ブレよろ 38

2004年12月29日
茶髪の若い女性事務員がコンコンと入ってきた。
「先生。患者様から苦情が」
「苦情?」
「料金が高すぎると」
「料金がなんて・・そんな」

そんなことを言われたのは初めてだ。

「3割負担の方なんです」
「医療制度が変わって、負担が増えたのか・・」
「ホルターは1500点。3割だと4500円。それに採血・・」
「採血もけっこう高いの?」
「採血が割と高いのです。スクリーニングの検査の上に、BNP、HbA1cまで・・」
「どれも必要なんだけどなあ・・」
「それに初診料。全部で9000円ぐらいします」
「高いな・・確かに。でもどれも必要なんだけどな」
「どうしましょうか」
「ど、どうしましょうかって・・・採血はしたし」
「項目を減らしてください」

なんで事務からそんなこと言われなきゃいけないんだ・・。
ていうか、患者から値段の文句を言われるとは・・。心外だ。
病気をはっきりさせたくないのかよ。

確かにサラリーマンの3割負担はきつい。このせいで、その層の
受診が急激に減ってしまった。国は不景気でマンパワーが必要な
状況なのに・・。病人は早く死ねというのが、国の答えなんだろう。

結局患者は採血検査の支払いを拒否、検体は捨てられた。

「4歳の風邪です。昨日が初診、今日は2日目」
事務員がカルテを持ってきた。
「しょ、しょうに?小児は僕は・・」
「お願いします。熱は38.4℃です」

小児なんて、ごくまれにしか診た事ない。ここのクリニックは「内科」だろう?

「小児はちょっと・・」
そう言ってる間に、親と子供が入ってきた。女の子は鼻がズルズル。
まあ、風邪なんだろうな・・・。
昨日は感冒薬が処方。抗生剤はなし。座薬は出てた。
でも昨日薬もらって、今日も受診か。薬が効いてないと早合点するのはどうか。

「すみませんが、まだ昨日薬出たばっかりなんで・・」
「でも今日まだ8度あるし」
親はかなり不満げだった。
「抗生剤、出そうかな・・」
「先生は、昨日≪肺炎のケがある≫と」
「肺炎の、ケ?」
「レントゲンを見て言ってましたよ」

レントゲン・・・。確認したが、とても写真とはいえないひどい出来だった。
いい機械で撮影したわけではなさそうだ。それとも撮影の設定が悪いのか。
とにかくこの写真では肺炎どころか、心臓さえも見当たらない。

レントゲンのボタンはナースに押させているし。これがバレたらたちまち廃業なんだぞ。

松田先生、こんな診療やってるのか・・。僕は唖然とした。
僕よりはるか年上のドクターだ。会話的にも大人だし、分別も僕よりずっとしっかりしてる。

だがこの診療は・・・。医療ミスのレベルを超えている。ていうかそれ以前の問題だ。

最近の学会でも何でもそうなんだが、ハイレベルにこだわるあまり、森を見据えた検討しかやってない。木々は違うというのに。森だけで結論を下す。それも製薬会社の言いなりだ。

それを彼らはEBMと呼ぶ。Evidence-Based -Medicine。根拠を基盤とした医学。

僕にとっては『ええかげんに バカな マネはやめろ』だ。

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