ブレよろ 63

2004年12月29日
僕は事務員に電話、ドクターズ・カーを回してもらった。
救急入り口だ。

「レディー・・・ファースト!」
いっせいに患者の横たわるベッドが運ばれた。

続いて僕が透析の機械を運んだ。ただあまり急ぐわけにはいかない。

倒したりでもしたら大変だ。

勢い余ったベッドはエレベーター前を通り過ぎ、少し過ぎたところで数回クルクル回転した。

反動でマーブルは柱に叩きつけられた。

「ぐあ!」
「マーブル!」

ベッドの片端を持っていた緒方は大声を上げた。この男が急に止まったせいではある。

塩見は無表情にアンビューしていた。

マーブルは右顔面を無理に回旋したような体位で、どうやら左に回せそうになかった。
「たたた・・・」
「こりゃいかん、血がレトルト!いや、出とると!」
マーブルの額から出血がみられていた。にじむ程度だ。

僕はお先にエレベーターに機械を載せた。
「おいはやく!固まってしまう!」

すると、ゆっくり現れた私服の女性が点滴片手に現れた。こやつも死に顔だ。

彼女は閉まりかけたエレベーターを片足で弾き飛ばした。また開いた。
「延長を、押さんかい!」
「バスケス!」
冷静だった塩見がアンビューを一瞬、止めた。
「あんたのおかげで、少し持ち直したようよ」
「そうか」

こいつら、仲良しみたいだな。しかしこの女、患者じゃないのか・・?

かわいい女医とやらは、いずこに・・?

「マーブルもヤワね」
「運んでくれるか?」
「ふん!」
彼女は太い腕でベッドを押しこんだ。

エレベーターは僕とその仲良し2人になった。

「バスケス。俺が渡したヤツ、何回か使用を?」
「ああ。もう何回もやった」

何なんだ?何の会話だ?

「で、気分は?」
「上々」
「俺もいずれ使ってみよう」

なんだ?変態じゃないのか?

「吸いまくったのかよ?」
「吸って吸って、空っぽにしてやった!」

・・・・・。

エレベーターが開き、救急室へ。
ドクターズ・カーはなんと、南斗水鳥拳・・・救急室のど真ん中で待機していた。

非常識にもほどがあるが・・だが非常事態だ。

「車内電源を!」
事務員がコードを受け取った。
機械が入れられ、起動した。

塩見が車内の人工呼吸器を接続。ついで、機械のほうに回った。
「接続する」
やっとの思いで接続。回路は回りだした。

僕は彼らに礼を言わなくてはならなかった。

「みなさん、ありがとう」
振り向くと、マーブルは緒方に肩をかつがれていた。

塩見は座り込んで寝始めた。その横に、さっきの豪快な女性が立っている。
「ホーンとに、あんたはダメな男だねえ・・・」
どうやら塩見に言ってるようだった。

僕はドアを閉めた。

マーブルが血を流しながら近づいた。
「俺たちは、職を失うが・・」
「うん?なに?」
「最後までよくやってたと伝えてくれ」
「じゃあ事務長にそう伝えるよ」

なんだかんだ言ってた僕らは、お互い握手した。

車はゆっくりと走っていった。
辻岡さんは左右を確認していた。
「飛ばします」
「辻岡さん。黒服が何人か来てたね」
「ええ」
「何しに来てたの?」

彼はとぼけた。彼は改めて正面向いておじぎした。

「ありがとうございます。ユウキ先生。診療情報提供書がここに」
彼はいつの間にか受け取った書類を差し出した。

「そうそう、これこれ。これがないと患者の情報が・・?あれ?」

書面は、「よろしくお願いします」とだけ。

「ふざけるなマーブル!車戻せ!」
「な、なりません」
車は再び高速に合流した。

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