ブレよろ 53

2004年12月29日
ナースはカルテを指差した。
「この人は薬だけ欲しいそうです」
「・・・1年間、薬だけ?」
「そうです」
「8種類も飲んでる?」
「患者さんの希望なので」
「それはダメだ!これ、マイク?」
僕は呼び出しマイクのスイッチをつけた。

とたん、キ〜ンと共鳴音のようなキンキン音が鳴り響いた。
職員らは一斉に飛び上がった。

「ユウキ先生!それ故障してる!」
品川事務長はまた駆け込んできた。
「品川くん!」
「はい?」
「1つ教えてくれ!招待状・・」
「紹介状?」
「招待状だよ!しょうたいじょ・・!」

ナースは次の患者を座らせた。
「なんか先生、本院が潰れたってニュースでやっとりまんなあ」
「どうしてでしょうかね?」
「さ、さあ。それは先生のほうが詳しいんと違いまっか?」
中年男性は人差し指を差し出した。ET?

カルテでは慢性心不全の患者か。SpO2 96%。まあまあだ。

「運動すると息切れしますわい」
「激しい運動はなるべく避けて」

BNP 55→125→108・・心臓超音波はMRによる左心房拡大、心房細動あり。

患者の息切れは「動悸」かもな。

「運動負荷試験をしましょう。トレッドミル。酸素飽和度も同時測定」
「た、大変なんですかいな」
「運動して心臓に無理をさせ、変化をみます」
「体力は自信ありまっせ」
「心臓の体力は、自分では分かりませんよ!」

初診27歳女性。職場の検診で尿糖を指摘。
「看護婦さん。検査に行ってと言ったのに。してないよ」
「うっかりしてました」
僕は待合室へ走った。
「田所さんですね?もう1回検査しますね。それと採血もついでに」
言われるままか細い彼女はコップを持って採血室へ向かった。

となりの1診では消化器科と称し、茶髪のドクターが座っている。「ハヤブサ」とある。
彼は忙しそうに廊下へ走り出た。

目で追うと、どうやら検査室のようなところへ入っていったようだ。

66歳男性。呼吸困難。でも歩いて引っ張ってきている。
「看護婦さん。車椅子で運んできたほうが・・・もういいけど」
患者はフーフーと椅子に座った。

主治医は外科院長。ふだんは胃癌オペ後。
その後は血液検査とタマの胃カメラ。勘弁してくれよ。

「レントゲンを!」
あと胸部CTとECG・採血。
「画像ができたら僕のほうへ!これは・・」

足元に、ゴツンと当たった小さなカバン。
「なんだ、これ?」
「先生、それはトシキ先生の!」
「これって・・」

袋から取り出したノートパソコン様の物体。
スイッチらしきものを入れると。これ、超音波だ!
こんなものまで売ってるのか?

「先生、それ100万以上するそうで・・」
「これ、使わせて。今の人、左の呼吸音が弱い」
患者を座らせ超音波。
「割とよく見えるな。これ・・・あ!」
右に胸水多量。左は少量。聴診はあてにならんな・・。
心機能は良好。よかった。タンポナーデはなし。

胃癌のオペ後か。貧血は栄養状態悪化か、転移か・・。
「残りの検査に行きましょう。胸水穿刺は病棟で!」
「入院になるんですか?」
「そうだよ!」
「入院ベッドはいっぱいです」
「どこもだめ?」
「本院の患者さんを収容する部屋で満床になってるんです!」

患者自体はこれからこちらへ送られてくる、という予定だった。

「先生!患者さんが倒れました」

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