□ バイアル ・・ 注射の薬品が入った小さなビン。

□ バイタル=バイタルサイン ・・ 患者の基本的な情報。脈・熱・血圧など。通常と違えばドクターへの報告、他のバイタルとの照らし合わせが必要。

□ (病院の)売店のおばちゃん ・・ 愛想はよくても要注意。病院一番の情報通であることが多い。患者・患者家族やスタッフとの会話が多いのだ。

□ バタフライシャドウ ・・ 胸部レントゲンで、あたかも蝶が羽を拡げるがごとく見える所見。蝶の部分は白、それ以外は黒。黒はなんとか正常な肺で、白は水・炎症で水浸しになった状態。つまり「肺水腫」の所見。
 ※ 白・黒が逆の「逆バタフライシャドウ」は好酸球性肺炎の特徴的所見。

□ 抜管(ばっかん) ・・ 人工呼吸器から離脱し、挿管チューブを抜いてあげること。痰を自力で出せることが大前提。結局また呼吸不全となりまたチューブを挿入するのが「再挿管」。

□ バックアップ ・・ 援助します、ってこと。カタカナにすると聞こえはいい。

□ バリックス=varix ・・ 食道静脈瘤。肝硬変患者は胃カメラで有無を確認すべき。

□ バルサルバ手技=valsalva手技 ・・ 息こらえのこと。一気に吸って、一気に止める。定義では十分な吸気のあと鼻を閉じ、10-15秒息を止める。胸腔内圧の変化を起こさせ、迷走神経から延髄へ伝わる刺激を起こさせ、その反応・変動(血圧・脈)をみる。PSVTの対処法の1つでもある。

□ バンコマイシン=バンコ=VCM ・・ MRSAに対する薬剤の1つ。最近はこれの耐性菌も話題。8時間毎投与が基本。副作用で腎障害あり。職場では「バンコ」と略される。

□ パーキンソン症候群 ・・ わが国での診断基準では?典型的な左右差のある安静時振戦がある、?歯車様固縮、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上が存在する。この??のいずれかに該当する場合である。実際は4大徴候である振戦、固縮、寡動、姿勢反射障害のうち2つがあればパーキンソン症候群と診断している。?一次性パーキンソン症候群(パーキンソン病など)、?変性疾患に伴うパーキンソン症候群(Shy-Drager症候群など)、?二次性パーキンソン症候群(薬物性、中毒性など)、に分けられる。

□ パーキンソン病 ・・ アルツハイマー病に次ぐ神経変性疾患で、有病率は1000人に1人、65歳以上では100人に1人。黒質の神経細胞が8割脱落してはじめて臨床症状が出現する。症状(症候群を参照)が一側優位性であることが特徴として重要。治療は各患者の状態によって異なるので、いわゆる<テーラーメイド治療>が必要となる。
※ マイケルJが主催するサイトhttp://www.michaeljfox.org/あり。

□ パニック障害=パニック・ディスオーダー=panic disorder=PD ・・ 心の問題(ストレス・性格・環境)や生物学的な異常により動悸・呼吸困難・めまい・身震い・発汗・吐き気・しびれ感・・・のうち4つ以上が10分以内に出現(パニック発作=panic attack=PA)し繰り返す状態。ただ発作そのもののキッカケは特定できず、予期せず突然起こるのが特徴。以前は20-40歳代に多かったが最近では高齢者でも珍しくない。Gormanの仮説では、進行するとまず予期不安(また起こしたらどうしよう?)→恐怖症→回避行動(いざという時のため孤独な場所を避ける)→二次的うつへ移行する、と考えられている。発作の間隔は様々。治療は抗うつ剤(特にSSRI)、ベンゾジアゼピン系、行動療法。

□ パラコート中毒 ・・ Pq=パラコート(除草剤)という農薬を飲んだことによる(皮膚では長時間の接触で起こる。吸入での報告はごくまれ)中毒で、死亡率は70-80%以上。Pqイオンは体内で酸化還元反応を繰り返し(redox cycling)、その過程で活性酸素を生成、結果的に細胞障害を引き起こす。Pqは主に小腸から速やかに吸収され速やかに体内に分布するのが恐ろしい。特に腎臓と肺への集積が著明。ほとんどの例で嘔吐あり。服毒の量によって症状は様々。大量では数時間内にショック、代謝性アシドーシス(血液ガスでBEが低下)・呼吸困難をきたし24-48時間内に死亡する。中等量では初期に下痢・腹痛などの消化器症状、口腔粘膜びらん、舌炎がみられるが、数日すると肝・腎機能障害、低酸素状態となり1-2週以内に死亡することが多い。少量投与でも程度の差はあれ同様の症状を来たしうる。したがって、原因不明の肝腎機能障害、低酸素状態を認める場合はPq中毒を疑う必要がある。また手指・口周囲が青く(着色剤による)染まってないかどうかも診断のキッカケとなる。尿中Pq定性が確実な検査法。治療は・・皮膚などについた部分の洗浄に、胃洗浄(さらに活性炭、マグコロール(下痢目的)も使用)。呼吸管理。強制利尿もするが脱水に注意。血液浄化法を開始、一般的には連日4-5時間のDHP(血液吸着)を選択する。

□ パルス療法=ステロイド・パルス療法=パルス ・・ ステロイドの3日間限定の大量投与。ステロイドの抗炎症作用を大量・短期間に投与することで、炎症・免疫にブレーキをかける。感染症の増悪、糖尿病の悪化に注意。

□ パルスオキシメーター ・・ 動脈血中の酸素飽和度を指の表面から測定。職場では「サチュレーション」などと呼ばれる。

□ パンパン ・・ 浮腫で体がボテッと腫れていることの表現。「浮腫ってる(ふしゅってる)」と表現する人も。

□ ヒアルロン酸 ・・ 「?型コラーゲン」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。一方胸水中のヒアルロン酸は「悪性胸膜中皮腫」の診断項目。

□ 非心臓性胸痛=non-cardiac chest pain=NCCP ・・ 心臓以外による胸の痛みという文字通りの表現で、原因としてGERD(胃食道逆流症)の存在が重要で、4〜6割を占めるといわれている。なので患者が望むからといってNSAIDの投与は安易にすべきでない。心臓由来の痛みと鑑別する方法としてPPIテスト(プロトンポンプ阻害剤を2週間飲んでもらい症状がよくなるかみる)がある。GERD以外には食道運動機能異常(診断は食道内圧測定)がありこの場合PPIは無効でCa拮抗薬が処方される。

□ 一言かけておく ・・ 患者への検査・上司への依頼など、人づてや文書で済ますより、医師より直接一言かけておく姿勢・配慮・柔軟・謙虚さが大切だ。

□ ヒドロ ・・ 水腎症を略してこう呼ばれる。CTで腎臓の腫大がみられる。たいてい尿の上への逆流によるもので、尿路感染を合併することが多い。

□ 非閉塞性腸間膜梗塞症=non-occlusive mesenteric ischemia=NOMI ・・ 心血管手術後、あるいは血液透析後に起こすことのある、急性の腸間膜血行障害の1つ(10-30%)。腸間膜動脈閉塞のような太い動脈の血栓閉塞でなく、血管の攣縮による(文節状・非連続性病変)虚血が機序として考えられている。腸間膜動脈閉塞では閉塞血管以下の虚血ということなので壊死する領域は部分的で明らかだが、本症の場合は広範、部分的に虚血が生じるので開腹しても切除不可能な場合が多く、致死率が高い(70-90%)。なので内科的治療ができる段階での早期発見が重要となる。本症の初期症状は腹痛・悪心・嘔吐などで、以後徐々に腸閉塞へと進行する。疑われた場合は血管造影よりも侵襲の少ない腹部造影MDCT(MSCT)により腸間膜の血管の閉塞状態を確認し、攣縮を証明する。診断確定したらPGE1の持続静注。

□ 100パー=100%

□ ヒューマン・コミュニケーション ・・ 医師の医療トラブルの原因の1つとして患者とのコミュニケーション不足が問われ、それを解決すべく立ち上げられた授業。人間関係体験学習を、医学部入学間もない教育課程で身に着けようというものhttp://hp1.tcbnet.ne.jp/~taka255/

□ 頻脈 ・・ 定義では1分あたり100回以上の脈。「頻拍」と同意。

□ ビタミンE ・・ 癌や心循環器疾患予防に有効と以前からいわれてきたが、2005年7月報告の長期間(10年)にわたる大規模試験(ビタミンE内服vsプラセボ)では差がなかった。

□ ビトロ=vitro ・・ 動物実験でなく、試験管などの器具内で行われる実験。

□ 微熱=サブフィーバー ・・ 37.0-37.9℃。地方により熱の範囲はいろいろ。慢性的な微熱も精査の対象になる。特に肺結核は除外すべし。

□ ビボ=vivo ・・ 動物実験。通常はビトロの検査が確立されてはじめて行われる。動物を使うだけに高価。

□ 病棟医長 ・・ 病棟患者の振り分け、主治医決めなど行う。いろいろ相談なども来るのでかなりストレス。履歴書的には全く意味がない。

□ 病歴要約=(入院)サマリー ・・ 患者が入院してから退院するまでを綴った、1つのストーリー。最後の考察をいかに書くかで悩み、またそれが提出遅れの原因となる。転勤してこれを書き忘れると、戻ってきて書かされる羽目になる。

□ 微量アルブミン尿 ・・ 糖尿病性腎症の初期マーカー。つまり糖尿病が進行して腎臓の合併症を素早く<早期発見>する検査項目。だが腎臓だけにとどまらず、心血管疾患の予測因子であることも分かっている。

□ ピークフロー ・・ 喘息の評価に使用される。これを測定するのがピークフローメーターで、それを記録していくのが喘息日誌。低下傾向なら早めに受診しよう。

□ ピシバニール=ピシバ ・・ 胸水をドレナージしたあと、胸膜癒着させるために使用する伝統ある薬剤。炎症をわざと起こさせ、接着させる。従って高熱・痛みを伴う。

□ ピッグテイル・カテーテル ・・ 先っちょがブタのシッポ様にクルクル巻きのカテーテル。通常は左心室の造影目的で使用される。

□ ピリン系 ・・ セデス・メチロンが代表例。本来は解熱鎮痛剤。これへのアレルギーがあればカルテの表紙に<ピリン禁>と赤で書いてるはずだ。

□ ピロリ=ヘリコバクター・ピロリ=HP ・・ 胃・十二指腸潰瘍の起炎菌。これが検出されて、なお潰瘍を繰り返す人は「除菌療法」の適応となる。薬剤を3種類、1週間内服。だが10人に2−3人は治療に失敗するともいわれる。

□ ピンク針(ぴんくしん) ・・ 18G(ゲージ)針。注射用の針で最も太い部類。糸の縫合にも使える。
□ 歩(ふ) ・・ 医局員が自分達を「駒」と表現するのにこうやって皮肉る。しかし裏返るのも寝返ることも大学医局員には不可能だ。

□ 不安定狭心症=unstable AP=アンステーブルAP=アンステーブル ・・ 冠動脈の狭窄というより閉塞に近いため、亜硝酸剤の頓服では治まらない、いわゆる前・心筋梗塞状態。そのため「切迫心筋梗塞」とも呼ばれていた。今こう呼ぶ人はジジイ。

□ ファーストシン ・・ セフェム4世代の点滴。グラム陰性菌が主なターゲットだが陽性菌にもそこそこ効く。

□ ファイティング ・・ 人工呼吸器からの一方的な強制換気に対して、患者側の自発呼吸がかみあわずお互いの呼吸が管の中でぶつかった状態。患者は息がスムーズにできないので暴れる。呼吸器と患者の経路の間に障害物(痰・水)があったり、患者への鎮静剤が不十分であったりすることが多い。

□ PL顆粒=ホグス顆粒 ・・ 用途の広い、総合感冒薬。眠気が難。前立腺肥大の有無に注意しよう。

□ フェオ=Pheo=褐色細胞腫

□ フェリチン ・・ 貯蔵鉄。体に貯めている、鉄の貯金。ストック。鉄欠乏性貧血では減少。重症感染では利用障害のため高値となってしまう。

■ 腹腔内化学療法 ・・ 癌の腹膜転移、つまり腹膜播種(本来は無治療が多い)に対する化学療法。中でもタキサン系抗癌剤は腹腔内に長期とどまるので抗腫瘍効果を期待できる(これにTS-1静脈投与も併用←これも腹腔への移行良好)。今後の比較検討試験(全身投与と腹腔内投与との比較)の結果が待たれる。

□ 副腎 ・・ 腰の両側にある腎臓の上にのっかっている小さな臓器。ホルモンを産生。副腎皮質ホルモン、アルドステロン、性ホルモンを分泌。
 ※ 「特発性アルドステロン症」では副腎が肥大し、「原発性アルドステロン症」では腺腫という小さな腫瘍が副腎にできる。いずれも高血圧の原因となる。

□ 副直 ・・ 大学病院独特の制度。当直医に付属する、お助け目的の補助当直。たいていは研修医が勤める。だが当直帯の対応など、見習えるものは多い。ふつう給料は出ない。

□ 腹部大動脈瘤=AAA=トリプルエー ・・ 腹部大動脈の局所的な拡張。サイズ大で高血圧ほど破裂のおそれ。定期的なCTでのサイズ評価が必要。

□ 腹部超音波検査=腹部エコー=腹部US=US ・・ 肝臓から膀胱まで、つまり腹部臓器を安全に見れる検査。おしっこしてしまうと膀胱・前立腺が見えにくいので注意。食後だと胆のうが収縮して見えない。

□ 腹膜炎=パンペリ ・・ 腸など腹部の臓器が周囲に波及してしまった状態。通常、外科領域の治療となる。

□ 不潔操作 ・・ 消毒などの手技の際、消毒してないところに、つい器具があたって菌が混入した可能性のある場合。すぐに器具を片付け、やり直すのが常。

□ 不明熱 ・・ 古典的な定義では「38.3℃以上が3週間以上続き、病院での1週間以上の入院精査でも診断がつかないもの」とあるが、実際は解熱剤でとりあえず熱が下げられていたりするケースも多いので、この定義は使えそうで使えない。むしろ<不明熱>という表現は、主治医の主観的な表現であることにすぎない場合が多い。つまり、<「オレ的には」不明熱>といった感じ。

 さて、不明熱に関しては2005年1月の順天堂大学の論文が新しい。これを読むと(1994-2004年間の215例の検討)・・いろいろ勉強になった。

・ 約半数が感染症で特に伝染性単核球症、感染性心内膜炎(食道エコーが活躍)、深部膿瘍(ほとんど肝膿瘍)、髄膜炎(中には髄膜刺激症状がないものも)の頻度が高かった。麻疹・風疹の成人発症が目立ったという。発症様式が小児のように典型的でないのも診断を困難にさせた。
・ 悪性腫瘍は画像診断進歩の助けもあり減少傾向。なお腫瘍熱をきたしやすいのは悪性リンパ腫と腎細胞癌とのこと。
・ 智歯周囲炎=ちししゅういえん(親知らず)が3名いたらしい。歯科への紹介も重要なのだ。抜歯後に解熱したという。
※ 20歳前後に一番奥に生えてくる第三大臼歯のことを「智歯(ちし)」といい、「親知らず」とも呼ぶ。
・ HIV関連が8名。たしかに今後はこれも考慮に入れておかないといけない。
・ 7例がなかなか診断つかず、うち2例の診断は剖検後で、2例とも悪性リンパ腫。たとえ疑いがあったとしても証拠無しで化学療法に挑むのは難しく、今後の課題。血液疾患は生検診断に頼るところが多いので、たしかにそこが難しい。
・ 多疾患にわたる知識が必要と考えられた、と締めくくってある。

 そうだな、それと・・各科専門スタッフ、検査機器の充実だな。民間病院でズルズルと引っ張らず、大学病院への紹介が重要と考えた。大学病院でも帝大系の一部みたいに、科どうしの伝統的な仲たがいのあるところはパスだな・・。

□ フラッシュ ・・ 点滴ルート内で中途半端に停滞している注射薬剤を、点滴の早送りなどで後押しすること。ただしルート内に強心剤など循環動態を左右する薬剤があるときはすべきでない。

□ フラット ・・ 心停止。モニター画面の水平線を見てそのように判断。

□ フルコース ・・ 重症患者で、あらゆる処置をすべて行うという前提。特に重度緊急的な処置、例えば心臓マッサージやボスミン投与、除細動などを指す。

□ フレッシュ ・・ 新鮮な。今起こったばかりの病変。出血でよく表現される。たまに「新人」の意味で使われる。 

□ プアー(poor) ・・ ?検査などで所見が読みづらい場合、?医者の能力を卑下する場合?治療が効きにくい場合 などにこう表現される。

□ プラーク ・・ 動脈の壁から(焼いて膨れるモチの様な形で)内腔に盛り上がる、血小板などの硬い塊。結果的に血管を狭窄、閉塞へと追い込む。

□ プライマリー ・・ 初期の、という意味。通常は<初期治療>の意味で使われる。

□ プラズマネートカッター=プラズマ=PPF ・・ アルブミンを含む高ナトリウム点滴。急性循環不全のとき、血圧上昇を目的に使用。

□ プリオン病(第5類感染症)

 ヒト・動物における神経変性疾患のこと。感染型プリオン蛋白質が主に脳に蓄積し海綿状変化を生じる、人獣共通致死性感染症の総称。
 
分類すると、

? 特発性

 ・ 孤発性Creutzfeldt-Jakob病(sCJD) ・・ 原因不明。以下の2つに分類。

 1) 古典型 ・・ 孤発性の大部分。60歳代発症。初期症状は非特異的(不安・抑うつ・倦怠感)が数ヶ月持続。MRIが早期診断に有用(特に拡散強調画像)。その後は痴呆が急にみられるようになり、錐体路、錐体外路徴候、小脳失調、不随意運動など多彩な症状を呈する。中でも特徴的なのは頻発するミオクローヌス、驚愕反応。この頃の時点で脳波所見(PSD)、髄液中14-3-3蛋白、NSE、タウ蛋白増加がみられる。さらに進行すると9割以上が無動性無言となり脳萎縮進行、脳波活動はむしろ低下(PSD消失)。

 2) 視床型 ・・ 平均52歳と比較的若い発症。自律神経症状・睡眠障害の合併が特徴。PSDはみられずMRI所見も乏しい。視床・下オリーブ核に高度変性。

? 感染性

・ Kuru ・・ 進行性の小脳失調。
・ 医原性 ・・ 乾燥硬膜移植後CJD。
・ 変異型CJD=variantJD=vCJD ・・ BSE(牛海綿状脳症)由来のもの。sCJDに比べ発症は若く29歳。精神異常(抑うつ・異常行動)で発症し痛みなどの異常感覚を2/3に認めるほか失調を呈し、後期には痴呆・ミオクローヌスを呈する。脳波のPSDは陰性。MRIの拡散強調画像で両側視床枕の高信号(左右対称)を認める。

? 遺伝性

・ 家族性
・ Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群(GSS)
・ 致死性家族性不眠症=fatal familial insomnia=FFI

□ プリンペラン ・・ ナウゼリンと同じく、制吐剤。つまり吐き気止め。副作用の頻脈に注意。

□ プレゼン=プレゼンテーション ・・ 大勢の前で症例を提示、説明する。だが実際は最前列の教授・助教授・講師陣がターゲット。

□ プレドニン=プレドニゾロン ・・ 最もよく使用されるステロイド製剤。内服と注射あり。なお人間は1日プレドニン5mg相当を副腎で産生する。ステロイドの作用は抗炎症作用であり、膠原病や喘息、また免疫疾患などでその作用を発揮する。ただし肺炎など細菌感染は逆に増悪させるので注意。プレドニンで7.5mg/dayまでの少量なら副作用的にあまり問題ない量といわれている。

□ プローブ=プローべ=探触子 ・・ 超音波検査のとき、体に直接当てるヘビの頭のような部分。うっかり落とすと壊れることあり。数十万もする。

□ プロタノール ・・ 物質名はイソプロテレノ−ル。β刺激剤で、頻脈作用。従って脈が遅いときに使用する。使用をやめるとまた脈は遅くなる。したがってペースメーカーを入れるまでの「つなぎ」的な役目でしかない。

□ プロトロンビン時間 ・・ 血液の凝固系の程度を示す採血項目。実際は?ワーファリンの効き具合、?DICの有無判定、?肝硬変の重症度判定、として使用。

□ プロフェッサー=教授

□ ブスコパン=ブスコ ・・ 胃カメラ前の処置のときにお馴染み。胃・腸管の蠕動を低下させる。これによって検査をやりやすくさせる。治療薬としては胃・腸管の痙攣を和らげる。しかし動きを低下させるわけなので便秘を促進。イレウスは悪化させるので禁忌。胃カメラ前、緑内障・前立腺肥大がある場合は「グルカゴン」に変更される。副作用に頻脈あり。

□ 物品(ぶっぴん) ・・ 詰所や検査室にある器具などの1つ1つ。ストックが置いてある部屋が「中材(ちゅうざい)」。

□ ブラックリスト ・・ 病院の場合、マークされている患者を指す。つまりはトラブルメーカー(セクハラ、アル中、暴力的など)。受診をさせないか、受診時は慎重にするか究極の選択を取らされる。

□ ブルーイ=bruit ・・ 血管雑音。
□ 閉塞性呼吸障害 ・・ 気道の狭窄で息が吐き出しにくく、時間がかかる状態。代表例が気管支喘息と肺気腫。

□ ヘモグロビン ・・ 酸素を運ぶ役割。赤血球数に比例する。女性のほうが低めだが最下限は11台。6を切ると輸血の対象となること多いが、そこは血行動態などの評価とともに行うべき。なお出血後の数値は必ずしも現在の数値を反映しない(実際はもっと低かったりする)。

□ ヘパリン ・・ 抗凝固剤。持続点滴として使用。血栓を溶かすまでは無理。出血の副作用に注意。また血小板減少もまれではあるが重要。なのでヘパリン投与前は、ベースラインとしての血小板数を意識しておく必要がある。なお出血副作用の少ない版として「フラグミン」あり。こちらは皮下注。

■ へパリン起因性血小板減少症=heparin-induced thrombocytopenia=HIT

 治療目的で投与されたへパリンによって血小板が活性化され、血小板減少とともに新たな血栓・塞栓症を併発する病態。PF4=platelet factor 4=血小板第4因子+へパリンの複合体に対する抗体であるHIT抗体によって、血小板が活性化される。

 疑うきっかけとしては、血小板数減少(10万以下かへパリン投与前に比して半数以上の減少)のほかに新たな血栓症の出現、体外循環・透析下での凝血傾向など。なので血小板数の測定はへパリン投与4日以降以下隔日と勧める意見もある。HIT抗体は有用だが特異的なものではない。

 認めれればへパリン中止となるがそれだけでは38-50%で血栓症が合併する(特に中止1-4日目)状態が続くので、アルガトロバンなどの抗トロンビン薬などによる抗凝固療法を行う(低分子へパリンは禁忌)。以後ワーファリンへと重複の上切り替えていく。なおHITへの血小板輸血も禁忌。

□ へパロック ・・ 点滴の管の中の流れが停まっているとき、その中が凝固しないようにするため薄いヘパリンを入れておくこと。昨年あたりより、最初からヘパリンが注射器に入っている「へパフラッシュ」が発売http://www.terumo.co.jp/medical/heparin/hepaflush.html

□ ヘモ=痔核=痔 ・・ 正確には<ヘモロイド(血液が流れる病気、という意味)>。以下の3つに分かれる。

? 痔核=いぼ痔・・肛門付近の静脈に血液がたまってコブのように盛り上がったもの。痛くて出血量多い。
? 裂肛=切れ痔 ・・ 肛門の上皮に傷。硬い便だと裂ける。なので排便困難となり、しかも排便したあと痛い。
? 痔ろう=あな痔・・肛門のくぼみ部分に菌が入り込んで皮下で炎症を起こし化膿、ついには皮膚を破って外へ出る。発熱・痛み・肛門周囲の腫脹。

 薬物療法(内服ではヘモクロンなど。座薬では、ボラギノ−ル:ステロイド含まず、ポステリザン・ネリクロプト:ステロイド含む)にずっと依存の状態なら手術を受けるべき(単に切除とは限らない)。

 ここが読みやすいhttp://daichou.com/naiji.htm

□ 片頭痛 ・・ 若い女性に多い頭痛。頭痛はひどく、<片側で拍動性(脈に一致したズキンズキン)>と本にはあるが、絶対でなく様々。頻度的には意外と少なく、月に1-5回という訴えが多い(具体的にはひと月に女性4-6回、男性1-2回)。痛みは片側だけでなく両側に出ることもある。しかし左右差があるという特徴をもつ。なお吐き気を伴うときは特に強く疑う。またこの痛みは強い光、大きな音、不快な臭いで増強することがある。発作の数十分ないし数時間前に目の前がチカチカ光って見える、首筋が張る、生あくびが出るなどの前駆症状がみられることがある。妊娠中、特に後期以降は頭痛は軽快する。バファリンなどの通常の頭痛薬は無効なこと多い。
 
 最近のトピックスとしてはHIT-6というアンケート調査があり、これによって片頭痛の支障度を評価できる、とある。
※ HIT=Headache Impact Test

 質問項目↓
? 頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
? 頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
? 頭が痛いとき、横になりたくなることがありますか?
? この4週間に、頭痛のせいで疲れてしまって仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいでうんざりしたりいらいらしたりしたことがありましたか?
? この4週間に、頭痛のせいで仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?

 それぞれ<全くない(6点)><ほとんどない(8点)><時々ある(10点)><いばしばある(11点)><いつもそうだ(13点)>から選び、各質問ごとに点数を合計。

・ 支障あり 
 60点点以上:日常生活にかなりの影響があり、重症です
 56-59点:日常生活にかなりの影響があります
 50-55点:日常生活にある程度の影響があります
・ 支障なし・・49点以下

→ つまり50点以上は積極的な治療が必要

治療に関しては今後トリプタン製剤が急性期のファーストチョイスとの認識が標準的となりつつある。ただし最近、その内服のしすぎが却って頭痛を促進してしまう、という<薬物乱用頭痛(MOH)>が問題となっている。これにならないためには月10日以内の頻度に留めておくことが推奨されている。むしろ月10日以上の頻度になるぐらい必要なら、薬物乱用頭痛を疑うことも必要。

 頭痛に興味のある方はhttp://www.jhsnet.org/へ。

□ ヘリコバクター・ピロリ=HP=ヘリコ=ヘリコバクター=ピロリ 

 ヘリコ=らせん状、バクター=細菌、ピロリ=胃の出口である幽門部、という意味がある。胃・十二指腸潰瘍の原因菌と考えられ、感染により活性酸素産生→胃粘膜傷害、という機序が最も考えられている。もっと詳しく言うと、感染でケモカインにより活性化された多核白血球が活性酸素を産生し、それが粘膜傷害を起こす。

※ ケモカインとは、白血球走化に対する作用(ケモタキシス)を有するサイトカインの総称。ケモカインは炎症で大量に産生され、血管内から炎症組織内への白血球の遊走をもたらす。攻撃命令みたいなもの。

※ サイトカインとは、細胞が産生する蛋白で、それに対するレセプターを持つ細胞に働き、細胞の増殖・分化・機能発現を行うもの。これによって悪いこと(炎症など)も起きれば、いいこと(治癒過程)も起きる。

※ ピロリを慢性にもってる人の数%〜10%に胃癌が発生するといわれている。

 潰瘍の既往があって菌陽性ならまず除菌=除菌療法を勧められる。抗生剤2種類と増量した胃薬を1週間飲む。

 菌が陽性かどうか確かめる検査としては、呼気試験や便、血液での抗体など。開業医ではあまり儲けにならず(特別に大きな点数が取れるわけでもなく、判定試験の試薬期限などの問題)、積極的にしてないところが多い。除菌治療は抗生剤2種+胃薬(PPI)を1週間。2割で軟便・下痢の副作用。逆流性食道炎の副作用もある。
 
 2回目の除菌が失敗すると教科書的には『専門医に紹介』とあるが、現実的には経過観察とならざるを得ないことが多い(専門医への紹介の、必要性そのものへの疑問。患者の不安への配慮)。非保険適応薬(メトロニダゾール)の使用もありだがかなり高価らしい。
 
 なお肝心の「効果」については、初回1回目の除菌治療で9割の除菌率ということになっている(学会や講演会)。除菌成功例では十二指腸潰瘍を90%以上、胃潰瘍を80%程度の確率で再発を防止できるらしい。除菌率は施設によって差があり、耐性菌の出現もあってか実際の現場では70からよくて80%、という意見が多い。施設による抗生剤の使用状況も大いに関わっていると思われる。なので受ける側としては、この施設での陰性率はいかがなものかと問うてみることも大事だ。

 なおhttp://www.jshr.jp/こういう学会もある。

 確かに胃潰瘍で入院するのはかなりの時間と費用を伴うので、ピロリ陽性なら除菌する価値はある(都合のいい表現だ)。もし胃潰瘍で入院すれば50代男性ならば平均入院日数19日、平均医療費23万円を要するといわれている(H14.厚生労働省)。

□ ヘルペス脳炎 ・・ 単純ヘルペス(HSV)による脳炎(つまりHSVE)。治療が遅れると死亡率が高く、神経学的な緊急事態として認識されている。ガイドラインは日本神経感染症学会http://homepage2.nifty.com/~sakura2001/hse/hse-9.htmにて公表(HPに載せるらしい)。症状は、頭痛・発熱、精神症状、意識障害、痙攣など。頭部CTにて局所的異常を5-8割に認めMRIではその所見をより早期に発見できる。脳波は発症早期からほぼ全例で異常を呈し、典型的な所見<周期性一側てんかん型放電>は3割にしかみられない。髄液ではウイルス性の所見通りに圧↑、細胞数(リンパ球優位)↑、蛋白濃度↑、糖濃度正常。しかしまれに細胞数増多なしだったり蛋白濃度正常、糖濃度低値の例もあるので注意。急性期の早期診断は髄液のPCR法によるHSV-DNA検出(しかし偽陰性に注意。再検を要することあり)。なお発症2週間以後は陰性化する。なおウイルス感染の検査で多用する血清抗体の変動に関しては本症は定まったものがない。髄液内抗体価による診断もありだが、発症から10日たたないと信用できる判定とならない。なので、実際はPCRと髄液内抗体検査を組み合わせて診断していく。ウイルス分離ができれば確定には一番いいが、実際の頻度は5%未満と極端に低い。治療の第一選択はアシクロビルで、死亡率を減少させる効果はあるものの後遺・社会復帰への効果はまだ不十分。急性期のステロイド併用に関しては研究段階。

□ ペースメーカー ・・ 脈が少なくて、それが症状・病態悪化につながるとき使用。脈の数が少ないときを感知して(センシング)、そのつど脈を出すための刺激を発する(ペーシング)。この刺激に反応して心臓は脈を出す(自己レート)。とりあえずカテーテル入れるだけの応急処置的な「一時的ペースメーカー」と、電池を胸の皮下に埋め込み自由に動ける「恒久的=永久的ペースメーカー」に分かれる。ペースメーカー入れたらMRIは受けれない。

□ ぺルジピン ・・ カルシウム拮抗薬で、主には降圧目的の持続点滴として使用されることが多い(内服もあるが)。

□ ペンタジン=ペンタ ・・ 鎮痛剤。神経に作用して痛みを止めるので、根本から治すわけではない。これによる中毒患者が開業医などを転々とすることあり。同薬剤として「ソセゴン」などあり。

□ ペンタジン中毒 ・・ ペンタジンに体が依存してしまった状態。偽の紹介状「この患者の痛み時はペンタジンを投与ください、などと記載」を持ってくる患者もいるので注意を。
             
□ ベイスン ・・ αグルコシダーゼ阻害剤の1つ。腸管内の二糖類を分解する酵素を阻害して、単糖類になるのを防ぎ、その結果糖は腸管に取り込まれにくくなる。変化を邪魔された二糖類は腸管に蓄積して腸内細菌のエサとなり分解されてガスを発生する。このガスのせいで腹部膨満・オナラ増加をきたす。ガスモチンの併用でガス減少。

□ 便潜血 ・・ 消化管の微量な出血を調べる。大まかに1つあり、?化学法 ・・ 安くできるが疑陽性のことあり。?ヒトヘモグロビン法=ヒトヘモ ・・ 正確だが高価。陽性なら腫瘍マーカーとともに胃・大腸の造影・カメラを。

□ 便秘 ・・ 何日出なかったら便秘、という定義はないが、病院では3日以上だとそう解釈されることが多い。通常は錠剤で眠前投与のプルセニド(人によって腹痛)か、1日3回で粉薬の重炭酸マグネシウム(腎障害の人注意)=カマグが処方される。それでも出なければラキソベロンの処方が出たりする。あるいはグリセリン浣腸(60ml あるいは120ml)、それでも出なければ高圧浣腸を選択される。大腸内視鏡検査前に飲ませるニフレックを処方する医師もいる。
□ 放射線肺炎 ・・ 肺癌に対する放射線治療の際に発生した場合の肺炎。照射は通常2週間ほど行うものだが、いつの時期に起こりやすいかは様々(数週〜数ヶ月)。発熱・咳・胸部レントゲンがきっかけで発見される(しかし実際初期の所見としてのスリガラス陰影を発見するのは困難)。モニタリングに血中KL-6、SP-A、SP-Dが有用で、照射の前に比し1.5倍以上に上がれば本症を合併している可能性が高い。

□ 保険適応外 ・・ 国がお金を負担してくれない検査項目・処置。その場合、お金の負担は患者側となるので、あらかじめ了解が必要となる。

□ ホルター=ホルター心電図 ・・ ホルターという人が発明した24時間式の携帯型心電図。夜間の不整脈など、外来でとる以外の有力な心電図情報が手に入る。何らかの事情で中断する場合もあるが、8時間以上記録が録れないとコストとして算定できない。前述のように「ホルター」は人の名前。したがって「ホルダー心電図」というのは間違い。

□ 本態性血小板血症=ET=Essential thrombo-cythemia 

 慢性骨髄増殖性疾患(MPD)の1つ。10万人に0.1人、とごくまれ。ほとんどの医者は経験がない。

 異常クローンの巨核球が血小板を過剰に産生して血小板が無意味に増加する(通常60万/μL以上で、多くは100万/μL以上)。診断時年齢の平均は60歳だが、2割は40歳以下で診断されいるので注意が必要だ。

 増加した血小板は血栓症・出血傾向をきたす。治療はそれの阻止が目的で、具体的には以下の方法。実際にはリスク別に評価して適応を決める。

? 血小板減少療法

 ・ ハイドロキシウレア(HU) ・・ 第一選択薬。DNA抑制による骨髄抑制来たしやすいが、薬剤の一時中止で早期の(血小板数の)回復が得られる。最近では下腿潰瘍(可逆性)の副作用報告がある。

 ・ インターフェロンα ・・ 保険適応未。血小板減少作用による効果。巨核球増殖を直接抑えると考えられている。

 ・ Anagrelide ・・ 巨核球の成熟を抑制し血小板数を減少。

? 抗血小板療法←抗血栓目的
 ・ アスピリンが最も使用される。

http://mpdnetjapan.jugem.cc/?cid=1←最近の知見
http://www8.ocn.ne.jp/~halfboil/criteria/tab-g07.html←診断基準(since 1997〜)

■ 「ホンマにすんませんやぞ」 ・・ 「すみません」とひたすら謝りまくる研修医に、上級医らが真の意味を込めて強調する教訓の言葉。怒りがピークのとき使用されることがある。

□ ポーズ ・・ 写真撮るときの「はいポーズ!」でもお馴染み、意味は「静止」。心臓の場合は「心停止」を指す。つまり「心停止時間」のこと。3秒以上だと失神することが多いが、不思議となんともない人も。

□ ポータブルエコー ・・ 持ち運び可能な超音波検査機械。通常カラーはなく、しかも旧式だと性能は今ひとつなものが多い。職場では「ポータブル」と略される。

□ ポタコール ・・ リンゲル液。細胞外液に近く、体液の急速補充を目的に使用される。心不全の場合は悪化させる(右室梗塞は別)。略して「ポタ」と略される。

□ 房室ブロック ・・ 徐脈性の不整脈の1つ。1型は様子見で、3(完全型)はペースメーカー植え込み適応。

□ ボスミン=ノルアドレナリン ・・ アドレナリン製剤。頻脈を起こさせ血圧を急激に上げる作用。従って使用は心停止のとき、アナフィラキシーショック時などの救命時に限られる。重症喘息にも皮下注射で使われる。この場合は頻脈作用でなく気管支拡張作用に頼る。

□ ボスミン綿球 ・・ ボスミンめんきゅう、と読む。鼻出血が止まりにくいときに使用される。綿球をボスミンの注射液にひたすだけ。ノルアドレナリンの副作用にも注意しよう。
□ マーゲン ・・ ドイツ語で、「胃」。したがって、「マーゲン・チューブ」は「胃管」。

□ マイコプラズマ肺炎 ・・ マイコプラズマ・ニューモニエによる非定型肺炎=異型肺炎の1つ。小児〜若年に好発。以下の場合は可能性が高く、薬の選択を誤るといつまでたっても治らない。

○ 咳がしつこくそれも夜間、喘息ではないかと思うくらい。1週間以上も続く。高熱はいうまでもない。
○ 病院でもらった薬であるセフェム系抗生剤が全く効かない。
○ 周囲で咳のひどい人がたくさんいる。
○ 白血球が増えないことが多い。
○ 血液検査での肝機能障害を認めることあり(頻度1/3)。
○ レントゲン像は多彩だが、けっこう広い範囲で陰影を認める印象がある。

 処方にあたっては、症状・所見があまりにも特徴的ならマクロライドorテトラサイクリンを処方するが、通常の細菌によるものがどうしても否定できなければセフェム系も出して2剤で処方するか、あるいはニューキノロン単独(←小児はダメですよ)の処方をするのが現実的。

□ マウスピース ・・ 気管支鏡・胃カメラなど口から入れる際、カメラを喰いちぎられないようにするため、口で噛んでもらうもの。テープでしっかり固定しないとすぐ外れる。

□ マスター・ダブル ・・ トロフィー授賞式のような2階段を登り降りしてもらう検査。メトロノームの動きに合わせる。前後で心電図をとり比較。STや不整脈を評価。狭心症の「定性的」スクリーニング検査。階段が1段しかない「マスター・シングル」は腰の悪い人向け。

□ 「また飲みにいきましょう」 ・・ と言ってくる人間に限って全く来ないものだ。

□ マッチング制度 ・・医学生が医者になってすぐに研修を希望する病院を希望順に指定し、一方研修病院のほうも採用したい学生を順番に希望し、コンピューターによって振り分けを決めていく方法。 病院が決まればさあ引越し手続き、それと医局への挨拶(みやげ1品)だ!

□ 末梢血幹細胞移植=PBSCT=Peripheral(末梢)+BSC=blodd stem cell(血液幹細胞)+transplantation(移植) ・・ 従来の骨髄移植に替わる造血幹細胞移植として定着している。以下の??に分けられる。全くの別物。なおわが国ではこの移植でのドナーは血縁者のみに限られている。
? 同種PBSCT(allo-PBSCT) ・・ 健常人ドナーにG-CSFを4-6日間皮下注射し投与4-6日目にPBSCとしてドナーから回収する。一方患者側は前もって放射線・化学療法を受けておき、PBSCが移植される。
? 自家PBSCT(auto-PBSCT) ・・ 大量の放射線・化学療法を行った上で骨髄を抑制し、前もって保存しておいた造血幹細胞を輸注し造血組織の建て直しを行い抗腫瘍効果を期待する。適応は造血器由来の悪性腫瘍が中心。

□ まな板のコイ ・・ 高齢の患者が皮肉って自分たちをこう呼ぶことが多い。

□ マルク=骨髄穿刺 ・・ 骨盤か胸骨を穿刺する。ドロッとした性状なら骨髄だろう。しかし老年ではドライ(骨髄が硬くて吸えない)なことも多い。なお採取の不出来によっては「末梢血混入」となり不良標本となることも。 

□ 慢性気管支炎 ・・ 6ヶ月以上咳・痰が慢性的に続く状態。たいてい喫煙者だが、公害の影響のこともある。

□ 満床(まんしょう) ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で埋め尽くされた状態。週末に合わせうまく満床にしていくのは事務長の役どころ。

□ 慢性呼吸不全 ・・ 肺気腫などの基礎疾患があり、それによる低酸素・あるいは高炭酸ガス(二酸化炭素)血症をもつ場合を指す。しかし厳密には肺気腫・DPB・慢性気管支炎の総称=COPD。

□ 慢性腎不全 ・・ 血液中のBUN・Crが慢性的に上昇していれば、程度を問わず全部ひっくるめてこう呼ばれる。

□ マンションの電話 ・・ 医師あてに時々かかってくる業者からの電話。マンション融資を促してくる。医師の存在を確認し、医局長などの病院スタッフ名義で電話をかけてくる。医師名などの情報漏れは薬剤・医療機器関係あるいは事務関連などと、疑われる部署は数知れず。

□ 慢性関節リウマチの検査・治療についてポイントのみ

・ MTXが第一選択薬という認識が主体となってきている。難治・進行例では生物学的製剤(抗TNFα薬)が使用される。
 ※ 生物学的製剤の第1弾がインフリキシマブ(2003)、第2弾がエタネルセプト(2005)。
 しかしこれらは関節がターゲットとはいえ炎症・症状をコントロールするものであって、関節変形や可動域制限などいわゆる関節機能障害の進行まで抑えることはできない。

・ そこでRAを早期の段階(早期RA)で発見しようという意気込み・試みはあるものの決定的に優れたガイドラインがないのが現実。

・ 活動性の指標 ・・ 古くはCRP、ESR、RF、最近ではアミロイドA(SAA)、MMP-3(RA関節の増殖滑膜で産生つまり滑膜炎のマーカー)、抗CCP抗体が早期より上昇する指標であり、血液検査以外ではMRI、関節エコーも早期の診断に有用である。なおレントゲンでは滑膜炎は検出できないので早期発見にはならない。

・ MMP-3高値例では関節破壊進行が早く、こういう場合はMTXや生物学的製剤を早急にという意見あり。

・ その他の指標

→ RF ・・ これの検出法としては色々あり、RAテスト、RAPA、RF定量、抗ガラクトース欠損IgG抗体(CARF)、IgG-RFなどがある。この中でCARFはより早期の段階で検出されるが特異度が低め。特異度はIgG-RFで高く(90%)、関節症状以外主体のRA(血管炎など)との関連がある。

→ 抗CCP抗体 ・・ 特異度95%以上と高く、RFで最も特異度の高いIgG-RFよりも優れる。感度のほうも80%とRFと同等。しかもRF陰性のRA患者の3-5割に陽性となるから驚きだ。特異度が高いので、これが陽性なら積極的にRAを疑って次の検査(MRI・関節エコー)にまわすべきである。

・ MRI所見

→ 滑膜炎、腱鞘炎、滑液包炎
→ 骨変化・・早期では滑膜炎領域の骨髄浮腫(骨髄内の水分増加であり反応性の変化)。進行すると骨浸食。

これらを認めるほど関節の破壊病変が多くなる予測が立ち早期治療の必要性が増す。

・ RAの薬

→ NSAIDs ・・ 現在では補助的役割。病状の進行には寄与しないからだ。なので使用するとすればそれは、確定診断までのつなぎ、DMARD効果が出現するまで(1−2ヶ月)のつなぎ、軽症例への使用として使用される。
→ ステロイド ・・ NSAID・DMARDによっても症状・炎症が抑制できなければ使用する価値はある。ただし使用量はPSL換算で10mg以下。可能な限り5mg以下に努力すべき。ただ関節外症状(血管炎や胸膜炎など)ではこの量では足りない。開業医でよくされている関節内注入は副作用を考慮すると3ヶ月以上間隔ですべき。
→ DMARDs=抗リウマチ薬 ・・ 関節破壊の進行を抑制。早期、できれば診断後3ヶ月以内からの導入が勧められる。問題点としてはノンレスポンダー(人によってなぜか効かない)、エスケープ現象(長期使用中に効果減弱)、腎障害など。欧米ではMTXが第一選択だが日本では他のDMARDが無効なとき使用を許される。ただし使用量が欧米に比して少ないのが問題となっている。
→ 生物学的製剤=抗サイトカイン療法 ・・ MTX無効例、骨破壊進行例に使用。厚生省の基準では、MTX6mg/weekの3ヶ月投与でもコントロール不良なら使用の適応がある。薬価の高さ、副作用(感染症・悪性腫瘍誘発など)が今後の課題。なかでも感染症は結核などの日和見感染の頻度が高く、インフリキシマブの場合開始2-3ヶ月後(効果発現最大の時期)に発見されやすい。

・ 一般医のリウマチ専門医に紹介する基準 ・・ Paul Emery(2002)
? 腫脹関節数≧3
? MTPかMCP関節の病変を伴う
? 朝のこわばり≧30分

・ MTXによる間質性肺炎

→ 頻度は1%前後だが死亡にいたることもある。治療はもちろん本剤の中止であり、中止数日で軽快傾向となることが多い。
→ 投与時期のいつでも起こりうるし、投与量とも関係がない。間質性肺炎らしき症状(発熱、乾性咳、労作時息切れ)が一過性にでも認めれば次回の投与は見合わせて、肺疾患の有無・活動性の評価にあたる。画像上、間質性肺炎の所見が認められたらニューモシスチス肺炎の除外が必要になる。喀痰細胞診、できれば気管支鏡検査を施行し気管支肺胞洗浄を行い鑑別につとめる。

□ 慢性膵炎 

 最近ではアルコール性の頻度が増えている(67.7%)。またアルコールだけでなく喫煙も危険因子であり、禁煙によりリスクは減る。また慢性膵炎では膵癌または他の悪性腫瘍の合併も多い。さらに喫煙が膵癌の危険因子であることもわかっている。

 病態的には代償期→移行期→非代償期へと進む。代償期では急性再燃発作があり、腹痛・背部痛を繰り返し、実質的には急性膵炎を繰り返す。その他おとなしい時期は間欠期といわれる。なお非代償期に進展すると腹痛がむしろみられなくなり、それまでカバーされていた分泌機能の破綻(糖尿・消化吸収障害)がみられてくる。なのでいったん症状がおさまっているときはむしろ逆に検査の頻度を増やしたほうがいい。慢性膵炎での腹痛は急性とちと違い、心か部〜左季肋部を中心とすることが多い。しかも飲酒・高脂肪食がきっかけに起こりやすいという特徴もある。

※ 2001年にMRCP検査所見を付け加えた、新しい臨床診断基準が作成された。 

□ 満床 ・・ 病棟のベッドがすべて入院患者で占められ、もう入院受け入れのの余地がないこと。やむを得ず、強制的に誰かが退院させられることもある。
□ 右側胸部誘導 ・・ 通常の心電図では記録しない、右胸の心電図記録。下壁心筋梗塞の際に記録しないと、配慮のなさを問われる。

□ ミニ医者 ・・ ナースの中で、ドクターなみの態度で物事を語る人間。陰でこう呼ばれることあり。

□ ミニ移植(RISTとも呼ばれることあり)=骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植 ・・ 骨髄移植の際に処置前の免疫抑制剤投与が行われるのは常だが、この投与量を減量して行う方法をさす。移植の前に強力な免疫抑制剤で悪性細胞を駆逐する(←移植前処置という)のは骨髄破壊的であるという指摘が出てきたこと、また悪性細胞の駆逐自体を移植前の免疫抑制剤でなくむしろ移植後の免疫反応で行おうという発想からこの方法が生まれた。なお薬剤の減量といっても使用される薬剤の免疫抑制効果そのものは強力で、具体的にはpurine誘導体が中心に使用される。しかし従来の「骨髄破壊的」な骨髄移植と比較して優れているかどうかの比較はなされていない。

□ ミノマイシン ・・ テトラサイクリン系抗生物質。点滴と内服がある。異型肺炎が好適応。副作用としては肝障害など。ときに血管痛(なので生食100でなく500などの大きい点滴に混ぜることも)、膵炎の原因となることも。現場では「ミノ」と略される。

□ ミリスロール(日本化薬) ・・ 亜硝酸剤の点滴。狭心症・心筋梗塞で投与。標準的投与方法(体重50kgとして):?急性心不全・不安定狭心症・・初期原液で1ml/hr≒0.17μg/kg/min、維持量6-12ml/hr。?血圧コントロール・・初期原液で3ml/hr≒0.5μg/kg/minで20ml/hrまで。収縮期血圧90mmHg以上はキープする。ただし数日以上の点滴は「耐性」を招く。これに対して「ニトロール」は耐性を招きにくいとのデータあり。

□ ミルリノン ・・ 商品名はミルリーラ。PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。

□ むずむず脚症候群=レストレスレッグシンドローム=restless legs syndrome=RLS ・・ 夜間に足がむずむず感じてそれで眠れなくなる原因不明の疾患。6-8割では睡眠中の周期性の四肢運動が出現。40-50歳代に好発。一般的な検査所見では異常を呈さないため、結局うつ病や不眠症と誤診されることが多い。専門家によると、以下の問診で4つとも満たすなら間違いないという。?手足を動かしたい欲求あり、?安静時に症状悪化、?動き回ると楽になる、?夕方以降に増悪。具体的な検査としてはポリソムノグラフィーが必要となる。治療としてはまず生活習慣の改善(カフェイン・アルコール摂取禁止、特に夕方以降)、下肢マッサージ・ストレッチ。内服ではパーキンソン病治療薬。

□ ムンテラ ・・ 家族への説明。ムント(口)+セラピー(療法)という言葉の組み合わせが発展して勝手にできあがった造語。「MT」とカルテに記載する輩もいるが、これも自然に派生した言葉で、いわゆる正式な医療用語ではない。

□ 名義貸し(めいぎがし) ・・ 以前は公然と行われていた、履歴書のみ他病院に勤務して給料がおりるという仕組み。特に大学院生は授業料支払いながらの大学勤務なので、モチベーションという意味で必要なものだった。名義を貸してもらう病院側はとりあえず書類上の人数確保。しかし、国の機関はこれをもともと知っていたはず。これを公な騒ぎにすることで、大学病院崩しと民営化、民間病院経営圧迫、医療費抑制などに持っていこうとした役人らの利己的な意図が垣間見える。

□ メイロン ・・ 重炭酸。つまりアルカリ化剤。高カリウムの治療、アシドーシスの補正に使われる(※以前、アドレナリンの作用が現弱されるといわれていたが最近の研究では影響ないようである:2006年日本医師会雑誌)ほか、メニエル病でもよく使用。高炭酸ガスの場合はそれを助長するので使用すべきでない。ボトルではナトリウム負荷にも注意。

□ メキシチ−ル=メキシレチン ・・ 心室性の不整脈に使用される。最近は糖尿病性の末梢神経障害の使用も。副作用としては肝障害、精神症状に注意。血中濃度の測定がときに必要。

□ メタ(meta=metastasis) ・・ 癌の転移。

□ メタボリックシンドローム=MS=metabolic syndrome=代謝異常症候群 

まず基礎に生活習慣の偏りがあり、それによって内臓脂肪が蓄積、これによって脂肪細胞の機能異常、特にアディポサイトカイン分泌異常を引き起こす。で、高脂血症、高血圧、糖尿病をきたし動脈硬化を起こしていく、いわゆる複合型リスク病態。

 2005年4月の最新の基準によると・・内臓脂肪の蓄積がある(巻尺でウエスト周囲径・・ベルト位置でなく、ヘソまわり・・で男性85cm以上、女性90cm以上)のが必須条件で、あと以下3つのうち2項目を満たす場合。

?高脂血症(中性脂肪150以上 かつ/または HDL=善玉コレステロール;40未満)
?高血圧(上が130以上 かつ/または 下が85以上)
?糖尿病(空腹時で110以上)。

※ ただしここでの高脂血症、糖尿病、高血圧は従来の基準のものとは異なる。
※ 日常臨床での内臓脂肪量測定(CTで内臓脂肪面積100cm2以上→内臓脂肪蓄積あり)と血中アディポネクチン濃度測定が強調されている。

 ところでこの基準は議論を呼んでいる。というのは女性で腹囲90cm以上と定義したら、実際リスク集積者の半数以上を見逃してしまう、というのだ。最近では動脈硬化性疾患の合併も考慮し、具体的にはカットオフ値を男性83.7cm、女性80.0cmの目安と考える意見が有力である。これに関してはさらなる検討が進められている。

※ ところが「日本ではエビデンスに基づかない診断基準が作られている。その例の1つがMSである」、という指摘があり議論を呼んでいる。詳しくは日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/で。

メタボリックシンドローム各論↓

○ 糖尿病性大血管症
 糖尿病は、それがないのと比べて冠・脳血管障害のリスクが3-4倍に上昇する。
 血糖是正による心血管イベントの抑制効果は・・明らかなはずだが実はエビデンス不足。
 そこでJDCS=Japan diabetes complication study:日本の2型糖尿病の合併症の発症要因を解明するための前向き研究:が行われている。

○ 高脂血症
 動脈硬化疾患ハイリスク患者の場合は、たとえLDL-Cが正常でも十分な管理が必要であることは十分示された。ではどこまで下げたらいいのか、それが今のトピックス。アメリカでは「重度ハイリスク」という分類(糖尿病などリスクが多い人、ACSなど)を分類し、その場合は70mg/dl未満まで下げる必要性を提唱した。日本ではJ-LITという調査によるデータが今のところスタンダードな指標とされている。つまり一次予防でLDL-C 160mg/dl未満、二次予防で100mg/dl未満。

○ 高血圧
 第一選択薬は5つ。すなわちCa拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬、β遮断薬、降圧利尿薬
 α遮断薬も第一選択でもよいがエビデンスなし。
 レセルピン系薬剤、ヒドララジン系は臓器保護効果は不十分なので第一選択にはならない。
 目的は脳・心・腎の合併症の予防である。

<薬物におけるEBM>

・ 高血圧
 RA系抑制薬(ARB・ACEI) ・・ 単なる降圧のほかに、糖尿病新規発症抑制(20%)、糖尿病患者の微量アルブミン尿↓による腎障発生抑制
 α遮断薬 ・・ 脂質・糖代謝改善作用(インスリン感受性↑、LDL-C↓、HDL-C↑、TG↓)

・ 糖尿病
 チアゾリジン誘導体 ・・ 脂質代謝改善作用(HDL-C↑、TG↓)、抗動脈硬化作用(PWV↓、IMT↓)、ステント挿入後の再狭窄率↓
               PROactive study:2型糖尿病への投与で心血管イベントが有意に抑制。
 メトホルミン ・・ 2型糖尿病の肝臓の糖新生抑制、インスリン抵抗性↓、LDL-C↓、T-Chol↓、TG↓

・ 高脂血症 
 スタチン ・・ メタボリックシンドローム患者の心血管イベント抑制、糖尿病新規発症抑制
 フィブラート系 ・・ 脂質・糖代謝改善作用、冠動脈新患患者の2次予防効果(BIP study)

□ メディカル・コントロール=MC ・・ 医学的観点から、救急隊員が行う応急措置等の質を保証すること。具体的には救急隊員の教育指導、救急の実際の検証・症例検討、病院到着前の指示など。さらに具体的には救急隊員に勉強会などで学ばせ、意外とされてなかった救急活動の事後検証(あくまでも批判でなく)を行い検討し今後に生かし、場合によっては隊員の再教育につながる。またオンラインで救命士と連絡を取り合うドクター(メディカル・ディレクター)の充実。日本でこの体制が充実しているとは言い難く、これら実現のため行政・消防・救命センターの一層の努力が必要。

■ メトクロプラミド(プリンぺランなど) 

 制吐剤として使用。ドパミン拮抗薬で、その機序ゆえにパーキンソンなど不随意運動の副作用がまれにある。特に小児の投与で不随意運動所見(眼球運動異常、項部後屈、斜頸、頸部痛、後弓張、四肢の伸展・捻転)がみられたら副作用を疑う。海外ではこれを考慮した使用制限の流れがある。

□ メニエル病 ・・ 内耳の水腫により回転性めまいを起こす。若年でも起こしうる。通常はメイロンの点滴かメリスロンなどの内服。自律神経症状の一部との鑑別はほとんどされていない。

□ メプチンエアー ・・ 喘息の頓服・水色キャップのスプレー。息苦しいときに使用。通常は1日2回まで。使用しすぎは頻脈のもと。子供用に「メプチン・キッドエアー」あり。喘息の吸入薬を吸う場面は映画でもおなじみで、最近では『コール』でダコタ・ファニングが吸っていた。

□ 免疫グロブリン製剤 ・・ 原料は多数の健康人の血中免疫グロブリンであり、それらを精製・濃縮したのが本剤である(血液製剤)。おもに重症感染症の増悪時に、抗生剤と併用される。実際の投与量は地域によって保険上のしばりがあり様々。細胞外増殖菌(インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌などの一般的な感染菌)では効果が期待できるが、細胞内増殖菌(レジオネラ、結核菌など)・マイコプラズマ・クラミジア肺炎、真菌には有効性は期待できない。投与が早すぎるとショック・血圧低下につながるのでゆっくり(1-2時間で)、通常は3日間投与する。これにより腎不全を起こすと不可逆性になりやすい。

■ 免疫グロブリン静注(IVIg)療法 ・・ 小児疾患(ITP、川崎病など)や神経疾患(ギランバレー、CIDP、MMN)、重症感染症(前述)や低ガンマグロブリン血症などに用いられる治療法。400mg/kg/dayで5日連日投与だが経験的なものであり投与量に科学的な根拠があるわけではない。なお点滴開始30分後に副作用(ショック、風邪のような症状など)が出やすいので最初の速度は抑え目が望ましい。また遅発性の副作用として無菌性髄膜炎が1割(経度)、顆粒球減少(一過性)などがある。

□ モーニング・サージ ・・ 夜間→覚醒にかけて交感神経が活性化し、血圧が早朝に上昇してくること。この時間帯は脳卒中の発症が多い。このためいかに早朝の血圧を下げるかが大事だとMRは強調する。

□ モダシン ・・ 抗生剤で、セフェム3世代。緑膿菌用でよく使われていたが、最近は耐性菌も増えている。

□ モニター ・・ 詰所に置いてある、ピコピコ鳴ってる心電図。重症患者か不整脈患者についている。ときに警報音が鳴ったりして職員を驚かせる。

□ モニタリング ・・ ある指標を追いかけること。例えば白血球が今日は増えて、明日は減って・・とかの追跡。

□ 問診表 ・・ 外来受診の前に初診患者の書くもの。既往歴、現在の症状、アレルギー・妊娠の有無など。

□ 薬剤性肺障害 ・・ 薬物有害反応(ADR=adverse drug reaction)のうち呼吸器系のもので、ADRのうちの6-7%を占める。様々な病態を呈するが、最も多いのは薬剤性肺炎で、2000年以降急増している。特に有名なのが間質性肺炎で問題になった金製剤のシオゾール、小柴胡湯、イレッサ。薬剤性肺障害の発生機序はほとんど不明で、病理組織像も多彩。実際の臨床では病理像が得られることは少なく、せいぜいBAL(気管支肺胞洗浄)止まりのことが多い。病態的には肺胞病変、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球性肺疾患などが主体。なお薬剤性肺障害と鑑別すべき病態として、?マイコプラズマ肺炎・細気管支炎、?Pneumocystis jiroveci肺炎、?ウイルス性肺炎、?Coccidioides症(4類の輸入感染症で、Cccidioides immitisによる)、?寄生虫感染症、がある。治療は薬剤の中止のほか、低酸素の状況に応じての酸素投与、ステロイド投与(重症ではパルス)となる。薬剤性肺障害のBAL所見では、総細胞数の増加、細胞分画では好酸球・リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の低下が多い。
□ 夜診(やしん) ・・ 夜の外来診察。16-19時と17-20時のパターンがある。関西ではけっこうされている病院が多い。

□ 「やっぱ・・人間関係かな」 ・・ 某病院の職員へのアンケート「職場で長続きするには何が一番重要?」で、これが一番多かった。
 人間関係がこじれれば、職場から離れてもストレスが続くからだ。しかしこればかりは、働いてからでないと分からない。

□ 有意差 ・・ 単なる見た目の「差」ではなく、統計学上の「差」。この差が証明されると、論文上のデータとして有効、と認められる。

□ 「有意とまではいきませんが(苦笑)、若干、差がみられる傾向にある・・」 ・・ MR主催の臨床試験の結果発表で、有意差が出なくてもなんとか有効な証拠を上げようと努力するとき、こういう表現がなされる。見苦しい。

□ 優位半球 ・・ 利き手と反対側の脳。したがってたいていは左の脳をさす。脳卒中が優位半球側で起った場合、特に側頭葉で起った場合は言語障害の出現がみられる。
脳が左右対称な臓器だとしても、卒中の症状は場合によって左右で大きく異なるわけだ。右利きの人は、左の頭を大事にしよう。

□ 有機リン中毒

・ 農薬・家庭用殺虫剤に含まれる。事故・自殺での急性中毒が多い。服薬事実の確認、白濁吐物、有機溶剤臭を手がかりに。血中PchE活性(重症度と相関)を確認。50%以上の低下は本症を強く示唆する。
・ AchE阻害作用による症状を呈する。有機リンにはそれ自体AchE阻害作用をもつものと、肝臓で代謝されてAchE阻害作用をもつものがある。
・ 体内のAchを分解するのがAchEの役目だが、これが阻害されるのでAchが蓄積しそれによる症状が起こる。
・ 具体的には以下の神経を麻痺させる → 中枢神経(興奮、昏睡、痙攣)、体神経(筋攣縮、筋力低下)、交感神経(散瞳、頻脈、高血圧)、副交感神経=ムスカリン様作用(徐脈・縮瞳・気管支狭窄)。
  ※ 縮瞳は重症例にみられることが多いが初期は散瞳していることも多い。
・ AchEに結合した有機リンは24-48時間後には強固となりAchEの再活性化は不可能となる(aging)。治療が遅れると脂肪への取り込みが多くなり長期化を招く。また症状がぶりかえすこともある。
・ 拮抗薬のPAMを投与し、症状(徐脈・縮瞳・分泌亢進)によりアトロピン(ムスカリン作用にのみ拮抗)を投与する。ただしagingの時期になってからではPAMの効果はない。なので早期(24-36時間以内)に投与する必要がある。
・ 早期に治療が開始され低酸素がない場合は回復に10日ほどかかる。

□ 「指先に集中しなさい」 ・・ 西日本のカテの権威の言葉。感情的にならず、あくまでも冷静にせよという意味が込められている。

□ ユリノーム ・・ 尿酸を下げる薬。腎臓排泄型。劇症肝炎のニュースでときに賑わうが尿酸の薬自体にネタが少ないため、相変わらず使用を続けているのが現状。

□ 陽イオン交換樹脂 ・・ 高カリウム血症の治療の1つ。速効性には欠ける。内服と注腸(肛門経由)がある。ケイキサレート、カリメートなど。

□ 溶血 ・・ 血液のうちの赤血球が壊れること。2通りの意味があり、
 ・異常な抗体などで血球が破壊される病気、例えば溶血性貧血
 ・採血するときに吸引する圧がかかりすぎて血液が注射針内で壊されてしまう状態
 をさす。実際の臨床では後者に出くわすことが多い。なお溶血してしまった検体で血液検査に回してしまうと、GOT(AST)/LDH/CPK/Kの値が異常にに上昇、ヘモグロビン(Hb)、血小板
が異常に減少してしまう。

□ 腰部脊柱管狭窄症 

 その中を脊髄が縦に走る、脊柱管http://www.tahara-seikei.com/764b.jpg内に変形が生じて周囲の神経障害をきたす。

 きっかけは椎間板への負荷、あるいは年齢による椎間板そのものの変性で、周囲に変性が波及していく。神経障害により足のしびれや痛みを呈する。間欠性跛行もありASOと症状が似るが、下肢の動脈触知によって鑑別する。

 3-4割は保存療法で改善するものの、10-15%が3-4年で悪化してしまう。治療の主体は薬物療法で、痛みにはNSAIDと中枢性筋弛緩剤、しびれにはPGE1製剤(物質名リマプロスト、商品名プロレナールは保険適応)を。必要によりブロックも追加する。保存療法を4-6週続けても症状が軽快しないとき、あるいは高度・進行性の麻痺、膀胱直腸障害(失禁や頻尿)は手術の適応となる。

※ 変性=機能しなくなる、というニュアンス。

□ 予後 ・・ その後の寿命。薬剤の比較試験などの統計でよく使用される用語。あくまでも病状に関するもので、経済的背景・患者の満足度などは考慮されていない。

□ 翼状針 ・・ 操作が手軽で短い針。短時間の点滴に最適で固定しやすく患者も楽。しかし高価なため、経営者によっては病院に置かないところもある。

□ 抑制 ・・ (不穏などで)暴れた患者を、抑制帯というベルトを使ってベッドにくくりつけること。といえば非情な言い方だが、治療の妨げにならぬよう仕方なく行う行為だ。特に夜間はスタッフが少なく家族もなしではやむを得ない。抑制帯で縛るのにはかなりのパワーが必要だ。『エイリアン』中盤の食事のシーンくらい力が要る。

□ 夜はまだこれから ・・ 居残りせざるを得なくなったレジデントが、ナース達より掛けられる言葉。準夜のナースが深夜への申し送りまでなんとかレジデントを引っ張ろうとする意図。

□ ?型コラーゲン ・・ 「ヒアルロン酸」とともに、肝臓の線維化の進行度を示唆する血液検査項目。慢性肝炎→肝硬変への推移を反映する。ただし肺線維症でも上昇する。

□ 楽勝 ・・ 医療の現場でもついつい使われる表現。いつもより手技がスムーズに進んだりした場合などに。

□ ラクナ梗塞 ・・ 『ラクナ』はラテン語で<小さい空洞>。脳梗塞の1/3を占める。通常、大脳の深層である大脳基底核・脳幹に数ミリ(定義では径15mm以下)の大きさで見つかる小さな脳梗塞。1/3は被殻にできる。深層なので血管(穿通枝動脈という)も細く、梗塞も小さい。高血圧・加齢のほかメタボリックシンドロームなどが背景にあることが多く、無症状が多い。

□ ラミブジン ・・ 2000年に承認された、抗ウイルス化学療法薬。B型肝炎ウイルスの増殖を抑制(長期投与ほどe抗原を陰性化)する。長期投与による変異ウイルスの出現(YMDD変異株)が問題となり臨床家を消極的にさせていたが(5年で6割が耐性化)、2004年12月発売のアデフォビル(商品名はヘプセラ錠)・・変異株に有効・・の登場によりその問題は解決の方向に向かっている(2005年10月の時点でも良好)。腎障害に注意。なおラミブジンはどれくらいの期間投与を続けるかが議論されている。理想的には短期間でHBe抗原を陰性化させて、HBV-DNAを2.6log copies/ml以下にすることだが、実際は長期投与にならざるをえないようだ。

□ ランセット ・・ 循環・呼吸器関係の海外雑誌。レベルとしては分かりやすいスタンダード版、といったところ。

□ リース ・・ 借り物。たとえばある業者から1台呼吸器を買って、ついでに1台レンタルさせてもらう。取引先であることをいいことに、購入はしないがレンタルして実質的に病院のものになる物品。どこの病院でもやってる。

□ リエゾン診療 ・・ 複数の科の医師たちが集まって1人の患者について定期的に話し合うこと。リエゾン(フランス語)=連携。

□ リカレンス(reccurence)=再発

□ リザーバーマスク=リザーバマスク=高濃度酸素マスク ・・ 鼻・口にまたがってつける普通のマスクのほかに、空気をためる袋がひっついた大きなマスク。より濃縮された酸素を送ることができる。これでも間に合わなければ人工呼吸器の準備となる。

□ リスモダン ・・ 抗不整脈薬で内服と注射あり。Ia独特の副作用の、口渇はよくみかける。

□ 利尿剤 ・・ おしっこを増やす薬。目的は高血圧の治療、心不全の治療が中心。内服はふつう日中に飲む。減量目的で使用する人も。

□ リバウンド ・・ 薬剤をいきなり中止したことで起きる、思わぬ副作用。避けるためには少しずつ減らす。特にステロイド、βブロッカーにはそれが重要。

□ リバビリン=Rib ・・ C型慢性肝炎治療薬の1つ。インターフェロンとの併用でウイルス陰性化率を向上させる。日本の難治例の報告では48週の併用でウイルス排除率は50%弱と、優秀な成績。最近では遺伝子組み換え型インターフェロン=cIFNとの併用でのよりよい効果が報告されている。副作用では?催奇形性、?溶血性貧血があり、?による治療中断が高齢者に目立つ。

□ リピーター医師 ・・ 医療ミスを繰り返す医師。手技・診断能力が未熟だとしても<それに気づいてない>パターンが陥りやすい。また技術があれこれできていても、困難に陥ったときのフォローができてない、また患者とのインフォームドコンセントが日頃から成り立っていない、また自信過剰な医者に多い傾向がある。

□ 流動食 ・・ 液体の食事。カロリーはたいてい1ccにつき1-2kcal。おおよそ900〜1200ccを朝・昼・晩に分けてチューブを通して胃に入れる。鼻からチューブを通す「経鼻栄養」と、みぞおちの穴(手術して造る)を通す「胃ろう」の方法がある。つまり既に消化した栄養分を流すわけ。通常は白湯(さゆ)で薄めるが、濃い状態だと下痢を引き起こす。

□ 療養型病棟=療養型病床群=介護型病棟 ・・ 急性期的な治療を要しない、しかし何らかの後遺症でリハビリ・管理が必要な、リハビリ主目的の病棟。

□ 履歴書 ・・ 医療従事者の場合、左半分の記入で可。右半分の余計な書き込みは、不要な情報を与えるだけ。もちろん取得資格は書くべき。

□ 臨機応変 ・・ 医局内の仕事などで、どう考えても片付かない内容に関して上層部が使う言葉。

□ 臨床 ・・ 病棟患者を見るふつうの医者の仕事。それに対して実験・論文の仕事を「基礎」と呼ぶ。

□ リンデロン ・・ 強力なステロイド剤で、塗り薬と注射がある。塗る範囲が広汎だと副作用の配慮も必要。

□ 緑膿菌=Pseudomonas aeruginosa=(あるいは単に)シュードモナス=シュード 

 好気性ブトウ糖非発酵グラム陰性桿菌。浸潤した場所に発生しやすく健康人には無害だが抵抗力落ちた人には宿敵となる。しかも多剤耐性緑膿菌という、抗生剤の効きにくいタイプまで現れた。

菌の表面の線毛により気道の上皮細胞に付着し菌が増殖、集落=コロニーを形成する。これにフィブリン・血清成分などが蓄積してシールド様の構造となって、マクロファージ・好中球、抗生剤からの攻撃から身を守る。これを「バイオフィルムの形成」という。

この「バイオフィルム」が出来ると気道の線毛の運動が邪魔されて痰が出にくくなる。また驚くべきことに菌どうしに情報伝達のしくみ(菌の密度を感知して、それが高くなるとホモセリンラクトンという物質により遺伝子情報を発現→毒素放出)があり、これを「クラオムセンシング機構」という。 

□ ルールアウト=除外。『r/o』と略されることも。
□ レジオネラ肺炎 

 Legionella pneumophilaという好気性グラム陰性桿菌によって肺炎(レジオネラ肺炎)を起こす。

 温泉旅行歴が重要。老人ホームでの風呂の水まわりの不備が原因で大量発生することもある。しかしヒトからヒトへの感染はないとされている。院内肺炎として起こるならそれはオペ後の患者に多いらしい。

 潜伏期2-10日間(温泉旅行から帰ったあとでも起こしうるってこと)。症状はインフルエンザ様症状(筋肉痛・高熱)、呼吸器症状のほか消化器症状(下痢・腹痛)、意識障害もありうる。本菌は食細胞に取り込まれたとしても殺菌はされない(ここが他の菌と性格が異なるところ!)。こうして細胞内移行で増殖(よって食細胞内増殖菌とも呼ばれる)するので細胞内移行が低いβラクタム系・アミノグリコシド系が全く効かない。

 なので初期治療を誤ると手遅れになる可能性あり(適切な治療がないと7日以内に死亡)。

 治療薬はリファンピシン、ニューキノロン、マクロライド、ケトライド系といろいろあるが覚えておいて損はない。

 喀痰検査や採血では検出を期待できず、尿中抗原が保険適応未ではあるが有用だ。EIA法だと3時間、免疫クロマト法ではなんと15分で結果が出る。ただ尿中抗原は陽性が長いこと続くので、果たして今回の感染なのかどうか悩むこともある。しかも数多いレジオネラのうちL.pneumophilaSG1というタイプ以外は陽性率が低い。SG1は残念ながら欧米で頻度が高いものだ。そこでPCR法による検出が研究されている。 

□ レスピ=レスピレーター=人工呼吸器

□ レスピラトリーキノロン ・・ ニューキノロン抗生剤のうち、肺炎球菌(肺炎の原因菌で最多)に有効で組織移行(内臓によく浸透)の良好なもの。4種類あって、?TFLX、?GFLX(低血糖注意)、?SPFX(光線過敏症に注意)、?LVFX。抗菌力は?>?>?>?。
 ※ 例 ・・ ?オゼックス、?ガチフロ、?スパラ、?クラビット

 なおレスピラトリーキノロンは肺炎球菌だけでなくインフルエンザ菌、非定型菌のマイコプラズマ、肺炎クラミジアにも有効。しかも最近話題の耐性菌であるPRSP、BLNARにも有効とされている。これだけ優秀な薬がガイドラインの第一選択にされていない理由は、抗生剤頻用による耐性菌の増加を危惧してのことである。

□ レスポンス ・・ 反応。薬の効き具合、あるいは医者のムンテラに対する家族の反応など、意味はいろいろ。

■ レセプト=レセ ・・ 月1回の、その月の各患者の病名・処置、投薬内容一覧。それぞれに点数が掛け算され、合計点数をはじきだし診療報酬として請求することになる。高額の医療費を要した患者にはドクター直々の長文を添える(事務員は月に1週間ほど泊まり込み覚悟で頑張る)。国の機関がこれをチェック(チェックするのは高齢医師のことが多く、人によって癖あり)、不正がないか、保険適応でないか確認される。レセプト処理にあたって病院の事務員が使い物にならない場合などは、業者(ニチイ学館など)に依頼することもある。なお2011年度からはレセプト請求はオンラインが義務付けられた。古い開業医では手書きのとこも多いため、そういうところは今後レセプト専用のコンピューター(レセコン)を新規導入するか、廃業するかの選択を迫られている。実際これが理由で廃院準備を進めている老舗は多い。国の策略とも取れる(開業医いじめ)。
 
 
□ レミケード(2003年7月発売) ・・ リウマトレックスに引き続き登場した、リウマチ治療薬の画期的な新薬。物質名<インフリキシマブ>。内容は抗TNF-α抗体。つまりサイトカインそのものを抑制しようという大胆な薬剤で、その機序から生物学的製剤と呼ばれる。MTXとの併用が必須デ、RA患者の骨関節破壊の進行を抑制、ひいては骨破壊の修復さえみられる。安全性が確かめられ、2005年秋から高用量投与の臨床試験が始まる。さて実際は早期投与としてでなく、DMARD無効例の症例に使用されることが多いという。専門家は発症3年以内の早期投与を提唱している。副作用は結核が重要で、欧米の調査では投与3回、治療12週の時期が一番多かった。本薬剤の詳細はここ。http://www.h7.dion.ne.jp/~hirata/kawara_06.html

□ ロイコトリエン(LT)受容体拮抗薬 ・・ 気管支喘息に中心に使用される、抗アレルギー薬。単独でも効果があるとメーカーは言う。実際は吸入ステロイド剤のコントロールがイマイチなときの付属的意味が強い。最近の話題としてはプランルカスト(商品名オノン)において、成人喘息患者のかぜ(ウイルス感染としての)に対する予防効果がある(2005年10月)、といったもの。つまりかぜで悪化しやすい喘息発作を予防するというものだ。ウイルス感染により気道にロイコトリエンが産生される、という機序を受けてのものだ。

□ ロセフィン ・・ 抗生剤の点滴は通常1日2回のことが多いが、このセフェム系は1日1回が可能。なので外来で好んで使用される。

□ 肋間(ろっかん) ・・ 肋骨と肋骨の間の空間。

□ 肋間神経痛 ・・ 表面の痛みだが、診断する前に胸部CTなどで内臓疾患を否定しておく必要がある。NSAIDが効きにくければペインクリニックでブロックしてもらう手も。

□ ロタウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは2-3月)に流行。おもに生後6ヶ月〜2歳。経口・接触感染で潜伏期1-3日。発熱・嘔気・嘔吐(2日以内に軽快)→下痢(白色便を認めるのは半数)。肝障害みられることあり。軽快まで3-7日要する。迅速診断キットがあるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。

□ ロータブレーター ・・ PCI(冠動脈インターベンション)におけるニューデバイスのうち、粥腫(じゅくしゅ)切除術のうちの1つ。紡錘型金属チップを高速回転させて、バルーンで拡張不能な硬い石灰化病変を削る。

□ ローテ=ローテーション ・・ 院内で別々の科を順繰りに研修したりすること。

□ ワイヤー ・・ 針金。といっても柔軟性あり。これをまず血管内に通すことでカテーテルの通り道を確保する。血管だけでなく、イレウスチューブ使用のときも活躍する。

□ 若い子 ・・ 年輩のナースが新人ナース(通常は未婚の1-2年目)を指して呼ぶ言葉。

□ ワゴトニー=(ドイツ語 Vagotonie ファゴトニー) = (英語 vagotonia ワゴトニア) = 迷走神経緊張症=副交感神経緊張症。つまり副交感神経系が機能亢進の状態にある。心拍数は減少し、心臓から拍出される血液が減少、頭や全身に届く血液が減少、失神を来たしうる。これで低血圧となった状態を「ワゴトニー性低血圧」という。採血や点滴などで針を刺す際など、極度の恐怖心が原因であることが多い。硫酸アトロピン(脈↑)、エホチール(心拍出量・末梢血管抵抗↑)の注射などで対処する。
 余談だが、<ワゴトニー>という呼び方自体、英語とドイツ語の呼び名が混じった曖昧なものと思われる。

□ ワソラン ・・ カルシウム拮抗薬の1つ。頻脈性の不整脈を止める目的で使用。心機能低下の副作用あり。

□ ワルファリン=ワーファリン ・・ 心疾患などの慢性期の抗凝固療法で使用。急性期でヘパリン点滴使用、その後のつなぎとして開始されていく。投与法はdaily dose法がよく選ばれる。具体的には5-7mg/dayで開始して、3日目に採血(PT-INR)で評価、その後1-2日間隔で測定し維持量を決めていく。安定した抗凝固作用が得られるまでには5日間以上は要する。なのでヘパリンとつなぎの場合は重複期間が必要。

INRの目標としては

?高リスク患者(心房細動+僧房弁狭窄、すでに塞栓既往あり心房細動) ・・ 3.0-4.5
          
?低リスク患者(心房細動+他の心疾患、急性前壁梗塞、拡張型心筋症) ・・ 2.0-3.0
          
?NVAFの高齢者 ・・ 1.5-2.1あるいは1.6-2.6

※ 最近のガイドライン(日本循環器学会)では、抜歯や体表面小手術の際でもワーファリン内服を中止しないことが提唱されている。以前は歯科処置といえば中止としていたが、休薬中の血栓塞栓症の発症が問題となったからだ。意外と知らない医者が多い。

□ ワンショット ・・ 一気に注射を打ち込むこと。通常は静脈経由。
□ Aライン ・・ 動脈ライン。動脈に入った(通常は手首)点滴ルート。これを通して血圧がリアルタイムで表示。動脈血を適宜ここから採取できる。

□ ABCDスコア ・・ TIA発症から7日以内に脳卒中を起こしやすいかどうか、スクリーニングして予想するための評価尺度。ランセットH17.7月号で提唱。評価項目は・・Age(年齢)、BP(血圧)、Clinical features(臨床的特徴)、Duration(発作持続時間)の4項目、計6点で評価する。6点満点だと3割が1週間以内に脳卒中を発症するという。

□ ABI ・・ 足関節/上腕血圧比。閉塞性動脈硬化症などのスクリーニングとして行われる。正常は0.91-1.30。

□ ABPM=24時間自由行動下血圧測定 ・・ 30分〜1時間間隔で腕がしめられ血圧が測定されるという、ちと無理がある機械。ホルターの血圧版。夜間の血圧が分かるところがミソ。朝方急に血圧が上がることがわかればモーニング・サージということになる、など日内変動パターンを知ることができる。特に高齢者では血圧の変動が大きく、これによる測定が欠かせないのだそうだ。なお未だに保険適応外。

□ ACEI=ACE阻害薬 ・・ 降圧剤の一種。最近はARBに押されぎみ。ACEの悩みの種であった副作用「乾性咳」がARBにはないからだ。慢性心不全の予後を改善するデータあり、心機能低下がある人はとりあえず飲んでおいたほうがいい薬剤。

■ ACF=aberrant crypt foci ・・ 肉眼的には正常な大腸粘膜だが、顕微鏡下メチレンブルー染色にて濃染する大きな腺管の集まり。腺腫・癌の前病変所見として重要。ACFを標的とした治療の臨床試験が進行中。

■ Activation syndrome=賦活症候群 ・・ 別名「stimulation syndrome=刺激症候群」。抗うつ薬投与(特にSSRI)により引き起こされる中枢刺激症状(不安・敵意・焦燥・衝動性・パニック発作・アカシジア・不眠・軽躁・易刺激性・躁状態)。よって自殺のリスクを高める可能性がある。脳内5-HT受容体刺激によるドパミン減少が関与。しかし実際は、その症状が原疾患によるものか副作用なのか鑑別が(専門家でさえ)困難なのが実情。そういう問題もあるが、投与の初期に特に注意が必要。

■ ACTS-GC=Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric Cancer。つまり胃がんへの抗癌剤TS-1による術後補助療法の試み。最近、D2郭清した胃がん患者にTS-1単独による術後化学療法を行うことで生存期間が有意に上昇することが確認された(最大の副作用は食欲不振程度)。これまで胃がんの術後化学療法の有効データがなかっただけに画期的な発表となった。ただ、本剤使用後に耐性となった場合の薬剤選択など(CPT-11の意見あり)、課題はある。

□ ADA ・・ 胸水の測定項目。結核性胸膜炎の場合高値を示す。

□ ADL=activity of daily life=日常生活動作・・ 運動の自立度。その人が周りの手助けなしで、どこまで運動できるか。

■ ADR=alternative dispute resolution ・・ 裁判外の紛争処理。一方的な医療訴訟に発展する前に、第三者を仲立ちとしたあくまでも冷静な話し合い・真相究明を目的とする。医師側と向き合わない本来の訴訟は、弁護士の私腹を肥やすだけになりかねない。最近では病院内ADRなるものも登場している。

□ af ・・ 心房細動

□ AGML=急性胃粘膜病変 ・・ 胃の中の粘膜が広範囲に剥がれて出血する病態。潰瘍ほど深くないが範囲が広いので、多量に出血する。教科書どおり「コーヒー残渣様」の吐血をみる。

□ AIC ・・ 自己免疫性胆管炎 ・・ PBCの一亜型。臨床的にはPBCと考えられるがAMAは陰性で、そのかわりANAは高力価を呈する疾患で、PBCの基準を満たすもの。治療もPBCに準ずる(UDCA)。無効ならフィブラート系。

□ AIDS指標神経疾患 ・・ HIV感染に伴う神経合併症。

? HIV脳症(最多) ・・ 症状は前頭ー皮質下障害型(認知障害が中心)を呈する。
? 進行性多巣性白質脳症=PML ・・ 本症の85%以上がHIV感染。ゆっくり進行(亜急性)の神経局所症状(無道無言に至る)とMRIのT2画像で高信号の非対称性病巣。髄液のJCV-PCRは特異度高く(92-100%)、診断を強く示唆。
? クリプトコッカス症 ・・ クリプトコッカス髄膜炎の9割近くがHIV患者。亜急性。診断は髄液中の菌体あるいはクリプトコッカス抗原証明、髄液培養で陽性所見のいずれかによる。
? トキソプラズマ脳炎 ・・ 進行性の局所神経症状、CT/MRIでの多発性、しばしば浮腫随伴の造影剤増強病変、抗トキソプラズマ治療に2週間以内に反応、の場合に感染を示唆。
? サイトメガロウイルス(CMV)脳炎 ・・ HIVにCMVウイルスの感染自体はほとんどしており、実際CD4陽性リンパ球数<50μLになると問題化。亜急性進行性の脳症で、CT/MRIでの脳室周囲造影効果により示唆。
? 脳原発悪性リンパ腫=PCNSL ・・ CD4陽性リンパ球数<200μLで発症。発生にEBウイルスがほぼ100%関与。トキソプラズマ脳炎との鑑別難。

□ Alzheimer病(アルツハイマー病) 

 認知機能障害(記銘・記憶、思考、判断力の低下など)を中心とする神経変性疾患。発症後は進行性で生存期間は平均7年。早くて40歳代の発症もある。

 原因として最も考えられているのは、加齢・遺伝子変異により脳内に沈着するアミロイドβ蛋白質(Aβ)の蓄積が引き金となって脳内の「タウ」という蛋白を(高度にリン酸化して)機能不全とし、タウ沈着が神経細胞の変性そして神経細胞死を起こして、その結果痴呆となるという機序≪アミロイドカスケード仮説≫である。

  http://homepage3.nifty.com/mickeym/simin/320arutu.htmlに診断基準。

※ このアミロイドβ蛋白質が、難病の加齢黄斑(おうはん)変性症を引き起こすことを東京医科歯科大大学院の研究チームが突き止めた。研究チームの森田育男教授は「アルツハイマー病との因果関係は不明だが、同病に使われる治療が応用できる」と話している(2005.9月ニュースより)。

※ アミロイドの蓄積を画像でどうやって描出させるかあちこちで研究されている。日本ではマウスでFSBという物質(アミロイドを染めるcongo redから由来)を静脈注射し、MRIでの描出例が報告された。

 治療は依然として、塩酸ドネペジル(アリセプト)による予防しかない。効果は確実ではない。

<関連映画>・・「明日の記憶」「私の頭の中の消しゴム」

□ AMD=Age-related Macular Degeneration=加齢黄斑変性 ・・ 日本で急増中で75歳以上は高頻度。網膜の中心である黄斑に異常をきたす。タイプは2つで

 ?萎縮型 ・・ 黄斑が萎縮し、視力低下が緩徐に進行。

 ?滲出型 ・・ 脈絡膜に新生血管ができて網膜に浮腫・出血をきたす。視力低下は急激で失明例も。

 初期症状は視野の中心がゆがんできて→暗い、欠けるなどの訴えへと進む。細かい碁盤の目のような図(アムスラーチャート)をみて歪みが発見されれば可能性が高く、確定診断は蛍光眼底造影などで行う。

 治療では2004年5月〜光線力学的療法(PDT)が主流。新生血管に集積する色素(ベルテポルフィン)を静脈注射のうえレーザーを当てることで新生血管を閉塞。安全性高く20分ぐらいで終了。実施施設についてはhttp://www.pdti.jp/で。

□ ANCA関連血管炎に関してポイントのみ

・ ANA(抗核抗体)
 膠原病で高率に陽性となるのは・・MCTD(100%)、SLE(98%)、SSc(85%)、シェーグレン(80%)。
健常人でも陽性はよく見かけるが、頻度的にはX40→25〜30%、X80→10〜15%、X160→5%以上といったところ。実際に膠原病を疑うレベルはX160の場合。

・ ANCA ・・ 好中球細胞質のアズ−ル顆粒中の抗原を認識する自己抗体。染色パターンにより以下の2つに分かれる。
○ C-ANCA ・・ 好中球細胞質(Cytoplasmic)がびまん性顆粒状に染まる  ・・ 対応抗原はプロテイナーゼ3=PR3なのでC-ANCA=PR3-ANCA
○ P-ANCA ・・ 好中球の核周囲(Perinuclear)が染まる ・・ 対応抗原はミエロペルオキシダーゼ=MPOなのでP-ANCA=MPO-ANCA

・ PR3-ANCAの陽性率
?WG ・・ 80-90%
?MPA=顕微鏡的多発血管炎 ・・ 50%
?AGA ・・ 10%
?pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎=腎限局型のMPA ・・ 30%
?PN  ・・ 10%

・ ANCAを診断基準にあてはめた疾患はMPAとWGである(1998年)。MPAの確定に生検は必ずしも必須でなく、ANCA+所見でも診断がつく。しかしWGの確定に(特に臓器所見が少ない場合)ANCAを参考とするなら生検は必須である。

□ APS=抗リン脂質抗体症候群 ・・ 抗リン脂質抗体陽性+血栓症・妊娠合併症

○ 症状・所見
・ 血栓傾向
 静脈血栓では下肢深部、表層静脈が多い。しばしば肺塞栓。なお動脈にも血栓を起こすのが特徴。このため脳血管障害の頻度が高いが(本症の動脈塞栓の9割以上)虚血性心疾患が少ないのも特徴。
・ 妊娠合併症
   妊娠中毒症、不育症、流産(中後期に起きやすい特徴)
・ 血小板減少(20-40%)
        
○ 検査・診断
・ 抗リン脂質抗体(必須)・・抗カルジオリピン抗体=aCLにより検出=正確にはβ2GPI依存性aCL
・ LA=ループスアンチコアグラント
・ APTT延長
・ またその他の凝固線溶系異常
・ 血清梅毒反応擬陽性

○ 診断の実際の流れ
 Sapporo Criteria(1999)によると診断のキッカケはまず血栓症+妊娠合併症→β2GPI依存性aCLまたはLAが証明されれば
 APSと診断する。

○ 治療
・ 急性発症の血栓症に対する治療・・血栓溶解剤・ヘパリンなど
・ 予防
 静脈血栓:ワーファリンコントロールで目標はPT-INR 2.0前後。
 動脈血栓:低用量アスピリン(81-100mg)+シロスタゾールかチクロピジン併用+血栓リスク高度ならワーファリンもときに併用

□ ARB ・・ 最近ACEIに取って代わられつつある降圧剤。薬価が高いのが難か。最近ではオルメテック、ブロプレスが臨床医に評判がいい(降圧の面で)。

□ ALI/ARDS

↓ 2005年10月発行の新ガイドラインに基づく。

 その本態は、肺胞隔壁の透過性亢進・・・つまり血管や肺胞上皮の細胞間の隙間が開くことによる非心原性肺水腫である。大ざっぱではARDS(急性呼吸窮迫症候群)≒ALI(急性肺損傷)ではあるが、厳密にはこれら2つはPaO2(動脈中の酸素分圧)/FiO2(投与している酸素濃度)により区別される。
※ 呼吸器学会では、ALIの数ある和訳(肺障害、肺損傷、肺傷害)に関して『肺損傷』が表現上最も好ましいとした。

したがって

・ 急性に発症した低酸素血症
・ 胸部レントゲンで両側性の肺浸潤影
・ 肺動脈楔入圧で左心房負荷の所見がない、つまり左心不全を除外できる←右心カテーテル検査あるいは心臓超音波で確認

があればALI/ARDSであり、さらにこれらは

・ PaO2/FiO2≦300mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ALI
・ PaO2/FiO2≦200mmHg(呼吸器の設定のPEEP値に左右されず) → ARDS

※ FiO2、とあるが人工呼吸器がついている前提での計算式ではない。カニューラやマスクならそれ相応のFiO2で当てはめて算出する。

と機械的に区別される。単純にみればARDSのほうがALIに比べてより重症、ということになる。実際ALI患者の54%が、その診断3日以内にARDSに移行することが報告されている。

<基礎疾患>
 大きく2つに分けられる。
● 直接損傷 ・・ 肺炎、誤嚥など
 ※ 特に脳血管障害急性期、全身麻酔前後にみられることのある胃内容物の誤飲はMendelson症候群と呼ばれる。
● 間接損傷 ・・ 敗血症(全原因の4割!)、外傷、高度熱傷など

<経過・病期>
3つのステップ。この一連の変化をDAD=diffuse alveolar damageという。

? 浸出期=急性期 ・・ 呼吸不全発症から3-7日以内。病理学的にはうっ血・浮腫が目立ち、肺胞入口部を主体とする硝子膜形成(血漿成分が主体)が最も特徴的所見。
? 器質化期=増殖期=亜急性期 ・・ 呼吸不全発症から7日以降-14日以内。?型肺胞上皮細胞(線維を分泌)の増殖、それによる線維化が進む。
? 線維化期=慢性期 ・・ 呼吸不全発症から14-28日以降。線維化がもはや完成した、いわば終末像の状態。肺胞壁・血管壁(中膜)はコラーゲンにより肥厚。

<臨床>
・ 症状としては、労作時呼吸困難→安静時呼吸困難へと進行。過換気傾向のため、初期は二酸化炭素は貯留しない(つまり低換気ではない)。
・ そこでレントゲンで両側の浸潤影があれば本症を疑うことになり、上記のPaO2/FiO2を計算する。注意すべきは実際の肺損傷から陰影の出現まで12-24時間のタイムラグが存在しうることだ。
 よって画像が特徴的でなくても血液ガスの結果から疑ってかかる必要がある。
・ 画像の読影にあたっては、以下の除外が必要。
□ 左心不全
□ 実はもともとあった肺線維症の急性増悪 ・・ すでに出来上がったような陰影(蜂巣肺など)が混じってないか。
□ 急性の間質性肺炎 ・・ もしこれなら、原疾患にあたるものが見当たらないはず。BALFでの鑑別は有用。
□ COP(BOOPという病名は古いらしい) ・・ レントゲンでの下肺外側優位の浸潤影(エアブロンコグラムあり)、BALFで鑑別。ステロイドが有効だがそれは結果での話。
□ 急性好酸球性肺炎
□ 膠原病による肺胞出血 ・・ SLE、Goodpasture症候群、ANCA関連血管炎など。
□ 薬剤性の肺胞出血 ・・ アミオダロン、プロピルチオウラシルなど。
□ 感染症 ・・ 通常の細菌性肺炎だけでなく非定型肺炎、カリニ肺炎、そしてサイトメガロ、レジオネラも忘れがちだ。
□ 過敏性肺臓炎
□ 粟粒結核
□ 癌性リンパ管症
□ 医原性 ・・ 輸液過剰、気胸や胸水ドレナージ一気しすぎによる再膨張性肺水腫
□ その他 ・・ 神経原性肺水腫、高地肺水腫

・ 経過としてみられてくるもの

(人工呼吸器)
○ 循環不全 ← 陽圧人工呼吸(PEEPの追加でも)による胸腔内圧上昇が原因で、心拍出量が減る。
○ 人工呼吸器関連肺炎=ventilator-associated pneumonia=VAP ・・ 入院後48時間以上経過して人工呼吸管理中に起こる細菌性肺炎をこう呼ぶ。
○ エアリーク ・・ 具体的には気胸、縦隔気腫、皮下気腫など。肺の空気がよそへ漏れてしまう。これは気道内圧上昇のせいで、人工呼吸器より送られる空気が線維化で固くなった肺と押し合いして、肺に穴が開いてしまうようなもの。そのため1回換気量はできるだけ少なめとし、呼吸回数を増やしてでも気道内圧を最小限にする努力が必要である。
○ 高濃度酸素による肺損傷 ・・ 人工呼吸器から高濃度の酸素が送られると(まあ必要だから送っているわけだが)、それ自体が活性酸素を増殖させ肺組織を傷害する。なのでできれば酸素濃度設定はせめて60%以下に抑えたい。

(内臓合併症)
○ 肺高血圧 ・・ これが進行すると右心不全も加わり、<肺性心>と呼ばれる状態になる。
○ 多臓器不全 ・・ 具体的には腎不全、肝不全、消化管出血など。
○ 敗血症
○ DIC

<治療>

● 薬物療法 ・・ 臨床所見で有効性が証明されたものはない。

・ グルココルチコイド(ステロイド)
 ステロイドパルス、つまりメチルプレドニゾロンを1日1グラム3日間、という方法が現実的によくみられるが、有効性の裏づけまではされていない。する価値がある治療、とでも言うべきか。というのは原疾患によってはステロイドが有効である病態がある、または潜んでいるかもしれないからだ。
※ 発症7日目以降の病態に対するステロイドの検討が大規模試験で行われており、結果待ちの状態である。

・ 好中球エラスターゼ阻害薬
 シベレスタットのこと。商品名エラスポール。投与するとしたら発症して72時間以内。それ以後は効果の期待薄い。臨床試験では有効性は証明済みだが生存期間まで短縮したわけではない。

・ 抗凝固療法
 AT?製剤
 遺伝子組み換え型活性化プロテインC(drotrecogin α)・・(本邦はまだ未承認) ・・ 重症敗血症の治療開始後28日目の予後を有意に改善、とのデータあり。

● 呼吸管理(要点のみ)

・ PCV=pressure control ventilationでは気道内圧の上限が設定でき、これは肺への損傷を最小限に防ぐという目的をもつ。
・ 最近の報告では有効な治療法としてはまず、低容量人工換気療法・・1回換気量を6ml/kgまで落として気道内圧を30cmH20以下にし、CO2上昇 しようともO2が60Torr以上維持できるなら呼吸性アシドーシスを容認してもいい、という内容。圧による肺への損傷を回避するためだ。この病態では大目に見ても1回換気量は10ml/kg以下の設定が好ましく、決して12ml/kg以上にしてはならない。
・ FiO2の設定はまず1.0で開始し徐々に下げ、PEEPは5を出発点として3-5キザミで上げていく。

□ AS=大動脈弁狭窄症 ・・ 心臓の出口の弁が年齢とともに硬くなり、血液が出にくくなった状態。脳などへの血液供給が減って失神・脱力を起こし、送れなかった血液は心臓の中へ逆流し(つまりARが合併してASRとなる)、心不全の原因となる。治せる薬はない。手術しかないが、その時期が重要。

□ ASCOT-BPLA試験(2005年報告) ・・ 心血管危険因子のある高血圧患者に、新薬群(カルシウム拮抗剤主体)と旧薬群(β遮断薬主体)とで心血管イベントの発生を比較。結論は新薬のほうが旧薬のほうを上回り、心イベント発症の抑制効果がより高いという結論が出た。

□ ATLS=Advanced Trauma Life Support ・・ 米国外科学会の外傷委員会が開発した、外傷初期診療のための医師(外科系いかんにかかわらず)向けプログラム。プライマリケアだけでなく患者の搬送の手順、病院選びなど幅広い能力が要求される。日本では<JATEC>http://www.jatec-web.com/がこれにあたる。

□ ATRA=アトラ ・・ 活性型ビタミンAで、白血病細胞のみに存在する融合蛋白をターゲットとして作用する、分子標的治療薬。
 1988年上海で24例のAPL(急性骨髄性白血病)全例が寛解、日本でも高率に寛解。以後APLの治療に使用。

 ATRAによりAPL細胞は好中球へと成熟・分化させるという機序のため、白血球の増加を招きやすく、それに伴いレチノイン酸症候群=RA症候群(ARDS類似の病態でステロイドパルスに反応良)、APL分化症候群といった重篤な副作用を来たすことがある。

 RA症候群の予防のため、化学療法が併用されるのが常。また長期使用による耐性も問題で、休薬によりまた有効となるが永久耐性の例もある。

 多施設共同研究では未治療群でのアトラによる寛解率は約90%と優れる。しかし約20%の再発例がある。再発の場合はATRAが無効の場合が多いが2005年春、日本発売の新規レチノイン酸Am80では再発例の約60%に再寛解が得られるという。

□ atrophy(アトロフィー) ・・ 萎縮。頭部CTの脳萎縮所見などのときに使用される用語。
□ βブロッカー(ベータ−ブロッカー)=β遮断薬 

 β受容体を遮断する薬剤。目的としては降圧が多い。ACE阻害薬と同様、慢性心不全の予後を改善すると最近見直されてきた薬。

 なので本来の降圧薬としてでなく循環器領域で使用する頻度が増えている。

 ただしこの中にも種類があって、症状、血行動態(エコー所見など)によって慎重な選択が望まれる。できれば循環器系のドクターに調節してもらったほうがいい薬剤。糖尿病、徐脈など副作用は多い。だが欧米に比しわが国での使用頻度はまだまだ少ない。

□ β-D-グルカン ・・ カンジダ抗原より正確な、真菌検出・抗真菌剤効果判定のための血液検査。結果判定まで数日を要するのと、月1回の測定までしか許されないことが多いのが難。カンジダ抗原と同一日に測定できないので、実際は最初にカンジダ抗原を測定、即日の結果が陽性なら抗真菌剤を開始。翌日にβ-D-グルカンを測定、数日後の判定でもし陰性なら抗真菌剤は中止、という具合。なお測定法が2つあるのだがそれぞれ長所・短所があり、どちらをどう使い分けるべきかなどの評価検討が進められている。

□ B型肝炎=B型慢性肝炎=CHB 

 肝硬変への移行を防ぐための治療のタイミングがポイント。無治療でも治るケースがあるため若年では高ウイルス量でもすぐに治療をするべきかどうかは悩むところ。35歳までは様子見で、越えてHBe抗原が陽性なら早期の治療を進めるという考えが強い。

 また、HBV-DNA量が1X10の4乗以上であればHBe抗原・ALTの値にかかわらず肝硬変進展の独立因子である、という台湾の研究結果に基づき、そこを基準に治療に踏み込むべきという意見もある。

 治療は大きく分けて

?免疫機序でウイルス排除:IFNによる期間限定的治療
?ウイルス増殖抑制:核酸アナログによる長期治療

 がある。

?はウイルス多い例には有効性低く、ウイルスの種類(ジェノタイプ)にも左右されるという問題
?には耐性の問題

がある。こういう問題もあるので、治療適応はあくまでも各人で異なったものとなる(実際ガイドラインも国によって様々)。

□ B.I.=ブリンクマン・インデックス ・・ 喫煙年数 X 1日のタバコ本数。これが400を越えるなら肺癌のリスクあり。
 例文)「ブリンクマン・インデックスは2000と、かなりのヘビースモーカーです」

□ BAD=branch atheromatous disease ・・脳の深部に入り込む動脈を穿通枝というが、このうち比較的太い部位(厳密には穿通枝入口部から本管側)のアテローム閉塞による脳梗塞。脳梗塞の大きさはアテローム梗塞とラクナ梗塞との中間に位置する。

□ BAL=bronchoalveolar lavage=管支肺胞洗浄 ・・ 気管支鏡によって気管支の末梢に生食を流し、回収したもの(回収した液がBALF=BAL fluid)。気道にある炎症細胞などを拾って分析。

□ Bartter症候群 ・・ 遺伝性の尿細管疾患、の1つ。症状は乳幼児期からで、脱水・低カリウム症状が主体。代謝性アルカローシスを呈するほか、レニン上昇、一方アルドステロンは正常〜高値と幅広い。尿中にはClの排泄が増加する。利尿剤フロセミドによっての強制利尿が得られないのも特徴で、これより本剤の作用部位であるヘンレの太い上行脚の機能異常が指摘され、現在原因遺伝子特定(複数)にまで至っている。

□ Batista手術 ・・ 左心室の自由壁を部分的に切除・縫縮することで左心室の大きさを縮小する。僧房弁置換術も行う。DCMに行われること多いが、ごく一部の適応を除き否定的な意見(術後はいいが再悪化してくる)が多いらしい。

□ BRS=Baroreflex Sensitivity=圧受容体反射 ・・ 副交感神経機能の評価法の1つ。カテコラミン製剤であるフェニレフリン(商品名ネオシネジン)を静脈注射して、動脈圧と心電図モニターの動きをみる。通常は血圧が上昇するに従い脈は遅くなる。動脈圧が上昇すれば通常、受容体(大動脈弓、頸動脈洞にある)による反射で副交感神経が刺激され徐脈になるという現象を利用。心筋梗塞を起こした患者のこの反射は低下しており、徐脈になるまでの時間が遅延する。遅延するほど予後が悪い。

□ Brugada(ブルガダ)症候群 

 特定疾患。以前の「ぱっくり病」の主たるもの。提唱が1992年と新しい。若年〜中年男性の睡眠時突然死(心室細動による)の原因として注目。30歳代後半〜40歳代の男性に多く(75-94%)有病率0.15%。症状のある群とない群があり、後者のほうが一部を除き予後良好。

 発作は安静時(つまり副交感神経亢進時)に多く、具体的には大仕事・運動直後に起こりやすい。

 失神歴と安静時心電図所見(不完全右脚ブロック+右側胸部誘導(V1-3)のST上昇)より診断<心電図所見のみの場合は「Brugada様心電図」と区別することがある>。?群抗不整脈剤でその特徴的な心電図波形が増強するが、同時に心室細動が誘発されることがある。なお心電図波形は運動・イソプロテレノ−ル負荷では逆に正常化する特徴もある。発熱時にはST上昇が増強するため入院管理が望ましいとされている。

電気生理学検査(EPS)では2-3連発の心室早期期外刺激で50-80%の例にVFやVTが誘発される(無症候性<有症候性)。

 なお最近では完全右脚ブロックを呈する例は少なく、むしろ正常QRS幅が1/3も占めるといい、右脚ブロックを本疾患の必須条件とする必要はないと考えられている。

 突然死は家族性・若年性。つまり遺伝病。原因遺伝子として<SCN5A>が特定され(15-25%に認める)、(ナトリウム)イオンチャネル病と考えられている。

 突然死の家族歴、電気生理検査でのVT/VF誘発があれば日本の適応(ICD植え込み)でいうとクラス?a(絶対適応ではないが適応のエビデンスあり)に該当する。ただ無症状で心電図所見のみの患者はどうしたらいいのか、結論は出ていない。

□ bruit(ブルーイ) ・・ 拍動に合わせて聞こえる雑音。腹部や頸部、そけい部などで聴取される場合をいう。血管の狭窄を反映する。

□ BS ・・ 血糖。いつの時点でのものかは不明瞭。

□ BSA=body surface area=体表面積 ・・ 単位は(m2=へーベー)

□ BSE=牛海綿状脳症 ・・ なぜか大半が20代の若年者(平均29歳)。初発症状は精神症状(元気なし、性格変化、ルーズ、意欲なし)と感覚異常(しびれ、痛み)。進行するとふらつき、体の震え。これらの症状は特異的なものではないので鑑別・除外診断が重要になる。平均罹病期間は14ヶ月。診断にはMRI、脳波(異常はまれ)、脳脊髄液検査も要する。日本では献血の問診で英国などBSE発生国に通算6ヶ月以上滞在したかどうかチェックする仕組みになっている。日本では検査体制、特定部位(SRM)除去などのリスク管理が非常に徹底されている(世界トップレベルらしい)。感染している牛の頭数が多い英国では年10-20人が発症、日本ではかなり少ないはず。
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/vcjd/厚生省。
http://www.nanbyou.or.jp/pdf/105_s.pdf難病情報センターも参考に。

□ BT(Body Tempreture)=KT ・・ 熱。

□ BTLS=Basic Trauma Life Support ・・ 米国救急医学会と救急医協会が開発した、外傷初期診療のためのパラメディカル(救急救命士含む)向けプログラム。患者の病院搬送までの救護処置に重点。日本ではBTLS JAPAN →http://www.btls-japan.jp/index.html←がこれにあたる。

□ BZD=ベンゾジアゼピン系抗不安薬 ・・ 抗不安・睡眠導入のために使用。即効性(1-2時間)で作用。このうち短時間作用型で高力価のものが不眠症に使用される。欧米では1980年代から長期服用の問題(依存性・認知機能低下・うつのマスキング)が指摘されSSRIに移行してきているが、日本ではいまだBZDの処方が多い。前述の副作用のため、最近では1ヶ月以上の継続は避けるべきとされている。急な中止は6割以上が離脱症状を訴えるのであくまでも漸減という形で。なお、うつの症例が目立つならSSRIへの切り替え(オーバーラップしながら)が好ましい。

※ 認知機能低下 ・・ 特に自動車事故、転倒。
※ うつのマスキング ・・ BZDは、うつには無効。身体症状の改善に満足して、うつがほったらかしのケースが多い。
□ C型慢性肝炎 =C肝=シーカン

 C型肝炎ウイルスが1989年発見と最近。戦後の輸血・医療行為が原因といわれており、そのため60歳代に多い。患者・医師に恐れられる理由は、将来おとなしく肝硬変・肝癌に進む可能性があるからだ。

 特にALT(GPT)が高い場合は早期の治療を検討する必要がある。

 治療に関してはインターフェロン治療が1992年に開始。3割が治癒できた。そのうちサブタイプ分類され、1(日本ではこれが7割も占める!)でウイルス量が100Kcopies/ml以上(日本ではグループ1の半数も!)の場合に限り難治性と考えられた。

 そこでやっとというか2001年にはリバビリン+インターフェロン治療が認められ盛んに治療が行われたが、満足いくものではなかった。またインターフェロンの治療期間が24週(週3回)だったのに対し、2003年に週1回だけでいいタイプが登場した。ペグインターフェロンα-2aだ。リバビリンとの併用が認められたのはまだ2004年の話で、適応も<グループ1でウイルス量が100Kcopies/ml以上>と制限されている。治療効果は50%近くもある。しかし対象に60歳代が多いこともあり、治療の中断率は低くない。

※ 治療の目標はウイルス陰性化はもちろん、ALTの持続低値に集約される。

インターフェロンの副作用:うつ症状、脱毛も。発熱(必発)・関節痛はむしろ開始時のみ。

リバビリンの副作用:消化器症状(下痢など)、貧血。脳出血の指摘が以前あったが、これを発症した人は背景に高血圧・糖尿病があったという。なのでこの2つをもつ人は慎重に使用すべき。 

□ Cペプチド ・・ インスリンの末端ペプチドで、これの量の大小がそのままインスリンの分泌の量をあらわす(インスリン分泌能の指標)。主に空腹時血中Cペプチド、24時間尿中Cペプチドとして測定され、前者が0.5ng/ml以下、後者が20μg/day以下であればインスリン依存状態と考えられる。

□ CA15-3 ・・ 乳癌の腫瘍マーカー。スクリーニング的に、CEAとセットで測定される。

□ CagA蛋白 ・・ ヘリコバクター・ピロリを構成する主要蛋白。これが胃の上皮細胞に入ると結果的に細胞の異常増殖、細胞運動性の亢進を引き起こし、胃癌の発生へとつながるとされ注目されている。

□ CBC ・・ 末梢血。白血球・赤血球・血小板を調べたもの。計測に血液が2cc必要。

□ Ca-antagonist(カルシウムアンタゴニスト)=カルシウム拮抗薬 ・・ 降圧剤で長い伝統をもつもの。中では「ジヒドロピリジン系」のノルバスクなどが1日1回型でよく売れている。アダラートLもまだ根強い。二バジ−ルは脳循環改善の作用が取り消されたがまだ根強い。

□ CEA ・・ 2つあるので注意。全く違う。

? 腺癌の腫瘍マーカー。喫煙で少し上昇することあり。測定を3ヶ月1回にとどめないと保険で切られる恐れあり。

? 頸部頸動脈内膜剥離術。頸動脈の内側にできた血栓は脳にとぶ危険がある。これを防ぐため全身麻酔下で外科的に切除する。最近は頸動脈ステント留置術=CASもあり、これの有効性は大規模試験中。
 CEAのガイドラインは欧米のもので、日本独自の研究が進められている。
 CEA術後には急激に大量の血行回復がみられるために、術後3-8日間はhyperperfusion syndromeが問題となる。最も多い症状は頭痛。脳内出血をきたす頻度は1%前後ではあるが、致死率が高いので血圧管理には十分配慮する。

□ CF ・・ 2つあるので注意。全く違う。

? 大腸内視鏡=コロンファイバー

? のう胞性線維症=cystic fibrosis ・・ 肺、膵臓、消化管など全身の外分泌臓器にみられうる疾患。欧米白人種に多く東洋人はまれ。常染色体劣性遺伝。臨床的にみられるのは、

・ 呼吸器病変の場合(ほぼ全例に認め、死因の95%) ・・ 難治性の下気道感染症、肺性心を伴う末期の呼吸不全。末梢の気道分泌液貯留から2次的に感染を起こす。ほぼ全例に副鼻腔炎を合併。

・ 膵臓病変の場合 ・・ 膵外分泌機能不全。膵酵素が欠損するので脂肪・蛋白の消化不良が生じて腹満・脂肪便をきたす。

・ 消化器病変の場合 ・・ 胎便イレウス。CF新生児の5-15%に生じる。回腸末端に好発。部分閉塞、完全閉塞もあり。

 汗腺・気道の上皮細胞におけるCl-イオンの細胞外への透過性障害によるものと考えられている。もっと具体的にはCl-イオンチャネルCFTR(CF transmembrane conductance regulator)の機能障害に起因する。さらにこのCFTR遺伝子変異が注目されている。臨床所見よりCFが疑われた場合は汗中のCl-濃度測定を行うとともに、CFTR遺伝子変異の検索を行う。最近、マクロライド薬の有効性が世界で注目されている。

□ CD20抗体療法 ・・ B細胞の表面に特異的に発現するCD20陽性抗原に対する、抗体による治療。H15年9月よりCD20陽性リンパ腫に適応となる(物質名リツキシマブ。商品名リツキサン)。臓器病変合併のSLEへの応用(5例での検討)でも優秀な成績(いずれも数ヶ月で活動性をゼロまでもっていった)をあげており(2005年)、今後臨床試験が予定されている。

□ CHD ・・ 冠動脈疾患。

□ Circulation ・・ 日本語での直訳は「循環」。ここでは循環器の海外雑誌を指す。世界でトップレベルの論文がこれに毎月掲載される。院生の論文がいきなり載ることも珍しくない。

■ CKD=chronic kidney disease=慢性腎臓病

 診断基準
    ? 「尿蛋白」や「腎臓の形態的変化」など腎臓に病気が存在する所見がある。または
    ? 糸球体濾過量(GFR)が60ml/min/1.73m2以下
 ※ このGFRはMDRDの簡易式(性・年齢・血清Cr値より)から求められる(日本独自の式ではない)。

 が3か月以上続く病態

 という、大ざっぱで無理のない基準となっている。大病院では受診が3か月毎が多いことを考えると実用的といえる。慢性透析患者は25万人おり、いっこうに増加に歯止めがかかってない。予後の悪い腎不全そのものを減らすためだけでなく、心血管系合併症(CVD)の予防も目的にある。

※ CVD=cardiovascular disease:腎機能低下するほど増加し、尿蛋白自体がCVDの予後因子とさえ言われている。

 <病期分類>

 ステージ1:腎機能は正常だが尿・病理・画像で異常所見がある。
 ステージ2:軽度の腎機能低下(GFR 60-89)。この時点ですでに進行が予測されるので予防措置が必要。
 ステージ3:中等度の腎機能低下(GFR 30-59)。合併症が顕在化してくる時期。それを意識した踏み込んだ検査が必要になる。

(以下は専門医紹介が望ましいとされている)
 ステージ4:高度の腎機能低下(GFR 15-29)。透析・移植の準備段階。
 ステージ5:腎不全期(GFR < 15)。透析・移植のタイミング待ち。

 ただしここでいうGFRの測定をするためには2時間点滴の間に飲水・採血・採尿を30分おきにする必要があり、結局この分類は今のところ実用的でない。ただ評価・治療の位置づけとしては有用。

○ ESRD=end-stage renal disease(透析導入)へのリスク
・ 尿蛋白の陽性程度が高いほど導入の時期は当然早い。なお蛋白尿1+以上かつ尿潜血陽性の場合、10年間で約3%が透析導入されている事実がある(潜血も大事)。
・ 血圧が高いほど導入率は高くなる。
・ 加齢による腎機能低下のみでは(つまり年齢での補正を行ったGFR計算が正常なら)ESRDに至る例少ない。
・ 肥満(BMI)は特に男性で影響大。

○ CKD-MBD ・・ CKDによる骨ミネラル代謝異常。

□ CL=コンタクトレンズ

□ CO中毒

・ 火災事故、炭・練炭の不完全燃焼、排気ガスなど。年間2000名前後が死亡しておりほとんどが火災。
・ COは酸素の200倍以上の親和性で血中Hbと結合しCO-Hbを形成され、酸素運搬能が障害され、組織の低酸素化を招く。
・ CO-Hb濃度(COオキシメトリーで測定。10%以上で確定診断)が10%を超えると中枢神経症状などの症状が出現してくる。10-20%では頭痛程度だが40%を超えると錯乱、重度の運動失調、呼吸促拍、50%超えると意識障害・チアノーゼ、60%で昏睡、70%で心肺停止。※ 喫煙者ではCO-Hbは10%程度を示す。
・ 間欠型CO中毒:急性期の意識障害からいったん回復して数日〜一ヶ月(5週間まではみておく必要あり)してから多彩な神経症状(失見当識、健忘、記憶障害、性格変化、尿失禁、錐体外路症状など)出現。全CO中毒の1割にみられる。
・ 動脈血で代謝性アシドーシスを呈し、特にBEは中毒の重症度を反映する。
・ 静脈血でヘマトクリット上昇、各種臓器障害所見。
・ 心電図では虚血の有無を確認。
・ CT/MRIにおける淡蒼球の低吸収域は初期にみられる所見として有名。
・ 意識清明では純酸素マスク吸入。意識障害では純酸素での人工呼吸管理。酸素投与はCO-Hb濃度が10%以下で症状消失まで行う。

□ COPD=慢性閉塞性肺疾患

 2000年の調査では、わが国では700万人を越え、今や死亡原因の第10位で増加傾向。疫学診断(NICEスタディ)ではなんと95%以上が未診断・誤診されているという。

 2004年の最新ガイドラインでは、『有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限』と定義されている。喫煙は発症リスクの80-90%を占める。

 それまではCOPD=肺気腫+慢性気管支炎とされていたが、新しい定義では慢性気管支炎の名前がなくなっている。だがあくまでも定義の問題であって、慢性気管支炎(咳・痰が6ヶ月以上)という病態が肺気腫へとつながる病態であることに変わりはない。

 肺気腫→肺をハチの巣に例えると、部屋の壁がボコボコに破壊されて部屋が融合しているような状態。部屋から外へ出る通路(気管支)も破壊され、外へ出にくい。なので痰がたまり、通路の傷の刺激で咳も頻回。何よりも息苦しい。

 健診でこれを早期にとらえるためには胸部レントゲン・・では早期発見はまず無理。呼吸機能検査でスクリーニングして胸部CT(しかもHRCT)、という流れにしない限り難しいだろう。癌ではなくて喫煙・外因的な原因が多いため、早期発見しなければという危機感がドクター間には浸透していない。なのでせめて慢性喫煙患者は検査目的ででも、受診して受けるべき。

話が飛んだが、この病態は

? 気道の狭小化 ← 炎症細胞浸潤と、それによる分泌物貯留による。

? 肺の破壊性病変 ← 肺胞や気道壁を破壊することにより気流の移動が制限される(肺にとどまって出にくい)=気流制限。つまり気腫化の状態。

 早期の変化として肺内での好中球活性化が注目されている。喫煙者は非喫煙者に比べて、好中球を活性化させるIL-8の増加、好中球から出る好中球エラスターゼの増加を認めることがそれを示唆している。また肺組織への障害の原因物質として二トロチロシンが挙げられている。これはNOの過剰産生によるものに由来し、さらにそれはi-NOS(誘導型NOS ※NOS=NO合成酵素 )の過剰発現によるとされる。このi-NOSの発現は1秒率に反比例する。つまりi-NOSが多いほど病態が進んでおり、これを利用した治療法が研究中。また気道抵抗を測定するIOS(impulse oscillation)という測定機器による治療効果判定が試みられている。CTではLAA%=low attenuation area=低吸収領域の肺野全体に対する面積比・・によって肺気腫の進行度を評価する試み(早期診断も研究中)もある。

 治療以前の常識的課題としては、禁煙しないと話にならない、という点と効率的な呼吸リハビリにより肺の力をかなりまかなえるという点だ。

 治療薬について。まず?〜?は気管支拡張による。

? 抗コリン薬 : 最近発売されたスピリーバは1日1回使用で24時間効果が続き、使いやすい。従来のは1日3回だった。常用量なら副作用はほとんどない。

? β2刺激薬 : 短時間型のメプチンエアーは効果自体は?に劣るが即効性では勝る。長時間型のサルメテロール(セレベント)は1回吸入で12時間効果が持続。

? メチルキサンチン : とくに末梢気道の拡張作用に優れ、肺の過膨脹を減少させ労作時息切れを改善。

 ?・?は吸入で、常用量なら副作用はほぼない。ただβ2刺激剤による動悸の副作用はときどき耳にする。?は高齢者では不整脈の副作用の心配があり、できれば控えたい。

? 吸入グルココルチコイド : 長期連用することで病勢を遅らせるような長期的効果はない。むしろ長期使用でステロイドミオパチー(蛋白異化、カリウム低下による筋力低下)による呼吸筋の筋力低下が心配だ。このように否定的な見解が多いが、2000年の報告では吸入ステロイドが増悪の機会を減らしたという、いい報告も認めた。なお欧米ではβ2と吸入ステロイドの合剤が使用され始めた。日本では数年後待たなければならない。

? 喀痰調整薬 : この薬に関しては大規模な臨床試験などなく、症状緩和のために処方される。ただし2001年の小さな検討では投与したほうが増悪の回数と罹病期間が少なかったと報告された。

? マクロライド系長期投与 : 実際の現場でけっこう処方される。もちろん緑膿菌に対しての意味合いが強いが、統計的にこの薬剤がCOPDそのものに長期的に有効とまでは証明されてはいない。

 タバコが最大の原因だが、それ以外にも加齢、気道過敏性(喘息)も関与する。さらに注目されている原因の1つが<アデノウイルス潜在感染仮説>というものだ。これは。小児期にアデノウイルスの初期遺伝子(E1A遺伝子)が潜在的に取り込まれ、喫煙にさらされることで肺の気腫化が進むというもの。 

□ CO2ナルコーシス ・・ 肺気腫に多いが、血液中の二酸化炭素が過剰に増えた状態。これにより自ら呼吸そのものに抑制がかかり、ひどいと呼吸が停止する。酸素を大量に吸わせると余計悪くなる。

□ compromised host(コンプロマイズド・ホスト)=易感染者、つまり高齢者や何らかの持病を持っていて免疫能が低下している患者。

□ COX-2阻害剤 ・・ 細胞のCOX-1、COX-2のうち炎症部位に発現するCOX-2のほうを抑制することで副作用(胃腸障害)の軽減を目的とした抗炎症剤。痛み止めを主目的に使用され、ハイペン、モービックが処方されている。大腸ポリープの癌化抑制効果も売り物であったが、欧米の<ロフェコキシブ>で心筋梗塞や脳梗塞をかえって増加させるという報告が相次いであり、そのあとの検討でもネガティブな報告が山積み。日本でのニュースは一時的で危機感が少ない。欧米ではこれを受けてロフェコキシブが市場から撤退した。

□ CPK ・・ 筋肉由来の酵素。骨格筋・心筋など。心臓マッサージ後、運動後も上昇するので注意。例文)「メバロチン内服して筋肉痛があったら・・CPKを確認だ!」

□ CPK-MB ・・ 心臓の心筋に特異的な物質。血液検査の1項目。緊急で計れる病院とそうでない病院があるので要注意。心筋梗塞や心筋炎で上昇する。

□ CRP ・・ 炎症反応。通常は陰性。肺炎・肝炎などのほか悪性腫瘍など、炎症を起こす病気全てで上昇する。病気の進行度・治療の効果判定などに使用される。発熱があってもなぜかCRPが上がらない、というのはSLEを疑う根拠に(赤沈は促進)。

□ CRT=cardiac resynchronization therapy=心臓再動期療法 ・・ ?心臓の両心室を同時にペーシング(両心室ペースメーカー)+?至適AV間隔の設定、によって、収縮の同期性を高める。重症心不全の治療の選択肢の1つで、2003年5月より薬事承認。ガイドライン適応は、NYHA ?/?度、QRS幅>130ms、左室駆出率35%以下の重症心不全となっているが、心室のdys-synchrony(右心室と左心室の動きのズレ)の程度を評価して適応を決めようという試みがされている。刺激の出るリードは当然2本必要で、1本は右心室心尖部でもう1本は冠状静脈洞に留置(冠静脈穿孔が0.5-数%)。これにより中隔側と左室自由壁から左心室を挟み込む形で、同時にペーシングを行う。血行動態が安定化し、なかでも血圧の上昇が顕著だという。エビデンス的には、「6ヵ月後の死亡・入院リスクが40%減少した」という北米の二重盲検<MIRACLE試験>が有名。
 ただし心室細動・心室頻拍など致死的不整脈を予防するほどの効果があるわけではなく、これに対して除細動機を付加したものをCRT-Dが最近承認された。欧米では既に良好な成績が報告されている(日本ではH18.7月に承認されたばかり)。

□ CT ・・ トンネルを自動でくぐるだけで取れる輪切り写真。悪性腫瘍診断には造影でのCTが欠かせない。造影は腎機能障害、造影剤アレルギーの有無に要注意。

□ CTD-PH=膠原病合併肺高血圧 ・・ なかでもMCTDへの合併が最多(7%に肺高血圧が合併)。膠原病全体的に、中でも20-30代女性に特に多い。突然死・心不全がみられることがあり、これは肺血管抵抗の急激な上昇による。※PHのところも参照を。

□ CTO ・・ 冠動脈の完全閉塞。「Total occlusion(トータル・オクルージョン)」とも表現される。
□ DC=バージョン=電気ショック=除細動(器)=電気的除細動 ・・ 電気ショック、あるいはそれに使われる器具。

□ DCA=directional coronary atherectomy=方向型アテレクトミー ・・ 冠動脈内の血栓を、カテーテルを通して入れたカッターでそぎ落とし回収する。

□ DES=Drug-eluting stent=薬剤溶出性ステント 

 従来のステント挿入後の慢性期再狭窄を解決するために新発売されたステント。冠動脈内の内膜増殖抑制剤が入っており、またこれを徐々に放出させる役割をもつポリマーが含まれる。

 大きく分類すると2タイプあり。

?シロリムス(免疫抑制剤。商品名はCYPHER。2004年8月から保険適応)

?パクリタキセル(抗癌剤。商品名はTAXUS)

 これらの臨床成績は良好で、再治療率が5%以下と驚異的だ。問題点としては・・高価であること、長期の抗血小板剤投与が必要なこと、それと新しいデバイスなので長期予後的なデータがないことだ(3ヵ月後以降は結局従来ステントと同じ再狭窄率、という嘆かわしいデータあり。ポリマーのせいとされ改良努力中)。このため様子をみている臨床医も多い。まなお留置するステントが複数で並ぶ場合、ステント間に隙間を作らず長く連続した留置がベターとされている。

□ DHEA補充療法 ・・ DHEAは性ステロイド(エストロゲン、テストステロン)の前段階ホルモン。副腎・性腺で産生され、男女とも6,7歳より増加、13-25歳まで高値が続き、加齢とともに減少。長寿例に高値が多く、長生きの指標とされている。実際これが動脈硬化や糖尿病などに有益であることはすでに証明されている。アメリカでは市販されていて連日内服という形で補充する。日本での発売はデータが乏しく困難。だが最近話題のメタボリックシンドロームへの応用の価値はあると思われ、特にインスリン抵抗性改善というデータは信頼性が高いので、今後特にそちらでの応用が望まれている。

□ DIC=播種性血管内凝固症候群 ・・ 重症化した病態。感染などの疾患が悪化し血液中の凝固システムが反応しあちこちに凝血塊を作り、さらにそれを溶かすための反応が亢進。出血傾向となる。

□ dizziness ・・ 動揺性めまい。横揺れ。船酔い様。

□ DIP ・・ 尿管結石診断のため、造影剤を点滴し、その尿路への流れを時間を追いながら写真に撮っていく検査。造影される尿管の途絶、また左右の尿管の見比べなどで診断。

□ direct (ダイレクト)PTCA ・・ AMIに対してすぐさま血栓溶解剤を使用せず、そのままカテーテル検査から始めること。
こちらのほうがPTCAの成績が優れている施設が多い。

□ DLST=薬剤リンパ球刺激テスト ・・ 薬剤とリンパ球の反応を、生体内でなくin vitroで検査し、生体内での?型アレルギー反応を評価しようというもの。ある検討では薬剤性肺炎の67%が陽性を示すとある。しかし信頼性には問題があり、偽陰性・偽陽性の問題、検査に使用する薬剤濃度の基準がない、検査時にステロイドが投与されている場合の影響などがある。しかも薬自身にリンパ球幼若活性があると検査そのものが陽性と出てしまうなどの問題も指摘されている。なので補助診断として扱うべき。

□ DOA=Death On Arrival=CPA=到着時死亡 ・・ 救急外来に搬入した時点で心肺停止状態の患者。

□ Dor手術 ・・ 心筋梗塞のために、左心室の壁がa-kinesis(全く動いてない)あるいはdys-kinesis(本来とは反対の動きをして協調性がなく、結果的に左心室が瘤のようにでかくなる)となった梗塞部分を除去。良好な成績。

□ DPB=Diffuse panbronchiolitis=びまん性汎細気管支炎 

 慢性的下気道疾患の代表。名前の通りで、両肺にびまん性に呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とする。症状は慢性気管支炎の症状(咳・痰)のほか労時息切れ、また高率に慢性副鼻腔炎を合併するので、<副鼻腔気管支症候群>の1つともされている。

 なぜかアジア系に多く、実際HLAでは日本人でHLA-B54の頻度が高いほか、韓国ではHLA-A11との関連が強い。なのでHLA-A遺伝子座とHLA-B遺伝子座の間にDPBの疾患感受性を規定する遺伝子が存在すると考えられている。

 本症は感染を繰り返しやすく、8割以上は緑膿菌が肺の中に定着する。診断は胸部CT(HRCTが望ましい。通常のCTでは見落とし危険あり)の肺野条件、末梢まで追える気管支の枝(つまり呼吸細気管支領域の慢性炎症である)のきめ細かな像。

 さきほどの緑膿菌感染が問題となるが、マクロライド系長期投与が半数に奏功する(つまり半数が6ヶ月投与で菌が消失!この6ヶ月目が最大効果発現時期で、それ以後プラトーで効果を維持)。成績はよく、1985年以降の5年生存率データでは91.4%と明らかに予後を改善する。緑膿菌の<バイオフィルム・・・菌が多糖類、アルギン酸産生して集落形成、さらにフィブリン・血清成分などが蓄積したネバイ塊で、コレが気道の繊毛運動をジャマして結果痰が出にくくなる>形成を抑制するからだそうだ。

□ drug fever=薬物熱 ・・ 文字通り、薬物によるアレルギーによる熱発。不明熱のときの鑑別診断の1つとして、やり玉に挙げられる。

□ due to ・・ = ・・のせいで、・・が原因で

□ E型肝炎 

 1本鎖RNAウイルスであるE型肝炎ウイルス=HEVによる肝炎。

 4つのサブタイプがあり劇症肝炎は4型に多い。持続感染しないので慢性肝炎・肝硬変は起こさないが、劇症肝炎を起こす可能性があるわけだ。経口感染という点ではA型肝炎と似るが、A型と違って流行性・季節性があまりないのが異なる。

 動物、特にブタ肉の摂食による感染が多い。日本では北海道・東北(特に岩手)に多く、国外では中国・インドなどアジア諸国に多いが理由は不明。というのはそれ以外の地域でもそれに感染しているブタがかなりいるからである。1979年-2005年1月の調査で、感染人数は193人。いずれにしても豚肉を生焼けでは食べず火をよく通そう。

 潜伏期間は平均6週間(2-9週)で海外渡航歴も重要。HEV-IgM抗体の検出を行うが、陽性だとしても感染既往か感染中なのか意義づけがよく分かってない。HEV-RNAの測定でより確実な診断に近づくが、血液中には2週間しか出てこないので測定するのが遅いと見逃してしまう可能性あり。これら2つの検査は非保険適応。

 現時点ではこれといった治療法はなし。

□ EBウイルス関連胃癌 ・・ EBウイルス(2本鎖DNAウイルス)に感染した上皮細胞が増殖した腫瘍で、胃癌の1割弱を占める。男性に多いが年齢差はない。好発部位は噴門〜胃体部。転移の頻度は低い。
・ 組織像 : 低〜中分化型腺癌の像、リンパ球浸潤(CD8陽性主体)
・ 内視鏡所見 : 表面陥凹、境界不明瞭で分厚い病変が多い

□ EBM(Evidence-Based Medicine)=科学的根拠に基づく医療 ・・ 統計学的に蓄積されたデータから、治療の方針を決めようというもの。発想としては医学にプラスになるものだったが、結局は医薬品会社の薬の宣伝目的にすぎず、一時のブームに終わった。上述の「ガイドライン」と同様、国や会社の利益の介入がある限り、臨床医はそのまま受け入れるべきではない。

■ EGFR(上皮細胞成長因子受容体)遺伝子変異 ・・ EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)であるゲフィニチブ(イレッサ)やerlotinibの奏功率を左右する因子として注目。これには4つの臨床背景が指摘されている→?アジア人種>非アジア、?女性>男性、?非喫煙者>喫煙者、?腺癌>非腺癌 。ただ、変異がなくても治療奏功例は存在するので、治療適応を遺伝子変異群にしぼるべきではないともいわれている。あと盲点として間質性肺炎のリスクも投与前の評価として重要となる。

□ EMR=内視鏡的粘膜切除術 ・・ 胃癌の中でも表層に限局してリンパ節転移がないものを対象とした、胃カメラ下での一括切除術。大きさ的には2センチ以下だが場合により3センチ以下も適応。

□ EPO=エリスロポイエチン ・・ 腎臓で産生されるホルモンで、赤血球を増加させる。赤血球造血目的のEPO製剤の適応は、CAPD(腹膜透析)施行中患者あるいは透析導入前の腎性貧血患者で、血清クレアチニン値2mg/dl以上、Ccr 30以下が保険適応となる。投与の目安はヘモグロビン値が10g/dl未満(ヘマトクリット値で30%未満)とする。なおヘモグロビン12g/dl、ヘマトクリット36%以上にまで上昇するなら休薬すること、となっている。

□ ERCP=内視鏡的逆行性胆管膵管造影  ・・ 胃カメラより長く太い側視鏡で行う造影。側視鏡は十二指腸下行脚の乳頭部まで余裕で届き、さらにそこから乳頭にワイヤー・カテーテルを入れて、胆道(C管)・膵管(P管)の造影を行う。

□ ERP=内視鏡的逆行性膵管造影。

□ ESD=endoscopic submucosal dissection=内視鏡的粘膜下層剥離術 ・・ 最近さかんな(H15あたりから)、EMRよりも適応の拡大した内視鏡下での早期胃癌治療法。まず癌の下の粘膜下層に生食などを局注して、病変部位を下から隆起させる。この病変の周囲を切開後、直接粘膜下層を剥離して腫瘍を一括切除する。従来法(EMR)に比べて穿孔・出血のリスクは高い。最近その合併頻度は減ってきているが、大腸の場合は粘膜が薄いため穿孔の率が高い(5-16%)。2006年3月より<早期胃癌>への保険適応となった。消化器外科ではなく、消化器内科の領域。

□ ESR=血沈=赤沈=赤血球沈降速度 ・・ 炎症所見の反映(1週間後)。DICで低下するほか、過粘度症候群(骨髄腫などでの)、フィブリノーゲン過剰症のスクリーニングに有用。

□ FBS ・・ 空腹時血糖。126を越えると無条件に「糖尿病」と診断される。

□ FiO2=吸入気酸素濃度 ・・ 鼻・口を通して肺へ送り出される酸素の濃さ。

○ 経鼻カニューラ:1リットルで24%、2リットルで28%、3で32%、4で36%、5で40%、6で44%。5リットル以下の場合0.2+0.03X(リットル)で計算される。
○ 酸素マスク:5-6リットルで40%、6-7リットル;で50%、7-8リットルで60%
○ リザーバマスク:6リットル;で60%、7リットルで70%、8リットルで80%、9リットルで90%、10リットルで99%。

□ flutter(フラッター) ・・ 通常は「心房粗動」をさす。心房細動に似ているが、「粗動」のほうが血行動態が不安定。

□ FM=fibromyalgia =線維筋痛症  ・・ 全身の慢性疼痛・朝増強のこわばりが中心で、疲労感・抑うつ・睡眠障害などを呈する原因不明のリウマチ性疾患。
   診察・検査でこれといったものがない。命にはかかわりないが長期に渡る例が多く、ADL.QOLを大いに落とす。
・ 米国で全人口の2%で本邦もそれくらいと言われており、決してまれな疾患ではない。
・ 原因は不明。
・ ストレス・天候に左右されること多い。
・ 全年齢で起こりうるが55-65歳がピーク。
・ 家族例が存在する(4.1%)。
・ 半数は感冒様症状に引き続いて発症する。
・ 抗ポリマー抗体が47%に陽性となり注目されている。
・ 一次性:2次性=3:1で、二次性にはリウマチ性疾患が多くRAの12%にFMを合併する。
・ 治療 ・・ 睡眠の調整、有酸素運動が基本で内服は三環型あるいはSSRI。NSAID・ステロイドは無効。根治療法はない。

□ FN=Febrile Neutropenia=発熱性好中球減少症 ・・ 造血器腫瘍(たとえば白血病)に多く認める、発熱(1回の検温で38℃以上、あるいは37.5℃が1時間以上持続する)+好中球減少(500/mm3未満、あるいは1000/mm3未満であるが500/mm3未満への減少が予測される場合)で定義されている。起炎菌が不明のことが多く致死的となりやすい。リスク(日本では、リスク評価としてのMASCCスコアはあまり普及しておらず主観に基づくことが多い)の高低に応じて、抗生剤を経口〜注射単剤〜注射2剤併用などに使い分け、培養結果を待ちつつ投与3-5日後に評価する。この場合発熱が続いていても全身状態安定していれば継続治療でもよいとガイドライン(2003年版)にある。

□ FOY(メシル酸ガベキサート) ・・ 蛋白分解酵素阻害薬。急性膵炎・DICのときに使用。単独投与が原則で24時間持続投与。
□ G-CSF製剤 ・・ 白血球のうち特に好中球を増加させるための注射。白血病や抗癌剤の投与後によく用いられる。

□ G-I=G-I療法=グルコース・インスリン療法 ・・ インスリンによるグルコース(糖)の取り込みがカリウムの取り込みも兼ねることを利用して、高カリウム血症の治療の1つとして行われる。具体的には10%TZ 500mlに対してレギュラーインスリン(速効性。名称に「R」がついてるもの、たとえばノボリンRやヒューマリンRなど)10単位を混注して2-3時間投与。

□ GERD=胃食道逆流症 ・・ 胃→食道への逆流により食道の粘膜が傷害され、?胸焼けや呑酸などの症状(日本の定義では週に2回以上の胸やけ症状)、?下部食道粘膜の傷害所見(びらん・潰瘍)のうちの1つまたは2つがあれば上記と診断。なので内視鏡が正常でも症状だけ陽性のものもあり、この場合を内視鏡陰性逆流症または非びらん性逆流症といい、食道粘膜の知覚過敏が原因と考えられている。食道下部の筋肉である下部食道括約筋の逆流防止機構が一過性(高脂肪食、大量摂取)、または慢性的(高齢者に多い裂孔ヘルニア)に破綻するのが主な原因。合併症は出血、瘢痕狭窄、食道円柱上皮化生(もともとの扁平上皮が円柱上皮に置き換わる)。この食道円柱上皮化生に特殊腸上皮化生が起こったのがバレット食道(癌化あり)である。なお食道外症状としては?呼吸器症状・・咳・喘息・反復気道感染、?耳鼻科的症状・・咽頭・喉頭違和感、耳痛、?非心臓性胸痛(一見狭心症だが検査は正常)。

 治療
? GER(食道内逆流)の抑制・・・腹腔鏡による噴門形成術、薬剤によるLES圧弛緩抑制
? 酸の抑制 ・・ PPI>H2受容体拮抗薬。いずれも中断で再発。

■ GIST=Gastrointestinal stromal tumor=消化管間質腫瘍 ・・ 間質は粘膜の下。そこで発生する腫瘍で健診(胃)での無症状発見が多く、ほっとくと悪性化の可能性あり。

 どの消化管でもみられ、胃が50-60%と最多で次いで小腸(20-30%)。治療は外科切除。

 以前はサイズで切除の基準を考慮していたが小さくても転移ありうる。小サイズは内視鏡での生検は困難だがEUS-FNAB(超音波内視鏡下穿刺吸引生検)により可能になった。だが2センチ以下だとこれでも難しいが悪性リスク小さいため経過観察となる。

 なお転移・播種がある場合は分子標的薬の経口投与が行われる。

□ Gitelman症候群 ・・ 遺伝性の尿細管疾患、の1つ。接合部尿細管の機能障害による。思春期以降に発症し、軽度脱水、低マグネシウムによるテタニー頻回が特徴的。Bartter症候群との決定的違いは、尿中カルシウムの排泄減少である。遺伝子解析中。

□ GLP-1=glucagon-like peptide-1 ・・ 消化管粘膜のL細胞で産生・分泌され、膵臓β細胞からのインスリン分泌を増強。この増強力はグルコース依存性、つまり血糖の各値に応じた量が分泌されるので、低血糖を来たしにくい。それだけでなくβ細胞の増殖・分化促進、アポトーシス制御などおいしい作用もある。このほかグルカゴン分泌抑制作用もあり(これもグルコース依存性)血糖上昇を抑えてくれる。SU剤もβ細胞からのインスリン分泌を増加させるが体重増加が問題。GLP-1のほうは食欲・摂取抑制作用もあってそれを来たさない。臨床への応用はまだ。

□ GK治療=ガンマナイフ治療 ・・ ガンマ線ビームを目標の限局した領域(焦点部)に、集中的に当てる。焦点部から外れると線量が急速に減弱するので正常組織への被曝が少なく、病巣のみ高い線量を当てれる。よって侵襲性が少なく全身状態が比較的悪い人でも可能だ。適応の実際は転移性の脳腫瘍が多く(3-6割で増加傾向。腫瘍境界が明瞭で好適応)脳動静脈奇形や良性腫瘍など。なお病巣の最大長径は3センチ以下が望ましい。正常脳への影響を考えるなら(病巣が多くても)全脳照射でなくGK治療をすすめる考え方もある。

■ GOARN=global outbreak alert and response network=感染症危機対応グローバルネットワーク ・・ 2000年発足の感染症技術機関の集大成。感染症流行の際、ここを通じて専門家が派遣されるシステム。国際会議を定期的に行う。

 今年の会合は・・もう終わった。http://www.med.tohoku.ac.jp/jimu/new/WHO.html

□ GOLD=Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease ・・ COPDの研究で活躍している世界的組織(2002年発足)。年に1回<COPDデー>なるものを設け、啓発のため各種イベント(街頭で呼吸機能検査の体験イベントなど)も行う。

□ Gyne(ギネ) ・・ 産婦人科

■ H5N1インフルエンザウイルス 

 A型インフルエンザウイルスの亜型で、東南アジアで流行が確認された鳥型インフルエンザの原因ウイルス。ヒトへの感染性獲得は20-40年周期で起こっていて(致死率60%:ARDSの病態)、今まさしく流行が予測される時期にある。

 もしこれが流行すれば4人に1人が感染するものとして計算されている。

 実際のヒトへの感染は、ほとんどが家禽類(ニワトリやアヒル)への直接接触によると考えられている。ヒトからヒトへの感染はよほど濃厚な接触がない限り起こり得ないとされている。ただヒト自体の感染が持続すれば、そのリスクはある。そうなると<世界規模の流行=パンデミック>となってもおかしくない。

 厚生省は2006年6月にガイドラインhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/08.htmlを発表した。確定診断は咽頭からウイルスそのもの、またはPCRを検出すること。しかしこれでは時間がかかりすぎ実践的とはいえず(キット未発売)、早期の発見・治療は個々の医師がいかに早く発見できるかにある。
※ ウイルスは呼吸器系だけでなく、血中・便中からも検出されるのが特徴。

 権威の意見によると、?呼吸器症状・発熱があって、?7日間さかのぼって流行地域に出かけたことがある、?そこで鳥に接触したことがある、の全てを満たす場合に疑いをもつべきとされる。

 また、症状の悪化(風邪症状→呼吸困難かつレントゲンで全体的に間質性肺炎のような影が出現)が急速であることも参考にする。

 あと、下痢が多くみられるのもH5N1の特徴である。

 パンデミック対策としてはワクチン・抗ウイルス薬ということになるが、H5N1には少なくとも4つの異なる抗原タイプがあり、どれが今後流行するか予測できないため準備のしようがない。流行が始まって開発となると半年〜1年も準備にかかるのも問題。抗ウイルス薬(タミフル・リレンザ)も、投与の基準が曖昧であるし有効性自体が実は分かってない。

□ H-FABP=心臓型脂肪酸結合蛋白 ・・ 急性心筋梗塞の急性期かどうかを診断するための血液検査の1つ。数ある項目の中でも発症すぐの段階で検出。感度については発症0-2時間の段階でも85%と優れている(それに対しトロポニンTは15%)。ただし特異度はトロポニンTの半分なので過度の信用は注意。

□ HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)=グリコヘモグロビン ・・ 糖尿病における血糖コントロールの指標の1つ。ここ1・2ヶ月の血糖の成績をまとめた「通信簿」。正常値は4.3-5.8%。6.5%以上あれば言い訳しても(異常ヘモグロビンなど特殊な疾患がある場合は別)糖尿病。血糖を低めに出すために、前日絶食したり薬を上乗せする患者がいるが、それで血糖をごまかせても、これはごまかせない。治療が結果に反映されるのがのんびり1ヶ月といわれているので、治療の反映をもっと早期に知りたいなら(急な代謝状況変化をみたいとき)HbA1cでなくて<1,5AG>や<グリコアルブミン>を測定すべき。

・ 5.8%未満 ・・ 「優」
・ 5.8-6.5%未満 ・・ 「良」
・ 6.5-7.0%未満 ・・ 「可(不十分)」
・ 7.0-8.0%未満 ・・ 「可(不良)」
・ 8.0%以上 ・・ 「不可」

□ HDA ・・ 高吸収域。CT写真で白く見えるところ。出血としてみられる。

□ HELLP症候群 ・・ hemolysis(溶血)+elevated liver enzymes(肝酵素上昇)+low platelets count(血小板低下)の頭文字の総称から名づけられた症候群。多くは妊娠中毒症に併発しDICを合併して予後不良となり母体死亡や児の周産期死亡を引き起こすこともある。突然の心か部(みぞおち)痛、嘔気・嘔吐、倦怠感を初発に発症。発症時の妊娠週数は28-40週と様々。

□ H2ブロッカー ・・ 代表例が「ガスター」。胃酸の分泌を抑制する。胃潰瘍などに投与。内服・注射あり。まれに白血球減少。

□ hyperdynamic (state) ・・ 心臓の過大な動き。貧血や甲状腺機能亢進症などでみられる。

□ hypertrophy(ハイパートロフィー) ・・ 肥大。心臓肥大のときなどの表現で使用される。

□ HAM=HTLV-?associated myelopathy 

 HTLV-?(ヒトT細胞白血病ウイルス)感染者の一部(5%)が発症する脊髄疾患で、1986年に発見。

 慢性進行性。感染経路は輸血、母子感染、性交渉。輸血歴のある者が比較的多かったため1986年より対策がなされ、以後は輸血による感染は激減した。

 症状では神経系の症状のほかに8割がTリンパ性肺胞炎を認め、ほかにシェーグレン症候群、関節症、皮膚紅斑、多発性筋炎、偽性副甲状腺機能低下、ベーチェット病などが合併症としてありうる。

 治療はステロイド内服、インターフェロンαともに有効性はみられているが根治までは至らない。根治的にはウイルス量の減少が必須と考えられ、HTLV-?に特異的なプロテアーゼ阻害薬の開発が急がれている。なおHIVへのプロテアーゼ薬に関してはHTLV-?には効果が弱い。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/kouenn-koukaikouza/ham-kouenn/12-new-approach/001.html←最近の取り組み

□ HTL=Hot tub lung ・・ 欧米で報告が相次いでいる、24時間循環型浴槽の使用者に発症するびまん性肺疾患。浴槽内に増殖したMAC(非定型抗酸菌の1つ)が、大気中で粒子化=エアロゾル化し、それが浴槽に入った人間に<吸入>され発症する。機序的には感染説<過敏性肺炎説が有力。

□ IABP=大動脈内バルーンパンピング ・・ 心臓の出口の大動脈に長細いバルーン=風船を入れ、心臓の動きにあわせて伸び縮みさせる。心臓が血液を出すときに膨張させ、心臓と大動脈の間にある冠動脈への血流を増やす。冠動脈の狭窄・閉塞が高度で血圧が低い場合などに適応となる。

□ iatrogenic(イアトロジェニック)=医原性 ・・ 医療スタッフのせいで引き起こされた状態。故意のものでなく、副作用的な意。

□ IC ・・2つある。
? インフォームド・コンセント
? 虚血性大腸炎

□ ICM=虚血性心筋症 ・・ 冠動脈疾患による慢性心不全。つまり冠動脈のあちこちの狭窄で心臓の機能が低下した状態。そのため心臓超音波所見はDCMに似る。
 例文)「ICMかDCMかは、正直カテしないと分からんよ」

□ ICU症候群 ・・ ICU入院患者で、心理的な要因(環境・性格)で生じた不安、抑うつ、幻覚妄想などの精神症状。

□ IgA腎症 ・・ 慢性腎炎の大半を占め、わが国では頻度が高い。20-30歳代で発症して無症状で経過するものの、20年後にはなんと3割が透析管理になるという(10-20%が10-20年後に腎死に至る)。症状出現時ではすでに進行しているケースが多い。日常の健診での尿検査は重要さを思い知らされる。また、以下の計算式で簡易的にGFRを推定するのが現実的である。

 【 Cockcroft-Gaultの式 】

 Ccr(クレアチニンクリアランス)=

    <(140ー年齢)X 体重 > ÷ < 72 X 血清クレアチニン値 >
    ※ 女性の場合はさらに X 0.85

 これが60mi/min以下の場合は慢性腎臓病として腎生検などの精査、専門への紹介を考慮する。

 確定診断は腎生検による組織所見で行う。血圧、血清クレアチニン値、クレアチニンクリアランス、1日尿蛋白量がその後の予後に影響する。治療は生活指導、食事指導と薬物療法が基本。薬物ではARBまたはACEIまたはそれら併用(←相乗効果)よる降圧・腎保護作用が期待されている。ステロイドの使用はCcr 70ml/min以上、蛋白尿0.5g/day以上かつ腎組織で活動性ありの場合。

□ I I =Insulinogenic Index=インスリン分泌指数 ・・ 75gOGTT負荷において、負荷後30分の血中インスリン増加量を血漿血糖値増加量で割り算したもの。インスリン追加分泌のうち初期分泌能の指標。糖尿病では0.4未満となり、境界型でも0.4未満なら糖尿病への以降率が高い。 

□ IL-6 ・・ 炎症性サイトカインの1つで、血中濃度はCRPと相関する。肝臓で合成。測定は保険適応未。

□ im(アイエム) ・・ 筋肉注射=筋注。『ロッキー4』の中盤試合前のトレーニング風景で、ドラゴが無表情に筋注されている場面あり。

□ IMT ・・ 頸動脈エコーで測定される、頸動脈の内・中膜複合壁厚。早期動脈硬化診断のため測定。

□ infection(インフェクション)=感染

□ ip(アイ・ピー) ・・ 腹腔内注射。人でなく、マウスの実験などでよく使用。

□ iv(アイブイ) ・・ 静脈注射=静注

□ iNPH=idiopathic normal pressure hydrocephalus=特発性正常圧水頭症 

 特発性、つまり原因がなく脳室拡大(脳の中にある髄液の流れる通路が拡大する)が進行し、周囲の圧迫された脳は影響を受ける。

 症状(3主徴)は

?痴呆=認知障害(前頭葉の障害が目立つ)

?歩行障害(ほぼ全例にあり。歩幅が狭く歩行が遅いとこがパーキンソンと類似するが、歩行の形態が開脚で、しかも左右のバランスが崩れているところが異なる)

?排尿障害あるいは尿失禁(尿意切迫、切迫性尿失禁)が出現し、ゆっくり進行する。

 通常、高齢者にみられる。原因があるもの、例えば髄膜炎、くも膜下出血に引き続き起こるものは2次性として区別する。

 髄液シャント術(通路から脳の外へカテーテルを這わせ、髄液を逃がすことで脳室内の圧迫を避ける)により治療が可能で、<治療可能な痴呆>として積極的に治療されてきた。

 しかしそれをいいことに、これと診断したら患者の一般状態なども省みずにする例が増え、それとともに合併症(過剰な髄液排出による慢性硬膜下血腫・水腫)の増加も目立ち、また実際の診断自体に疑問をもたれるケースも増えてきた。

そこで2003年にガイドラインが制定された。
http://www.inph.jp/doctor/doctor_index.asp
□ Kernig(ケルニッヒ)徴候 ・・ 髄膜刺激徴候の診察法の1つ。患者に横になってもらい、片方の足をL字に曲げさせてもらう。脚をまっすぐ伸ばしてもらうとき、痛みで真っ直ぐに伸ばせなければ陽性、髄膜炎・クモ膜下出血の疑いとなる。

□ KL-6 ・・ 血液検査で間質性肺炎の活動性の指標の1つ。DPBでも上昇する。このほかにSP-D、SP-Aもあるが保険上1つしか通らない。ホントは3つとも測定したほうがいいという報告が多い。IPFでは3000以上は予後が悪く(3年以内死亡多い)、1000以下はかなりいいとのこと。

□ KOT(ドイツ語)=コート ・・ 排便。看護記録で今でも使用されることがある表現。

□ LABA ・・ 長時間作用型β2刺激剤の略で、具体的な商品名では<セレベント>がそう。1日2回吸入。効果は最近発売の<スピリーバ>には劣る。慢性治療での効果減弱が指摘され問題となっている。
※ これに対し短時間型のメプチンエアーなどは<SABA>と区別されている。

□ LAD ・・ 左冠動脈の前下行枝

□ LC=肝硬変。「リバチロ」「チローゼ」とも呼ばれる。

□ LCX=CX ・・ 左冠動脈の回旋枝。

□ LDA ・・ 低吸収域。CT写真で黒く見えるところ。脳の場合は脳梗塞巣としてみられる。

□ LDLコレステロール = LDL-C ・・ コレステロールを血中で移動させる、いわゆる<船>である、リポ蛋白の1つ。体中へコレステロールを運ぶ。なので悪玉。高脂血症の中で、今では一番の指標となっている検査項目。通常の検査に組み込む必要がある。140以上は治療の対象だ。リスクを多く抱えている場合(心疾患+他の冠リスク病変)は70以下にまで下げるよう提唱されている。しかし具体的治療基準の概念まではハッキリ定められてはいない。なお最近の報告(順天堂大)では、PCI後の急性冠症候群に積極的LDL-C低下療法を行ったところ、69mg/dl以下の群ではプラークが退縮傾向になったことが報告されている。なおLDLコレステロールの酸化が動脈硬化を促進することが分かっており、抗酸化作用をもつものがビタミンE(商品名ユベラ)、フルバスタチン(商品名ローコール)。

□ Liddle症候群 ・・ 遺伝性の尿細管疾患、の1つで、常染色体優性遺伝。腎皮質集合尿細管にある、ENaC(上皮型ナトリウムチャネル)の遺伝子変異によるチャネル分子の異常が原因。ENaCの活性化によりナトリウムの再吸収が過剰に促進されて高血圧、カリウム排泄が促進される。若年(10代)発症が通常で、低カリウム、低レニン、低アルドステロン、代謝性アルカローシスを呈する。抗アルドステロン薬は効かない。治療は塩分制限に加えて、ENaC阻害作用のあるトリアムテレン、アミロライド(本邦未発売)を内服。

■ LOH症候群=加齢男性性腺機能低下症候群

 更年期、熟年期、老年期にかけて起こったアンドロゲン低下により発症する性腺機能低下症。 

 欧州泌尿器学会の定義では・・加齢に伴う臨床的、生化学的症候群で典型的な症状と血清テストステロンの低下を特徴としており、結果としてQOL低下と多臓器機能障害をもたらす。

 このうち<典型的な症状>というのは・・

1.性欲および勃起の質の低下、特に夜間勃起現象の低下
2.疲労感、抑うつ、短気など気分の変化と、それに伴う知的活動の低下
3.筋肉量および筋力の低下を伴った除脂肪体重の減少
4.体毛の変化
5.皮膚の強度と外観の変化
6.骨密度の減少
7.内臓脂肪の増加

 LOH症候群に特有の所見があるわけではない。実際はこれらを参考にした上で血中フリーテストステロンを測定し、かなり低値の場合にART(アンドロゲン補充療法)を行う。

 これらをアンドロゲン補充により治療・予防する。

※ これに対して男性更年期障害は主に更年期に発症する身体・精神症状で、アンドロゲン低下を伴う病態も存在し様々な因子が関与する。

□ lone af (ローン エーエフ)・・ 孤立性af。原因のない心房細動。

□ LTRA=ロイコトリエン受容体拮抗薬 ・・ 抗喘息薬の1つ。気管支拡張作用と抗炎症作用をもつ。さらに鼻炎にも有効。副作用少ない。業者は「単剤でも効果あり」とよく宣伝するが、正直効いてるか効いてないか分からないけどとりあえず付属的(脇役的に)に処方してる、というケースが多い。

□ LVEF=EF=左室駆出率。単位は%。心臓の収縮能を表す。これに拡張能を足したのが心機能。外科にとってオペに耐えられる心臓かどうか、これで大まかに判断する。

□ LVRS=肺容量減量手術 ・・ 肺気腫に対して勧められることがある手術(適応はガイドライン、施設により慎重に決められる)。侵襲性の少ない胸腔鏡下法は高齢・るいそう患者に行われ、胸膜癒着が明らかな例や若年者では開胸手術が奨められている。手術後には症状の改善、呼吸機能の改善、QOLの改善がみられるが、長期の追跡調査はまだされておらず不明である。

□ M-tube=経鼻チューブ=胃管=マーゲンチューブ ・・ 鼻から胃まで入れて、流動食・薬を入れたり、はたまた薬物中毒で
胃の内容を吸引するときなど使用用途は多彩。通常はナースが入れるが研修医のいるとこは、たいていさせられる。

□ MALT(モルト)リンパ腫 ・・ ピロリ除菌でこれが治った、という1993年の大ニュース以後注目されている。内視鏡では広範囲のびらん、浅い潰瘍という形でみられ、胃粘膜の病理生検およびその際の表面マーカーより診断されていく。この腫瘍の8-9割はピロリ陽性で、そのうち8割でピロリ除菌が奏効する。ただしピロリ類似菌による感染のケースがあるから、ピロリ陰性でも除菌は行うべきとされている。除菌が効かない場合は化学・放射線療法、手術療法のどれかの選択へとうつる。
※ 粘膜下浸潤の場合(超音波内視鏡で検索)、除菌は効きにくい。

□ massive(マッシブ) ・・ 胸水・腹水・心嚢液がかなり大量に貯留している、その程度を表す。
           
□ MCTD=混合性結合識病 ・・ 膠原病の1つ。肺高血圧の有無が予後を左右する。

□ MCV ・・ 赤血球1つ1つの容積。数値化される。貧血の場合、このMCV大きいと「大球性」、小さいと「小球性」、
中間だと「正球性」と表現。「小球性」は鉄欠乏性貧血、「正球性」は腎性貧血・リウマチの存在に注意。

□ MELT JAPAN ・・ 多施設による共同研究により日本独自のエビデンスを打ち出そう、という壮大なテーマをもった研究。具体的には<発症6時間以内の中大脳動脈閉塞-脳塞栓症>に対する局所線溶療法の効果を多施設共同無作為比較試験で検討する臨床試験。MELTは、Middle Cerebral Artery Embolism Local Fibrinolytic Intervention Trial(中大脳動脈閉塞-脳塞栓症に対する局所線溶療法)の略。http://melt.umin.ac.jp/outline.htmに詳細あり。

□ MIC=最小発育阻止濃度 ・・ 菌の発育を抑えるのに最低限必要な抗生剤の濃度。低いほうが抗生剤の効きがよく、したがって感受性良好、ということになる。高いほど効きにくく、耐性菌に近くなる。

■ MMP-3(マトリックスメタロプロテイナーゼ-3) 

 関節リウマチの活動性の新しい指標で、滑膜由来であり軟骨破壊→関節内炎症をみる蛋白分解酵素。よって高値の場合は進行性の増殖性滑膜炎を起こしていることを意味(増殖滑膜の量を反映)し、実際高値例ほど関節破壊の進行が早い。

 このMMP-3は滑膜表層細胞で産生される酵素で、軟骨のプロテオグリカンを分解する。よって<関節局所の病変>を反映し、全身ひっくるめて評価するCRPやIL-6とは対照的だ。

 関節リウマチの患者の9割は発症2年後にレントゲンで関節破壊を認めるので、初期治療のタイミングをはかる為にもMMP-3は重要な指標だ(早期段階で高値なほど関節破壊進行が速い。つまり予後予測因子)。

 治療効果の判定でも、単にCRPだけで評価せずMMP-3も確認する必要がある(CRPと必ずしも相関しないから)。なおMMP-3は各種膠原病、腎疾患、リウマチ性多発筋痛症のほかステロイド投与でも上昇を認める(つまりRAに特異的な検査ではない)ので注意を。なので診断的指標でなく、あくまでもいったん診断がついてからの予後予測因子として利用するのが適切。

□ MOF=多臓器不全 ・・ 病気の悪化の終末像。

□ MONA療法 ・・ 急性心筋梗塞の診断時にまず投与が推奨されるもの。M(モルヒネ:痛み軽減)+O(酸素:心筋への供給)+N(硝酸薬:冠動脈拡張)+A(アスピリン:血栓抑制)の総称。

□ MR=僧房弁閉鎖不全 ・・ 僧房弁(左心房と左心室の間の弁)が完全に閉じない状態。リウマチ性(石灰化して固い弁)、あるいは逸脱によるものなど原因はいろいろ。左心房のサイズがその程度を物語る。

□ MR ・・ プロパー。薬売り。上司から無理難題のノルマを与えられ奔走。売り上げによりボーナスが決まる会社も多い。
持ってくる資料は自社に有利なものだけ選んでくるので、そこが要注意。

□ MRA ・・ MRIが臓器の写真なら、これは血管の写真。通常は脳血管の写真を指す。造影剤などの点滴なしに、横になるだけで血管が映せるのが魅力。動脈瘤・血管閉塞・狭窄などを指摘、血管造影にもっていく。

□ MRCP ・・ 主には膵臓癌を発見するためのMRI検査。膵臓を写すのではなく、中を通る膵管(ここから膵癌ができるから)とそれに連続する胆道系を描出する。点滴もいらず寝てるだけでできる。この検査で疑いがあればERCPという内視鏡検査に移るのが常だ。

□ MRI ・・ 閉所恐怖症や体内金属あり以外の人なら受けれる検査。CTよりも正確・緻密。

□ murmur(マーマー) ・・ 心雑音。

□ MSW=医療ソーシャルワーカー ・・ 老人ホームや他病院⇔病院との連携を担う。患者の転院・入院などを割り振り。家族との相談にも乗る。

□ MRSA=メチシリン耐性ブドウ球菌=マーサ=M(エム) ・・ 表皮などに存在するブドウ球菌の、いわゆる耐性菌。てごわい菌だが、健康人には害はなく、免疫能の低下した人には命にかかわる大敵。肺炎になると重篤。特に老人や、何らかの深刻な持病(糖尿病など)をもっている人。ただし痰にそれが出ているからといって、それがそのまま治療適応とは限らない。なお2003年の世界的に有名な感染症雑誌「Infection Control and Hospital Epidemiology」の論評に『MRSA院内感染を30年以上も放置している国はおおよそ日本だけ』と記述されている。なお抗MRSA薬には?ハベカシン(グラム陰性桿菌にも有効)、?バンコマイシン、?タゴシッドがあり、さらに現在VREの治療薬としての適応を持つ?ザイボックスがMRSA適応申請中で、組織移行性は最も優秀。?・?は細胞壁合成阻害作用で時間依存性、?・?は蛋白合成阻害作用で、さらに?は濃度依存的殺菌作用、?は静菌的作用。

□ MRSA腸炎 ・・ 下痢があって便培養からMRSAが出るとこう診断されがちだが、必ずしも原因とは限らない。まずMRSAらしい病態(頻回で大量の水様便)と背景(免疫抑制状態)であるかどうかを考慮することで診断していく。手術の後に発症する場合は術後2-5日目に多い。抗菌療法は成人の場合バンコマイシン内服を125-500mgを1日4回で7-10日間。
□ NASH=non-alcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎 

 脂肪肝がまず背景にあり、肝臓の病理組織でアルコール性の所見がありながら実は飲酒歴が乏しいもの。

 これは進行性のものであり、肝硬変・肝癌への進行もありうる。原因不明の肝硬変をみたときは思い出す必要がある。

 大多数が原発性で、内臓脂肪の蓄積による肥満→脂肪細胞がアディポサイトカイン放出→インスリン抵抗性(平たく言うと糖尿病体質)という病態が根本にあり、メタボリックシンドロームを呈している。

 発病のメカニズムについては、もとは脂肪肝だったのが脂肪肝炎という病態に進行するという説(two hit hypothesisという。first hitが肝脂肪沈着で、second hitが炎症、という意味)が有力。

 脂肪肝の患者で、血小板減少や線維化マーカーが上昇してきたらこれを疑う。確定診断には肝生検を要し、脂肪肝炎の所見をみる(非アルコール性の疾患ながらアルコール性肝障害に類似なのがポイント)。特にMallory体・肝細胞膨化があれば肝硬変への移行率が高い。

 治療はあくまでもメタボリックシンドロームの治療だが、有効性が示されているものとしては糖尿病の薬のうちのメトホルミン、チアゾリジン誘導体、フィブラート系薬剤、UDCAにEPL、ビタミンEなど。

□ NAFLD=non-alcoholic fatty liver disease=非アルコール性脂肪性肝障害 ・・ 単純性脂肪肝(予後良好)と、NASH=non-alcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎(進行性で、肝硬変・肝癌への進行もあり)の総称。

□ nCPAP=nasal continuous positive airway pressure=経鼻的持続気道陽圧療法=ネーザルシ−パップ=シ−パップ ・・ 鼻マスクhttp://www.gussuri.jp/chiryou-annnai.htmlを装着して気道に圧を加える。閉塞型の睡眠時無呼吸症候群に対する治療法の1つ(他には口腔内装具、耳鼻科での手術)。1998年より保険適応で、一定の基準をクリアする必要がある。目安はAHI=無呼吸低呼吸指数(1時間あたりの10秒以上無呼吸+安静覚醒時の50%以下の低換気)が20以上、脳波上で睡眠障害あり、症状(昼間の眠気)あり、が主なもの。
※ http://www.m-junkanki.com/kennsinn/kennsinn_apnea.htmlも参考に。

 流れとしては、入院→ポリソムノグラフィーで適応決定→nCPAP施行し設定を決定→退院、となることが多い(数日間)。

 nCPAPによって症状の改善、合併症の減少などいい報告は多いのだが、実際のコンプライアンス(いわば継続率みたいなもの)は50-80%と、脱落例が多いのが主治医を悩ませる。機械の扱いに患者がついていけてない、または治療そのものによる不快感・違和感という理由が大半だ。

□ NERD ・・ GERD(胃食道逆流症)のうち、内視鏡で異常所見がない、すなわち症状だけのもの。H18.6月より一部のPPI(タケプロン)が保険適応。症状は胸焼けだけでなく胃もたれを併せ持つことも多い。そこで、その場合酸を抑えるPPIでは十分でなくモサプリド(ガスモチン)の併用が好ましい。

□ NICE STUDY ・・ 日本でのCOPDに関する疫学調査(2004)。無症状に近いCOPD患者が実はかなり潜在していることが明らかに。

□ NIPPON DATA 80 ・・ 2005年夏に日本動脈硬化学会が発表した、一般日本人対象の生活習慣病とその予後を分析した調査。1980年から14年も追跡。
・ 総コレステロール260mg/dl以上になると一気に総死亡リスク大
・ 全癌・肝臓癌のリスクは総コレステロール値が低いほど高い(低く下げるのがいけない、という意味でなくて、癌の場合栄養状態が悪化しているからという結果的な意味だろう)
・ PCI後のACS患者に対して積極的にLDL-Cを下げた。69mg/dl以下まで徹底的に下げた群では冠動脈内のプラーク(血栓)がいずれも縮小した(アイバスで確認)。

□ NMP22 ・・ NuMA蛋白(細胞分裂のとき出現する蛋白の1つ)の一種で、癌細胞に多めに発現する。尿中NMP22は尿路上皮癌の補助診断として有用。膀胱癌では尿中細胞診より陽性率が高いとの報告あり。膀胱鏡検査を検討する前に確認しておきたい。

□ no change ・・ 患者が安定しているときにカルテによく記載される表現。

□ non-dipper(ノン・ディッパー) ・・ 血圧は昼間上がって夜間は下がるのが常。高血圧でもそのパターンがいちおう守られているのがdipper型で、夜間でも血圧が高いのがnon-dipper。夜間の血圧上昇は脳卒中・心筋梗塞との関連が明らかなため、non-dipperは明らかに心血管病が発生しやすい。

□ NSAID=エヌセイド=非ステロイド性抗炎症剤 ・・ 痛み止めとして使われることが多い。代表がアスピリン。アメリカでは薬局で買える。『ダイハード3』でブルース・ウィリス、『マイ・ボディガード』でデンゼルワシントンが何度も飲んでいた。しかし慢性使用は胃潰瘍と腎障害に注意。この薬剤は痛み止め以外にも、将来は発癌予防、アルツハイマー病予防への応用が期待されている。

□ NSAID潰瘍 

 NSAIDによる胃・十二指腸潰瘍。つまり副作用。日本の統計では長期投与により胃潰瘍で15.5%、十二指腸潰瘍1.9%の発見率らしい。

 診断されれば直ちにNSAIDを中止だが、どしても中止できない理由があれば、PPIあるいはPG製剤により治療を行う。なおピロリ除菌によってNSAID潰瘍を予防できるというデータはない。

 副作用発現の機序に「dual insult hypothesis」という仮説があり、それによると2つの機序がある。

? primary insult ・・ 胃酸によりNSAIDが細胞膜透過性を獲得し、細胞内に蓄積されて代謝障害を起こし、粘膜上皮を破綻させる。

? secondary insult ・・ 内因性PG(プロスタグランジン)の抑制・・・正確にはPG合成酵素であるCOX(シクロオキシゲナーゼ)阻害により粘膜防御機構を破綻させる。
 
 ※ PGは消化管の細胞の粘液産生や微小循環に促進的に働く物質。

■ NVAF=nonvalvular atrial fibrillation=非弁膜症性心房細動 

 脳梗塞のうちの心原性塞栓の50%であり、脳梗塞患者の15%はNVAFに起因する。無治療のままだと年間2-5%の頻度で塞栓症を合併する。洞調律の群と比較するとリスクは5倍に膨れ上がる。実際、NVAF患者の3割は脳塞栓を起こす。

 予防のためにアスピリン、ワーファリンの投与が行われる。

 欧米ガイドラインでは高リスク群を高血圧、心不全、塞栓症既往と定義、本邦ガイドラインではさらに糖尿病、冠動脈疾患を加えている。欧米ガイドラインで、低リスク群にはアスピリン325mg/day(量としては多い)。この低リスク群のうちlone af(孤発性心房細動)では本邦では治療不要、とある。

 塞栓の危険性評価に<CHADS2スコア>があり、
・ 脳梗塞・TIA既往あり → 2点
・ 75歳以上 → 1点
・ うっ血性心不全あり → 1点
・ 高血圧あり → 1点
・ 糖尿病あり → 1点
 この点数が高いほど塞栓症の危険性が増す。これらリスク有の例では無い群に比べてD-ダイマー値が有意に高い(線溶系亢進するってことは血栓あることの反映)。一方リスク無いNVAFでは線溶系はそれほど亢進してなく、この場合積極的な抗凝固が必要ない理由となる(でもアスピリン投与することがある)。

 なお欧米で高リスク群に投与されるワーファリンの効きの目安としてはPT-INR 2.0-3.0とキツめあるが、本邦75歳以上では1.6-2.6と控えめなのも異なるところ(70歳以上ではINR 2.2を越えると出血の合併症が増え、特に2.6以上で急激にリスクが増す)。75歳未満では米国同様のINR 2.0-3.0を推奨。

□ obesity(オベスィティー) ・・ 肥満。日本ではBMI 25kg/m2以上をさす。うち8-9割は内分泌疾患を伴わない、過食・運動不足による<単純性肥満>。

□ OMI=陳旧性心筋梗塞 ・・ 心筋梗塞を起こして1ヶ月以上経ったもの。油断すると心不全を合併する。

□ OT=作業療法士
□ PAD=Peripheral Arterial Disease。欧米での用語で、直訳では「末梢の動脈病変」。日本ではASOとバージャー病がこれにあたるが後者はまれで、日本でPADという場合はASOを指している。

□ PAE = Post-Antibiotic Effect ・・ 血中あるいは組織中から抗菌剤が消失してからも病原菌の増殖がある期間抑制されること。つまり菌と接触する濃度が高いほどいい→1回の投与量が多いほどいい。PAEをもつ薬剤の代表は、ニューキノロン系とアミノグリコシド。つまり『濃度依存性』とも表現される。これに対して『時間依存性』なのがβラクタム、マクロライド系だが、この中で濃度依存性でもあるのがアジスロマイシン(ジスロマック)、テトラサイクリン、バンコマイシン。

□ paf(パフ) ・・ 発作性心房細動。ふだん正常の洞調律であったのが、突然頻脈性の心房細動になること。睡眠不足などが引き金になるケースもある。以前は薬物投与にて予防を行うことが多かったが現在はカテーテル・アブレーションによる根治治療が推奨される。この背景には、薬物療法によっても年間5.5%が慢性化(14年で77%が慢性化)してしまう現実がある。

□ Patient=患者 ・・ 「ペイシャント」と呼ぶ。略して「Pt」と記載することも。

□ PAP=異型肺炎

□ PBC-AIHオーバーラップ症候群 ・・ 所見はその名前の通りで、PBC(原発性胆汁性肝硬変)とAIH(自己免疫性肝炎)のどちらの要素ももつ、その境界型。あくまでも臨床経過による総合的な診断名で、診断基準も存在せず、特異的なマーカーもない。実際は双方の診断基準にそれぞれ当てはまるかどうかでなされる。臨床経過によりPBCが優勢であったりAIHが優勢であったりする。治療はまずPBCの薬であるUDCAを基本とし、肝炎の要素が強ければステロイドをそのつど投与という形になる。

□ PCPS ・・ 体外循環。人工心肺。心臓の前後に管を入れることで、心臓・肺を通さずに、きれいで圧の十分な血液を循環させる。オペのときによく使用される。長期の使用は心臓・回路内の凝固を招くのですべきでない。

□ PE=pericardial effusion ・・ 心嚢液(しんのうえき)。心臓を包む嚢に入った液。通常は少量あって、嚢(ふくろ)と中の心臓の潤滑液的な役割がある。増えすぎると「タンポナーデ」。炎症を起こして少量増えるのが「心膜炎」

□ PEEP(ピープ)=持続的陽圧呼吸 ・・ 人工呼吸器の設定の1つで、肺をより広げて酸素をいきわたらせる。ただしそれによる血圧低下、気道内圧上昇などの副作用に注意。

□ PEF=ピークフロー=最大呼気流量 ・・ ピークフローメーターで、一気に吹き出した呼気(努力性呼気)の流量を測定。喘息日誌に記録し、外来での喘息治療の指標とする。ただ調子悪いときの測定だと発作が誘発されることがある。自覚症状からそれが予想されるなら測定は休むべき。

■ ペグ=PEG=percutaneous endoscopic gastrostomy=内視鏡的胃瘻増設術 

 内視鏡下にてチューブを腹壁→腹膜を貫通させ胃内に留置、流動食や薬剤を注入する手技。穿刺部位は、内視鏡で胃内部から腹壁を見上げ、腹壁上から指で目安(場所と穿刺角度)をつける。念のため腹部レントゲンでガスの位置などを把握しておく場合もある(大腸への誤穿刺を回避)。腹膜を貫くので、創部感染だけでなく腹膜炎への波及もありうる。

<Pull法>
 内視鏡で胃内部から腹壁を見上げる→腹壁を穿刺し胃内部へワイヤーを通す→内視鏡を引っ張り、内視鏡ごと口腔外へと持っていく→出たワイヤーの先とカテーテルを接続→今度は逆に引っ張りカテーテルを腹壁経由で抜き出しストップ→固定→内視鏡をもう1回入れて確認。

<Direct法>
 内視鏡で胃内部から腹壁を見上げる→腹壁を穿刺し胃内部へワイヤーを通す→瘻孔拡張後に「イディアルボタン」という広径の(詰まりにくい利点)バンパー型カテーテルを挿入、留置。

□ PEG-IFN=ペグインターフェロン ・・ C型慢性肝炎に使用。インターフェロン分子にポリエチレングリコール(PEG)を加えたもののため、こう呼ばれる。これにより持続的な体内動態が得られるようになり、従来のインターフェロンと違って週1回の投与でOK。利便性に優れる。

□ pericarditis(ペリカルダイティス)=心膜炎 ・・ 何らかの原因で心臓の周囲に炎症性の液がたまった状態。悪性腫瘍の除外が必須。多いのは肺癌・乳癌。

□ PH=肺高血圧 

 肺動脈の圧が亢進した状態。安静臥位での平均肺動脈圧が右心カテーテル検査で25mmHgを越える場合。なおこのとき肺動脈楔入圧は正常である(純粋な右心負荷)。
 症状(呼吸困難ん・動悸など)出現時はすでに進行していることが多いので心エコーによるスクリーニングが推奨されている。なお慢性肺血栓塞栓性肺高血圧を除外する
 必要があり、そのためには肺血流シンチが不可欠である。

 たいていは肺疾患、それも慢性呼吸不全に起因するものが多い。先天性心疾患、弁膜症、膠原病でもみられる。心臓超音波検査、あるいはカテーテル検査で診断する。
 膠原病での合併率(この場合CTD-PHという)はMCTDで最多(7%)、SSc(5%)、SLE(2%)、PM/DM(0.5%)とつづく。

 2004年の新分類では肺動脈そのものに起因するもの、つまり?特発性と?家族性をそれぞれ

?IPAH=idiopathic PAH=特発性肺動脈性肺高血圧症

?FPAH=Familial PAH=家族性肺動脈性肺高血圧
               BMP受容体(BMPR-II)遺伝子が責任遺伝子であると同定された。
              ※ BMP経路:血管を構成する内皮細胞・平滑筋細胞増殖を抑制するシステム。ここの障害で異常増殖が起こり微小血管の内腔閉塞が起こる
                わけである。

という。これらとあと2次性のもの、ということになる。

治療は2次性のものに関しては当然、原疾患の治療ということになる。

ではIPAHとFPAHの治療について。

基本は下の●。

● 酸素投与 ・・低酸素は肺血管収縮を起こす事実がある。SpO2は90%以上に保持する。
● 右心不全の治療(特にNYHA?・?で)
● 抗凝固療法 ・・ 病態に微小血栓の存在が考えられるためで、効果あるのも証明済み。具体的にはワーファリンでPT-INRを1.5-2.5に調節する。

● 血管拡張療法 (特にNYHA?・?では<急性肺動脈拡張試験>を行い、ガイドライン治療の適応であることを確認してから)

 ?カルシウム拮抗剤大量投与で予後改善 → 効果ありは25%程度、血圧低下もあり日本ではあまり使用せず。

 ?プロスタサイクリン(PGI2)持続静注療法 → 有効であり予後を改善するという事実は以前から知られ、2004年6月に保険適応となった。NYHA ?・?度に適応とされるが?の段階では予後改善効果が乏しい。右心不全急性増悪には禁忌。持続静注射であること・高コストといった管理の点が問題。カテ感染、甲状腺機能亢進に注意。

 ?プロスタサイクリン・アナログ → ?と異なり静脈投与以外でも(経口剤)使用可能。IPAH , FPAHの症状、運動耐容能の改善効果あり。
 
 ?エンドセリン受容体拮抗薬 → 肺高血圧で増加するエンドセリン-1は血管収縮作用をもつ。これの結合するレセプターを阻害する。2005年6月に認可。
    
 ?PDE阻害薬 → 肺血管だけに作用し全体の血圧に影響があまりなく、副作用少なく経口が可能、と良い面が多いが、肝心の保険適応が取れてない。

・ ステロイド ・・ 肺血管炎などの炎症病態に対して。自覚症状が出現するような例では(PHがすでに出来上がっていると考えられるため)無効が多い。

・ 肺移植 ・・ 部分移植ならば成功例が報告有。

・ 心房中隔裂開術 ・・ 右心房と左心房との間の壁に穴を作り、肺動脈行きの血液を逃がす。しかし肺への血流・酸素は減る。移植までの橋渡し的な方法。

□ PIH=pregnancy induced hypertension=妊娠高血圧症候群 ・・ 従来『妊娠中毒症:高血圧、尿蛋白、浮腫を3主徴とする』と呼ばれていたものの、新しい名称。2005年4月に日本産婦人科学会が発表した。さて新しい定義とは『妊娠20週以降、分娩12週までに高血圧がみられる場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれか』で、それまで妊娠中毒症に必須であった『浮腫』が除外された。つまり高血圧に重きを置くようになっている。

□ pin point pupils ・・ 両側の縮瞳。?脳幹部(橋)の出血、?有機リン中毒、?麻薬中毒。胃洗浄で白濁してるか確認して?を鑑別する必要あり。

□ piping(パイピング) ・・ 呼吸音で、笛のような音。水や痰がたまっていることを示唆する。

□ PL顆粒=ホグス顆粒 ・・ 用途の広い、総合感冒薬。眠気が難。前立腺肥大の有無に注意しよう。

□ PMDD=月経前不快気分障害 ・・ セロトニン(セロトニン:いらいら、怒りっぽい、うつ、食べすぎ、寝すぎなどを抑制してくれている)作動性神経系の異常が原因と考えられている。治療は?向精神薬で具体的にはSSRI、clomipramine、?排卵抑制剤。

□ point out = 指摘。『p/o』と略されることも。

□ poor study ・・ 通常は超音波検査で「視界不良でよく見えない」というときに使う表現。「poor echo」ともいう。

□ PPI=ピーピーアイ=プロトンポンプ阻害剤 

 胃・十二指腸潰瘍の薬で一番強いもの。なら最初からそれを出せという声もあるが、通常は胃カメラできちんと確定診断がついてから投与するものだ(誰にでも処方すると機関に目をつけられる)。

 ガスター10が薬局で発売されているが、胃の調子が悪くてこれが効かなければPPIが必要になるだろう。となると受診しないといけない(もしくは知り合いの病院スタッフ)。

 ガスターなどのH2受容体拮抗薬は日中の酸分泌が弱いのが弱点(その代わり夜間に効果著明)。PPIは24時間効果が持続する。またPPIそのものにピロリ菌の除菌作用がある。

 なので除菌治療後の判定の前にはPPIを中止してから(一ヶ月間以上)臨むことになっている。またPPIとH2受容体拮抗薬の併用が相乗効果をもつことも言われてはいるが、保険適応上無理がある。

 保険上の投与期間は胃潰瘍で8週間、十二指腸潰瘍で6週間(ジイは出ろ!=G8、D6 ※G・Dはそれぞれ胃・十二指腸の頭文字)。

※05/07/27 医薬品等安全性情報215/厚労省医薬食品局

【1】重要な副作用等に関する情報。
◆オメプラゾール(オメプラール錠、オメプラゾン錠、オメプラール注用)..重大な副作用:血小板減少、急性腎不全。
医薬品安全性情報http://www.jah.ne.jp/~kako/cgi-bin/topics_disp.cgi/~kako/topics/log.txt?topics_kubun&;;;;;;iy&1は常に確認する必要がある(そのまま情報として鵜呑みにするのはどうかとは思うが)。

□ PROactive(プロアクティブ) ・・ 2型糖尿病に合併する大血管障害をピオグリタゾン(アクトス)によって初めて抑制した、という試験(二重盲検)。最近(2006年9月)ではさらに2型糖尿病の脳卒中再発を半減させるという好成績が追加された。

□ prognosis(プログノーシス)=予後。今後予測される寿命の長さ。

□ prolapse(プロラプス) ・・ 「逸脱」のこと。通常は「僧房弁逸脱」のことを指す。動きに協調性がないことを指す。
 例文)「軽度のプロラプスだったら、若年でもけっこう認める」

□ prolong ・・ 延長

□ PSA=前立腺特異抗原 ・・ 前立腺癌の早期診断・経過観察のための腫瘍マーカー。上昇につれ精度が高い。4.1-10ng/ml(グレーゾーンという)で20-30%、10ng/ml以上では30-50%に前立腺癌が検出。PSA上昇と直腸診、経直腸エコーにより生検をするかどうか決める。ただし前立腺肥大、前立腺炎でもPSAが上昇することあり。なおPSAの値が2.1-4.0ng/mlでは1年ごと、2.0ng/ml以下では2年ごとの測定が推奨されている。

□ Psy(プシ)科 ・・ 精神科

□ PSVT=発作性上室性頻拍 ・・ 「P」は「paroxysmal=パロキシマル(と読む)=発作性」の略。心房の過剰興奮が原因となって頻脈が続き、動悸・脱力感をもたらす。自然軽快も多いが、長時間なら迷走神経反射(?瞼を押さえる、?右の頚動脈を押す、?息こらえする)するか、病院で注射する。通常、命にはかかわらない。

□ PT ・・ 2つある。
? プロトロンビン時間
? 理学療法士(リハビリ)。リハビリできる病院でも、PTがいなくてナースがやってる場合がある。

□ PTCA=経皮的冠動脈形成術 ・・ バルーンによる冠動脈拡張。しかし1990年後半からステントが登場して、バルーンによる拡張術は名前を改め<POBA(ポバ)>と呼ばれるようになった。

□ PTSD=post traumatic stress disorder=心的外傷後ストレス障害 ・・ 心的な外傷体験を経験したときのストレスを処理できず、反応が遷延し社会生活に支障を来たした状態。阪神大震災で増加。映画では『エイリアン2』冒頭でのリプリー。『ジョーズ2』『ヒッチャー2』でも同様。最近では伸介の暴行事件。治療・ケアの基本は、トラウマによって打ち砕かれた安全感をまず立て直し、無力感から自己のコントロール感を取り戻し、トラウマによって断片化された記憶を統合することにあるという。なのでトラウマを根掘り葉掘り聞き出すのは言語道断。患者側の会話のペースを重視し、聞き手に回って「話せる範囲でいいんですよ」など相手のコントロール感に常に配慮する。無神経に言葉の選び方を間違うと(「嘆いてもしょうがないから頑張りましょう」「元気そうですね」など)、かえって二次的トラウマを与えかねない。

□ pulse decifit(パルス・デシフィット) ・・ 脈拍欠損。頻脈性の心房細動ではカラ打ちが生じ、実際に心臓が(例えば)5回動いたとしても実際に全身に送られるのは3回だったりする。つまり心音は5回聞こえてても手首の脈は3回しか触れない
ことになる。この2回の欠損をいう。

□ PTE ・・ ?肺血栓塞栓症、または?下腿浮腫、の略。

□ pulse ・・ 脈。ナースは「プルス」と呼んでいることが多い。

□ QOL ・・ 生活の質。快適さを意味する。
□ RA=慢性関節リウマチ=関節リウマチ ・・ 膠原病の1つ。関節が変形する前に食い止めるのが内科の使命。したがって早期リウマチの段階での診断が重要。

□ RCA=右冠動脈

□ reciprocal change(レシプロカル・チェンジ)=対側性変化 ・・ 心電図用語。四肢誘導でのST上昇にともない、それの裏側的変化として胸部誘導に現れるST低下。

□ RFA=経皮的ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術 ・・ 比較的早期の限局した肝癌に対する、局所的治療で最近(2000年〜)さかんに行われている。現時点では外科手術を超える予後成績は出てはいないが、何しろ最近の治療法なので今後のデータを待とう。

□ Rituximab ・・ キメラ型抗CD20抗体。CD20抗原は正常B細胞と大半のBリンパ腫(←悪性リンパ腫の1つ)細胞に発現している、特異性の高い抗原。これのみターゲットにするので骨髄毒性が少ない。RituximabはヒトBリンパ腫細胞にアポトーシスを誘導し、抗癌剤感受性も増強する。毒性が少ないから化学療法の併用も期待されている。

※ キメラ抗体に関してはhttp://www.biowonderland.com/BioWorld/KotaiMono/20041201.htmlを。

□ RNP抗体 ・・ MCTDの診断に必須の検査項目。

□ RPLS=Reversible posterior leukoencephalopaty syndrome ・・ 特徴的な症状(痙攣・意識障害・視覚異常・高血圧)・画像所見(後部白質中心の脳浮腫)・経過(治療により可逆性)を呈する神経疾患の1群。要因は多彩で、高血圧、子癇、薬剤など。視覚異常(半盲や複視など)は画像での後頭葉の所見を反映。治療は?二カルジピンなどでゆっくり降圧、?血管内皮細胞傷害の可能性あり薬剤中止、?痙攣対策(子癇は硫酸マグネシウム、その他はジアゼパム静注)の3本柱。

□ RVS=Real-time Virtual Sonography ・・ 腹部超音波検査での各画面に合わせ、あらかじめ取り込んだCT画像を同時に表示させる検査。肝癌に対して行われるラジオ波治療の際に有用と期待されている。2004年1月発売。

□ SARS=severe acute respiratory syndrome=重症急性呼吸器症候群 

 2003年に世界を震撼させた(医師が中国広東省で感染→香港で10人に伝染→飛行機経由で全世界に撒き散らし)、SARSコロナウイルス=SARS-CoVによる全身性の感染症。

 流行がみられたのは中国本土、香港、台湾(この3つで9割!)、シンガポール、カナダ。総計して感染者は8098人、死者774人。感染者に日本人は、いませんでした〜いませんでした〜と、呑気に言ってはいられない。

 宿主としてはハクビシンやタヌキなどと言われているが実は分かっていない。SARSで最も被害の大きいのは肺で、ARDSの病態を呈する。

 潜伏期は2-10日、初発症状は高熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、倦怠感などのインフルエンザ様症状。発症3〜7日ともなると下気道症状(乾性咳、呼吸困難)。この時点ではレントゲン写真で浸潤影を認める。血液では白血球中のリンパ球減少(98%で1000/μl以下との報告あり)が発症2週目に最低ピーク。

病期は3つに分かれ、

?一週目でインフルエンザ症状

?二週目で抗体(発病10日以上たつとやっと検出なので早期診断には使えない)が陽性、下痢やレントゲン陰影などの激しい症状・所見がみられる。なおこの時期特に発病10日目にはウイルス量が最大となるので感染力がピーク、つまり院内での感染力が最も強い時期。

?3週目以降で、8割が回復し2割が悪化→ARDS化するという決着の時期となる。

 なおトータルとしてのSARSの死亡率は10%。高齢ほど予後が悪い。

 治療としては病像そのものが異型肺炎に類似するので、まずはこれに使用する抗生剤を使用することになる。抗ウイルス薬はまだエビデンス不足。

※ 2003年の流行後の追跡調査で、生存者の3分の1に呼吸機能(1秒量や肺拡散能)の低下がみられたことが報告された(シンガポールの感染者94人が対象で呼吸器疾患既往はわずか9%)。つまり後遺症を残したということだ。

□ SAH(ザー) ・・ クモ膜下出血。外傷性と動脈瘤破裂によるものがある。起こしたにもかかわらず意識清明なケースもあり、その場合に見過ごされると数時間〜数日後に再出血して重篤化することあるのだから、要注意だ。頭痛の特徴としては?バットできなり殴られたような、?生まれて初めてぐらい強い頭痛、など。

□ SAS=サス=睡眠時無呼吸症候群 ・・ 無呼吸ー低呼吸指数(AHI)が5/h以上の睡眠呼吸障害を呈し、日中の眠気などの自覚症状がある場合。

※ 無呼吸ー低呼吸指数 ・・ 睡眠中1時間あたりの無呼吸・低呼吸回数。
※ 無呼吸 ・・ 10秒以上の気流停止

・ 有病率は30歳以上男性で4%、女性の2%。
・ 放置すると高血圧の原因となり、冠動脈疾患、脳血管障害の発症にも関与する。
・ SAS(サス)のほとんどは舌や咽頭軟部組織、顎顔面形態などの異常に基づいて発症する。
・ 6-7割に肥満あり。ただし診断に肥満は必須ではない。
・ 95%以上はOSAS(閉塞性)・・咽頭の狭小化によって物理的に発症する・・・である。睡眠により咽頭の筋肉の緊張が低下し、気道はさらに狭小化→上気道抵抗↑→吸気時の陰圧によりますます咽頭が閉塞。これにより無呼吸〜低呼吸を繰り返す。これにより?呼吸障害 ・・ 低酸素、高炭酸ガス、呼吸性アシドーシス、?睡眠障害 ・・ 昼間の眠気、倦怠感、集中力低下をきたす。

○ SDB=sleep disordered breathing ・・ 自覚症状あるなしにかかわらず、AHIが5-10/h以上の病態。これに症状(日中傾眠、中途覚醒、倦怠感など)を伴う場合にSASと呼ばれる。SDB自体もSASと同様に高血圧の原因となりうるもので、冠動脈疾患、脳血管障害の発症にも関与する。

○ 睡眠時呼吸障害の分類

? 閉塞性睡眠時無呼吸ー低呼吸症候群(OSAHS) 
? 中枢性睡眠時無呼吸ー低呼吸症候群(CSAHS)
? チェーン・ストークス呼吸症候群(CSBS) ・・ 重症心不全に伴うこと多い。特に LVEF 40%未満の30-50%にみられる。
? 睡眠時低換気症候群(SHVS) ・・ 呼吸補助筋・横隔膜の活動低下による。

※ 酸素飽和度低下の程度に関しては、?〜?は数十秒単位、?は数分〜十数分単位にまでなる。

PSG(ポリソムノグラフィー)での評価 ・・ PSGで測定するのは脳波、眼球運動、頤(おとがい)筋電図、心電図、下肢筋電図、気流(鼻内圧・サーミスター)、呼吸運動(胸部・腹部)、いびき音、SpO2。これらよりAHI、睡眠ステージ、中途覚醒の有無<awaking(30秒間で15秒以上の覚醒)、arousal(3秒以上の覚醒)>が判定される。AHI>5/h、awaking+arousal 20/h以上が異常所見となる。

? → 鼻・口の気流は停止するが呼吸運動は継続。
? → 鼻・口の気流は停止し呼吸運動も停止。
? → 次第に呼吸が大きくなりまた次第に低下、ついには中枢型無呼吸となる。
? → 低換気は特にREM睡眠時に悪化し、無呼吸は少なくとも数分以上。

※ PSGは大掛かりで人手も要するため、脳波などを省いて簡略化したのが<簡易測定>。これなら在宅でもできる。測定項目は心拍数、鼻の内圧変化、胸部呼吸運動、SpO2、イビキ音、姿勢。簡易測定では中等症〜重症のOSAHSの診断が可能であるので、この検査で異常がなくとも症状が明らかならPSGを受ける必要がある。

● 治療

○ nCPAP=nasal continuous positive airway pressure=経鼻的持続気道陽圧療法=ネーザルシ−パップ=シ−パップ 
 
 鼻マスクを装着して気道に圧を加える。閉塞型の睡眠時無呼吸症候群に対する治療法の1つ(他には口腔内装具、耳鼻科での手術)。1998年より保険適応で、一定の基準をクリアする必要がある。目安はAHI=無呼吸低呼吸指数(1時間あたりの10秒以上無呼吸+安静覚醒時の50%以下の低換気)が20以上、脳波上で睡眠障害あり、症状(昼間の眠気)あり、が主なもの。流れとしては、入院→ポリソムノグラフィーで適応決定→nCPAP施行し設定を決定→退院、となることが多い。nCPAPによって症状の改善、合併症の減少などいい報告は多いのだが、実際のコンプライアンス(いわば継続率みたいなもの)は50-80%と、脱落例が多いのが主治医を悩ませる。機械の扱いに患者がついていけてない、または治療そのものによる不快感・違和感という理由が大半。

・ 種類
? 固定圧型 ・・ 患者側に関係なく一定の圧がかかるので、閉塞を解除する適切な圧を決定する必要がある。
? 自動圧調節型 ・・ 無呼吸・気流制限をそのつど判断して臨機応変に送気圧を変化させる。しかし患者によっては圧の変化により覚醒を促してしまうことがある。
 ?と?の適応基準、有用性などの比較は十分なされていない。

○ 口腔装置=Oral appliance=ORAP ・・ 上気道を拡大する目的(主にいびき症の治療)で口腔内に装着する器具。適応はAHI<20またはnCPAP処方圧<7-8cmH2Oの症例。

○ 耳鼻科的手術
・ 鼻腔形成術 ・・ 鼻中隔矯正術、鼻甲介整形術・レーザー、鼻茸切除術、鼻内副鼻腔手術
・ 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(OSASに最も一般的) ・・ 中咽頭腔を物理的に拡大し、狭窄を改善
・ アデノイド切除術、口蓋扁桃摘出術
・ レーザー下口蓋垂軟口蓋形成術
など。

□ SAT=subacute thrombosis=亜急性血栓閉塞 ・・ 冠動脈拡張術、とくにステント挿入後、しばらくしてできてしまうことがある血栓による閉塞。当然、再び拡張の必要に迫られる。予防のためチクロピジンの内服を行う。副作用出るならシロスタゾールへ変更。

□ sc(エスシー) ・・ 皮下注射=皮下注

□ SE=side effect=副作用

□ sepsis(ゼプシス) ・・ 感染症が増悪してSIRSの状態(免疫応答が起こりまくっている)。以下欧米のガイドライン(2004)から→重症化すると死亡率は40-80%。感染症の原因菌では以前はグラム陽性菌・陰性菌が同程度だったが最近は陽性菌が増えている。また真菌の合併も多く、その場合中でもカンジダによるものが最多。感染初期は広域スペクトルの抗菌薬から開始し、培養結果が戻ったらその結果に基づいて抗菌薬を再検討する。βラクタムは抗菌域の広いもの(3・4世代、カルバペネム)が出ているので、あえてアミノグリコシド併用をすることでのメリットはあまりない。また抗グラム陽性菌薬の使用はルーチンではないが、あえて使うならグリコペプチド系、オキサゾリジノン系(リゾネリド)、ストレプトグラミン系を。
■ SIADH=バゾプレシン(ADH)不適合分泌症候群=バゾプレシン分泌過剰症

 低ナトリウム血症の原因の1つ(頻度は全体の1/3ともいわれている)。本来、脳の視床下部で産生されるADH(抗利尿ホルモン)が同部位、あるいは異所性に過剰分泌されるために起こる。

 背景に基礎疾患があるはずで、悪性腫瘍(肺小細胞癌による異所性産生が最多)・中枢神経疾患(脳幹部ニューロンの調節障害により)・肺(肺炎やCOPDなどの呼吸不全により左心房の圧受容体が刺激され迷走神経経由でADH分泌抑制解除)の疾患が多い。薬剤性では抗癌剤のビンクリスチン、シクロフォスファミドがある。

 症状は低ナトリウムによるものが主体で、ナトリウム濃度が120を切ると消化器症状など、110切ると痙攣・意識障害となり致命的。この病態での患者の体液量そのものは増加しているが軽度であり、病態自体が完成すると尿中ナトリウム排泄によって体液量の増大はむしろなくなる。外観としての浮腫はみられないのが特徴。

 治療の基本は水分制限(1日800-1000cc)と基礎疾患の治療。薬剤ではデメクロサイクリンが第一選択で、尿細管へのADH作用に拮抗し水の排泄を促進する。あとフロセミドも有効だが水の出しすぎでナトリウムも失いのに注意。ナトリウムは食塩相当で1日10g以上は補給する。

 ナトリウムの急速な補正は橋中心髄鞘崩壊=central pontine myelinolysis=CPMなどの浸透圧性脱髄症候群を合併する危険がある。実際の補正は前日比10mEq/lを超えない濃度上昇を目安に行う。初期補正到達目標値も125mEq/l程度にとどめる。

※ 「フィズリン」というバゾプレシンの経口剤が2006年7月認可。今のところ適応が<異所性バゾプレシン産性腫瘍によるSIADH>のみだが今後SIADH全体の適応承認が期待されている。

□ Sicilian Gambit ・・ 抗不整脈剤の選択においては従来Vaughan Williams分類を参考に治療がされてきたが、CAST試験(Ic薬による予後↓)を受けてその意義(経験的な分類であること)そのものが疑問視され(つまり過去の経験蓄積が否定的とされ)、欧米の専門家によって作り直された分類。分類の特徴としては、病態生理学的アプローチ・・発生機序→成立条件→受攻性因子(最も治療に適した部分)を特定→標的分子(治療のターゲットになる部分を特定)→薬剤選択というステップをたどる。このプロセスは一覧表の活用によって実行される。もっと根本的な原因(カテコラミンやホルモンのレベル)にまでさかのぼった視点で治療を行うという観点(アップストリームアプローチ)ももつ。詳細は日本循環器学会雑誌にて(ガイドライン2004年版)。

□ sigmoid septum(シグモイド セプトゥム) ・・ S字状中隔。心室中隔基部が内側に張り出し、中隔がS字状にみえる。高血圧・加齢的な所見で病的意義は通常ないが、まれに左室流出路を狭窄させるタイプもあるという。

□ SIRIUS試験 ・・ 従来型ステントと薬剤溶出ステント=DESとの予後比較試験。結果→DESで優れた改善率を示したものの、試験開始3年後の予後については改善のデータは出せなかった。自己満足の域をまだ出ていないということか。

□ SIRS=systemic inflammatory response syndrome=全身性炎症反応症候群 ・・ 種々の侵襲(感染など)によって体内で引き起こされるメディエータ(サイトカインなどの情報伝達物質)産生・放出。携帯の電波があちこち飛び交っているような状態。SIRSはつまり「高サイトカイン血症」の状態。

□ sliding hernia(スライディング・ヘルニア)=滑脱型ヘルニア ・・ 食道裂孔ヘルニア(胃が食道のほうへ引っ張られる)の中で最も多い(9割)タイプ。胃酸が逆流して逆流性食道炎を起こすことあり。食道裂孔ヘルニアは高齢者、経産婦に多く、食後の消化器症状が出現し仰臥位で増強する。

□ SLE(治療)
・ 活動性が高くなければPSL換算0.1-0.3mg/kg/dayで投与するが、活動性高く重症臓器病変を伴う場合は1.0mg/kg/dayまで増量する。
 ステロイドパルスは生命予後を脅かす病態(ARDSやARFなど)に限り考慮する。
・ 活動性高く重症臓器病変を伴う場合はそれだけでなく免疫抑制剤も積極的に併用する。シクロフォスファミド・アザチオプリンは活性化リンパ球の細胞周期を制御する。
・ 重症臓器病変の中でもより炎症が激しい血管炎、ループス腎炎、中枢神経性ループス、間質性肺炎に対してはシクロフォスファミドパルス療法→シクロフォスファミドあるいはアザチオプリン内服維持が適応。
・ シクロスポリン、タクロリムスは薬剤(たとえば長期ステロイド)耐性の改善作用を有する。併用による効果を期待する。
・ 生物学的製剤<CD20抗体療法> ・・ B細胞の表面に特異的に発現するCD20陽性抗原に対する、抗体による治療。H15年9月よりCD20陽性リンパ腫に適応となる(物質名リツキシマブ。商品名リツキサン)。臓器病変合併のSLEへの応用(5例での検討)でも優秀な成績(いずれも数ヶ月で活動性をゼロまでもっていった)をあげており(2005年)今後臨床試験が予定されている。

□ SLX ・・ 肺腺癌の腫瘍マーカー。CEAと並んで測定される。

□ Silent Myocardial Ischemia=SMI=無症候性心筋虚血 ・・ 糖尿病・高齢者に多い。なので症状なくとも定期的な心電図・BNPなどのスクリーニング検査は欠かせない。

□ SP-A , SP-D ・・ 主に?型肺胞上皮細胞より分泌され、免疫調節に役立つ。臨床では肺線維症など多彩な肺病変で上昇をみることがあり補助診断的に測定される。

□ SpO2 ・・ 動脈血酸素飽和度。つまり動脈の中の酸素の濃度。96%以上がおおまかな正常値。90%を切ってると特に急を要する。患者の指先によく付いている、あれ。別名「サチレーション」あるいは「サチュレーション」。

□ SSRI ・・ 選択的セロトニン再取り込み阻害剤。抗うつ剤として使用。代表がパキシル、ルボックス。後者は強迫性障害も適応。うつでは神経間のセロトニン神経伝達が低下している。神経間のセロトニン濃度を高めて、この伝達を促進する。抗不安薬が効かない場合、試みる価値がある。

■ SSRI離脱症候群 ・・ SSRIを1か月服用後、中止または減量したときに出現しうる、めまい・不眠・嘔気・嘔吐・焦燥・頭痛などの症状(詳しくはBlackらによる診断基準を)。なお症状は再服用によって迅速に改善する特徴がある(なので指導しておく必要あり)。

□ SSS ・・ 洞機能不全症候群=洞不全症候群 ・・ 心臓の脈の出発点が怠けた状態。心臓の電気刺激が出ないから脈が出ず、全体的に遅くなったりする。また逆に刺激出しすぎて頻脈になったりする。治療はペースメーカーで。「エスエスエス」と呼ぶので間違いないが、「スリーエス」などとも呼ばれる。

□ ST ・・ 2つある。
? 心電図の虚血診断の部分。
  上昇 → 早期再分極、心筋梗塞、異型狭心症、心膜炎、心筋炎など
  低下 → 労作性狭心症、貧血、ジギタリス中毒など
? 言語聴覚士 ・・ 言語リハビリしてくれる人。需要が大きいが供給が少ない。

□ STA-MCAバイパス術=浅側頭動脈ー中大脳動脈バイパス術 ・・ 内頸動脈あるいは中大脳動脈本幹の閉塞・高度狭窄に対して行われる。脳梗塞(血行力学的な脳梗塞)に対する脳血管バイパス術の有効性を検討する多施設間の共同研究(JET study:Japan EC-IC bypass study)において、脳血管バイパス手術が(投薬のみによる内科治療に比して)脳梗塞再発をよりよく予防することが証明された。その後より本手術が積極的に行われるようになった。現在はより軽症例に対する治療指針を確立すべく<JET 2> が進行中。

□ stable=ステーブル ・・ 安定している状態。カルテの医師記載欄でよく見かける。

□ StageIIIB ・・ 肺癌の場合、多くは片肺の肺癌+それによる胸水貯留を指す。通常は管経由による持続排液(ドレナージ)と化学療法で対処する。

□ SVPC=APC=上室性期外収縮
□ Tbc=Tb ・・ 肺結核の意味でカルテに記載される。「テーベー」とよく呼ばれる。最近では糖尿病、免疫抑制剤服用患者、エイズ患者での発症が増えている。免疫能を低下させるこれらのケースは、全て結核が易感染性であることを念頭に置く必要がある。なお厚生省は結核予防法を廃止・統合して感染症法の中に組み込む意図だが、対策内容が後退するなどの反対意見が多く、難航している。

□ TBLB=経気管支肺生検

□ TEE ・・ 経食道エコー=食道エコー

□ Tei index ・・ 心臓超音波、パルスドプラ法で求められる、心機能の総合的な指標(マニアックではある)。心機能は収縮能と拡張能に分けられ、前者はEF(左室駆出率)、後者はE/A比で評価されることが多いが、これらを総合してスコア化したのがこれ。 a・・僧房弁血流のA波終了点〜E波開始点までの時間  b・・大動脈駆出血流の開始〜終了までの時間 とし、(a-b)/b をTei (テイ)indexという。正常は0.39±0.05で、増大は予後が不良であることを示す。つまり予後・合併症の推定・予知に役立つ。

□ TIA=一過性脳虚血発作 ・・ 一瞬、脳梗塞様の症状を呈する。頭部CTなどの画像では証拠が残らない。

■ TOPOFF訓練 ・・ TOPOFF=top officials of the US government。様々な機関が協力して、国家の非常事態(バイオテロなど)を想定して行われる、マネジメント訓練。http://www.cyberpolice.go.jp/international/north_america/20050310_211347.html

□ toxicity=中毒

□ TRT=tinnitus retraining therapy ・・ 耳鳴りを根本的に治すのでなく、慣れさせることで軽減にもっていく治療法。具体的にはsound generatorで不快ない雑音を1日6-8時間流しhttp://df.sat.siemens.de/Grafiken/allgemeines/ueberblick_tinnitus/prisma-tci.jpg、カウンセリングを組み合わせる。3−6ヶ月でほとんどの例に効果がみられる。耳鳴りに束縛されるという心理的圧迫から解放されるという。

■ TTE=経胸壁エコー=心臓超音波検査=心エコー

■ TMA=thrombotic microangiopathy=血栓性細小血管障害症

 溶血性貧血+血栓形成などによる微小循環系(細小血管レベル:つまり末梢)での臓器障害を特徴とする病態の総称。成人に好発するTTP、小児・若年に好発するHUS(O-157による溶血性尿毒症症候群)の総称ともいえる。これらは以下の所見を呈する。

? 血小板減少
? 溶血性貧血
? 腎機能障害
? 動揺性精神神経症状
? 発熱

・ TTP ・・ ?+?+?+?+?
・ HUS ・・ ?+?+?。神経症状は少ない特徴がある。

 いずれも細小動脈の臓器障害という点で共通。

・ TTPの原因:vWFのうちの大分子成分を切断して血小板血栓を防ぐ酵素であるvWF-CPの異常型であるULvWFの存在が原因とされていた。最近ではADAMTS-13というvWF分解酵素が同定され、TTPではこれへの自己抗体が産生されるためvWFが分解されずADAMTS-13活性低下→ULvWFが増加→血小板と反応(つまり血栓の主成分はvWFである)→塞栓・溶血→臓器障害となる。

※ 先天性TTPの場合はADAMTS-13そのものの遺伝子異常。

・ HUSの原因:O-157によるベロトシキンにより血管内皮傷害によりサイトカインや接着蛋白が増加しNO産生を低下、また血小板活性は増加する。これらがすべて血栓傾向を促し病態を作る。家族性HUSは1割がこの機序。

・ TTPの治療:FFPの輸注、血漿交換。血小板輸血は禁忌。
・ HUSの治療:腎障害対策(輸液・透析)。血漿交換は有効不明。



○ 診断
・ ?〜?より疑いが出れば末梢塗抹標本を作成→赤血球破砕像を確認
・ 増加するもの ・・ 関接ビリルビン、LDH・・・溶血による。あと網状赤血球も増加。トロンボモジュリン(内皮細胞障害マーカー)も増加多い。
・ 減少するもの ・・ 血小板、ハプトグロビン
・ 合併する膠原病で最多はSLE。SLEの半数は活動性↑に伴い(TTPが)発症、残り半分は関係なく発症。

○ 治療
・ 血漿交換 ・・ ULvWFを除去しvWFを補給 神経症状を伴う場合は直ちに行うべき。投与量は50-80ml/kg/day。
・ 血漿輸注 ・・ vWFを補給
効果は前者のほうが強い。

□ TZ=ツッカー ・・ 点滴のツッカー(ブドウ糖)を指す。通常は5%TZをさす。心不全のある患者はまずこれで開始。

□ UGI=upper GI=胃透視 ・・ バリウム検査。食道〜胃〜十二指腸上部まで観察。

□ unstable AP=UAP=不安定狭心症=アンステーブル=切迫心筋梗塞 ・・ 冠動脈が今にも詰まるかもしれない狭心症。機序としては高血圧・喫煙などの冠危険因子→血管の内側の血管内皮に亀裂→血小板や凝固系のものが付着→血栓→血管を徐々に閉塞しかける→胸痛。血管が詰まりかけなので二トロペンが単純に効かず。そのため緊急カテーテル検査が必要。

□ UTI = Urinary Tract Infection=尿路感染  ・・ 膀胱炎、腎盂腎炎の総称。通常は尿中白血球の増加を認める。

□ VAP=ventilator-associated pneumonia ・・ ベンチレーター、すなわち人工呼吸器に関連した肺炎。定義では「気管挿管による人工呼吸開始48時間以降に発症する肺炎」であり、挿管前に肺炎がないことが前提。発症率は挿管している期間に相関し、具体的には7日間なら7%、30日なら30%(←覚えやすい!)。肺炎の発症時期により、?気管挿管4日以内の場合(早期VAP)と?5日以降発症(晩期VAP)とに分類。ただし?の分類でも3ヶ月以内の抗菌薬投与歴あり又は5日以上の入院歴は?に含めるものとなっていることに注意。VAPの原因菌は?では抗生剤の比較的効きやすいMSSA、インフルエンザ菌、肺炎球菌が主体で、?では耐性菌が多く、MRSAや緑膿菌、アシネトバクター、エンテロバクターが中心。早期の投薬が予後を左右するので、培養検査を待つヒマはく、できればグラム染色で確認次第方針(選択薬)を決めたいところ。最近はバンコマイシン耐性のMRSAの出現も珍しくなく、その場合はリゾネリド(というかその目的で出た薬剤)のほうが有効という意見が多い。しかしVAPの予防が基本にあり、具体的には痰の気管内貯留防ぐための溶解・吸引、それと口腔ケアである。なお挿管は経鼻だと副鼻腔炎の合併が多いので、経口が望ましい。

□ vertigo ・・ 回転性めまい。メニエル病で特徴的。http://www.memai.jp/こういう学会あるんやなあ。

□ viability(バイアビリティー) ・・ 心筋の生き生き度。血流シンチ(RI)での血液の流れを(良いほど赤、悪いほど紫)反映。ただし流れる血液の絶対量を表すものではなく、他の部分と比べてのあくまでも<相対的な>血流を表現することに注意。

□ volume overload ・・ 容量負荷。点滴の量が過剰なときなど、こう指摘される。CVP(中心静脈圧)や下大静脈径より判断される。

□ warm shock ・・ 敗血症性ショックの初期段階。発熱などによる全体的な血管拡張により、体はまだ温かい。これが進行すれば体は冷たくなり、いわゆる「cold shock」とよばれる。末梢の毛細血管を収縮させてでも大血管の循環を守ろうとする、反射的な防御機構だ(わが国の風潮に似る)。結果的に末梢組織は虚血となりアシドーシスの病態を呈する。

□ wheeze(ウィーズ)=wheezing(ウィージング)=喘鳴(ぜいめい) ・・ 気管支喘息にみられる呼吸音で、ヒューヒューと聞こえる。ただし年寄りの誤嚥による気道狭窄、心臓喘息の場合もあり注意。

□ W.N.L.(Within Normal Limit) = 正常範囲内 = 異常なし = 特記事項なし = n.p.(エヌピー)
 サーガマニュアル2007秋は現段階では誌上での編集となりますので、完成してはおりません。<□>は未完成、<■>は完成形という感じになります。

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