プライベート・ナイやん 5-1 ANEURYSM
2005年5月20日目開けると、天井が映った。
何があった・・?そうだ。僕は倒れて、それで・・。
「いたたた・・」
鼻が痛い。血は固まってるが・・喉にかなりたまってる。血が。
「ごろごろごろ!」
うがいするが、いつまでたっても赤い。
蛇口の音で赤ん坊が起きたらしく、すすり泣きが聞こえる。
「はいはい!行くよ!」
赤ん坊は部屋の真ん中のふとんからすでに離れて、壁に接して横たわっていた。
手足をバタバタさせ、少しもがきぎみ。
「よいしょっと・・!おう!」
「キィッ」
よかった。機嫌はいいようだ。赤ん坊は機嫌が第一だ。
今頃、病院ではあれこれ悪戦苦闘してるんだろうな。
僕だけ休んでるみたいで、なんだか気がひける。
院長、動脈瘤を持ってたのか・・。
2階にある院長の部屋の蔵書を1冊、お借りする。
「大動脈瘤とは何だ?ユウキ!」
僕は鬼軍曹になったつもりで自分に問いかけた。
「大動脈が瘤(こぶ)になったものだろ?」
あとは本に目を通した。
『大動脈瘤・・・大動脈の嚢状(動脈の一端がタンコブみたいに膨らむ)または紡錘状(全周性に膨らむ)の局所的拡大。
○ 大動脈瘤の8割は腹部に生じ、ほとんどが動脈硬化性である。
・・・ 胸部の大動脈瘤は検診の胸部レントゲンがきっかけで見つかることが多い。それに対して腹部の動脈瘤が腹部レントゲンで見つかることはあまりない。腹部の拍動性腫瘤が重要だ。患者自身が気づいてやってくることがある。腹部エコーのスクリーニングも大事だな。
○ 切迫破裂状態にならない限り無症状か、あっても軽微なことが多い。
・・・ それだけに怖いのだ。この病気は。
○ 好発年齢は60歳以上。男>女。
○ 瘤径4センチ以上の場合に臨床的意味を持ってくるので、この時点で
<大動脈瘤>と表現される。
・・・ 恥ずかしいが、知らなかった。けど意外と知られていない。
○ 腹部はほとんどが動脈硬化性。まれに大動脈炎、梅毒、マルファン症候群、ベーチェット病。
・・・ 動脈硬化のリスクは喫煙、高血圧や高脂血症などだ。年齢もそうだがこれは仕方ない。
○ 手術適応については、形が嚢状(突き出たタンコブ)か紡錘状(均一の膨らみ)かで異なる。ただし実際の手術適応は各施設で異なるものと考えたほうがいい。
・ 嚢状 ・・ 拡大傾向があるのなら、サイズに関係なく手術適応。
・ 紡錘状 ・・ 胸部なら6センチ以上、腹部なら5センチ以上。
<今日はロックで腹ごしらえ>
<コネリー復帰は(ザ・)ロックで勝負!>
いずれも苦しい。
○ 嚢状は紡錘状に比べて破裂しやすい。
・・・ このためサイズうんぬんの話ではない。
○ 高血圧ガイドラインでは、140/85mmHg以下を推奨。
・・・ あくまでも<推奨>。血圧コントロール自体が実際に動脈瘤の増大・破裂を防いだというデータが存在しないから、こういう表現になってしまうのだ。しかし高血圧が瘤を拡大させるのは明らかだ。
』
久しぶりに勉強した。
だが、書物を読んでいるときの関心度はこれまでと違う。恥ずかしい話だが、これまでは本を読んだりして赤線引くことだったのが、こうして実戦的になるにつれてペンが止み、食い入るように必要箇所だけ読んでいる。本を読んでいるというナルシスト的な
自己満足に対する「感心」、から興味ある「関心」へ。
こうなると同じ文章でも理解度が断然と異なる。
そうか。僕はさらに気づいた。
何の技術を学ぶとか、何を覚えて帰るとか、それがすべてではない。
どういった心がけで望むべきか。その<心>を学ぶべきなのだ。
例えばこの赤ん坊は・・・
僕は当直日誌に目をやった。
ここ最近、機嫌がどうも悪い。特に夕方。寝るのは夜中。
昼間にミルクの回数が多く、大量に発汗している。
機嫌が悪いのは・・・不快だからだ。
「早めにフロに入れよう!」
昼の交代も来ないようなので、今日はいつもの7時より早めにフロに入れることにした。
「今、4時か。よし」
ビデオガイダンスの矢倉先生に従い、フロにお湯をため始めた。
フロに入るって事は着替えが要る・・。
自然と思考回路が進むようになり、僕はタンスの引き出しをあけた。
「タオルだろ。着替えのオムツも要る・・」
ビデオの説明と組み合わせ、効率よく準備ができた。
「さあ!かかってこい!」
何があった・・?そうだ。僕は倒れて、それで・・。
「いたたた・・」
鼻が痛い。血は固まってるが・・喉にかなりたまってる。血が。
「ごろごろごろ!」
うがいするが、いつまでたっても赤い。
蛇口の音で赤ん坊が起きたらしく、すすり泣きが聞こえる。
「はいはい!行くよ!」
赤ん坊は部屋の真ん中のふとんからすでに離れて、壁に接して横たわっていた。
手足をバタバタさせ、少しもがきぎみ。
「よいしょっと・・!おう!」
「キィッ」
よかった。機嫌はいいようだ。赤ん坊は機嫌が第一だ。
今頃、病院ではあれこれ悪戦苦闘してるんだろうな。
僕だけ休んでるみたいで、なんだか気がひける。
院長、動脈瘤を持ってたのか・・。
2階にある院長の部屋の蔵書を1冊、お借りする。
「大動脈瘤とは何だ?ユウキ!」
僕は鬼軍曹になったつもりで自分に問いかけた。
「大動脈が瘤(こぶ)になったものだろ?」
あとは本に目を通した。
『大動脈瘤・・・大動脈の嚢状(動脈の一端がタンコブみたいに膨らむ)または紡錘状(全周性に膨らむ)の局所的拡大。
○ 大動脈瘤の8割は腹部に生じ、ほとんどが動脈硬化性である。
・・・ 胸部の大動脈瘤は検診の胸部レントゲンがきっかけで見つかることが多い。それに対して腹部の動脈瘤が腹部レントゲンで見つかることはあまりない。腹部の拍動性腫瘤が重要だ。患者自身が気づいてやってくることがある。腹部エコーのスクリーニングも大事だな。
○ 切迫破裂状態にならない限り無症状か、あっても軽微なことが多い。
・・・ それだけに怖いのだ。この病気は。
○ 好発年齢は60歳以上。男>女。
○ 瘤径4センチ以上の場合に臨床的意味を持ってくるので、この時点で
<大動脈瘤>と表現される。
・・・ 恥ずかしいが、知らなかった。けど意外と知られていない。
○ 腹部はほとんどが動脈硬化性。まれに大動脈炎、梅毒、マルファン症候群、ベーチェット病。
・・・ 動脈硬化のリスクは喫煙、高血圧や高脂血症などだ。年齢もそうだがこれは仕方ない。
○ 手術適応については、形が嚢状(突き出たタンコブ)か紡錘状(均一の膨らみ)かで異なる。ただし実際の手術適応は各施設で異なるものと考えたほうがいい。
・ 嚢状 ・・ 拡大傾向があるのなら、サイズに関係なく手術適応。
・ 紡錘状 ・・ 胸部なら6センチ以上、腹部なら5センチ以上。
<今日はロックで腹ごしらえ>
<コネリー復帰は(ザ・)ロックで勝負!>
いずれも苦しい。
○ 嚢状は紡錘状に比べて破裂しやすい。
・・・ このためサイズうんぬんの話ではない。
○ 高血圧ガイドラインでは、140/85mmHg以下を推奨。
・・・ あくまでも<推奨>。血圧コントロール自体が実際に動脈瘤の増大・破裂を防いだというデータが存在しないから、こういう表現になってしまうのだ。しかし高血圧が瘤を拡大させるのは明らかだ。
』
久しぶりに勉強した。
だが、書物を読んでいるときの関心度はこれまでと違う。恥ずかしい話だが、これまでは本を読んだりして赤線引くことだったのが、こうして実戦的になるにつれてペンが止み、食い入るように必要箇所だけ読んでいる。本を読んでいるというナルシスト的な
自己満足に対する「感心」、から興味ある「関心」へ。
こうなると同じ文章でも理解度が断然と異なる。
そうか。僕はさらに気づいた。
何の技術を学ぶとか、何を覚えて帰るとか、それがすべてではない。
どういった心がけで望むべきか。その<心>を学ぶべきなのだ。
例えばこの赤ん坊は・・・
僕は当直日誌に目をやった。
ここ最近、機嫌がどうも悪い。特に夕方。寝るのは夜中。
昼間にミルクの回数が多く、大量に発汗している。
機嫌が悪いのは・・・不快だからだ。
「早めにフロに入れよう!」
昼の交代も来ないようなので、今日はいつもの7時より早めにフロに入れることにした。
「今、4時か。よし」
ビデオガイダンスの矢倉先生に従い、フロにお湯をため始めた。
フロに入るって事は着替えが要る・・。
自然と思考回路が進むようになり、僕はタンスの引き出しをあけた。
「タオルだろ。着替えのオムツも要る・・」
ビデオの説明と組み合わせ、効率よく準備ができた。
「さあ!かかってこい!」
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