗体としてANA,ASMA,抗LKM-1抗体,SLA抗体などがある。
・ PBC(原発性胆汁性肝硬変) ・・ 無症候性が7-8割にも及ぶ。AMA、AMA-M2を測定。

以上の3つは組織診断でより確実となる。

・ HCC ・・ AFPはHCCだけでなく慢性肝炎や肝硬変などの良性疾患でも上昇する。これを鑑別するために、AFPのサブタイプL3分画を測定する(通常はAFP 20ng/ml以上の場合)。L3が10%を超えればHCCが強く疑われる。一方PIVKA-IIは良性疾患ではほとんど上昇しないがビタミンK吸収障害(長期の閉塞性黄疸、クマリン内服)、抗生剤長期投与、アルコール性肝障害で疑陽性示す。なお超音波でHCCが疑われた場合、さらにダイナミックCTにて鑑別をすすめていく。

・ 胆道癌 ・・ ほとんどが進行例での発見。マーカーではCA19-9、DUPAN-2が陽性率80%。ただし閉塞性黄疸があると癌なくても高値になる。一方CEAの陽性率は50%。CA19-9とCEAを併せれば胆道癌全体で90%に上がる(しかし早期のステージ?では20-25%しか陽性にならず、早期発見には向かない)。なおSLXやNCC-ST-439は陽性率50%しかないが特異性がCA19-9より高い。早期発見にはALP・γGTPが有用。ALP上昇があれば画像・マーカー測定。エコーで胆道拡張が疑われればMRCPを確認。これで確実ならERCPへと移る。

・ 膵癌 ・・ これもほとんどが進行例での発見。CA19-9の陽性率は膵癌全体で69%だがステージ?では5%にも満たない。CEAの陽性率は全体で33%、これもステージ?では低下する。膵管狭窄を反映する膵逸脱酵素(アミラーゼ、エラスターゼI、リパーゼ、トリプシン)の上昇もみられ、特にエラスターゼIは小膵癌の62%で上昇し、早期発見に向いている。画像では超音波でまず発見されるケースが多い(4割がこれより診断)。超音波で主膵管の拡張、小のう胞が見つかった場合はダイナミックCT、EUSでさらに検索。MRCPにより膵管の途絶を確認するが分枝までは描出が難しい。PETは腫瘍径2cm以下の場合感度が低下するという弱点あり早期発見には向かない。

○ 腎・泌尿器疾患

・ 尿検査 
○ 蛋白:試験紙法では尿蛋白は30mg/dl以上で陽性。健常人では1日40-100mgは出る。蛋白がアルブミン主体→糸球体性蛋白尿であり、β2マイクログロブリン主体→尿細管性蛋白尿。
○ 血尿:結石、腫瘍など。糸球体性血尿の場合赤血球は大小不同が主体を占めるのが特徴。そうでないものは血液中と同様の均一な赤血球所見。
○ 尿沈渣:硝子円柱→ネフローゼ症候群でよくみる。赤血球円柱→血尿が糸球体性のものであることを確信。白血球円柱→ネフロンレベルの炎症(半月体形成性糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎など)を示す。顆粒円柱もネフロンレベルの炎症。細胞性半月体・炎症細胞浸潤を示す場合は急速進行性糸球体腎炎、IgA腎症、紫斑病性腎炎などを示唆する。

※ 最近60歳以上に急速進行性糸球体腎炎が増えている。ほとんどがMPO-ANCA陽性、つまりANCA関連腎炎である。早期治療がそのまま予後に響くため、早期診断のため血清クレアチニン、尿検査のほか腎エコー所見により早期発見を図る。

○ 血液疾患

△ 白血球

・増加、特に20000以上 
   貧血・血小板減少 → 急性白血病
   血小板増加、好中球・好酸球・好塩基球増加 → CML
   成熟リンパ球著増 → CLL
   血小板・赤血球増加 → 真性多血症
   CRP陽性 → 重症感染症

・減少、特に2000以下
   他の血球も減少 → 再生不良性貧血、MDS、急性白血病、巨赤芽球性貧血など、または放射線・薬剤性
   単独の減少 → 薬剤性、重症感染

△ 赤血球

・貧血 ・・ MCV、MCH、MCHCを参考に、?大球性高〜正色素性貧血、?正球性正色素性貧血、?小球性低色素性貧血に分類。
・多血症 ・・ 真性、ストレス多血症、二次性などの鑑別のために、マルクのほかビタミンB12、B12結合能、好中球アルカリホスファターゼ、エリスロポイエチンを提出

□ 相互作用 ・・ 薬物どうしの相性による影響。組み合わせによっては思わぬ副作用がみられる。点滴では混濁に注意。FOYやハンプは単独ルートが原則。

□ 総務 ・・ 病院職員の給料・予算、病名レセプトなど金銭的管理を行う。レセプトができるかどうかで給与など待遇面も違ってくる。

□ 側副血行路=コラテラル=コラテ ・・ 閉塞・高度狭窄している血管の末梢部分に向って、他の血管からさらに伸びている血管。これにより途絶えた血流は一部補充される。

□ ソルメドロール=ソルメド ・・ ステロイド剤。気管支喘息、ステロイドパルス療法のときなどに主に使用。

□ 造影欠損 ・・ 造影をしたときに血管が染まるはずが、部分的に完全に染まらないこと。血栓の存在を示唆する。

□ 造影剤 ・・ CTなどで使用される注射での造影剤使用にあたっては、アレルギーの有無と腎機能障害の有無が重要。

□ 造影剤アレルギー ・・ 造影剤投与後にショック状態、蕁麻疹などのアレルギー症状が出ること。これを避けるため以前は造影剤テストが行われていたが、意義なしということでしなくなった。

□ 続行 ・・ その内容をさらに継続・続投すること。点滴や処方内容のことを指すことが多い。
□ ターゲス=デイリー・プロフィール=デイリー・プロファイル=血糖日内変動 ・・ 糖尿病患者の1日の血糖推移。通常は7回測定。各食事の前後と眠前。合わせて血中IRI(インスリン)、検尿も採取することが多い。

□ 退院サマリー=サマリー ・・ 患者が退院したときに作成する病歴要約の書類。入院時の情報、入院経過、検査結果、退院後の方針
など、書く事は山ほどある。昔は手書きだった・・・。

□ 対光反射 ・・ ペンライトで瞳孔を照らし、光の当たった縮瞳の有無を見る。これが直接対光反射。光の当たってない
もう一方の瞳孔を見るのが間接対光反射。なお、対光反射前の左右の瞳孔の大きさ・左右差も重要だ。

□ 対症療法(たいしょうりょうほう) ・・ 根本的な治療でなく、現在の症状・状態にのみ対処する治療内容。その場しのぎ、ともいえる。

□ 退職金 ・・ ドクターの場合ほとんど受け取れないところが多い。各人、勤務前に確認しておく必要が・・そんな勇気はないだろうな。公立の病院では発生することも多いが、通常は3年以上勤務しないと出ない。人事はそこもきちんと計算している。

□ 帯状ヘルペス(たいじょうへるぺす) ・・ 肋間神経に沿って起こる発疹。痛い。再発ありうる。人には移らない。

□ タミフル ・・ インフルエンザA/Bウイルスの薬で、発症48時間以内なら有効。1歳以下は慎重投与。最近、耐性の報告あり。なお昨年から出たタイプは2年間の品質期限(それまでは1年間しかもたなかった)。したがって昨年処方された分は捨てずに、今年使用しても可。意外と知られていない。
 ※ 鳥インフルエンザのパニックで、近いうち需要が増加する恐れがある。今のうちに個人的に備蓄することをすすめる(官僚・一部の医療従事者はおそらく独自のルートで入手するだろう)。

□ たこつぼ型心筋症=Ampulla Cardiomyopathy=たこつぼ型心筋障害 

 極めてまれで70歳以上のすなわち高齢者女性(男性の7倍!)に多く、症状・心電図所見(特に前壁中隔領域のST上昇)は一見AMI(急性心筋梗塞)と思いきや、カテーテル検査では冠動脈に狭窄所見が認められず、左室造影で収縮期に≪たこつぼ≫形状を呈する心室を認める。

 具体的には心尖部の収縮が低下し(心尖部バルーン状拡張・無収縮)、これを代償するかのように心基部が過大な収縮をする(心基部過収縮)。

 発症後数週間〜一ヶ月以内に心機能は改善するものが多く、予後良好といわれているが中には重症例もある。

 原因は内因性カテコラミン増加による心筋障害説が有力。精神的・肉体的ストレスを契機に発症するらしい。中越地震の際にこの患者が増えたのもうなずける。

 なお88症例を解析した論文(日本、2001年)によると、男女比1:6.3、年齢10-88歳で平均67歳、初発症状は胸痛・胸部不快が67%、心電図異常(9割がV3-4に最大のST上昇。経過とともにQT延長+巨大陰性T、やがて正常化・・・まさに前壁梗塞の経過をとる)が20%。採血ではトロポニンT陽性が72%と紛らわしい。CPK上昇は52%(壁運動低下部分の大きさのわりに、比較的上昇が少ない)。

 心不全・肺水腫が22%に合併、ショックが15%に合併。心破裂、多枝スパズムによる死亡例の報告もあるという。教科書的には、<一過性良性病態>ということになってはいる。

※ 古い論文では原因・病態として「多枝攣縮による気絶心筋」として報告されていたが今はあまり支持されていない。

※ さらに特殊例として、可逆的な左室流出路の狭窄例がある。左心室だけでなく右心室にもみられる。閉塞性肥大型心筋症とは機序がまた異なるという。流出路心筋の括約筋過収縮が考えられている。 

□ 多剤耐性(MDR) ・・ 通常は菌の場合に使用する言葉。抗生剤のほとんどが効かない菌(多剤耐性菌)。特に緑膿菌の場合、非常に厳しく、正直治療法がない。

□ 多剤耐性緑膿菌=MDRP ・・ 本来、緑膿菌に対して効くはずのβラクタム系、ニューキノロン系、アミノ配糖体系の抗生物質に耐性を獲得した場合。喀痰培養の抗生剤感受性結果、もしくは治療の過程からそう判断される。なかでも増加しているのはカルバペネム系を加水分解するメタロβラクタマーゼ産生菌だ。用途の広いカルバペネムの耐性化となると、事態はいっそう深刻だ(実際、有効な治療はない)。なので現在は治療というより予防のほうに重点がおかれている。ワクチンの試みもあるが、実用化にまで至ってない。

□ 立ちくらみ ・・ 立ち上がったときにクラクラする。起立性低血圧の症状。通常は立つと血圧は同じか上がるが、本症では逆に下がるのでめまいがする。自律神経失調の症状、あるいはα遮断薬(カルデナリンやハルナール)の副作用だったりもする。

□ 多発性骨髄腫=ミエローマ=MM ・・ 血液疾患。異常な骨髄細胞(腫瘍化した形質細胞)から異常で役立たずな抗体が金太郎飴状態に産生され(M蛋白)、血液がネバくなる。産生の場所のこともあり骨に病変、骨融解で高カルシウム血症も。正常な抗体は減るので感染症のリスク高い。治療はここ30年の伝統、MP間欠療法(メルファラン、プレドニゾロンを4日間併用、以後間欠的に4週間ごとに投与)。M蛋白を指標に。

□ タバコ(による中毒)

・ タバコ1本のニコチン量は7-24mg。致死量は0.5-1.0mg/kg(成人で30-60mgすなわち2本分、乳幼児で10-20mgすなわち1本分)。ただ実際はニコチンの催吐作用・吸収速度(ゆっくり)などにより実際の吸収量は少なめ。
・ 中枢神経・自律神経・運動神経に刺激・興奮的に作用しのち抑制作用を示す。アセチルコリンと異なり分解されるまでの時間が長い。
・ 大量喫煙、タバコ浸出液の摂取では刺激・興奮症状がみられないまま麻痺・虚脱→死に至ることもある。
   軽症:嘔気、嘔吐(摂取後初期10-60分以内)、頭痛
   重症:振戦、錯乱、虚脱、呼吸筋麻痺
  ※ 小児では誤飲量が少ないため、悪心・嘔吐、顔面蒼白、下痢、不安興奮程度。
  ※ 2時間以上たっても症状が出なければほぼ心配なし。
  ※ 日本小児科学会生活環境改善委員会の指針では、タバコを2cm以上誤飲したり、浸出液を誤飲した場合には胃洗浄を施行し、2cm以下の場合は経過観察するとされている。
・ タバコ摂取に気づいたらまず吐かせる。その際水を飲ませたりして出させようとしてはならない(かえって吸収を招く)。ただし浸出液の摂取の場合は水などを飲ませて直ちに吐かせる。
・ 大量服用時、症状発現時には胃洗浄を施行。
・ 重症例では下剤・活性炭を投与。
・ PAMのような拮抗薬はない。症状に応じて適宜、アトロピン、ジアゼパムなどを投与する。

□ タヒる=タキる ・・ 「tachycardia=頻脈」が語源。モニターが頻脈のときに職場でこう呼ばれる。

□ 短軸 ・・ 楕円があるとすると、その長い径が「長軸」で、それに直行する短い径が「短軸」。心臓の場合(ラグビーボールとすると)、縦切りが「長軸」で、輪切りが「短軸」。

□ 胆石=Gall Stone ・・ 持ってる人で痛みの経験があれば胆嚢ごと取るべき。今は開腹せず腹腔鏡でできる。

□ 胆嚢ポリープ ・・ 胆嚢の内部にときにみられる小さな腫瘤。経過観察とし、3〜6ヶ月ごとに再検査を勧めることが多い。のう胞もそうだが、いつまでフォローを続けるべきかけっこう悩む。

□ 蛋白尿 ・・ 正常人でも1日50-100mg程度は出ておりその場合<生理蛋白尿・・運動後や発熱時、起立時など>というが、病的な蛋白尿は1日150mg以上の場合である。試験紙で調べるのは(±)だとか(+)だとかの定性法。具体的にはこれらは濃度を表しており、

± →  5 mg/dl
1+ →  30 mg/dl
2+ → 100 mg/dl

 であると、大まかに示唆するものである。健診でひっかかるのはこのうち±、1+が最も多いが、1+以上は糸球体疾患を疑って精査を勧めるべきとされている。また試験紙での検査は、異常蛋白であるベンス・ジョーンズ、β2-MGは見落としてしまうのでそこは留意しておく必要あり。
 IgA腎症が実はかなり見落とされていたという報告(おいおい・・・!)があったこともあり、健診での尿蛋白はこれまで以上に気を遣いたい。

□ タンポナーデ=心タンポナーデ=心タンポ ・・ 心臓の周囲に心嚢液が溜まって、それで心臓が動きにくくなる。血圧低下・脈圧減少・頻脈となる。原因ありとなしがある。

□ 代医 ・・ 学会出張やバイト、病欠のときに立てるピンチヒッター。代わってもらった暁には、おごるかお土産しないと。

□ 大腸憩室炎 ・・ 大腸のうち上行結腸に好発する、憩室内(浅いマンホール)で起こった炎症。便秘で糞が慢性に蓄積すると起こりやすい(なので高齢者に多い)。好発部位の関係で、虫垂炎と誤診されることがある。

□ 大腸ファイバー=大腸内視鏡=コロンファイバー=大腸カメラ ・・ 肛門から入れて見るためのカメラ。下剤で便が十分出ていないと、観察が不十分となる。観察範囲は、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部あたりまで。

□ 代表者会議 ・・ 院長、婦長、検査技師など、各部署の責任者が集まり行われる井戸端会議。本音の議論がここで交わされる。めいめいが部下の意見を反映させる責任を負っているため、ときに戦争となる。

□ 脱臼・(関節面の骨折あり→)脱臼骨折

・ 骨折に伴う脱臼 ・・ Galezzi骨折(橈骨骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼)、Monteggia骨折(尺骨近位部骨折+橈骨頭脱臼)など。
・ 末梢循環不全があれば少なくとも6-8時間以内に血流再開の必要性あり。
・ コンパートメント症候群では12時間以内に筋膜切開を行う。

◇ 手関節
・ 遠位橈尺関節亜脱臼 ・・ 前腕回旋障害、脱臼部の骨性隆起。レントゲンで前腕回内外による(橈骨・尺骨の)位置関係変化あり。整復後1ヶ月間ギプス固定。
・ 月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼 ・・ 高度な手関節背屈で起こる。整復後1ヶ月間ギプス固定。正中神経圧迫による手根管症候群合併もあり。

◇ 肘関節
・ 全脱臼の2割。神経・血管(上腕動脈)損傷の危険度が高い。
・ 前方脱臼は肘関節屈曲位で前腕後方より外力加わったとき、後方脱臼は肘関節過伸展位で手をついた際。後方脱臼が多い。
・ 非観血的に整復。とくに後方脱臼では肘関節を屈曲し前腕を末梢方向に牽引して整復(Depalma法)。

◇ 肩関節
・ 大関節のなかで最も脱臼しやすい(5割)。95%が前方脱臼(肩関節の外転・伸展・外旋による)であり次いで後方脱臼。
・ 前方脱臼 ・・ 肩峰は過度に突出、前方に上腕骨頭を触知する。腋窩神経がしばしば損傷され上腕外側の知覚消失が起こる。

◇ 肩鎖関節
・ 肩峰に下向きの力がかかって生じること多い。
・ Rockwoodの分類では?〜?タイプに分類され、タイプ?:捻挫、タイプ?:亜脱臼、タイプ?:完全脱臼、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の後方転位、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の上方転位、タイプ?:鎖骨遠位端が肩峰や烏口突起下方にある(肺・腕神経叢の損傷ありうる)。
・ タイプ?・?は保存的治療。タイプ?は保存か手術かで意見分かれる。タイプ?以降は観血的整復となる。

◇ 足関節
・ 高所からの墜落が多い。内方、後方脱臼が多い。多くが脱臼骨折の形をとる。
・ 骨折を伴う場合は観血的整復。

◇ 膝関節
・ 前方脱臼 ・・ 膝の過伸展、後方脱臼 ・・ 膝関節屈曲時の回旋力によるもので、前方脱臼のほうが多い。
・ 前方脱臼では非観血的、後方脱臼は観血的に整復。

◇ 股関節
・ 後方脱臼がほとんど。高エネルギー外傷が多い。
・ 前方脱臼 ・・ 屈曲外転位に対する強い外転で起こる。屈曲・外転・外旋認める。
・ 後方脱臼 ・・ 股関節屈曲時+大腿骨長軸方向への外力で起こる。屈曲・内旋・内転認める。後方脱臼した大腿骨頭により坐骨神経が損傷されることあり。
・ 非観血的に修復可能が多いが全身麻酔が必要。

□ ダブルルーメン ・・ 太目のIVHカテーテル。2ルートある。カテコラミンやFOYなど、単独でいきたいルートが必要なときなどに使用。だがふつうのシングルカテーテルに比べて感染しやすい。

□ 致死性不整脈 ・・ 心室細動(Vf)と心室頻拍(VT)の総称。基礎となる心疾患があるかないかで以下に分類。
● 基礎心疾患あり→陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症など。
● 基礎心疾患なし→Brugada(ブルガダ)症候群、QT延長症候群

□ 中隔基部 ・・ 心室中隔(左心室と右心室の間の壁)の上方部分。心室中隔を流れる冠動脈の血流はまず基部から→下部(心尖部)へと。なので心室中隔の基部の動きの良し悪しで、ある程度冠動脈の病変部位を推定することが可能なときもある。「ベース」と呼んだりもする。

□ 注射当番 ・・ 朝・晩とある注射・点滴を、レジデントが中心となって1人ずつ回る、その当番。レジデントが少ない医局では院生や助手までが借り出される。

□ 虫垂炎 ・・ 右下腹部痛が特徴的だが、実際はみぞおちの痛みで初発する。血液検査で白血球増加を認めれば手術を視野におき抗生剤開始となる。腹部CTでは本来の虫垂部分がlowにぼやけるのが特徴。
※ 虫垂が盲腸先端まで映り、かつ直径が6?以下で炎症がなければ正常な虫垂と診断する。

□ 腸管浮腫 ・・ イレウスの際にみられる、水分が腸の中だけでなく腸の壁に貯留した状態。このため腸が重たくなり、動けなくなる。利尿剤で対処するが、循環不全対策の補液も重要。

□ 腸間膜動脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる動脈の閉塞。激烈で進行性の腹痛を呈する。腸は次第に壊死していくので早期診断が重要。心房細動など塞栓しやすいリスクの有無も重要。

□ 腸間膜静脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる静脈の閉塞。麻痺性イレウスを呈し、腸管浮腫が起こる。なので動脈閉塞とは全く病態が異なる。静脈は通常流れが遅いので、凝固傾向が背景にあることが多い。脱水・寝たきりなど。

□ 調剤薬局=院外薬局 ・・ 病院内に薬局を経営すると薬が余ったりしたとき損が大きい、ということで病院の外に建てられ契約した薬局。品数が豊富なのがメリットだが、通常中が狭いのと薬剤師が「いらんこと」言ったりトラブルが収集しにくいのが難。

□ 腸閉塞=イレウス ・・ 腸が何らかの原因で「詰まる」か「麻痺する」。これにより便が進まなくなり吐いてしまう。自力ではまず治せない。絶食と補液と鼻に入れるチューブが治療の基本。腹部の手術歴の多い人によくみられる。別名「イレウス」。

□ チラージンS ・・ 甲状腺ホルモン剤(T4)。甲状腺機能低下症に投与する。副作用に狭心症あり。
□ 痛風(つうふう) ・・ 足の1指の付け根(第一中足趾節関節=MTP)が9割以上を占める。背景には高尿酸血症あり。酒飲みか利尿剤内服中が多い。発症ピークは以前の50歳代から30代へシフトしてきている。痛みの予兆時にはコルヒチンを内服、発作つまり疼痛時にはNSAIDを短期大量に、つまり集中的に内服する方法が推奨されている。NSAIDが無効または使用できなければステロイド剤の使用。強調されることだが、内服中の尿酸下降剤の中止・減量は血管内の尿酸値の変動をきたしかえって発作が増強する危険があるので、あくまでも同量のまま継続する。

□ 使い物にならん ・・ 役立たずの医者を陰で呼ぶとき、こう言われている。
 
□ 「つけときますんで」 ・・ 検査や治療の延長、または引継ぎ医者の不在で常勤ドクターに無理をお願いしたとき、事務側がねぎらいでかける言葉。残業手当をつけておく、という意味。

□ 詰所=ナースステーション ・・ ナースの仕事場。朝9時ごろ・夕方5時ごろは「申し送り」で人数が集中。

□ 低栄養 ・・ 見た目だけでなく、血中の蛋白(特にアルブミン)が不足した状態をさす。あまり進むと浮腫が起こり(体がむくむ)、血圧低下などの循環不全を引き起こす。

□ 低カリウム(血症) ・・ 血液検査でカリウムが低い状態。不整脈を起こしやすくなったり血液のアルカリ化を起こすことあり全身悪化の原因となる。利尿剤で尿が出すぎた場合、点滴にあまりなかった場合に多い。病棟では「低カリ」と称される。

□ 低血糖発作 ・・ 意識障害の原因の1つ。米国では意識障害のある患者には(たとえ交通事故でも)?ナロキソン(麻薬拮抗薬)、?チアミン(ビタミンB1)、?50%ブドウ糖の3つが投与されるそうだ。?→麻薬中毒を否定するため、?→アルコール依存患者に?だけ処置されるとビタミンB1不足症状が前面に出てしまう(Wernicke脳症)から、とされている。日本では??はルーチンでないが、?は積極的に行われている。でも高血糖による意識障害もあるわけだから、搬入時にデキストロメーターで随時血糖をチェックするべきだろう。

□ 低酸素血症=低酸素 ・・ 動脈中の酸素(分圧)が低下した状態。

□ 帝大 ・・ もと帝国大学。東京大学や京都大、九大・阪大など。

□ 手が放せません ・・ 処置中に呼び出しがあったときにこう伝えてもらう。

□ テストバッグ ・・ 患者に入った挿管チューブに人工呼吸器をつなぐ直前、ホントに換気の出し入れができているか確かめるための袋。握りこぶし大。

□ てんかん<成人> ・・ 脳の興奮のために生じる発作。てんかん=けいれんではなく、そのほか異常行動(→複雑部分発作)や感覚異常(→単純部分発作)、腹痛(→自律神経発作)も含む。発作の大きさで全般発作、部分発作とに分けられる。分類のためには目撃者の証言、年齢、基礎疾患、脳波、画像検査が不可欠だ。

・てんかんと診断する以前に、失神発作との鑑別が必要である。失神発作にはワゴトニー、起立性低血圧、不整脈などの心臓関連、TIAなどの一過性脳血流低下、低血糖によるものがある。

・てんかんに対して、脳波により診断・内服調整を行うが、異常があっても発作波が検出されない場合があるので、睡眠・光刺激・過呼吸発作波を誘発することがある。

●全般発作→特発性

? 大発作=強直-間代発作 ・・ 強直期(意識失い四肢硬直伸展)→間代期(全身筋肉ガタガタ震わす)→四肢ダランとなり意識消失続く。この過程が数分続く。成人までに発症。

? 小発作=欠神発作 ・・ 10秒前後の意識混濁で目がうつろ。小児期〜青春期まで。成人になると消失。

? ミオクローヌス発作 ・・ 本人の意思と関係なく手足投げ出す。

? 脱力発作 ・・ 突然失神して転倒、1,2秒で回復し立とうとする。

●部分発作→2次性。脳血管障害後遺症(late seizure)だけとは限らず、周産期障害、脳腫瘍、AVMなど。

? 単純部分発作 
・ 運動発作→片側の四肢・顔面けいれん
・ 感覚発作→片側の四肢・体幹・顔面の異常感覚
・ 自律神経発作→腹痛・頭痛・めまいなど

? 複雑部分発作 ・・ 意識の混濁があり、自動症(つかむような動作、舌なめずりなど)あるいは強いデジャヴ感。

? 部分発作の二次的全般化 ・・ 部分発作→徐々に全身に拡がり→大発作型の全身けいれんへ移行。

 てんかんの内服は1種類から開始。血中濃度を測定。治療域に達するまで内服を増やすのでなく、目標はあくまで症状の安定化にある。発作が3−5年抑制されておれば徐々に減量していくことが多いが、そこはケースバイケース。

内服は以下の3種類が主体。

 VPA(バルプロ酸ナトリウム:デパケン)
 PHT(フェニトイン:アレビアチン)
 CBZ(カルバマゼピン:テグレトール)
 ※暗記→『健さん、アレと混ぜてくれ』

(副作用)
 テグレトール:骨髄抑制
 デパケン:肝障害・アンモニア上昇

□ テオフィリン ・・ 喘息に対して使用。気管支拡張作用をもつ。不整脈、痙攣に注意。投与中の患者さんは定期的に「テオフィリン血中濃度」を測定(ただし中毒域でなくても痙攣は起こしうる)。日本の「小児気管支喘息治療・ガイドライン2005」において、テオフィリン使用への注意喚起(中毒の危険性:いったん起こすと)がなされているにもかかわらず、いまだに使用頻度は高い。海外では中毒への感心が高くステロイド吸入など他の薬剤に移行しており、本剤はほとんど使用されていない。発熱時にはテオフィリンの代謝速度が低下して血中濃度が高くなり中毒域に達する危険性がある。

□ 点滴漏れ ・・ 静脈に入ったはずの点滴の針先が抜けたかズれたかで静脈を外れ、付近の皮膚内で漏れてしまった状態。皮下は腫れ神経を直接刺激、当然痛い。映画『ダイ・アナザーデイ』でボンドが点滴バッグをギュッと握り締めていたが、あれだとかなり漏れたのではないか、と余計な心配。

□ 点滴ライン=点滴ルート ・・ 点滴の通り道。

□ テンポラリー ・・ 一時的ペースメーカー。心臓内に入れるカテーテルと電池の入った機械からなる。カテーテルだけが入り、電池は外付け。あくまでも一時的な使用。1週間ぐらいが限度。

□ ディスカッション ・・ 議論を活発に討論すること。NHKで10代が罵り合いながらやってる言葉のケンカのイメージ。

□ ディスポ ・・ ディスポーザブル=使い捨て、の略。ディスポーザブル注射器を略していう場合、あと「あいつはいつでもクビにしてもOK」というウラ経営者用語として。

□ ディバイダー ・・ コンパスの形で足が両方とも針のやつ。心電図・超音波所見の計測に用いる。循環器医師は必須の道具。

□ デキスター ・・ 簡易自己血糖測定。通常は指先をカチンと針で刺し、にゅっと出てきた血の雫で血糖を測定(デキスターチェック)。痛がる人は腹部の皮膚で。

□ 「では時間のほうもさしせまって参りましたので・・」 ・・ 講演会にて、座長が<もうええかげんにせえよお前ら。わしはここまで>と会を閉じるときに使用する言葉。演者はホッとするが、最後に座長がここぞと本命爆弾(質問)を落とすこともあり最後まで気を抜けない。

□ デューティー ・・ 義務。決まりごとや、本日の業務をさす。

□ 電気泳動 ・・ 多発性骨髄腫を疑うときに提出する検査。総蛋白(TP)↑のときなど疑う。

□ 電解質 ・・ 通常は血液検査のナトリウム(Na)・カリウム(K)・クロール(Cl)を指す。現場では3つあわせて「ナトカリクロール」。

■ 電子カルテ ・・ 紙診療録からの電子化。医療のIT化に伴い導入が勧められてはいる。病院内での情報交換、地域医療ネットワークシステムなど医療機関間での連携に役立つ。ただし標準的機能の不備(ニーズが一致しない)、高価、医師への負担増、個人情報の流出、監査が困難など問題が多すぎ。今のところ、新規導入を強く勧めるのは業者とそれに加担・癒着した関係者であり、正直説得力に欠ける。

□ 伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん) 

※ 厳密に言うと、『とびひ』とは水疱性の場合の別名である。

 表皮への細菌感染で、びまん性にできる水疱または膿疱。水疱性なら黄色ブドウ球菌、痂皮性なら化膿レンサ球菌を疑う。

 前者は夏・小児、後者は季節柄・好発年齢なし、重症多い。なお特に後者では高熱も伴い、血液でASO・ASK・ADNase-Bが陽性となる。この(痂皮性)場合合併症(急性糸球体腎炎)を考慮し、抗生剤投与は長めに行う。

 抗生剤は共通で、ペニシリン系が主に使用され、消毒・外用剤も併用する。というのが一般的。

 しかし最近は薬剤の耐性化が進んでおり、ある検討では3割がMRSAとの報告あり。これを考慮する場合、選択薬はまずナジフロキサシンかテラマイシンなどのMRSA感受性ありの外用剤、それと内服(セフェム、ホスホマイシンなど)の併用が好ましいという意見もある。
□ 当直セット
 当直に必要な物品。その病院の食事が食えたもんでなければ各自用意。泊まりなら朝ごはんも準備が必要。あと風呂の確認とシャンプーなどの用具。マンガ、DVDソフト、本、歯磨き道具、携帯電話充電器、パソコン、論文、宿題の準備など。

■ 糖尿病(DM) ・

・ インスリン作用不足による慢性高血糖(→口渇・多飲多尿・倦怠感などの症状)を特徴とし、長期に渡ると血管系・神経系・眼の合併症を引き起こす。

・ 合併症は3大合併症(網膜・腎・神経)+血管系(細小〜大血管まで)など。

 ? 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
 ? 75gOGTTで2時間値200mg/dl以上
 ? 随時血糖値200mg/dl以上

 のいずれかが確認されれば糖尿病と診断。

 タイプとしては?型と?型のほかに、その他の型、妊娠糖尿病の4群に分けられる。

○ ?型 ・・ おもに自己免疫を基礎にした(HLAなどの遺伝因子に何らかの因子が追加)、ランゲルハンスβ細胞(本来インスリンを合成・分泌)の破壊・消失によりインスリン作用低下。小児〜思春期多い。自己抗体GAD、IAA、ICA、IA-2の陽性率高し。治療はインスリン注射で基礎分泌(中間型あるいは持続型)と追加分泌(速攻型あるいは超速効型)を補う。

○ ?型 ・・ インスリン分泌低下+インスリン抵抗性+環境因子(食いすぎや運動不足、ストレス)+加齢による。薬物治療開始の目安はHbA1c 6.5%以上とされているがリスク因子(高血圧など)があるならそれより以下でも開始すべき。内服不十分のときインスリンに切り替えるが、それによって糖毒性が解除されると再び内服に戻せる可能性はある。

○ 妊娠糖尿病 ・・ 内服は使用しない。食事・運動療法でもってしてもFBS100以上、2時間値120以上なら強化インスリン療法で管理。

・ 食事指導の内容としては、ゆっくりよくかんで腹八分目、朝昼晩と規則正しく、種類自体は多めで食物繊維重視、脂肪は控えめ、と説明。

・ 運動療法にはインスリン抵抗性改善効果もあるが、ASOや狭心症が疑われれば制限せざるをえない。

・ 微量アルブミン尿の時期以降の進展阻止のため、ACEIやARBは有効(DMの降圧薬の第一選択でもある)。

■ 糖尿病性腎症

 糖尿病の3-4割に合併する。腎機能低下、蛋白尿という形で現われてくる。前者は糸球体硬化+尿細管間質の線維化により、後者は糸球体基底膜肥厚によるバリアー破たんによる。

 糖尿病発症2年までは機能的変化(GFR↑、腎サイズ↑、可逆性アルブミン尿)のみだが、2-5年たつと構造的変化(糸球体基底膜肥厚+メサンギウム拡大)をきたす。この時期から蛋白尿が顕著=顕性腎症・・ここまでくるとpoint of no return・・となる10-20年(←DM発症から)までを潜在性腎症といい、微量アルブミン尿が検出され、高血圧出現や血糖コントロール不良時期となる。

 特にこの<顕性腎症>段階での治療の重要性が指摘されている。

 治療は血糖・血圧コントロールに蛋白・塩分制限(場合により水分・カリウム・リン)。
 

□ トキシック(toxic) ・・ 毒性がある、という形容詞。名詞(毒性)は「toxicity」で、「トキスィスィティー」。はあ言いにくい。

□ 特発性間質性肺炎(IIPs)

 この中には7つの疾患が含まれる。

? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎 14-17%
? COP ・・ 特発性器質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%

 注意すべきは、これらが病理学的分類(外科的生検)に基づいてなされているという点。実際臨床の場でどれもこれも生検というわけにはいかない。というかむしろ生検まで行っている症例は少ないのではないか。

※ 外科的生検 ・・ 胸腔鏡、あるいは開胸による生検を最低2箇所から行う。 リスクがある程度あるので、よほど必要に迫られた場合に限るだろう。

 間質性肺炎の診断そのものは比較的容易だ。胸部のラ音・労作時息切れがあれば胸部CT(できればHRCT)と採血(KL-6)、スパイログラムで、ほぼ非・侵襲的に行われるのが現状。
※ 採血の活動性はLDH , CRP , KL-6 , SP-D , SP-Aなどで。動脈血ガスの分圧較差も参考になる。

間質性肺炎と診断して、僕らが次に知りたいのは・・

? 2次的なものではないかという疑問(リウマチなど膠原病、薬剤性)
 ※ 抗核抗体160倍以上は膠原病を疑う
? 活動性は高いのか
? ステロイドが効くタイプなのかどうか

 医師の関心はこれらに集約される。このうちステロイドが効くかどうか・・の点が最も関心が持たれる。それを調べるために生検を行うようなものだが、実際病勢そのものが進行して生検どころではないとき、または患者が生検を拒否したりなどで病型が不明のときでは、試験的にステロイド(あるいは免疫抑制剤)を投与、ということもある。これでもしステロイドが劇的に効けばNSIPかCOPだったんだろう、という後付け解釈をしたりする。だが頻度の最も高いIPFではステロイドは効果が期待できない(緩解にまで至れるのはごくわずか)という意見が支配的だ。この<ごくわずか>とか<期待できない>とかいう講演会の表現には僕らヤキモキさせられている。というわけで、ステロイドの?副作用、と?証明されていない延命効果が、いまだにIPFにステロイドがためらわれる理由なのだ。

 欧米では抗線維化薬の開発が進められ、日本ではピルフェニドンが軽症例の悪化を抑制(急性増悪を有意に減らした)することがわかってきている(臨床試験?相まできており、これをパスすれば認可が目前)。重症例にも有効な新しい薬剤の登場を期待したい。

ではもう1度関心を持ちながら、各分類について掘り下げていこう。

? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
 予後不良で2.5-5年の予後。1-3割に肺癌合併。

? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎14-17%
 進行は比較的緩やかで、亜急性〜慢性の経過をとる。そのため予後もIPFに比べると比較的良好。しかし病理学的な定義があいまいで、その概念そのものに疑問が持たれている。

? COP ・・ 特発性気質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
 亜急性の進行。一部は急性。ふつうの肺炎と誤診されない限り、予後はよい。が、再燃を繰り返すことがある。

? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
 この2つについて・・禁煙だけで軽快することありステロイド反応性で予後良好。平均50歳前後で高齢者ではない。
 相違点としては
・ DIPで症状が強く、低酸素血症例が多い。
・ 胞隔炎はDIPで著明で均一であるが、RB-ILDではbronchiolocentric distributionである。
・ DIPのほうが予後が悪い。

? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
 ステロイド反応性で予後良好だが死亡例ありと、症例がまれなせいか、あまりよく分かってないところが多い。

? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
 死亡率は60%以上で多くは半年以内に死亡する。

いろんな用語が出てきて混乱するが、UIPという用語もある。これは何か。

UIP:Usual Interstitial Pneumoniaつまり通常型間質性肺炎。

IPFの典型的な組織像の名称である。

内容は、胸膜直下、小葉辺縁部より始まる線維化であり、?正常肺〜早期線維化巣〜終末像(蜂巣肺)まですべての時系列病変が含まれた、不均一で混沌としたしかし特徴的な病変である。?線維芽細胞巣の存在、?炎症細胞に乏しい、の所見も。

※ 直前暗記(IPFは知ってるものとして、あと6つ暗記)

< 立派最強ロボコップ でっぷりA級 人気なし >

・ 立派 ・・ LIP:リンパ球性間質性肺炎
・ 最強ロボ ・・ RB-ILD:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患
・ コップ ・・ COP:特発性器質化肺炎
・ でっぷり ・・ DIP:剥離性間質性肺炎
・ A級 ・・ AIP:急性間質性肺炎
・ 人気なし→ひとけなし ・・ NSIP:非特異性間質性肺炎

<特殊な疾患>

○ 家族性間質性肺炎 ・・ サーファクタント蛋白C(SP-C)遺伝子異常によるもの。
○ Hermansky-Padlak症候群(HPS) ・・ これの間質性肺炎の特徴は、30-40歳代で発症、治療抵抗性で6-7年で死亡。病理学的には基本的にUIPだが、独特な所見としては?型肺胞上皮細胞の著明な泡沫状の腫大、線維化病変内の細胞質に鉄染色陰性の黄色顆粒を持つマクロファージがみられる。

<治療>

? 従来治療:ステロイド ・・ 組織学的IPFでは20-30%で部分的あるいは一過性の有効性が示されるが、病勢維持・完全緩解までもっていけるのはごくわずか。
? 新規の治療:分子生物学的製剤

 ・ pirfenidone ・・ IPF由来の肺線維芽細胞の増殖やTGF-βによるコラーゲン合成、細胞外基質産生を減少させ、またTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を減少させる。日本では2000年本剤VSプラセボの治験が行われ、内服側のほうで急性増悪頻度の減少を有意に認めた。副作用は4割強に光線過敏症、3割に消化器症状をみた程度で致命的なものはなし。現在第?相試験実施中であり認可が期待されている。
※ TGF-β ・・ 線維芽細胞の遊走能や分化、コラーゲン合成能を促進。

・ TGF-β抑制薬(臨床応用未定)
・ IFN-γ ・・ 活性化Th1細胞より産生される細胞性免疫の活性化因子。線維化を抑制する。北米では効果が確認されており(死亡率低下)注目されている。
・ TNF-α拮抗薬 ・・ TNF-αは線維化を進行させるので。リウマチ・クローン病では応用中で肺線維症への有用性が期待。
・ 血管新生阻害薬 ・・ 血管新生が肺の線維化を促進させることが分かったので。
・ アンギオテンシン変換酵素阻害薬 ・・ IPF患者においてアンギオテンシノーゲンは線維化を進行させるので効果が期待。
・ N-アセチルシステイン(NAC) ・・ IPF患者では抗酸化機構が低下。このとき低下しているGSH(還元型グルタチオン)の前駆体がNAC。吸入の臨床試験中。
・ エンドセリン受容体拮抗薬 ・・ エンドセリンのうち主に肺に存在するET-1はIPF患者で増加。肺高血圧の治療に有効性が示された。

□ 吐血 ・・ 吐くと同時に血が出る。上部消化管(食道〜胃〜十二指腸)出血を疑う。最多は胃・十二指腸潰瘍。

□ 外様 ・・ 医師の間で使われる用語。よその大学出身の医局員。帝大と地方大学との関係を皮肉った表現ともいえる。

□ トランサミン ・・ 止血剤の1つ。凝固系の活性化により止血を図る。しかし凝固系そのものの活性化する病態、例えば心房細動やDICには使用してはいけない。

□ 鳥肌胃炎 ・・ 胃カメラで、胃の胃角部〜前庭部にかけてみられるブツブツ状に密集した小顆粒状隆起。生検でリンパ濾胞の増生を認める。
 ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う変化(粘膜内にリンパ球が浸潤しリンパ濾胞を形成したもの)と考えられており、若年(20-30歳代で男<女)の胃癌発症のリスクとして注目されている。ピロリが見つかる前は<生理的な変化>で済まされていた。
 なおピロリ陽性でも鳥肌胃炎あるとないとでは60倍以上の胃癌リスクがあるという(もちろんあるほうがリスク高い)。日本での約10年の調査(内訳は25名)では、鳥肌肺炎+胃癌と診断された人は平均年齢33.3歳、女性に多く胃癌発生は胃体部に多い、1人を除いて未分化癌(予後悪い)。鳥肌肺炎はいわば胃癌のハイリスクであり、若年で上腹部症状が2週間以上あれば、表面観察が困難なバリウムではなく胃カメラのほうが勧められ、鳥肌あれば生検を、というのが望ましい。

※ 胃炎を認めた際に、胃癌のハイリスクとして意識しておく所見
? 胃粘膜萎縮・腸上皮化生 ・・ 1992年のCorreaの仮説に基づく。これによると胃癌というのは以下のプロセスで発生する。まず正常粘膜→表層性胃炎→萎縮性胃炎(低〜無酸状態)→腸上皮化生→(ピロリによって発癌物質である二トロソ化合物を産生)→dysplasia→胃癌。これによると胃粘膜萎縮・腸上皮化生は胃癌の前段階である可能性がある。

※ なので胃粘膜萎縮が加齢によるものだとか、腸上皮化生が胃炎の終末像である、という古い考え方は慎まなければならない。

? 雛壁(すうへき)肥大型胃炎 ・・ 悪性ならば胃癌・悪性リンパ腫、非悪性では過形成の結果生じたもの。
? 鳥肌胃炎

□ トレッドミル ・・ ベルトコンベア式の機械にのって歩いてもらう検査。次第に急勾配、速くなる。前後・また運動中のST・不整脈の有無などで評価。狭心症を見つけるための「定量的」スクリーニング検査。

□ トロポニンT ・・ 急性心筋梗塞を疑った際に検査する項目。由来は心臓の筋肉である心筋。よって心筋炎でも上がるし、
多臓器不全でも上がる。心筋梗塞では発症後4時間位から上昇するので、極めて早期の心筋梗塞では上昇しない点に注意。また心筋梗塞発症後1ヶ月間は陽性が続くので、今陽性だからといって今起こした発作だとまでは言い切れない。

□ トロンビン末 ・・ 凝固剤の粉末。目的は止血。胃カメラで生検・クリッピングなど処置後に使用されたり、消化管出血の
場合に胃チューブから入れたりする。

□ トロンボテスト ・・ 血液の凝固状態を知る検査の1つ。ワーファリン(血栓溶解薬)内服中の患者は定期的に測定。現在では「プロトロンビン時間」での測定が望ましい。

□ 頓服=頓用 ・・ 症状の出現に応じて使用してもらう薬。患者の判断で、ということになる。喘息のスプレー、めまい止め、二トロペン、安定剤などもこれにあたる。 

□ 動悸 ・・ 胸がドキドキする、と感じること。不整脈や低血糖発作でおなじみ。しかし血圧の上昇時もこれを感じることがある。もし動悸を感じるならせめて手首の脈を確かめて、ホントに速いのか、脈は不規則なのかを確認するのが望ましい。

□ 動物実験室 ・・ マウスなどの小動物を用いて大学院生・助手たちが実験する無菌の部屋。たまに誰かがウイルスを不意に持ち込んでしまい汚染されて、一時閉鎖に追いやられるケースもあり。

□ 動脈血ガス分析=血ガス=動血 ・・ 腕か股の拍動する動脈から採取した血液で測定する、動脈中の酸素・二酸化炭素などのデータ。これにより酸素の必要量などが決まる。

■ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版

 やっと出来上がった、動脈硬化治療に関する日本独自のガイドライン。それまでは2002年の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が重宝されていたが日本の大規模研究が組みこめてなかった。

 これに伴い高脂血症が<脂質異常症>と呼び名が変わり、各項目にエビデンスレベルとしての信頼度がつけられ、基準・目標の表から総コレステロールを略し、LDL-Cが取って替わるようになった。

 さらにnon-HDL-C(TCからHDL-Cを引き算したもの)という指標が唱えられ、これはTGに関するリポ蛋白を表現するもの。

http://www.mikinaika.com/advace/coresterol.html

 

□ 動脈瘤(aneurysm) ・・ 脳血管や大血管などにできうる、動脈の部分的な拡張。拡大・破裂を防ぐには血圧管理が重要。

□ ドクター・バンク ・・ ドクターの仲介屋。ドクターからでなく、ドクター出向先の病院から一定期間利益を得る。急成長企業の1つ。

□ ドブタミン=dobutamine ・・ カテコラミン製剤の1つ。心臓の収縮力を増加→心拍出量増加→血圧上昇させる作用。肺血管拡張作用もあり肺うっ血時に最適。

□ ドレーン ・・ 体にたまった液・膿などを外にくみ出すトンネル。太いほど詰まりにくくて有利。ドレーンとはその「管」を指し、入っている状況を「ドレナージ」という。映画『追跡者』のクライマックス、ウェズリースナイプスが胸を撃たれ血胸の状態となりドレーンが入れられているが、これを悪役が抜いてしまう場面がある。あのあと入れ直しだな(苦笑)。
□ ナート ・・ 糸で傷口を縫うこと。内科医でも簡単なのはやれるべき。

□ ナーバス ・・ 神経質。

□ 内科認定医 ・・ 日本内科学会が認定する資格。教育病院をある程度研修すれば受験資格が得られる。資格を得ても定期的な学会などに出席しないと単位不足で除名される。試験の合格率は9割。試験の前に自分が受け持った患者の病歴サマリーが必要。サマリーを記載する用紙を無くしてしまうと再発行はされず受験資格を失うので注意。認定更新(25単位必要。学会総会に出ればそれだけで15単位。セルフビデオ問題(有料)・セルフトレーニング問題(有料)を6割以上正解で各5単位というのが泣かせる企画)を怠れば、5年後には学会会場の中での拍手とともに、自動的に資格を失う。なお認定更新に5千円かかる。

□ 内頸動脈 ・・ 死亡を確認するときによく指で触れる首の動脈。職場では「ないけい」と略される。内側に「内頸静脈」がある。どっちも「ないけい」やないけい?頸部の両側に聴診器を当てて、雑音があれば内頸動脈の狭窄を疑う。

□ 内職 ・・ 病棟の夜、患者回診も終わってカルテ書き・書類記入などの雑用に追われること。皮肉っぽい意味で会話に出る。

□ 内腸骨静脈 ・・ 股の両側にある静脈。手指を当てて拍動しているのが「内腸骨動脈」。その内側にある。左右の内腸骨静脈は、骨盤からの「外腸骨静脈」と合流する。

□ 内部告発 ・・ 勤務中である職員からマスコミへの暴露。そこにまだ勤務していることが条件。常日頃から職場環境への不満がある者だろう。民間病院では生活の糧として職場を離れられないスタッフが多いせいか、比較的少ないように思う。

□ なきにしもあらず ・・ 医者がよく学会やムンテラで使用する言葉。

□ 日勤(帯) ・・ ナースの通常の業務時間。朝9−夕方5時くらいが建前だが、とてもそれでは終わらないことが多く、早朝出勤、遅帰りを強いられる。

□ ニトロペン ・・ 狭心症に対して使用する頓服薬の亜硝酸剤。狭心症なら5分以内に軽快するはず。ただし、自然軽快かもしれず。不安定狭心症だと効果が不確実になってくる。連用による血圧低下に注意。飲み込むのではなく、舌下投与でゆっくり溶かす。患者な間では「ニトロ」と略される。

□ 二ボー ・・ 腹部レントゲンで、腸閉塞を示唆する所見。拡張した腸に多量の消化液とガスが貯まった結果、重力でこう見える。

□ 乳頭 ・・ (ここでは十二指腸の場合)十二指腸下行脚の途中にあるデベソ様の部分。穴があり、胆道・膵管へとつながる。胆石を破砕したあと十二指腸に出てこない場合は、乳頭切開(電気で焼き切る)によって排出させたりする。

□ ニューモシスチス・カリニ=Pneumocystis carinii ・・ 免疫不全状態で、肺炎(カリニ肺炎)を起こす。この肺炎はPCP=Pneumocystis carinii pneumoniaと呼ばれていたが、正式にはPneumocystis jiroveci pneumonia、またはニューモシスチス肺炎と呼ばれるようになった。なおカリニは古い教科書では原虫という分類だが現在では真菌かそれに近い微生物(曖昧だなあ・・)ということになっている。確定診断は気管支鏡でBAL(気管支肺胞洗浄)かTBLB(経気管支肺生検)を行い、細胞診あるいは病理組織検査で確定診断する。病院内に病理部があればすぐに診断につながるが、そうでないと1週間くらい待たされる。キットですぐに診断できるPCR法は保険適応外だが確定診断のためにはする価値がある。喀痰・BAL液からの陽性率は高く、血漿でも半数の確率で陽性との報告がある。臨床経過はAIDSがない場合は短期間に症状(発熱・呼吸困難)・肺病変(CTで肺門中心から始まる両側性スリガラス陰影→進行→浸潤影)が出現、AIDSある場合は数週間を経て肺病変が顕在化。AIDSのあるほうが臨床像は複雑となる。白血球は通常増加し、なかでも多形白血球の増加が著明だが、白血球減少例は予後不良。半数の患者でリンパ球が減少。病状進行の指標としてKL-6、βーDグルカンは有用。

□ ニューモシスチス肺炎 ・・ (前項目参照)

□ ニューモビリア=pneumobilia=胆道気腫症 ・・ 腹部CTあるいは腹部エコー検査の際に、肝臓にときにみられるちっちゃな空気像。胆管内のガスが映ったもの。どちらかといえば左葉に多い。通常は、既往の乳頭切開術で腸管の空気が迷い込んだもの。あるいはオペ後。無害。

□ 尿蛋白 ・・ 尿に出る蛋白。通常は尿検査での項目をさす。尿検査での感度以上に蛋白が出ると陽性となる。激しい運動をしたあとにも(代謝が亢進するので)陽性になることがある。
          
□ 尿糖 ・・ 尿に出る糖。通常は尿検査での項目をさす。老人では血糖が正常でも尿糖だけ検出されやすくなる。

□ 尿閉 ・・ 前立腺肥大・神経因性膀胱などのために、尿で膀胱がパンパンなのに出てこない状態。夜間救急に来て、バルーンで導尿せざるをえないことがある。

□ 尿路感染(UTI) ・・ 腎臓〜膀胱にかけていずれかの炎症。細菌感染が多い。女性の膀胱炎が大半で、排尿時の痛み、頻尿がみられる。病棟では尿道カテーテル留置者。以前は膀胱洗浄
がよく行われていたが、最近では疑問視(感染が上部まで拡がるおそれ)する声が多い。

□ 尿細管壊死 ・・ 腎臓の中の微細な管の壊死。肉眼ではもちろん見えない。急激な腎不全を引き起こした病態。

■ 認知症 ・・ 脳の器質的障害により知能が不可逆的に低下した状態。大きく2つ、アルツハイマー病(原因不明の脳細胞の急速脱落→脳の委縮・変性)と脳血管性認知症(脳の動脈硬化で部分的にあちこち虚血、まだら状に障害。メタボによる背景あるのが常)に分類。

□ ネーザル=ナザール=N ・・ 経鼻酸素吸入。1リットル刻み。必要により1リットルずつ増量。酸素吸入の限界は10-15リットルだが鼻からの場合はせいぜい3-4リットルまで。それ以上はマスクに切り替える。なお二酸化炭素が貯留しやすい肺気腫などの病態では0.5リットルずつで調整しないと容易にナルコーシスを招く。

□ 寝当直(ねとうちょく) ・・ 夜間にあまり呼ばれない病院当直業務。実は夜間帯ナースの配慮によるところが大きい。ただし年末・GWの当直では期待できない。

□ 粘液栓 ・・ ネバい痰が気管支(たいていは分枝)を塞いだ状態。そこから先は空気の行き来がないので肺炎を起こしやすい。CTで直接みかけるものを特別に「mucoid impaction(ムコイド・インパクション)」という。

□ 捻挫・靭帯損傷

◇足関節
・ 通常、内がえし後の足関節痛と腫脹をきたした形で受診する。
・ ほとんどは内がえし(内側への)負荷で足関節外側部の靭帯欠損を引き起こす。ここには3つの靭帯(?前距腓靭帯<底屈位で緊張し背屈位で弛緩する。損傷をもっとも受けやすい>、?踵腓靭帯、?後距腓靭帯)が存在する。この3つを総称して外側側副靭帯という。
・ 徒手検査法としてADT(前方引き出しテスト。前距腓靭帯損傷で陽性)とTTT(内がえしテスト。前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷で陽性)を行う。
・ 外側側副靭帯損傷はグレードで3つに分けられ、グレード?:前距腓靭帯の部分断裂+踵腓靭帯は断裂なし・・・ADT(-) , TTT(-)、グレード?:前距腓靭帯の完全断裂+踵腓靭帯は断裂なし〜部分断裂・・・ADT(+) , TTT(-)、グレード?(不安定型):前距腓靭帯・踵腓靭帯ともに完全断裂・・・ADT(+) , TTT(+)。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定→松葉杖。グレード?(不安定型)では外科的修復を選ぶこともある。

◇膝関節
・ 膝関節は内側を内側側副靭帯(MCL)が支え、外側を外側側副靭帯(LCL)と外側複合体(弓状靭帯など)と関節包が支えている。前十字靭帯(ACL)は徑骨の前方移動を制御、後十字靭帯(PCL)は徑骨の後方移動を制御。
ACLとPCLは関節内靭帯であるため損傷されれば関節内血腫を認める。ただし血腫はMCL単独でもみられることがある。
・ ACL損傷の多くは膝関節の非接触外傷により起こる。一方PCL損傷の多くは膝下の下腿部を直接打撲することによる(膝下に外傷あるとき強く疑う)。MCL損傷では膝内側に圧痛あること多い。
・ 徒手検査法としては、ACL損傷:Lachmanテスト、N-testなど、PCL損傷:後方落ち込み、後方引き出しテストなど。MCL・LCL損傷は下腿内外反テストで評価する。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定。ACL・MCL損傷では膝軽度屈曲位固定、PCL損傷では膝伸展位固定。

□ 年俸制 ・・ 1年間の給与を書面で契約、これにしたがって給与が振り込まれる。大学病院では存在しない。12分割で通常支給されるが、この場合当然ボーナス名目の支給はない。ただしボーナス前に途中退職、という残念なアクシデントは避けられる。

■ 脳血管性認知症 ・・ 脳の動脈硬化による認知症。メタボが背景にあり急激な経過をとる。人格水準は保たれるがイライラ・不安・怒りっぽい特徴あり(アルツハイマーは天然ボケっぽい)。

□ 脳梗塞

 脳の血管がつまった病気。血栓が徐々に出来て詰まったか、よそから血栓がきていきなり詰まったか。 

 確定診断にあたり、問診も必要。たとえば<発症時刻、昼か夜間か><何時間続いてるか><突然か徐々にか><TIAらしき前触れ症状があったか><不整脈を言われていたか>など。脳外科にコンサルトする前に情報を収集しておく必要がある。また脳梗塞と間違えそうな疾患(髄膜炎、脳炎、外傷、てんかん、低血糖、高血糖による非ケトン性昏睡、肝硬変、低ナトリウム、薬物中毒など)も除外しておくべき。初期のCTでは脳出血がないかどうかのため。梗塞はあとで出現する場合もある。なおCTでは脳実質ばかり見がちだが脳幹部の観察も忘れずに。前回の写真があれば取り寄せる。

大きくは?脳血栓と?脳塞栓に分けられる。
?として「TIA」という脳梗塞なりかけ状態があるが、ここでは省く。

?は動脈硬化で脳の血管が次第に塞がれる状態。
?は心臓の中か頚動脈に出来ていた血栓が脳まで飛んで、脳の血管を詰まらせた状態。

?のほうは壊死する範囲が広く、後遺症も重大。

 脳梗塞の症状はいろいろだが、意識障害、麻痺、構語障害などがある。 脳梗塞の中でも心房細動による心原性脳塞栓が増えてきた。リウマチ熱の減少とともに弁膜症の頻度が減ったものの、それによらない心房細動(NVAF)が増加してきたからである。これはなにも高血圧や糖尿病のあるなしは関係なく、加齢との関係が強い。特に70歳以上で急増する。高齢化が進むので頻度も増すわけだ。前述のように後遺症が重いので、これの予防は重要な課題だ。
 超急性期のt-PAの投与で3割に改善をみるというが、実際のところほとんど行われていない(出血への考慮などからだろう)。なので現在の関心ごとは予防(不整脈の治療、内服の抗凝固療法)のほうに集まってきている。

※ t-PAは保険適応が2005 10月認められた。協和発酵のアクチバシン、三菱ウェルファーマのグルドパがそれ。ただし使用をする前に、講演会(年に数回あるらしい)での講習を受けることを学会(日本脳卒中学会)から推奨されている。

※ 大阪では次回H18.9/13(水)大阪大学中之島センターで夜7時からあります。 

※ 2004年報告のJ-ACT(Japan Alteplase Clinical Trial)ではt-PAの至適投与量(欧米より少なめ)による副作用などの検討がなされ、結果的には大きな問題はなかった。

□ ノーコール ・・ 当直用語で、夜中に呼び出しが一切なかったという喜びの表現。
(類)ローコール:高脂血症のくすり。

□ 脳室内穿破(のうしつないせんぱ) ・・ 脳出血が脳実質内にとどまらず、脳のさらに深層の空間である脳室(髄液が循環している)の中に吹き出した状態。重篤で手術を検討。血圧はむしろ早急に下げなければならない。

□ 膿胸 ・・ 肺のすぐ外のわずかな隙間、「胸膜腔(ふつうここは無菌)」に膿が貯留した状態。膿とはつまり菌と白血球が戦った成れの果て。これ自体行き場がなくなるので、強い炎症を起こしてくる。閉鎖された空間での炎症なので点滴や内服などの薬は届きにくく、通常は管(トロッカー)を挿入した上での持続排液(ドレナージ)を要する。もし膿を包む被膜が破れて、肺内の気管支と交通を持てば、膿が肺内に吸引されてたちまち広範な肺炎となる恐れがあり(稀なケースではあるが)、そこまでの可能性も想定しておく必要がある。

□ 脳動脈 ・・ 脳を下から見ると、ウイリス動脈輪という、いわば阪神高速の環状線のようなものがありここを動脈血がそれそれと流れている。ここから前大脳動脈2本(豊中方面)、中大脳動脈2本(港区・東大阪方面)、後大脳動脈2本(堺・八尾方面)が分枝する。中大脳動脈はさらに脳の深層で垂直に<穿通枝>を送り出す(ここで詰まったらラクナ梗塞)。前・中・後大脳動脈の行き着く先、インター出口付近が<皮質枝>。皮質枝は皮質だけでなくその内側の髄質にも血液を送る。

■ 脳腸相関 ・・ 中枢神経系と消化器の機能的関連。交感神経と副交感神経、それと脳腸ペプチドで互いの連絡経路をもつ。このメカニズムが病態の中心をなすのがIBS。内臓知覚のプロセス(消化管からのシグナル→脊髄後角ニューロン→脊髄視床路→大脳辺縁系ぼ賦活化し痛み発生。これらをセロトニンニューロンなどが抑制)も解明されており、これが腹痛に抗うつ薬が効くゆえんといわれている。

■ 脳ドック 

 費用は検査メニューの多さによって4-20万円ほどの差がある。MRI,MRA,超音波を通常含むが、超音波が入ってないことがある。頸動脈病変を見逃す可能性があるので不可欠と考えるべき。

 以下の項目を行うことが本ドック達成を意味する(つまりしてないとドックと言うには不十分)。
http://www.snh.or.jp/jsbd/gaido.html

・ 問診・診察(神経学的所見、頸部血管雑音)
・ 一般検査(血液・尿)で背景把握
・ 心電図(心房細動の有無)
・ 頸部血管超音波検査 ・・ 頸動脈狭窄を!
・ 認知機能検査(長谷川式など)←映画「明日の記憶」でおなじみ!
・ MRI(通常のT1/T2だけでなくFLAIR画像も!)・・ 無症候性脳梗塞、脳腫瘍を発見
・ MRA ・・血管狭窄・閉塞、動脈瘤を!

□ 膿瘍 ・・ 汚らしい膿。白血球と菌が争って、その戦争が終わったあとの死骸の集まり。だがそのままだと壊死→感染のもととなり、新たな炎症のもととなる。物理的に除去するのが原則。

□ ノロウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは1-2月)に流行。全年齢で発症しうる。つまり小児だけでなく老人ホームなどでも問題になる。経口(食事では生ガキに注意)・接触感染で潜伏期24-48時間。嘔気・嘔吐・水様下痢・腹痛。軽快まで1-3日要する。診断キット(3時間かかる)があるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。<厚生省によるQ&A>http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html<東京都福祉保健局の対応マニュアル>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html
□ 肺うっ血=congestion ・・ 肺の中の血管の血液量が増えてきた状態。それだけ心臓に負担がかかっているということ。つまり心不全になりかけている状態。

□ 肺炎

○ 細菌性肺炎(主に肺炎球菌性肺炎)

・ 肺炎球菌は菌体表面の物質を介して細胞表面上のPAF=platelet activating factorレセプターに結合し、細胞内に侵入する、という機序はすでに知られている。最近これに加え、ライノウイルスで感染した(つまり先行する上気道ウイルス感染)気道上皮細胞にはPAFレセプター発現が増強し、肺炎球菌の付着が亢進する、という知見が付け加えられた。インフルエンザウイルスでも同様の結果が示された。この機序は肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌でも報告されている。つまり先行する呼吸器ウイルスは気道上皮細胞を傷害し、レセプター発現を亢進することで菌の付着を増加させ、感染のリスクを高めている。

・ 肺炎球菌尿中抗原検査:血中抗原が尿中に濃縮され尿に出る。補助的診断として使用する。小児での疑陽性が問題(鼻咽頭の肺炎球菌の定着による)。またこの抗原は数週間陽性になり続けるので測定の際には感染の既往も聴取しておくべきである。

・ 近年、海外ではβラクタム+マクロライド系の有用性が注目されている(肺炎死亡のリスクを低下)。

○ マイコプラズマ肺炎

・ 市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌についで2番目。4年周期で流行していたが現在その傾向は崩れてきている。

・ 診断自体は血液中の抗体価測定に依存している。ただこの場合ペア血清(急性期と回復時)が必要なので急性期の時点で確定するものではない。IgM抗体を10分で検出するためのイムノカード法が開発されたが陽性になるには発症10日以上経ってからなので、早期発見には向かない。

・ 症状は頑固な咳で夜間に激しい。多くが39℃台の高熱。白血球はほとんどが増えない(1万以上が15%にみられる)。一過性の肝機能障害が1/3にみられる。

・ 胸部レントゲンでは両側下肺野に陰影が出現し両側肺野に同時に多発しかつ間質性陰影を呈するのが典型的(教科書的)だが、そうでない例も多い。

・ CTでの画像は3パターンでこの分類が重宝されている。すなわち、
 ? 気管支壁の肥厚と肺動脈周囲間質の拡大 ・・ 気管支周囲、間質の炎症細胞の浸潤による。
 ? 細気管支中心性の粒状影 ・・ 細気管支および細気管支内腔の炎症細胞の浸潤を示す。
 ? エアブロンコグラムを伴った浸潤影 ・・ 容積減少を伴いやすい(広範な細気管支病変のため)。

・ 細胞壁を有さないためペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。効果があるのはマクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系など。

・ 発症機序としては菌による直接障害と、免疫系を介した間接障害の両者の可能性が考えられている。

・ 劇症型マイコプラズマ肺炎 ・・ 欧米での報告では、基礎疾患のない健常男性、喫煙者に多く、宿主の細胞免疫過剰反応が重症化を招くと推測されている。具体的には肺局所へのリンパ球の一過性過剰集積、過剰反応としての全身性の免疫能低下が起こる例が重篤化しやすいと考えられている。この局所の過剰免疫反応を抑制する意味で、ステロイドの併用が有効とされている。

・ マクロライド耐性株は約20%。

○ クラミジア肺炎

? C.pneumoniae(クラミジア・ニューモニエ)肺炎

・ 飛沫感染で集団発生あり、軽症が多い。潜伏期間3-4週間。高齢者にも多いのがマイコプラズマとの相違点。

・ 重複感染も多いのも特徴。

・ 咳が必発。高熱を呈する頻度はオウム病・マイコプラズマほどでない。肺炎は軽度〜中等症が多い。

・ 胸部レントゲンでは中下肺優位で、軽症では間質性陰影主体だが実質性陰影の場合も多く、特徴はない。

・ 検査は咽頭などから液を採取。抗原検出法、PCR法があるが感度はともに良好。

・ ペニシリン・セフェム系などのβラクタム系は効かない。アミノ配糖体も無効。第一選択はテトラサイクリン系、ケトライド系、ニューキノロン系など。投与は10日〜2週間と長めが好ましい。

? オウム病

・ C.psittaci(クラミジア・シッタシ)による人畜共通感染症。主に感染鳥の排泄物の菌体を吸入して感染(トリの飼育歴が重要)。

・ 潜伏期は1-2週間で、咳、関節痛、筋肉痛など症状は非定型肺炎のパターン。重症では死亡例も珍しくない。

・ 検査は?痰・血液などからの病原体の検出、?遺伝子からの検出(PCR法など)、?抗体の検出。大半は?で行われ、具体的にはCF法による血清診断である。

・ テトラサイクリン系が第一選択。重症ならミノサイクリンの点滴のほか、ステロイド使用することも。

○ レジオネラ肺炎

・ 好気性グラム陰性桿菌。集団発生よりも単発例が多い。全体の2割が院内感染(外科手術後の頻度が高い)、1-2割が集団感染。病歴聴取に温泉旅行歴は欠かせない。

・ 危険因子は60歳以上、男性、喫煙、慢性肺疾患、慢性心疾患、糖尿病、細胞性免疫不全、癌など。

・ すべてが重症ではなく、重症化するのはあくまで一部。

・ 潜伏期2-10日間で、乾性咳、比較的徐脈を伴う39℃以上の発熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛、下痢など。胸膜炎様の胸痛伴うことあり時に血痰。精神症状(内容は様々)みられることもある。

・ 胸部レントゲンでは大葉性肺炎のパターンが多い。免疫不全者では1割に空洞性病変。

・ 血液では肝機能障害所見、ALP , LDH上昇、低ナトリウム。尿ではミオグロブリン陽性が多く、潜血陽性、赤血球陰性という所見も多い。

・ 診断は?病原体の検出(分離培養・・重症ほど陽性率は高い。培地はBCYEα培地)、?尿中抗原検出(重症ほど陽性率高い。ただしserogroup 1のみしか検出できず。しかも陽性になるのは発症数日してからで、初期は出ない)、?抗体価測定(実際本症で抗体価の上昇をみるのは75%にすぎない)など。

・ 治療
 諸外国:ニューマクロライド、レスピラトリーキノロンの注射剤が第一選択。これはエリスロマイシンより勝る。
 日本:ciprofloxacin、puzufloxacinの注射剤。第2選択のエリスロマイシンは、リファンピシンとの併用がその単独よりも優れる。

○ インフルエンザ肺炎

・ インフルエンザウイルス(RNAウイルスで、ABCの3つの型がありヒトで問題になるのはAとB)による上気道炎は通常1週間で治癒するものだが、ときに(1-5%だが高齢者では20-25%もある)肺炎を合併する。分類すると

 ? 原発性=純ウイルス性 ・・ まれ。感染2・3日後より急速に進行する低酸素症。死亡率は高い。

 ? 二次性細菌性=続発性 ・・ インフルエンザウイルス感染軽快後(軽快してさらに3日後頃)に発症した肺炎。これが大部分を占める。肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブ菌の順。死亡率は低い。

 ? 混合性 ・・ インフルエンザウイルスと細菌に同時感染したもの。
※ 細菌感染を合併しているのかどうかは、まず膿性痰を見つけることがポイント。

○ 肺結核症

・ 空気感染。免疫能が正常なら、感染しても(生涯での)発病するのは5-10%程度。全世界の死亡原因のトップ。日本では最近は増加中で、これは高齢者増加による。このうち大部分が既感染であり内因性の再発である。また若年者の集団発生も目立つ。

・ 主要な4薬剤への耐性(←突然変異によって起こる)は増加傾向にあり、1997年の報告でINH-4.4% , RFP 1.4% , EB 0.4% , SM 7.5%。INH/RFPの双方に耐性の場合に<多剤耐性菌>と呼ばれる。多剤での使用によって耐性を打ち消しあう効果があるので単剤投与というのはすべきでなく危険であり、初回投与では行ってはならない。最近、RFP耐性菌の97%以上にrpoB遺伝子の変異を認め、これを検出することでRFP耐性菌の早期発見がなされるようになった。

・ 咳・痰が2週間以上続く場合は特に疑う。

・ 検査法であるQFT2G(Quanti-FERON-TB第二世代)がトピックス。このQFT2Gは結核菌由来の特異蛋白抗原由来の物質(インターフェロンγ)を測定するもので、PPDのようにBCG接種の影響を考慮する必要がない。結核診断に有用であり実際に感度も高い(9割)。

・ LTBI=latent tuberculosis infection=潜在的結核症 ・・ PPDで結核感染が確認されたが発病はしていない状態。以前は予防内服が原則で日本ではINHの6ヶ月投与ということになっていたが、CDC(米疾病管理局)ではさらに9ヶ月とより長めの投与と、あるいはRFP4ヶ月治療を推奨している。

○ 非結核性抗酸菌症 ※(H15.4月より呼び名が変わった。それ以前は<非定型抗酸菌症>)

・ MAC=Mycobacterium avium complex=M. avium + M. intracellare(イントラセルラー)。これによる感染症がMAC症。近年、非結核性抗酸菌症特にMAC症の罹患率が増加(増加分のほとんどが何故か基礎疾患のない中高年女性)してきている。MCA症は非結核性抗酸菌症のうち70%強も占めており、ついでkansasii症(抗結核菌によく反応する)が約20%を占める。なおMACの7割が女性、kansasiiの9割は男性。

・ MACには肺感染症(肺・気管支の限局)と全身播種型の感染症の2タイプがあり日本ではほとんどが肺感染症のほう。米国ではHIV関連の全身型が問題になっていて、腸管粘膜からの血流感染とされている。

・ MACの病態としては以前は画像上、上肺優位の結核類似空洞パターンが多かったが1980年以降では、気管支拡張が目立ちその領域に小結節が散布するタイプ、すなわち<気道病変型>または<結節型>がみられるようになった。このタイプは中高年女性がほとんど。進行は遅く症状も乏しいがしばしば血痰を生じる。既存の病変を有さないことが多いのも特徴。

・ 治療は従来の抗結核薬+ニューマクロライド(CAMあるいはAZM)など。排菌陰性化後10-12ヶ月以上持続すれば治療終了が可能だがその後も定期フォローが必要。

○ 肺真菌症

? 肺アスペルギルス症 ・・ 原因菌としてはAspergillus fumigatus , A. niger , A.flavusなどが多い。本症は病態によって以下のように分かれる。

・ 肺アスペルギローマ ・・ 既存の空洞病変(結核・のう胞)に胞子を作り、空洞内で増殖し菌球(fungus ball)を形成。

・ 侵襲性肺アスペルギルス症 ・・ 高度の免疫抑制状態(大量ステロイド、免疫抑制剤、血液疾患など)に好発。血管内、あるいは多臓器に病変を形成する。

・ 慢性壊死性アスペルギルス症 ・・上記2つの中間に位置する病態で、何らかの基礎疾患があって数週間〜数ヶ月の経過で増悪する。

? 肺クリプトコックス症 ・・ HIVへの日和見感染として重要だが、健常者にも起こりうるという特徴がある。Cryptococcus neformans(ハトの糞便・土壌に生息)の感染(吸入による経気道感染)による。多くは無症状でレントゲン健診(孤立または多発結節影が多く、空洞みられることあり)がキッカケでの診断も多い。CTでは胸膜の近くに陰影を認めること多い。

● 肺真菌症の診断

・ 血清診断法 ・・ β-Dグルカン:真菌細胞壁の主要成分。ただしムコールなどの接合菌類およびクリプトコッカス症では上昇は認めない。
            ガラクトマンナン抗原:侵襲性肺アスペルギルス症のハイリスク患者にとって早期発見・早期治療のキッカケとなる。
            グルクロノキシロマンナン検出:Cryptococcus neformans由来の成分を抗原として検出。肺クリプトコックス症の診断。
・ 真菌の分離・培養 ・・ 基本的に全身状態不良のことが多く、侵襲的であり実際的ではない。

● 肺真菌症の治療

・ ポリエン系リポソーム薬剤 
従来のアンホテリシンB(AMPH-B)では腎毒性の副作用が高率であり、本剤はこれに脂質担体製剤である。これにより安全性が向上し腎障害の頻度も半分になった。

・ アゾール系抗真菌剤
 ? ホスフルコナゾ−ル(FLCZ)
 ? ボリコナゾ−ル(VRCZ) ・・ アスペルギルス属・クリプトココックス属に優れた活性を示す。またFLCZやITCZ耐性の真菌にも有効な面もある。
 ? イトラコナゾ−ル(ITCZ) ・・ FLCZに比べてアスペルギルスなどの糸状菌にも活性を示す。
・ エキノカンジン系 ・・ カンジダ〜アスペルギルス属まで幅広い作用。β-Dグルカン合成酵素を特異的に阻害する。

■ 寄生虫肺疾患

○ 肺赤痢アメーバ症、胸腔赤痢アメーバ症

・ アメーバののう胞(シスト)を経口摂取し感染した場合、通常は大腸炎・肝膿瘍を引き起こす。肺赤痢アメーバは(大腸・肝臓経由で)肺に膿瘍を形成する。胸腔赤痢アメーバ症は(肝膿瘍経由で)胸腔に膿瘍を形成する。画像診断のほか血清抗体の測定などと組み合わせて診断する。治療はメトロニダゾ−ル。日本での多くは男性同性愛者。

○ 回虫性肺炎

・ ヒト回虫、ブタ回虫によるものが考えられている。回虫そのものによる炎症とアレルギー機序と推測されている。

? ヒト回虫 ・・ 嚥下→小腸で孵化→小腸壁に侵入→門脈→肝臓→肺→好酸球性肺炎(摂取1-2週間内)を起こしつつ肺で発育→食道・胃へ嚥下→小腸で成虫に(摂取2-3ヶ月後)。以上より駆虫剤投与のタイミングは肺炎発症2.5-3ヶ月後が好ましい。
? ブタ回虫 ・・ ヒトで成虫にまで発育するのは稀で、死滅していくので駆虫剤の使用は賛否両論。ただし好酸球性肺炎の報告はある。その際好酸球増加するとは限らない。血清ブタ回虫抗体の測定も参考に。

○ イヌ回虫性肺炎

・ 体内で成虫に発育することはなく、体内を移動し肺に達した場合に肺炎を起こす。BAL・血液中の好酸球増加、血清抗体価上昇をみる。治療の是非は見解が統一されていない。

○ ブラジル鉤虫性肺炎

・ 熱帯域に存在するブラジル鉤虫=Ancylostoma brazillenseによる肺炎。ヒトの体内では成虫になれず死滅する。成虫はイヌ・ネコに寄生し糞便経由で土壌からヒトへ経皮感染する。表皮内を移動すれば線状の爬行(はこう)疹を呈する。肺炎では浸潤影のほか末梢血の好酸球増加をみる。

○ 糞線虫症

・ 主に沖縄・奄美諸島に存在。患者の糞便から排出されたラブジチス型幼虫はフィラリア型幼虫へ移行し、これが経皮的にヒトへ感染する。血流→心臓→肺に至り肺胞・細気管支へ。そこで出血・細胞浸潤をみる。肺に浸潤影がみられ血中好酸球増加、また喀痰から幼虫が分離される。さらに幼虫は気管・咽頭を経て十二指腸粘膜内に寄生し成虫になる。肺炎の治療にはイベルメクチンが投与されるが、免疫低下患者ではさらにグラム陰性桿菌による肺炎の合併をみることがあり、その場合はさらに抗生剤(大腸菌・クレブシエラ感受性)の投与を要する。

○ 肺イヌ糸状虫症

・ 成虫はイヌの肺動脈に寄生し末血中にミクロフィラリアが出現。蚊に刺された際、これが蚊に入り他のイヌへと移っていく。その過程でヒトがたまたまその蚊に刺されると感染する。肺・皮膚で幼虫移行してくるが成虫にはなれず死滅する。肺では末梢肺動脈の塞栓を起こし腫瘤を形成する。大多数が無症状。レントゲンでは結節あるいは腫瘤状、CTで2cm以下の辺縁明瞭な腫瘤陰影。辺縁にはまばらな線状あるいは羽毛状構造あるとの報告あり。血清抗体も参考に。

○ 熱帯性肺好酸球症

・ 熱帯地域。バンクロフト糸状虫あるいはマレー糸状虫に感染しているヒト肺のミクロフィラリア、に対する免疫反応の結果起こる。レントゲンで網結節状陰影が散在性に出現。血中好酸球増加、血清抗体上昇もみる。ジエチルカルバマジンの経口投与が有効。

○ 肺吸虫症

・ 原因としてはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫がある。
・ 感染源 ・・ 肺吸虫のメタセルカリアを保有するモクズガニ・サワガニなどを経口摂取。
・ 治療はプラジカンテル経口投与。

? ウエステルマン肺吸虫 ・・ 小腸内でメタセルカリアが脱嚢→幼虫となる→小腸壁を通過し腹腔へ→腹壁の筋肉で成長→再度腹腔へ→横隔膜経由で胸腔へ→肺で成虫に。血痰・咳が主症状だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影。

? 宮崎肺吸虫 ・・ 感染経路は?に似る。主症状は咳・胸痛だが無症状もある。レントゲンでは結節・腫瘤影のほか気胸・胸水が特徴。

○ 肺包虫症

・ 多包虫(多包条虫の幼虫)と単包虫(単包条虫の幼虫)がある。
・ ともに肝臓に病巣を形成すること多い。ヒトは中間宿主の立場にある。
・ 多包条虫はネズミを中間宿主、キツネを最終宿主とする。
・ 単包条虫は輸入例の報告で頻度少ない。
・ ヒトが六鉤幼虫を経口摂取して感染成立→小腸で孵化→血流経由で肝臓・肺へ→包虫に発育
・ 肺単包虫はレントゲンで境界鮮明な円形孤立陰影、肺多包虫は境界鮮明な陰影として観察される。
・ 治療は手術が基本だが手術不能例ではアルベンダゾ−ルの経口投与。

■ Q熱  ※かつては原因不明といわれていて<Query=原因不明>と呼ばれ、その名残でその名がある。

・ コクシエラ属のCoxiella burnetiiの感染による肺炎・気管支炎などの総称。多くはインフルエンザ様症状で始まり上気道炎・気管支炎、あるいは肺炎へと進展。
・ 人畜共通感染症であり、4類感染症。ヒトからヒトへの感染は稀である。
・ 風で飛散しやすく生物兵器の好条件とされている。
・ 白血球増加例は少ない。
・ 肝機能障害の合併が多い。
・ βラクタム系は無効だがテトラサイクリン(第一選択)・マクロライドが著効(非定型肺炎に似る)で、2-3週の投与が必要。
・ 急性と慢性がある。急性型は潜伏期1-3週間、呼吸器感染で発症するが一過性で予後良好(一部は重篤)。多くは1-数週間で治癒。無治療でも死亡率は1-2%。慢性型は心内膜炎が多く予後不良が多く死亡率は50%。
・ 肺炎では病理上は非定型肺炎に類似した像(マクロファージ・リンパ球主体で多核白血球少ない間質性肺炎の像、およびフィブリン・赤血球・単核球主体の肺胞滲出液)が得られる。
・ 確定診断はペア血清での4倍以上の上昇。また急性型ではコクシエラ?相菌に対するIgG・IgM抗体価の上昇がみられ、慢性型ではコクシエラ?相菌に対する抗体価の高値が持続する。
・ PCRは有力な補助診断であり、急性期で陽性ならば血清抗体価を追跡していく。
・ 海外ではワクチンを動物・ヒト(牧場関係など中心)に行われているが日本では認識低く、やってない。
□ 肺炎球菌尿中抗原検査 ・・ 血中の肺炎球菌(肺炎・髄膜炎などの際に)の抗原が尿に排出されるのを利用。測定はキットで行う。治療が効いた後でも陽性が持続することがあり、数週間という報告さえある。なのでちょっと以前の発症を検出することがありうるので、問診が重要(既往の感染)。また小児での鼻咽頭の定着による陽性化もあるので過大評価は禁物。以上のことをふまえると本検査は補助的診断の位置づけと考えるべき。

□ 肺炎球菌ワクチン ・・ 商品名ニューモバックス。値段は実費5千円と高いが効果は5年続くとされている。効果そのものには賛否両論あり。COPDの増悪の主な原因菌が肺炎球菌であることを考えると推奨されるべきではあるが、実際これがCOPD患者の予後を改善したというデータはない。

□ 肺癌(治療) ・・ 以下、NSCLC(非小細胞肺癌)とSCLC(小細胞癌)とに分けて。

● NSCLC

○ 中心型早期肺癌 のガイドライン

・ 区域気管支より中枢側に発生した肺癌。そのうち早期癌は、癌の浸潤が気管支壁を超えず、かつリンパ節転移や遠隔転移がない(CT・エコー骨シンチ等で確認)ものをいう。限局性ではあるが多発性の病変もありうる。内視鏡的には病巣の長径が2cm以下であり組織学的に扁平上皮癌であることが原則。

・ 日本では胸部レントゲン+喀痰細胞診によるスクリーニングが有効とされている。CTでのスクリーニングは発見が困難である。

・ 蛍光内視鏡(扁平上皮化生などの早期病変を発見)、気管支超音波(進達度診断に有用)はグレードC(勧めるだけの根拠が明確でない。つまりEBM不足)の段階。

・ 治療は・・
 ? 外科治療 ・・ 5年生存率80-100%と良好で、根治的治療といえる。
 ? 光線力学的治療(PDT) ・・ 5年生存率90%以上。好適応は長径1cm以内かつ進達度が粘膜下層まで。
 ? 気管支腔内照射 ・・ グレードC。

○ ?・?期肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン

・ 標準術式は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術。症例によって気管支形成術(局所病変が完全切除可能な場合)、隣接臓器の合併切除(胸壁合併切除、横隔膜合併切除、Superior Sulcus Tumor切除など)を選択する。※ Superior Sulcus Tumor切除 ・・ Superior Sulcus Tumorは肺尖部より発生し胸壁に浸潤し腕神経叢、交感神経節、鎖骨下動脈、椎体などに浸潤する肺癌。通常、術前に放射線照射を組み合わせる。5生率は25-30%。

・ 術後の5生率はIA期で70-80%と良好だが、IBで60%へ落ち込み、それ以上だとさらに落ち込んでいく。

・ 術前・後化学療法、術前導入放射線治療の併用について ・・ これにより予後が改善されるという根拠は乏しい(グレードC)。

・ ?・?期でも医学的に切除不能な場合、放射線治療単独の適応がある(ただしグレードB)。

・ VATSに関しては推奨できるだけのデータが揃っておらず(手術との比較試験なし)グレードC。これまでのデータでは?期に関しては手術に比し予後は同等またはそれ以上といわれている。

○ 縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療ガイドライン

・ 切除可能な?A期 ・・ T3N1では第一選択。一方、T1-3N2の場合の手術意義は明確でない。

・ 特にN2と診断された例の予後は不良であり、この場合は集学的治療(術前化学・放射線療法や術後化学療法)の必要性が指摘されている。しかしいずれも予後改善のデータが出揃っていないのが現状。

○ 隣接臓器浸潤(気管分岐部、胸壁、胸壁肺尖部、横隔膜、左心房、大血管)を伴う肺癌の治療ガイドライン

・ 隣接臓器浸潤の場合、手術データがかなり乏しいのでEBM的な考え方はない。

・ 単純な胸壁浸潤の場合T3でありリンパ節転移しだいでIIB以上となるが、その他(上述)の臓器では無条件でIIIBと決まる。なお胸壁浸潤でリンパ節転移なしのcT3N0M0(IIB)ならば肺葉切除以上の根治術+胸壁合併切除が推奨され予後が期待できる(5生率50%弱)。N1-2になると推奨への言及はない。

・ 気管分岐部の浸潤する癌は手術のリスクが大きく、cN01症例で(N2を否定すること)病変が気管支分岐部周囲に限局する場合に推奨。

・ 横隔膜、左心房、大血管の切除に関しては根拠に乏しくグレードC。

○ 切除不能肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン 

・ ?期 ・・ 根治TRTが可能な局所NSCLCには、化学療法(グレードA)が強く勧められる。化学放射線療法(化学療法+TRT)の適応にならない場合(高齢者やPS不良例)でも根治的単独TRTを行う(グレードB)。化学放射線治療はPS1・2の全身状態良好患者に行う。TRTと化学療法は同時併用で行い、TRTは1日1回2Gyの通常分割照射(60Gy/30回/6週)が推奨されている。

※TRT:放射線療法

・ ?期 ・・ 化学療法は生存期間・QOLを改善する(グレードA。ただし高齢者ではグレードB)。対症療法(BSC)に比し生存期間中央値(MST)で6-8週、1年生存率を10%改善する。化学療法では従来よりシスプラチンを含むことが好ましいとされ、新規抗癌剤の登場もあったが併用による有効性の差はごく僅かである。プラチナ製剤が使用不可なら新規抗癌剤の単剤が推奨されている。

○ 再発NSCLCの化学療法

・ セカンドラインとしてはドセタキセルの投与を行う(グレードB)。BSCより予後良好。

● SCLC

○ LD-SCLC:限局型(ただし?期以外)

・ 初期治療として、化学療法+TRTの同時併用を行う(グレードA)。これでCRが得られればPCI(予防的全脳照射)を行う(グレードA

○ ED-SCLC:進展型

・ PS4を除き、初期治療として化学療法を行う(グレードA)。シスプラチン+エトポシドの併用が標準的治療である(グレードA)。シスプラチン+イリノテカンも有用だがグレードB。PS不良例でも単剤より多剤併用を行う。

・ 無治療SCLCではMSTが4ヶ月以内なのに対して、併用化学療法の場合のそれは10ヶ月以上を越す。

○ 再発

・ 前治療終了90日以上の再発でも化学療法への反応は期待できるが根拠という点では乏しい(グレードC)。

□ 肺気腫 ・・ ごく一部は先天性。大半は喫煙の積み重ね。機能しない肺が空胞様に拡大し、呼吸不全をきたす。高度だと在宅酸素療法が必要。手術は確実でない。また根治する薬もない。酸素は予後を改善し、喫煙は進行を遅らせる、この2点だけしかわかってない。

□ 肺血栓塞栓症(PTE)=エコノミークラス症候群 ・・ 肺塞栓症と肺血栓症を総称して呼ぶ。肺動脈が血栓で塞がれて起こる呼吸困難。原因は下肢から飛んできた血栓のことが多い。

□ 肺水腫 ・・ 肺の中が水浸しで呼吸が苦しくなる。大まかにいうと以下に分類。
? 心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいで、つまり心不全で肺水腫になる。
? 非心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいではないが、肺炎など心臓以外の内臓疾患で起こった肺水腫。
? 低アルブミン血症による肺水腫 ・・ 栄養不良による。末期癌か点滴のカロリー不足など。
? 薬物による肺水腫 ・・ 薬物により肺の中の血管の隙間が開き、水分が肺にたまる。尾崎豊の死因。
? 溺水による肺水腫
※ 特殊な例で、『高地肺水腫』あり。映画「バーティカル・リミット」を参照。ステロイド注射剤(デキサメサゾンと思われる)の取り合いとなった場面が見苦しい。専門家によるとあそこまで劇的には効かないらしい。

□ 肺性心 ・・ 肺のせいで心臓が悪くなった状態、と覚える。正確には肺高血圧のために右心不全となった状態だ。肺気腫から続発したものが多い。

□ 肺動脈(PA) ・・ 右心室から出る、肺の手前の血管。つまり血は静脈血で酸素が少ない。途中で左右の2つに分かれる。
この血管に血栓が詰まると「肺血栓塞栓症」と呼ばれる。 

□ 肺胞蛋白症=pulmonary alveolar proteinosis=PAP ・・ 肺胞・呼吸細気管支内に(つまり末梢気道に)サーファクタントが貯留する疾患。先天性、基礎疾患のある二次性、特発性とがある。30-50代に多く男>女。
 本邦では9割が特発性で、この原因が抗GM-CSF抗体(本症に特異的!)であることが最近発見された。
 この自己抗体が肺胞内のGM-CSF活性をブロックし、最終的に肺胞内のサーファクタントが蓄積する。つまり本症は自己免疫疾患である。
 症状は労作性呼吸困難、咳嗽、喀痰、軽度の発熱などで無症状も多い。画像では初期はスリガラス陰影で進行すると斑状融合影。CTでのメロンの皮状陰影(crazy paving sign)は有名。
 採血ではKL-6などの線維化マーカーも上昇、気管支鏡でのBALF→乳白色で好酸性・PAS陽性の無構造物質などを認め、この物質はさらに生検(TBLB)にて証明される。
 治療はGM-CSF(吸入)療法が有効。3ヶ月の無治療期間ののちに開始され、3ヶ月かけて吸入・休薬を繰り返す。コストが高いのが難。
 ※ GM-CSFは増殖性のサイトカインで、肺胞マクロファージを活性化させてサーファクタントの代謝(分解・再利用して一定の秩序保つ)を回転させる。本症では自己抗体により本機能が低下する。
 
□ ハイポ ・・ 通常は「甲状腺機能低下症」のことを指す、医者用語。心臓超音波などで動きの悪い場所をさすときにも使う表現。

□ 博士号=ティーテル=学位 ・・ 実験→論文作成→教授らの検閲→手直し→検閲→医局内で合格→提出→学内で合格してやっと与えられるもの。

□ 白衣 ・・ 医者・ナース・技師らが着る衣類。通常は病院から支給され、洗濯も随時してくれる。汚い白衣は院内感染と患者・家族の信頼失墜につながる。

□ ハチ刺傷 ・・ ハチ毒にはヒスタミン・セロトニン(痒み・痛み)、キニン類(発赤・熱感・腫脹)などからなる。毒性の強さはスズメバチ>アシナガバチ>ミツバチ>クマバチ。アレルギー反応起こすことあり2つに分けられる。?局所アレルギー:アシナガバチに多い。刺された周囲に蕁麻疹。反応が大きいと次回刺されたときにアナフィラキシー起こす恐れあり。?全身アナフィラキシー反応:スズメバチに多い。刺されて直後〜15分内に起こる。
 ミツバチは針を残すので爪で弾き飛ばす。局所ならステロイド軟膏、抗ヒスタミン・抗セロトニン剤処方。

□ 白血球=ロイコ=しろ ・・ 炎症を起こすと増える。ステロイドの副作用や脱水、白血病でも上がる。心筋梗塞の初期なども。少ない場合は重症感染や白血病、薬の副作用なども疑う。

□ 派閥(はばつ) ・・ グループどうしの確執。病院同士、医局同士、医局内のグループどうしなど、スケールは大小あり。

□ 針刺し事故
・ B型肝炎の場合 ・・ ワクチン定期的接種、事故後の対応は全体的に徹底されているらしい。免疫なしで針刺し事故した場合、グロブリンを投与の上48時間以内にワクチン投与を追加する。
・ C型肝炎の場合 ・・ ある検討では実際に急性C型を発症するのは4%前後と低め。予防的にインターフェロンをいくかどうか、発症した時点でいくかどうかなどの点では統一した見解はない。予防投与によって、その後インターフェロンすることになった場合の治療効果減弱、インターフェロンそのものによるアナフィラキシーなどへの心配がある。一方、発症後の投与は有効だというデータが多い。実際、1ヶ月間は労災でみてくれる。
・ 針刺し事故時の対応 ・・ 針刺し部の血液を搾り出し、流水で洗浄10分し、消毒。終わったら採血(一般+HCV抗体)。患者側のHCV-RNA定量を測定し、ウイルス量を確認。事故後半年間は血液検査でのフォローを続ける。

□ ハルン=尿量。ハルントータル=1日尿量。

□ 半座位=セミファーラー位 ・・ 座る角度が直角でなく、45度くらいの角度。心不全・喘息で少し息苦しいときや、腰が悪くて座りにくい人へのレントゲン撮影で望まれる体位。

□ ハンプ ・・ ハンプは商品名で、物質名はカルペリチド。急性心不全のときの利尿剤として、持続投与にて使用。

1 2 3 4 5

 

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索