< オーベン&コベンダーズ 1-19 到着! >
2004年7月25日車は環状線に入った。
僕は道路標識で、おおよその進路を把握する。
「・・と書いてある標識を目指すほうがよさそうです」
「ああ、たぶん分かる」
「あ!」
「な、なんだ!」
車は少し動揺してスリップしかけた。
「いえ・・・今のがそうかと。違いました」
「フーッ・・・お前との付き合いは・・・病棟だけで勘弁だ」
オーベンは再度、電話した。
「マミー。ポイントだけ言うぞ。俺らのコベンが今困ってんだ。金?違う!」
オーベンはハンドルを揺らし始めた。
「当直してるんだ、神戸の病院で。お前んとこ、近いだろ?」
そうか。その先生は近いのか。神戸に。
「今日は休日か?のわけないよな。講演会は?知らなかった?それほど忙しいのか」
僕はとっさに叫んだ。
「オーベン!もうすぐ天保山です!車、左へ寄せてください!」
「黙ってろと言っただろ!でな、マミー、病院はあそこだ。宮川先生の・・寄れるか?」
「オーベン!早く寄って!」
車はひたすら右車線を突っ走っている。左に寄らないと、環状線を出られない。
「そうか、急いでくれるにこしたことはない」
「オーベン、急いで!」
「急いで走ってるだろが!でな、マミー。いっぺん紹介したいヤツがいてな・・」
「ああ・・・」
車はとうとうインターを逃してしまった。
「じゃ、そういうことだ!・・・何?」
「先生・・・もう1周、お願いします」
「オーベンにもう1周やり直せと?このまま走ってればいいだろ?」
「ええ、まあ。そういうことですが」
「焦るな。インターが近づいたら言え」
「かしこまりました」
オーベン、たしかB型だったな・・・!
電話がかかってきた。僕の携帯だ。
「はい?」
「森ですけど」
「なに?」
「どう?」
「どうって・・・気になるなら、神戸の病院へ電話してよ!」
「電話したわよ。でも手が放せなくて出れないって。受付の人が」
「忙しいんだろ。そりゃ」
「混んでない?」
「・・・・・」
環状線はスキスキだ。
「・・・まだ混んでる。でももうすぐだ」
「オーベンと一緒?」
「そうだよ」
「あたしのオーベンは?」
「・・・聞かないほうがいい」
オーベンも電話で話しているようだ。異様な光景だ。
「あ、見えました!」
「?」
車が左横に並走している。運転しているのは・・・畑先生だ。
オーベンは興奮していた。
「ネズ・・畑先生、速いですね!自分は神戸線、目指します・・・先生は?え?」
ちょうど神戸線と湾岸線の分岐にさしかかった。
畑先生の姿が小さくなっていく・・・。そして消えた。
「あれ?オーベン。あれは・・・」
「湾岸線で行きたいんだってよ!あのバカが!」
「まあそのほうが近かったりするかも・・」
「神戸といっても海沿いじゃない。こっちが先に着く!トシキ、そこのレーダー、スイッチ入れろ!」
「はい・・こうですか?」
「覆面がいそうなら教えろ」
「いっ?」
どうやって識別するんだ?でもオーベンの命令だ。彼のためなら全力を尽くす!僕の目は炎と化した。
「ペースメーカー波形は読めるか?」
「え?いいえ・・」
「スパイク波形があったらペーシング。それぐらい分かるよな?」
「ええ、その程度なら」
「それは心電図所見にもよるから、それ見てそのつど教えてやる」
「はい!ありがとうございます!」
「心不全傾向がないかはすぐに確認しろよ」
「はい!」
「脈圧も大事だ。血圧の上下の差な。正常は?」
「50mmHgです」
「高いと?」
「貧血かARを」
「低いと?」
「タンポナーデを」
「そもそも脈圧とは?」
「心拍出量を反映します」
「心拍出量を決定するのは?」
「し、心収縮力と心血管抵抗」
「収縮力の指標は?」
「LVEF」
「心血管抵抗の指標は?」
「ええと・・」
「オレも知らん。で、エホチールはどっちを増強する?」
「どっちだったかな・・」
「両方だ」
またオーベンの電話が鳴る。
「もしもし?ああ、グッチか。向ってるのか?・・助かる。現地でな」
オーベンはまたもニヤニヤ携帯を切った。
「グッチからだ。伊丹から向っている」
「あ、連絡されてたんですか」
「大学を出る前にな」
「伊丹から・・・中国道ですかね?」
「他に数台が向ってるらしい・・・負けてはいけないな。飛ばすぞ!」
RX-7はゴボウ抜きで高速を突き抜けていった。
「オーベン、もうすぐ出口のインターです」
「ああ。減速する。怖かったか?」
「いえ!」
本当は死ぬほど怖かった。
高速を降り、一般道へ。
「ユウキ、いやトシキ。救急の本に今から目、通しとけ」
「わかりました」
「以前、お前の心マッサージ見たが。あれじゃアンマだ」
「あんま?」
「シンマをしろ、シンマを。両手を組み合わせて、こう!おおっと」
「わ!オーベン、今は・・・!」
だが僕を心配してのことだ。
オーベン、いつもありがとうございます・・・!
車は病院の駐車場へ。僕らは白衣のまま降り立った。
「トシキ!救急入り口だ!」
「はい!」
救急入り口へ向った。しかし、開かない。
「病棟だな。病棟へ向うぞ!」
「はい!」
守衛さんさしき爺さんが現れた。
「おたくら、どちらさんで・・?」
オーベンは立ち止まった。
「ドクターです。応援に来ました」
「おうえん?」
僕は言い直した。
「駆けつけてきました。急変があったので」
「でも、おたくら・・・ここの職員では・・」
「ありませんが、うちの職員がいて、それで」
オーベンが廊下へ向って走り始めた。
「トシキ!ほっとけ!アバンカラン、効かんでも飲ませとけ!」
僕もオーベンに続いた。
詰所へ入った。ナースが4人ほど唖然として見ていた。
「な、なんでしょうか?」
オーベンは咳き込んでいた。
「ふ!ふ!当直医は・・・今どこに?」
「さあ・・・ここではないですね」
「重症の人は?」
「ここにはいませんが」
「そんなことないだろ!急変があったって・・!」
「ああ、それなら第1詰所ですね」
「は?第1?」
「ここは第4。療養病棟です」
オーベンと僕はあっけに取られた。
「あ、そう・・・」
僕は道路標識で、おおよその進路を把握する。
「・・と書いてある標識を目指すほうがよさそうです」
「ああ、たぶん分かる」
「あ!」
「な、なんだ!」
車は少し動揺してスリップしかけた。
「いえ・・・今のがそうかと。違いました」
「フーッ・・・お前との付き合いは・・・病棟だけで勘弁だ」
オーベンは再度、電話した。
「マミー。ポイントだけ言うぞ。俺らのコベンが今困ってんだ。金?違う!」
オーベンはハンドルを揺らし始めた。
「当直してるんだ、神戸の病院で。お前んとこ、近いだろ?」
そうか。その先生は近いのか。神戸に。
「今日は休日か?のわけないよな。講演会は?知らなかった?それほど忙しいのか」
僕はとっさに叫んだ。
「オーベン!もうすぐ天保山です!車、左へ寄せてください!」
「黙ってろと言っただろ!でな、マミー、病院はあそこだ。宮川先生の・・寄れるか?」
「オーベン!早く寄って!」
車はひたすら右車線を突っ走っている。左に寄らないと、環状線を出られない。
「そうか、急いでくれるにこしたことはない」
「オーベン、急いで!」
「急いで走ってるだろが!でな、マミー。いっぺん紹介したいヤツがいてな・・」
「ああ・・・」
車はとうとうインターを逃してしまった。
「じゃ、そういうことだ!・・・何?」
「先生・・・もう1周、お願いします」
「オーベンにもう1周やり直せと?このまま走ってればいいだろ?」
「ええ、まあ。そういうことですが」
「焦るな。インターが近づいたら言え」
「かしこまりました」
オーベン、たしかB型だったな・・・!
電話がかかってきた。僕の携帯だ。
「はい?」
「森ですけど」
「なに?」
「どう?」
「どうって・・・気になるなら、神戸の病院へ電話してよ!」
「電話したわよ。でも手が放せなくて出れないって。受付の人が」
「忙しいんだろ。そりゃ」
「混んでない?」
「・・・・・」
環状線はスキスキだ。
「・・・まだ混んでる。でももうすぐだ」
「オーベンと一緒?」
「そうだよ」
「あたしのオーベンは?」
「・・・聞かないほうがいい」
オーベンも電話で話しているようだ。異様な光景だ。
「あ、見えました!」
「?」
車が左横に並走している。運転しているのは・・・畑先生だ。
オーベンは興奮していた。
「ネズ・・畑先生、速いですね!自分は神戸線、目指します・・・先生は?え?」
ちょうど神戸線と湾岸線の分岐にさしかかった。
畑先生の姿が小さくなっていく・・・。そして消えた。
「あれ?オーベン。あれは・・・」
「湾岸線で行きたいんだってよ!あのバカが!」
「まあそのほうが近かったりするかも・・」
「神戸といっても海沿いじゃない。こっちが先に着く!トシキ、そこのレーダー、スイッチ入れろ!」
「はい・・こうですか?」
「覆面がいそうなら教えろ」
「いっ?」
どうやって識別するんだ?でもオーベンの命令だ。彼のためなら全力を尽くす!僕の目は炎と化した。
「ペースメーカー波形は読めるか?」
「え?いいえ・・」
「スパイク波形があったらペーシング。それぐらい分かるよな?」
「ええ、その程度なら」
「それは心電図所見にもよるから、それ見てそのつど教えてやる」
「はい!ありがとうございます!」
「心不全傾向がないかはすぐに確認しろよ」
「はい!」
「脈圧も大事だ。血圧の上下の差な。正常は?」
「50mmHgです」
「高いと?」
「貧血かARを」
「低いと?」
「タンポナーデを」
「そもそも脈圧とは?」
「心拍出量を反映します」
「心拍出量を決定するのは?」
「し、心収縮力と心血管抵抗」
「収縮力の指標は?」
「LVEF」
「心血管抵抗の指標は?」
「ええと・・」
「オレも知らん。で、エホチールはどっちを増強する?」
「どっちだったかな・・」
「両方だ」
またオーベンの電話が鳴る。
「もしもし?ああ、グッチか。向ってるのか?・・助かる。現地でな」
オーベンはまたもニヤニヤ携帯を切った。
「グッチからだ。伊丹から向っている」
「あ、連絡されてたんですか」
「大学を出る前にな」
「伊丹から・・・中国道ですかね?」
「他に数台が向ってるらしい・・・負けてはいけないな。飛ばすぞ!」
RX-7はゴボウ抜きで高速を突き抜けていった。
「オーベン、もうすぐ出口のインターです」
「ああ。減速する。怖かったか?」
「いえ!」
本当は死ぬほど怖かった。
高速を降り、一般道へ。
「ユウキ、いやトシキ。救急の本に今から目、通しとけ」
「わかりました」
「以前、お前の心マッサージ見たが。あれじゃアンマだ」
「あんま?」
「シンマをしろ、シンマを。両手を組み合わせて、こう!おおっと」
「わ!オーベン、今は・・・!」
だが僕を心配してのことだ。
オーベン、いつもありがとうございます・・・!
車は病院の駐車場へ。僕らは白衣のまま降り立った。
「トシキ!救急入り口だ!」
「はい!」
救急入り口へ向った。しかし、開かない。
「病棟だな。病棟へ向うぞ!」
「はい!」
守衛さんさしき爺さんが現れた。
「おたくら、どちらさんで・・?」
オーベンは立ち止まった。
「ドクターです。応援に来ました」
「おうえん?」
僕は言い直した。
「駆けつけてきました。急変があったので」
「でも、おたくら・・・ここの職員では・・」
「ありませんが、うちの職員がいて、それで」
オーベンが廊下へ向って走り始めた。
「トシキ!ほっとけ!アバンカラン、効かんでも飲ませとけ!」
僕もオーベンに続いた。
詰所へ入った。ナースが4人ほど唖然として見ていた。
「な、なんでしょうか?」
オーベンは咳き込んでいた。
「ふ!ふ!当直医は・・・今どこに?」
「さあ・・・ここではないですね」
「重症の人は?」
「ここにはいませんが」
「そんなことないだろ!急変があったって・・!」
「ああ、それなら第1詰所ですね」
「は?第1?」
「ここは第4。療養病棟です」
オーベンと僕はあっけに取られた。
「あ、そう・・・」
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