プライベート・ナイやん 2-13 ケジメなさい
2005年3月28日翌日外来へ行くと・・案の定、例の患者がいた。
「ててて・・」
待合室の椅子に、だるそうに座っている。昨日、胃薬を処方した副院長が側に立っている。
「ふーん・・・ふん」
副院長は患者の腹部をタッチしながら、何やら呟いている。
「ふうむ・・ふむ」
僕は別件で外来に呼ばれていた。
「めまいの方が今」
「ここへ呼んで」
中年のおばさんが入ってきた。
「おはようございます、先生」
「ええ、おはようございます」
「目がグルグル回るような・・」
「回転性・・」
「そうです。横揺れじゃなく」
「意識を失ったりとか・・」
「ここに来る前、ありました。夫の話だと・・数分?」
失神したってことか。失神は帰してはいけない。オーベンから教わった。
オーベンか・・。懐かしい響きだな。
「検査目的で、入院しましょう」
「え?」
「原因が分からない段階で、また再発があったら・・」
「そ、そんなに悪いんですの?」
「そのほうが安全かと」
「入院はちょっと・・」
なんだ。また断るのか。
「僕はそう思うんですが」
「うーん・・・そんなに悪いんですか」
「悪いとかそういう意味ではなくって!」
結局患者の希望で、まず検査をということになった。
そうだな。検査してからの説明でもよかった。こんないきなりな説明なんかしちゃ・・患者をビビらせるだけだ。
落ち着け、ユウキ。
患者に当たるのは、卑怯な医者だけのすることだ。
「心電図、採血、頭部CT、脳波に・・」
「そ、そんなにですか?」
結局患者を不安にさせた。
外に出ると、腹痛の患者はまだ椅子に座っている。
新人ナースがやってきた。
「ユウキ先生。副院長は用があるので、代理で診て欲しいと」
「なにっ・・・あいつ!」
患者を腹部レントゲンへ。
「レントゲンが終わったら、採血と点滴を。メニューは・・」
カルテに書き込んでいると、ナースは覗き込んだ。
なぜか緊張して、ペンがぎこちなく進んだ。
「レントゲンはざ、座位にしてと・・臥位もいちおう。胸部も、とと!」
「どうしたんですか?先生」
「い、いや別に・・」
「フフッ」
まぶしい笑顔まで見せた。痩せただけで、ここまで変われるとは・・。この変身ぶりを伝えられないのが残念だ。
外来婦長がスケベそうに見ていた。
「どう?先生」
「は?」
「彼女・・痩せてなんかキレイになってない?」
「なな!なってないなってない!」
「そ、そこまで言わんでも・・」
「しし、失神の人の検査はあ!」
「そんな、慌てんでも」
失神の患者さんは心電図、採血、頭部CTも異常なし。脳波もこれといったものはなし。
「TIAと、不整脈は否定できないな・・」
「ちーあいえー?」
患者はすぐそばにいた。
「TIAとは、一過性の脳虚血発作というやつです。脳に血液が短時間流れない」
「まあ、こわい」
「MRIで今度調べましょう。MRAもついでに。ホルターも・・」
「近いうち、来ますので」
「やっぱ入院はダメですか?」
「はい」
彼女はキッパリ断言した。とりあえず帰宅。
「先生。腹痛の方のレントゲン」
新人ナースがフィルムを持ってきた。
「どど、どれどれ」
「これです。あっ・・」
彼女の指が、僕の指に触れた。
「わわ!ちょっと!」
「すす、すみません!」
「たく・・・はあはあ」
「先生、息が・・」
「ふう・・・ん?」
胸部レントゲンで映っているガス像・・。右の横隔膜の真下にある。
「フリーエア!消化管穿孔だ!」
僕は副院長に電話した。
「消化管穿孔だと思います。外科のある病院へ・・!」
「そ、そうか。じゃ、あとを頼む」
僕は患者に説明、救急車を呼んだ。救急隊はすぐにかけつけた。
「救急隊です。どちらへ搬送を?」
「イナカ救急病院」
「了解しました!」
搬送先は僕が決めた。ただし目的は他にもあった。
「ててて・・」
待合室の椅子に、だるそうに座っている。昨日、胃薬を処方した副院長が側に立っている。
「ふーん・・・ふん」
副院長は患者の腹部をタッチしながら、何やら呟いている。
「ふうむ・・ふむ」
僕は別件で外来に呼ばれていた。
「めまいの方が今」
「ここへ呼んで」
中年のおばさんが入ってきた。
「おはようございます、先生」
「ええ、おはようございます」
「目がグルグル回るような・・」
「回転性・・」
「そうです。横揺れじゃなく」
「意識を失ったりとか・・」
「ここに来る前、ありました。夫の話だと・・数分?」
失神したってことか。失神は帰してはいけない。オーベンから教わった。
オーベンか・・。懐かしい響きだな。
「検査目的で、入院しましょう」
「え?」
「原因が分からない段階で、また再発があったら・・」
「そ、そんなに悪いんですの?」
「そのほうが安全かと」
「入院はちょっと・・」
なんだ。また断るのか。
「僕はそう思うんですが」
「うーん・・・そんなに悪いんですか」
「悪いとかそういう意味ではなくって!」
結局患者の希望で、まず検査をということになった。
そうだな。検査してからの説明でもよかった。こんないきなりな説明なんかしちゃ・・患者をビビらせるだけだ。
落ち着け、ユウキ。
患者に当たるのは、卑怯な医者だけのすることだ。
「心電図、採血、頭部CT、脳波に・・」
「そ、そんなにですか?」
結局患者を不安にさせた。
外に出ると、腹痛の患者はまだ椅子に座っている。
新人ナースがやってきた。
「ユウキ先生。副院長は用があるので、代理で診て欲しいと」
「なにっ・・・あいつ!」
患者を腹部レントゲンへ。
「レントゲンが終わったら、採血と点滴を。メニューは・・」
カルテに書き込んでいると、ナースは覗き込んだ。
なぜか緊張して、ペンがぎこちなく進んだ。
「レントゲンはざ、座位にしてと・・臥位もいちおう。胸部も、とと!」
「どうしたんですか?先生」
「い、いや別に・・」
「フフッ」
まぶしい笑顔まで見せた。痩せただけで、ここまで変われるとは・・。この変身ぶりを伝えられないのが残念だ。
外来婦長がスケベそうに見ていた。
「どう?先生」
「は?」
「彼女・・痩せてなんかキレイになってない?」
「なな!なってないなってない!」
「そ、そこまで言わんでも・・」
「しし、失神の人の検査はあ!」
「そんな、慌てんでも」
失神の患者さんは心電図、採血、頭部CTも異常なし。脳波もこれといったものはなし。
「TIAと、不整脈は否定できないな・・」
「ちーあいえー?」
患者はすぐそばにいた。
「TIAとは、一過性の脳虚血発作というやつです。脳に血液が短時間流れない」
「まあ、こわい」
「MRIで今度調べましょう。MRAもついでに。ホルターも・・」
「近いうち、来ますので」
「やっぱ入院はダメですか?」
「はい」
彼女はキッパリ断言した。とりあえず帰宅。
「先生。腹痛の方のレントゲン」
新人ナースがフィルムを持ってきた。
「どど、どれどれ」
「これです。あっ・・」
彼女の指が、僕の指に触れた。
「わわ!ちょっと!」
「すす、すみません!」
「たく・・・はあはあ」
「先生、息が・・」
「ふう・・・ん?」
胸部レントゲンで映っているガス像・・。右の横隔膜の真下にある。
「フリーエア!消化管穿孔だ!」
僕は副院長に電話した。
「消化管穿孔だと思います。外科のある病院へ・・!」
「そ、そうか。じゃ、あとを頼む」
僕は患者に説明、救急車を呼んだ。救急隊はすぐにかけつけた。
「救急隊です。どちらへ搬送を?」
「イナカ救急病院」
「了解しました!」
搬送先は僕が決めた。ただし目的は他にもあった。
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