プライベート・ナイやん 4-2 病院閉鎖
2005年5月10日「ユウキ先生」
品川君がプップー、とでかい外車で現れた。
「うわ?それ何?」
「リースですよ。リース!」
彼は左の窓から顔を乗り出した。
「金持ちなんだな・・!」
「そんなことないっす!でね先生!」
「は?」
「新人ナースの件ですが・・」
「ああ。僕がかけあえばいいんだろ?」
「いえ。親に金、渡しましてね」
「なぬ?」
「それで済みました」
こいつ、何を・・・?
「品川君。いったいいくら・・」
「それは・・まあ」
「金で解決するとはねえ・・」
「金で解決しな・・・ことなど」
「え?なんだって?」
「じゃ!」
車は地を這いつくばりながら、彼方へ消えていった。
官舎に入る前、後ろからチリンチリンと自転車の音がした。
「暑いねえ」
駄菓子屋のおばさんだ。
「スーパーで卵が10円!10個でやで!」
「あ、そう」
「あひとり様1パックまで!」
「ふうん・・」
おばさんの自転車のカゴに何パックもある。
「あ、これかい。レジを何度も往復したんでね」
「こんなに食べれるの?」
「いや。売ろうと思って」
「な・・?」
「だってあんた、うさぎさん!こんな何パックも置いておけないよ!」
「僕は買わないよ!」
「1個・・120円」
「だから買わない!」
「栄養が不足しとろうが!」
「そりゃラーメンばっかりだけど・・!」
「ラーメンにでもそら、1個卵落としたら味が良くなるじゃろ?」
チキンラーメンで、よくやってた。
「じゃ・・」
官舎に入って、いったんため息。ため息をつく癖は良くない。
よくないのは分かってるんだが、30を過ぎていろいろこんな余計な癖が出てくる。
また手紙が来ている。松田先生だ。またリクルートか。
『 大学へ戻られるかもしれないという噂をお聞きしました』
早いな。情報が。
『 ダメもとでいいですので、一度うちの病院へ面接にお越しください。
今後のコネつくりのためにも。将来は関連病院を目指しています 』
会っておく価値はあるな。大阪では医者に限らず、就職面ではコネがものをいう。
役所・会社はもちろん、医療系でも薬剤師・MRでも親のコネなどの影響がモロ反映する。
だいいち、<○○募集>と広告に出た時点で、それはもうその時点でア〜マ〜リルガ〜
なのだ。
なので、チャンスだと思ったら飛びついておく必要がある。選択の機会が多いほどいいという意味だ。
僕は思い切って彼に電話した。
「もしもし!松田!」
「お・・お久しぶりです」
「え?だれ?もしもーし!」
「ユウキです」
「あ・・!」
無愛想な声がいきなり朗らかになった。
「ユウキ!生きてるか?」
「お久しぶりです。松田先生」
「おーおー!手紙読んだか?」
「ええ。先生の病院、凄いですね」
「あ、もう退職なんだよ」
彼は開業のため退職を控えていた。
「松田先生。ご存知のように、僕は大学へ・・」
「戻るな戻るな!あんなとこ!」
「まあ少しは我慢していこうかとも」
「俺のこの病院に来いって!絶対楽しいから!」
「うーん。医局を辞めるっていうのは、僕には・・」
「そんなの簡単だ!手続きもほとんど要らん」
「一度そちらの病院へ・・」
「おう、そうか!」
数日後、病院ではなくレストランで会う約束に。
留守電が珍しく点灯している。メッセージが1件。
『イナカ救急病院です・・』
横になっていた僕はガバッと飛び起きた。事務員の声だ。
『忘れ物や文献など、先生の分をまた取りに・・』
そうか。そういや何冊か置いてきた。結局2回でクビか・・・。
しかしショックだな。クビって初めてだ。だがせっかく知り合った
人間達の意味は何なんだ・・。
『当院の閉鎖の事情もあり・・』
「なに?」
僕は間近で用件を聞きなおした。
『当院の閉鎖の事情もあり、医局は近々建て替え工事に移ります・・』
閉鎖。
噂は本当だったのか。
あの活気ある病院が閉鎖。患者の出入りも多くスタッフも充実してるのに・・。
いったい何がいけないんだ?みんな、どうするんだろう・・・。
いてもたってもいられなくなり、夜に官舎を出る決意をした。
「夜の9時か・・」
この田舎では就寝時間だ。僕の車もエンジンふかし禁止令が出てはいるものの。
「かまうか!バンバンババン!」
急アクセルで官舎を飛び出し、バイト先医局へ向かった。
品川君がプップー、とでかい外車で現れた。
「うわ?それ何?」
「リースですよ。リース!」
彼は左の窓から顔を乗り出した。
「金持ちなんだな・・!」
「そんなことないっす!でね先生!」
「は?」
「新人ナースの件ですが・・」
「ああ。僕がかけあえばいいんだろ?」
「いえ。親に金、渡しましてね」
「なぬ?」
「それで済みました」
こいつ、何を・・・?
「品川君。いったいいくら・・」
「それは・・まあ」
「金で解決するとはねえ・・」
「金で解決しな・・・ことなど」
「え?なんだって?」
「じゃ!」
車は地を這いつくばりながら、彼方へ消えていった。
官舎に入る前、後ろからチリンチリンと自転車の音がした。
「暑いねえ」
駄菓子屋のおばさんだ。
「スーパーで卵が10円!10個でやで!」
「あ、そう」
「あひとり様1パックまで!」
「ふうん・・」
おばさんの自転車のカゴに何パックもある。
「あ、これかい。レジを何度も往復したんでね」
「こんなに食べれるの?」
「いや。売ろうと思って」
「な・・?」
「だってあんた、うさぎさん!こんな何パックも置いておけないよ!」
「僕は買わないよ!」
「1個・・120円」
「だから買わない!」
「栄養が不足しとろうが!」
「そりゃラーメンばっかりだけど・・!」
「ラーメンにでもそら、1個卵落としたら味が良くなるじゃろ?」
チキンラーメンで、よくやってた。
「じゃ・・」
官舎に入って、いったんため息。ため息をつく癖は良くない。
よくないのは分かってるんだが、30を過ぎていろいろこんな余計な癖が出てくる。
また手紙が来ている。松田先生だ。またリクルートか。
『 大学へ戻られるかもしれないという噂をお聞きしました』
早いな。情報が。
『 ダメもとでいいですので、一度うちの病院へ面接にお越しください。
今後のコネつくりのためにも。将来は関連病院を目指しています 』
会っておく価値はあるな。大阪では医者に限らず、就職面ではコネがものをいう。
役所・会社はもちろん、医療系でも薬剤師・MRでも親のコネなどの影響がモロ反映する。
だいいち、<○○募集>と広告に出た時点で、それはもうその時点でア〜マ〜リルガ〜
なのだ。
なので、チャンスだと思ったら飛びついておく必要がある。選択の機会が多いほどいいという意味だ。
僕は思い切って彼に電話した。
「もしもし!松田!」
「お・・お久しぶりです」
「え?だれ?もしもーし!」
「ユウキです」
「あ・・!」
無愛想な声がいきなり朗らかになった。
「ユウキ!生きてるか?」
「お久しぶりです。松田先生」
「おーおー!手紙読んだか?」
「ええ。先生の病院、凄いですね」
「あ、もう退職なんだよ」
彼は開業のため退職を控えていた。
「松田先生。ご存知のように、僕は大学へ・・」
「戻るな戻るな!あんなとこ!」
「まあ少しは我慢していこうかとも」
「俺のこの病院に来いって!絶対楽しいから!」
「うーん。医局を辞めるっていうのは、僕には・・」
「そんなの簡単だ!手続きもほとんど要らん」
「一度そちらの病院へ・・」
「おう、そうか!」
数日後、病院ではなくレストランで会う約束に。
留守電が珍しく点灯している。メッセージが1件。
『イナカ救急病院です・・』
横になっていた僕はガバッと飛び起きた。事務員の声だ。
『忘れ物や文献など、先生の分をまた取りに・・』
そうか。そういや何冊か置いてきた。結局2回でクビか・・・。
しかしショックだな。クビって初めてだ。だがせっかく知り合った
人間達の意味は何なんだ・・。
『当院の閉鎖の事情もあり・・』
「なに?」
僕は間近で用件を聞きなおした。
『当院の閉鎖の事情もあり、医局は近々建て替え工事に移ります・・』
閉鎖。
噂は本当だったのか。
あの活気ある病院が閉鎖。患者の出入りも多くスタッフも充実してるのに・・。
いったい何がいけないんだ?みんな、どうするんだろう・・・。
いてもたってもいられなくなり、夜に官舎を出る決意をした。
「夜の9時か・・」
この田舎では就寝時間だ。僕の車もエンジンふかし禁止令が出てはいるものの。
「かまうか!バンバンババン!」
急アクセルで官舎を飛び出し、バイト先医局へ向かった。
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