ブレよろ 58

2004年12月29日
「すまないが、肺結核を搬送したい」
「そうか」
トドロキ医長はいきなり威厳をもって発言してきた。
「やはり結核でしたか・・」

こいつは恥ずかしくないのか・・。

「医長先生。大阪の南の病院が受けてくれそうです。誰かが搬送を」
「じゃあ、勝手に運んでもらおうよ」
「ドクターがついていったほうがいいですよ」
「それは、医長の私めが決めますので」

あとは任せて、外来へ戻った。

「鬼のようにたまってるじゃないか?」
20冊。中年女性事務員が無言でまた10冊ほど積み上げた。
「ぷよぷよ。かよ?」
「はあ・・・?それは私のほうでは分かり・・」
「こんなに診れないよ。よかったら、もう1つの外来のほうに・・」
「トシキ先生は40冊貯まってます」
「頑張る奴だなあ・・」

彼女はチッチッと人差し指を揺らした。

「あの先生、遅いんです」
「患者をまわすのが?」
「そうなんです。午前診が終わるのが、いつも3時とか」
「夜診もあるんだろ?」
「ええ。4時から」
「いったいいつ病棟診てんだよ?」

僕と彼の外来は対照的だった。

彼は咽頭炎の患者を診察中。
「はい。喉をみますので、口を開けてください」
「アーん」
若い女性が恥ずかしそうに横目で口を開いた。

トシキ先生は咽頭をくまなく観察した。

「あわわ・・」
たまりすぎた唾液が口の端から漏れた。時間かけすぎだ。

「はい」
トシキ先生は机に向かい、いろいろ書き始めた。
「・・・・ぶつぶつ・・・・」
「あの。インフルエンザでしょうか?」
「・・・・・・多分違うでしょうね」
「たぶん?」
「喉が痛いだけですよね。熱もない」
「ええ。朝は38度あって座薬を使いましたが」

彼の手がぴたっと止まった。

「なんだ。そうだったんですか」
彼はシャーシャーとなにやらカルテに斜線を引いた。
「インフルエンザ、調べます」
彼はいきなり綿棒を彼女の鼻に突っ込んだ。
「きゃ?うわあ!」
彼は容赦なく綿棒をピストン運動し、綿棒を取り出した。

先にハナク○が付いている。

「?」
トシキ先生は興味深く見ながらナースに渡した。

一方、僕が診た患者のインフルエンザ抗原は「陽性」だった。
検査室の男性若手がナースに2本線の入ったキットの陽性印を見せびらかしていた。

「うーん。できちゃったー。どうしよ〜」
「立派な子を産めよ」
パシッと彼の頭をはたき、事務長がやってきた。

「ユウキ先生。手助けを・・」
「ああ。なんだい?」
「オリエンテーションだけのはずだったんですが。すみません。人手が・・」
「で?入院患者?」
「あ、その振り分けはまたのちほど。実は・・」
「?」
「本院に患者が1人、残ってるんです」
「連れてこいよ」
「待って!うちはもう満床!」
「よそへ送れよ」
「ダメです。あんな騒ぎになって、病院はどこも・・」
「受け入れ不可能なのか」
「先生。知ってる病院をどこか・・」
「山の上病院は?買い取られたそうだけど」
「僕らの勤務してた病院?あそこも頼みましたが無理でして」

テレビで大々的にやってるしなあ・・。

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