ブレよろ 14

2004年12月28日
「民間の病院のほうが楽ですか?」
「楽ではないけど。厳しい上下関係は大学ほどじゃないな」

するともっと周囲の人間たちまでおとなしくなり、聞き入ってきた。

「仕事は充実してたんでしょう?」
「とにかく受け持ち患者は多かったな。毎日のように入院が入って、重症もあったし」
「じゃあカテーテル検査も何例も?」
「いや。うちは療養病棟だったから」
「え?」
「積極的な治療はなし。ていうか、上の人間がさせてくれなかったよ」
「なんだ。療養病棟か・・・」
「おいおい、なんだよその言い方」
「一般病棟かと」
「療養でだって、学ぶことは多いよ」

彼は一切興味を示さなくなり、食べることに没頭し始めた。


午後は医局へ。残念ながら僕の机はなく、「キャンセル待ち」の状態だった。
病棟へ戻り、コベンの患者のデータを確認だ。

病棟は数人のナースしかいなかった。詰所内での人事も激しく、婦長以外は以前の顔とうってかわっていた。運の悪いことに、その婦長にまた会った。

「パソコン画面で、データの確認ですか?」
「まあね。いっしょに受け持ってる患者だから」
「いろいろ注意されたようですね」
「誰から?もういろんなヤツに言われたから・・」
「野中先生とは仲直りした?」
「仲直り?俺たち、ケンカまでは・・」

確かに医局では仲が悪いという噂があるのは知ってる。たしかに同級生で距離があるのはおかしい。

「野中先生が、また病棟医長にねえ・・」
「また?またって・・」
「以前もやってて、そらもう大変だったんですわ」
「病棟医長って、そんな若い段階からできるのか?」
「だって人がいなかったしね」

それは聞いていた。僕が山の上の病院へ行くときの入局者も少なかったと聞いた。

データはこれといったのはなかった。3日先の検査も入力している。たぶん他のドクターとの
相談も並行してやってるんだろうけど、しっかりしたコベンに当たったものだな。

以前の僕とは大違いだ。

「センセ、いい人見つかりました?」
「あ、俺?」
婦長はいやらしい目つきで見ていた。ちなみに婦長は離婚している。
一般的にナースの離婚率は高い。おそらく、
  ? 仕事が不規則 
→ ? ストレスが多い 
→ ? 1人で稼げる 
→ ? ダンナの悪口
→ ? ダンナとケンカ 
→ ? 1人でも生きていけると判断
→ ? 離婚 

のストラテジーなんだろな。きっと。

「そうよ。噂はあったみたいね」
「民間の病院のナースは、オバハンが大半だったよ」
婦長がむすっと口を尖らせた。
「じゃなくて。その前の病院」
「・・・山城病院?」
「そうそう。そこのナースと」
「いったい誰がそんなウソ話・・・」

確かに噂はあった。だが噂だけだ。僕は今はもうなんとも思ってない。
研修医時代の浮いた噂は誰にでもあるものだ。

「センセ知ってると思うけど。神谷先生、山の上病院から出るってね」
あのドクターは昔、この医局の出身だったらしい。

「出るって・・・転勤?僕は聞いてなかったな」
「買い取りの話は、ご存知ないの?」
「買い取り?病院の?」
「なんかあんまり経営がうまくいってなかったんだって!」
「それは知ってたけど・・・僕がいた頃はそんな話は・・」

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索