ブレよろ 17
2004年12月29日今度は風邪の症状の初診。21歳の女性。
「はい。アーンして」
舌圧子で咽頭を確認。
「発赤は高度・・」
ブツブツと彼はまたカルテ記載に没頭。
「じゃ、薬出しますので」
「先生。よかったら点滴を」
「え?」
患者の希望が一方的に思えたのか、彼は困惑した。
「点滴するほどではないと思います」
「でもしんどいんで・・」
「脈も多くないし。脱水ではないと思うし」
「ダメでしょうか・・」
「はい」
石丸君は妙にイライラを感じながら、処方を書いてナースへ突き渡した。
患者がなんとなく自分の思うとおりにならない。
「次を!」
次は糖尿病の55歳男性だ。ふだんの血糖が300-400mg/dl台でHbA1c 10%台
とコントロールが不良。内服は3種類くらいが組合さっている。インスリンに切り替えるべきだ。
「別にどうもないんやがなあ」
太った男性は猫背ぎみに座り、貧乏ゆすりを始めた。
「入院されて、教育入院されれば・・」
「教育?何を教育するってんねん!」
「いえ。糖尿病に対する・・」
「いつもの薬ちょうだい。今日はも、帰るし」
患者はそそくさと出て行った。
次は60歳女性の頭痛。
「頭痛だけですか」
「左の端が、特に」
「頭のCTを・・」
「え?そんなのせにゃあきませんの?」
「確認のため・・」
「腫瘍かなんか、ありまんの?」
「な、ないと思いますが・・」
「じゃあないわけですの?」
「言い切るわけには・・」
老女は少し狼狽しだした。
「ああ、いつもの先生やったらな・・」
石丸先生のプライドは傷つきっぱなしだ。
「じゃあいつもの先生に診てもらったらいいじゃないですか!!」
辺りがシーンと静まった。隣では消化器のドクターがたんたんと診察しているのが聞こえる。
「今日はじゃあ、そのまま帰られますか!!」
「薬だけ・・・」
「前回と同じで、いいんですね!?はい。看護婦さん?」
ナースは用事で外していた。
「困るなあ。ちょっとー!誰か!」
「はいはいはいはい」
品川君が事務から走ってきた。
「お呼びで?」
「ナースはどこへ?この人、連れてって!!」
「かしこまりました。私が」
石丸君は次のカルテを見た。
「これ・・・隣の消化器外来から?」
「ええ。ハヤブサ先生からですね」
「なになに?胃潰瘍と高血圧の患者さんです。血圧が未だに高く動悸の訴えが・・
そりゃあの先生、消化器だけど。高血圧くらい診れるでしょう?」
「は、はい。そうなのですが・・」
「僕は臨時でやってるんだから」
ナースが戻り、患者を入れてきた。石丸先生はまたイラついた。
「看護婦さん!勝手に入れないでよ!まだカルテ読んでる途中!」
患者はまた外へ出された。
ハヤブサ先生がサッとこちらへやってきた。茶髪で遊び人風のドクターだ。
「よろしく。先生の得意分野でしょ」
「で、ですが・・・自分が診ても同じことかと」
「重症いたりしてね。このあと僕もいろいろ用事もあるし」
石丸先生自身も余裕はなかった。しかし年上からの命令だ。
「はい・・・とりあえず診ます」
院内PHSが鳴る。
「もしもし。石丸」
「病棟です。呼吸不全の方のSpO2 89%に下がってますが」
「酸素を増やしても?」
「そういう指示は・・」
「出したよ。ちゃんと見てる?」
「・・・・・ああ、ありました」
ガチャと電話は切れた。
「ったく・・・・じゃ看護婦さん、高血圧の人、入れてよ!」
52歳の女性。
「なんか頭がカッカカッカするんですねん」
「血圧は180/98mmHgですね」
「家では高くないんやけどな」
「いくらです?」
「さあ160やったかいな」
「高いじゃないですか」
「ところでどうして血圧って高くなるんかいな?」
「え?いつもの先生は・・」
「トドロキ先生」
「もう1人の消化器の先生ですね。説明は?」
「なんもあらへん」
カルテでは、単に病院での血圧が高いから降圧剤を出している、といった感じだ。
重症度の評価もしていない。
「全身精査をしましょう」
「であの、薬はどうなりまんの?」
「今飲んでるのが、タナトリルに、カルデナリンに・・」
「その薬はかなり余ってますねん」
「え?でも今日、切れる計算になってますけど」
「3ヶ月くらい余っとるんとちゃいまっか」
「飲み忘れを・・?」
「しまんねん。どうしても。あっはは」
「笑い事じゃないです!!!」
またシーンと静まり返った。
「はい。アーンして」
舌圧子で咽頭を確認。
「発赤は高度・・」
ブツブツと彼はまたカルテ記載に没頭。
「じゃ、薬出しますので」
「先生。よかったら点滴を」
「え?」
患者の希望が一方的に思えたのか、彼は困惑した。
「点滴するほどではないと思います」
「でもしんどいんで・・」
「脈も多くないし。脱水ではないと思うし」
「ダメでしょうか・・」
「はい」
石丸君は妙にイライラを感じながら、処方を書いてナースへ突き渡した。
患者がなんとなく自分の思うとおりにならない。
「次を!」
次は糖尿病の55歳男性だ。ふだんの血糖が300-400mg/dl台でHbA1c 10%台
とコントロールが不良。内服は3種類くらいが組合さっている。インスリンに切り替えるべきだ。
「別にどうもないんやがなあ」
太った男性は猫背ぎみに座り、貧乏ゆすりを始めた。
「入院されて、教育入院されれば・・」
「教育?何を教育するってんねん!」
「いえ。糖尿病に対する・・」
「いつもの薬ちょうだい。今日はも、帰るし」
患者はそそくさと出て行った。
次は60歳女性の頭痛。
「頭痛だけですか」
「左の端が、特に」
「頭のCTを・・」
「え?そんなのせにゃあきませんの?」
「確認のため・・」
「腫瘍かなんか、ありまんの?」
「な、ないと思いますが・・」
「じゃあないわけですの?」
「言い切るわけには・・」
老女は少し狼狽しだした。
「ああ、いつもの先生やったらな・・」
石丸先生のプライドは傷つきっぱなしだ。
「じゃあいつもの先生に診てもらったらいいじゃないですか!!」
辺りがシーンと静まった。隣では消化器のドクターがたんたんと診察しているのが聞こえる。
「今日はじゃあ、そのまま帰られますか!!」
「薬だけ・・・」
「前回と同じで、いいんですね!?はい。看護婦さん?」
ナースは用事で外していた。
「困るなあ。ちょっとー!誰か!」
「はいはいはいはい」
品川君が事務から走ってきた。
「お呼びで?」
「ナースはどこへ?この人、連れてって!!」
「かしこまりました。私が」
石丸君は次のカルテを見た。
「これ・・・隣の消化器外来から?」
「ええ。ハヤブサ先生からですね」
「なになに?胃潰瘍と高血圧の患者さんです。血圧が未だに高く動悸の訴えが・・
そりゃあの先生、消化器だけど。高血圧くらい診れるでしょう?」
「は、はい。そうなのですが・・」
「僕は臨時でやってるんだから」
ナースが戻り、患者を入れてきた。石丸先生はまたイラついた。
「看護婦さん!勝手に入れないでよ!まだカルテ読んでる途中!」
患者はまた外へ出された。
ハヤブサ先生がサッとこちらへやってきた。茶髪で遊び人風のドクターだ。
「よろしく。先生の得意分野でしょ」
「で、ですが・・・自分が診ても同じことかと」
「重症いたりしてね。このあと僕もいろいろ用事もあるし」
石丸先生自身も余裕はなかった。しかし年上からの命令だ。
「はい・・・とりあえず診ます」
院内PHSが鳴る。
「もしもし。石丸」
「病棟です。呼吸不全の方のSpO2 89%に下がってますが」
「酸素を増やしても?」
「そういう指示は・・」
「出したよ。ちゃんと見てる?」
「・・・・・ああ、ありました」
ガチャと電話は切れた。
「ったく・・・・じゃ看護婦さん、高血圧の人、入れてよ!」
52歳の女性。
「なんか頭がカッカカッカするんですねん」
「血圧は180/98mmHgですね」
「家では高くないんやけどな」
「いくらです?」
「さあ160やったかいな」
「高いじゃないですか」
「ところでどうして血圧って高くなるんかいな?」
「え?いつもの先生は・・」
「トドロキ先生」
「もう1人の消化器の先生ですね。説明は?」
「なんもあらへん」
カルテでは、単に病院での血圧が高いから降圧剤を出している、といった感じだ。
重症度の評価もしていない。
「全身精査をしましょう」
「であの、薬はどうなりまんの?」
「今飲んでるのが、タナトリルに、カルデナリンに・・」
「その薬はかなり余ってますねん」
「え?でも今日、切れる計算になってますけど」
「3ヶ月くらい余っとるんとちゃいまっか」
「飲み忘れを・・?」
「しまんねん。どうしても。あっはは」
「笑い事じゃないです!!!」
またシーンと静まり返った。
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