<ラスト・オブ・オーベン&コベンダーズ 6-5 ファイティング>
2004年10月21日僕はサマリーを打ち続けていた。島が近づく。
「トシキ。いよいよ返事する日だな」
「え?なに?」
「聞こえないフリすんなよ」
「・・・・・」
「ところで。なんでオレが、回し者なんだ?」
辺りが静まり返った。島は興奮していた。
「病室でなんであんな事言った?」
僕はキーを止めた。
「君のほうこそ!」
「とっとと辞めちまえ!」
「そうかい!」
まるで子供のケンカだ。
西条先生がそろ〜っと部屋を出ようとした。
「どこ行く?西条」
大柄な島は入り口に立ちはだかった。
「い、いや・・・」
「お前、誰の味方か分かってんだろうな?」
「・・・・・」
同級生でありながら、この差はなんだ。
島はまた僕のほうへ戻ってきた。
「言わせてもらうがな。お前正直、うっとうしい」
「ああ、そうかいそうかい」
「俺たちは、俺たちで好きにやりたいんだ。な、分かる?」
「何言って・・」
「いつまでも天下だと思ったら大間違いだぞ。ノナキー時代はもう終わったんだ!」
「なんだ?何がいけなかった?」
「同級のお前だけが上にへコヘコへつらって、俺たちはいい迷惑だ!おい!西条!言ってやれ!」
西条先生は青ざめていた。
「そこまでは思ってないぞ・・」
「なに言ってんだ!お前も鈴木も、陰では腹立つって言ってただろが!」
「そりゃそんなこともあったさ!けど・・」
「俺たちの医局にしようって、お前も言っただろうが!」
「・・・・・・」
「トシキ。頼むから。俺たちはもっとオープンな医局を作りたいんだ」
島は完全に自分の世界に浸っていた。
こんな人間にはどんな言葉も無効だ。
「トシキ。来年たくさんの新人研修医が入ったら、今のような抑圧政治ではダメだ」
「・・・・・」
「もっとジェントルにすべきだ。勤務は朝ー夕方5時勤務。カンファ数は減らす。夜間の対応はすべて当直にお願いする」
「・・・・・」
「そうでないと、体がもたないんだ。今度入ってくる多くの新人で雑用は、ほどよく分担させる!」
島はキレたまま、カンファ室から出て行った。
ちっとも知らなかった。僕や野中先生はうっとうしいだけの存在だったのか。
僕がこれだけ反省しても、まだ足りないとは。
翌日、朝から島はかなり張り切っていた。
彼は朝1番で出勤していたようで、詰所にはりついていた。
僕が朝の回診に出かけようとしたところ・・・。
「なんだこれは?」
カルテを見て、彼は頭を抱え込んでいる。
「ガキの遊びか?」
どうやら他の医者のカルテを見て、呆れているようだ。
「こんなんでよくも、まあ!」
僕は詰所を出ようとした。
「おい、トシキ!いいのかこれ?」
「?」
「これ、マーブルのカルテだが。記載がほとんどない」
「知ってるよ」
「こんなの放置したらダメだろう!」
「上の先生にそこまでは・・」
「ダメだ。こんなのを新人研修医が見てみろ!なんて思う?」
「さあな」
「今日は俺が、パトロールすることになってるからな」
「・・ことになってるって。どういう意味?自分から希望したのに」
「ああ、この1日病棟医長の件な。ホントは医局長からの命令なんだよ」
「そうなの?」
「新しい医局を目指して、その第一弾さ」
「なんだよ。そんな企画あったのか?」
「だからお前はサッサとお行き!」
彼はまた別のカルテを取り出した。
これでは彼も結局は強硬的な手段にうって出そうだな。
歴史は繰り返す。
朝の回診を終えて、外来へ。助教授の外来の介助だ。
助教授はやっと半数を午後2時で終えた。
「ふう。キリがないな」
助教授はしつこいほどに手洗いを徹底していた。
「今からメシ行くぞ。ついてこい」
「はい」
いつものように、誰もいない学食へ。
「さ、食うか」
助教授は冷え切った定食を運んできた。
僕はうどんをテーブルに置いた。
「最近の若いヤツは、ほんと・・・」
「?」
「患者でも変わったよな。何かあったら、すぐ問題にする」
「昼の番組もかなり偏ってますね」
「ああ、あれな。ああいう番組もひどいが、どうもテレビでやってる番組内容というのは、偏った気がせんでもない」
「・・・・・・」
「これでは医者が悪者で、患者が善人だ」
「ドラマもやってますね」
「はは。こんな医者いるわけないだろって。そんな医師像ばっかりだな」
「ええ・・・」
「お前、タバコは?」
「いえ。先生は?」
「吸わない。うちの医局にしては珍しいな」
「確かにそうですね」
助教授は物凄い勢いで食事を咀嚼していく。
「トシキ。後継者の返事はもうすぐだろ?」
「はい」
「腹のうちは決まったか?」
「返事は・・・はい」
「そうか。ま、ここでは聞かないでおこう。君がその病院を引き継いだ暁には」
「え?」
「今後、関連病院として研修医を数ヶ月に1人ずつ送り込もうと思うが」
「非常勤を・・?」
「いや、常勤として。近々ほら、実施されるといわれてるスーパーローテートの一環で」
「それ、ホントに実施されるんでしょうか」
「ああ、確実にな」
「3ヶ月に1回、各科を回るんですよね」
「ああ。どうだ?オールマイティな医者は育つと思うか?」
「志望が決まっている人間には、迷惑この上ない制度だと」
「はっは!なるほどな。だがわしらは嬉しい」
「?」
「わが医局をアピールする、いい機会だ。ポリクリは事務的であっという間に終わるしな」
「そうですね」
「ま、来年から島がここを引っ張ってくれるだろう」
「島が・・」
「不服か?」
「島は今日、1日病棟医長を」
「1日?何を言ってる?来年からは正式に病棟医長だ」
「で、でも三品先生は・・」
「あいつはダメだ。島の報告で分かった」
「・・・」
「島がいろいろ情報を流してくれて、わしらも助かってる」
「・・・」
「まあ悪く思うな。向こうへ行っても、仲良くやれよ。ケンカは許さん!ケンカは!」
僕らはそのまま午後の残りの外来へ向った。
終了したのが夕方5時半。この日はいつもこれぐらいだ。朝11時に受け付けた患者さんの実際の診療が夕方5時。途方もない待ち時間だ。だが大学病院では珍しくない。
それでも患者さんは来る。待つ。果たして大学病院そのものに、それだけの価値があるのかどうか。
外来から戻ると、カンファ室では数人どうしが火花を散らしていた。
島&鈴木・西条コンビと、傭兵4人組だ。島は激を飛ばしていた。
「そんなの反則でしょうが!反則!」
「そんなの知ったことか!」
マーブル先生が敵対。だが島も負けていない。
「いやあ、困るんっすよ。せめて新人が仕事始めるまでは・・!」
「草波さんを通してくれ」
「先生。先生はどうなんスか」
「とにかく、今年で終わりだ」
「そのあとの3ヶ月は?どうしたらいいんです?」
「勝手にお前らでやれ!そんなの!」
僕は見かねた。
「あのー、途中からですみませんが」
島は一切耳を貸さなかった。
「槙原先生。他の先生も!いいですか!まあいいですよ。カルテの件は!僕らへの指導もろくになかったのは。まあいいです」
「お前、教授らにチクったんだろ!」
「報告はしましたよ。そうする事になってましたから!」
「とんでもねえヤツだ!」
他の3人の傭兵達も頷いていた。田島先生がドンと脚を叩きつけた。
「できそこないが。だいいち、お前が人を指導できる立場か!」
「いえ!先生、そんな。別に先生方を指導しようとか、そんなのは・・」
「トシキ。いよいよ返事する日だな」
「え?なに?」
「聞こえないフリすんなよ」
「・・・・・」
「ところで。なんでオレが、回し者なんだ?」
辺りが静まり返った。島は興奮していた。
「病室でなんであんな事言った?」
僕はキーを止めた。
「君のほうこそ!」
「とっとと辞めちまえ!」
「そうかい!」
まるで子供のケンカだ。
西条先生がそろ〜っと部屋を出ようとした。
「どこ行く?西条」
大柄な島は入り口に立ちはだかった。
「い、いや・・・」
「お前、誰の味方か分かってんだろうな?」
「・・・・・」
同級生でありながら、この差はなんだ。
島はまた僕のほうへ戻ってきた。
「言わせてもらうがな。お前正直、うっとうしい」
「ああ、そうかいそうかい」
「俺たちは、俺たちで好きにやりたいんだ。な、分かる?」
「何言って・・」
「いつまでも天下だと思ったら大間違いだぞ。ノナキー時代はもう終わったんだ!」
「なんだ?何がいけなかった?」
「同級のお前だけが上にへコヘコへつらって、俺たちはいい迷惑だ!おい!西条!言ってやれ!」
西条先生は青ざめていた。
「そこまでは思ってないぞ・・」
「なに言ってんだ!お前も鈴木も、陰では腹立つって言ってただろが!」
「そりゃそんなこともあったさ!けど・・」
「俺たちの医局にしようって、お前も言っただろうが!」
「・・・・・・」
「トシキ。頼むから。俺たちはもっとオープンな医局を作りたいんだ」
島は完全に自分の世界に浸っていた。
こんな人間にはどんな言葉も無効だ。
「トシキ。来年たくさんの新人研修医が入ったら、今のような抑圧政治ではダメだ」
「・・・・・」
「もっとジェントルにすべきだ。勤務は朝ー夕方5時勤務。カンファ数は減らす。夜間の対応はすべて当直にお願いする」
「・・・・・」
「そうでないと、体がもたないんだ。今度入ってくる多くの新人で雑用は、ほどよく分担させる!」
島はキレたまま、カンファ室から出て行った。
ちっとも知らなかった。僕や野中先生はうっとうしいだけの存在だったのか。
僕がこれだけ反省しても、まだ足りないとは。
翌日、朝から島はかなり張り切っていた。
彼は朝1番で出勤していたようで、詰所にはりついていた。
僕が朝の回診に出かけようとしたところ・・・。
「なんだこれは?」
カルテを見て、彼は頭を抱え込んでいる。
「ガキの遊びか?」
どうやら他の医者のカルテを見て、呆れているようだ。
「こんなんでよくも、まあ!」
僕は詰所を出ようとした。
「おい、トシキ!いいのかこれ?」
「?」
「これ、マーブルのカルテだが。記載がほとんどない」
「知ってるよ」
「こんなの放置したらダメだろう!」
「上の先生にそこまでは・・」
「ダメだ。こんなのを新人研修医が見てみろ!なんて思う?」
「さあな」
「今日は俺が、パトロールすることになってるからな」
「・・ことになってるって。どういう意味?自分から希望したのに」
「ああ、この1日病棟医長の件な。ホントは医局長からの命令なんだよ」
「そうなの?」
「新しい医局を目指して、その第一弾さ」
「なんだよ。そんな企画あったのか?」
「だからお前はサッサとお行き!」
彼はまた別のカルテを取り出した。
これでは彼も結局は強硬的な手段にうって出そうだな。
歴史は繰り返す。
朝の回診を終えて、外来へ。助教授の外来の介助だ。
助教授はやっと半数を午後2時で終えた。
「ふう。キリがないな」
助教授はしつこいほどに手洗いを徹底していた。
「今からメシ行くぞ。ついてこい」
「はい」
いつものように、誰もいない学食へ。
「さ、食うか」
助教授は冷え切った定食を運んできた。
僕はうどんをテーブルに置いた。
「最近の若いヤツは、ほんと・・・」
「?」
「患者でも変わったよな。何かあったら、すぐ問題にする」
「昼の番組もかなり偏ってますね」
「ああ、あれな。ああいう番組もひどいが、どうもテレビでやってる番組内容というのは、偏った気がせんでもない」
「・・・・・・」
「これでは医者が悪者で、患者が善人だ」
「ドラマもやってますね」
「はは。こんな医者いるわけないだろって。そんな医師像ばっかりだな」
「ええ・・・」
「お前、タバコは?」
「いえ。先生は?」
「吸わない。うちの医局にしては珍しいな」
「確かにそうですね」
助教授は物凄い勢いで食事を咀嚼していく。
「トシキ。後継者の返事はもうすぐだろ?」
「はい」
「腹のうちは決まったか?」
「返事は・・・はい」
「そうか。ま、ここでは聞かないでおこう。君がその病院を引き継いだ暁には」
「え?」
「今後、関連病院として研修医を数ヶ月に1人ずつ送り込もうと思うが」
「非常勤を・・?」
「いや、常勤として。近々ほら、実施されるといわれてるスーパーローテートの一環で」
「それ、ホントに実施されるんでしょうか」
「ああ、確実にな」
「3ヶ月に1回、各科を回るんですよね」
「ああ。どうだ?オールマイティな医者は育つと思うか?」
「志望が決まっている人間には、迷惑この上ない制度だと」
「はっは!なるほどな。だがわしらは嬉しい」
「?」
「わが医局をアピールする、いい機会だ。ポリクリは事務的であっという間に終わるしな」
「そうですね」
「ま、来年から島がここを引っ張ってくれるだろう」
「島が・・」
「不服か?」
「島は今日、1日病棟医長を」
「1日?何を言ってる?来年からは正式に病棟医長だ」
「で、でも三品先生は・・」
「あいつはダメだ。島の報告で分かった」
「・・・」
「島がいろいろ情報を流してくれて、わしらも助かってる」
「・・・」
「まあ悪く思うな。向こうへ行っても、仲良くやれよ。ケンカは許さん!ケンカは!」
僕らはそのまま午後の残りの外来へ向った。
終了したのが夕方5時半。この日はいつもこれぐらいだ。朝11時に受け付けた患者さんの実際の診療が夕方5時。途方もない待ち時間だ。だが大学病院では珍しくない。
それでも患者さんは来る。待つ。果たして大学病院そのものに、それだけの価値があるのかどうか。
外来から戻ると、カンファ室では数人どうしが火花を散らしていた。
島&鈴木・西条コンビと、傭兵4人組だ。島は激を飛ばしていた。
「そんなの反則でしょうが!反則!」
「そんなの知ったことか!」
マーブル先生が敵対。だが島も負けていない。
「いやあ、困るんっすよ。せめて新人が仕事始めるまでは・・!」
「草波さんを通してくれ」
「先生。先生はどうなんスか」
「とにかく、今年で終わりだ」
「そのあとの3ヶ月は?どうしたらいいんです?」
「勝手にお前らでやれ!そんなの!」
僕は見かねた。
「あのー、途中からですみませんが」
島は一切耳を貸さなかった。
「槙原先生。他の先生も!いいですか!まあいいですよ。カルテの件は!僕らへの指導もろくになかったのは。まあいいです」
「お前、教授らにチクったんだろ!」
「報告はしましたよ。そうする事になってましたから!」
「とんでもねえヤツだ!」
他の3人の傭兵達も頷いていた。田島先生がドンと脚を叩きつけた。
「できそこないが。だいいち、お前が人を指導できる立場か!」
「いえ!先生、そんな。別に先生方を指導しようとか、そんなのは・・」
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