ブレよろ 24

2004年12月29日
僕は医局へ呼び出された。医局長の板垣先生が待っていた。

「どうです?呼吸器外来は?」
「ええまあ、ふつうの外来の感覚でやってます」
「ま、それもいいでしょう。循環器外来も時々お願いしても?」
「ええ」
「助かる。人手が少ないもんでね」

この大学へ戻る前、僕は見せしめにされるとか言われていたが。
どうやら徒労の悩みだったようだ。思ったよりすごしやすい。

医局長は横目で出口をチラホラ見ている。誰か入ってくるのか?

「いいですか、先生」
「?」
「そろそろ先生の、悪い癖が出てきてないですか?」
「癖?」
「具体的には言いませんが、患者さんとのトラブルのもとですよ」
「島先生が何か言ったんでしょう・・」
「うん、まあそれもある」

それがすべてだろうに。

「大学病院では最近、医療ミスが叫ばれている。内部告発も増えたし、
患者の地位も変わりつつあります」

このオッサンは、何が言いたいんだ?

「はみ出した行動は禁物ですよ。ユウキ君」
「・・・・・」
「大学医局は、きちんとした秩序のもとで機能していかないと、?教育、?臨床・・」
「?研究!」
「そう。でも君、なんでも学生さんに?封建、とか教えてるそうじゃないか?」
「ギャグです」
「あのね。シャレになってないんだ。ホースがどうのこうの・・・こういうことだと困るよ!」
「だから、フォースですって!」

島先生が入ってきた。こいつを待ってたのか。

「島先生とは今後、仲良くやるように。いいですか?」
「・・・・・」
「返事は?」
「おい島くん、返事!」
「おいおい君だよ!君がいけないんだ!」

僕は無言で医局を出た。ところが医局長は廊下まで追っかけてきた。

「待ちなさい、ユウキくん!」
「はいはい」
「いったいどうしたんだ?そんな態度!」
「別に・・」
「うちの医局に不満があるのか?何なんだい?教えてほしいな」
「・・・・・」
「そんなことじゃ、どんな組織でも生きていけないぞ!」

僕は病棟詰所へ。コベンは一生懸命点滴をミックスしている。

「おう。夕方の注射当番?」
「はい・・」
「今のうちに、うちあわせを」
「注射当番が終わってから、お願いします」
「マジ?じゃああと・・」
「2時間か、3時間かもしれません」
「・・・・・俺もやるよ」
「えっ?手伝っていただけるんですか?」
「今日はタマタマだよ」
「では、これとこれをお願いします」
「あ、ああ・・これもやるよ」
「これは私がします。練習したいので」
「なな、なるへそ・・」

注射当番の仕事も終わり、打ち合わせ。

「先生も患者、増えてきたね」
「でしょう?今日1人入ったしね」

なんかどこか、タメ口なんだよな・・。
TMRの〔♪敬語を無視するいまどきの強さ下さい〕、だよな・・。

「今日入ったのは・・不明熱?いやだなあ・・」
「センセ、主治医はあたしですよ。フフ」
次第に笑顔が多くなってきた。こんなに忙しいにもかかわらず。

こうやって女医はだんだんバンコラン、いや、晩婚になってくるんだよなあ。

しかし・・・。

このコ、もうちょっと痩せてればなあ・・・。

「じゃ、侵襲性のない検査から入れることにしよう」
「胃カメラ、頭部MRIに・・」
「いきなり胃カメラときたか。しんどいだろう?」
「あたし受けたことありますけど、すぐ終わりましたよ」
「なんでその年で受けてんだよ・・」

あとで知ったが、胸やけがしたからだそうだ。
確かに肥満は逆流性食道炎の原因となりうる。
胃酸の逆流によって咳まで出ることもある。

「じゃ、先生はどうお考え?」
「あのな・・。ま、いいや。腹部超音波、心臓超音波・・」
「心臓の病気で熱が出るんですか?」
「心膜炎、心内膜炎、左房粘液腫、心筋炎・・」
「まってください。1つずつ!」
「心膜炎・・本見りゃいいだろ?」
「しん・・・・・まく・・・・えん、と。はい!次」

彼女は口呼吸で荒っぽくフーフー息遣いしていた。

僕は用事があるため、早めに病院を出た。

松田先生夫婦と、外で食事する予定だったのだ。

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