2NDLINE  26

2005年6月30日
トドロキ元医長は、後輩のハヤブサと屋上でタバコを吸っていた。

「いよいよ、31日だな」
「何も起きないといいですね」
「起きるさ」
「?」
「ハヤブサよ。お前・・・真珠会に入る気は?」
「真珠会って・・敵じゃないですか?なんで?」
「敵っていってもな。おいおい」
「うちの関連の病院を潰した組織ですよ?」
「うん。だけどな。この真田病院も時間の問題さ」
「でも胸部内科の医者が増えて、収益は上がってますよね」

ハヤブサは自我に目覚めつつあった。

トドロキにはそれが許せない。

「それでもだ。で、ハヤブサはオレを手伝う気はないか?」
「手伝い?」
「大学で問題を起こしたお前を、ここまで引っ張ってきたのは誰のお陰だ?」
「そそ、それはもちろん・・・トドロキ先輩のご尽力があってこそ・・!」

後輩は先輩に逆らえなかった。
「オレについてくるか?」
「も、もちろんです!たとえ<飛んで火にいる・・」
「馬鹿だなお前。それを言うなら、<たとえ火の中・・>だろ!」
「そうでした」
「よく医学部に入れたな・・!」
「すみません」

トドロキは何回も時計を見ている。何か予定でもあるのか。

「じゃ、本題を。話すぞ・・・!」
「ええ」

トドロキはタバコを屋上から落とした。

「胸部内科の奴らは目障りだ。この病院とともに潰すつもりだ」
「さ、最初は僕も彼らが目障りでした。し、しかし・・」
「情が移ったようだな!」
「先輩!ミチル婦長が言ってましたけど・・・彼女の言うとおりです。僕らは・・歩み寄るべきだと」
「ざけんな!」

後輩に電気が走った。

「トドロキ先生!すみません。僕にはなんとなく分かるのですが・・・」
「ざ!け!ん!な!」
「2000年の妨害だけは・・・!」
「う!る!せ!」
「それだけは先生・・」
「勝手にしろ」

図星だったのか、トドロキは姿を消した。

彼は駐車場の赤いフェアレディに飛び乗った。
「ふう・・・」
車内電話、オンフックで会話。

『わしだ』
「会長?」
『どうだ。できるのか?』
「やりますとも。今度こそ会長を喜ばせてみせます!」
『イカレ呼吸器は処分してないんだろうな?』
「してません。ちゃんと倉庫にあります」

帰りがけの若いナースが席に寄ってきた。
「ねえ!飲みにいこうよ!」
「うせろ。クズ」
「・・・・・」
彼女は顔をひきつらせ、逃げるように去った。

『で。その呼吸器の細工はしてあるのか?』
「ええ。回路の中をいろいろと」
『マスコミの知り合いには、いつでも連絡可能だぞ』
「へへ。年明けの記事が楽しみです!」
『内部告発で病院を潰すとはな。わしにもなかった発想だ』
「あすは自分が救急当番ですので。手順はバッチリです。で、会長・・」
『なんだ?今後の扱いか?』
「大丈夫なんでしょうね?」
『そこの病院はじき、わしらのものだ。約束どおり、重要ポストに就かせてやる』
「いいでしょう」

車は行きかう患者を蹴散らすように割り込み、国道へ躍り出た。
「はっはっは!真田はこれでおしまいさ!」

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