ブレよろ 54

2004年12月29日
別のナースが注射器をブンブン振り回しながらやってきた。
「危ねえよそれ!針ついてんだろ?」
「さっきの若い子!尿糖プラスの!」
「ああ・・どこ?」

採血室ではその子が倒れている。
1人の若いナースが心マッサージもどきをしている。

「え?なに?心臓が止まった?」
僕はバイタルを確認しようとした。周りのスタッフは固まっている。
「・・・止まってなんかないよ?」
「ホントだ。脈がある!」
若いナースはうれしそうに涙ぐんだ。

周囲のスタッフは一斉に拍手を浴びせた。
「すごいアキちゃん!マッサージが効いたのよ!」

違うだろ。

「血圧70/50mmHg。ワゴトニーかな、たぶん。硫アトとエホチールを!」
横になり注射後、ゆっくりと目覚めてきた。

「先生、さっきの人はどうするんですか?」
ナースが待っていた。
「SpO2 94%。ここで胸水、抜こう」
「ドレーンは病棟から?」
「いや。穿刺だけとりあえず」

CTでも胸水が著明。低アルブミンあり。
患者を再び座らせ、穿刺。黄色透明。漏出液か。
「プラズマネートカッターを準備して。点滴終了前にコールを」

病棟で携帯・内視鏡片手に走り回る医師2人。トドロキは大汗だった。
「こちらキンキチーム。こんなに忙しいなんて、聞いてないぞ!」
「私もです。まさか今日になってこんな事態になるとは・・・」
事務長は携帯片手に首をかしげた。
「それに突然来た医者、誰だアイツは?」
トドロキは眉をしかめた。
「なんか、ものすごい勢いで外来やってました!」
ハヤブサは焦りの表情だった。

画面に映像が映し出された。吐血の患者。トドロキは大腸ファイバーを引き上げた。

胃カメラは分かるが、大腸内視鏡までした意味は不明だ。

「出血はない。胃も正常、この大腸にもだ。俺たちの専門外だ」
「胸部内科に回そう」
「あ!血圧が・・・!」
モニター警告音。
「こちらキンキチーム!手に負えない!」
トドロキはマスクを外し、心臓マッサージを始めた。
「助けてくれ!」

ハヤブサは助けを求め、事務へ電話した。
「外科を呼んでくれ!医者なら誰でも!患者は73歳男性で!」
「出血、止まらない!」
トドロキは患者の口から再び出てくる出血をただ押さえた。
「挿管だ!しかし、なぜ・・・」

消化管以外からの出血ということだ。

案の定、挿管チューブ挿入後、出血はそこから流れ出た。

吐血でなく、喀血だ。

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