ブレよろ 48
2004年12月29日その頃僕は、大学医局の荷物出しも終えて、あと4日での退職となっていた。
退職後はすぐに新天地での勤務となる。
外来では、患者から次々と質問にあった。
『先生、どこへ行きますの?』
『また先生が交代ですか?』
『せっかくいい先生に出会えたと思ったのに・・』
コベンへの指導も終わり、医局を出た。
バッタリ助教授に出くわした。
「今日で終わりか?」
「あと3日です」
「真田病院か・・。ついていけるのか?」
「さあ」
「特別な技術がよほどあるか、コネがあるか。そうでないと、1本釣りは生きていけんぞ」
「技術ですか・・」
「君は心カテと気管支鏡ができるくらいだろ?」
「ええ」
「認定医とかさえも持ってない」
「ええ」
「何を売りにするんだ?」
僕はしばらく考えた。
「・・・売りません」
「へっ?」
僕はクリニックまで車を走らせた。
新天地に行っても、ここの業務はしばらく続ける決心だった。
ミスター・チルドレンの歌が流れる。
「♪ いいことばかり〜では、ないさ、さあ次の医局をノックしよ〜う・・・ま〜だ、」
限界だなんて、思っちゃいないさ・・。
車を止め、正面玄関へ。すると・・・患者が列を作って立っている。
人だかりのようだが・・。
シャッターがしてある。「しばらく休業します」、だと?
僕は目を疑った。「都合により」って、いったい誰の都合だ?
患者は私服の僕にピンとこず、みな不平不満をぶつけていた、
僕は携帯で松田先生をコールした。
「先生!」
「ユウキ。そういやまだ伝えてなかったな」
「休業って先生・・。困ります。自分は来ましたので。開けてください」
「したくてもダメなんだ」
「ええっ?」
「職員が総スカンしたんだ。給料問題で」
「ストライキですか?」
「まあ似たようなもんだ」
「先生。困ります。せっかく・・」
「オレのせいじゃないだろ!」
聞こえてくる声が、一部潰れた。
「松田先生・・」
「そうだ。お前、入信するんだってな?」
「しませんよ!」
「ワイフがそう言ってるぞ」
「ウソですよそんなの!」
「じゃあなぜ、お前、ついていった?」
「それは・・・」
「どうしてなんだよ?不自然だぞ!」
「そ、それは・・」
「なんて奴だ・・」
患者がまた向こうから数人現れた。
「松田先生。先生があのような事で悩まれてるとは・・」
「面白いだろ?笑えよ!」
「想像もできない世界です」
「でな。オレ、もう入信することにした。疲れた・・」
「先生。ダメ!ダメです!」
涙が溢れ、僕はそこにうずくまった。
「俺は今まで、彼女の親まで説得してきたが無駄だった。
誰も頼りにならん。死ぬことも考えたが・・」
「先生。あんなのに入ってしまったら・・!」
「ユウキ。もうこれで付き合いは終わりだ」
「そんな・・」
「ワイフによれば、お前が元凶だというし」
「なんですか、それ?」
「オレもそうでないのは分かってる。だがこのままだと、俺たち夫婦の関係もヤバイ」
「先生・・」
「すまないが、今月付けで退職、ということで」
つまりはクビだ。休業は一時的な処置なのだ。
あとで聞いた話では、職員への給料未払いが原因だったらしい。
退職後はすぐに新天地での勤務となる。
外来では、患者から次々と質問にあった。
『先生、どこへ行きますの?』
『また先生が交代ですか?』
『せっかくいい先生に出会えたと思ったのに・・』
コベンへの指導も終わり、医局を出た。
バッタリ助教授に出くわした。
「今日で終わりか?」
「あと3日です」
「真田病院か・・。ついていけるのか?」
「さあ」
「特別な技術がよほどあるか、コネがあるか。そうでないと、1本釣りは生きていけんぞ」
「技術ですか・・」
「君は心カテと気管支鏡ができるくらいだろ?」
「ええ」
「認定医とかさえも持ってない」
「ええ」
「何を売りにするんだ?」
僕はしばらく考えた。
「・・・売りません」
「へっ?」
僕はクリニックまで車を走らせた。
新天地に行っても、ここの業務はしばらく続ける決心だった。
ミスター・チルドレンの歌が流れる。
「♪ いいことばかり〜では、ないさ、さあ次の医局をノックしよ〜う・・・ま〜だ、」
限界だなんて、思っちゃいないさ・・。
車を止め、正面玄関へ。すると・・・患者が列を作って立っている。
人だかりのようだが・・。
シャッターがしてある。「しばらく休業します」、だと?
僕は目を疑った。「都合により」って、いったい誰の都合だ?
患者は私服の僕にピンとこず、みな不平不満をぶつけていた、
僕は携帯で松田先生をコールした。
「先生!」
「ユウキ。そういやまだ伝えてなかったな」
「休業って先生・・。困ります。自分は来ましたので。開けてください」
「したくてもダメなんだ」
「ええっ?」
「職員が総スカンしたんだ。給料問題で」
「ストライキですか?」
「まあ似たようなもんだ」
「先生。困ります。せっかく・・」
「オレのせいじゃないだろ!」
聞こえてくる声が、一部潰れた。
「松田先生・・」
「そうだ。お前、入信するんだってな?」
「しませんよ!」
「ワイフがそう言ってるぞ」
「ウソですよそんなの!」
「じゃあなぜ、お前、ついていった?」
「それは・・・」
「どうしてなんだよ?不自然だぞ!」
「そ、それは・・」
「なんて奴だ・・」
患者がまた向こうから数人現れた。
「松田先生。先生があのような事で悩まれてるとは・・」
「面白いだろ?笑えよ!」
「想像もできない世界です」
「でな。オレ、もう入信することにした。疲れた・・」
「先生。ダメ!ダメです!」
涙が溢れ、僕はそこにうずくまった。
「俺は今まで、彼女の親まで説得してきたが無駄だった。
誰も頼りにならん。死ぬことも考えたが・・」
「先生。あんなのに入ってしまったら・・!」
「ユウキ。もうこれで付き合いは終わりだ」
「そんな・・」
「ワイフによれば、お前が元凶だというし」
「なんですか、それ?」
「オレもそうでないのは分かってる。だがこのままだと、俺たち夫婦の関係もヤバイ」
「先生・・」
「すまないが、今月付けで退職、ということで」
つまりはクビだ。休業は一時的な処置なのだ。
あとで聞いた話では、職員への給料未払いが原因だったらしい。
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