消毒・手袋・布かぶせ、再開。
「あの、佐々木先生は・・・」
「病棟のどこかのようです」
「じゃ、麻酔を・・・」

『まず内頸動脈はどれだ』
「ハッキリ触れる、これだ」
『それと平行に針を置け』
「こうか・・・」
『で、そのまま時計方向にゆっくりずらせ』
「30度くらいか・・・」
『針の方向が乳頭に当たった時点で止めろ』
「そうだな・・この向きか!」
『これならまず、動脈は刺さない』
「よし、刺すぞ・・・ダメだ、全然血が戻らない」
『針の角度が浅いのでは・・・』
「ああ、深くだな・・・・よし、戻った!静脈血だ!穿刺針で同方向だ・・・よし、同様に戻ってきた!」
『そこで止めるな。気持ち、進めておけ』
「進める?し、しかし、肺を刺したら・・・」
『気持ちだ』
「ああ、抜けかけたらいけないもんな。気持ち、進める・・・」
 内筒を外す。静脈血が戻ってくる。カテーテルは抵抗なく入っていった。
「よし!逆流もオッケーだ。つなごう・・・・終わり!レントゲンを!」

 循環器の酸素ありの大部屋へ入院。

佐々木先生がようやく現れた。
「入院した患者のことで呼ばれてな。ご苦労さん。もう6時か。そろそろ明るくなってきたか」
 僕は首・腰が痛くなってきた。思わず空いてるベッドに腰掛けた。
「しかし、俺たち・・労働基準法は全く無視だな。なあ先生」
「あと3時間くらいですねえ」
「ああ。正月休みはどうする?」
「・・・・入院した患者を診ます」
「ああ、そうだったな」

 佐々木先生は診察室のカルテを眺めた。
「残り3冊。あと来るとすれば脳卒中だろな。よし!後は俺がやる。医局ででも休んでろ」
「医局・・ああ!」
「どうした?」
「やかん!お湯!お湯!」
 僕はダッシュで医局へ駆けて行った・・・・。ずっと待っていてくれたしゃっくりの患者・・がまだ残っている。

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