プライベート・ナイやん 5-16 停留所
2005年5月31日車は常勤先で事務の品川君を乗せたあと、また同じ道を戻り救急病院へ向けて走らせていた。
彼は助手席に座ろうとしたが、僕の意向で後ろに座らせた。
「脚本」では名古屋で降ろすことになっている。
「ユウキ先生。ここから静岡だと高速で4時間ですかね」
「そんなにかかるのか?」
「名古屋を通りますからね」
「混んだら最悪だな・・」
「しかし。ホントに僕がついてきて、いいんですかね?」
「ジェニーは別にいいと言ってた」
「事務員でもですか・・」
車はトンネルにさしかかった。
「あのトンネルの前で、この前死にそうになったよ」
「それは残念」
「なに?」
「うそうそ。スリップしたんですか?」
「今朝、この車のタイヤを見たらビックリ。ワイヤーが何本もむき出しに」
「擦り減らししすぎですよそれ。危ない」
「タイヤ交換は金がかかるしな」
「怖い。今日はやっぱりドライブやめましょうよ!」
だが、そうはいかない。
「ダメだ。もう日がない」
「事故、起こしますよ!」
「安全運転でいく!主治医の方針に従え!」
車はトンネルを抜けた。村から町に入る。
「品川くん。じゃ、名古屋あたりで頼むよ」
「ええ。腹痛か何か起こしますって」
「ああ・・・」
僕は少し頭を抱えた。
「どうされたんで?」
「なんでも・・」
PL顆粒を内服したせいか、少しボーッとしてきた。
ロキソニンのおかげで咽頭痛・熱は軽減している。
抗生剤が効いてくれればいいが。ここぞというときの
クラビット4錠分2処方だ。医者はこっそり、よくする。
「すまんが、自販機を」
車を自販機に寄せた。
彼はタイヤの周囲を見回していた。
「こりゃ、ひどい。私はイヤですよ。こんな車」
「大丈夫。路面も濡れてないし、天気予報は快晴だ」
「最近の天気予報って信用できないですよ」
僕はポカリをグイグイと飲み干した。
「先生。よっぽど喉が渇いていたんですね」
「ほっとけ!」
車はまた出た。
「ユウキ先生。待ち合わせはたしか・・」
「救急病院を通り過ぎた、あそこのバスの停留所だ」
バスの停留所に停車。
パワーウインドウを開けるとセミの鳴き声。周りはビニールハウスなどの田園地帯だ。
「ユウキ先生。まだあと20分もありますよ」
「いいんだよ。この待ってる時間がなんともいえんのだ」
「フェチですか?それ」
「僕は研修医になってから、あまりいい思い出がないんだ」
「いい思いはしたでしょうに」
「お前といっしょにするなよ!」
僕は近くの小屋のそばの小川で立ちションした。
「ユウキ先生。環境破壊ですよ」
「この川の向こうは海だよ。海に返してるだけ」
「そうだ。真田病院の件ですがね。次の職場の」
「うん?」
「これがスタッフ名簿です。目を通されますか」
スタッフの名前が書いた名簿だ。
「・・・どうせ知ってる奴はいないよ」
「先生の1つ下に、胸部内科のドクターがいるんだよ」
「またタメ口かよ。突然・・不自然だよ」
「このトシキというドクターが、ゆくゆく実権を握ると思う。ユウキ先生はそれでもいいですかね・・」
「年下の配下でも、俺はいいよ。でも奴隷にはならんぞ」
「ユウキ先生がそこで実績を上げれば、その先生の首を
取れると思うし」
「・・・お前。ホントに次期事務長かよ?」
プア−ン、と大型トラックが車の横をかすめると・・・。
その向こうに彼女が見えた。僕らは通りを挟んで見ていた。
上は黄色いシャツ。下は黒いジーンズ。やはり彼女はヒロスエライク・ストライクだ。
「あれだ。品ちゃん」
「なっ?メチャクチャ可愛いじゃないか!ジャイ子を想像してたのに」
「ヒロスエ似だといったろ!」
「なんか腹立つ!」
彼は再び後部座席に乗り込んだ。
僕は運転席でエンジンをかけた。
「さてと。ダッシュダッシュ!バンババンだ!」
「ひぃーっ。いい女だなあ!」
品川君はうらめしそうに目を覆った。
「いいですか?ここ」
彼女は後部座席の方から入ろうとした。
「ええ!どうぞ!わたくしめの横に」
品川君は後部のドアを開けようとした。
「ジェニー先生はここだよ。前!」
僕は無理やり、助手席に座らせようとした。
まるで大学生だ。
「え?いいんですか?では・・」
彼女は僕の真横に座った。香水の匂いがした。
どこかで嗅いだような、胸が苦しくなるような・・。
すると、後部座席が再びガチャ、と開けられた。
「ふ、ふ・・・」
「え?だれ?」
品川くんが驚いたのも無理はない。僕もだ。
アパム先生だ。なぜこいつまで。
「弘田先生が、ついていきたいって。それで」
「ああそう。うん。問題ない」
僕は顔がひきつった。
「しし、しーとべる、ととは・・」
彼はあちこちをまさぐった。
正直。コイツには、来て欲しくなかった。
「さ!行こうか!ダッシュダッシュで!」
僕はだるい頭を持ち上げ、車を前進させた。
彼は助手席に座ろうとしたが、僕の意向で後ろに座らせた。
「脚本」では名古屋で降ろすことになっている。
「ユウキ先生。ここから静岡だと高速で4時間ですかね」
「そんなにかかるのか?」
「名古屋を通りますからね」
「混んだら最悪だな・・」
「しかし。ホントに僕がついてきて、いいんですかね?」
「ジェニーは別にいいと言ってた」
「事務員でもですか・・」
車はトンネルにさしかかった。
「あのトンネルの前で、この前死にそうになったよ」
「それは残念」
「なに?」
「うそうそ。スリップしたんですか?」
「今朝、この車のタイヤを見たらビックリ。ワイヤーが何本もむき出しに」
「擦り減らししすぎですよそれ。危ない」
「タイヤ交換は金がかかるしな」
「怖い。今日はやっぱりドライブやめましょうよ!」
だが、そうはいかない。
「ダメだ。もう日がない」
「事故、起こしますよ!」
「安全運転でいく!主治医の方針に従え!」
車はトンネルを抜けた。村から町に入る。
「品川くん。じゃ、名古屋あたりで頼むよ」
「ええ。腹痛か何か起こしますって」
「ああ・・・」
僕は少し頭を抱えた。
「どうされたんで?」
「なんでも・・」
PL顆粒を内服したせいか、少しボーッとしてきた。
ロキソニンのおかげで咽頭痛・熱は軽減している。
抗生剤が効いてくれればいいが。ここぞというときの
クラビット4錠分2処方だ。医者はこっそり、よくする。
「すまんが、自販機を」
車を自販機に寄せた。
彼はタイヤの周囲を見回していた。
「こりゃ、ひどい。私はイヤですよ。こんな車」
「大丈夫。路面も濡れてないし、天気予報は快晴だ」
「最近の天気予報って信用できないですよ」
僕はポカリをグイグイと飲み干した。
「先生。よっぽど喉が渇いていたんですね」
「ほっとけ!」
車はまた出た。
「ユウキ先生。待ち合わせはたしか・・」
「救急病院を通り過ぎた、あそこのバスの停留所だ」
バスの停留所に停車。
パワーウインドウを開けるとセミの鳴き声。周りはビニールハウスなどの田園地帯だ。
「ユウキ先生。まだあと20分もありますよ」
「いいんだよ。この待ってる時間がなんともいえんのだ」
「フェチですか?それ」
「僕は研修医になってから、あまりいい思い出がないんだ」
「いい思いはしたでしょうに」
「お前といっしょにするなよ!」
僕は近くの小屋のそばの小川で立ちションした。
「ユウキ先生。環境破壊ですよ」
「この川の向こうは海だよ。海に返してるだけ」
「そうだ。真田病院の件ですがね。次の職場の」
「うん?」
「これがスタッフ名簿です。目を通されますか」
スタッフの名前が書いた名簿だ。
「・・・どうせ知ってる奴はいないよ」
「先生の1つ下に、胸部内科のドクターがいるんだよ」
「またタメ口かよ。突然・・不自然だよ」
「このトシキというドクターが、ゆくゆく実権を握ると思う。ユウキ先生はそれでもいいですかね・・」
「年下の配下でも、俺はいいよ。でも奴隷にはならんぞ」
「ユウキ先生がそこで実績を上げれば、その先生の首を
取れると思うし」
「・・・お前。ホントに次期事務長かよ?」
プア−ン、と大型トラックが車の横をかすめると・・・。
その向こうに彼女が見えた。僕らは通りを挟んで見ていた。
上は黄色いシャツ。下は黒いジーンズ。やはり彼女はヒロスエライク・ストライクだ。
「あれだ。品ちゃん」
「なっ?メチャクチャ可愛いじゃないか!ジャイ子を想像してたのに」
「ヒロスエ似だといったろ!」
「なんか腹立つ!」
彼は再び後部座席に乗り込んだ。
僕は運転席でエンジンをかけた。
「さてと。ダッシュダッシュ!バンババンだ!」
「ひぃーっ。いい女だなあ!」
品川君はうらめしそうに目を覆った。
「いいですか?ここ」
彼女は後部座席の方から入ろうとした。
「ええ!どうぞ!わたくしめの横に」
品川君は後部のドアを開けようとした。
「ジェニー先生はここだよ。前!」
僕は無理やり、助手席に座らせようとした。
まるで大学生だ。
「え?いいんですか?では・・」
彼女は僕の真横に座った。香水の匂いがした。
どこかで嗅いだような、胸が苦しくなるような・・。
すると、後部座席が再びガチャ、と開けられた。
「ふ、ふ・・・」
「え?だれ?」
品川くんが驚いたのも無理はない。僕もだ。
アパム先生だ。なぜこいつまで。
「弘田先生が、ついていきたいって。それで」
「ああそう。うん。問題ない」
僕は顔がひきつった。
「しし、しーとべる、ととは・・」
彼はあちこちをまさぐった。
正直。コイツには、来て欲しくなかった。
「さ!行こうか!ダッシュダッシュで!」
僕はだるい頭を持ち上げ、車を前進させた。
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