ブレよろ 46
2004年12月29日キンキチームの2人は昼食を終えて、屋上で今日3回目のタバコ・タイムだ。
「トドロキ先輩」
「ん?」
「今度1人、新入りが入るんでしょう。MRからの情報は?」
「聞いた。大したことない」
「そうですか。よかった」
「オレの予想では1ヶ月だな。ここ2年間、20人もの医者が辞めてったが、そいつも同じ部類とみた」
「臆病者ですか」
「2年目で登院拒否をし、3年目で医療訴訟にも関わったようだ。示談らしいが」
「筋金入りですね」
「今度も2人でつぶそう」
「それより先輩。あの2人もとっとと潰しましょうよ」
トシキ先生とシロー先生のことだ。
おねだりするようにハヤブサの声は甘えていた。
「あいつらが必死でやってるから、俺たちは楽ができている」
「先輩。褒めるんですか?あいつらを!」
「そうじゃない。もう破綻しかけてるだろ。コベンのシローをみろ」
「2人とも実力が違いすぎるでしょ」
「だいたい研修医あがりで、この病院に来るのが間違っている」
「ま、今度1人増えるから、シローは淘汰されるでしょうね」
「あーあ、まだ病棟全部回ってないな・・」
「お目当てのコの病棟は行かれます?」
「もう回った。あとはオバサン主体の病棟だけだ。きょうはもうやめよ!」
彼らは同時にタバコを捨て、引き上げにかかった。
まだ昼の3時だ。だが統率のとれてない民間病院では途中退室など
よくある話だ。
トシキ先生は臨時でやってきた老人ホームの患者を診察していた。
「車椅子のままでいいですよ」
90歳になる男性は片麻痺があるのか、少し右側に傾きぎみで座っている。
「いつ、倒れたので?」
トシキ先生は傍らのナースに話しかけた。
「私は担当ではありませんでしたので・・」
「そこにある看護記録は?」
トシキ先生は記録をつかみとり、しげしげと眺めた。
「昨日らしいですね」
「はあ・・」
「転倒してもう16時間も経ってる」
トシキ先生は患者を座らせたまま、額にナート(縫合)を施している。
「頭部CTを撮影します。レントゲンも」
「大丈夫でしょうか」
「なんで分かるんですか?」
彼はこういった、ほったらかしの診療・看護が大嫌いだった。だが何よりも無責任な発言が憎い。
怒りがあきらめに変わりそうな雰囲気の中、彼はまだそういう感情は持ち合わせていた。
操作室では、ピピピ・・・と頭部CTの断層画面が映し出されていく。わずか15秒ともかからない速さ。
「技師さん」
「はい?」
中年技師は立ち上がろうとしたところ、不意に立ち止まった。
「若い子らとキャーキャー騒ぐのもいいが。外来で待たされてる患者さんのことも考えてほしいな」
「はあ・・・注意しときます」
「あなたもですよ」
技師は無視したまま、患者の介助へと向かった。
外来のシャーカステンで、トシキ先生はざっとフィルムに目を通した。
「・・・・・出血がわずかだが、ある」
後頭葉の中心部に、縦に白い線が入っている。
「内部のテント部からの出血かな。骨折はない」
老人ホームの婦長が入ってきた。
「どうなんでしょうか?」
「出血があります。入院を」
「ええっ?」
「脳内か・・おそらく小脳テント付近からの出血です」
「じゃあ、それが先にあって、転倒した・・?」
「いや。転倒してからできたものでしょう」
「でも骨は異常ないんでしょう?」
「転倒して頭蓋骨が正常でも、内部に出血することはあります」
「は!はは!」
婦長は興奮していた。
「か、家族の方にはなんと・・」
「まだ来てません。来られたら、両方の可能性があると説明します」
「で、できればぁ。出血が先にあって、そのせいで転倒したと・・」
「僕に指示をするつもりですか?」
「うう・・」
トシキ先生はクールに引き上げた。
「トドロキ先輩」
「ん?」
「今度1人、新入りが入るんでしょう。MRからの情報は?」
「聞いた。大したことない」
「そうですか。よかった」
「オレの予想では1ヶ月だな。ここ2年間、20人もの医者が辞めてったが、そいつも同じ部類とみた」
「臆病者ですか」
「2年目で登院拒否をし、3年目で医療訴訟にも関わったようだ。示談らしいが」
「筋金入りですね」
「今度も2人でつぶそう」
「それより先輩。あの2人もとっとと潰しましょうよ」
トシキ先生とシロー先生のことだ。
おねだりするようにハヤブサの声は甘えていた。
「あいつらが必死でやってるから、俺たちは楽ができている」
「先輩。褒めるんですか?あいつらを!」
「そうじゃない。もう破綻しかけてるだろ。コベンのシローをみろ」
「2人とも実力が違いすぎるでしょ」
「だいたい研修医あがりで、この病院に来るのが間違っている」
「ま、今度1人増えるから、シローは淘汰されるでしょうね」
「あーあ、まだ病棟全部回ってないな・・」
「お目当てのコの病棟は行かれます?」
「もう回った。あとはオバサン主体の病棟だけだ。きょうはもうやめよ!」
彼らは同時にタバコを捨て、引き上げにかかった。
まだ昼の3時だ。だが統率のとれてない民間病院では途中退室など
よくある話だ。
トシキ先生は臨時でやってきた老人ホームの患者を診察していた。
「車椅子のままでいいですよ」
90歳になる男性は片麻痺があるのか、少し右側に傾きぎみで座っている。
「いつ、倒れたので?」
トシキ先生は傍らのナースに話しかけた。
「私は担当ではありませんでしたので・・」
「そこにある看護記録は?」
トシキ先生は記録をつかみとり、しげしげと眺めた。
「昨日らしいですね」
「はあ・・」
「転倒してもう16時間も経ってる」
トシキ先生は患者を座らせたまま、額にナート(縫合)を施している。
「頭部CTを撮影します。レントゲンも」
「大丈夫でしょうか」
「なんで分かるんですか?」
彼はこういった、ほったらかしの診療・看護が大嫌いだった。だが何よりも無責任な発言が憎い。
怒りがあきらめに変わりそうな雰囲気の中、彼はまだそういう感情は持ち合わせていた。
操作室では、ピピピ・・・と頭部CTの断層画面が映し出されていく。わずか15秒ともかからない速さ。
「技師さん」
「はい?」
中年技師は立ち上がろうとしたところ、不意に立ち止まった。
「若い子らとキャーキャー騒ぐのもいいが。外来で待たされてる患者さんのことも考えてほしいな」
「はあ・・・注意しときます」
「あなたもですよ」
技師は無視したまま、患者の介助へと向かった。
外来のシャーカステンで、トシキ先生はざっとフィルムに目を通した。
「・・・・・出血がわずかだが、ある」
後頭葉の中心部に、縦に白い線が入っている。
「内部のテント部からの出血かな。骨折はない」
老人ホームの婦長が入ってきた。
「どうなんでしょうか?」
「出血があります。入院を」
「ええっ?」
「脳内か・・おそらく小脳テント付近からの出血です」
「じゃあ、それが先にあって、転倒した・・?」
「いや。転倒してからできたものでしょう」
「でも骨は異常ないんでしょう?」
「転倒して頭蓋骨が正常でも、内部に出血することはあります」
「は!はは!」
婦長は興奮していた。
「か、家族の方にはなんと・・」
「まだ来てません。来られたら、両方の可能性があると説明します」
「で、できればぁ。出血が先にあって、そのせいで転倒したと・・」
「僕に指示をするつもりですか?」
「うう・・」
トシキ先生はクールに引き上げた。
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