ブレよろ 23
2004年12月29日「でもここ、これは肺の下のほうで撮った写真なんですけど・・」
「白い?」
「そうそう!白い。ふつうは黒いのに」
「そうでんな」
「白いといってもね、この影は肺炎とは違うわけよ」
「ほほう、肺炎ではないと?」
「肺が固くなったみたいなのよ」
「ほう?」
「年取ったら、肺はだれでも固くなるけどね。その度合いが強いわけ」
「ほうほう」
「固いと肺が膨らみにくいから、それで息切れがする」
「ほう」
「だから無理な運動は避けたほうがいい」
ワイフは何度もうなずいていた。
「そうやそうや。こんな説明が聞きたかったんや!なるほど!うんうん」
学生も満足して席へ戻った。
「今は様子みながら、助教授の外来へ・・・なんでしたらここでも」
「ほ、ホンマでっか?」
「どうぞいらしてください」
ワイフが頭を下げた。
「これから先生、よろしゅうたのんます」
患者・家族は満足げに去っていった。
島先生はかなり不服そうだ。
「先生、知りませんよ」
「ハア?何がだ?」
「助教授の大事な患者ですよ、今の。大手の不動産で」
「関係ねえだろ?ま、不動産は嫌いだけど」
「いいのかな・・」
「学生さん、あれがホントのインフォームド・コンセントだよ」
島先生は何度も頭をひねっていた。
「ちょっと違うかな?」
「島くん。だまんなさい。学生さん、僕は外来をまだ数年しかしたことないけど、患者さんの気持ちにシンクロするのが大事なんだよ」
「同調ですか?」
「そうだよ。同情するのとは違うぞ。ま、島君は≪どうしょう≫だけどな」
「何ですか今の。聞きづてなりません」
「君みたいに、上司に暴力振るっちゃおしまいだよ。三品先生から聞いた」
「学生さんの前で、やめてください」
「何がオイ、空手やってた、だよ。ライトセーバーでドレナージするぞ!」
僕はふりかぶって、刀をかまえる振りをした。と、いきなり左肩を激痛が襲った。
「うわ!」
周りに声は漏れず、僕は体勢を立て直した。
あのときの痛みだ。左には誰も立っていない。
またあれを思い出した。そしてまたブルーに。
この痛みがある限り、過去の連鎖した忌まわしい思い出は離れそうもない。
さっきのセリフで学生はかなり受けていた。島先生は切れてしまい、廊下へダッシュした。
「あああ。ダッシュしたよアイツ・・。ダッシュ、ダッシュ、バンバンババン!」
この言葉は大学で一時、流行した。
島先生が消えたことで堅苦しい雰囲気がなくなり、学生もリラックスムードになった。
男子学生が声をかけてきた。
「僕らも見てるとわかりました。患者さんはきちんと理解してたし・・」
「うーん。どうかな。でも、単純な言葉で伝えないとね」
「単純・・」
「シンプルに。〔改善〕は〔よくなってる〕、〔炎症反応は低下〕は〔数字は下がってる〕と表現」
「なるほど」
「この白衣がいけなんだよ。緊張のもとだ。でも・・」
「・・・・・」
「白衣がなかったらタダの人。そこまでは思われたくないからね」
学生たちのペンの動きが止んだ。
「白い?」
「そうそう!白い。ふつうは黒いのに」
「そうでんな」
「白いといってもね、この影は肺炎とは違うわけよ」
「ほほう、肺炎ではないと?」
「肺が固くなったみたいなのよ」
「ほう?」
「年取ったら、肺はだれでも固くなるけどね。その度合いが強いわけ」
「ほうほう」
「固いと肺が膨らみにくいから、それで息切れがする」
「ほう」
「だから無理な運動は避けたほうがいい」
ワイフは何度もうなずいていた。
「そうやそうや。こんな説明が聞きたかったんや!なるほど!うんうん」
学生も満足して席へ戻った。
「今は様子みながら、助教授の外来へ・・・なんでしたらここでも」
「ほ、ホンマでっか?」
「どうぞいらしてください」
ワイフが頭を下げた。
「これから先生、よろしゅうたのんます」
患者・家族は満足げに去っていった。
島先生はかなり不服そうだ。
「先生、知りませんよ」
「ハア?何がだ?」
「助教授の大事な患者ですよ、今の。大手の不動産で」
「関係ねえだろ?ま、不動産は嫌いだけど」
「いいのかな・・」
「学生さん、あれがホントのインフォームド・コンセントだよ」
島先生は何度も頭をひねっていた。
「ちょっと違うかな?」
「島くん。だまんなさい。学生さん、僕は外来をまだ数年しかしたことないけど、患者さんの気持ちにシンクロするのが大事なんだよ」
「同調ですか?」
「そうだよ。同情するのとは違うぞ。ま、島君は≪どうしょう≫だけどな」
「何ですか今の。聞きづてなりません」
「君みたいに、上司に暴力振るっちゃおしまいだよ。三品先生から聞いた」
「学生さんの前で、やめてください」
「何がオイ、空手やってた、だよ。ライトセーバーでドレナージするぞ!」
僕はふりかぶって、刀をかまえる振りをした。と、いきなり左肩を激痛が襲った。
「うわ!」
周りに声は漏れず、僕は体勢を立て直した。
あのときの痛みだ。左には誰も立っていない。
またあれを思い出した。そしてまたブルーに。
この痛みがある限り、過去の連鎖した忌まわしい思い出は離れそうもない。
さっきのセリフで学生はかなり受けていた。島先生は切れてしまい、廊下へダッシュした。
「あああ。ダッシュしたよアイツ・・。ダッシュ、ダッシュ、バンバンババン!」
この言葉は大学で一時、流行した。
島先生が消えたことで堅苦しい雰囲気がなくなり、学生もリラックスムードになった。
男子学生が声をかけてきた。
「僕らも見てるとわかりました。患者さんはきちんと理解してたし・・」
「うーん。どうかな。でも、単純な言葉で伝えないとね」
「単純・・」
「シンプルに。〔改善〕は〔よくなってる〕、〔炎症反応は低下〕は〔数字は下がってる〕と表現」
「なるほど」
「この白衣がいけなんだよ。緊張のもとだ。でも・・」
「・・・・・」
「白衣がなかったらタダの人。そこまでは思われたくないからね」
学生たちのペンの動きが止んだ。
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