2NDLINE  40

2005年7月1日
「10分後、動脈血チェック!」
トシキの掛け声とともに、各患者のAラインより動脈血が採取されていく。

貸し出し分を含めた測定器3台で、1つずつ迅速に測定。

「No.1 , No.2結果出ました!」
渡される結果を1つずつ、さきほどの<年末分データ>と比較していく。

「OK・・・これもOK!」
トシキ先生はだんだん肩の荷が降りていくのを感じた。
「う・・・これは?」
シローが伝票を持って走ってきた。

「最旧式のだけ、二酸化炭素が上がってる!年末が48mmHgで、今が・・・88mmHg!」
「酸素は十分あるのにか。pHが7.221?まずいぞ・・・」
「この機械ではこれ以上有利な設定ができません!」
「業者へ問い合わせろ!」
「先生!僕の話、聞いてなかったんですか!」
「?」
「その業者はもう存在してないんです!」
「うそお!」
「もう!何を聞いてたんですか!」

呼吸器は外され、手動換気が始まった。アンビューバッグだ。

「で?代えの呼吸器はどうなんだ?田中事務員!」
アンビューを押しながらトシキは叫んだ。

「は・・・!事務長に今問い合わせたのですが・・・その・・・」
「なにい?」
「まだ何も言ってません」
「早く言ってくれ!」
「非常に御機嫌が悪くて」
「そんなこと、どうでもいいだろう?」
「はっ!たしかに!」

下がっていたSpO2は徐々に復活しはじめた。
シローがアンビューする。

「僕らが知りたいのは、呼吸器の到着予定だよ!」
「ぎょぎょ、業者は事故でこちらへの到着が絶望的で・・」
「ああ、それ聞いた聞いた」

「シロー!」
トシキがモニターをいじっている。
「オレへの報告がなかったぞ!」
「言いましたよ。それも」
「聞いてない!」
「言いました!」
「オレが言ってるから事実だ!」
「大学のときから先生・・」
「?」

シローがトシキに逆らうのは異例のことだった。

「大学のときからですよ。人の話は右から左!」
「す、すまん・・」
「田中さん。で?事務長はどこ?」
「壁の上・・」

みんな顔を見合わせた。

トシキはあちこち走り回っている。

ミチルの表情にも余裕が見えてきた。
「シロー先生。<人の話は右から左>。名言ね」
「ああそれ?僕がいつも家で言われてる言葉です」
「奥さん?」
「子育てを手伝ってくれないことへの文句ですよ!子供ができたら女ってこれだ!」
「でも・・・子供を作ったのはシロー先生でしょう?」
「う!」

シローは下を見下ろした。

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