講義、まだまだ続く。
2005年2月16日「この前のテストの結果を返す!浅田!」
「はい!」
「安藤!」
「はい!」
次次と答案を取りにやってくる生徒。
「小川!」
「はい!」
「このバカチンが!」
「いてて!」
つねられる小川君。
「学級委員!」
「はいっ!」
「おう・・・返事はええなあ」
「どうも」
「女生徒!」
「はい!」
「ようやった!最高得点!97点!ただし200点満点だがな」
みな≪ええ〜っ?≫と自分の答案を見直す。
「今回はあかんあかん!こんなんじゃあ、卒業させれん!」
教師はチョークを持ち、書き始める。
「これの出来が悪かった!E型肝炎!小川!」
「はい」
「何か書けよ。お前。知ってることなら何でも」
「・・・」
「答案の後ろにケンシロウ書く暇があるんならな!」
クスクスとせせら笑いが響く。
「小川!これを見つけるために、問診すべきことは?」
「・・・」
「立っとれ!」
「女生徒。君は分かるね」
「はい。海外の渡航歴です!」
「そうだ。それさえも浮かばんか?小川!」
「・・・」
「女生徒さんよ。特にどのあたりの地方を・・?」
「はい。アジア・アフリカなどです」
「つまり?」
「発展途上国です」
「なぜに?」
「本ウイルスは飲み水を介して流行しますので、上水道の設備が発達してない地域の場合はそれが著明です」
「う〜ん!さっすが!わしな、花粉症で鼻が詰まっていたんやが、今ので開通したわい!」
学級委員が挙手。
「では先生。先進国ではどうなんですか?」
「ほお。わしに質問するのか?」
「いえ。その・・」
「北海道と東北が多発地帯じゃ。なぜか分かるか?」
「いえ・・」
「不明、だそうじゃ」
「なっ?」
「むっ?た、立っとれ!」
学級委員も立たされた。
女生徒が挙手。
「東北や北海道は上水道が整ってないのでは?」
「そ、そんなことはなかろうが!ま、また鼻詰まったわい。お、お前も立っとれ!」
女生徒は不思議そうにゆっくり立ち上がった。
「日本もまあ、いちおう先進国だな。先進国での流行は、動物の生肉からうつるらしい。ほら、時々新聞にも載るだろが!おい小川!チャンスやるぞ。どんな動物だと思う?」
「鳥・・」
「ブーッ」
「牛・・」
「おおっ?」
「馬」
「はあ?」
「カニ・・」
「わざと間違えてんのか!スカタン!」
黒板に大きく≪ブタ≫!
「特に肝臓である、レバー!・・・全く、そんなことも知らんのか。おい三船!」
「はいっ!」
「ブタといえば焼肉だな。どうすれば?」
「半煮えの状態で食べないことです」
「よく焼くことだな。たとえ腹ペコだとしてもな!さあ、すると三船くん。ブタはみなE型ウイルスを持ってるのか?」
「生後間もない間だけに検出すると・・」
「ふむ、どのくらいまで・・?」
「うーん・・」
「ま、何でもいい。言ってみろ」
「10年・・」
「ブタがそんなに長生きするのか?ブタマン!生後3〜4ヶ月だろが!わしらが食べるとされるのは、生後6ヶ月以上のものと決まってる!まあそれでもウイルスが肝臓内に残ってる場合があるから・・生焼けではウイルスが生きとるケースもあるんじゃ!とにかく焼け!焼き尽くせ!」
「ブタだけ気をつけたらいいんでしょうか」
「イノシシ・鹿も報告がある」
黒板に大きく≪検査≫。
「さ。では君らが病院の外来で働いていると仮定して。学級委員!」
「はい」
「どんな検査を?」
「血液検査・・HEV(E型肝炎ウイルス)のIgM、IgG抗体です!」
「どっちがどうならどうなの?」
「急性ならIgMが上昇。慢性型ならIgGのみ上昇」
「お前今、教科書見てたな。まあいいだろ。だが完全な検査でないから過信せんようにな」
「はい。先生。ウイルスそのものの検出は?」
「HEV-RNAか?発症して2週間もしたら消えてしまうらしい」
「いかに早い時点でそれを証明するか、ですね」
「こら!わしのせりふを取りおって!」
「わわ?」
「ずっと立っとれ!廊下で!」
学級委員は廊下へつまみ出された。
「ま、検査の前での話を飛び越したな。肝炎だから、まず最初のきっかけは肝機能検査異常だと思う。熱発したら調べる項目に入ってるものな。小川!」
「はい!」
「お前、焼肉を半煮えで食べたことは?」
「ありますが・・2ヶ月前ですし」
「なんだと?」
「今はなんともないから」
「アホかお前は!このウイルスの潜伏期はな!女生徒!」
「はい!2から9週間です」
「2〜9!肉!覚えておけ!」
かすかな拍手が鳴った。
「小川。授業が終わったら肝機能検査を受けろ」
「はい。せ、先生」
「ん?」
「治療は・・」
「特別なのはない。まずは・・」
「まずは?」
「安静」
「そんなあ・・」
「安静をバカにするな!スカタン!おおっと、今日は2回目だ」
「肝臓移植とかは・・」
「劇症肝炎になった場合だな。それは」
「・・・」
「みんなもよいな!卒業旅行でシルクロードを旅するのもいいが、決して生水は飲むな!動物にはよく火を通せ!」
≪わかりました!≫一同うなずく。
廊下に出ると、学級委員が両手に、水の入ったバケツを持って立たされている。
「わしの講義。聞こえたか?」
「は、はい。水も気をつけます」
「水はまだバケツの中だ!ボケチン!」
教師は不機嫌そうに教室を去っていった。
※ E型肝炎を簡単に復習しよう。
・ 持続感染しない性格から、急性肝炎しか起こさない。よって肝硬変・肝癌にまでは至らない。
・ A〜E型肝炎で人畜共通感染症はE型のみ。
・ 経口感染はAとE。Aは季節性あり、Eはなし。
・ ヒンズー教徒(ブタ食う)>>イスラム教徒(ブタ食わず)
・ 26%が動物からの感染との報告。一方65%もが感染経路不明。
・ ブタ>イノシシ>シカのほかにネズミやマングースの感染報告も。
「はい!」
「安藤!」
「はい!」
次次と答案を取りにやってくる生徒。
「小川!」
「はい!」
「このバカチンが!」
「いてて!」
つねられる小川君。
「学級委員!」
「はいっ!」
「おう・・・返事はええなあ」
「どうも」
「女生徒!」
「はい!」
「ようやった!最高得点!97点!ただし200点満点だがな」
みな≪ええ〜っ?≫と自分の答案を見直す。
「今回はあかんあかん!こんなんじゃあ、卒業させれん!」
教師はチョークを持ち、書き始める。
「これの出来が悪かった!E型肝炎!小川!」
「はい」
「何か書けよ。お前。知ってることなら何でも」
「・・・」
「答案の後ろにケンシロウ書く暇があるんならな!」
クスクスとせせら笑いが響く。
「小川!これを見つけるために、問診すべきことは?」
「・・・」
「立っとれ!」
「女生徒。君は分かるね」
「はい。海外の渡航歴です!」
「そうだ。それさえも浮かばんか?小川!」
「・・・」
「女生徒さんよ。特にどのあたりの地方を・・?」
「はい。アジア・アフリカなどです」
「つまり?」
「発展途上国です」
「なぜに?」
「本ウイルスは飲み水を介して流行しますので、上水道の設備が発達してない地域の場合はそれが著明です」
「う〜ん!さっすが!わしな、花粉症で鼻が詰まっていたんやが、今ので開通したわい!」
学級委員が挙手。
「では先生。先進国ではどうなんですか?」
「ほお。わしに質問するのか?」
「いえ。その・・」
「北海道と東北が多発地帯じゃ。なぜか分かるか?」
「いえ・・」
「不明、だそうじゃ」
「なっ?」
「むっ?た、立っとれ!」
学級委員も立たされた。
女生徒が挙手。
「東北や北海道は上水道が整ってないのでは?」
「そ、そんなことはなかろうが!ま、また鼻詰まったわい。お、お前も立っとれ!」
女生徒は不思議そうにゆっくり立ち上がった。
「日本もまあ、いちおう先進国だな。先進国での流行は、動物の生肉からうつるらしい。ほら、時々新聞にも載るだろが!おい小川!チャンスやるぞ。どんな動物だと思う?」
「鳥・・」
「ブーッ」
「牛・・」
「おおっ?」
「馬」
「はあ?」
「カニ・・」
「わざと間違えてんのか!スカタン!」
黒板に大きく≪ブタ≫!
「特に肝臓である、レバー!・・・全く、そんなことも知らんのか。おい三船!」
「はいっ!」
「ブタといえば焼肉だな。どうすれば?」
「半煮えの状態で食べないことです」
「よく焼くことだな。たとえ腹ペコだとしてもな!さあ、すると三船くん。ブタはみなE型ウイルスを持ってるのか?」
「生後間もない間だけに検出すると・・」
「ふむ、どのくらいまで・・?」
「うーん・・」
「ま、何でもいい。言ってみろ」
「10年・・」
「ブタがそんなに長生きするのか?ブタマン!生後3〜4ヶ月だろが!わしらが食べるとされるのは、生後6ヶ月以上のものと決まってる!まあそれでもウイルスが肝臓内に残ってる場合があるから・・生焼けではウイルスが生きとるケースもあるんじゃ!とにかく焼け!焼き尽くせ!」
「ブタだけ気をつけたらいいんでしょうか」
「イノシシ・鹿も報告がある」
黒板に大きく≪検査≫。
「さ。では君らが病院の外来で働いていると仮定して。学級委員!」
「はい」
「どんな検査を?」
「血液検査・・HEV(E型肝炎ウイルス)のIgM、IgG抗体です!」
「どっちがどうならどうなの?」
「急性ならIgMが上昇。慢性型ならIgGのみ上昇」
「お前今、教科書見てたな。まあいいだろ。だが完全な検査でないから過信せんようにな」
「はい。先生。ウイルスそのものの検出は?」
「HEV-RNAか?発症して2週間もしたら消えてしまうらしい」
「いかに早い時点でそれを証明するか、ですね」
「こら!わしのせりふを取りおって!」
「わわ?」
「ずっと立っとれ!廊下で!」
学級委員は廊下へつまみ出された。
「ま、検査の前での話を飛び越したな。肝炎だから、まず最初のきっかけは肝機能検査異常だと思う。熱発したら調べる項目に入ってるものな。小川!」
「はい!」
「お前、焼肉を半煮えで食べたことは?」
「ありますが・・2ヶ月前ですし」
「なんだと?」
「今はなんともないから」
「アホかお前は!このウイルスの潜伏期はな!女生徒!」
「はい!2から9週間です」
「2〜9!肉!覚えておけ!」
かすかな拍手が鳴った。
「小川。授業が終わったら肝機能検査を受けろ」
「はい。せ、先生」
「ん?」
「治療は・・」
「特別なのはない。まずは・・」
「まずは?」
「安静」
「そんなあ・・」
「安静をバカにするな!スカタン!おおっと、今日は2回目だ」
「肝臓移植とかは・・」
「劇症肝炎になった場合だな。それは」
「・・・」
「みんなもよいな!卒業旅行でシルクロードを旅するのもいいが、決して生水は飲むな!動物にはよく火を通せ!」
≪わかりました!≫一同うなずく。
廊下に出ると、学級委員が両手に、水の入ったバケツを持って立たされている。
「わしの講義。聞こえたか?」
「は、はい。水も気をつけます」
「水はまだバケツの中だ!ボケチン!」
教師は不機嫌そうに教室を去っていった。
※ E型肝炎を簡単に復習しよう。
・ 持続感染しない性格から、急性肝炎しか起こさない。よって肝硬変・肝癌にまでは至らない。
・ A〜E型肝炎で人畜共通感染症はE型のみ。
・ 経口感染はAとE。Aは季節性あり、Eはなし。
・ ヒンズー教徒(ブタ食う)>>イスラム教徒(ブタ食わず)
・ 26%が動物からの感染との報告。一方65%もが感染経路不明。
・ ブタ>イノシシ>シカのほかにネズミやマングースの感染報告も。
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