< レジデント・ファースト 6 AMIが来たら泊まれ! >
2004年1月24日 急性心筋梗塞=AMI
心臓の周囲にある冠動脈・・3本あるが、このうちどっかが突然詰まって、広い範囲で血液の流れがなくなる。その領域は壊死といって組織がどんどん死んでいく。その場所は動かなくなり、しかも薄くなり、前者は心不全を、後者は心臓破裂を引き起こす。非常に恐ろしい疾患。
研修医の場合無条件で「AMIがきたら泊まれ」。
治療としては・・・もちろん詰まった血管を拡げてやる必要がある。点滴で詰まったものを溶かす場合もあるが必ず成功するわけではない。
今でもスタンダードでかつ有効なのは、カテーテルという管を太い血管・・腕だとか、股のところの・・に入れて、管の先を血管の入り口へもって行き、造影剤を注入して閉塞している場所を明らかにする。これが「心臓カテーテル検査」というもの。
そしてその部位めがけて風船で膨らますか、あるいは金網=ステント・・血管を内から補強するものを入れる。
これが「冠動脈形成術(インターベンション)=PCI」。
その処置をする前に、基本的な処置がいる。呼吸はどうか。心不全で酸素が足りなくなっていれば酸素がいる。薬がいくには点滴の針刺しがいる。
はたして心筋梗塞なのか、だとしたらどの段階か、心電図、超音波検査で見る。やることは山ほど待っていて、どれも本来すぐに確認したいものばかりだ。
1秒1秒たつごとに、その「壊死」は確実に進んでいるからだ。この壊死を最小限に食い止めるのが治療の究極の目的だ。
「何読んでんのよ!」
「はっ?」
川口が真剣に怒っている。
「採血するの、手伝ってよ!」
「いや、僕はまだ全然・・」
「この血管なら針、刺せそうね、あたしでも」
患者はいかにもしんどそうな中年の肥満男性。家族が1人近くにいてじゃまになる。同じ体型の中年男性、兄弟か?
川口のもつ注射器に血液が少しずつ入ってくる。これも見習いでしてたのか?彼女のすぐ真横に男がいる。
「すみませんが、とりあえず出てください」
「なぜや?」
「処置してるんで。あとでお呼びしますから」
「ええやんか、わしは兄弟同然や」
「家族じゃないの?」
「アホウ、家族やなかったら他人やから出て行けっちゅうのか?」
「いや、そんなことじゃなくてー・・お願い、これ取ったから、検査室まで走って」
「わかった。でもみんな全然来ないな」
「あ、血出てる出てる!押さえないと!あぶないあぶない。心電図もとらなきゃ・・」
僕は逃げるように救急室を出た。血液の検体を持って。検査室は2階だ。
検査室の前には「ベルを鳴らしてください」とある。
・・確かに戸は空かない。誰もいないのか?ベルを鳴らす。
しばらくすると、内側で鍵の空く音。若いであろう生気のない女が出てきた。頭はボサボサだ。
「はい。まだ受付始まってないですけどー」
「いやその!緊急の人が来たんですよ!それでこれ!」
「項目は何を調べるの?」
「え?」
「項目!どれとどれを調べるの?その内容を!」
「っと・・どんなんがあるんですか?あ、手帳見ます・・」
「・・・・・」
「これ、ここに書いてある項目を」
「・・・・・・・・1時間かそれ以上ですね。外来の検体もこれから来て混みますので」
「また、電話します!それでは!」
またダッシュだ!ダッシュ!ダッシュ!バンバンババン!
<つづく>
心臓の周囲にある冠動脈・・3本あるが、このうちどっかが突然詰まって、広い範囲で血液の流れがなくなる。その領域は壊死といって組織がどんどん死んでいく。その場所は動かなくなり、しかも薄くなり、前者は心不全を、後者は心臓破裂を引き起こす。非常に恐ろしい疾患。
研修医の場合無条件で「AMIがきたら泊まれ」。
治療としては・・・もちろん詰まった血管を拡げてやる必要がある。点滴で詰まったものを溶かす場合もあるが必ず成功するわけではない。
今でもスタンダードでかつ有効なのは、カテーテルという管を太い血管・・腕だとか、股のところの・・に入れて、管の先を血管の入り口へもって行き、造影剤を注入して閉塞している場所を明らかにする。これが「心臓カテーテル検査」というもの。
そしてその部位めがけて風船で膨らますか、あるいは金網=ステント・・血管を内から補強するものを入れる。
これが「冠動脈形成術(インターベンション)=PCI」。
その処置をする前に、基本的な処置がいる。呼吸はどうか。心不全で酸素が足りなくなっていれば酸素がいる。薬がいくには点滴の針刺しがいる。
はたして心筋梗塞なのか、だとしたらどの段階か、心電図、超音波検査で見る。やることは山ほど待っていて、どれも本来すぐに確認したいものばかりだ。
1秒1秒たつごとに、その「壊死」は確実に進んでいるからだ。この壊死を最小限に食い止めるのが治療の究極の目的だ。
「何読んでんのよ!」
「はっ?」
川口が真剣に怒っている。
「採血するの、手伝ってよ!」
「いや、僕はまだ全然・・」
「この血管なら針、刺せそうね、あたしでも」
患者はいかにもしんどそうな中年の肥満男性。家族が1人近くにいてじゃまになる。同じ体型の中年男性、兄弟か?
川口のもつ注射器に血液が少しずつ入ってくる。これも見習いでしてたのか?彼女のすぐ真横に男がいる。
「すみませんが、とりあえず出てください」
「なぜや?」
「処置してるんで。あとでお呼びしますから」
「ええやんか、わしは兄弟同然や」
「家族じゃないの?」
「アホウ、家族やなかったら他人やから出て行けっちゅうのか?」
「いや、そんなことじゃなくてー・・お願い、これ取ったから、検査室まで走って」
「わかった。でもみんな全然来ないな」
「あ、血出てる出てる!押さえないと!あぶないあぶない。心電図もとらなきゃ・・」
僕は逃げるように救急室を出た。血液の検体を持って。検査室は2階だ。
検査室の前には「ベルを鳴らしてください」とある。
・・確かに戸は空かない。誰もいないのか?ベルを鳴らす。
しばらくすると、内側で鍵の空く音。若いであろう生気のない女が出てきた。頭はボサボサだ。
「はい。まだ受付始まってないですけどー」
「いやその!緊急の人が来たんですよ!それでこれ!」
「項目は何を調べるの?」
「え?」
「項目!どれとどれを調べるの?その内容を!」
「っと・・どんなんがあるんですか?あ、手帳見ます・・」
「・・・・・」
「これ、ここに書いてある項目を」
「・・・・・・・・1時間かそれ以上ですね。外来の検体もこれから来て混みますので」
「また、電話します!それでは!」
またダッシュだ!ダッシュ!ダッシュ!バンバンババン!
<つづく>
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