ブレよろ 61

2004年12月29日
待合室が閑散としているのは経験済みだが、事務室までがもぬけの殻のようだ。

全く音が聞こえない。

本当に上に患者がいるのか?

エレベーターでまず2階へ。降りたが詰所は空っぽ。音もない。
「だれかーーー?」

よし、いない。次は3階。

出ると、中年のオバサンが廊下を走っていた。

「な、なにか?」
思わず声をかけた。
「ああ。忘れ物をしたんです」
オバサンは寝巻きのようなものをいくつか抱えていた。
「ホントもう、災難ですわ!」
「え?」
「あんたらがもうちょっと早く!」
彼女は寝巻きを1つ、僕めがけて投げつけた。

「てて?」
「もっと早く教えてくれたら!主人は!」
「しゅ、主人?」
彼女は勝手に詰所へ入った。
「これや!このカルテや!」
彼女は勝手にカルテを取り出した。関係のない病院だが、
なぜか防衛本能が働き、カルテを奪い取った。

「な、なんですの?」
「これは・・!勝手に見てはいけないの!」
「主人が追い出された!追い出された!」

追い出された患者もいるのか・・。

だがカルテを見ると、どうやら「アルコール性肝障害」。しかも肝機能障害は軽度。

「主人が戻ってきて、生活はまためちゃくちゃや!」
「僕は、ここの病院の医者では」
「?医者やない?ってこと?ひ・・・・・ひいい!」
彼女はカルテ台ごと隅っこに自分を追いやった。

「ど・・・どろぼう!どろぼう!」
「違いますって・・・・クソッ!」

時間に余裕がなく、僕はエレベーターに乗った。
4階も不在。5階も不在。ということは・・・。

6階。

開けると、廊下のはるか向こう、警報音が聞こえる。また止まる。

透析してるといってたな・・。

部屋に入ると、そこでは3人の医師が固まってなにやら作業していた。

「分院から来ました。ユウキです」
「遅いんだよ!」
いきなり槙原が怒鳴った。
「さっさと受け取りに来い!」

どうやら、彼はカテーテルを入れ替えしているようだ。
患者の右鎖骨下からワイヤーが外へ伸びている。

「ウロキナーゼでコーティングしてない分しか・・」
塩見はカテーテルを渡した。
「ああ。早く貸せ!」
マーブルは吼えた。
後ろでは緒方が腕組みして気合を入れていた。
「はようせんと、貧血になるとよ!」

僕は呆然と立ち尽くしていた。

「ユウキ先生・・って人!」
マーブルはカテーテルを押し込んでいた。
患者は少し痛がっている。
「なんでしょうか?」
「電解質のデータ、取ってきてくれ!」
「え?どこに?」

そういや、ウワサの女医がいないな。

「検査室だ!」
「・・・はいはい」

※「はい」は1回でよろしい!

電解質データなどを見ながら、僕はエレベーターで戻った。

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