2NDLINE  9

2005年6月29日
事務長は資料をカバンにしまい、教授室を出ようとした。
「では、これで・・」
「ああ、君」
「はい?」
彼は教授に呼び止められた。

「関連病院の話だがな。ただしだが条件がある」
「ええ、なんでも!」
「条件というのはな。ま、何人か面倒を見て欲しいのだ」
「面倒・・?」
「けして医者として失格という奴では・・いやいや、そういう奴はわが医局にはおらん。ただな、そういう問題児に将来なりそうな奴らが増えてきたのは確かだな」
「ええ・・・」
「その何人かを、君の病院の無難な分野で使ってもらうのはどうか」
「無難な分野・・・ですか」

どんな分野なのだ?

「そのうちお願いする。関連病院記念の第1弾として」

いったいどんな医者が送られて来るのか・・。

そうなのだ。関連病院へ送る医師を決めるのは教授。
関連病院がもし冷遇とか、あるいは軽んじられてる立場、あるいは人手が多いところなら、問題ありの医師が送られることが多い。その代わり、大学は今後もその病院に義理は尽くし続けてもらう。

そうだ。こうして成り立ってる世界だ。大学病院関連の医者は勝手に解雇されない仕事だから。役立たずでも、不思議とどこかにポストが見つかるものだ。

「たとえばだな。外来のみで病棟は2人主治医制で使ってもらってよい」
「そ、そこまでひど・・・いえいえ」
「当直業務はどうか?」
「なるほど・・寝当直とかですね」
「いっぱしの給料は出るだろう?」
「出せないこともないですが・・・」
「なにかね?問題が?」
「うちの現状のスタッフが受け入れるかどうか」
「現状のスタッフ?問題ない。君が黙らせておけばいいではないか?院長は?」
「院長・副院長は名義だけなのです」
「それはいかん。関連病院となったら、うちのスタッフをヘッドにつけさせてもらう!」
「ええ。ぜひその節は・・!」
「ならば、今後のうちとの連携もスムーズにいけようぞ!」

教授は汚いことに、話題を前の分にひっかけた。

事務長は少しうつ傾向になりながら、階段を一段ずつ降りて行った。
「先が思いやられるな・・」

しかし人員補充の利きにくい病院にとっては、医者の能力よりまずは頭数だ。数が揃わないことには話が進まない。せっかく高い給料を支払うのだから・・。

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