プライベート・ナイやん 4-17 『女か・・・!』
2005年5月17日彼は物凄いスピードで追っかけてきた。
すぐに捕まった。
「私が転勤して、ユウキ先生が来なければ・・!」
「放せ!放せ!」
「私は友人が1人もいだくだづぅ!」
泣き声まじりの声に驚き、暴れるのをやめた。
「品・・・」
「ユウキ先生。女が理由で大学に戻るなど」
「・・・・・」
「それこそ彼らの思うツボですよ」
「僕が大学へ戻るメリットは、実はそれしかないんだ」
「だって先生・・・大学にその彼女はおいでで?」
「グッチ・・・川口はたしかまだ・・」
「聞いてみます」
彼はその場で携帯をプッシュした。
「胸部内科の医局をお願いします」
「おい!」
「シッシッ!」
「・・・・」
「医局秘書さんですか。姉をお願いしたいのですが・・・
ええ。急用でして。名前は川口」
こいつ。嘘つきもいいとこだな。だが巧妙だ。
「・・・そうだったんですか。ええ。音信不通に近かったもので。
いやいや、かまいません」
彼は電話を切った。
「わざとらしい電話しやがって」
「川口先生は大学にはいない」
「そうか。でも関連病院だろ?」
「だとしてもしばらくは・・」
「それでもいいんだよ。皮一枚でつながってれば」
彼は頭を抱えていた。
「先生。女性ならいくらでも紹介を」
「なんだよ。いきなりそうきたか?」
「スッチーとかモデルとか知ってますよ」
「モデル?プラモデルか?」
「21歳のモデルとかいますよ」
「百貫デブかよ」
「それが、ムチャ可愛いんですって」
「そういう奴はヤリまくってんだって」
「先生の<彼女>はどうなんですか!」
「うるせこの!」
僕は彼の額をパーでパシーン、と叩いた。
「お前なんかに、誰がついていくか!」
僕はそのまま病棟へ向かった。
病棟で5分で用を済ます。ハマさんも落ち着いている。
ただ最近肺炎が悪化して、リザーバーマスクの患者がいる。
喀痰から多剤耐性の緑膿菌が出ている。
この患者は先日、他院から転院してきた。
<リハビリ転院>のはずが、入院時いきなり肺炎と判明。
しかも出た菌がこれだ。
お荷物状態で送ってきたに違いない。こういう偽情報でもって
患者を送ってくる病院のなんて多いことか。
「感受性のある抗生剤は・・」
3剤くらいしかない。そのうち1剤を選ぶ。
グロブリン製剤は副院長の許可が下りなかった。
コストの問題だ。
病棟を出て外来へ散歩。事務室にはメガネ事務長だけ。
「品川くんは?」
「ああ。彼女、屋上ですよ」
「何が彼女だよ。スカタン!」
屋上で彼はタバコを吸っていた。景色を眺めている。
「すまなんだな。さっきは・・」
「?」
彼は振り向いた。
「いえ。自分がどうかしていて」
「僕もだ。もうわけがわからん」
「・・・・・」
「まっとうな理由がなければ、人生は選択できないのか?」
「・・・・・」
「本当の理由というのは、後からついてくるものではないのか?
決断には時間がなさすぎる」
「ユウキ先生は、医者になる決断はいつ?」
「僕か。高校時代、そんなこと考える暇などなかったよ」
「時間がなかったわけですか・・・」
「大人の世界も知らなくて、どうやってガキが職を選べるんだよ!」
「でも先生は、選択したわけで」
「尊敬されそうだったから。自分を変えれると思ったから。動機はそんなもんだ」
彼は少し機嫌を取り戻してきた。
「ははは・・・くくく。いいこと言うなあ」
「本音だよ。いいだろ?」
「私はね」
「その、<ワタシ>ってのやめてくれないか?」
「はいはい。自分は幼少から貧乏でね」
「・・・・・」
「大人の現実を見せびらかせながら生きてきた」
「大変だったな」
「金への執着は人一倍強いです」
「自慢かよ?」
「ですが、こうして腹を割って話せる仲間がいたものかどうか。結局は、
我先に自分の利益を追求する奴ばかり」
「大学にも多いよ」
「信じた人間にも裏切られ・・」
「悲惨だな。でも僕もそうかな?」
彼は涙を拭き、タバコを捨てた。
「裏切られた者どうし、お互い頑張りましょう!」
「なんかヘンだぞ!言い方!」
だが僕も彼を憎めなかった。
「品川くん。だがもうあと2日くらい、くれ」
「?まだ何か気になることが・・」
「ある。心の整理だよ。言っとくが、ジェ・・・女とは一切関係ない」
「・・・・・」
「これっぽっちもな!」
実は紛れもなく<女>だった。
ジェニー・・・・。
すぐに捕まった。
「私が転勤して、ユウキ先生が来なければ・・!」
「放せ!放せ!」
「私は友人が1人もいだくだづぅ!」
泣き声まじりの声に驚き、暴れるのをやめた。
「品・・・」
「ユウキ先生。女が理由で大学に戻るなど」
「・・・・・」
「それこそ彼らの思うツボですよ」
「僕が大学へ戻るメリットは、実はそれしかないんだ」
「だって先生・・・大学にその彼女はおいでで?」
「グッチ・・・川口はたしかまだ・・」
「聞いてみます」
彼はその場で携帯をプッシュした。
「胸部内科の医局をお願いします」
「おい!」
「シッシッ!」
「・・・・」
「医局秘書さんですか。姉をお願いしたいのですが・・・
ええ。急用でして。名前は川口」
こいつ。嘘つきもいいとこだな。だが巧妙だ。
「・・・そうだったんですか。ええ。音信不通に近かったもので。
いやいや、かまいません」
彼は電話を切った。
「わざとらしい電話しやがって」
「川口先生は大学にはいない」
「そうか。でも関連病院だろ?」
「だとしてもしばらくは・・」
「それでもいいんだよ。皮一枚でつながってれば」
彼は頭を抱えていた。
「先生。女性ならいくらでも紹介を」
「なんだよ。いきなりそうきたか?」
「スッチーとかモデルとか知ってますよ」
「モデル?プラモデルか?」
「21歳のモデルとかいますよ」
「百貫デブかよ」
「それが、ムチャ可愛いんですって」
「そういう奴はヤリまくってんだって」
「先生の<彼女>はどうなんですか!」
「うるせこの!」
僕は彼の額をパーでパシーン、と叩いた。
「お前なんかに、誰がついていくか!」
僕はそのまま病棟へ向かった。
病棟で5分で用を済ます。ハマさんも落ち着いている。
ただ最近肺炎が悪化して、リザーバーマスクの患者がいる。
喀痰から多剤耐性の緑膿菌が出ている。
この患者は先日、他院から転院してきた。
<リハビリ転院>のはずが、入院時いきなり肺炎と判明。
しかも出た菌がこれだ。
お荷物状態で送ってきたに違いない。こういう偽情報でもって
患者を送ってくる病院のなんて多いことか。
「感受性のある抗生剤は・・」
3剤くらいしかない。そのうち1剤を選ぶ。
グロブリン製剤は副院長の許可が下りなかった。
コストの問題だ。
病棟を出て外来へ散歩。事務室にはメガネ事務長だけ。
「品川くんは?」
「ああ。彼女、屋上ですよ」
「何が彼女だよ。スカタン!」
屋上で彼はタバコを吸っていた。景色を眺めている。
「すまなんだな。さっきは・・」
「?」
彼は振り向いた。
「いえ。自分がどうかしていて」
「僕もだ。もうわけがわからん」
「・・・・・」
「まっとうな理由がなければ、人生は選択できないのか?」
「・・・・・」
「本当の理由というのは、後からついてくるものではないのか?
決断には時間がなさすぎる」
「ユウキ先生は、医者になる決断はいつ?」
「僕か。高校時代、そんなこと考える暇などなかったよ」
「時間がなかったわけですか・・・」
「大人の世界も知らなくて、どうやってガキが職を選べるんだよ!」
「でも先生は、選択したわけで」
「尊敬されそうだったから。自分を変えれると思ったから。動機はそんなもんだ」
彼は少し機嫌を取り戻してきた。
「ははは・・・くくく。いいこと言うなあ」
「本音だよ。いいだろ?」
「私はね」
「その、<ワタシ>ってのやめてくれないか?」
「はいはい。自分は幼少から貧乏でね」
「・・・・・」
「大人の現実を見せびらかせながら生きてきた」
「大変だったな」
「金への執着は人一倍強いです」
「自慢かよ?」
「ですが、こうして腹を割って話せる仲間がいたものかどうか。結局は、
我先に自分の利益を追求する奴ばかり」
「大学にも多いよ」
「信じた人間にも裏切られ・・」
「悲惨だな。でも僕もそうかな?」
彼は涙を拭き、タバコを捨てた。
「裏切られた者どうし、お互い頑張りましょう!」
「なんかヘンだぞ!言い方!」
だが僕も彼を憎めなかった。
「品川くん。だがもうあと2日くらい、くれ」
「?まだ何か気になることが・・」
「ある。心の整理だよ。言っとくが、ジェ・・・女とは一切関係ない」
「・・・・・」
「これっぽっちもな!」
実は紛れもなく<女>だった。
ジェニー・・・・。
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