昔なつかしの授業風景から (前回の続き)
2005年2月14日生徒のほとんどは、宿題をやってるようだった。
「よしよし。じゃ、ノートはあとで提出してな。ただし・・書き写しは、すぐにばれるぞ!小川!」
「はい!」
「ミスター、オ・ガ・ワ〜、スタンダップ!」
「はい」
小川君は立ち上がった。
「じゃあ復習だ。問いに答えよ。こらそこ、教科書閉じよっ!」
「ひいい!」
女子学生の教科書が杖で閉じられた。
「今回のストーリーで、急性胆管炎の症例が出たね」
「出ました」
「待て!待て!まだわしが話してるっちゅうに!」
「は、はい」
「はい皆の者!皆の者!注目!今、小川大先生は、私の質問中に割り込んできました。橋本、どう思う?」
「は?」
橋本くんは怯えて答えた。
「わしの言ったことは間違ってるかな〜?」
「い、いえ。先生が正しいです」
「なに?よく聞こえんが」
「せ!先生が正しいと思います!小川君は非常識です!」
「まあまあ、そこまで言わんでも・・・そこ!山中!」
チョークが女子学生に当たった。
「山中。さっきからずっとペチャクチャ喋りおって。ひょっとして、口から生まれたか?」
「・・・いえ」
「でな・・はて、どこまで喋ったっけ。小川くんよ。こら、まだ座っちゃいかん!」
「はい!・・急性胆管炎の」
「そうそう!これの特徴的な症状としては・・」
「シャルコー3徴、えーと。発熱・腹痛・黄疸」
「Reynold5徴は、これに意識障害とショックを足したものだな。ここまで揃うと病名が変わるな。なんという?」
「えっと・・」
「えっと?そんな病名があるのか?スカタン!」
「急性閉塞性・・・急性化膿性・・」
「どっち?」
「閉塞・・・化膿性・・」
「1年生からやり直せ!」
「閉塞・・化膿性・・」
「あーあ、日が暮れるなあ。学級委員!」
「はい!」
「代わりに答えてやってくれ!」
「えっと・・」
「さあ、どうぞ」
「つっと・・」
「さあさ!みんな注目!これからクラスを代表する学級委員さまが、率先して答えてくれるぞ!メモの用意を!」
学生らはノートを開け始めた。
「さ!どうぞ!」
「すんませ・・」
「はっはは!こんな簡単、君やったら腰抜かすやろ?」
「っと、わかりま・・」
「基本中の基本やもんな!教科書をマスターすりゃあ、東大だってなんのその!」
「わかりませ・・」
「予備校の先生にも聞いたんや。模試の演習?参考書を買いあさる?とんでもない!テキスト・テキスト!教科書をやっときなさいって!」
「先生・・」
「教科書やっとったら、今年のセンターみたいにいきなり試験に出てたりしてな!うわっはは!」
「申し訳ありません・・」
「そんななあ、ましてや学級委員っちゅう人にやで?こんな基本的な質問するわしも、あんまりでっせ」
「・・・」
「さ、そろそろ答えてもらいましょうか?いつでもいいぞ!委員長!委員長でいいんちょう?わっはは!」
室内は静まり返っている。
「わか・・」
「?ん?聞こえんなあ、聞こえん。わしなあ、少し難聴があってな。年を感じるなあ」
「わかりませ・・」
「もっと大きな声で!」
「わわ!分かりません!」
「?おっははは・・・おいおい・・やめてくれえよ〜、おっほほ・・冗談はヨシコちゃんってば!」
「分かりません」
「わしをからかわんでくれよ!」
「いえ。からかってません」
「うそお?」
「本当です」
「立っとけ!」
キ〜ンコ〜ン、カ〜ンコ〜ン(チャイムの音)
「さ、チャイムが鳴っても、わしは関係ないぞ!まったく、アホなやつを委員長にしたもんやのう・・今のこの国と同じや!」
生徒を見回す。
「今日はバレンタインデーやな・・では、出席番号14番の人!男子!」
「はい」
「あー、待て待て・・森永ってやつがおるな。森永!」
「はい」
「女生徒か。お前!チョコはわたしたか?」
「いえ・・」
「でも持ってきてるな?」
「は・・・い」
「さっきの答えは?」
「急性閉塞性化膿性胆管炎=AOSCです」
「よろしい!すわれ!あ、待て!」
「はい」
「チョコでちょこっと思い出した・・・チョコレートで誘発されることのある疾患名!」
「・・・糖尿病?」
「立っとけ!」
「・・・」
「ああ、もう次の授業の先生が廊下で待っとるわ!はよせんと!もう!」
みな苦笑いしている。
「答え!言うぞ!片頭痛!へんずつう!若い女性に多い!」
みなメモをしている。
「だからな、チョコを受け取ってもらえんかったといって自分で食べて!それで頭が痛かったら!疑わないといかん!まったくどいつもこいつも!」
みんな静まっている。
「じゃ、終わろう!」
「起立!・・・礼!」
バスの運転手よろしく、次の授業の先生とすれ違い座間に挙げる片手。
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