プライベート・ナイやん 6-21 沖田なくとも!
2005年6月13日「胸痛です!3時間前から!」
「こちらは突然の手のしびれ!」
いっせいにレジデントが心電図などの処置にかかった。
手のしびれの患者はかなり痛がっており、色が多少紫っぽい。
「動脈塞栓ではないか?造影とフォガティー準備!わしがやる!」
彼は頭にハチマキを巻き、レジデントら2人を従えて行った。
「もうちょっと、よく診て下さいよ!」
家族が部屋に入りかけている。
胸痛は心電図でST上昇あり。II・III・aVFだ。
「右誘導も!」
僕は指示を出し、他のレジデントにエコーの準備を。
さっき顔が膨らんでいた患者の顔は・・まだそのままだ。
皮下気腫だな。首も太くなっている。触ると、確かに
地面に降りたての表面の雪を触る感じだ。
「外傷が入る!転倒で頭部裂創!」
「こっちも処置台くれ!」
あちこちがパニックになってきた。
中堅ドクターが戻ってくる。
「何やってる?処置台の取り合いか?ハカセ!」
「はい!自分が仕切ります!」
ハカセは白衣の両腕をめくった。
「Y字体型!」
ハカセの一声で、中心に処置台、その周りにベッドが
円形に並べられた。
「ベッドの出入りは俺の許可を!」
彼は事務へ電話した。
「病棟も詰まってきてる!これ以上の受け入れは・・!」
僕は超音波で確認中。
「下壁が動いてない。AMIで間違いない。カテだ!同意を!」
レジデントに任せ、ハカセに問う。
「これ以上、救急入れるのか?」
「そそ、それが。経営者の方針で・・」
「なに?」
「まだまだ来ると!」
僕は弱音を吐きたかったが、まず目の前の患者だ。
中心の処置台・救急カートを数人が出入りを繰り返す。
「フォガティーで、血栓は除去できたの?」
小森が外傷患者を縫合していた。
「鬼軍曹なら、やるだろう!」
僕はわけもない返事をした。
「弘田!鬼軍曹のとこ行って、心カテ準備する旨を伝えてくれ!」
「は・・・・!」
彼は走っていった。
レジデントが血圧を読む。
「血圧170mmHgもあります!降圧剤、使ってますが・・」
「フルでいけ!ニトロールにヘルべっサーに・・」
「徐脈が」
「ごめん!ヘルベッサー中止で!」
僕もてんてこ舞いだった。
「外傷!CT行きます!」
小森が1人でストレッチャーを抱え飛び出した。
ハカセが携帯をオフしていた。
「病棟で急変!静脈瘤患者がショック!」
「誰かいるのか?」
「中堅ドクター1人だそうで!」
「お前行け!」
僕はハカセに促した。
「僕?僕はここの責任者だから」
「今だけだろ?」
「ユウキ先生こそ!」
「俺はカテがあるんだよ!上官命令だ!」
「くそ!」
彼は手袋をぶん投げ、病棟へ。
レジデントが1人ずつ倒れていき、戦力はもう残り少ない。
あれからいったい何時間たったんだ・・・。
救急がまた1名。全身倦怠感。検査にまわし・・連絡あり。
「もしもし?」
「俺だ!」
軍曹。
「搬入OKですか?」
「準備はできた。来い!」
ストレッチャーはカテ室へ。
透視画面は縦横無尽に鬼軍曹が操作中。
「早く着替えろ!」
彼の目は真っ赤だ。
僕は眠気を抑えるため、勢いの強い水で腕・手を洗った。
『指先に集中しろ・・・』
「わかって・・・・はい。わかりました」
再びカテ室へ。消毒も終わり、穿刺も今済んだ。
「では、セカンドで入ります!」
「透視、出す!」
鬼軍曹は右冠動脈を造影。2番で完全閉塞。
「左は?」
左は8番が75%の有意狭窄。
「・・・・・ダイレクトに拡げるぞ!ユウキ!」
「自分が・・・?はい!お願いします!」
鬼軍曹は、一瞬思いやりのある顔に見えた。
ワイヤーをゆっくり病変部へ・・・。
ワイヤーはそこでゆっくり折れ曲がった。
何度かするうち、その先に筋のように造影剤が見えた。
「通った!通ったぞ!ではバルーンを!」
バルーンは病変部位をすりぬけ、拡張準備にかかった。
「軍曹!お願いします!」
「よし!」
軍曹は圧をかけはじめた。
「あ。すんません。今、軍曹と・・」
「ん?<鬼軍曹>よりはマシだ」
「はは・・・・解除!造影する!」
血栓部はバックリと割れたようで、狭窄は半分解除された。
「もう1回!」
「圧、かける!」
「造影!」「測定!」「ISDN!」・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
僕は、病室で目を覚ました。
すさまじい過酷な勤務から、知らない間に開放されたのか・・。
天井には大きな点滴がゆっくり落ちている。
少しずつ、記憶が蘇ってきた。
カテーテルは無事終わり、病棟は満室。僕ら数人の医者が入院してだ。
点滴を自己抜去して、救急室へ。夜中の救急室ではレジデントが数人、床で寝ている。弘田、小森、ハカセの姿もあった。まるで死んでいるようだ。あちこちに点滴や針が散乱している。
「ててて・・」
全身が痛い。しかしどことなく安心したのか、だんだん腹が減ってきた。
するとハカセがむくっと起き上がってきた。
「先輩・・・!ありがとうございました!」
「今日で、終わりだな。もうたくさん!」
「まだアレがありますよ」
「アレ?」
「僕らが敵同士になる前に・・」
「酒を交わす?」
「ええ!」
「こちらは突然の手のしびれ!」
いっせいにレジデントが心電図などの処置にかかった。
手のしびれの患者はかなり痛がっており、色が多少紫っぽい。
「動脈塞栓ではないか?造影とフォガティー準備!わしがやる!」
彼は頭にハチマキを巻き、レジデントら2人を従えて行った。
「もうちょっと、よく診て下さいよ!」
家族が部屋に入りかけている。
胸痛は心電図でST上昇あり。II・III・aVFだ。
「右誘導も!」
僕は指示を出し、他のレジデントにエコーの準備を。
さっき顔が膨らんでいた患者の顔は・・まだそのままだ。
皮下気腫だな。首も太くなっている。触ると、確かに
地面に降りたての表面の雪を触る感じだ。
「外傷が入る!転倒で頭部裂創!」
「こっちも処置台くれ!」
あちこちがパニックになってきた。
中堅ドクターが戻ってくる。
「何やってる?処置台の取り合いか?ハカセ!」
「はい!自分が仕切ります!」
ハカセは白衣の両腕をめくった。
「Y字体型!」
ハカセの一声で、中心に処置台、その周りにベッドが
円形に並べられた。
「ベッドの出入りは俺の許可を!」
彼は事務へ電話した。
「病棟も詰まってきてる!これ以上の受け入れは・・!」
僕は超音波で確認中。
「下壁が動いてない。AMIで間違いない。カテだ!同意を!」
レジデントに任せ、ハカセに問う。
「これ以上、救急入れるのか?」
「そそ、それが。経営者の方針で・・」
「なに?」
「まだまだ来ると!」
僕は弱音を吐きたかったが、まず目の前の患者だ。
中心の処置台・救急カートを数人が出入りを繰り返す。
「フォガティーで、血栓は除去できたの?」
小森が外傷患者を縫合していた。
「鬼軍曹なら、やるだろう!」
僕はわけもない返事をした。
「弘田!鬼軍曹のとこ行って、心カテ準備する旨を伝えてくれ!」
「は・・・・!」
彼は走っていった。
レジデントが血圧を読む。
「血圧170mmHgもあります!降圧剤、使ってますが・・」
「フルでいけ!ニトロールにヘルべっサーに・・」
「徐脈が」
「ごめん!ヘルベッサー中止で!」
僕もてんてこ舞いだった。
「外傷!CT行きます!」
小森が1人でストレッチャーを抱え飛び出した。
ハカセが携帯をオフしていた。
「病棟で急変!静脈瘤患者がショック!」
「誰かいるのか?」
「中堅ドクター1人だそうで!」
「お前行け!」
僕はハカセに促した。
「僕?僕はここの責任者だから」
「今だけだろ?」
「ユウキ先生こそ!」
「俺はカテがあるんだよ!上官命令だ!」
「くそ!」
彼は手袋をぶん投げ、病棟へ。
レジデントが1人ずつ倒れていき、戦力はもう残り少ない。
あれからいったい何時間たったんだ・・・。
救急がまた1名。全身倦怠感。検査にまわし・・連絡あり。
「もしもし?」
「俺だ!」
軍曹。
「搬入OKですか?」
「準備はできた。来い!」
ストレッチャーはカテ室へ。
透視画面は縦横無尽に鬼軍曹が操作中。
「早く着替えろ!」
彼の目は真っ赤だ。
僕は眠気を抑えるため、勢いの強い水で腕・手を洗った。
『指先に集中しろ・・・』
「わかって・・・・はい。わかりました」
再びカテ室へ。消毒も終わり、穿刺も今済んだ。
「では、セカンドで入ります!」
「透視、出す!」
鬼軍曹は右冠動脈を造影。2番で完全閉塞。
「左は?」
左は8番が75%の有意狭窄。
「・・・・・ダイレクトに拡げるぞ!ユウキ!」
「自分が・・・?はい!お願いします!」
鬼軍曹は、一瞬思いやりのある顔に見えた。
ワイヤーをゆっくり病変部へ・・・。
ワイヤーはそこでゆっくり折れ曲がった。
何度かするうち、その先に筋のように造影剤が見えた。
「通った!通ったぞ!ではバルーンを!」
バルーンは病変部位をすりぬけ、拡張準備にかかった。
「軍曹!お願いします!」
「よし!」
軍曹は圧をかけはじめた。
「あ。すんません。今、軍曹と・・」
「ん?<鬼軍曹>よりはマシだ」
「はは・・・・解除!造影する!」
血栓部はバックリと割れたようで、狭窄は半分解除された。
「もう1回!」
「圧、かける!」
「造影!」「測定!」「ISDN!」・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
僕は、病室で目を覚ました。
すさまじい過酷な勤務から、知らない間に開放されたのか・・。
天井には大きな点滴がゆっくり落ちている。
少しずつ、記憶が蘇ってきた。
カテーテルは無事終わり、病棟は満室。僕ら数人の医者が入院してだ。
点滴を自己抜去して、救急室へ。夜中の救急室ではレジデントが数人、床で寝ている。弘田、小森、ハカセの姿もあった。まるで死んでいるようだ。あちこちに点滴や針が散乱している。
「ててて・・」
全身が痛い。しかしどことなく安心したのか、だんだん腹が減ってきた。
するとハカセがむくっと起き上がってきた。
「先輩・・・!ありがとうございました!」
「今日で、終わりだな。もうたくさん!」
「まだアレがありますよ」
「アレ?」
「僕らが敵同士になる前に・・」
「酒を交わす?」
「ええ!」
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