< オーベン&コベンダーズ 2-16 ららら・・・ >
2004年8月1日「トシキトシキ!みなさん来ましたよ!救世主様が!」
畑先生が出迎えた。1次会には来てなかったのに。
「畑先生。今は・・海の近くの病院ですよね」
「はるばる来たぜ。もう大変だぞ!そこ座れ!」
「はい」
「まず飲め」
「どうも。先生は」
「車だからいい」
「車で遠方から?」
「彼らを送りに来たんだよ」
「彼らって・・?」
「俺の新勤務先のドクターたちだ。山ちゃん達だよ」
「ああ、あの・・山城先生ですか」
「3次会に循環器グループと合流するってな」
「へえ・・彼らは今?」
「ヘルスに行ってる」
「ああ・・そうですか」
安井先生ら数人が畑先生をコールしている。
「畑くん。あれ歌ってよ。ど根性ネズミ」
「え?またー?」
抑圧的な体育会系の循環器グループに比べ、呼吸器グループはほんわかした柔和な雰囲気だ。
だが活気がないような印象も受ける。人それぞれ、というか。まとまりに欠けるような・・。
「ぴょこん!ペタン!ぴったんこ!」
畑先生は歌い始めた。奥のほうでグッチ先生が笑っている。森さんは彼女に守られていた。
すると2つ向こうの安井先生が僕の横へやってきた。
「ここ、いいかな?」
「はい」
「野中はあいつ、どうしたんだ?」
「いえ・・どうもなってないと・・」
「お前もおかしいぞ。ゲシュタポとかいろいろ言われてるぞ」
「誰がそんな・・」
「俺たちだよ。なあ、トシキ」
「はい?」
「野中に洗脳されて、循環器グループになんかには入るなよ」
「またそれですか・・」
「インターベンションだあ?血管狭かったらよし拡げるぞ、あ、よくなった!俺たちは偉い!バカじゃねえのか?」
「?」
「インターベンションというよりあれは、マスターベーション!」
「そ、そんな・・」
「悪い事は言わん。ぜったいにあのグループには入るな!俺たちのとこへ来い!」
「呼吸器科は人数が・・」
「そうだ。あいつ等より少ない。足りないんだ、人が」
「自分はまだ1年目ですし・・」
「心配すんな。こっちには宮川がいる。気管支鏡はバリバリだ。カテばっかりして何が面白い?」
「自分は、まだカテーテルは・・」
宮川先生が反対側に腰掛けた。かなり酔っている。
「どうだトシキ。仲間に入れよ。何がお前、病棟管理部だよ、ふざけやがって」
「・・・・・」
「俺がナア、まだ協力してやってんのはなあ・・お前がうちのグループに来る見込みが、あるからなんだ」
「先生、まだ選ぶとかそんなのは・・」
「お前、循環器はチーム医療だぞ。チーム医療したきゃ、まず医局というチームの1本化を図ってみろよ!」
「うーん・・・難しいですね」
「無理だろ?じゃ、ウチヘ入れ。まだ野中についていくなら・・俺らは許さんからな」
「先生。そんな・・」
「協力しない。マジだ」
酒は人を変えてしまう。恐ろしい。
宮川先生はいきなりもう1個のマイクを持った。
「どっこい、生きてる?さみんなで!」
「バカ、の・な・か〜」
この歌・・替え歌なんだろか。
「あ、あたしの番。マイク下さい」
憧れのグッチ先生の歌声だ。ここばかりはと皆おとなしくなった。
「♪懐かしいにおいがした すみれの花時計」
表情とは裏腹に、挑戦的な声だ。宮川先生も口をあけたまま彼女を見ている。
「♪恋愛中ってもっと楽しいと思ってた
好きになるのは簡単なのに輝き持続するのは・・・」
畑先生がペンライトを上に伸ばした。
「さん、はい!」
「♪らーらー、ららーらー、ららーらー、らーららー
今日と明日はあなたにい、逢えーないい」
オーオーとみな盛り上がっている。
グッチ先生は僕の横に座り、横から歌ってきた。
「♪夢があるのはいいのだけど、こんな忙しい人じゃ・・」
畑先生が両手を伸ばした。
「ジャー!それ、さんはい!」
「♪らーらー、ららーらー、ららーらー、らーららー今日も明日もあなたに逢いたい」
誰に会いたいんですか?先生。
以下、延々と「ら〜ら〜」が繰り返された。
グッチ先生が僕の腕を取った。みんなからヤジが飛んだ。
「♪ずっと ずっと ずっと ・・・・呼吸器にい、いようね」
い、いてしまいそうです・・・。
畑先生が絶賛した。
「いーねえ!世の中すべて、らららで歌い飛ばしましょう!」
時間がきた。
2次会が終わり、解散した。循環器グループ一同は山城先生主催の3次会へと駆り出されていった。
MRが主催する、「大人の会合」だという。グループ所属が決まっていない僕らレジデントは呼ばれずに済み、助かった。
みんな仲良くなりたくないらしい。
畑先生が出迎えた。1次会には来てなかったのに。
「畑先生。今は・・海の近くの病院ですよね」
「はるばる来たぜ。もう大変だぞ!そこ座れ!」
「はい」
「まず飲め」
「どうも。先生は」
「車だからいい」
「車で遠方から?」
「彼らを送りに来たんだよ」
「彼らって・・?」
「俺の新勤務先のドクターたちだ。山ちゃん達だよ」
「ああ、あの・・山城先生ですか」
「3次会に循環器グループと合流するってな」
「へえ・・彼らは今?」
「ヘルスに行ってる」
「ああ・・そうですか」
安井先生ら数人が畑先生をコールしている。
「畑くん。あれ歌ってよ。ど根性ネズミ」
「え?またー?」
抑圧的な体育会系の循環器グループに比べ、呼吸器グループはほんわかした柔和な雰囲気だ。
だが活気がないような印象も受ける。人それぞれ、というか。まとまりに欠けるような・・。
「ぴょこん!ペタン!ぴったんこ!」
畑先生は歌い始めた。奥のほうでグッチ先生が笑っている。森さんは彼女に守られていた。
すると2つ向こうの安井先生が僕の横へやってきた。
「ここ、いいかな?」
「はい」
「野中はあいつ、どうしたんだ?」
「いえ・・どうもなってないと・・」
「お前もおかしいぞ。ゲシュタポとかいろいろ言われてるぞ」
「誰がそんな・・」
「俺たちだよ。なあ、トシキ」
「はい?」
「野中に洗脳されて、循環器グループになんかには入るなよ」
「またそれですか・・」
「インターベンションだあ?血管狭かったらよし拡げるぞ、あ、よくなった!俺たちは偉い!バカじゃねえのか?」
「?」
「インターベンションというよりあれは、マスターベーション!」
「そ、そんな・・」
「悪い事は言わん。ぜったいにあのグループには入るな!俺たちのとこへ来い!」
「呼吸器科は人数が・・」
「そうだ。あいつ等より少ない。足りないんだ、人が」
「自分はまだ1年目ですし・・」
「心配すんな。こっちには宮川がいる。気管支鏡はバリバリだ。カテばっかりして何が面白い?」
「自分は、まだカテーテルは・・」
宮川先生が反対側に腰掛けた。かなり酔っている。
「どうだトシキ。仲間に入れよ。何がお前、病棟管理部だよ、ふざけやがって」
「・・・・・」
「俺がナア、まだ協力してやってんのはなあ・・お前がうちのグループに来る見込みが、あるからなんだ」
「先生、まだ選ぶとかそんなのは・・」
「お前、循環器はチーム医療だぞ。チーム医療したきゃ、まず医局というチームの1本化を図ってみろよ!」
「うーん・・・難しいですね」
「無理だろ?じゃ、ウチヘ入れ。まだ野中についていくなら・・俺らは許さんからな」
「先生。そんな・・」
「協力しない。マジだ」
酒は人を変えてしまう。恐ろしい。
宮川先生はいきなりもう1個のマイクを持った。
「どっこい、生きてる?さみんなで!」
「バカ、の・な・か〜」
この歌・・替え歌なんだろか。
「あ、あたしの番。マイク下さい」
憧れのグッチ先生の歌声だ。ここばかりはと皆おとなしくなった。
「♪懐かしいにおいがした すみれの花時計」
表情とは裏腹に、挑戦的な声だ。宮川先生も口をあけたまま彼女を見ている。
「♪恋愛中ってもっと楽しいと思ってた
好きになるのは簡単なのに輝き持続するのは・・・」
畑先生がペンライトを上に伸ばした。
「さん、はい!」
「♪らーらー、ららーらー、ららーらー、らーららー
今日と明日はあなたにい、逢えーないい」
オーオーとみな盛り上がっている。
グッチ先生は僕の横に座り、横から歌ってきた。
「♪夢があるのはいいのだけど、こんな忙しい人じゃ・・」
畑先生が両手を伸ばした。
「ジャー!それ、さんはい!」
「♪らーらー、ららーらー、ららーらー、らーららー今日も明日もあなたに逢いたい」
誰に会いたいんですか?先生。
以下、延々と「ら〜ら〜」が繰り返された。
グッチ先生が僕の腕を取った。みんなからヤジが飛んだ。
「♪ずっと ずっと ずっと ・・・・呼吸器にい、いようね」
い、いてしまいそうです・・・。
畑先生が絶賛した。
「いーねえ!世の中すべて、らららで歌い飛ばしましょう!」
時間がきた。
2次会が終わり、解散した。循環器グループ一同は山城先生主催の3次会へと駆り出されていった。
MRが主催する、「大人の会合」だという。グループ所属が決まっていない僕らレジデントは呼ばれずに済み、助かった。
みんな仲良くなりたくないらしい。
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