2NDLINE 45
2005年7月1日事務長は完全に爆睡していた。
ドクターズ・カーのサイレンも効き目なし。他の車もどこうとしない。
嫌な世の中だ。
ピートの携帯が鳴った。
「はいよ!」
『ユウキだ。どこ?』
「あ!こっちこっち!サイレンを!」
彼はサイレンを回したり止めたりした。
僕はサイレンのランプを手がかりに、台車をせっせと漕いだ。
「あれだ!」
僕は国道を横切った。
「お待たせした!」
車の助手席をいきなり開けた。
「なんですか!あなたは!」
救急隊だ。別の車だった。
「すみません・・・」
サイレンにばかり目がいっていた。
電話では、たしかこの辺・・・。
「あれか!」
真ん中車線で立ち往生しているのがそうだ。
僕はステップを繰り返し、車と車の間を抜けた。
「きたぞ!」
「よう!明けまして!」
ピートが降りてきた。
「事務長は・・?」
僕は助手席の血だらけの顔を見てぎょっとした。
「生きてるの?」
「寝てる!」
ピートはトランクから呼吸器をわっせと持ち上げ、台車に乗せた。
「さ!行ってくれ!」
「待てよピート!お前、手伝え!」
「1人で行けるだろ?」
「反対側にもう1人要る。呼吸器を落とさないためにだ」
「オレは麻酔科だしな」
「関係ねえだろ?」
「足が弱いんだ」
「ウソこけ!へタレンジャー!」
事務長は夢を見ているようだった。
「うう・・・ん。うん。みちる・・・・うん。そこ、いい、いい・・」
「はあ?」
僕は変な声に気づいた。
「みちるう・・・」
僕は事務長を揺り起こした。
「事務長!生きてるか?」
「へ?あ!いいとこだったのに・・」
「続きは家でやんなよ。さ!協力してくれ!」
「ユウキ先生!」
彼は喜んで、助手席を降りた。
しかし事務長はいまひとつ状況を把握しきれないまま、台車の右側に立たされた。僕は左側へ。
「これ、どうするの?」
事務長は目を凝らした。
僕は腕時計を見た。
「もうすぐ病院。台車なら抜け道使って7分程度」
「へえ・・・」
「急げ。病棟は手動換気中だ。漕ぐぞ!」
僕よりワンテンポ遅れて、事務長は必死で地面を蹴り始めた。
笛のピーピーで、前の通行人が見事に散らばっていく。
「(通行人たち)おわああああ!」
しかしお互いのステップがバラバラで、スピードが一定しない。
「事務長!動きがバラバラだ!」
「同時にステップできたらいいんですが・・」
「なにか・・・そうだ。歌を!」
「歌?」
「なんでもいい!」
「♪ア〜マ〜リルガ〜!あたためて〜!あげよう〜!」
台車はだんだんのろくなってきた。
「ダメだ事務長!もっと速いのを!」
「ビーマイベイビービーマイベイビービーマイベイビー・・!」
台車はだんだん加速してきた。
信号待ち。
「はあ、はあ、はあ・・・!」
僕は完全にばてていた。
「と、トドロキが仕組んだんだろ?事務長」
「先生も気づきました?」
「あいつの動き自体、怪しいからさ」
「・・・・・」
「なんであんなこと、するのかな?」
「それは先生が一番、ご存知のはずです!」
信号は青に変わった。
事務長はダッシュした。
「♪いくぞ〜!タンゴノワール!」
「うそお?」
「♪ふりむくだ〜けで!あな〜た!」
「♪つみな男!シャンシャンシャンシャン!」
「♪フフフフフンフフ(歌詞を忘れている)!」
「♪(2人)踊ればタンゴ!タンゴ!」
自転車が4方向から走ってくるが、次々と僕らは交わした。
事務長は歌いまくる。
「♪あいしただ〜けで、わた〜し、こわれていく」
「♪シャンシャンシャンシャン!」
「♪フフンフ!」
「♪フフンフ!」
「♪(二人)・・・なのタンゴノワアアアアアアアア!」
「うるさいぞお前ら!」
どこかのオッサンが叫んだ。
リズムに合わせ、僕らの足はタンタン淡淡とステップする。
ドクターズ・カーのサイレンも効き目なし。他の車もどこうとしない。
嫌な世の中だ。
ピートの携帯が鳴った。
「はいよ!」
『ユウキだ。どこ?』
「あ!こっちこっち!サイレンを!」
彼はサイレンを回したり止めたりした。
僕はサイレンのランプを手がかりに、台車をせっせと漕いだ。
「あれだ!」
僕は国道を横切った。
「お待たせした!」
車の助手席をいきなり開けた。
「なんですか!あなたは!」
救急隊だ。別の車だった。
「すみません・・・」
サイレンにばかり目がいっていた。
電話では、たしかこの辺・・・。
「あれか!」
真ん中車線で立ち往生しているのがそうだ。
僕はステップを繰り返し、車と車の間を抜けた。
「きたぞ!」
「よう!明けまして!」
ピートが降りてきた。
「事務長は・・?」
僕は助手席の血だらけの顔を見てぎょっとした。
「生きてるの?」
「寝てる!」
ピートはトランクから呼吸器をわっせと持ち上げ、台車に乗せた。
「さ!行ってくれ!」
「待てよピート!お前、手伝え!」
「1人で行けるだろ?」
「反対側にもう1人要る。呼吸器を落とさないためにだ」
「オレは麻酔科だしな」
「関係ねえだろ?」
「足が弱いんだ」
「ウソこけ!へタレンジャー!」
事務長は夢を見ているようだった。
「うう・・・ん。うん。みちる・・・・うん。そこ、いい、いい・・」
「はあ?」
僕は変な声に気づいた。
「みちるう・・・」
僕は事務長を揺り起こした。
「事務長!生きてるか?」
「へ?あ!いいとこだったのに・・」
「続きは家でやんなよ。さ!協力してくれ!」
「ユウキ先生!」
彼は喜んで、助手席を降りた。
しかし事務長はいまひとつ状況を把握しきれないまま、台車の右側に立たされた。僕は左側へ。
「これ、どうするの?」
事務長は目を凝らした。
僕は腕時計を見た。
「もうすぐ病院。台車なら抜け道使って7分程度」
「へえ・・・」
「急げ。病棟は手動換気中だ。漕ぐぞ!」
僕よりワンテンポ遅れて、事務長は必死で地面を蹴り始めた。
笛のピーピーで、前の通行人が見事に散らばっていく。
「(通行人たち)おわああああ!」
しかしお互いのステップがバラバラで、スピードが一定しない。
「事務長!動きがバラバラだ!」
「同時にステップできたらいいんですが・・」
「なにか・・・そうだ。歌を!」
「歌?」
「なんでもいい!」
「♪ア〜マ〜リルガ〜!あたためて〜!あげよう〜!」
台車はだんだんのろくなってきた。
「ダメだ事務長!もっと速いのを!」
「ビーマイベイビービーマイベイビービーマイベイビー・・!」
台車はだんだん加速してきた。
信号待ち。
「はあ、はあ、はあ・・・!」
僕は完全にばてていた。
「と、トドロキが仕組んだんだろ?事務長」
「先生も気づきました?」
「あいつの動き自体、怪しいからさ」
「・・・・・」
「なんであんなこと、するのかな?」
「それは先生が一番、ご存知のはずです!」
信号は青に変わった。
事務長はダッシュした。
「♪いくぞ〜!タンゴノワール!」
「うそお?」
「♪ふりむくだ〜けで!あな〜た!」
「♪つみな男!シャンシャンシャンシャン!」
「♪フフフフフンフフ(歌詞を忘れている)!」
「♪(2人)踊ればタンゴ!タンゴ!」
自転車が4方向から走ってくるが、次々と僕らは交わした。
事務長は歌いまくる。
「♪あいしただ〜けで、わた〜し、こわれていく」
「♪シャンシャンシャンシャン!」
「♪フフンフ!」
「♪フフンフ!」
「♪(二人)・・・なのタンゴノワアアアアアアアア!」
「うるさいぞお前ら!」
どこかのオッサンが叫んだ。
リズムに合わせ、僕らの足はタンタン淡淡とステップする。
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