「ここだ!」
やっとこさ、国道1号から離れ、車は右折した。
「ここをまっすぐ走る。そしたら着く」
「あと何分くらいで着くんですか?」
彼女が無神経に尋ねる。
「そんな1時間もはかからないよ・・」
僕自身、こんな無理をしてここまで来る理由が分からなかった。
ただ意地をはっていたとしか言いようがない。
時計はもう昼の3時を指していた。
アパム先生は寝ている。昨日は徹夜だったらしい。
彼は横にグラグラしだし、彼女の肩に寄りかかっていた。
「んー・・・ね。ユウキ先生」
「ん?なに?」
「あたしから、話したいことが。言わないと」
「ええっ?」
ま、まさか・・。
「あとでいう・・」
車は時速80km/hで走っている。路面は濡れていない。
だが走行が不安定だ。時々横に流れるというか・・。
違う。僕の体が揺れているんだ。
とうとう我慢できず、咳が出だした。
「く!ごふごふ!」
「どうしたんですか?」
「ちょっと調子が・・」
彼のときのように、同情してくれるだろうか。
「ユウキ先生も風邪?」
「そのようだな」
「医者のクセに!」
予想に反し、きつい言葉だった。
「あたしと弘田先生は大丈夫かな・・」
なおさら、つらい。
「ここだよ」
車は堤防の手前で停まった・・と言いたいところだが、ちょうどその堤防部分は切り崩され、上り下りする狭い土道も、幅8メートルほどのアスファルトに様変わりしていた。
5年前の跡形もなかった。
下がアスファルトなので、安心して車で乗り越えた。
堤防の頂上付近を過ぎると、眼前にいきなり太平洋の水平線が
飛び込んできた。
「うわあ!」
僕ら2人は思わず声を上げた。アパム先生は寝ている。
下へ降りると、途中でアスファルトは終わっていた。平らな砂浜の上で車は停まった。
波が2メートルほど先のところに打ち上げられている。
「すごいキレイ。来てよかったですね」
「あ、ああ・・」
空は快晴で、海水浴日和な光景だった。とても5年前のことは思い出せない。
ここは全く別の世界だった。
「夜は怖そう。でもこんなとこ、1人でよく来れましたね」
「孤独はつらくなかったな。当時は」
「今は?」
死ぬほど、つらい。
窓を開けると、ザザーと波しぶきが轟いた。砂埃も多少、飛んでいる。
彼女は車を降りて、大きな岩に石で書き始めた。
「それ、昔よくやってたなあ」
僕はどこか懐かしく思った。
「あたしの地元も海なので。でも日本海」
「どこ?」
「実は金沢なんです。言ってなかったですね」
「じゃあ太平洋って久しぶり?」
「そうなんです!よかった!」
彼女の笑顔で、すべて報われたような気がする。
「♪見せたかった・・・この海を」
思わず声が出た。
「え?あ。それって」
「(2人同時)♪なんて、泣かせるセリフだね〜・・・」
ア・イ・シ・テ・ル・・・。
※ ふろく
脳卒中ガイドライン2004より要約+自分なり解釈
□ 脳浮腫対策
・ グリセロール・・脳梗塞急性期に使用するべきもの。腎障害・DMのある患者には注意。
・ マンニトールもグリセオールに並んで教科書的に書かれてはいるが、これが効くという
根拠はあまりない。使っても文句は言われないが、病態が良くなったとしても、これがどれだけ
効いたかは分からないままだ。
・ 従って基本的にはグリセロールを基本で使用し、マンニトールは浮腫がひどくてほかに手段が
ない場合に考慮されるべき。
□ 血栓溶解療法
・ 未だに日本で保険適応が通ってないt-PAの投与は、それなりに経験のある施設で行われるべき。
適応基準としては発症3時間以内でCTにてearly signなるものを見出せるかどうか。だからショボいCTのところではすべきでないですね。
・ 伝統あるウロキナーゼの6万単位7日間投与、というのは量的にまず足りないらしい。しかし保険適応のことがあって仕方なくこの量でいかざるをえないのが現状。
□ 抗凝固療法
・ これも伝統ある薬、ヘパリン。発症48時間以内の脳梗塞で使用するのが常だが、根拠が十分でない。従って効いているという保証がない。
・ 出血の副作用が少ない低分子ヘパリンも同様。
・ アルガトロバン(選択的トロンビン阻害剤)は発症48時間以内で最大径1.5cm以上(心原性塞栓は除く)のアテローム脳梗塞が好適応。これは覚えておく必要がある。
□ 抗血小板療法
・ オザグレル160mg/dayの2週間投与は急性期脳梗塞(心原性塞 栓には禁忌!)に対して投与すべき。ただし発症5日以内であ ることを確認すべき。それがどうし〜た、ぼくキサンボン。
・ アスピリン160-300mg/dayの内服は発症48時間以内の脳梗塞の 治療として行うべき。
□ 脳保護薬(エダラボン)
・ 脳梗塞(血栓でも塞栓でも)急性期に投与すべき。ただし以前にイエローカード(副作用情報:腎不全)が出たこともあるので使用は慎重に。それがどうし〜た、ぼくエダラボン。
□ ステロイド
・ 古い医者は使いたがる傾向があるように思うが、実際これによる効果は証明されておらず、副作用の問題からも進められない。
□ 低体温療法
・ 脳保護効果ということで話題にはなったが、脳梗塞への有用性が証明されているわけではない。従って効くという保証はない。
やっとこさ、国道1号から離れ、車は右折した。
「ここをまっすぐ走る。そしたら着く」
「あと何分くらいで着くんですか?」
彼女が無神経に尋ねる。
「そんな1時間もはかからないよ・・」
僕自身、こんな無理をしてここまで来る理由が分からなかった。
ただ意地をはっていたとしか言いようがない。
時計はもう昼の3時を指していた。
アパム先生は寝ている。昨日は徹夜だったらしい。
彼は横にグラグラしだし、彼女の肩に寄りかかっていた。
「んー・・・ね。ユウキ先生」
「ん?なに?」
「あたしから、話したいことが。言わないと」
「ええっ?」
ま、まさか・・。
「あとでいう・・」
車は時速80km/hで走っている。路面は濡れていない。
だが走行が不安定だ。時々横に流れるというか・・。
違う。僕の体が揺れているんだ。
とうとう我慢できず、咳が出だした。
「く!ごふごふ!」
「どうしたんですか?」
「ちょっと調子が・・」
彼のときのように、同情してくれるだろうか。
「ユウキ先生も風邪?」
「そのようだな」
「医者のクセに!」
予想に反し、きつい言葉だった。
「あたしと弘田先生は大丈夫かな・・」
なおさら、つらい。
「ここだよ」
車は堤防の手前で停まった・・と言いたいところだが、ちょうどその堤防部分は切り崩され、上り下りする狭い土道も、幅8メートルほどのアスファルトに様変わりしていた。
5年前の跡形もなかった。
下がアスファルトなので、安心して車で乗り越えた。
堤防の頂上付近を過ぎると、眼前にいきなり太平洋の水平線が
飛び込んできた。
「うわあ!」
僕ら2人は思わず声を上げた。アパム先生は寝ている。
下へ降りると、途中でアスファルトは終わっていた。平らな砂浜の上で車は停まった。
波が2メートルほど先のところに打ち上げられている。
「すごいキレイ。来てよかったですね」
「あ、ああ・・」
空は快晴で、海水浴日和な光景だった。とても5年前のことは思い出せない。
ここは全く別の世界だった。
「夜は怖そう。でもこんなとこ、1人でよく来れましたね」
「孤独はつらくなかったな。当時は」
「今は?」
死ぬほど、つらい。
窓を開けると、ザザーと波しぶきが轟いた。砂埃も多少、飛んでいる。
彼女は車を降りて、大きな岩に石で書き始めた。
「それ、昔よくやってたなあ」
僕はどこか懐かしく思った。
「あたしの地元も海なので。でも日本海」
「どこ?」
「実は金沢なんです。言ってなかったですね」
「じゃあ太平洋って久しぶり?」
「そうなんです!よかった!」
彼女の笑顔で、すべて報われたような気がする。
「♪見せたかった・・・この海を」
思わず声が出た。
「え?あ。それって」
「(2人同時)♪なんて、泣かせるセリフだね〜・・・」
ア・イ・シ・テ・ル・・・。
※ ふろく
脳卒中ガイドライン2004より要約+自分なり解釈
□ 脳浮腫対策
・ グリセロール・・脳梗塞急性期に使用するべきもの。腎障害・DMのある患者には注意。
・ マンニトールもグリセオールに並んで教科書的に書かれてはいるが、これが効くという
根拠はあまりない。使っても文句は言われないが、病態が良くなったとしても、これがどれだけ
効いたかは分からないままだ。
・ 従って基本的にはグリセロールを基本で使用し、マンニトールは浮腫がひどくてほかに手段が
ない場合に考慮されるべき。
□ 血栓溶解療法
・ 未だに日本で保険適応が通ってないt-PAの投与は、それなりに経験のある施設で行われるべき。
適応基準としては発症3時間以内でCTにてearly signなるものを見出せるかどうか。だからショボいCTのところではすべきでないですね。
・ 伝統あるウロキナーゼの6万単位7日間投与、というのは量的にまず足りないらしい。しかし保険適応のことがあって仕方なくこの量でいかざるをえないのが現状。
□ 抗凝固療法
・ これも伝統ある薬、ヘパリン。発症48時間以内の脳梗塞で使用するのが常だが、根拠が十分でない。従って効いているという保証がない。
・ 出血の副作用が少ない低分子ヘパリンも同様。
・ アルガトロバン(選択的トロンビン阻害剤)は発症48時間以内で最大径1.5cm以上(心原性塞栓は除く)のアテローム脳梗塞が好適応。これは覚えておく必要がある。
□ 抗血小板療法
・ オザグレル160mg/dayの2週間投与は急性期脳梗塞(心原性塞 栓には禁忌!)に対して投与すべき。ただし発症5日以内であ ることを確認すべき。それがどうし〜た、ぼくキサンボン。
・ アスピリン160-300mg/dayの内服は発症48時間以内の脳梗塞の 治療として行うべき。
□ 脳保護薬(エダラボン)
・ 脳梗塞(血栓でも塞栓でも)急性期に投与すべき。ただし以前にイエローカード(副作用情報:腎不全)が出たこともあるので使用は慎重に。それがどうし〜た、ぼくエダラボン。
□ ステロイド
・ 古い医者は使いたがる傾向があるように思うが、実際これによる効果は証明されておらず、副作用の問題からも進められない。
□ 低体温療法
・ 脳保護効果ということで話題にはなったが、脳梗塞への有用性が証明されているわけではない。従って効くという保証はない。
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