ブレよろ 9
2004年12月28日やはり58歳の男性患者は心当たりがなかった。
「それは、わしが聞きたい。外来でも言うたんや。知らない間に入院となっておる」
「そうよねえ」
彼女は愛想良い笑顔で応えているが、患者の怒りは増してきた。
「だいいち、主治医の先生が分からん、っちゅうわけや」
「その主治医とともに診させていただくことになりました。ユウキです」
「あ、そうでっか!こりゃ失礼しました」
ゴミ箱に目をやると、菓子パンの袋が。
「今は、食事は・・ミタライ先生」
「あ、はい。腎臓病食で、蛋白は1日40gに制限を」
「間食は、糖尿病性腎症だから出てるわけ?」
「かんしょく?間食は出してま・・・ああっ!」
彼女はゴミ箱から袋を取り出した。
「こんなの!ひどい!どうして!」
「おららら、何するんや、人のゴミ箱を!たあっ!」
患者は凄い勢いで彼女の腕を振り払った。
だが彼女はショックを受けていた。
「おかしいと思ったわ。だからいつまでたっても・・」
「おい!先生、ちょっと・・!」
僕が促しても、彼女は怒りを抑え切れなった。
「イヌイさん。あれだけ約束守るって言ってたのに!」
「まあちょっと、魔がさしたわけや。これ1回だけやで」
「もっとあるかも」
「おい!」
彼女はゴミ箱を荒らし始めた。また患者が止めた。
「せ、先生。この女医さん、なんとかしてくださいや!」
僕は止めにかかった。
「やめろって!・・・・・どうもすみません」
「わしな、入院して楽しみもないわけや。子供も遠方に行ったし、金も余裕がない」
なんか、いいわけを始めたようだな。
「それでやな、ちょっと隣の人間がパンを食べてるんを見て、一度はいいかと思ったわけや。心の先生に」
「心の先生?」
「待ってえな!話はまだこれからやがな!でな、ホントこれで最後にします!これでもう私は反省して
ここの食事だけ食べます、って誓ったわけや」
「なんか内容がな・・」
「そのあとで、ゴミ箱見て判断されたわけや」
「ではもう、2度とないと・・」
「その通りや!」
「そんなことあらへん」
どうやら奥さんのようだ。僕らの後ろへやってきた。
「あんた、そこの台の引き出し!」
辺りが静まり返った。
「はよ出さんかいな!」
奥さんは強引に引き出しを開けた。すると様々な種類のパンがごろごろ出てきた。
「ちょ・・・ちょっと待ってえな!これはずっと前に買ってやな・・・!」
ミタライ先生は小刻みに泣き出した。
「せ、先生。そりゃないやろ。泣くのやめてえな。な。このパンは、パン買うだけ点数が貯まるわけや。
皿がもらえるんや。白い皿が。その点数目当てで」
誰も信用などしてなかった。
「奥さん、このパン全部引き上げますけど・・」
「ええ。みなさんに差し上げてもいいですけど」
とたん、同室者の7人が大歓声を上げた。
しかし僕はパンを見つめていた。
「いえ。それは無理・・・」
「それぐらいいいのでは?」
奥さんが覗き込んだ。
「いえ、その・・・」
「ふん?」
「期限が切れてる・・・」
「それは、わしが聞きたい。外来でも言うたんや。知らない間に入院となっておる」
「そうよねえ」
彼女は愛想良い笑顔で応えているが、患者の怒りは増してきた。
「だいいち、主治医の先生が分からん、っちゅうわけや」
「その主治医とともに診させていただくことになりました。ユウキです」
「あ、そうでっか!こりゃ失礼しました」
ゴミ箱に目をやると、菓子パンの袋が。
「今は、食事は・・ミタライ先生」
「あ、はい。腎臓病食で、蛋白は1日40gに制限を」
「間食は、糖尿病性腎症だから出てるわけ?」
「かんしょく?間食は出してま・・・ああっ!」
彼女はゴミ箱から袋を取り出した。
「こんなの!ひどい!どうして!」
「おららら、何するんや、人のゴミ箱を!たあっ!」
患者は凄い勢いで彼女の腕を振り払った。
だが彼女はショックを受けていた。
「おかしいと思ったわ。だからいつまでたっても・・」
「おい!先生、ちょっと・・!」
僕が促しても、彼女は怒りを抑え切れなった。
「イヌイさん。あれだけ約束守るって言ってたのに!」
「まあちょっと、魔がさしたわけや。これ1回だけやで」
「もっとあるかも」
「おい!」
彼女はゴミ箱を荒らし始めた。また患者が止めた。
「せ、先生。この女医さん、なんとかしてくださいや!」
僕は止めにかかった。
「やめろって!・・・・・どうもすみません」
「わしな、入院して楽しみもないわけや。子供も遠方に行ったし、金も余裕がない」
なんか、いいわけを始めたようだな。
「それでやな、ちょっと隣の人間がパンを食べてるんを見て、一度はいいかと思ったわけや。心の先生に」
「心の先生?」
「待ってえな!話はまだこれからやがな!でな、ホントこれで最後にします!これでもう私は反省して
ここの食事だけ食べます、って誓ったわけや」
「なんか内容がな・・」
「そのあとで、ゴミ箱見て判断されたわけや」
「ではもう、2度とないと・・」
「その通りや!」
「そんなことあらへん」
どうやら奥さんのようだ。僕らの後ろへやってきた。
「あんた、そこの台の引き出し!」
辺りが静まり返った。
「はよ出さんかいな!」
奥さんは強引に引き出しを開けた。すると様々な種類のパンがごろごろ出てきた。
「ちょ・・・ちょっと待ってえな!これはずっと前に買ってやな・・・!」
ミタライ先生は小刻みに泣き出した。
「せ、先生。そりゃないやろ。泣くのやめてえな。な。このパンは、パン買うだけ点数が貯まるわけや。
皿がもらえるんや。白い皿が。その点数目当てで」
誰も信用などしてなかった。
「奥さん、このパン全部引き上げますけど・・」
「ええ。みなさんに差し上げてもいいですけど」
とたん、同室者の7人が大歓声を上げた。
しかし僕はパンを見つめていた。
「いえ。それは無理・・・」
「それぐらいいいのでは?」
奥さんが覗き込んだ。
「いえ、その・・・」
「ふん?」
「期限が切れてる・・・」
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