ブレよろ 59

2004年12月29日
「ユウキ先生。向こうのドクターがみなバテバテなんです。1人はインフルエンザで・・」
「俺が向こうへ行って・・・その患者を診ろと?」
「ええ。とりあえず引継ぎを。その間に、分院のベッドをなんとか1つ・・」
「俺が行っても、することないだろ?」
「FAXの情報では、若年男性で急性腎不全の血液透析中」
「若年。腎疾患か?」
「薬物中毒でして」
「自殺企図かよ」
「そのようです。ですが今は生きる希望が」
「なんで分かるんだよ!」
「へへ・・」
「透析か。本でしか読んでない」
「マジですか?」
「というか、関わったこともない。腎臓内科じゃないし」
「先生。今は状態は安定してるそうです。簡単に引き継げると」

僕はしばらく考えた。まあ数時間耐えて、何かあったら本院のドクターに頼ればいいし・・。

「わかった。じゃ・・・」
僕は駐車場を見回した。
「あれでいこうよ」
「あれ?先生、あれはドクターズ・カーです」
「山の上病院以来だな。後ろがボコボコだ」
「まだ直してないようですね」

僕は外来へ戻った。
「トシキ先生。すまないが、本院の助っ人に向かう」
「ええ。外来はやっときます」
彼の机のカルテは少し減って15冊ほどになっていた。
「ユウキ先生のカルテは何冊くらい・・?」

僕は自分の机を見に行った。天井に届きそうだ。

「まあ、<若干>かな。あ、なんか本院のドクター4人組って・・」
「はい?」
「先生、知ってるのか?」
「ああ。金次第で動く人間たちですよ」
「ひどいな・・」
「彼らですか?」

お前だよ。

「い、いや。ま、そうだな。1人がインフルエンザだって」
「バスケス先生か・・」
「えっ?なに?」
「女医さんですよ」
「女医・・かわいい?」
「はあ?」
「一応、教えてくれ。人ごみの中、探さないといけないしな」
「そうですね。一目、おかれてました」

そうか・・。

僕はドクターズ・カーに乗り込んだ。救急装備がフルセットだ。
「ダッシュだ!ダッシュ!ダッシュ!バンバンババン!」
「いい湯だ〜な〜」
事務長が運転手の事務員に近寄った。
「くれぐれも、事故のないようにお送りしろ!」
「はい」
サングラスの大男は頑なな表情で、ハンドルをグイッと握った。
「辻岡です。よろしくお願いします。サイレン、鳴らします」

「じゃあな!バイバイ!あとで大事な用がある!」
外に聞こえないのが分かりながらも、僕は後ろで立つ事務長に手を振った。

吹雪に耐え切れず、事務長は駆け足で病院内へ戻っていった。

「急げドクターズ・カー!ダッシュダッシュ!バンバンババンだ!」

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