< オーベン&コベンダーズ 3-17 侵入者 >
2004年8月16日僕とオーベン、3人の新医局員は詰所に入った。
島先生は目を丸くした。
「あれ?さっきまでいたんですが・・」
オーベンは首をひねった。
「おかしいな・・トイレか?まさかな」
僕はあることに気づいた。
「オーベン・・・入院カルテがありません」
「なに?」
入院カルテはごっそりなくなってしまっている。
オーベンは小走りに急いだ。
「あいつら!」
僕らは1部屋ずつ、手当たり次第に病室を廻った。
「トシキ先生、こちらです」
スズキ先生の落ち着いた声に導かれ、4人部屋へ入った。
するとそこでは、1人の長身白衣の筋肉質男性が患者の聴診をしている。
肥満に近い島先生と対照的だ。
「うーん・・・?音かなあ」
僕は不審に思った。
「あの・・・すみませんが」
「ちょっとストップ!」
不審なドクターがストップをかけた。
「どちらさんでしょうか?」
「え?オレ?野中から聞いてない?」
「え・・・ええ」
オタクッぽいスズキ君が僕の後ろからぼそっと話しかけた。
「こ、今度新しく来られた、2年目のドクターですよ。新入医局員」
「いきなり回診ですか・・・」
なんとなく正体はわかっていたが、いきなり回診して患者さんの診察までするとは。
図々しいとしか思われなかった。
「トシキ先生、だね?」
「ええ」
「さっきaf徐脈の患者さん、いましたね?」
「ええ。オーベンと起こしまして、とりあえず脈は延びてはいません」
「でも先生、そのあとも脈遅いよ」
「そうでしたか」
「ペースメーカー、入れないといかんでしょうが!」
初対面で、なんでこんなに態度でかいんだ?
「オーベンと相談しますんで、そこは・・」
「いや、俺がもう説明したよ。テンポラリー入れる」
「先生が?」
「そうだ。悪いか?」
ごついその男はカルテを数冊片手に持ち、廊下へ出た。
「なんか、大した症例ないなあ」
「先生。申し訳ありませんが、詰所へいったん引き上げてください」
「そっか。お前・・病棟管理なんちゃら、なんだよな。一応」
「はい。先生が主治医なら別ですが」
「ま、プロフェッサーにチクラれても困るしな」
男はゆっくり詰所まで歩いていった。
「スズキ先生。あと何人います?」
「3人です。他の部屋でしょう」
「先生方の・・・仲間?」
「いいえ。彼らはみんな2年目で・・・『契約』で来たドクターでしょう」
「契約?」
「おっと。これ以上は言えません」
廊下を歩くと、男・・・いや、女医さんらしき人が個室で患者を座らせている。
「や!キミ達!スズキングじゃない!年末の忘年会以来ね」
この女医さん、何を・・。
「あの、すみませんが・・」
「トシキ先生?ガーゼちょうだい」
「え?」
反射的に僕はガーゼを処置台から出した。
「大きいほうで?」
「気切ガーゼのほうよ」
「気管カニューレの交換?」
「この人、かわいそうに。つまり気味だったわよ」
「ど、どうぞ」
「はい、どうも・・・終わり!さ、行きましょ!」
僕らはその女医さんに連れ出された。
みんな、やることがB型っぽい。
そのまま僕らは個室へ連れて行かれた。
そこではまた別の男性医師が手袋をはめていた。
「主治医の先生ですか?アブセスほったらかしのようなので、穿刺しますね」
無表情なやせほそったドクターだ。
「いえ、主治医ではないですが・・」
「野中先生からは許可得てますので・・・・さ、おじいちゃん。ちょっとチクッとしますね」
横では角刈りの男性が介助をしている。
「おらあ、アブセスなんか初めて見るとよ!」
どこの人種なんだろう・・?
無表情ドクターはプスッと注射器を刺し込み、膿瘍を吸引していった。
「真っ白でしょ。おじいちゃん。これ全部、膿なわけね」
患者さんには見えてないが、感心するように首を縦に振っていた。
「先生、生食をもっと」
「おう」
2人はたんたんと作業していく。
「主治医の先生も、もうちょっと早くやってくれたらねー」
「ホンマや、ホンマや」
患者さんも頷いている。
「あの・・」
途中だが僕は声をかけた。
「処置が終わりましたら、詰所まで来られます?」
角刈りが近づいてきた。
「なんか、文句あると?」
「いえいえ、そうではなくて」
「どの医者も学会行きおって、もぬけの殻みたいやな?」
「(先生、患者さんに聞こえる・・・)」
「かまわん、かまわんと!」
無表情ドクターはガーゼを被せた。
「あー、なんか気が散る気が散る。今日はこのへんで」
いつの間にか人数も増え、まるで小回診のようにゾロゾロと僕らは詰所へと戻っていった。
< つづく >
島先生は目を丸くした。
「あれ?さっきまでいたんですが・・」
オーベンは首をひねった。
「おかしいな・・トイレか?まさかな」
僕はあることに気づいた。
「オーベン・・・入院カルテがありません」
「なに?」
入院カルテはごっそりなくなってしまっている。
オーベンは小走りに急いだ。
「あいつら!」
僕らは1部屋ずつ、手当たり次第に病室を廻った。
「トシキ先生、こちらです」
スズキ先生の落ち着いた声に導かれ、4人部屋へ入った。
するとそこでは、1人の長身白衣の筋肉質男性が患者の聴診をしている。
肥満に近い島先生と対照的だ。
「うーん・・・?音かなあ」
僕は不審に思った。
「あの・・・すみませんが」
「ちょっとストップ!」
不審なドクターがストップをかけた。
「どちらさんでしょうか?」
「え?オレ?野中から聞いてない?」
「え・・・ええ」
オタクッぽいスズキ君が僕の後ろからぼそっと話しかけた。
「こ、今度新しく来られた、2年目のドクターですよ。新入医局員」
「いきなり回診ですか・・・」
なんとなく正体はわかっていたが、いきなり回診して患者さんの診察までするとは。
図々しいとしか思われなかった。
「トシキ先生、だね?」
「ええ」
「さっきaf徐脈の患者さん、いましたね?」
「ええ。オーベンと起こしまして、とりあえず脈は延びてはいません」
「でも先生、そのあとも脈遅いよ」
「そうでしたか」
「ペースメーカー、入れないといかんでしょうが!」
初対面で、なんでこんなに態度でかいんだ?
「オーベンと相談しますんで、そこは・・」
「いや、俺がもう説明したよ。テンポラリー入れる」
「先生が?」
「そうだ。悪いか?」
ごついその男はカルテを数冊片手に持ち、廊下へ出た。
「なんか、大した症例ないなあ」
「先生。申し訳ありませんが、詰所へいったん引き上げてください」
「そっか。お前・・病棟管理なんちゃら、なんだよな。一応」
「はい。先生が主治医なら別ですが」
「ま、プロフェッサーにチクラれても困るしな」
男はゆっくり詰所まで歩いていった。
「スズキ先生。あと何人います?」
「3人です。他の部屋でしょう」
「先生方の・・・仲間?」
「いいえ。彼らはみんな2年目で・・・『契約』で来たドクターでしょう」
「契約?」
「おっと。これ以上は言えません」
廊下を歩くと、男・・・いや、女医さんらしき人が個室で患者を座らせている。
「や!キミ達!スズキングじゃない!年末の忘年会以来ね」
この女医さん、何を・・。
「あの、すみませんが・・」
「トシキ先生?ガーゼちょうだい」
「え?」
反射的に僕はガーゼを処置台から出した。
「大きいほうで?」
「気切ガーゼのほうよ」
「気管カニューレの交換?」
「この人、かわいそうに。つまり気味だったわよ」
「ど、どうぞ」
「はい、どうも・・・終わり!さ、行きましょ!」
僕らはその女医さんに連れ出された。
みんな、やることがB型っぽい。
そのまま僕らは個室へ連れて行かれた。
そこではまた別の男性医師が手袋をはめていた。
「主治医の先生ですか?アブセスほったらかしのようなので、穿刺しますね」
無表情なやせほそったドクターだ。
「いえ、主治医ではないですが・・」
「野中先生からは許可得てますので・・・・さ、おじいちゃん。ちょっとチクッとしますね」
横では角刈りの男性が介助をしている。
「おらあ、アブセスなんか初めて見るとよ!」
どこの人種なんだろう・・?
無表情ドクターはプスッと注射器を刺し込み、膿瘍を吸引していった。
「真っ白でしょ。おじいちゃん。これ全部、膿なわけね」
患者さんには見えてないが、感心するように首を縦に振っていた。
「先生、生食をもっと」
「おう」
2人はたんたんと作業していく。
「主治医の先生も、もうちょっと早くやってくれたらねー」
「ホンマや、ホンマや」
患者さんも頷いている。
「あの・・」
途中だが僕は声をかけた。
「処置が終わりましたら、詰所まで来られます?」
角刈りが近づいてきた。
「なんか、文句あると?」
「いえいえ、そうではなくて」
「どの医者も学会行きおって、もぬけの殻みたいやな?」
「(先生、患者さんに聞こえる・・・)」
「かまわん、かまわんと!」
無表情ドクターはガーゼを被せた。
「あー、なんか気が散る気が散る。今日はこのへんで」
いつの間にか人数も増え、まるで小回診のようにゾロゾロと僕らは詰所へと戻っていった。
< つづく >
コメント