プライベート・ナイやん 3-5 なんじゃ、こりゃあ!
2005年4月14日院長の家族・・ってことは、おじいさんかおばあさん・・。
「今日は娘さんが講演会に出かけるから早めに」
「娘?」
「昼は娘さんが面倒見てる」
「へえ・・」
じゃあ、いつ仕事してんだ?
「介護のマニュアル・手引きは部屋にあるので」
「はい。なんとか・・」
「他の日はレジデント達が・・・彼らから話を?」
「時間があれば聞きたいですが・・何とかなるかと」
「頼りになる」
「ここ、光栄です!」
赤井先生は携帯を鳴らした。
「あ!赤井です。今日は山の上の先生・・・・ユウキ先生という先生。介護は・・慣れてるらしい・・ああ」
彼はパチンと携帯をたたんだ。
「5時にこのタクシーチケットで」
「え?いいんですか?」
「それまで夕方の回診をしていただきたい」
病棟へ。
アパム先生の患者の回診だ。
「弘田先生。前に組んでた先生は・・」
「ひっ・・」
「辞められたの?」
「かか・・・」
「?」
「解雇」
「クビ?」
「てて・・いうか、い、院長が・・」
「院長がクビにしたんだね・・?」
あとで聞いたが、どうやらナースとの恋のもつれがあったそうだ。
医局のポリシーの1つとして「恋愛禁止」があるそうだ。
確かに恋愛などする機会は・・出会いの機会さえないだろな。
だからナースとくっつく医者は・・。
人のことは言えないな。
「弘田先生。このばあさんは?」
酸素吸入して眠っている63歳女性。
「はは・・・肺炎」
「肺炎を起こしたのが2日前。その前に・・何か検査しているね」
「胃、胃透視」
「外来で胃癌のスクリーニングのために胃透視をしたわけか」
「・・・」
「そのとき、肺炎をちょうど起こしてた?」
「はひ・・」
「妙な偶然だなあ・・それで入院となったの?」
胸部レントゲン・CTでは左下の広範な肺炎像。
「この肺炎の像の中の・・・より白い陰影は・・何?」
確かによく見ると、石灰化に近いような数センチの陰影がある。
「結核・・・こんな場所にはできないよな。ふつう」
「はひ・・」
「そうか。これ、バリウムか」
「はひ?」
「バリウムを誤嚥したんじゃないのか?」
胃透視の写真をかざす。
「胃透視の所見は・・・何もなかったのかな・・弘田先生」
「はは・・・い」
「僕は消化器は専門じゃなくて」
「ふふ・・・」
「所見用紙は?」
「?」
「ほら。検査した後、結果所見を記入してるだろ?」
白紙だ。
「自分でつけるのか・・」
「ふふ・・」
「また、他の先生に聞こう」
胃透視の写真を眺めていた。
「これ・・?」
よく見ると、胃の外側に・・左上に影が見える。
同じくバリウムのようだ。胃から外に漏れたのではなく・・
「誤嚥して・・・肺に落ちたのか!」
「はほ・・」
「そうだな。気管支だとしたら太いな。気管支拡張症もあるかな」
「それと・・ここ・・これ」
弘田先生は胃の右上を指差した。
「肺炎は左だよ」
「ここ・・・ほほ」
「?」
よく見ると、白い陰影が。
「ああ。そうだな。胆石だね。これ」
「ふほ、ふほ・・」
「よく見つけたね。感心感心!」
妙なことに感心しながらフィルムを片付けた。
「抗生剤はいってるね。効果判定は投与の・・3日後?」
カルテを見ると、2日前発症時にペニシリン系。1日後にセフェム系に変わっている。
いや・・追加している。
「弘田先生。なんでこんな?」
「ひっ・・」
「評価もしてない段階でいきなり1剤追加するとは・・・」
「ひ・・」
「普通はしないよ」
「ふ・・」
「それに先生。ペニシリン系とセフェム系の併用なんて。構造が似てる抗生剤の併用も
しないよ。普通は」
なんか嫌なオーベンだな。僕は。
「副作用が2倍になるだけだ。やめよう。1剤に戻して」
「・・・」
「明日また評価を」
「ひ、評価の日は3日後だと・・・あああ、あさって」
「ん?あ、ああ。そっか・・」
悔しい。
「じゃ、じゃあそういうことで。その日は僕はいないから、ほかの先生に」
なんか、感じ悪いオーベンだよな・・。
自分がなりたくない人間になっていくのが分かる。それに気づいているだけでもマシか。
夕方なんとか回診を終えて、玄関へ。
「じゃ、弘田先生。どうしても何かあるようなら・・・病院内の先生に」
僕もしつこい。
「ひ・・」
「じゃ!」
タクシーは出た。ものの5分とかからないうちに、一軒家の前にたどり着いた。
2階建ての、ふつうの鉄筋だ。
「おじゃまし・・」
玄関に入ると、あわただしく靴を履いてるお姉さんがいた。スレンダーで背が高い。
「す、すみません!ゆ、ユウキといいます!」
「時間がないから!そこのフスマの部屋にいるから!」
「あ・・?」
彼女は僕を押しのけるように、先ほど降りたタクシーに飛び乗った。
化粧、濃いな・・。
スリッパで上がり、ふすまを開ける・・。
「な・・・なんじゃこりゃあ!」
「今日は娘さんが講演会に出かけるから早めに」
「娘?」
「昼は娘さんが面倒見てる」
「へえ・・」
じゃあ、いつ仕事してんだ?
「介護のマニュアル・手引きは部屋にあるので」
「はい。なんとか・・」
「他の日はレジデント達が・・・彼らから話を?」
「時間があれば聞きたいですが・・何とかなるかと」
「頼りになる」
「ここ、光栄です!」
赤井先生は携帯を鳴らした。
「あ!赤井です。今日は山の上の先生・・・・ユウキ先生という先生。介護は・・慣れてるらしい・・ああ」
彼はパチンと携帯をたたんだ。
「5時にこのタクシーチケットで」
「え?いいんですか?」
「それまで夕方の回診をしていただきたい」
病棟へ。
アパム先生の患者の回診だ。
「弘田先生。前に組んでた先生は・・」
「ひっ・・」
「辞められたの?」
「かか・・・」
「?」
「解雇」
「クビ?」
「てて・・いうか、い、院長が・・」
「院長がクビにしたんだね・・?」
あとで聞いたが、どうやらナースとの恋のもつれがあったそうだ。
医局のポリシーの1つとして「恋愛禁止」があるそうだ。
確かに恋愛などする機会は・・出会いの機会さえないだろな。
だからナースとくっつく医者は・・。
人のことは言えないな。
「弘田先生。このばあさんは?」
酸素吸入して眠っている63歳女性。
「はは・・・肺炎」
「肺炎を起こしたのが2日前。その前に・・何か検査しているね」
「胃、胃透視」
「外来で胃癌のスクリーニングのために胃透視をしたわけか」
「・・・」
「そのとき、肺炎をちょうど起こしてた?」
「はひ・・」
「妙な偶然だなあ・・それで入院となったの?」
胸部レントゲン・CTでは左下の広範な肺炎像。
「この肺炎の像の中の・・・より白い陰影は・・何?」
確かによく見ると、石灰化に近いような数センチの陰影がある。
「結核・・・こんな場所にはできないよな。ふつう」
「はひ・・」
「そうか。これ、バリウムか」
「はひ?」
「バリウムを誤嚥したんじゃないのか?」
胃透視の写真をかざす。
「胃透視の所見は・・・何もなかったのかな・・弘田先生」
「はは・・・い」
「僕は消化器は専門じゃなくて」
「ふふ・・・」
「所見用紙は?」
「?」
「ほら。検査した後、結果所見を記入してるだろ?」
白紙だ。
「自分でつけるのか・・」
「ふふ・・」
「また、他の先生に聞こう」
胃透視の写真を眺めていた。
「これ・・?」
よく見ると、胃の外側に・・左上に影が見える。
同じくバリウムのようだ。胃から外に漏れたのではなく・・
「誤嚥して・・・肺に落ちたのか!」
「はほ・・」
「そうだな。気管支だとしたら太いな。気管支拡張症もあるかな」
「それと・・ここ・・これ」
弘田先生は胃の右上を指差した。
「肺炎は左だよ」
「ここ・・・ほほ」
「?」
よく見ると、白い陰影が。
「ああ。そうだな。胆石だね。これ」
「ふほ、ふほ・・」
「よく見つけたね。感心感心!」
妙なことに感心しながらフィルムを片付けた。
「抗生剤はいってるね。効果判定は投与の・・3日後?」
カルテを見ると、2日前発症時にペニシリン系。1日後にセフェム系に変わっている。
いや・・追加している。
「弘田先生。なんでこんな?」
「ひっ・・」
「評価もしてない段階でいきなり1剤追加するとは・・・」
「ひ・・」
「普通はしないよ」
「ふ・・」
「それに先生。ペニシリン系とセフェム系の併用なんて。構造が似てる抗生剤の併用も
しないよ。普通は」
なんか嫌なオーベンだな。僕は。
「副作用が2倍になるだけだ。やめよう。1剤に戻して」
「・・・」
「明日また評価を」
「ひ、評価の日は3日後だと・・・あああ、あさって」
「ん?あ、ああ。そっか・・」
悔しい。
「じゃ、じゃあそういうことで。その日は僕はいないから、ほかの先生に」
なんか、感じ悪いオーベンだよな・・。
自分がなりたくない人間になっていくのが分かる。それに気づいているだけでもマシか。
夕方なんとか回診を終えて、玄関へ。
「じゃ、弘田先生。どうしても何かあるようなら・・・病院内の先生に」
僕もしつこい。
「ひ・・」
「じゃ!」
タクシーは出た。ものの5分とかからないうちに、一軒家の前にたどり着いた。
2階建ての、ふつうの鉄筋だ。
「おじゃまし・・」
玄関に入ると、あわただしく靴を履いてるお姉さんがいた。スレンダーで背が高い。
「す、すみません!ゆ、ユウキといいます!」
「時間がないから!そこのフスマの部屋にいるから!」
「あ・・?」
彼女は僕を押しのけるように、先ほど降りたタクシーに飛び乗った。
化粧、濃いな・・。
スリッパで上がり、ふすまを開ける・・。
「な・・・なんじゃこりゃあ!」
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