2NDLINE 29
2005年6月30日「大丈夫かな?これ・・」
シローは最旧式の機械の動きを見つめていた。表示がほとんど出ない。
「トドロキ先生。いいんですか?呼吸不全なんか入れてしまって」
「お、オレは悪くない。救急隊が全身倦怠感と言って運んできたんだ!」
「無事に乗り切れるんでしょうね?」
患者には呼吸器がすでに装着。最悪のお蔵入り旧式呼吸器だ。
これをまた倉庫から出すとは・・。
「肺炎の陰影のわりに、二酸化炭素が多すぎる」
レントゲンでは肺炎自体はあるものの、基礎疾患が肺気腫とかいうわけではない。
「やっぱりこの呼吸器、おかしいよ。どちらかというと、バタフライ様だ。CO2はむしろ下がるはずだよ」
シローは疑念を放さなかった。
「肺水腫に近いパターンか?悪化すればCO2も上がるだろ?」
トドロキは反論した。
「僕ら胸部内科の経験では・・」
シローは引き離すように小さく応戦した。
「この陰影でそうなるとは思えません」
彼は横のミチルを見た。ミチルは取り乱した。
「ああ?あたしは分かりませんから」
「君も考えてくれよ!」
「呼吸生理のことはまだ・・」
「勉強中?そんなこと、理由にならないよ!」
だがミチルもシローと同様に感じていた。
「事務長が呼吸器持ってくるから、それまでの辛抱だけど・・何が起こるか分からないしね」
シローは呼吸器の周囲をあちこち探した。
「ない・・ない!」
「何がないの?」ミチルは不思議がった。
「うーん・・・うーん」
「ねえ、教えてよ!」
「取り扱い説明書だよ。呼吸器の」
「おかしいわね。横にぶらさがってたはずなのに・・」
「どっかの奴が盗んだのかな?」
「変なこと言わないで!」
トドロキはピクッと表情を変えたが、自分が怪しまれてないという自信はあった。
「事務長、大丈夫かしら・・」
ミチルは心配になってきた。
「事務長のことだからね。ついでに誰か誘ってのんびりドライブじゃないの?」
「何よそれ!」
ミチルはムキになった。
「うわわ、なんで怒るんだよ?」
「フン・・別に!」
「事務長が女にうつつを抜かしてなければ、車はあと20分ほどで到着さ!」
トドロキは自信満々に答えた。
「でしょうね。でも万が一のことも考えないといけないし」
「またセカンドラインか、やれやれ」
彼は白衣をいきなり脱ぎ出した。
「じゃ、オレの役目はもう終わったぜ」
「ど、どこへ?」
「オレは委員長として十分働いた。カウントダウンは胸部内科でやるという契約だ」
「そうでしたっけ?」
シローにとっては初耳だ。
「では、オレはしばらく医局で休む。カウントダウンの際は高見の見物で見させてもらうよ」
彼はいったん去った。
ミチルは見送り、戻ってきた。
「委員長のトドロキ先生は、この機械<業者に確認は取ったから、問題はない>と言うけど・・」
「業者に確認・・?業者の連絡先は?ここか!」
呼吸器に破れかけのシールが貼ってある。
シローは詰所で電話をプッシュした。
「トドロキ・・・いまいち信用できないんだよな」
プッシュ後すぐ、カチッという音。
間もなくアナウンスが流れた。
『オキャクサマノオカケニナッタバンゴウハ、ゲンザイツカワレテオリマセン』
「なに?」
シローは最旧式の機械の動きを見つめていた。表示がほとんど出ない。
「トドロキ先生。いいんですか?呼吸不全なんか入れてしまって」
「お、オレは悪くない。救急隊が全身倦怠感と言って運んできたんだ!」
「無事に乗り切れるんでしょうね?」
患者には呼吸器がすでに装着。最悪のお蔵入り旧式呼吸器だ。
これをまた倉庫から出すとは・・。
「肺炎の陰影のわりに、二酸化炭素が多すぎる」
レントゲンでは肺炎自体はあるものの、基礎疾患が肺気腫とかいうわけではない。
「やっぱりこの呼吸器、おかしいよ。どちらかというと、バタフライ様だ。CO2はむしろ下がるはずだよ」
シローは疑念を放さなかった。
「肺水腫に近いパターンか?悪化すればCO2も上がるだろ?」
トドロキは反論した。
「僕ら胸部内科の経験では・・」
シローは引き離すように小さく応戦した。
「この陰影でそうなるとは思えません」
彼は横のミチルを見た。ミチルは取り乱した。
「ああ?あたしは分かりませんから」
「君も考えてくれよ!」
「呼吸生理のことはまだ・・」
「勉強中?そんなこと、理由にならないよ!」
だがミチルもシローと同様に感じていた。
「事務長が呼吸器持ってくるから、それまでの辛抱だけど・・何が起こるか分からないしね」
シローは呼吸器の周囲をあちこち探した。
「ない・・ない!」
「何がないの?」ミチルは不思議がった。
「うーん・・・うーん」
「ねえ、教えてよ!」
「取り扱い説明書だよ。呼吸器の」
「おかしいわね。横にぶらさがってたはずなのに・・」
「どっかの奴が盗んだのかな?」
「変なこと言わないで!」
トドロキはピクッと表情を変えたが、自分が怪しまれてないという自信はあった。
「事務長、大丈夫かしら・・」
ミチルは心配になってきた。
「事務長のことだからね。ついでに誰か誘ってのんびりドライブじゃないの?」
「何よそれ!」
ミチルはムキになった。
「うわわ、なんで怒るんだよ?」
「フン・・別に!」
「事務長が女にうつつを抜かしてなければ、車はあと20分ほどで到着さ!」
トドロキは自信満々に答えた。
「でしょうね。でも万が一のことも考えないといけないし」
「またセカンドラインか、やれやれ」
彼は白衣をいきなり脱ぎ出した。
「じゃ、オレの役目はもう終わったぜ」
「ど、どこへ?」
「オレは委員長として十分働いた。カウントダウンは胸部内科でやるという契約だ」
「そうでしたっけ?」
シローにとっては初耳だ。
「では、オレはしばらく医局で休む。カウントダウンの際は高見の見物で見させてもらうよ」
彼はいったん去った。
ミチルは見送り、戻ってきた。
「委員長のトドロキ先生は、この機械<業者に確認は取ったから、問題はない>と言うけど・・」
「業者に確認・・?業者の連絡先は?ここか!」
呼吸器に破れかけのシールが貼ってある。
シローは詰所で電話をプッシュした。
「トドロキ・・・いまいち信用できないんだよな」
プッシュ後すぐ、カチッという音。
間もなくアナウンスが流れた。
『オキャクサマノオカケニナッタバンゴウハ、ゲンザイツカワレテオリマセン』
「なに?」
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