ブレよろ 43
2004年12月29日「ユウキ、大丈夫!全部オレにまかせろって!」
バーの≪アカンティ≫で、僕と松田先生は酔っていた。
「その患者をみんな、オレのところへ持ってくりゃあ、それでいいんだよ!」
松田先生は完全に〔商売人〕だった。目を見れば分かる。
「そうすりゃさ!大学から患者を救い出して、俺がひきつづき診てやる!」
松田先生、あんな診療して・・。これって、最初から仕組まれた罠なんだろうか。
「だからあと2週間だろ?そろそろ申し送らないとな!」
これでは患者に迷惑がかかるばかりだ・・。
「あとはもう会えない患者の自宅に電話だ!」
誰にも任せられない・・。
「おい!聞いてんのかよ!」
「・・・・・松田先生」
「あ?」
「患者はすべて・・」
「おうおう、そのままフォローするぞ!」
「僕が連れて行きます」
「なに?もしもーし!」
「僕の新しい職場まで、連れて行きます」
「うそだろ?無理無理!そんなの!いいか。大学とオレのクリニックは近い。だからいけてた。でも
真田病院は数キロ先だ!」
「地下鉄では2駅です」
「おいおい・・・・まさかおい!俺から患者をうば・・」
彼の顔は青ざめた。
「うっぷ」
「松田先生!」
彼は酔っ払いすぎて、足腰が立ちにくくなった。
意識も朦朧なので、僕はいつものように自宅へ電話した。
タクシーは松田先生の自宅の横に停まった。
「松田先生?松田先生?」
「うー・・・」
ダメだ。今回は起きない。
入り口が開き、松田ワイフが走ってきた。
「すみません!」
僕らは先生をベッドまで運び込んだ。
彼は完全に熟睡していた。
「では、僕はこの辺で・・」
「あ。タクシー呼びます」
彼女は手際よくタクシーに電話してくれた。
「それまで紅茶でも」
松田先生の家。彼は7000万を30年ローンで借りている。
その上の開業だ。親の援助がかなりあったそうだ。
まあローンだとしても自分の家だ。後世に残せる。
彼はいいなあ。守るものがある。
彼のワイフはいちだんと輝きを増していた。
女というのは不思議なもので、不幸だったり落ち込んだりすると一段と・・。
「あの、いいですか?」
彼女は僕の正面に座った。
「どうでしょうか。主人は、きちんとクリニックを・・」
「え。ええ!さ、さすが松田先生です!抜かりないと思います!」
「いいえ。主人のことですから。どうか先生、悪いとこ直してやってください」
「自分はあと2週間で転勤・・」
「先生。主人から聞きましたけど・・・」
「え?」
「先生の同級生が結婚されたってね。あの・・女医さん?」
「ご存知なんですか」
「主人が以前、指導したことのある先生なんですよ」
そうだ。グッチのオーベンは松田先生だった。
「グ・・・彼女が結婚したのは人づてに聞きました」
「招待状は?」
「来てません」
「常識はずれなお方ね」
「さあ・・・僕はそこまで嫌われてたのかと」
「まさか。先生みたいな魅力のあるお方が」
「みりょく?初めて言われましたよ」
一瞬、彼女の胸元の線が気になった。ヘンな想像をしてしまった。
「ねえ、先生・・・」
彼女は立ち上がり、僕のすぐ横にまで迫ってきた。
「はわわ・・・」
「先生。彼女に、会いたいの・・?」
「はひひ・・・」
「忘れられないの・・・?」
「ふ、ふふ・・・」
こ、このまま近づいたら・・。
「会えるわ。思い通りになる」
「なな、なにをでしか・・・?」
「先生は幸せになれるわ・・・」
「ふ、ふふ・・・」
「よかったら、いい?」
「なな、なに・・・・」
僕は震え続けた。期待と不安が入り混じるとは、このことだ。
松田先生。僕は悪人です・・・。
バーの≪アカンティ≫で、僕と松田先生は酔っていた。
「その患者をみんな、オレのところへ持ってくりゃあ、それでいいんだよ!」
松田先生は完全に〔商売人〕だった。目を見れば分かる。
「そうすりゃさ!大学から患者を救い出して、俺がひきつづき診てやる!」
松田先生、あんな診療して・・。これって、最初から仕組まれた罠なんだろうか。
「だからあと2週間だろ?そろそろ申し送らないとな!」
これでは患者に迷惑がかかるばかりだ・・。
「あとはもう会えない患者の自宅に電話だ!」
誰にも任せられない・・。
「おい!聞いてんのかよ!」
「・・・・・松田先生」
「あ?」
「患者はすべて・・」
「おうおう、そのままフォローするぞ!」
「僕が連れて行きます」
「なに?もしもーし!」
「僕の新しい職場まで、連れて行きます」
「うそだろ?無理無理!そんなの!いいか。大学とオレのクリニックは近い。だからいけてた。でも
真田病院は数キロ先だ!」
「地下鉄では2駅です」
「おいおい・・・・まさかおい!俺から患者をうば・・」
彼の顔は青ざめた。
「うっぷ」
「松田先生!」
彼は酔っ払いすぎて、足腰が立ちにくくなった。
意識も朦朧なので、僕はいつものように自宅へ電話した。
タクシーは松田先生の自宅の横に停まった。
「松田先生?松田先生?」
「うー・・・」
ダメだ。今回は起きない。
入り口が開き、松田ワイフが走ってきた。
「すみません!」
僕らは先生をベッドまで運び込んだ。
彼は完全に熟睡していた。
「では、僕はこの辺で・・」
「あ。タクシー呼びます」
彼女は手際よくタクシーに電話してくれた。
「それまで紅茶でも」
松田先生の家。彼は7000万を30年ローンで借りている。
その上の開業だ。親の援助がかなりあったそうだ。
まあローンだとしても自分の家だ。後世に残せる。
彼はいいなあ。守るものがある。
彼のワイフはいちだんと輝きを増していた。
女というのは不思議なもので、不幸だったり落ち込んだりすると一段と・・。
「あの、いいですか?」
彼女は僕の正面に座った。
「どうでしょうか。主人は、きちんとクリニックを・・」
「え。ええ!さ、さすが松田先生です!抜かりないと思います!」
「いいえ。主人のことですから。どうか先生、悪いとこ直してやってください」
「自分はあと2週間で転勤・・」
「先生。主人から聞きましたけど・・・」
「え?」
「先生の同級生が結婚されたってね。あの・・女医さん?」
「ご存知なんですか」
「主人が以前、指導したことのある先生なんですよ」
そうだ。グッチのオーベンは松田先生だった。
「グ・・・彼女が結婚したのは人づてに聞きました」
「招待状は?」
「来てません」
「常識はずれなお方ね」
「さあ・・・僕はそこまで嫌われてたのかと」
「まさか。先生みたいな魅力のあるお方が」
「みりょく?初めて言われましたよ」
一瞬、彼女の胸元の線が気になった。ヘンな想像をしてしまった。
「ねえ、先生・・・」
彼女は立ち上がり、僕のすぐ横にまで迫ってきた。
「はわわ・・・」
「先生。彼女に、会いたいの・・?」
「はひひ・・・」
「忘れられないの・・・?」
「ふ、ふふ・・・」
こ、このまま近づいたら・・。
「会えるわ。思い通りになる」
「なな、なにをでしか・・・?」
「先生は幸せになれるわ・・・」
「ふ、ふふ・・・」
「よかったら、いい?」
「なな、なに・・・・」
僕は震え続けた。期待と不安が入り混じるとは、このことだ。
松田先生。僕は悪人です・・・。
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