プライベート・ナイやん 1-12 ミニ医者
2005年1月19日外来は今日もヒマだ。ヒマでも、変に間があると立ち上げが難しい。
エンジンを切って、またかけ直すような感じだ。
30代の女性。腹痛と下痢で来院。熱が39.8℃と高い。
こんなに高い熱・・腎盂腎炎、インフルエンザ・・。
老人ならMRSAもありかな。
尿路結石で腎盂腎炎・・でも下痢が合わないな。2次的なものかも。
待てよ。もっと基本的な・・感染性の腸炎か。そうだ。これかもな。
問診表で、妊娠は、なし・・と!
「お腹のどこが?」
「全体」
横になってもらい、診察。
「お腹は腫れてないな・・グル音は強い。下痢だもんな」
圧痛ははっきりせず。腹膜炎兆候はなし。
「では採血と、検尿と、腹部レントゲンを」
いったん医局へ。またみんなパソコンしている。
カチャカチャ・・の音だけ。
「ユウキ!おまえ、胸部内科専門だったよな?」
「はい」
「80台のじいちゃんがいてな」
「病棟ですね」
「ああ。寝たきりで、昼間もウーウー言ってるんだ。
呼吸音はよく分からんが、SpO2 94%。ちょっと低めだろ?」
「若干・・ですね」
「診るだけだぞ!何もしなくていいから!」
僕は大学でここんところ流行ってた言葉を口にした。
寝たきりの患者の横に、ついている「嫁」。嫁か・・。
田舎の病院にはなぜか付き添いに「嫁」が多い。
「あの、どうなんでしょうか」
「ちょっと待って!」
僕は呼吸音を聴き、診察を一通り終えた。
患者の表情は苦悶様だ。
「動脈血を取って、胸部のレントゲン、CT、超音波」
ナースに指示、また外来の続きへ。
女性は点滴しながら横になっている。
僕は検査データを確認中。
「白血球 18000、CRP 6.9・・・ほかは異常なしか。非特異的だな。
つまりなんともいえない」
横のナースが覗き込む。
「急性腸炎」
「まだ分からんよ。レントゲンは・・腸管ガス多目だが、腸閉塞の所見はなし。これも
非特異的」
「尿路結石」
「レントゲンでは石らしきものは見当たらず。尿検査は潜血陽性以外は異常なし」
「やっぱり結石!」
「(うるさいな。横から・・)」
女性の場合の尿潜血はそのまま宛てにはならない。
「超音波で、石とヒドロ(水腎症)の有無を見てみるか」
オンボロ超音波をセット。
目的の腎臓から。まず右。
「い、いたっ?」
「?」
プローブを軽く右の腰に当てただけなのに。
ナースが本を持ってきた。
「先生、CVAテンダネスってこの本に」
「な、なんだよ」
「叩いて痛かったら腎結石だってここに」
「さ、下がれ下がれ!」
じ、自分もそう思ってた。なんかタイミングが嫌だな。
腎臓・・は別に腫大はない。腎盂の拡大はなし。結石も
見当たらず。まあ尿管かもしれないが。
ナースがまた横から口を。
「先生、DIPで尿管を映しますか?」
「ええい、せんでええ、せんでええ!」
「?そんな怒らんでも・・」
「今は治療が優先!」
「じゃあ病名は何なんですか?」
「(こ、こいつ・・)」
紹介しわすれたが、この中年ナースは先日まで都会の救急病院で
勤務していた。何かの理由でここに転勤したわけだが、そのときの
気分がまだ抜けないのだろう。
実はこちらも助かってるのだが。
「抗生剤をいこう。第4世代で・・」
「感染なんですか?」
「ちょ、腸炎は否定できないし」
「ウイルス性が多いんですよね?すると抗生剤は効きませんよね」
「で、でも細菌性かも」
僕は押されていた。将来、嫁の尻に敷かれるような・・そんな予感が。
「腸炎で、片方の腰が痛くなるんですか?」
「うーん・・・ま、それもありかも」
「ふーん」
「納得するなよ!」
しばし・・考えた。僕が今プローブで観察した場所・・。
ここは腎臓だけだったか・・。
そうか。
「看護婦さん。やっぱ抗生剤はいく」
僕は電話帳をパラパラめくった。
「事務長。今の時間はよその病院は・・?」
「夜になりますね。ないです」
僕は本人のところへ行った。
「熱も高いので、このまま入院を」
「ええ。一晩なら」
「抗生剤を点滴します」
「はい」
「腸炎などの可能性があるので」
と濁し、入院手続き。
しつこいナースが追っかけてきた。
「先生。何だったんですか?」
「オーベンに聞くように」
「はあ?」
僕は医局へ戻って教科書をめくった。
たぶんこれだ。付属器炎。卵巣・卵管系統の炎症だ。
かなり気を配る分野だ。明日の朝も同様なら、婦人科へ
紹介しよう。
療養病棟へ戻り、検査結果を確認。
採血は異常なしだが、レントゲン・CTでは・・。
これか・・!苦悶様の理由もこれだ。
エンジンを切って、またかけ直すような感じだ。
30代の女性。腹痛と下痢で来院。熱が39.8℃と高い。
こんなに高い熱・・腎盂腎炎、インフルエンザ・・。
老人ならMRSAもありかな。
尿路結石で腎盂腎炎・・でも下痢が合わないな。2次的なものかも。
待てよ。もっと基本的な・・感染性の腸炎か。そうだ。これかもな。
問診表で、妊娠は、なし・・と!
「お腹のどこが?」
「全体」
横になってもらい、診察。
「お腹は腫れてないな・・グル音は強い。下痢だもんな」
圧痛ははっきりせず。腹膜炎兆候はなし。
「では採血と、検尿と、腹部レントゲンを」
いったん医局へ。またみんなパソコンしている。
カチャカチャ・・の音だけ。
「ユウキ!おまえ、胸部内科専門だったよな?」
「はい」
「80台のじいちゃんがいてな」
「病棟ですね」
「ああ。寝たきりで、昼間もウーウー言ってるんだ。
呼吸音はよく分からんが、SpO2 94%。ちょっと低めだろ?」
「若干・・ですね」
「診るだけだぞ!何もしなくていいから!」
僕は大学でここんところ流行ってた言葉を口にした。
寝たきりの患者の横に、ついている「嫁」。嫁か・・。
田舎の病院にはなぜか付き添いに「嫁」が多い。
「あの、どうなんでしょうか」
「ちょっと待って!」
僕は呼吸音を聴き、診察を一通り終えた。
患者の表情は苦悶様だ。
「動脈血を取って、胸部のレントゲン、CT、超音波」
ナースに指示、また外来の続きへ。
女性は点滴しながら横になっている。
僕は検査データを確認中。
「白血球 18000、CRP 6.9・・・ほかは異常なしか。非特異的だな。
つまりなんともいえない」
横のナースが覗き込む。
「急性腸炎」
「まだ分からんよ。レントゲンは・・腸管ガス多目だが、腸閉塞の所見はなし。これも
非特異的」
「尿路結石」
「レントゲンでは石らしきものは見当たらず。尿検査は潜血陽性以外は異常なし」
「やっぱり結石!」
「(うるさいな。横から・・)」
女性の場合の尿潜血はそのまま宛てにはならない。
「超音波で、石とヒドロ(水腎症)の有無を見てみるか」
オンボロ超音波をセット。
目的の腎臓から。まず右。
「い、いたっ?」
「?」
プローブを軽く右の腰に当てただけなのに。
ナースが本を持ってきた。
「先生、CVAテンダネスってこの本に」
「な、なんだよ」
「叩いて痛かったら腎結石だってここに」
「さ、下がれ下がれ!」
じ、自分もそう思ってた。なんかタイミングが嫌だな。
腎臓・・は別に腫大はない。腎盂の拡大はなし。結石も
見当たらず。まあ尿管かもしれないが。
ナースがまた横から口を。
「先生、DIPで尿管を映しますか?」
「ええい、せんでええ、せんでええ!」
「?そんな怒らんでも・・」
「今は治療が優先!」
「じゃあ病名は何なんですか?」
「(こ、こいつ・・)」
紹介しわすれたが、この中年ナースは先日まで都会の救急病院で
勤務していた。何かの理由でここに転勤したわけだが、そのときの
気分がまだ抜けないのだろう。
実はこちらも助かってるのだが。
「抗生剤をいこう。第4世代で・・」
「感染なんですか?」
「ちょ、腸炎は否定できないし」
「ウイルス性が多いんですよね?すると抗生剤は効きませんよね」
「で、でも細菌性かも」
僕は押されていた。将来、嫁の尻に敷かれるような・・そんな予感が。
「腸炎で、片方の腰が痛くなるんですか?」
「うーん・・・ま、それもありかも」
「ふーん」
「納得するなよ!」
しばし・・考えた。僕が今プローブで観察した場所・・。
ここは腎臓だけだったか・・。
そうか。
「看護婦さん。やっぱ抗生剤はいく」
僕は電話帳をパラパラめくった。
「事務長。今の時間はよその病院は・・?」
「夜になりますね。ないです」
僕は本人のところへ行った。
「熱も高いので、このまま入院を」
「ええ。一晩なら」
「抗生剤を点滴します」
「はい」
「腸炎などの可能性があるので」
と濁し、入院手続き。
しつこいナースが追っかけてきた。
「先生。何だったんですか?」
「オーベンに聞くように」
「はあ?」
僕は医局へ戻って教科書をめくった。
たぶんこれだ。付属器炎。卵巣・卵管系統の炎症だ。
かなり気を配る分野だ。明日の朝も同様なら、婦人科へ
紹介しよう。
療養病棟へ戻り、検査結果を確認。
採血は異常なしだが、レントゲン・CTでは・・。
これか・・!苦悶様の理由もこれだ。
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