ブレよろ 44
2004年12月29日「いっしょに、行きましょう」
彼女は僕の手をつかんだ。
「はひ?う、うちですか?」
僕はとっさにわけのわからない返事をした。
「うちは、ここじゃないの。そうでないところ・・」
「そそそそそ!」
それってまさしく・・・。
「あ、タクシーが来たわ」
彼女は微かな音に気づいたようだ。
「行きましょう」
いきなり現実的な声に戻った。
僕は命ずるまま、彼女と車に乗り込んだ。
でもなんて人だ。人を強引に・・。
こんな女性は、映画のシャロン・ストーン以来だ。
じゃあ僕は、マイケル・ダグラスか?
きき、危険なジョージ・・。
彼女は知らない町名を告げ、車は走り出した。
彼女は携帯でなにやら話している。
何なんだろうか。ホテルの空き部屋連絡か?
そんなのしないか、ふつう。
ダメだ。こんなの・・。あってはならない。
だが彼女は男の理性を吹き飛ばせるほどの美しさがあった。
誰か、助けてください・・・!
「ここで降りるわよ」
「ははっ」
僕は自分から降りた。
ダメだ。僕は自己管理などできないんだ。
そんな人間に、糖尿病のコントロールを指導する資格なんか、ない。
しかしここは・・・薄暗い路地のようだ。車1台がやっと通れるくらいの。
しかも暗い道端には、猫・犬・・などのほか、椅子に座ってこちらを睨んでる人間がみえる。
暗闇に目が慣れ、周囲の人間が1人、また1人と見えてきた。
待て待て、「ウォーリーを探せ」などやってる場合じゃない。でもホテルなどない。
出口まで来たら、断ろう。
「・・・ここ!」
「へっ?」
ここは・・・人の家じゃないか?木造でかなり古い・・。
なんなのか。セカンドハウスなのか?穴場なのか?
確かなのは、これが現実ということだけだ。
外のピンポンを押すと、中からおそるおそる戸がギチギチと開いた。
無言のオバサンは、無愛想に部屋へ案内した。
「は、入るんですか」
「そうよ」
松田ワイフは後ろから2本指で、強引に僕の背中を押した。
やがて僕らはオバサンと向かい合った。
「で・・・話は?」
「はなし?」
松田ワイフが、いきなり以下のように喋りはじめた。
「入信する意思ありです」
「え?なに?にゅうしん?」
汚いエプロンをしたオバサンは、初めてニンマリとした笑顔を見せた。
魚のにおいがしてクサイ。
「そうかい。名前は・・・」
「主人の後輩の、ユウキさんです」
「ご主人は、まだ入信を?」
「まだぜんぜん・・」
「かわいそうにのう」
どっちがだ?
そうか。だいたいわかってきたぞ。この人たちは、宗教団体だ。1人ずつ連れてきて、
その宗教に入信させるんだろう。それにしても・・・
臭い部屋だなあ・・。オバサンはフーハーしながら長い小冊子を僕に手渡した。
「じゃ、最初から読むからね」
「なにこれ?」
開くとお経が延々と載っている。
「これをいっしょに読む。ふり仮名は書いてある」
「ふりがな・・」
「昔はふり仮名すらなかった」
「僕は入信するともなんとも、言ってませんよ!」
松田ワイフは怒ったような形相で眉をしかめていた。
「ユウキ先生。先生を救いたいんです」
「救う?僕は困ってなど・・」
「主人から聞いた話・・・私、吐きそうになりましたもの」
「わしも聞いた」
オバサンはあぐらをかいた。
「あんたは女のせいで、道を外してきておる」
「余計なお世話だ!クズ!」
「それだ、それ。あんたのいけないところ」
なんか久しぶりに言われたな。
「色欲に走るものは、自らの手によってその色・・」
「なにがイロヨクだ?スカタン!」
「ま、よろしい。お経の前に・・・この宗教の始まりについて話しましょう」
「いらねえよ、そんなの!」
「あんたが新しい職場でやっていく前に、どうしても必要なんだ!」
僕はあきれたが、彼らは本気モードだ。
彼女は僕の手をつかんだ。
「はひ?う、うちですか?」
僕はとっさにわけのわからない返事をした。
「うちは、ここじゃないの。そうでないところ・・」
「そそそそそ!」
それってまさしく・・・。
「あ、タクシーが来たわ」
彼女は微かな音に気づいたようだ。
「行きましょう」
いきなり現実的な声に戻った。
僕は命ずるまま、彼女と車に乗り込んだ。
でもなんて人だ。人を強引に・・。
こんな女性は、映画のシャロン・ストーン以来だ。
じゃあ僕は、マイケル・ダグラスか?
きき、危険なジョージ・・。
彼女は知らない町名を告げ、車は走り出した。
彼女は携帯でなにやら話している。
何なんだろうか。ホテルの空き部屋連絡か?
そんなのしないか、ふつう。
ダメだ。こんなの・・。あってはならない。
だが彼女は男の理性を吹き飛ばせるほどの美しさがあった。
誰か、助けてください・・・!
「ここで降りるわよ」
「ははっ」
僕は自分から降りた。
ダメだ。僕は自己管理などできないんだ。
そんな人間に、糖尿病のコントロールを指導する資格なんか、ない。
しかしここは・・・薄暗い路地のようだ。車1台がやっと通れるくらいの。
しかも暗い道端には、猫・犬・・などのほか、椅子に座ってこちらを睨んでる人間がみえる。
暗闇に目が慣れ、周囲の人間が1人、また1人と見えてきた。
待て待て、「ウォーリーを探せ」などやってる場合じゃない。でもホテルなどない。
出口まで来たら、断ろう。
「・・・ここ!」
「へっ?」
ここは・・・人の家じゃないか?木造でかなり古い・・。
なんなのか。セカンドハウスなのか?穴場なのか?
確かなのは、これが現実ということだけだ。
外のピンポンを押すと、中からおそるおそる戸がギチギチと開いた。
無言のオバサンは、無愛想に部屋へ案内した。
「は、入るんですか」
「そうよ」
松田ワイフは後ろから2本指で、強引に僕の背中を押した。
やがて僕らはオバサンと向かい合った。
「で・・・話は?」
「はなし?」
松田ワイフが、いきなり以下のように喋りはじめた。
「入信する意思ありです」
「え?なに?にゅうしん?」
汚いエプロンをしたオバサンは、初めてニンマリとした笑顔を見せた。
魚のにおいがしてクサイ。
「そうかい。名前は・・・」
「主人の後輩の、ユウキさんです」
「ご主人は、まだ入信を?」
「まだぜんぜん・・」
「かわいそうにのう」
どっちがだ?
そうか。だいたいわかってきたぞ。この人たちは、宗教団体だ。1人ずつ連れてきて、
その宗教に入信させるんだろう。それにしても・・・
臭い部屋だなあ・・。オバサンはフーハーしながら長い小冊子を僕に手渡した。
「じゃ、最初から読むからね」
「なにこれ?」
開くとお経が延々と載っている。
「これをいっしょに読む。ふり仮名は書いてある」
「ふりがな・・」
「昔はふり仮名すらなかった」
「僕は入信するともなんとも、言ってませんよ!」
松田ワイフは怒ったような形相で眉をしかめていた。
「ユウキ先生。先生を救いたいんです」
「救う?僕は困ってなど・・」
「主人から聞いた話・・・私、吐きそうになりましたもの」
「わしも聞いた」
オバサンはあぐらをかいた。
「あんたは女のせいで、道を外してきておる」
「余計なお世話だ!クズ!」
「それだ、それ。あんたのいけないところ」
なんか久しぶりに言われたな。
「色欲に走るものは、自らの手によってその色・・」
「なにがイロヨクだ?スカタン!」
「ま、よろしい。お経の前に・・・この宗教の始まりについて話しましょう」
「いらねえよ、そんなの!」
「あんたが新しい職場でやっていく前に、どうしても必要なんだ!」
僕はあきれたが、彼らは本気モードだ。
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