ブレよろ 69

2004年12月31日
ドクターズ・カーは加速し、目的地まで半分の距離を走りつつあった。

「ここ、ここに・・・カテーテルはある?」
「透析用のカテーテルなんか、つんでませんよ?」
「IVHのカテーテルならあるだろ?ダブル・ルーメンの」
「1本の中に2つ管があるやつね」
「そう。それでいいから・・」
「それを?まさか?」
「入れ替えよう」
「え?今から?」
「ワイヤーもあるよな」
「そ、そりゃあ・・・ありますけど」

また家族がのぞいてきた。
「まだアラーム鳴ってるんですが」
「分かってる!」
僕は制して、準備に取り掛かった。

そうだ・・・本人と家族に説明してなかった。
本人は呼吸器がついているから・・

「あのですね」
「はあ」
婆さんは不審そうに同期した。

「カテーテルがどうやら詰まりかけてるかも」
「いいっ?」
「もう!そんなリアクションはさておき!」
「ほうほう」
「管を入れ替えようと思いまして」
「ふむふむ」

そう言いながらも、準備は次々と進められた。

「看護婦さん。消毒」
「はい」
車の揺れで、1つ落とした。
「もう1個!」
「はい」

患者の横の点滴が揺れている。
車は進みだしてるようだな。

カテーテルの、閉塞と思われる管はさておき、もう一方の管に
注射器をくっつけ、吸引。

抵抗はない。よかった。ワイヤーはこっちを通して入れよう。

「ふーっ」
「終わったんですかいな?」
また家族がしゃしゃり出た。
「まだだよ!看護婦さん!」
ナースはきつく睨んだ。
「表で待っててください!」
「おお、おもて?」

表は車道だぞ?

ワイヤーを入れる。入れて、入れて・・・透視しながらするわけではないので、果たしてどこまで入れたらいいものか・・。あまりワイヤーが入りすぎて右心室をつついたら、不整脈がでそう。

「うーん・・・」
思わずナースを凝視した。
「処置に集中して!」
ナースは叫んだ。

「うーん・・・・これ以上はいれないほうが」
「はい?」
ナースが問いかけた。
「ひとりごと!」
「あああ、びっくらした」

古いカテーテルを抜いて、新しいカテーテルを挿入。

ワイヤーを・・・抜いた。注射器で確認。

「よし!入ってる!」

30秒でなんとかやれた。すぐに再接続だ。

回路はまた回りだした。

「ふう・・・アラームも鳴らなくなったな・・」
古いカテーテルを見ると、先端に血栓らしき茶色いヒラヒラあり。
「やっぱりこれだ。詰まりかけてた」
僕は家族の方に見せた。
「これがあったみたいですね」
「虫?」
「違いますよ!血栓」
「けっせん?」
「血の塊です。できることがあるんです」
「ほう!それを先生が・・取り出してくれたんや?」
「え?あ・・・ま、まあそういうこと・・」
「ありがとうございます!」
「いい、いいえ・・?」

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