< オーベン&コベンダーズ 1-17 コベンを救出せよ! >
2004年7月24日電話は切られた。とうとうあいつの本音が出たか・・・。
でも僕だって大変だ。お互い様だ。お互い様だけど・・・。
放っておけない僕の性格・・・。
詰所へカルテを持っていった。
「これ、指示です。お願いします」
「・・・・・」
ナースは無言で受け取る。一瞥し・・どうやら納得したようだ。
「はい」
「では・・・」
大学病院の外は暑い。今のうちに携帯で自宅のエアコンのスイッチを入れたいくらいだ。
また携帯が。
「もしもし?」
「あたし。森」
「森さん・・?」
「水野くんから電話でね。救急入ったりして大変みたいね」
「今度はそっちにかかったの?」
「そう。なんかもう1人急変あったみたいね」
「そう。それで?」
「彼は言わなかったけど、助けて欲しいんじゃないかしら?」
「僕らでは助けられないよ」
「そうだけど。オーベンも電話つながらないって」
「じゃあバイト先の常勤を呼べばいいじゃない?」
「ダメダメ。民間の病院ではコールしてもめったに出てこないわ。休日は特に。それに今日は講演会の日よ」
「宮川先生もそこか」
「教授にみんな連れて行かれたようよ。教授が来るなら講演会も学会同然でしょ」
「うん・・・で?何をすれば?」
「あたし、あたってみる」
「今どこにいるの?」
「実験棟。畑先生の手伝いしてたの」
「じゃあ君のそのオーベンに頼んだら?」
「ネズミに?頼りにならないわ。やめてって感じ。それになんか匂うし。だから・・・トシキ君のオーベンに!」
「やめろ!それは絶対!」
「はあ?」
「オーベンは大事な大事な実験の判定があるんだ!ジャマしたら・・!」
「でも!他に大学に残ってる人いないわよ!でないと水野くんが!水野くんが!あ・・・」
「?」
「あう・・・なんでもない。じゃね」
この子。水野に惚れてるのか・・?みんなの噂どおりか。
しかし、オーベンの教えどおり・・他人への深入りはよそう。
夕方にまた病棟へ顔を出す予定。それまで自宅で自習することにした。図書館も利用していたが、知り合いが増えるにつれて干渉してくる人間が多くなってきた。
『干渉しないでくれ・・!』
どうも水野のあの言葉が耳に残ってしょうがない。僕はふて寝することにした。
天井を見つめても、あの言葉が・・。
『干渉するな!』
『仕切るな!』
『うっとうしい!』
携帯が鳴り出した。誰だ?今度は。
「はあ?もしもし」
「野中だ」
「はっ!オーベン!」
反射的に飛び上がった。声だけなのに、思わず会釈だ。
「これから神戸の病院へ行く。お前もだ」
「え?」
「どうやらあっちはかなり忙しそうだ」
「そうですか・・」
「水野は遅いしな、やることが」
「・・・」
「IVHが入らない患者、UAPの患者、ペーシング不全の患者、腹痛の患者、不穏の患者。以上が病棟で・・・救急に喘息が1人と交通事故が2名。神戸の病院のナースが言ってた」
「交通事故まで?」
「たぶん打撲のようだがな」
「・・・UAP(不安定狭心症)が大変そうですね」
「でも水野の診断らしいぞ、あくまでも」
「あ、そうか。じゃあ怪しいですね」
「ほら、鵜呑みにしたらいかんとあれだけ・・!」
「気をつけます。吐き出します」
「ひどいなお前。けっこう辛口なんだな」
「不安定狭心症かあ・・・」
「今ホントに不安定なのは、あいつだ」
「今から行かれます?」
「ああ。森君がどうしてもというしな。泣きつかれた」
「そうですか。でも先生、実験が・・」
「・・・聞くなって言っただろ」
「はい!申し訳ありません!」
僕はオーベンの車に同乗することになった。
「けっこういい車だろ。RX-7。あ、おい!土禁だ。靴を脱げ」
「はは、はい」
「お前も研修が終わったら、外車に乗れるようになるさ!」
すみませんオーベン、僕はすでに外車に乗ってます。
RX-7はギャギャギャと煙をたてながら急発進していった。
水野、待ってろ・・・!
<つづく>
でも僕だって大変だ。お互い様だ。お互い様だけど・・・。
放っておけない僕の性格・・・。
詰所へカルテを持っていった。
「これ、指示です。お願いします」
「・・・・・」
ナースは無言で受け取る。一瞥し・・どうやら納得したようだ。
「はい」
「では・・・」
大学病院の外は暑い。今のうちに携帯で自宅のエアコンのスイッチを入れたいくらいだ。
また携帯が。
「もしもし?」
「あたし。森」
「森さん・・?」
「水野くんから電話でね。救急入ったりして大変みたいね」
「今度はそっちにかかったの?」
「そう。なんかもう1人急変あったみたいね」
「そう。それで?」
「彼は言わなかったけど、助けて欲しいんじゃないかしら?」
「僕らでは助けられないよ」
「そうだけど。オーベンも電話つながらないって」
「じゃあバイト先の常勤を呼べばいいじゃない?」
「ダメダメ。民間の病院ではコールしてもめったに出てこないわ。休日は特に。それに今日は講演会の日よ」
「宮川先生もそこか」
「教授にみんな連れて行かれたようよ。教授が来るなら講演会も学会同然でしょ」
「うん・・・で?何をすれば?」
「あたし、あたってみる」
「今どこにいるの?」
「実験棟。畑先生の手伝いしてたの」
「じゃあ君のそのオーベンに頼んだら?」
「ネズミに?頼りにならないわ。やめてって感じ。それになんか匂うし。だから・・・トシキ君のオーベンに!」
「やめろ!それは絶対!」
「はあ?」
「オーベンは大事な大事な実験の判定があるんだ!ジャマしたら・・!」
「でも!他に大学に残ってる人いないわよ!でないと水野くんが!水野くんが!あ・・・」
「?」
「あう・・・なんでもない。じゃね」
この子。水野に惚れてるのか・・?みんなの噂どおりか。
しかし、オーベンの教えどおり・・他人への深入りはよそう。
夕方にまた病棟へ顔を出す予定。それまで自宅で自習することにした。図書館も利用していたが、知り合いが増えるにつれて干渉してくる人間が多くなってきた。
『干渉しないでくれ・・!』
どうも水野のあの言葉が耳に残ってしょうがない。僕はふて寝することにした。
天井を見つめても、あの言葉が・・。
『干渉するな!』
『仕切るな!』
『うっとうしい!』
携帯が鳴り出した。誰だ?今度は。
「はあ?もしもし」
「野中だ」
「はっ!オーベン!」
反射的に飛び上がった。声だけなのに、思わず会釈だ。
「これから神戸の病院へ行く。お前もだ」
「え?」
「どうやらあっちはかなり忙しそうだ」
「そうですか・・」
「水野は遅いしな、やることが」
「・・・」
「IVHが入らない患者、UAPの患者、ペーシング不全の患者、腹痛の患者、不穏の患者。以上が病棟で・・・救急に喘息が1人と交通事故が2名。神戸の病院のナースが言ってた」
「交通事故まで?」
「たぶん打撲のようだがな」
「・・・UAP(不安定狭心症)が大変そうですね」
「でも水野の診断らしいぞ、あくまでも」
「あ、そうか。じゃあ怪しいですね」
「ほら、鵜呑みにしたらいかんとあれだけ・・!」
「気をつけます。吐き出します」
「ひどいなお前。けっこう辛口なんだな」
「不安定狭心症かあ・・・」
「今ホントに不安定なのは、あいつだ」
「今から行かれます?」
「ああ。森君がどうしてもというしな。泣きつかれた」
「そうですか。でも先生、実験が・・」
「・・・聞くなって言っただろ」
「はい!申し訳ありません!」
僕はオーベンの車に同乗することになった。
「けっこういい車だろ。RX-7。あ、おい!土禁だ。靴を脱げ」
「はは、はい」
「お前も研修が終わったら、外車に乗れるようになるさ!」
すみませんオーベン、僕はすでに外車に乗ってます。
RX-7はギャギャギャと煙をたてながら急発進していった。
水野、待ってろ・・・!
<つづく>
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