2NDLINE  23

2005年6月29日
 最・旧式の人工呼吸器を装着していた患者は安定化し、気管切開下のTチューブでなんとか呼吸器を外すことができた。

 改めて話し合いが行われ、最・旧式は倉庫にしまわれ、年始の永久処分予定となった。残りの16台は依然稼動中であった。やはり年末体勢が近くてウイニングどころではないという主治医の希望が通った。

 業者による呼吸器の点検も行われ、誤動作の可能性は極めて少ないとの結論が下った。

 しかし、どれかの呼吸器が1台でもトラブルを起こす可能性が、なくなったわけではない。



12/22。<予行演習>が行われた。



「さ!はじめよう!」
事務長の合図で、6台の呼吸器の蛇管はいっせいに外され、アンビューでの手動換気に切り替えられた。

7人のスタッフがアンビューで手動換気。廊下にいる田中事務員が人数把握。
「OK?OK?そこも?」
「では2台がストップした設定で!」事務長が掛け声。
「OK。では2台要請!」

6台の呼吸器に関してはアンビューが中断、もとの呼吸器へ。
2台は休めており、アンビュー換気が続行。なぜかって・・・今日はそういう<脚本>だからだ。

「2台お願いします!」
田中事務員の連絡により、数分の国道のところで待機の大型トラックに着信。

「こちら業者。2台ですね。作動は正常を確認。運びます」
トラックの荷台から、呼吸器が2台運ばれる。

呼吸器は真横に待機のドクターズ・カーへ。
「遅いよ遅いよ!」
ピートが助手席ではしゃぐ。
運転手は後方で業者らと呼吸器を搬入。

「OKだ!出発する!」
運転手は素早く運転席へ。手元のボタンでサイレン始動。
「ショータイムだ!」
ピートはそれゆけと拳を高く上げた。

病棟。

「3分経過」
事務長は事務室で待機。
「・・・・・事務スタッフは、被害状況がないか報告を」
全館放送で連絡がいく。事務室に用意された電話に次々と連絡。

「異状なし」「異状なし」「異状なし」「異状なし」「異状なし」

「重症病棟。呼吸不全患者は良好か?」
廊下で田中事務員が受ける。
「呼吸状態は?」

「バイタルは安定」2人のドクターがアンビューを続け、介助の2人が答える。モニター画面がすぐ側にある。

車は路側帯よりに左車線を突っ走る。
「200メートル先に大交差点。初詣客に注意!」
運転手からの連絡で、交差点の警備員が左折に注意を払う。
「通行人はコントロール可能」
警備員同士でテープが張られ、通行人がはみ出せない状態に。
「訓練です!すみませーん!」

「緊急左折!」
運転手は見事なさばきで左折。実はトドロキの人脈で、現役レーサーが3人雇われいるとのことだ。そのうち1人がドクターズ・カーを運転、2人は大学からの呼吸器搬入に関わるという。

車内の呼吸器2台はパートの体育会系が自力で支えている。

「病院。見えた!」
運転手は左右に配慮しながら、一路病院を目指した。

「5分経過!」
事務長は腕時計との戦いだ。
「頼むぞ・・・!」
やがてギャギャギャ・・・というタイヤのこすれるような音が
聞こえてきた。
「よし!当直スタッフらは、救急入り口をオープンに!」

救急室にドクターらが駆け寄る。その中にトシキ・シローの姿も。

運転手はハンドルで軽くスピン、ドクターズ・カーはゆっくりバック。
「ぶつけんなよ!さもなきゃ怒るぜ!」
ピートが後ろで誘導。車は停車した。

バックドアが開放され、呼吸器は1台ずつ運ばれていく。おみこし祭りのようだ。

事務当直はピーピー!と誘導。それがどことなく、それこそお祭りのような
リズムに変わっていった。
『ピーピー!ピーピー!』
中には手拍子する者さえ現れた。
『ピーピー!ピーピー!』

呼吸器がエレベーターに入ってからも、それは続いた。
「それ、ピーピー!」
若い事務員がハッと気づいたときには、もう遅かった。
「うわ!」
後ろから、事務長の跳び蹴りだ。事務員は頭から床に転落した。

「いてて!」
「当直事務と貴様はクビだ!」
「てて・・・事務長お」

事務員は歩いていった。2人が追いかける。
「じょ、冗談でしょう?事務長!」
「いいや。冗談なんかじゃない。顔も見たくない。病院の危機管理よりも、貴様らの管理をなんとかしろ!」

事務長はクールに引き上げていった。

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