< レジデント・SICKS 20 新天地へ向かって! >
2004年6月17日 連載 車は高速を降りていった。大学まであと数分だ。
「ユウキよ、すまんが新しく借りたアパートだが・・・」
「分かってます。また引越しですね」
「ああ。引越し代は出んがな」
「敷金もですね。ええ。それが医局というものですから・・・」
しかし、山城先生が僕に第1線で戦えるチャンスをくれた。
そこまでの配慮があったとは・・・。
「まあ頑張れ。スタッフはベテラン揃いだから、手取り足取り教えてくれる」
「そうですか・・・ありがとうございます」
「お前の提唱する、胸部内科外来でもやったらどうだ?」
「え、ええ・・・」
小杉に話してたんだが・・・あいつ、口軽いな。
車は大学病院の広大な大駐車場へ到着した。
玄関の近くに停車した。
「お前はここに座ってろ」
「先生、自分も・・・」
「いや。ここにいろ」
「逃げませんよ」
「ここにいろ!20分くらいで戻ってくる!」
山城先生は履歴書を持って車を降り、玄関へと走っていった。
僕は久しぶりに皆に会いたかったのだが・・・。グッチにも会いたい。
「そうだ・・・」
僕は携帯を取り出した。まだ電池はある。
アホらしいが、目の前の大学病院へ連絡した。
医局あてだとヤバイので、病棟へかけた。
「もしもし、もしもし」
「病棟です」
「あの・・・川口先生は・・・?」
「川口先生・・さっきいたんですけど・・探します」
「あの、ちょっと・・・」
保留の音楽にすりかわった。待つしかしようがない。
玄関は出入りが多い。ほとんどは処方箋を持って出てくる患者のようだ。
電話が出た。
「もしもし」
「グッチ!僕だ」
「はあ?」
どうやら別のナースの声らしい。
「す、すんません」
「川口先生は今はベッドサイドでマルク中です。何か伝えましょうか?」
「し、下にいますと。ユウキといいます」
「はあ・・・はい」
しかし、僕は何をやっているんだ。会ったところで何を?
やあ、久しぶり。ちょっと大きな病院で頑張ってこようと思う。君らはまあ大学で頑張ってくれたまえ。いつか偉くなったら帰ってくる・・・。冗談には聞こえないか。
電話はすぐにかかってきた。彼女か?
「もしもし」
「おい。いるんだろな」
「なんだ、山城先生・・・」
「なんや、わしでガッカリか」
「いえ・・・」
「医局長と向っている。その前にメシでも食うか?」
「いえ、今は調子が・・・」
「そうか。じゃ、今から直で行こう」
「勤務先の病院に・・ですか?」
「ああ。わしの役目はこれで終わり。医局長が連れて行ってくれるぞ」
あのクールな医局長か。
「では、車・・・下りときます」
「ああ」
車を降りて玄関の前に立った。
新天地か。
大学にも好きなときに帰れそうだし、ふだんの勤務はかなり充実してそうだ。
でもこれまでのことも反省して、頑張っていこう・・・。僕は運がいい。女連中に振り回されるのはもうコリゴリだな。
「待たせたな」
山城先生と医局長が現れた。
「こんにちは。ユウキ先生、久しぶりですね」
「こ、こんにちは」
山城先生はセルシオへ向った。
「じゃ、あとはよろしく!」
医局長は無言で手を振った。
セルシオは駐車場を縦断し広域道路へと合流していった。
車が見えなくなるまで僕らは目線で追った。
「・・・じゃ、少し歩こうか」
「はい」
「あそこの車だ。BMだがね」
「は、はい・・・」
「もう詳細は、山城君から聞いたね?」
「ええ」
「大変だと思いますが、頑張ってください」
「はい。先生、大学には?」
「?」
「いつでも行っていいんでしょうか?」
「・・・いいですよ。こちらとしては大歓迎です」
「はい」
「でも、来られるときは前もって連絡を」
「ええ、そうします」
「どうぞ」
「失礼します」
車は北へ向けて走り出した。
僕はミラーで後ろ、病院玄関をみていた。やはりグッチの姿はない・・・。
何か・・・大事な忘れ物でもしたような。
『そう、確かに君は大学へ戻ってきた・・・』
「ユウキよ、すまんが新しく借りたアパートだが・・・」
「分かってます。また引越しですね」
「ああ。引越し代は出んがな」
「敷金もですね。ええ。それが医局というものですから・・・」
しかし、山城先生が僕に第1線で戦えるチャンスをくれた。
そこまでの配慮があったとは・・・。
「まあ頑張れ。スタッフはベテラン揃いだから、手取り足取り教えてくれる」
「そうですか・・・ありがとうございます」
「お前の提唱する、胸部内科外来でもやったらどうだ?」
「え、ええ・・・」
小杉に話してたんだが・・・あいつ、口軽いな。
車は大学病院の広大な大駐車場へ到着した。
玄関の近くに停車した。
「お前はここに座ってろ」
「先生、自分も・・・」
「いや。ここにいろ」
「逃げませんよ」
「ここにいろ!20分くらいで戻ってくる!」
山城先生は履歴書を持って車を降り、玄関へと走っていった。
僕は久しぶりに皆に会いたかったのだが・・・。グッチにも会いたい。
「そうだ・・・」
僕は携帯を取り出した。まだ電池はある。
アホらしいが、目の前の大学病院へ連絡した。
医局あてだとヤバイので、病棟へかけた。
「もしもし、もしもし」
「病棟です」
「あの・・・川口先生は・・・?」
「川口先生・・さっきいたんですけど・・探します」
「あの、ちょっと・・・」
保留の音楽にすりかわった。待つしかしようがない。
玄関は出入りが多い。ほとんどは処方箋を持って出てくる患者のようだ。
電話が出た。
「もしもし」
「グッチ!僕だ」
「はあ?」
どうやら別のナースの声らしい。
「す、すんません」
「川口先生は今はベッドサイドでマルク中です。何か伝えましょうか?」
「し、下にいますと。ユウキといいます」
「はあ・・・はい」
しかし、僕は何をやっているんだ。会ったところで何を?
やあ、久しぶり。ちょっと大きな病院で頑張ってこようと思う。君らはまあ大学で頑張ってくれたまえ。いつか偉くなったら帰ってくる・・・。冗談には聞こえないか。
電話はすぐにかかってきた。彼女か?
「もしもし」
「おい。いるんだろな」
「なんだ、山城先生・・・」
「なんや、わしでガッカリか」
「いえ・・・」
「医局長と向っている。その前にメシでも食うか?」
「いえ、今は調子が・・・」
「そうか。じゃ、今から直で行こう」
「勤務先の病院に・・ですか?」
「ああ。わしの役目はこれで終わり。医局長が連れて行ってくれるぞ」
あのクールな医局長か。
「では、車・・・下りときます」
「ああ」
車を降りて玄関の前に立った。
新天地か。
大学にも好きなときに帰れそうだし、ふだんの勤務はかなり充実してそうだ。
でもこれまでのことも反省して、頑張っていこう・・・。僕は運がいい。女連中に振り回されるのはもうコリゴリだな。
「待たせたな」
山城先生と医局長が現れた。
「こんにちは。ユウキ先生、久しぶりですね」
「こ、こんにちは」
山城先生はセルシオへ向った。
「じゃ、あとはよろしく!」
医局長は無言で手を振った。
セルシオは駐車場を縦断し広域道路へと合流していった。
車が見えなくなるまで僕らは目線で追った。
「・・・じゃ、少し歩こうか」
「はい」
「あそこの車だ。BMだがね」
「は、はい・・・」
「もう詳細は、山城君から聞いたね?」
「ええ」
「大変だと思いますが、頑張ってください」
「はい。先生、大学には?」
「?」
「いつでも行っていいんでしょうか?」
「・・・いいですよ。こちらとしては大歓迎です」
「はい」
「でも、来られるときは前もって連絡を」
「ええ、そうします」
「どうぞ」
「失礼します」
車は北へ向けて走り出した。
僕はミラーで後ろ、病院玄関をみていた。やはりグッチの姿はない・・・。
何か・・・大事な忘れ物でもしたような。
『そう、確かに君は大学へ戻ってきた・・・』
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