プライベート・ナイやん 1-22 じゃ行こ!
2005年2月4日 病院の寂れた外来では、経費削減のためテレビのスイッチはオフ、
暖房も患者が来たときのみ。
「はああ、誰も来ないな・・」
診察室で大きな伸びをして、ゆっくりと立ち上がった。
「よっこらせっと」
「先生。もうオヤジですね」
例の太った二十歳のナースだ。
「成人式には行ったの?」
「あ、ここは田舎なんで、成人式は夏なんです」
「そっか・・」
彼女は周囲を見渡した。鼻息が荒い。
「先生、ちょっと・・」
「お?」
「今度、飲みにいきませんか?」
「飲み、ね。しばらく行ってないしな」
「今日とかは」
「おい・・・他に誰を?」
彼女は指で素早く自分と僕を指差した。
「マジ?」
「いいじゃないですかー」
「おいおい・・」
「ねえ、行きましょうよ」
こいつは本気だ。人を見かけで判断してはいけないのは
分かってるが・・・限度がある。僕にとっては閾値を越えている。
感度を上げない限りは無理だ。
「行こうよ!フンフン(鼻息)」
「まま、また今度な」
「今度って、いつ?」
「もも、もう1人連れてくるとか」
「うーん・・」
なんとか逃げ切った。
僕は彼女の鼻息のタイミングに合わせ、ダッシュした。
「じゃ、行こっと!」
「え?」
「じゃ行こう、って言ったんだよ!」
医局へ戻ると、やはりみなパソコンに向かっていた。
消化器の須川先生がにやけていた。
「うさぎさん。デートの約束ですか」
「え?してませんって!」
「本気で照れないでくださいよ、うさぎさん」
「なんでまたそんな」
「彼女はどうやらうさぎさんに気があるようですよ」
「何ですか、それ・・」
高橋先生(神経内科)が近寄ってきた。
「よかったじゃん!」
「何が・・」
「人間は中身だよ」
「だから何が・・」
「美人は3日で飽きるしさ」
「あの・・」
「そうだ、ユウキ」
須川先生が久しぶりに名前で呼んだ。
「お前・・イナカ病院に行くんだって?バイトで」
「そうです」
「あんなとこまで・・?」
「しゅ、修行のためです」
「丸1日、3万だよ。たったの3万」
「ええ。そのようですが・・」
「大変なのに・・なあ、高橋」
高橋先生は足踏みしながらタバコをつけた。
「そーだね。去年は何人辞めただろ・・」
「えっ?どういう意味で?」
「ま、自分で確かめたらいーじゃん!」
「それだけ過酷なんですね」
「バイトでも、役立たずだったらどんどんクビだよ」
「・・・・」
「さあ、大変だ!僕は、そうだな」
「?」
「1ヶ月に千円!」
「2ヶ月で千円!」
須川先生も乗ってきた。
「1ヶ月で500円!」
「7日!」
後ろからも声がかかりはじめ、高橋先生は金を集め始めた。
うっとうしいので、詰所へ。例の通り、誰もいない。
「もしもーし!」
奥の休憩場所からも返事がない。
「だれかー!」
仕方がないので、自分で各カルテの巻末の看護記録を確認。
「・・・変わりなしか」
「先生!」
「はっ?」
気がつくと、真後ろに外来の中年ナースが立っていた。
「あんた!彼女に何を言うたの!」
「は・・?」
「大変なことになってるわよっ!」
「僕は何も・・!」
「呆れたわ、こいつ!」
彼女は両手をグーと握り締めている。
「僕が言ったのは・・誰かもう1人呼んでとか」
「女の敵!」
「おわ?」
彼女は僕の腕をビンタし、駆け足で階下へ降りていった。
「ま、待って!」
追っかけて降りると、事務室内でもえらい騒ぎだ。
受付の女の子が、僕を唖然と見ている。
「何なんだ?僕が何を?」
「先生。謝ったほうがいいわよ」
「あの子にか?」
「いくらなんでも、ひどい」
「すまないけど・・なんて言ったんだ?」
「こう言ったそうじゃないですか!」
いつも冷静な受付嬢が立ち上がった。
「ジャイ子!」
周囲の事務員がみな立ち止まった。
「ジャイコ・・?ジャイカ、ジャイキ、ジャイク、ジャイケ・・・ジャイコ・・」
「彼女、かなり傷ついて・・」
「わかった!ジャイアンの妹!」
「病院を出て、行方不明なんです!」
「マジ?」
「前みたいなことになったら・・」
「前?前って何よ?」
「薬たくさん飲んで・・」
「お、おいおい・・・」
僕は顔が青ざめてきた。
「ちょ、ちょっと外出!」
「どこへ?」
メガネ事務長が走ってきた。
「先生!まだ勤務は」
「病棟は落ち着いてる!」
「探すのは我々が!」
「しかし!」
揉みあいながらも抜け出し、わけもなく病院の外へ出た。
彼女を探せ!村はそんなに広くはない!
ダッシュダッシュ!バンバンババン!
暖房も患者が来たときのみ。
「はああ、誰も来ないな・・」
診察室で大きな伸びをして、ゆっくりと立ち上がった。
「よっこらせっと」
「先生。もうオヤジですね」
例の太った二十歳のナースだ。
「成人式には行ったの?」
「あ、ここは田舎なんで、成人式は夏なんです」
「そっか・・」
彼女は周囲を見渡した。鼻息が荒い。
「先生、ちょっと・・」
「お?」
「今度、飲みにいきませんか?」
「飲み、ね。しばらく行ってないしな」
「今日とかは」
「おい・・・他に誰を?」
彼女は指で素早く自分と僕を指差した。
「マジ?」
「いいじゃないですかー」
「おいおい・・」
「ねえ、行きましょうよ」
こいつは本気だ。人を見かけで判断してはいけないのは
分かってるが・・・限度がある。僕にとっては閾値を越えている。
感度を上げない限りは無理だ。
「行こうよ!フンフン(鼻息)」
「まま、また今度な」
「今度って、いつ?」
「もも、もう1人連れてくるとか」
「うーん・・」
なんとか逃げ切った。
僕は彼女の鼻息のタイミングに合わせ、ダッシュした。
「じゃ、行こっと!」
「え?」
「じゃ行こう、って言ったんだよ!」
医局へ戻ると、やはりみなパソコンに向かっていた。
消化器の須川先生がにやけていた。
「うさぎさん。デートの約束ですか」
「え?してませんって!」
「本気で照れないでくださいよ、うさぎさん」
「なんでまたそんな」
「彼女はどうやらうさぎさんに気があるようですよ」
「何ですか、それ・・」
高橋先生(神経内科)が近寄ってきた。
「よかったじゃん!」
「何が・・」
「人間は中身だよ」
「だから何が・・」
「美人は3日で飽きるしさ」
「あの・・」
「そうだ、ユウキ」
須川先生が久しぶりに名前で呼んだ。
「お前・・イナカ病院に行くんだって?バイトで」
「そうです」
「あんなとこまで・・?」
「しゅ、修行のためです」
「丸1日、3万だよ。たったの3万」
「ええ。そのようですが・・」
「大変なのに・・なあ、高橋」
高橋先生は足踏みしながらタバコをつけた。
「そーだね。去年は何人辞めただろ・・」
「えっ?どういう意味で?」
「ま、自分で確かめたらいーじゃん!」
「それだけ過酷なんですね」
「バイトでも、役立たずだったらどんどんクビだよ」
「・・・・」
「さあ、大変だ!僕は、そうだな」
「?」
「1ヶ月に千円!」
「2ヶ月で千円!」
須川先生も乗ってきた。
「1ヶ月で500円!」
「7日!」
後ろからも声がかかりはじめ、高橋先生は金を集め始めた。
うっとうしいので、詰所へ。例の通り、誰もいない。
「もしもーし!」
奥の休憩場所からも返事がない。
「だれかー!」
仕方がないので、自分で各カルテの巻末の看護記録を確認。
「・・・変わりなしか」
「先生!」
「はっ?」
気がつくと、真後ろに外来の中年ナースが立っていた。
「あんた!彼女に何を言うたの!」
「は・・?」
「大変なことになってるわよっ!」
「僕は何も・・!」
「呆れたわ、こいつ!」
彼女は両手をグーと握り締めている。
「僕が言ったのは・・誰かもう1人呼んでとか」
「女の敵!」
「おわ?」
彼女は僕の腕をビンタし、駆け足で階下へ降りていった。
「ま、待って!」
追っかけて降りると、事務室内でもえらい騒ぎだ。
受付の女の子が、僕を唖然と見ている。
「何なんだ?僕が何を?」
「先生。謝ったほうがいいわよ」
「あの子にか?」
「いくらなんでも、ひどい」
「すまないけど・・なんて言ったんだ?」
「こう言ったそうじゃないですか!」
いつも冷静な受付嬢が立ち上がった。
「ジャイ子!」
周囲の事務員がみな立ち止まった。
「ジャイコ・・?ジャイカ、ジャイキ、ジャイク、ジャイケ・・・ジャイコ・・」
「彼女、かなり傷ついて・・」
「わかった!ジャイアンの妹!」
「病院を出て、行方不明なんです!」
「マジ?」
「前みたいなことになったら・・」
「前?前って何よ?」
「薬たくさん飲んで・・」
「お、おいおい・・・」
僕は顔が青ざめてきた。
「ちょ、ちょっと外出!」
「どこへ?」
メガネ事務長が走ってきた。
「先生!まだ勤務は」
「病棟は落ち着いてる!」
「探すのは我々が!」
「しかし!」
揉みあいながらも抜け出し、わけもなく病院の外へ出た。
彼女を探せ!村はそんなに広くはない!
ダッシュダッシュ!バンバンババン!
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