ブレよろ 66

2004年12月31日
患者のバカ力は、とどまるところを知らなかった。胸のモニター電極もバキバキと抜かれ、点滴ルートも抜かれた。

「くく!・・・でもそうだな。いつまでも・・・くう!おんぶにダッコはいけないよな・・ぬん!」

彼は自分の妻を思い出した。そういや家でも妻に頼ってばっかりだな。

僕は自分の意思で、物事を運んでるか・・?

自分で運命を切り開いたことが・・?

しかし・・・。よし!

彼は思いっきり、救急カートをまっすぐ蹴飛ばした。それはそのまま詰所内のガラス窓にぶつかった。轟音とともに、ガラス窓が飛散した。

「きゃあああ!」
申し送り中のナースたちは反射的にうずくまった。

「聞こえたろ?」

今の音に患者も驚き、固まった。
「人手をよこすんだ!さあ!」
ナースは次々とこちらへ向かってきた。

「シロー!大丈夫か?」
トシキが駆けつけた。
「ええ」
「ケガは?」
「え?ないです」

「しかし、危ない患者だな。ガラス窓までぶち割るような患者は、退院してもらおう!」
「先生、あれは自分・・」
「レートが40台か・・」

たしか、トシキ先生・・B型だったよな。
シローは思い出した。

脈は次第に遅くなっている。

不本意ながら、やっぱりペースメーカーを入れなおす必要がある。

「トシキ先生。自分にやらせてください!」
「え?そうか?」

今まで過保護で見てるだけのことが多かったシロー先生は、勇敢に自分を奮い起こした。

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