< レジデンツ・フォース 20 日本内科学会 エピソード1.5 >
2004年4月24日 連載午後の講演だ。
「急性心筋梗塞の薬物療法」とある。これが終わったらポスターのところへ。
「では始めます。急性期の薬物療法、で話をしてくれとテーマを与えられたわけですが、このような内容を1時間程度
ということ自体、無理がありまして・・ま、可能な限り話してみます。スライドを
薬物療法の目的は主にはこうです。?不整脈の予防、?心室破裂の予防、?再発の予防、です。
?ですが、これはあくまで致死的なもの・・・VPCの連発やVTとかを指しますね。心筋梗塞の場合、心筋細胞は過剰に興奮した状態である。
そのため不整脈が発生しやすい。したがってVPCがみられたら即座にリドカインを投与する必要がある。
?、いわゆるラプチャーです。先生方みなさんもご経験あると思います。心筋梗塞、つまり壊死を起こした心筋の組織は薄くてもろい。血流の
圧力によって破れやすくなっている。このため血圧が上がり過ぎないようにコントロールしないといけない。しかし下げすぎると虚血を増悪することがある。
私なら収縮期血圧を110-120mmHgを目標に置きます。
これらの合併症・予後まで見据えた上で考えるなら、はい、次のスライド。
心筋梗塞の予後を改善させる2つの薬剤。βブロッカー、ACE阻害薬の投与、これは早めに行いたい。ただしですよ、収縮期血圧が100mmHg以上の
話です。どちらを優先すべきかは・・・私ならβブロッカーが先です。マイナスのイメージが強いかもしれませんが、さきほどの??に関しての強力な予防に
なるのですから。
しかしそれ以前に開始しておくべきものが・・ここには書いてませんがご存知ですね。アスピリンです。これはもう、診断がつき次第飲ませてほしい薬剤です」
なかなかいい話なのだが、すごく眠くなってきた。夜行バスで体調を崩したようだ。横にいるレジデントらしい医者は目を血眼にしてメモを取っている。
3列目向こうの医者はビデオムービーで撮影。カメラのフラッシュもあちこちでたかれている。
ではそろそろ・・・ポスター会場へ向おう。下見はもうしてある。
「D-21、D-21・・・・」
大会場を出ると、左奥に大きな廊下。この向こうが出入り口。まっすぐ歩いて廊下・・・建造物どうしをつなぐ長距離の渡り廊下、をわたって隣のビル。
そのビルをエレベーターで3階分降りる。僕はその隣のビルへ渡っていた。
渡り廊下から外を見ると、おびただしい数のタクシー、人、人。世の中こんなに医者がいるのか・・・。僕はなんてちっぽけな存在だ。
ポスター会場では1つの部屋が5箇所ほどに仕切られ、1ヶ所ずつ団体で回診のように巡っていた。40-50人はいる。演者の姿は最前列に
行かないと、ほとんど見えない。
もう終わったのか?いや・・・まだのようだ。とりあえず団体にひっついて説明を聞いていた。
「・・・この系のマウスに300mg投与しますと・・・・」
僕も『この系の』話は苦手だ。あまりにもマニアックな基礎系の話のようだが、みんな食い入るようにデータを見つめている。
やがてディスカッションが行われ始めた。
「・・・有意差は出ませんでしたが、差はこちらのほうが若干勝っていると思われ・・・」
「その後のデータは?」
「只今検討中でして」
「2剤の併用では?」
「それも検討中でして」
「皆さんかなり白熱されておるようですが、お時間のほうもかなり差し迫っておりますので・・・」
司会が遮り、次の議題へみんな進んでいった。
「私の系では、前投薬として・・・」
この声は・・?そうだ。間違いない。しかし・・最前列まで行けない。姿が全くnot detected。
「マウスの死亡例が多くなったため、投与量を減量し・・・」
僕は割り込みながら、なんとか2列目まで来た。すると横の2人組がなんか言っている・・。
「・・・だよね、ひょっとして?」
「ね、似てるでしょ。そう思った。」
関東の奴っぽい喋り方だ。
「それでも25歳過ぎてるはずだもんね」
「でも足は10代じゃないの」
「どう見てもね」
こいつらどこを見て・・・!
正面、人だかりの隙間から、やっと彼女の姿をとらえた。
スーツの着こなしはバッチリだ。足は・・見せすぎじゃないのか。
その顔、表情は・・・やはり完璧だった。しかも何者をも寄せ付けない、
そんな冷たさまでが感じられた。
質問コーナーは延々と続いた。暑苦しく感じた僕は、いったん人ごみから脱出した。
ようやく終わったようだ。人塊が移動していく。彼女の姿が少し離れたようだ。しかし彼女も次の議題に
そのまま参加していくようだ。ここはジャマをせず、ゆっくりと終わるのを待とう・・・。
「急性心筋梗塞の薬物療法」とある。これが終わったらポスターのところへ。
「では始めます。急性期の薬物療法、で話をしてくれとテーマを与えられたわけですが、このような内容を1時間程度
ということ自体、無理がありまして・・ま、可能な限り話してみます。スライドを
薬物療法の目的は主にはこうです。?不整脈の予防、?心室破裂の予防、?再発の予防、です。
?ですが、これはあくまで致死的なもの・・・VPCの連発やVTとかを指しますね。心筋梗塞の場合、心筋細胞は過剰に興奮した状態である。
そのため不整脈が発生しやすい。したがってVPCがみられたら即座にリドカインを投与する必要がある。
?、いわゆるラプチャーです。先生方みなさんもご経験あると思います。心筋梗塞、つまり壊死を起こした心筋の組織は薄くてもろい。血流の
圧力によって破れやすくなっている。このため血圧が上がり過ぎないようにコントロールしないといけない。しかし下げすぎると虚血を増悪することがある。
私なら収縮期血圧を110-120mmHgを目標に置きます。
これらの合併症・予後まで見据えた上で考えるなら、はい、次のスライド。
心筋梗塞の予後を改善させる2つの薬剤。βブロッカー、ACE阻害薬の投与、これは早めに行いたい。ただしですよ、収縮期血圧が100mmHg以上の
話です。どちらを優先すべきかは・・・私ならβブロッカーが先です。マイナスのイメージが強いかもしれませんが、さきほどの??に関しての強力な予防に
なるのですから。
しかしそれ以前に開始しておくべきものが・・ここには書いてませんがご存知ですね。アスピリンです。これはもう、診断がつき次第飲ませてほしい薬剤です」
なかなかいい話なのだが、すごく眠くなってきた。夜行バスで体調を崩したようだ。横にいるレジデントらしい医者は目を血眼にしてメモを取っている。
3列目向こうの医者はビデオムービーで撮影。カメラのフラッシュもあちこちでたかれている。
ではそろそろ・・・ポスター会場へ向おう。下見はもうしてある。
「D-21、D-21・・・・」
大会場を出ると、左奥に大きな廊下。この向こうが出入り口。まっすぐ歩いて廊下・・・建造物どうしをつなぐ長距離の渡り廊下、をわたって隣のビル。
そのビルをエレベーターで3階分降りる。僕はその隣のビルへ渡っていた。
渡り廊下から外を見ると、おびただしい数のタクシー、人、人。世の中こんなに医者がいるのか・・・。僕はなんてちっぽけな存在だ。
ポスター会場では1つの部屋が5箇所ほどに仕切られ、1ヶ所ずつ団体で回診のように巡っていた。40-50人はいる。演者の姿は最前列に
行かないと、ほとんど見えない。
もう終わったのか?いや・・・まだのようだ。とりあえず団体にひっついて説明を聞いていた。
「・・・この系のマウスに300mg投与しますと・・・・」
僕も『この系の』話は苦手だ。あまりにもマニアックな基礎系の話のようだが、みんな食い入るようにデータを見つめている。
やがてディスカッションが行われ始めた。
「・・・有意差は出ませんでしたが、差はこちらのほうが若干勝っていると思われ・・・」
「その後のデータは?」
「只今検討中でして」
「2剤の併用では?」
「それも検討中でして」
「皆さんかなり白熱されておるようですが、お時間のほうもかなり差し迫っておりますので・・・」
司会が遮り、次の議題へみんな進んでいった。
「私の系では、前投薬として・・・」
この声は・・?そうだ。間違いない。しかし・・最前列まで行けない。姿が全くnot detected。
「マウスの死亡例が多くなったため、投与量を減量し・・・」
僕は割り込みながら、なんとか2列目まで来た。すると横の2人組がなんか言っている・・。
「・・・だよね、ひょっとして?」
「ね、似てるでしょ。そう思った。」
関東の奴っぽい喋り方だ。
「それでも25歳過ぎてるはずだもんね」
「でも足は10代じゃないの」
「どう見てもね」
こいつらどこを見て・・・!
正面、人だかりの隙間から、やっと彼女の姿をとらえた。
スーツの着こなしはバッチリだ。足は・・見せすぎじゃないのか。
その顔、表情は・・・やはり完璧だった。しかも何者をも寄せ付けない、
そんな冷たさまでが感じられた。
質問コーナーは延々と続いた。暑苦しく感じた僕は、いったん人ごみから脱出した。
ようやく終わったようだ。人塊が移動していく。彼女の姿が少し離れたようだ。しかし彼女も次の議題に
そのまま参加していくようだ。ここはジャマをせず、ゆっくりと終わるのを待とう・・・。
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